図1は、本発明の一実施形態を採用した画像形成装置を示している。同図において画像形成装置500は、光走査装置100、4個の感光体ドラム30A,30B,30C,30D、中間転写ベルト40、給紙トレイ60、給紙ローラ54、レジストローラ対52,56、定着手段50、排紙ローラ対58、図示しない制御手段、装置本体501等を有している。装置本体501の上面には、印刷後の用紙が排出される排紙トレイ501a設けられており、排紙トレイ501aの下方に光走査装置100が配設されている。光走査装置100は、図示しない画像読取装置あるいは外部装置より送られた画像情報に基づき、感光体ドラム30Aに対して黒色画像成分のレーザ光を、感光体ドラム30Bに対してシアン画像成分のレーザ光を、感光体ドラム30Cに対してマゼンタ画像成分のレーザ光を、感光体ドラム30Dに対してイエロ画像成分のレーザ光をそれぞれ走査する。
各感光体ドラム30A,30B,30C,30Dは光走査装置100の下方に並設されており、それぞれ図示しない駆動手段により図1において時計回り方向に回転駆動される。感光体ドラム30Aの周囲には、感光体ドラム30Aの表面を所定の電圧で帯電させる帯電手段32A、黒色成分のトナーが充填されたカートリッジ及び現像ローラ等を有する現像手段33A、感光体ドラム30Aの表面に接するクリーニングブレードを有し感光体ドラム30Aの表面をクリーニングするクリーニング手段31Aが配置されている。他の感光体ドラム30B,30C,30Dの周囲にも現像手段に貯容されたトナーの色を除いて同様の構成が配置されており、現像手段33Bにはシアン成分のトナーが、現像手段33Cにはマゼンタ成分のトナーが、現像手段33Dにはイエロ成分のトナーがそれぞれ貯容されている。
無端ベルト状の中間転写ベルト40は従動ローラ40a,40c及び駆動ローラ40bに掛け渡されており、その上面が各感光体ドラム30A,30B,30C,30Dと接するように配置されていて、駆動ローラ40bが回転駆動することにより図1の矢印方向に走行駆動される。中間転写ベルト40を介して従動ローラ40cと対向する位置には、帯電手段32A,32B,32C,32Dとは逆極性の電圧を中間転写ベルト40に対して印加する転写手段としての転写チャージャ48が、中間転写ベルト40と所定の距離をおいて近接配置されている。
中間転写ベルト40の下方には複数枚の用紙61を貯容する給紙トレイ60が配設されており、給紙トレイの図1において右側上方には用紙61を1枚ずつ分離給送する給紙ローラ54が配設されている。給紙ローラ54により給紙トレイ60内より給送された用紙61は、レジストローラ対56を介して転写ベルト40と転写チャージャ48との隙間に向けて給送される。
転写ベルト40と転写チャージャ48との近接部の用紙搬送方向下流側には、加圧ローラと加熱ローラとのローラ対からなる定着手段50が配設されている。定着手段50は熱と圧力とにより用紙61上に転写されたトナー像を定着させ、定着後の用紙61はレジストローラ対52を介して一対のローラ対からなる排紙ローラ対58へと送られ、排紙トレイ501a上に順次排出される。
光走査装置100は、図2及び図3に示すように、偏向手段としてのポリゴンミラー104A,104B、ポリゴンミラー104Aのベルト走行方向下流側に配設された第1走査レンズ105A、反射ミラー106A、反射ミラー106Aの下方に配設された反射ミラー108A、反射ミラー106A,108A間に配設された第2走査レンズ107A、反射ミラー109A、ポリゴンミラー104Aのベルト走行方向上流側に配設された第1走査レンズ305A、反射ミラー306A、反射ミラー306Aの下方に配設された反射ミラー308A、反射ミラー306A,308A間に配設された第2走査レンズ307A、反射ミラー309A、ポリゴンミラー104Bのベルト走行方向下流側に配設された第1走査レンズ105B、反射ミラー106B、反射ミラー106Bの下方に配設された反射ミラー108B、反射ミラー106B,108B間に配設された第2走査レンズ107B、反射ミラー109B、ポリゴンミラー10Bのベルト走行方向上流側に配設された第1走査レンズ305B、反射ミラー306B、反射ミラー306Bの下方に配設された反射ミラー308B、反射ミラー306B,308B間に配設された第2走査レンズ307B、反射ミラー309Bを有する走査光学系と、各感光体ドラム30A,30Bを走査するレーザ光をポリゴンミラー104Aへ入射させる光源光学系200A,200Bと、各感光体ドラム30C,30Dを走査するレーザ光をポリゴンミラー104Bへ入射させる光源光学系200C,200Dとを有している。
光源光学系200A〜200Dはポリゴンミラー104A,104Bの偏向面に対して所定の角度からレーザ光を入射させる光学系であり、後述するマルチビーム光源装置70、マルチビーム光源装置70から射出されるレーザ光の経路に沿って順次配列された図示しないシリンダレンズ等を有している。シリンダレンズは、入射したレーザ光をそれぞれポリゴンミラー104A,104B近傍で副走査方向に結像させる。
ポリゴンミラー104A,104Bは、側面にレーザ光の偏向面が形成された四角柱状部材であり、図示しない駆動手段により図2に矢印で示す方向に所定の角速度で回転駆動される。光学系200A〜200Dからポリゴンミラー104A,104Bの偏向面にそれぞれ集光されたレーザ光は、偏向面でそれぞれ偏向されることにより感光体ドラム上に入射する。
第1走査レンズ105A,105B,305A,305Bはレーザ光の入射角に比例した像高を有し、ポリゴンミラー104A,104Bにより一定の角速度で偏向されるレーザ光の像面を感光体ドラムの軸方向である主走査方向に対して等速移動させる。反射ミラー106A,106B,306A,306Bは、第1走査レンズ105A,105B,305A,305Bを経由したレーザ光を折り返して第2走査レンズ107A,107B,307A,307Bにそれぞれ入射させる。第2走査レンズ107A,107B,307A,307Bは、反射ミラー106A,106B,306A,306Bによりそれぞれ折り返されたレーザ光を反射ミラー108A,108B,308A,308B,109A,109B,309A,309Bを介して各感光体ドラム30A,30B,30C,30Dの表面にそれぞれ結像する。
