JP5277984B2 - 正極活物質材料 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば全固体電池に用いられる正極活物質材料に関し、より詳しくは、高温時における酸化物系正極活物質と固体電解質材料との界面抵抗の増加を抑制することができる正極活物質材料に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として優れた電池(例えばリチウム電池)の開発が重要視されている。また、情報関連機器や通信関連機器以外の分野では、例えば自動車産業界において、電気自動車やハイブリッド自動車に用いられるリチウム電池等の開発が進められている。
ここで、従来市販されているリチウム電池には、可燃性の有機溶媒を用いた有機電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造・材料面での改善が必要となる。これに対して、液体電解質を固体電解質に変更した全固体電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。
このような全固体電池の分野において、従来から、酸化物系正極活物質および固体電解質材料の界面に着目し、全固体電池の性能向上を図る試みがある。例えば、非特許文献1においては、LiCoO(酸化物系正極活物質)の表面にLiNbOを被覆した材料が開示されている。この技術は、LiCoOの表面にLiNbOを被覆することで、LiCoOおよび固体電解質材料の界面抵抗を低減させ、電池の高出力化を図ったものである。また、特許文献1においては、硫黄及び/またはリンで表面処理された全固体二次電池用の電極材料が開示されている。これは、表面処理により、イオン伝導パスの向上を図ったものである。また、特許文献2においては、酸化物系正極活物質の表面にリチウム塩化物を担持した硫化物系固体電池が開示されている。これは、リチウム塩化物を担持することで、界面抵抗の低減を図ったものである。
特開2008−027581号公報 特開2001−052733号公報
Narumi Ohta et al., "LiNbO3-coated LiCoO2 as cathode material for all solid-state lithium secondary batteries", Electrochemistry Communications 9 (2007) 1486-1490
非特許文献1に記載されたように、LiCoOの表面にLiNbOを被覆すると、酸化物系正極活物質および固体電解質材料の界面抵抗を低減させることができる。これは、LiNbOを用いることで、LiCoOおよび固体電解質材料(特に硫化物系固体電解質)が反応し、高抵抗層が発生することを抑制できるからであると考えられる。しかしながら、酸化物系正極活物質および固体電解質材料の界面抵抗の増加は、高温時(例えば50℃〜150℃程度の温度)に著しいという問題がある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高温時における酸化物系正極活物質と固体電解質材料との界面抵抗の増加を抑制することができる正極活物質材料を提供することを主目的とする。
上記課題を解決すべく、本発明者等が鋭意研究を重ねた結果、高温時に界面抵抗の増加が生じる原因は、LiCoO(酸化物系正極活物質)を被覆するLiNbO(反応抑制部)の厚さの均一性が低いためであるという知見を得た。すなわち、反応抑制部の厚さの均一性が低いと、電極反応が活発化する高温時に、反応抑制部の厚さが小さい領域から、局所的に高抵抗層が発生してしまうという知見を得た。そこで、反応抑制部の厚さの均一性を高めたところ、高温時における酸化物系正極活物質と固体電解質材料との界面抵抗の増加を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明においては、酸化物系正極活物質と、上記酸化物系正極活物質の表面を被覆し、酸化物からなる反応抑制部と、を有する正極活物質材料であって、エッチングによる深さ分析を伴うXPS測定によって、SiO換算のエッチング量E(nm)に対応する、上記酸化物系正極活物質に含まれる金属元素(伝導イオンとなる金属元素を除く)の割合M(モル%)と、上記反応抑制部の酸化物に含まれる酸素元素以外の元素(上記酸化物が伝導イオンとなる金属元素を有する場合、その金属元素を除く)の割合をM(モル%)とを測定し、さらに、X軸をE(nm)、Y軸をM/(M+M)とした曲線を得た場合に、上記曲線の急落部における直線の傾きAの値が、−0.020以下であることを特徴とする正極活物質材料を提供する。
本発明によれば、反応抑制部の厚さの均一性が高いため、高温時における酸化物系正極活物質と固体電解質材料との界面抵抗の増加を抑制することができる。
上記発明においては、上記反応抑制部の酸化物が、LiNbOであることが好ましい。高温時における界面抵抗の増加を効果的に抑制することができるからである。
上記発明においては、上記酸化物系正極活物質が、LiCoOであることが好ましい。高容量であり、電池の高エネルギー密度化に適しているからである。
また、本発明においては、上述した正極活物質材料を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層と、を有することを特徴とする全固体電池を提供する。
