本発明者らは、鋭意研究を行った結果、ある縮環構造を含有するフェノキシ樹脂が、難燃性を有し、耐熱性、電気特性などに優れることを見出し、本発明に至った。
本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂は、下記一般式(1)で表される:
ここでAは、複数個あるAの一部又は全てが下記一般式(2)で示される縮環構造を含む二価基であり、R
1〜2は各々独立して水素原子、グリシジル基、又は下記一般式(13)で示される基であり、G
1〜4は各々独立して水素原子またはメチル基であり、r
1〜4は各々独立して0から10までの整数である。nは1から1000までの整数である。また、複数個のA、G
1〜4、r
1〜2は、それぞれ同一でも良いし、異なっていても良い。
ここでZは、六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つ以上の芳香環との縮環構造、または、五員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つの芳香環との縮環構造を含む二価基であり、R
3〜4は各々独立して、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよいフェニル基であり、q
1〜2は各々独立して0から4までの整数であり、複数個のR
3〜4、q
1〜2は同一でも良いし、異なっていても良い。また、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。
ここでL
1は、置換基を有しても良いフェノキシ基、ナフトキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、ホスホリルオキシ基、及びアミノ基から選ばれる基である。
本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂の好適な実施態様においては、一般式(1)の縮環構造含有フェノキシ樹脂において複数個あるAが全て一般式(2)で示される縮環構造を含む二価基である、又は、複数個あるAの一部が一般式(2)で示される二価基であり、残部が下記一般式(3)、および下記一般式(4)から少なくとも一種選ばれる二価基である。
ここでR
5〜6は各々独立して、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいフェニル基、又はリン含有基であり、q
3〜4は各々独立して0から4までの整数であり、tは0から2までの整数であり、m
1は1から5までの整数である。また、複数個のR
5〜6、q
4は同一でも良いし、異なっていても良い。ここで、リン含有基としては、ホスフィン、ホスフィンオキサイド、リン酸エステル等が例示できる。
ここでYは、下記一般式(5)から選ばれる二価基、−SO
2−、酸素原子、又は置換基を有していてもよいリン含有基、(ポリ)シラン又は、(ポリ)シロキサンであり、R
7〜8は、各々独立して、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよいフェニル基であり、q
5〜6は各々独立して0から4までの整数であり、複数個のR
7〜8は同一でも良いし、異なっていても良い。ここで、リン含有基としては、ホスフィン、ホスフィンオキサイド、リン酸エステル等が例示できる。
ここでまた、R
9〜10は、各々独立して、水素原子、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよいフェニル基であり、m
2は0から3までの整数である。また、複数個のR
9〜10は同一でも良いし、異なっていても良い。
また、本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂は、下記一般式(6)に示される多官能水酸基含有縮環構造化合物に二官能エポキシ樹脂を作用させる工程を含む製法、又は、下記一般式(7)に示される縮環構造含有エポキシ樹脂にジオール化合物を作用させる工程を含む製法から得られるものであり、一般式(1)に示される樹脂は例えばこれらの工程を含むプロセス(製造方法)によって得られる。
ここでZは、六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つ以上の芳香環との縮環構造、または、五員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つの芳香環との縮環構造を含む二価基であり、R
3〜4は各々独立して、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよいフェニル基であり、q
1〜2は各々独立して0から4までの整数であり、複数個のR
3〜4は同一でも良いし、異なっていても良い。また、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。
ここでZは、六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つ以上の芳香環との縮環構造、または、五員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つの芳香環との縮環構造を含む二価基であり、R
3〜4は各々独立して、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよいフェニル基であり、q
1〜2は各々独立して0から4までの整数である。さらに、G
5〜6は各々独立して水素原子またはメチル基であり、r
5〜6は各々独立して0から10までの整数であり、複数個のR
3〜4、G