第2走査レンズ107A,107Bのレーザ光入射側端部近傍にはそれぞれ図示しない光検出センサが配設されており、第2走査レンズ307A,307Bのレーザ光入射側端部近傍にはそれぞれ図示しない光検出センサが配設されている。第2走査レンズ107A,107Bの前記端部とは逆側の端部近傍にはそれぞれ図示しない光検出センサが配設され、第2走査レンズ307A,307Bの前記端部とは逆側の端部近傍にはそれぞれ図示しない光検出センサが配設されている。各光検出センサは、たとえばレーザ光が入射している間はオン信号を、それ以外はオフ信号をそれぞれ出力する。
上述した光走査装置100を備えた画像形成装置500の動作を以下に説明する。
外部装置等より画像情報が送られると、光源光学系200Aのマルチビーム光源装置70より射出されたレーザ光はシリンダレンズによってポリゴンミラー104Aの偏向面に集光される。ポリゴンミラー104Aにて偏向されたレーザ光は、第1走査レンズ105Aに入射する。第1走査レンズ105に入射したレーザ光は、反射ミラー106Aにより反射されて第2走査レンズ107Aに入射した後、反射ミラー108A,109Aを介して感光体ドラム30Aの表面に集光される。
光源光学系200Bのマルチビーム光源装置70より射出されたレーザ光はシリンダレンズによってポリゴンミラー104Aの偏向面に集光され、ポリゴンミラー104Aにて偏向されたレーザ光は第1走査レンズ305Aに入射する。第1走査レンズ305Aに入射したレーザ光は、反射ミラー306Aにより反射されて第2走査レンズ307Aに入射した後、反射ミラー308A,309Aを介して感光体ドラム30Bの表面に集光される。
光源光学系200Cのマルチビーム光源装置70より射出されたレーザ光はシリンダレンズによってポリゴンミラー104Bの偏向面に集光され、ポリゴンミラー104Bにて偏向されたレーザ光は第1走査レンズ105Bに入射する。第1走査レンズ105Bに入射したレーザ光は、反射ミラー106Bにより反射されて第2走査レンズ107Bに入射した後、反射ミラー108B,109Bを介して感光体ドラム30Cの表面に集光される。
光源光学系200Dのマルチビーム光源装置70より射出されたレーザ光はシリンダレンズによってポリゴンミラー104Bの偏向面に集光され、ポリゴンミラー104Bにて偏向されたレーザ光は第1走査レンズ305Bに入射する。第1走査レンズ305Bに入射したレーザ光は、反射ミラー306Bにより反射されて第2走査レンズ307Bに入射した後、反射ミラー308B,309Bを介して感光体ドラム30Dの表面に集光される。このとき、マルチビーム光源装置70からのレーザ光は予め設定された強度に調整された状態で各感光体ドラム30A〜30Dの書込領域に入射する。
各感光体ドラム30A,30B,30C,30Dのそれぞれの表面に設けられた感光層は、帯電手段32A,32B,32C,32Dによって所定の電圧で帯電されることにより電荷が一定の密度で分布している。そして、各感光体ドラム30A,30B,30C,30Dが上述のようにそれぞれ走査されると、レーザ光が集光した部位の感光層が導電性を有するようになり、その部分では電位がほぼゼロとなる。これにより、各感光体ドラム30A,30B,30C,30Dが図1に矢印で示す方向に回転しつつその表面がレーザ光によって走査されると、各感光体ドラム30A,30B,30C,30Dの表面には静電潜像がそれぞれ形成される。
各感光体ドラム30A,30B,30C,30Dの表面にそれぞれ静電潜像が形成されると、各現像手段33A,33B,33C,33Dが有する現像ローラにより各感光体ドラム30A,30B,30C,30Dの表面にそれぞれトナーが供給される。供給されたトナーは各感光体ドラム30A,30B,30C,30D上の静電潜像にそれぞれ静電的に付着し、各静電潜像が各色トナーによって可視像化される。可視像化された各トナー像は中間転写ベルト40の表面に重畳転写され、中間転写ベルト40上にはフルカラートナー像が形成される。形成されたフルカラートナー像は、転写チャージャ48の作動により給紙トレイ60より給送された用紙61の表面に一括転写され、画像が転写された用紙61は定着手段50に送られて転写された画像を定着された後、排紙ローラ対58により排紙トレイ501a上に排出される。
次に、図4、図5を用いて本発明のマルチビーム光源装置70について説明する。図4はマルチビーム光源装置70の外観を示す斜視図であり、図5は図4から保護カバー外した状態をそれぞれ示している。
マルチビーム光源装置70は、複数の発光源(VCSEL)を該発光源から発光される光ビームの射出方向と直交する面内に2次元的(モノリシック)に配列した面発光光源10a(図7参照)と、面発光光源10aを収容するパッケージ10b(図7参照)とから構成される光源手段10(図6参照)を実装した回路基板75と、光源手段10からの光ビームを平行光束あるいは所定の収束または発散状態の光束とする複数の光学素子であるカップリングレンズ11、温度補正レンズ12、アパーチャミラー13を保持する光学素子保持手段としての光学素子ホルダ72と、回路基板75と光学素子ホルダ72との間に配設され、回路基板75のマルチビーム光源装置70が実装された面を覆うように回路基板75と連結することによりパッケージ10bと当接してマルチビーム光源装置70における面発光光源10aの位置を決定して固定し、光学素子ホルダ72と連結することにより面発光光源10aに対する複数の光学素子11,12,13の位置を決定する中間ホルダ71とを有している。
カップリングレンズ11は、光学素子ホルダ72の光学素子保持部72aに設けられたカップリングレンズ受け部72a1(図11参照)に取り付けられている。カップリングレンズ11は、たとえば屈折率が1.5程度で図5の手前側に焦点を有する単玉レンズであり、光源手段10から入射する光ビーム(レーザ光)の発散角を変更することによりこの光ビームをほぼ平行光に整える、あるいは初手の収束または発散状態の光束とする働きをする。
透明樹脂を素材とした長方形板状の温度補正レンズ12は、光学素子保持部72aに設けられた温度補正レンズ受け部72a2(図11参照)に取り付けられている。温度補正レンズ12は、その長辺がカップリングレンズ受け部72a1の幅よりも長く形成されており、これにより図示しない調整治具によるクランプが容易化されると共に調整が容易に行えるように構成されている。温度補正レンズ12の光学特性は、マルチビーム光源装置70の温度の変動に伴いカップリングレンズ11と光源手段10との距離が微小変動すること等によるマルチビーム光源装置70の光学特性の変動を補正すべく変化するように構成されている。
アパーチャミラー13は、中央に矩形の開口が形成された板状部材であり、図5において手前側の面には光ビームを反射する反射面が形成されている。アパーチャミラー13は、開口の中心がカップリングレンズ11の焦点位置またはその近傍に位置すると共に、反射面が図5において垂直の面に対して45度傾いた状態で光学素子保持部72aのアパーチャミラー受け部72a3(図11参照)に取り付けられている。