本発明によれば、上述した正極活物質材料を含有する正極活物質を用いることで、高温時における酸化物系正極活物質と固体電解質材料との界面抵抗の増加を抑制することができ、耐久性の優れた全固体電池とすることができる。
上記発明においては、上記正極活物質層および上記固体電解質層の少なくとも一方が、硫化物系固体電解質材料を含有することが好ましい。イオン伝導性が高く、高出力な電池を得ることができるからである。また、硫化物系固体電解質材料は反応性が高いため、高抵抗層を形成しやすく、本発明の効果を充分に発揮することができるからである。
また、本発明においては、酸化物系正極活物質と、上記酸化物系正極活物質の表面を被覆し、酸化物からなる反応抑制部と、を有し、エッチングによる深さ分析を伴うXPS測定によって、SiO換算のエッチング量E(nm)に対応する、上記酸化物系正極活物質に含まれる金属元素(伝導イオンとなる金属元素を除く)の割合M(モル%)と、上記反応抑制部の酸化物に含まれる酸素元素以外の元素(上記酸化物が伝導イオンとなる金属元素を有する場合、その金属元素を除く)の割合をM(モル%)とを測定し、さらに、X軸をE(nm)、Y軸をM/(M+M)とした曲線を得た場合に、上記曲線の急落部における直線の傾きAの値が、−0.020以下である正極活物質材料の製造方法であって、上記酸化物の金属源を、上記酸化物の換算量で0.4mol/kg以下となる濃度で含有する原料組成物を調製する調製工程と、上記原料組成物を、酸化物系正極活物質の表面上に塗布する塗布工程と、上記原料組成物が塗布された酸化物系正極活物質を熱処理することで、上記反応抑制部を形成する熱処理工程と、を有することを特徴とする正極活物質材料の製造方法を提供する。
本発明によれば、金属源の濃度の低い原料組成物を用いることにより、厚さの均一性の高い正極活物質材料を得ることができる。これにより、高温時における酸化物系正極活物質と固体電解質材料との界面抵抗の増加を抑制可能な正極活物質材料を得ることができる。
上記発明においては、上記原料組成物が、Li源およびNb源を含有することが好ましい。高温時における界面抵抗の増加を効果的に抑制できるLiNbOを得ることができるからである。
本発明においては、高温時における酸化物系正極活物質と固体電解質材料との界面抵抗の増加を抑制することができるという効果を奏する。
本発明の正極活物質材料の一例を示す概略断面図である。 SiO換算のエッチング量E(nm)と、M/(M+M)との関係を示すグラフである。 反応抑制部の厚さの均一性の評価原理を説明する説明図である。 反応抑制部の厚さの均一性の違いによる、曲線の傾向の違いを説明するグラフである。 本発明の全固体電池の発電要素の一例を示す説明図である。 実施例1、比較例1、2で得られた正極活物質材料における、反応抑制部の厚さの均一性の結果を示すグラフである。 実施例1、比較例1、2で得られた正極活物質材料を有する全固体電池の界面抵抗の経時変化を示すグラフである。
以下、本発明の正極活物質材料、全固体電池、および正極活物質材料の製造方法について詳細に説明する。
A.正極活物質材料
まず、本発明の正極活物質材料について説明する。本発明の正極活物質材料は、酸化物系正極活物質と、上記酸化物系正極活物質の表面を被覆し、酸化物からなる反応抑制部と、を有する正極活物質材料であって、エッチングによる深さ分析を伴うXPS測定によって、SiO換算のエッチング量E(nm)に対応する、上記酸化物系正極活物質に含まれる金属元素(伝導イオンとなる金属元素を除く)の割合M(モル%)と、上記反応抑制部の酸化物に含まれる酸素元素以外の元素(上記酸化物が伝導イオンとなる金属元素を有する場合、その金属元素を除く)の割合をM(モル%)とを測定し、さらに、X軸をE(nm)、Y軸をM/(M+M)とした曲線を得た場合に、上記曲線の急落部における直線の傾きAの値が、−0.020以下であることを特徴とするものである。
本発明によれば、反応抑制部の厚さの均一性が高いため、高温時における酸化物系正極活物質と固体電解質材料との界面抵抗の増加を抑制することができる。従来のように、反応抑制部の厚さの均一性が低いと、電極反応が活発化する高温時に、反応抑制部の厚さが小さい領域から、局所的に高抵抗層が発生してしまうという問題が生じる。これに対して、本発明によれば、反応抑制部の厚さの均一性が高いため、このような局所的な高抵抗層の発生を抑制することができる。その結果、電池の高出力化に適した正極活物質材料とすることができる。また、本発明によれば、反応抑制部の厚さの均一性が高いため、反応抑制部を最適な厚さに設定することができる。これにより、高抵抗層の発生を抑制しつつ、反応抑制部の厚さ増加に伴うイオン伝導性の低下を防ぐことができる。また、本発明によれば、高容量な酸化物系正極活物質を用いているため、電池の高エネルギー密度化に適した正極活物質材料とすることができる。
図1は、本発明の正極活物質材料の一例を示す概略断面図である。図1に示される正極活物質材料10は、粉末の酸化物系正極活物質(例えばLiCoO)1と、酸化物系正極活物質1の表面を被覆し、酸化物(例えばLiNbO)からなる反応抑制部2と、を有するものである。本発明においては、反応抑制部2の厚さの均一性が高いことを大きな特徴とする。