5〜6は同一でも良いし、異なっていても良い。また、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。
本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂のより好適な実施態様においては、一般式(2)、(6)、(7)において、Zが式(8)〜(12)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、式(8)である縮環構造を含む二価基である。また、別の好適な実施態様においては、一般式(1)〜(7)においてr1〜6、m1〜2、q1〜6は各々独立して0から2の整数である。
本発明のフェノキシ樹脂組成物は、上記縮環構造含有フェノキシ樹脂を含有する。
本発明のフェノキシ樹脂組成物の好適な実施態様においては、上記フェノキシ樹脂組成物は、少なくとも1種以上の難燃剤を含有する。
本発明は、上記フェノキシ樹脂組成物を硬化させて得られる成形体を包含する。
本発明は、上記フェノキシ樹脂組成物と繊維基材を含むプリプレグを包含する。
本発明は、上記プリプレグを硬化させてなる繊維強化複合材料を包含する。
本発明は、上記フェノキシ樹脂組成物をフィルム化させて得られてなる絶縁性樹脂フィルムを包含する。
本発明は、上記フェノキシ樹脂組成物を金属箔に塗布させて得られてなる樹脂付き金属箔を包含する。
以下に本発明を詳細に説明する。
A. 縮環構造含有フェノキシ樹脂
本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂は、下記一般式(1)で表される:
ここでAは、複数個あるAの一部又は全てが下記一般式(2)で示される縮環構造を含む二価基であり、R
1〜2は各々独立して水素原子、グリシジル基、又は下記一般式(13)で示される基であり、G
1〜4は各々独立して水素原子またはメチル基であり、r
1〜4は各々独立して0から10までの整数である。nは1から1000までの整数である。また、複数個のA、G
1〜4、r
1〜2は、それぞれ同一でも良いし、異なっていても良い。
ここでZは、六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つ以上の芳香環との縮環構造、または、五員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つの芳香環との縮環構造を含む二価基であり、R
3〜4は各々独立して、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよいフェニル基であり、q
1〜2は各々独立して0から4までの整数であり、複数個のR
3〜4、q
1〜2は同一でも良いし、異なっていても良い。また、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。
ここでL
1は、置換基を有しても良いフェノキシ基、ナフトキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、ホスホリルオキシ基、及びアミノ基から選ばれる基である。
R1〜2は、本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂を使用した各種の硬化性組成物を調製する場合、本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂が当該硬化性組成物の硬化反応に関与し得る官能基が好ましい点で、水素原子、グリシジル基であることが好ましい。
nは1から1000までの整数であるが、5から800までの整数であることが好ましく、10から700までの整数であることがより好ましい。nが1000を超えると、樹脂の溶融粘度が高くなり、溶媒に対する溶解性が低下し、成形加工性が低下する傾向がある。
R3〜4は炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよいフェニル基であるが、耐熱性や難燃性、成形加工性などの点で炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、置換基を有していてもよいフェニル基であることが好ましい。
Zにおける六員環の脂環式化合物と1つ以上の芳香環との縮環構造を含む二価基としては、例えば、六員環の脂環式化合物と1〜3個の芳香環との縮環構造を含む二価基が挙げられる。六員環の脂環式化合物及び五員環の脂環式化合物は、環上に炭素以外の原子を含んでいてもよく、例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含むものが挙げられる。芳香環としては、例えばベンゼン環、ピリジン環、ピロール環が挙げられる。具体的なZの例としては、以下のようなものが挙げられる。
R3〜4における炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。炭素数1から5のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