上述した複数の光学素子11,12,13の構成により、カップリングレンズ11及び温度補正レンズ12を通過した光源手段10からの光ビームのうち、その一部の光束がアパーチャミラー13の開口を通過し、残りの光束がアパーチャミラー13の反射面で後述するフロントモニタ光学系に入るように反射されることで、書き込み用光束(操作用レーザ光)とフロントモニタ用光束(フロントモニタ用レーザ光)とに分岐される。
光学素子ホルダ72は、図5(B)に示すようにフロントモニタ光学系として折り返しミラー14、第2アパーチャ15(図13参照)、集光レンズ16を保持している。折り返しミラー14は、図5において手前側の面に光ビームを反射する反射面が形成された板状の部材であり、この反射面が図5において垂直の面に対して51.1度傾いた状態で光学素子保持部72aの折り返しミラー受け部72a4(図12参照)に取り付けられている。折り返しミラー14によりアパーチャミラー13で分割されたフロントモニタ用レーザ光は回路基板75側に折り返される。
第2アパーチャ15は、折り返しミラー14と集光レンズ16との間に配設されたフロントモニタ用レーザ光の絞り部材である。集光レンズ16は平凸形の単玉レンズであり、光学素子保持部72aの集光レンズ受け部72a6(図12参照)に取り付けられている。第2アパーチャ15と集光レンズ16とにより、折り返しミラー14で回路基板75側に折り返されたフロントモニタ用レーザ光の光束を回路基板75に実装された光検出器17上に所定のビーム径となるように絞り込む。
マルチビーム光源装置70では、フロントモニタ用レーザ光が光検出器17へ入射したときに出力される信号が常時モニタされ、光源手段10から射出されるレーザ光の光量制御が行われる。具体的には、光走査装置100において、レーザ光がポリゴンミラー104の偏向面で偏向された後、各感光体ドラム30A,30B,30C,30Dの書き込み領域へと至るまでの間に、フロントモニタ用レーザ光が光検出器17に検出される。マルチビーム光源装置70では、フロントモニタ用レーザ光を受光することで光検出器17から出力される光電変換信号に基づいて光源手段10から射出されるレーザ光の強度を検出し、光源手段10から射出されるレーザ光の強度が予め設定された強度となるように、面発光光源10aの各VCSELへ供給する注入電力の決定が行われる。これにより、レーザ光は予め設定された強度で各感光体ドラム30A,30B,30C,30Dの書き込み領域にそれぞれ入射するように調整される。
回路基板75は、図6に示すようにマルチビーム光源装置70の正面側の面に光源手段10及び光検出器17を有しており、反対側の面には光源手段10を駆動する駆動回路等を有している。回路基板75の両端部には板金加工により形成され2つの穴を有する補強部材75aがそれぞれ配設されており、各補強部材75aの各穴には所定の孔径を有する段付形状の樹脂製カラーである中間部材75bが嵌装されている。中間部材75bの各穴の位置に後述する中間ホルダ71の固定穴71c(図8参照)を合わせ、中間ホルダ71が各補強部材75aによって挟持された状態で締結ねじによって固着することにより、回路基板75に対して中間ホルダ71が所定位置に連結される。
回路基板75はエポキシガラス等の樹脂により、補強部材75aは鉄により、中間ホルダ71はアルミニウムによりそれぞれ構成されている。このようにそれぞれ線膨張係数の異なる部材をねじにより固定すると、環境温度の変化により膨張及び収縮の量が異なり、各部材間に反り等の変形が生じてしまう。上述した各部材の線膨張係数はアルミニウム>鉄>エポキシガラスの関係にあり、中間部材75bを用いずにねじ固定した場合にはそれぞれの線膨張の差によって使用上の環境温度範囲で十数μmの反りが回路基板75に生じることが実験により判っている。これは、光源手段10における発光点の位置変動となり、ビーム径の劣化や走査ピッチの変動となって大きな技術課題となっている。
そこで本実施形態ではこの対策として、中間部材75bに形成される穴としてねじとの間にある程度の嵌合ガタを持たせている。これにより光軸方向に位置変化することがなく、回路基板75及び補強部材75aあるいは中間ホルダ71における主走査方向及び副走査方向の膨張収縮を阻害することなく、各部材間で滑りを発生させて光源手段10におけるVCSELの発光点変動を極小に抑制している。また、マルチビーム光源装置70の光走査装置100への組み付け及びメンテナンスにおいて、回路基板75上のコネクタの抜き差しにより回路基板75に対して負荷がかかることがあるが、本実施形態では回路基板75と中間ホルダ71とを少なくとも4箇所以上でねじ止めしているため、容易には回路基板75の位置ずれは発生せず、生産性においても大きな効果がある。さらに回路基板75には、光源手段10及び光検出器17を囲むように、中間ホルダ71に設けられた筒状部71f(図8参照)を通すための逃げ部75cが3箇所形成されている。
図7(A)に示すように、光源手段10は正方形板状のパッケージ10bと、パッケージ10bに収容される発光素子である面発光光源10aと、面発光光源10aの配線である図示しないリード端子とを有する面発光型のレーザアレイである。
パッケージ10bは、たとえばセラミックを素材とする断面U字形状の箱形ケースにこのケースと同等の大きさのガラス板が貼付されることにより形成されており、箱形ケース内部には不活性ガスが充填されている。パッケージ10bの図7において手前側の面が光軸方向基準面10x、光軸方向基準面10xと直交する面が主走査方向基準面10y、図7において奥側の面が副走査方向基準面10zとなっている。
面発光光源10aは、複数の発光源(VCSEL)がこの発光源から発光される光ビームの射出方向と直交する面内に2次元的に配列された発光面を有する素子である。面発光光源10aは、発光面がパッケージ10bの光軸方向基準面10xと平行かつパッケージ10bの内部にリード端子が配線された状態でパッケージ10b内に収納されている。
図7(B)に示すように、面発光光源10aの発光面にはマトリクス状に等間隔dで配列されたn列×m行、本実施形態では8列×4行で2次元的に配列された発散光を射出する32個の発光源が設けられている。本実施形態では、光軸中心を回転軸としてマルチビーム光源装置70全体を傾け量(回転角度)γだけ傾けることにより、各感光体ドラム30A,30B,30C,30D上の副走査方向におけるビームスポット間ピッチpが記録密度に相当する走査ラインピットに合うように調整され、各感光体ドラム30A,30B,30C,30D毎に32ラインが同時に走査されるように構成されている。