本発明において、反応抑制部2の厚さの均一性は、エッチングによる深さ分析を伴うXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)測定によって、規定することができる。具体的には、エッチングによる深さ分析を伴うXPS測定によって、SiO換算のエッチング量E(nm)に対応する、酸化物系正極活物質に含まれる金属元素(伝導イオンとなる金属元素を除く)の割合M(モル%)と、反応抑制部の酸化物に含まれる酸素元素以外の元素(上記酸化物が伝導イオンとなる金属元素を有する場合、その金属元素を除く)の割合をM(モル%)とを測定する。例えば酸化物系正極活物質がLiCoOである場合は、伝導イオンとなるLi以外の金属元素であるCoの割合をM(モル%)とする。同様に、例えば反応抑制部の酸化物がLiNbOである場合は、伝導イオンとなるLi以外の金属元素であるNbの割合をM(モル%)とする。なお、反応抑制部の酸化物が金属酸化物である場合、Mは、反応抑制部の酸化物に含まれる金属元素(上記酸化物が伝導イオンとなる金属元素を有する場合、その金属元素を除く)の割合になる。
その上で、X軸にE(nm)、Y軸をM/(M+M)とした曲線を描くと、例えば図2に示されるような曲線が得られる。本発明においては、その曲線の急落部の直線Lの傾きAの値が、−0.020以下であることを大きな特徴とする。なお、傾きAの値は負であることから、傾きAの値が小さくなるほど、直線LはY軸と平行に近づいていく。
また、上記の曲線は、SiO換算のエッチング量E(nm)が小さいと、酸化物系正極活物質を被覆する反応抑制部の金属元素が主に検出されるため、M/(M+M)の値が大きくなる。一方、SiO換算のエッチング量E(nm)が大きいと、反応抑制部が除去されることで露出した酸化物系正極活物質の金属元素が主に検出されるため、M/(M+M)の値が小さくなる。このような曲線の急落部の傾きを算出することで、反応抑制部の厚さの均一性を評価することができる。その原理について、図3を用いて説明する。
図3は、反応抑制部の厚さの均一性の評価原理を説明する説明図である。具体的には、酸化物系正極活物質(LiCoO)および反応抑制部(LiNbO)の界面を模式的に示したものである。なお、LiNbOは便宜上「Nb」と記載している。反応抑制部の厚さの均一性が低い場合、エッチングの開始時には、LiNbOのNbのみが検出される(図3(a))。さらにエッチングを行うと、厚さの均一性が低いため、一部にはLiNbOが残留し、一部にはLiCoOが露出する(図3(b))。その結果、NbおよびCoが検出される。さらにエッチングを行うと、残留したLiNbOが完全に除去され、LiCoOのCoのみが検出される(図3(c))。これに対して、反応抑制部の厚さの均一性が高い場合、エッチングの開始時には、上記と同様に、LiNbOのNbのみが検出される(図3(d))。さらにエッチングを行っても、厚さの均一性が高いため、LiNbOのNbのみが検出される(図3(e))。さらにエッチングを行うと、LiCoOが急激に露出し、Coのみが検出される(図3(f))。
このように、反応抑制部の厚さの均一性の違いによって、上記の曲線に異なる傾向が生じる。すなわち、図4に示すように、反応抑制部の厚さの均一性が低い場合は、MおよびMの両方(図3(b)におけるCoおよびNbの両方)が検出される状態が長く続く傾向にあるため、エッチング量Eの増加に対して、初期のM/(M+M)の減少は緩やかになる。これに対して、反応抑制部の厚さの均一性が高い場合は、M(図3(e)におけるNb)のみが検出される状態が長く続く傾向にあるため、エッチング量Eの増加に対して、初期のM/(M+M)の減少は急激になる。その結果、反応抑制部の厚さの均一性が高いほど、急落部における直線がY軸と平行に近づくと考えられる。
本発明においては、上述したように、急落部における直線の傾きAの値が、通常、−0.020以下である。傾きAの値は、より小さいことが好ましく、具体的には−0.030以下であることが好ましく、−0.040以下であることがより好ましい。一方、傾きAの値は、−1.00以上であることが好ましい。
また、本発明におけるXPS測定は、エッチングによる深さ分析を伴うものである。エッチングの種類は、例えばアルゴンガスによるドライエッチングを挙げることができる。また、エッチングレートは、SiO換算で、例えば0.5nm/min〜1nm/min程度である。さらに、本発明においては、急落部における直線の傾きAを算出する。ここで、急落部とは、例えば図2におけるプロット開始点からの最小二乗法による近似直線において、R値(決定係数)が、R≧0.985を満たす範囲をいう。急落部における直線とは、上記の急落部において最小二乗法により得られる直線をいう。
以下、本発明の正極活物質材料について、構成ごとに説明する。
1.反応抑制部
まず、本発明における反応抑制部について説明する。本発明における反応抑制部は、酸化物からなり、酸化物系正極活物質の表面を被覆するものである。
上記酸化物としては、高温時における酸化物系正極活物質と固体電解質材料との界面抵抗の増加を抑制することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、金属酸化物を挙げることができる。さらに、金属酸化物は、遷移金属元素と、酸素元素とを有するものであることが好ましい。上記遷移金属元素としては、例えば、Nb、TiおよびTaからなる群から選択される少なくとも一種の元素を挙げることができ、このような金属酸化物としては、具体的には、NbOおよびNb等を挙げることができる。また、金属酸化物以外の酸化物としては、例えば珪素酸化物を挙げることができ、具体的には、SiO等を挙げることができる。