L1において、フェノキシ基、ナフトキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、ホスホリルオキシ基、及びアミノ基はそれぞれ置換基を有しても良い。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イプロポキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ブトキシ基、tert−ペンチロキシ基、シクロヘキシロキシ基、ベンジロキシ基、及びアリロキシ基等が挙げられ、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基を有していてもよいホスホリルオキシ基としては、例えば、ホスホリルオキシ基、メチルホスホリルオキシ基、エチルホスホリルオキシ基、n−プロピルホスホリルオキシ基、イソプロピルホスホリルオキシ基、及びフェニルホスホリルオキシ基などが挙げられる。置換基を有していてもよいアミノ基としては、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、N−ホルミル−N−メチルアミノ基、N−ベンジルアミノ基、N−フェネチルアミノ基、N−(1−ナフチルメチル)アミノ基、ジフェニルメチルアミノ基などが挙げられる。置換基を有していてもよいフェノキシ基としては、例えば、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、ビフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、カルボキシフェノキシ基、メトキシカルボニルフェノキシ基などが挙げられる。置換基を有していてもよいナフトキシ基としては、例えば、ナフトキシ基、メチルナフトキシ基、エチルナフトキシ基、プロピルナフトキシ基、ブチルナフトキシ基、メトキシナフトキシ基、カルボキシナフトキシ基、ジカルボキシナフトキシ基、スルホナフトキシ基、ジスルホナフトキシ基、トリスルホナフトキシ基などが挙げられる。アシロキシ基としては、例えば、以下のようなものが挙げられ、それぞれ置換基を有していてもよい。
また、本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂は、上記一般式(1)において、複数個あるAが全て一般式(2)で示される縮環構造を含む二価基である、又は、複数個あるAの一部が一般式(2)で示される二価基であるが、Aの残部は、特に限定される物ではないが、例えば、芳香族や脂肪族の炭化水素であり、リン、酸素、硫黄、窒素、珪素、ハロゲンなど炭素以外の原子を含んでいてもよい。
この縮環構造含有フェノキシ樹脂は、本明細書中で、「縮環構造含有フェノキシ樹脂(D)」、「フェノキシ樹脂(D)」などと記載される場合がある。上記一般式(1)〜(2)において、好ましくは、Zが式(8)〜(12)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、Zが式(8)で示される縮環構造を含む二価基であり、r1〜4、q1〜2は各々独立して0から2の整数である。
Zが、式(8)〜(12)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である場合、芳香族を含む縮環骨格由来の高耐熱性、高屈折率、電気特性が付与でき、大きな面構造由来の分散安定性が得られる。さらに、Zが式(8)〜(10)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である場合、より高いレベルでの耐熱性、屈折率、電気特性、分散安定性が得られる。Zが式(8)、(11)、(12)の縮環構造を含む二価基である場合、このようなフェノキシ樹脂(D)は取り扱いが簡便であり、製造コストの点で有利である。さらに、Zが式(8)である縮環構造を含む二価基である場合、難燃性の点で優るため、より好適な実施態様といえる。
本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂の具体的な実施態様のひとつとして、上記一般式(1)において、複数個あるAが全て一般式(2)で示される縮環構造を含む二価基である、又は、複数個あるAの一部が一般式(2)で示される二価基であり、残部が下記一般式(3)、および下記一般式(4)から少なくとも一種選ばれる二価基であるフェノキシ樹脂が挙げられる。
ここでR
5〜6は各々独立して、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいフェニル基、又はリン含有基であり、q
3〜4は各々独立して0から4までの整数であり、tは0から2までの整数であり、m
1は1から5までの整数である。また、複数個のR
5〜6、q
4は同一でも良いし、異なっていても良い。ここで、リン含有基としては、ホスフィン、ホスフィンオキサイド、リン酸エステル等が例示できる。
ここでYは、下記一般式(5)から選ばれる二価基、−SO
2−、酸素原子、又は置換基を有していてもよいリン含有基、(ポリ)シラン又は、(ポリ)シロキサンであり、R
7〜8は、各々独立して、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよいフェニル基であり、q
5〜6は各々独立して0から4までの整数であり、複数個のR
7〜8は同一でも良いし、異なっていても良い。ここで、リン含有基としては、ホスフィン、ホスフィンオキサイド、リン酸エステル等が例示できる。
ここでまた、R
9〜10は、各々独立して、水素原子、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよいフェニル基であり、m
2は0から3までの整数である。また、複数個のR
9〜10は同一でも良いし、異なっていても良い。これらの中で、複数個あるAの一部が、上記式(3)で表され、式(3)において、t=0、R
5がリン含有基、q
3=1、m
1=1である、下記一般式(14)で示される場合が、高い難燃性を達成する観点から、より好適な実施形態と言える。