ここで、光学系全体の副走査倍率βsを用いると、傾け量γは下式で表される。
sinγ=(cosγ)/n=p/d・βs
このような発光源の傾け量γに関しては、当然面発光型半導体レーザアレイの加工プロセスの段階で予め発光点の配列方向が所定角度だけ傾くようにレイアウトしてもよい。ただし、狙いの傾け量が決定してもVCSELの加工精度、ホルダ等の機械精度、走査光学系の公差等が積み上がるため、各チャンネル間のピッチを高精度に設定するためには、マルチビーム光源装置70を光走査装置100に装着するときに傾け量γとなるように調整することが必須となる。本実施形態では、これを調整する後述する調整機構部をマルチビーム光源装置70に設けている。
中間ホルダ71は、図8に示すようにアルミニウム等からなる金属製の矩形ブロックであり、開口部71a,71bを有している。開口部71aは光源手段10から射出される光ビームが通過し、開口部71bはフロントモニタ光学系に導かれて戻る光ビームが通過する。中間ホルダ71の図8において手前側の面には、開口部71aの縁部分にパッケージ10bが嵌め込まれて収納される大きさの凸部である額縁部分71gが設けられており、額縁部分71gの内側には光軸方向突き当て部71x、主走査方向突き当て部71y、副走査方向突き当て部71zが形成されている。また中間ホルダ71の図8において手前側の面には開口部71aを囲むように3個の筒状部71fが立設されており、両側面にはそれぞれ補強部材75a、中間部材75bを介して回路基板75と連結される2個の固定穴71cが穿設されている。
次に、中間ホルダ71と回路基板75との連結手順を説明する。先ず、パッケージ10bが額縁部分71gに嵌合するように回路基板75に対して中間ホルダ71を配置する。次に、パッケージ10bの光軸方向基準面10x、主走査方向基準面10y、副走査方向基準面10zが額縁部分71gの光軸方向突き当て部71x、主走査方向突き当て部71y、副走査方向突き当て部71zにそれぞれ突き当たって当接するように配置する。これにより中間ホルダ71と面発光光源10aとの位置関係、すなわちマルチビーム光源装置70における面発光光源10aの位置が位置決めされる。このとき、固定穴71cは中間部材75bの穴と合致する位置を占めており、中間部材75bを介して中間ホルダ71と補強部材75aとをねじ79aによって固定すると、位置決めされた状態で中間ホルダ71と回路基板75とが連結される(図5参照)。
上述の構成において、回路基板75の光源手段10が設けられた面とは反対側の面から回路基板75を介してパッケージ10bを中間ホルダ71側に押圧する押圧部材78を設けるとよい。パッケージ10bが額縁部分71gに嵌合されるように回路基板75に対して中間ホルダ71を配置すると、3つの筒状部71fがそれぞれ逃げ部75cを通って回路基板75の光源手段10が設けられた面とは反対側の面に突出する。押圧部材78は、図9に示すように3個のねじ79cが筒状部71fにそれぞれ螺合することにより、回路基板75の光源手段10配設位置の裏面側に位置すべく中間ホルダ71に固定されている。
押圧部材78は、弾性を有する板状の部材を板金加工することにより形成され、弾性力を作用させる押圧部78aを有している。押圧部材78が図9に示すように中間ホルダ71に固定されると、回路基板75は押圧部78aにより中間ホルダ71に近接する方向に押圧され、これに伴いパッケージ10bの光軸方向基準面10x、主走査方向基準面10y、副走査方向基準面10zは額縁部分71gの光軸方向突き当て部71x、主走査方向突き当て部71y、副走査方向突き当て部71zに圧接し、面発光光源10aが位置決めされた状態で回路基板75に負荷をかけることなく保持される。これにより、回路基板75における部品不良の発生を抑制でき画像品質の信頼性を向上することができる。なお、中間ホルダ71と回路基板75とが連結されると、開口部71bは光検出器17に面するように構成される。
中間ホルダ71の額縁部分71gが形成された面とは反対側の面には、図10に示すように中間ホルダ71と光学素子ホルダ72との位置決めを行うための2本の基準ピン71dが立設されている。また、同じ面には各開口部71a,71bを囲むように光学素子ホルダを連結するための4個の固定穴71eが穿設されている。
図11及び図12に示すように、光学素子ホルダ72は板状の本体プレート72p及び本体プレート72pの一面に立設され複数の光学素子を保持する光学素子保持部72aを有しており、本体プレート72pは光学素子保持部72aが設けられる本体部72p1及び本体部72p1から左右方向にそれぞれ延びるアーム部72p2を有している。
本体部72p1には、光源手段10からの光ビームが通過する開口部72b、フロントモニタ光学系に導かれ戻ってきた光ビームが通過する開口部72c、中間ホルダ71との位置決めを行う主基準穴72d1及び副基準穴72d2、中間ホルダ71と連結するための貫通穴72eが設けられている。主基準穴72d1は一方の基準ピン71dが遊びなく嵌入される径を有しており、他方の基準ピン71dが挿入される副基準穴72d2は図11において上下方向に遊びがなく基準ピン71dを挿入し易いように図11において左右方向に遊びを有する長穴形状に形成されている。また本体部72p1の光学素子保持部72aが立設された面には、開口部72dの縁を囲み外周が円筒形状に形成された環状凸部72gが設けられている。
各アーム部72p2のそれぞれの両端部には、マルチビーム光源装置70を光走査装置100に設置するための光源装置調整部72fが配設されている。光源装置調整部72fは、光学ハウジングへの装着時に引張ばねの一端が係止されるフック部72f1、6角ナットであるナット部材72nを格納する角溝72f2、各溝72f2内のナット部材72nに上部から調整ねじを差し込むための逃げ穴72f3を有している。後述する調整機構部において、フック部72f1が力点部を、角溝72f2及び逃げ穴72f3及びナット部材72nが角度調整部をそれぞれ構成する。
光学素子保持部72aの図11において手前側の側面には、カップリングレンズ11の側面外周形状に対応した凹曲面であるカップリングレンズ受け部72a1、垂直平面であって温度補正レンズ12の一側面が当接する温度補正レンズ受け部72a2、アパーチャミラー13が所定角度(45度)傾斜するようにアパーチャミラー13の短手方向両端部を支持する2つの支持部材であって各支持部材間をレーザ光が通過可能となるように中空に形成されたアパーチャミラー受け部72a3が、本体プレート72p側から遠ざかる方向にこの順で配設されている。