上記酸化物の他の例としては、伝導イオンとなる金属元素を有する酸化物を挙げることができる。このような酸化物としては、例えば、伝導イオンとなる金属元素と、遷移金属元素と、酸素元素とを有する金属酸化物を挙げることができる。伝導イオンとなる金属元素を有することで、イオン伝導性が向上するという利点を有する。伝導イオンとなる金属元素としては、具体的には、LiおよびNa等のアルカリ金属元素、並びに、MgおよびCa等のアルカリ土類金属元素等を挙げることができ、中でもアルカリ金属元素が好ましく、特にLiが好ましい。なお、遷移金属元素については、上述した内容と同様である。このような金属酸化物としては、具体的には、LiNbOおよびLiTi12等を挙げることができ、中でもLiNbOが好ましい。界面抵抗の増加をさらに抑制することができるからである。また、本発明においては、伝導イオンとなる金属元素を有する酸化物として、LiPOおよびLiSiO等を用いることもできる。
また、本発明における反応抑制部の平均厚さは、例えば3nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましい。反応抑制部の平均厚さが小さすぎると、高温時における酸化物系正極活物質と固体電解質材料との界面抵抗の増加を抑制できない可能性があるからである。さらに、反応抑制部の平均厚さが小さすぎると、反応抑制部の厚さの調整自体が困難になる可能性もある。一方、反応抑制部の平均厚さは、例えば50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましい。反応抑制部の平均厚さが大きすぎると、イオン伝導性が低下する可能性があるからである。なお、反応抑制部の平均厚さは、例えばXPS、オージェ電子分光法、TEM、SEMにより算出することができる。
本発明において、反応抑制部が酸化物系正極活物質の表面を被覆する被覆率は、特に限定されるものではないが、より高いことが好ましい。高温時における酸化物系正極活物質と固体電解質材料との界面抵抗の増加をさらに抑制できるからである。反応抑制部の被覆率は、具体的には、40%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。特に、反応抑制部は、酸化物系正極活物質の表面全てを被覆していることが好ましい。なお、反応抑制部の被覆率は、例えばXPS、オージェ電子分光法、TEM、SEMにより算出することができる。
2.酸化物系正極活物質
次に、本発明における酸化物系正極活物質について説明する。本発明における酸化物系正極活物質は、上述した反応抑制部を担持するものである。また、酸化物系正極活物質を用いることにより、エネルギー密度の高い全固体電池を得ることができる。また、酸化物系正極活物質は、通常、後述する固体電解質材料と反応して高抵抗層を形成するものである。本発明においては、酸化物系正極活物質の表面を被覆する反応抑制部を設けることで、高抵抗層の形成を抑制できるのである。なお、高抵抗層の生成は、透過型電子顕微鏡(TEM)やエネルギー分散型X線分光法(EDX)により確認することができる。
酸化物系正極活物質の種類は、正極活物質材料の用途によって異なるものであるが、例えば本発明の正極活物質材料を全固体リチウム二次電池に用いる場合、酸化物系正極活物質は、通常、リチウムイオン(伝導イオン)を吸蔵・放出するものである。酸化物系正極活物質としては、例えば、一般式Li(Mは遷移金属元素であり、x=0.02〜2.2、y=1〜2、z=1.4〜4)で表される正極活物質を挙げることができる。上記一般式において、Mは、Co、Mn、Ni、V、FeおよびSiからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、Co、NiおよびMnからなる群から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。このような酸化物系正極活物質としては、具体的には、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiMn、Li(Ni0.5Mn1.5)O、LiFeSiO、LiMnSiO等を挙げることができる。
酸化物系正極活物質の形状としては、例えば粒子形状を挙げることができ、中でも真球状または楕円球状であることが好ましい。また、酸化物系正極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径は、例えば0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
3.正極活物質材料
本発明の正極活物質材料の用途としては、例えば、全固体電池用途を挙げることができる。また、正極活物質材料の製造方法としては、上述した正極活物質材料を得ることができる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、後述する「C.正極活物質材料の製造方法」で説明する方法を挙げることができる。