光学素子保持部72aの図12において手前側の側面には、折り返しミラー14が所定角度(51.1度)傾斜するように折り返しミラー14の短手方向両端部を支持する2つの支持部材であって各支持部材間をレーザ光が通過可能となるように中空に形成された折り返しミラー受け部72a4、折り返しミラー受け部72a4と集光レンズ受け部72a6との間に設けられ第2アパーチャ15が当接して位置決めされる図示しない第2アパーチャ受け部が設けられている。また、光学素子保持部72aの図12おいて手前側の根本に位置する本体部72p1には、集光レンズ16の平面光学面の3箇所に当接して集光レンズ16を支持する3つの支持部であってそれぞれの断面形状が図12において手前側に開口した凸形状を呈する集光レンズ受け部72a6が設けられている。これ等の支持部で囲まれる空間は光ビームが通過可能となるように中空に構成されていて開口部72cに連通している。集光レンズ受け部72a6の3つの支持部における、集光レンズ16が当接する部分である凹形接着面は平面に形成されており、その大きさは集光レンズ16の外形よりも大きく形成されている。光学素子保持部72aの先端の上下2箇所には嵌合溝72a5が、光学素子保持部72aのカップリングレンズ受け部72a1と温度補正レンズ受け部72a2との間の上下2箇所には嵌合溝72a7がそれぞれ形成されている。
光学素子保持部72aに対する各光学素子の取り付けについて説明する。先ず、光学素子ホルダ72を回転させてカップリングレンズ受け部72a1及び温度補正レンズ受け部72a2が上面を向いた状態とし、カップリング受け部72a1にカップリングレンズ11を、温度補正レンズ受け部72a2に温度補正レンズ12をそれぞれ載置し、光軸方向の位置調整をそれぞれ行った後に空中接着により固定する。このとき、各受け部72a1,72a2と各レンズ11,12との間に紫外線硬化型接着剤を数十〜数百μm充填し保持した状態で紫外線硬化させて接着を行うとよい。
次に、光学素子ホルダ72を回転させて集光レンズ受け部72a6が上面を向いた状態とし、予め集光レンズ受け部72a6の3つの支持部に紫外線硬化型接着剤を塗布しておき、次いで集光レンズ16における平凸レンズの平面側を3つの支持部に突き当てた状態で集光レンズ16の主走査方向及び副走査方向の位置調整を行い、その後に紫外線硬化させて接着固定を行う。この方法により、集光レンズ16を集光レンズ受け部72a6に突き当てた状態での2軸調整であるので、位置調整を容易に行うことができる。
アパーチャミラー13及び折り返しミラー14の取り付けは、アパーチャミラー13をアパーチャミラー受け部72a3に載置すると共に折り返しミラー14を折り返しミラー受け部72a4に載置した状態で、板ばねである押圧ばね13aによって押圧保持する。図13は、押圧ばね13aを光学素子保持部72aに接着した様子を示しており、ここでは各ミラー13,14の図示を省略している。押圧ばね13aは、光学素子保持部72aに固定されたばね本体13a1から両側方に張り出したそれぞれ2本のアーム部13a2,13a3を有しており、線対称形状を呈している。各アーム部13a2,13a3は何れもばね本体13a1に対して折り曲げられることにより一定のばね性を有しており、ばね本体13a1を光学素子保持部72aに固定した際に、各アーム部13a2はアパーチャミラー13をアパーチャミラー受け部72a3側に押圧し、各アーム部13a3は折り返しミラー14を折り返しミラー受け部72a4側に押圧して各ミラー13,14を保持する。ばね本体13a1は上下方向の端部を折り曲げられたコ字形状を呈しており、その先端はさらに上下方向に直角に折り曲げられて立ち曲げ部13bを形成している。光学素子保持部72aに対するばね本体13a1の固定は、コ字形状部を2つの嵌合溝72a5に嵌入させ、立ち曲げ部13bを嵌合溝72a5に引っ掛けることにより行われる。このときばね本体13a1のばね性を利用しているので、光学素子保持部72aへの取り付け及び取り外しは容易に行うことができる。また、押圧ばね13aは上下左右に線対称の形状であるので固定に際しては上下どちらに組んでもよく、コンパクト化及び低コスト化及び作業性の向上を図ることができる。
第2アパーチャ15の取り付けは、図13に示すように光学素子保持部72aに設けられた溝に第2アパーチャ15を挿入し、図13において手前側から押圧ばね15aによって押圧することにより行われる。押圧ばね15aは、光学素子保持部72aに固定されたばね本体15a1から両側方に張り出した2本のアーム部15a2を有しており、線対称形状を呈している。各アーム部15a2は何れもばね本体15a1に対して折り曲げられることにより一定のばね性を有しており、ばね本体15a1を光学素子保持部72aに固定した際に、各アーム部15a2により第2アパーチャ15を前記溝側に押圧し、第2アパーチャ15を保持する。ばね本体15a1の上下端部には2本のアーム部15a3が設けられており、各アーム部15a3の先端はさらに上下方向に直角に折り曲げられて立ち曲げ部15bを形成している。光学素子保持部72aに対するばね本体15a1の固定は、アーム部15a3を2つの嵌合溝72a7に嵌入させ、立ち曲げ部15bを嵌合溝72a7に引っ掛けることにより行われる。このときばね本体13a1のばね性を利用しているので、光学素子保持部72aへの取り付け及び取り外しは容易に行うことができる。このように、光学素子ホルダ72における複数の光学素子の保持構造を工夫することにより、マルチビーム光源装置60をユニットとして組立調整する工程において作業性の向上及びコスト低減を図ることができる。
次に、中間ホルダ71と光学素子ホルダ72との連結手順を説明する。先ず、中間ホルダ71の一方の基準ピン71dを光学素子ホルダ72の主基準穴72d1に挿入し、他方の基準ピン71dを副基準穴72d2に挿入する。これにより中間ホルダ71と光学素子ホルダ72の複数の光学素子との位置関係が一定となる。また、中間ホルダ71と回路基板75との連結により、中間ホルダ71と面発光光源10aとの位置関係が決定しているので、面発光光源10aとカップリングレンズ11、温度補正レンズ12、アパーチャミラー13との位置関係が一定となる。さらにフロントモニタ光学系を構成する折り返しミラー14、第2アパーチャ15、集光レンズ16と光検出器17との位置関係も一定となる。このとき貫通穴72eを介して締結ねじ79bを固定穴71eに差し込んで締結固定すると、面発光光源10aとカップリングレンズ11との位置関係及び面発光光源10aとフロントモニタ光学系と光検出器17との位置関係を高精度に位置決めした状態で中間ホルダ71と光学素子ホルダ72とが連結される。さらに中間ホルダ71と光学素子ホルダ72とをそれぞれ線膨張係数に差のないアルミ合金で構成すると、位置決めした状態からの位置変動を極小に抑えることができる。上述の構成より、マルチビーム光源装置70を光走査装置100に装着すると、マルチビーム光源装置70の位置調整及び角度調整の際に、光源手段10、カップリングレンズ11、温度補正レンズ12、アパーチャミラー13、折り返しミラー14、第2アパーチャ15、集光レンズ16、光検出器17相互間の位置関係が変動せず、各感光体ドラム30A,30B,30C,30Dの表面にそれぞれ形成される走査線のピッチ調整を正確に行うことができる。
図14に示すようにマルチビーム光源装置70は、光学素子保持部72aの全体を包み込む保護カバー73を有している。保護カバー73は図14の紙面手前側を深さ方向とする箱形の中空部材であり、上述した複数の光学素子であるカップリングレンズ11、温度補正レンズ12、アパーチャミラー13、折り返しミラー14、第2アパーチャ15、集光レンズ16を覆うことによりこれ等の損傷を防止している。保護カバー73の紙面手前側に位置する上面にはアパーチャミラー13を通過した光ビームを外部に射出する開口部73aが形成されており、保護カバー73の図14において上方及び下方に位置する両側面には図4に示す嵌合穴73bがそれぞれ設けられている。
保護カバー73は、図14において左右方向に延びる対称軸に対して線対称の形状を呈しており、保護カバー73を光学素子保持部72aに装着するときには、保護カバー73の両内側面が光学素子保持部72aの両側面に沿って案内されることによりスムースに挿入され、各嵌合穴73bが光学素子保持部72aの集光レンズ受け部72a6近傍に設けられた上下2つの突起部72h(図12参照)と嵌合することにより適正な位置に固定される。このとき集光レンズ16の外形は集光レンズ受け部72a6の凹形接着面より突出することがないため、スムースな装填が可能となる。
上述した複数の光学素子11,12,13,14,15,16及びこれを保持する保持手段72のそれぞれの形状は、光軸を含む平面内のある軸に対して線対称であることが好ましい。図15は図14におけるB−B断面図、図16は同C−C断面図、図17は同D−D断面図である。図15、図16において、カップリングレンズ11、温度補正レンズ12、アパーチャミラー13、光学素子保持部72a、保護カバー73は左右方向に延びる光軸である対称軸に対して線対称形状を呈しており、図17においても第2アパーチャ15、押圧ばね15a、集光レンズ16、光学素子保持部72a、保護カバー73は左右方向に延びる対称軸に対して線対称形状を呈している。また、図示していないが折り返しミラー14、押圧ばね13aも左右方向に延びる対称軸に対して線対称形状を呈している。
このように、光学系の構成部品が光軸を含む平面内にある左右方向に延びる対称軸に対して線対称形状を呈しているため、偏った残留応力や歪みが発生しにくいために光学素子保持部72aの形状安定性が高く、押圧ばね13a,15a等の押圧部材も対称軸を挟んで均等な押圧が可能であるためにカップリングレンズ11、温度補正レンズ12、アパーチャミラー13、折り返しミラー14、第2アパーチャ15、集光レンズ16等の光学素子の姿勢安定性が高く、環境温度変動に対しても安定した挙動を示し膨張収縮の歪みによる光軸ずれが発生しない。
上述した構成のマルチビーム光源装置70は、図18に示す光走査装置100のハウジング101に対してカップリングレンズ11の光軸とほぼ平行な軸回りに回動可能に取り付けられた後、光源調整(γ調整)が行われる。ハウジング101は上方が開放された箱形のケースであり、その側壁にマルチビーム光源装置70を取り付けるための、円形の嵌合穴101h1と方形の逃げ部101h2とからなる鍵穴形状の開口部101hが形成されている。光走査装置100には2つの光源光学系200Aと200Bとが1つのハウジング101に、光源光学系200Cと200Dとが1つのハウジング101にそれぞれ取り付けられることから、開口部101hは側壁の2箇所に設けられている。
ハウジング101へのマルチビーム光源装置70の装着は、図19に示すように、先ず保護カバー73を開口部101hに挿入する。保護カバー73の外形は開口部101hよりも小さいためスムースに挿入でき、保護カバー73の根本部分に設けられたストッパ部73s及び環状凸部72gが開口部101hに嵌入され、ハウジング101の壁面に光学素子ホルダ72に設けられたハウジング突き当て面72iが当接する。ストッパ部73sは環状凸部72gからはみ出している保護カバー73の外周面であり、図19では斜線表示している。
図20は、ハウジング101内から開口部101hを見た図である。保護カバー73の外形は開口部101hの鍵穴形状よりも小さいため、保護カバー73を装着した状態でマルチビーム光源装置70をハウジング101に装着することができる。嵌合穴101h1の内径は環状凸部72gの外形とほぼ同等、正確には環状凸部72gの外径よりも僅かに大きくなるように設定されており、逃げ部101h2の上下方向の幅はストッパ部73sよりも大きく設定されている。これにより、開口部101hを保護カバー73が通過した後に環状凸部72gが嵌合穴101hに嵌合し、ハウジング101に対するマルチビーム光源装置70の図20における上下左右方向の位置決めが行われ、さらにハウジング突き当て面72iがハウジング101の壁面に当接してハウジング101に対するマルチビーム光源装置70の図20における紙面方向の位置決めが行われる。
逃げ部101h2では、保護カバー73が嵌合された後でもストッパ部73sとの間に隙間があるため、嵌合穴101h1を回転軸受、環状凸部72gを回転軸、光軸中心Oを回転中心として、マルチビーム光源装置70全体を回転させることができる。これにより調整機構部によるγ調整が可能となる。ここで、環状凸部72gが調整機構部を構成する円筒部となり、ストッパ部73sが調整機構部を構成するストッパ部となるが、これに限定されるものではなくたとえば保護カバー73が環状凸部72gの外側を覆うように構成してその部分の保護カバー73の外周部分を円筒部としてもよい、また、本体部72p1上に設けた突起をストッパ部としてもよい。