また、本発明においては、上述したXPS測定を用いた正極活物質材料の評価方法を提供することもできる。具体的には、酸化物系正極活物質と、上記酸化物系正極活物質の表面を被覆する反応抑制部と、を有する正極活物質材料の評価方法であって、エッチングによる深さ分析を伴うXPS測定によって、SiO換算のエッチング量E(nm)に対応する、上記酸化物系正極活物質に含まれる金属元素(伝導イオンとなる金属元素を除く)の割合M(モル%)と、上記反応抑制部の酸化物に含まれる酸素元素以外の元素(上記酸化物が伝導イオンとなる金属元素を有する場合、その金属元素を除く)の割合をM(モル%)とを測定し、さらに、X軸をE(nm)、Y軸をM/(M+M)とした曲線を得た場合に、上記曲線の急落部における直線の傾きAの値を評価することを特徴とする正極活物質材料の評価方法を提供することができる。この際、傾きAの値は、−0.020以下であることが好ましい。さらに、この評価方法を用いた評価工程を有することを特徴とする正極活物質材料の製造方法を提供することもできる。
B.全固体電池
次に、本発明の全固体電池について説明する。本発明の全固体電池は、上述した正極活物質材料を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層と、を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、上述した正極活物質材料を含有する正極活物質を用いることで、高温時における酸化物系正極活物質と固体電解質材料との界面抵抗の増加を抑制することができ、耐久性の優れた全固体電池とすることができる。
図5は、本発明の全固体電池の発電要素の一例を示す説明図である。図5に示される全固体電池の発電要素20は、上記「A.正極活物質材料」で記載した正極活物質材料を含有する正極活物質層11と、負極活物質を含有する負極活物質層12と、正極活物質層11および負極活物質層12の間に形成された固体電解質層13とを有するものである。
以下、本発明の全固体電池について、構成ごとに説明する。
1.正極活物質層
まず、本発明における正極活物質層について説明する。本発明における正極活物質層は、上述した正極活物質材料を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料および導電化材の少なくとも一方を含有していても良い。
本発明における正極活物質材料については、上記「A.正極活物質材料」に記載した内容と同様である。また、正極活物質層における正極活物質材料の含有量は、例えば20重量%以上であることが好ましく、60重量%〜95重量%の範囲内であることがより好ましい。
本発明における正極活物質層は、固体電解質材料を含有していても良い。固体電解質材料の添加により、正極活物質層のイオン伝導性を向上させることができる。なお、正極活物質層に用いられる固体電解質材料は、後述する「2.固体電解質層」に記載する内容と同様である。中でも、正極活物質層に用いられる固体電解質材料は、硫化物系固体電解質材料であることが好ましい。イオン伝導性がさらに良好な正極活物質層を得ることできるからである。また、硫化物系固体電解質材料は反応性が高いため、高抵抗層を形成しやすく、本発明の効果を充分に発揮することができるからである。また、正極活物質層における固体電解質材料の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば80重量%以下であることが好ましく、5重量%〜40重量%の範囲内であることがより好ましい。
本発明における正極活物質層は、さらに導電化材を含有していても良い。導電化材の添加により、正極活物質層の導電性を向上させることができる。導電化材としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等を挙げることができる。また、正極活物質層における導電化材の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば0.1重量%〜20重量%の範囲内であることが好ましい。
また、正極活物質層の厚さは、目的とする全固体電池の種類によって異なるものであるが、例えば1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
2.固体電解質層
次に、本発明における固体電解質層について説明する。本発明における固体電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に形成される層である。また、固体電解質層は、固体電解質材料のみを含有することが好ましい。また、固体電解質材料は、通常、酸化物系正極活物質と反応して高抵抗層を形成する材料である。本発明においては、酸化物系正極活物質の表面を被覆する反応抑制部を設けることで、高抵抗層の形成を抑制できるのである。
固体電解質材料としては、例えば硫化物系固体電解質材料を挙げることができる。硫化物系固体電解質材料は、イオン伝導性が高く、高出力な電池を得ることができるという利点を有する。硫化物系固体電解質材料としては、硫黄元素を有し、かつ、イオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、中でも、架橋硫黄(−S−)を有するものが好ましい。イオン伝導性がさらに優れているからである。架橋硫黄を有する固体電解質材料としては、例えば、Li11、0.6LiS−0.4SiS、0.6LiS−0.4GeS等を挙げることができる。ここで、上記のLi11は、PS−S−PS構造と、PS構造とを有する固体電解質材料であり、PS−S−PS構造が架橋硫黄を有する。このように、本発明においては、高抵抗層形成固体電解質材料が、PS−S−PS構造を有することが好ましい。本発明の効果を充分に発揮することができるからである。