上述した状態より、図21に示す板ばね部材102を用いてマルチビーム光源装置70を保持する。板ばね部材102は、板状のハウジング固定部102a、ハウジング固定部102aの中央部に設けられた板ばね部102b、ハウジング固定部102aの両端部に設けられ上方に延出した板ばね部102cを有している。ハウジング101にマルチビーム光源装置70を装着した状態でハウジング固定部102aをハウジング101の底板にねじ止め等によって固定し、板ばね部102cをハウジング101のマルチビーム光源装置70が装着される壁面に対して平行となるように配置し、板ばね部102cが各アーム部72p2をハウジング101の壁面との間で挟むように配置する。これにより板ばね部102cのばね弾性により各アーム部72p2を押圧し、マルチビーム光源装置70は環状凸部72g及びストッパ部73sが開口部101hに嵌合した状態で、ハウジング突き当て面72iをハウジング101の壁面に一定の力で押し当てられた状態となる。このとき、板ばね部102bが中間ホルダ71の底面に当接し、そのばね弾性によりマルチビーム光源装置70を上方へと押し上げ、環状凸部72gは嵌合穴101h1から少し浮いた状態となる。これによりマルチビーム光源装置70の全体を容易に回転させることができる。
次に、γ調整について説明する。マルチビーム光源装置70がハウジングに装着されると、マルチビーム光源装置70に設けられた調整機構部によりγ調整が可能となる。調整機構部は、光軸を中心としてマルチビーム光源装置70を回転可能に支持する円筒部としての環状凸部72gと、円筒部を回転軸とするマルチビーム光源装置70の回転を所定位置(逃げ部101h2の端部)で止めるストッパ部73sと、円筒部を回転軸としてマルチビーム光源装置70を一方向に回転させるための力が作用する力点部であるフック部72f1と、この力に抗して円筒部を回転軸とするマルチビーム光源装置70の回転角度(傾き量)を調整する角度調整部としての角溝72f2及び逃げ穴72f3及びナット部材72nとから構成される。
図22は、ハウジング101に装着されたマルチビーム光源装置70についてγ調整を行う状態を示すハウジング101の全体図であり、図22において手前側に2個のマルチビーム光源装置70が装着されている。ハウジング101の中央にはポリゴンミラー104A,Bが収納されたケーシング104cが配置されており、一部の光学素子(第1走査レンズ105A,B,305A,B、反射ミラー106A,B,306A,B)も配置されている。γ調整は、何れか一方のアーム部72p2に設けられた光源装置調整部72fを用いて行われる。図22において、右側の光源光学系200Aに属するマルチビーム光源装置70では左側のアーム部72p2の光源装置調整部72fが用いられ、左側の光源光学系200Bに属するマルチビーム光源装置70では右側のアーム部72p2の光源装置調整部72fが用いられる。
図23は、光源光学系200Aに属するマルチビーム光源装置70をハウジング101内から見た図である。光源調整部72fを構成するフック部72f1には、一端がハウジング101に係止されある程度伸びた状態の引張ばね101bの他端が形成されており、引張ばね101bの付勢力が図中下方に向かう力faとしてフック部72f1に作用している。一方、角溝72f2に収納されたナット部材72nに対して、ハウジング101の壁面に設けられたステー101sに頭部を支持された調整ねじ101nが、逃げ穴72f3を介して螺合されている。上述の角度調整部(角溝72f2、逃げ穴72f3、ナット部材72n)と角度調整治具(調整ねじ101n、ステー101s)とにより、マルチビーム光源装置70の傾き量γを調整する角度調整手段が構成されている。
γ調整は次の手順によって行う。マルチビーム光源装置70がハウジング101に装着された後、調整機構部の力点部であるフック部72f1とハウジング101との間を引張ばね101bで連結する。このとき、フック部72f1には力faが作用するため、マルチビーム光源装置70はストッパ部73sが逃げ部101h2の端部に当接するまで環状凸部72gを回転軸として図23において時計回り方向に回転する(回転ra)。
次に、ナット部材72nに対して調整ねじ101nを差し込み、ねじ込む方向に調整ねじ101nを回転させる。これにより調整ねじ101nはステー101sに頭部が支持されていることから、角度調整部には引張ばね101bによる力faに抗する力fbが作用し、マルチビーム光源装置70は環状凸部72gを回転軸として図23において反時計回り方向に回転する(回転rb)。このとき、ストッパ部73sが逃げ部101h2の端部に当接した位置からの戻り量である回転rbは、調整ねじ101nのナット部材72nへのねじ込み量によって調整することができる。ここでは、ハウジング101において光学的な測定を行いながら調整ねじ101nのナット部材72nへのねじ込み量を調整することによりマルチビーム光源装置70全体の傾き量γを調整し、面発光光源10aの傾斜角度を調整して固定する。γ調整終了後は、調整時の調整ねじ101nのねじ込み量を固定しておくことにより引張ばね101bの張力が働き、マルチビーム光源装置70は傾き量γの状態で安定して保持され、そのまま光走査装置100としての使用が可能である。
γ調整に関し、図24(a),(b)に示すように2つのアーム部72p2は、光軸中心Oに対して等距離かつ線対称である位置に配置するとよい。光軸中心Oから調整ねじ101nの作用点である角度調整部までの距離を十分に長く取ることにより角度調整の分解能を上げることが可能となるため、調整ねじ101nのピッチを細かくすることなく並目ピッチの調整ねじを採用することができる。
また、図24(c)に示すように、光軸方向において面発光光源10a側からマルチビーム光源装置70の重心位置、力点部であるフック部72f1、マルチビーム光源装置70のハウジング101壁面との光軸方向当接部であるハウジング突き当て面72i、円筒部である環状凸部72gの順に配置されることが好ましい。本実施形態では上述した全ての位置がこの順で近接して配置され、図24(a)に示すようにハウジング突き当て面72iを主走査方向及び副走査方向に広く取っているため(スパンが長くなるため)、同じ加工精度であってもハウジング101に装着した際にマルチビーム光源装置70の姿勢のずれが小さくなる。さらに、調整機構部の力点であるフック部72f1とハウジング突き当て面72i、環状凸部72gまでの距離が極小となるように配置されているため、引張ばね101bによる付勢力によってチルトする作用が少ないため、γ調整の際にスムースかつ微小な動きが可能となり、高精度にピッチ調整を行うことができる。