固体電解質材料の形状としては、例えば粒子形状を挙げることができ、中でも真球状または楕円球状であることが好ましい。また、固体電解質材料が粒子形状である場合、その平均粒径は、例えば0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
また、固体電解質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
3.負極活物質層
次に、本発明における負極活物質層について説明する。本発明における負極活物層は、少なくとも負極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料および導電化材の少なくとも一方を含有していても良い。負極活物質としては、目的とする全固体電池の伝導イオンの種類により異なるものであるが、例えば金属活物質およびカーボン活物質を挙げることができる。金属活物質としては、例えばIn、Al、SiおよびSn等を挙げることができる。一方、カーボン活物質としては、例えばメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。なお、負極活物質層に用いられる固体電解質材料および導電化材については、上述した正極活物質層における場合と同様である。また、負極活物質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内である。
4.その他の構成
本発明の全固体電池は、上述した正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層を少なくとも有するものである。さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および負極活物質の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。また、正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、全固体電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また、本発明に用いられる電池ケースには、一般的な全固体電池の電池ケースを用いることができる。電池ケースとしては、例えばSUS製電池ケース等を挙げることができる。また、本発明の全固体電池は、発電要素を絶縁リングの内部に形成したものであっても良い。
5.全固体電池
本発明の全固体電池における伝導イオンの種類は特に限定されるものではない。本発明の全固体電池の種類としては、全固体リチウム電池、全固体ナトリウム電池、全固体マグネシウム電池および全固体カルシウム電池等を挙げることができ、中でも全固体リチウム電池が好ましい。また、本発明の全固体電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。本発明の全固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。
また、本発明の全固体電池の製造方法は、上述した全固体電池を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的な全固体電池の製造方法と同様の方法を用いることができる。全固体電池の製造方法の一例としては、正極活物質層を構成する材料、固体電解質層を構成する材料、および負極活物質層を構成する材料を順次プレスすることにより、発電要素を作製し、この発電要素を電池ケースの内部に収納し、電池ケースをかしめる方法等を挙げることができる。
C.正極活物質材料の製造方法
次に、本発明の正極活物質材料の製造方法について説明する。本発明の正極活物質材料の製造方法は、酸化物系正極活物質と、上記酸化物系正極活物質の表面を被覆し、酸化物からなる反応抑制部と、を有し、エッチングによる深さ分析を伴うXPS測定によって、SiO換算のエッチング量E(nm)に対応する、上記酸化物系正極活物質に含まれる金属元素(伝導イオンとなる金属元素を除く)の割合M(モル%)と、上記反応抑制部の酸化物に含まれる酸素元素以外の元素(上記酸化物が伝導イオンとなる金属元素を有する場合、その金属元素を除く)の割合をM(モル%)とを測定し、さらに、X軸をE(nm)、Y軸をM/(M+M)とした曲線を得た場合に、上記曲線の急落部における直線の傾きAの値が、−0.020以下である正極活物質材料の製造方法であって、上記酸化物の金属源を、上記酸化物の換算量で0.4mol/kg以下となる濃度で含有する原料組成物を調製する調製工程と、上記原料組成物を、酸化物系正極活物質の表面上に塗布する塗布工程と、上記原料組成物が塗布された酸化物系正極活物質を熱処理することで、上記反応抑制部を形成する熱処理工程と、を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、金属源の濃度の低い原料組成物を用いることにより、厚さの均一性の高い正極活物質材料を得ることができる。これにより、高温時における酸化物系正極活物質と固体電解質材料との界面抵抗の増加を抑制可能な正極活物質材料を得ることができる。なお、本発明により得られる正極活物質材料については、上記「A.正極活物質材料」に記載した内容と同様である。
以下、本発明の正極活物質材料の製造方法について、工程ごとに説明する。
1.調製工程
本発明における調製工程は、酸化物の金属源を、酸化物の換算量で0.4mol/kg以下となる濃度で含有する原料組成物を調製する工程である。さらに、この濃度は低いことが好ましく、具体的には0.05mol/kg〜0.3mol/kgであることが好ましく、0.05mol/kg〜0.2mol/kgであることがより好ましい。濃度が低くすぎると、所望の厚さや被覆率を有する反応抑制部の形成が困難になる可能性があるからである。
また、本発明における原料組成物は、通常、酸化物の原料と、溶媒とを含有する。酸化物の原料は、目的とする酸化物の種類に応じて適宜選択することが好ましい。上記「A.正極活物質材料」に記載したように、目的とする酸化物が、遷移金属元素と酸素元素とを有するものである場合、その遷移金属元素を含有する金属源が用いられる。一方、目的とする酸化物が、伝導イオンとなる金属元素と、遷移金属元素と、酸素元素とを有するものである場合、伝導イオンとなる金属元素を含有する金属源および遷移金属元素を含有する金属源の両方が用いられる。また、このように複数の金属源を用いる場合、複数の金属源の組成比は、目的とする酸化物における化学量論比と一致させることが好ましい。
また、本発明においては、原料組成物が、Li源およびNb源を含有することが好ましい。高温時における界面抵抗の増加を効果的に抑制できるLiNbOを得ることができるからである。Li源としては、例えばリチウムエトキシド等を挙げることができる。また、Nb源としては、例えば、ペンタエトキシニオブ等を挙げることができる。
原料組成物に用いられる溶媒としては、上述した金属源を溶解できるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、エタノール等を挙げることができる。
2.塗布工程
本発明における塗布工程は、原料組成物を、酸化物系正極活物質の表面上に塗布する工程である。原料組成物の塗布方法は、原料組成物を均一に塗布できる方法であることが好ましく、具体的には、転動流動層を用いたコート装置等を挙げることができる。また、原料組成物の塗布は、所望の厚さ、被覆率を有する反応抑制部が得られる程度に塗布することが好ましい。高温時における酸化物系正極活物質と固体電解質材料との界面抵抗の増加をさらに抑制することができる正極活物質材料を得ることができるからである。なお、反応抑制部の厚さ、被覆率については、「A.正極活物質材料」に記載した内容と同様である。
3.熱処理工程
本発明における熱処理工程は、原料組成物が塗布された酸化物系正極活物質を熱処理することで、反応抑制部を形成する工程である。酸化物からなる反応抑制部を形成するため、通常、酸素を含む雰囲気下で熱処理を行う。熱処理の温度および時間は、反応抑制部を構成する酸化物の種類に応じて適宜選択することが好ましい。熱処理の温度としては、例えば300℃〜500℃の範囲内である。また、熱処理の時間としては、例えば0.5時間〜10時間の範囲内である。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
金属源としてリチウムエトキシドおよびペンタエトキシニオブを用意し、これらの金属源を、エタノール中で、LiNbOにおける化学量論比と一致させるように混合した。さらに、この溶液にエタノールを追加し、金属源をLiNbO換算で0.157mol/kgとなる濃度で含有する原料組成物を得た。
次に、原料組成物を、転動流動層を用いたコート装置にて、LiCoO(酸化物系正極活物質)の表面上に塗布した。この際、原料組成物の使用量を、0.0525mg−LiNbO/(g−LiCoO)となるように調整した。その後、大気中、350℃の条件で熱処理を行い、正極活物質材料を得た。得られた正極活物質材料は、被覆率90%、平均厚さ9.5nmの反応抑制部を有するものであった。
[比較例1]
金属源としてリチウムエトキシドおよびペンタエトキシニオブを用意し、これらの金属源を、エタノール中で、LiNbOにおける化学量論比と一致させるように混合した。さらに、この溶液にエタノールを追加し、金属源をLiNbO換算で0.47mol/kgとなる濃度で含有する原料組成物を得た。
次に、原料組成物を、転動流動層を用いたコート装置にて、LiCoO(酸化物系正極活物質)の表面上に塗布した。この際、原料組成物の使用量を、0.0263mg−LiNbO/(g−LiCoO)となるように調整した。その後、大気中、350℃の条件で熱処理を行い、正極活物質材料を得た。得られた正極活物質材料は、被覆率44%、平均厚さ10nmの反応抑制部を有するものであった。
[比較例2]
比較例1と同じ原料組成物を、転動流動層を用いたコート装置にて、LiCoO(酸化物系正極活物質)の表面上に塗布した。この際、原料組成物の使用量を、0.105mg−LiNbO/(g−LiCoO)となるように調整した。その後、大気中、350℃の条件で熱処理を行い、正極活物質材料を得た。得られた正極活物質材料は、被覆率90%、平均厚さ21nmの反応抑制部を有するものであった。