1つの画像ステーションに対応する上では、マルチビーム光源装置70において一方のアーム部72p2のみに光源装置調整部72fを設ければよいが、上述のように両方のアーム部72p2に光源装置調整部72fを設けることにより、2つの画像ステーションそれぞれで共通のマルチビーム光源装置70を使用することができる。このとき、各マルチビーム光源装置70を上下反転させることなく同じ向きで配置するため、各面発光光源10aの1チャンネル目の光源を揃えることができ、各マルチビーム光源装置70に対するデータの吐き出しを揃えることが可能となる。
また、図22に示すようにハウジング101の中央部にハウジング101側の調整機構部である引張ばね101b、調整ねじ101n、ステー101sを配置し、マルチビーム光源装置70において光源中心Oから左右の等距離に配置した光源装置調整部72fを使用することにより、同一ピッチの調整ねじ101nを用いて同じ分解能の調整が可能となり、調整の自動化等も容易に行うことができる。また、マルチビーム光源装置70の配置はポリゴンミラー104A,104Bに対して対象となることにより最適な配置となり、ハウジング101の大きさもコンパクト化できる。さらに各画像ステーション毎に形状の異なる光源装置を設ける必要がなく、ハウジング101の形状もほぼ対称形でコンパクト化でき、コストダウンを図ることができる。
上述した光走査装置100において、「発明が解決しようとする課題」の欄で述べたように、内部には気流が発生していて塵埃等が浮遊しているため、の浮遊している塵埃が受光素子やレーザチップ、光学素子等に付着すると、被走査面へと向かう光束の光量が変化し、正常な光書き込みが行われなくなり画像不良が発生する虞がある。そこで、本発明はこれを解決すべく塵埃等の進入を防止する防塵部材を設けている。以下にその構成を説明するが、上述した構成と同様の部位には同様の符号を付すに止め、個々の詳細な説明は省略する。
上述したように、ハウジング101には図25に示すような鍵穴形状の開口部101hが形成されている。従来の光源装置には、本実施形態で示したマルチビーム光源装置70のようなフロントモニタ光学系が配置されておらず、γ調整に用いられる回転軸を嵌合穴のみで構成できるため光源装置とハウジングとの間に隙間は生じなかったが、マルチビーム光源装置70では開口部101hが鍵穴形状であるためにマルチビーム光源装置70とハウジング101との間に隙間が生じてしまう。そこで本発明では、開口部101hの外周に弾性部材からなる防塵部材600を配設し、マルチビーム光源装置70をハウジング101に取り付ける際に防塵部材600を圧縮することにより、マルチビーム光源装置70とハウジング101との隙間を埋めている。図26は本発明の第1の実施形態における防塵部材600が配設されたハウジング101の開口部101h近傍を正面から見た図を示している。
図27に示すように板状部材である防塵部材600は、厚さ5mm程度のスポンジ部材600aとポリエチレンテレフタラート等の低摩擦部材600bとを貼り合わせて構成されており、低摩擦部材600bが貼付された面とは反対側の面を両面テープ600cによって各開口部101hの周囲に位置するハウジング101の壁面に取り付けられる。防塵部材600の中央部には開口600dが設けられており、この開口600dは図28に示すように開口部101hよりも一回り大きく形成されている。
上述した防塵部材600をハウジング101に取り付けた状態で、各光学系200A,200Bを構成するマルチビーム光源装置70をそれぞれハウジング101に対して装着する。そして、各マルチビーム光源装置70を板ばね部材102によってそれぞれ固定し、ナット部材72nに調整ねじ101nを螺合させて上述と同様にγ調整を行う。この状態の光走査装置100の全体図を図29に、レーザ光の射出側から見たマルチビーム光源装置70の正面図を図30にそれぞれ示す。
上述の構成により、マルチビーム光源装置70とハウジング101との間に配置された防塵部材がマルチビーム光源装置70の取付時にその厚み(本実施形態では5mm)の20%程度圧縮され、マルチビーム光源装置70とハウジング101との間に形成されている隙間を完全に塞ぐので、ハウジング101内への塵埃等の進入が防塵部材600により完全に防止され、被走査面へと向かう光束の光量が変化せず常に正常な書き込みが行われて良好な画像を継続的に得ることができる。また、防塵部材600はマルチビーム光源装置70と接する面に低摩擦部材600bを有しているので、マルチビーム光源装置70のγ調整を容易に行うことができる。
図31は、本発明の第1の実施形態の変形例に用いられる防塵部材601を示している。防塵部材601は、上述した防塵部材600を構成する低摩擦部材600bの上面に吸湿層601a及び低摩擦部材600bと同等の低摩擦部材601bを貼り合わせて構成されており、低摩擦部材601bが貼付された面とは反対側の面を両面テープ601cによって各開口部101hの周囲に位置するハウジング101の壁面に取り付けられる。防塵部材601の中央部には開口600dと同形の開口601dが設けられている。吸湿層601aは吸湿性繊維により構成されており、吸湿性繊維としてはポリアクリル系繊維を用いた繊維系乾燥剤あるいは除湿剤が用いられる。この構成により、ハウジング101内への塵埃及び水蒸気の進入が防塵部材601によって完全に防止され、上述の作用効果に加えて水蒸気の進入による各部材の劣化を防止することができる。また、防塵部材に吸湿性を備えることにより、部品点数を増加させることなく簡単な構成で防湿効果を得ることができ、コンパクト化及びコストダウンを図ることができる。
図32は、本発明の第2の実施形態を示している。この第2の実施形態では、上述した防塵部材600,601に加え、第2防塵部材602,603を用いている。第2防塵部材602,603は共にスポンジ部材600aと同等の材質により構成されており、第2防塵部材602は面発光光源10aを含む光源手段10を取り囲むように、第2防塵部材603は受光素子である光検出器17を取り囲むようにそれぞれ配設されている。各第2防塵部材602,603は、中間ホルダ71と回路基板75とが連結された際に圧縮され、光源手段10及び光検出器17に対して塵埃等が進入することを完全に防止している。この構成により、光源手段10及び光検出器17への塵埃等の進入が第2防塵部材602,603により完全に防止され、被走査面へと向かう光束の光量が変化せず常に正常な書き込みが行われて良好な画像を継続的に得ることができる。この第2防塵部材602,603にも、上述した吸湿層601aと同様の吸湿層を設けてもよい。これにより水蒸気の進入による各部材の劣化を防止することができる。