[評価]
実施例1、比較例1、2で得られた正極活物質材料を用いて、反応抑制部の厚さの均一性、および、全固体電池の界面抵抗の経時変化を評価した。
(反応抑制部の厚さの均一性)
エッチングによる深さ分析を伴うXPS測定により、正極活物質材料における反応抑制部の厚さの均一性を評価した。エッチング条件は、エッチングガスとしてアルゴンを用い、エッチングレート0.78nm/min(SiO換算)とした。その結果を図6に示す。図6に示されるように、実施例1の曲線は、比較例1および比較例2の曲線に比べて、初期のNb/(Co+Nb)の減少は急激であった。また、実施例1の傾きAは、−0.045であり、比較例1、2の傾きAは、ともに−0.017であった。傾きAの結果から、実施例1の正極活物質材料が、厚さの均一性の高い反応抑制部を有していることが示唆された。
(全固体電池の界面抵抗の経時変化)
実施例1、比較例1、2で得られた正極活物質材料を用いて、全固体リチウム二次電池を作製した。まず、プレス機を用いて、上述した図5に示すような発電要素20を作製した。ここで、正極活物質層11を構成する材料として、上記の正極活物質材料とLi11とを重量比7:3で混合した合剤を用いた。なお、Li11は、架橋硫黄を有する硫化物系固体電解質材料であり、特開2005−228570号公報に記載された方法と同様の方法で得たものである。さらに、負極活物質層12を構成する材料としてIn箔を用い、固体電解質層13を構成する材料としてLi11を用いた。最後に、この発電要素を用いて、全固体リチウム二次電池を得た。
次に、全固体リチウム二次電池の充電を行った。充電は、3.34Vでの定電圧充電を12時間行った。充電後、インピーダンス測定により、正極活物質層および固体電解質層の界面抵抗(Ω/cm)を求めた。インピーダンス測定の条件は、電圧振幅10mV,測定周波数1MHz〜0.1Hz、25℃とした。その後、25℃で1200時間保存し、1200時間経過後は60℃で保存した。この間に、定期的に、正極活物質層および固体電解質層の界面抵抗(Ω/cm)を求めた。その結果を、図7に示す。
図7に示されるように、実施例1の全固体リチウム二次電池は、比較例1、2の全固体リチウム二次電池に比べて、全体的に界面抵抗の値が低く、特に高温(60℃保存)において、界面抵抗の増加が抑制されていることが確認された。
1 … 酸化物系正極活物質
2 … 反応抑制部
10 … 正極活物質材料
11 … 正極活物質層
12 … 負極活物質層
13 … 固体電解質層
20 … 全固体電池の発電要素

Claims (5)

  1. 酸化物系正極活物質と、前記酸化物系正極活物質の表面を被覆し、酸化物からなる反応抑制部と、を有する正極活物質材料であって、
    エッチングによる深さ分析を伴うXPS測定によって、SiO換算のエッチング量E(nm)に対応する、前記酸化物系正極活物質に含まれる金属元素(伝導イオンとなる金属元素を除く)の割合M(モル%)と、前記反応抑制部の酸化物に含まれる酸素元素以外の元素(前記酸化物が伝導イオンとなる金属元素を有する場合、その金属元素を除く)の割合M (モル%)とを測定し、さらに、X軸をE(nm)、Y軸をM/(M+M)とした曲線を得た場合に、前記曲線の急落部における直線の傾きAの値が、−0.045以下であり、
    前記反応抑制部の酸化物が、LiNbOであることを特徴とする正極活物質材料。
  2. 前記酸化物系正極活物質が、LiCoOであることを特徴とする請求項1に記載の正極活物質材料。
  3. 請求項1または請求項2に記載の正極活物質材料を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された固体電解質層と、を有することを特徴とする全固体電池。
  4. 前記正極活物質層および前記固体電解質層の少なくとも一方が、硫化物系固体電解質材料を含有することを特徴とする請求項3に記載の全固体電池。
  5. 酸化物系正極活物質と、前記酸化物系正極活物質の表面を被覆し、酸化物からなる反応抑制部と、を有し、
    エッチングによる深さ分析を伴うXPS測定によって、SiO換算のエッチング量E(nm)に対応する、前記酸化物系正極活物質に含まれる金属元素(伝導イオンとなる金属元素を除く)の割合M(モル%)と、前記反応抑制部の酸化物に含まれる酸素元素以外の元素(前記酸化物が伝導イオンとなる金属元素を有する場合、その金属元素を除く)の割合M (モル%)とを測定し、さらに、X軸をE(nm)、Y軸をM/(M+M)とした曲線を得た場合に、前記曲線の急落部における直線の傾きAの値が、−0.045以下である正極活物質材料の製造方法であって、
    前記酸化物の金属源を、前記酸化物の換算量で0.4mol/kg以下となる濃度で含有する原料組成物を調製する調製工程と、
    前記原料組成物を、酸化物系正極活物質の表面上に塗布する塗布工程と、
    前記原料組成物が塗布された酸化物系正極活物質を熱処理することで、前記反応抑制部を形成する熱処理工程と、を有し、
    前記反応抑制部の酸化物が、LiNbOであることを特徴とする正極活物質材料の製造方法。
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