複数個あるAが全て一般式(2)で示される縮環構造を含む二価基であると、耐熱性、難燃性の点において優れている。複数個あるAの一部が一般式(2)で示される二価基であり、残部が一般式(3)、および一般式(4)から少なくとも一種選ばれる二価基であると、耐熱性、難燃性、成形加工性のバランスが取りやすくなる点において優れており、好ましい実施形態である。尚、複数個あるAの一部が一般式(2)で示される二価基であり、残部が一般式(3)、および一般式(4)から少なくとも一種選ばれる二価基である場合、一般式(2)で示される二価基の数に対する一般式(3)又は(4)で示される二価基の数の割合が、20〜75であることが好ましい。
R5〜10における炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。炭素数1から5のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
これらの中でも、耐熱性、難燃性、成形加工性の点で、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。
この縮環構造含有フェノキシ樹脂は、本明細書中で、「縮環構造含有フェノキシ樹脂(D1)」、「フェノキシ樹脂(D1)」などと記載される場合がある。この縮環構造含有フェノキシ樹脂(D1)は、前述の縮環構造含有フェノキシ樹脂(D)に含まれる。一般式(1)、(3)〜(5)において、より好ましくは、r1〜4、q3〜6、m1〜2は各々独立して0から2の整数である。
本発明のフェノキシ樹脂は、下記一般式(6)に示される多官能水酸基含有縮環構造化合物、又は下記一般式(7)に示される縮環構造含有エポキシ樹脂で少なくとも構成された重合成分を用い、公知のフェノキシ樹脂と同様の合成方法で製造できる。
好ましくは、下記一般式(6)に示される多官能水酸基含有縮環構造化合物を少なくとも含むジオール化合物(a)に二官能性エポキシ樹脂(b)を作用させる工程を含む製法〔I〕によって本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂は得られ、一般式(1)に示される樹脂は例えばこれらの工程を含むプロセス(製造方法)によって得られる。なお、ジオール化合物(a)は、必要に応じて、下記一般式(6)に示される多官能水酸基含有縮環構造化合物以外のジオール化合物を含んでもよい。
ここで、Z、R
3〜4、q
1〜2は前記と同じであり、複数個のR
3〜4は同一でも良いし、異なっていても良い。また、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。
一般式(6)に示される多官能水酸基含有縮環構造化合物は、1種で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ジオール化合物(a)において、一般式(6)に示される多官能水酸基含有縮環構造化合物の割合は、例えば、ジオール化合物(a)100重量部中、20重量部以上の割合で構成されることが好ましく、25重量部以上の割合で構成されることがより好ましい。20重量部未満であると、本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂の耐熱性や難燃性が低下する傾向がある。
この縮環構造含有フェノキシ樹脂は、本明細書中で、「縮環構造含有フェノキシ樹脂(D2)」、「フェノキシ樹脂(D2)」などと記載される場合がある。この縮環構造含有フェノキシ樹脂(D2)は、前述の縮環構造含有フェノキシ樹脂(D)に含まれる。上記一般式(6)において、好ましくは、Zが式(8)〜(12)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、式(8)である縮環構造を含む二価基である。また、別の好適な実施態様においては、q1〜2は各々独立して0から2の整数である。
また、一方の好適な実施態様では、下記一般式(7)に示される縮環構造含有エポキシ樹脂を少なくとも含む二官能性エポキシ樹脂(b)にジオール化合物(a)を作用させる工程を含む製法〔II〕によって本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂は得られ、一般式(1)に示される樹脂は例えばこれらの工程を含むプロセス(製造方法)によって得られる。なお、二官能性エポキシ樹脂(b)は、必要に応じて、下記一般式(7)に示される縮環構造含有エポキシ樹脂以外の二官能性エポキシ樹脂を含んでもよい。
一般式(7)のZ、R
3〜4、q
1〜2、G
5〜6、r
5〜6は前記と同じであり、複数個のR
3〜4、G
5〜6は同一でも良いし、異なっていても良い。また、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。
一般式(7)に示される縮環構造含有エポキシ樹脂は、1種で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
二官能性エポキシ樹脂(b)において、一般式(7)に示される縮環構造含有エポキシ樹脂の割合は、例えば、二官能性エポキシ樹脂(b)100重量部中、20重量部以上の割合で構成されることが好ましく、25重量部以上の割合で構成されることがより好ましい。20重量部未満であると、本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂の耐熱性や難燃性が低下する傾向がある。
この縮環構造含有フェノキシ樹脂は、本明細書中で、「縮環構造含有フェノキシ樹脂(D3)」、「フェノキシ樹脂(D3)」などと記載される場合がある。この縮環構造含有フェノキシ樹脂(D3)は、前述の縮環構造含有フェノキシ樹脂(D)に含まれる。上記一般式(7)において、好ましくは、Zが式(8)〜(12)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、式(8)である縮環構造を含む二価基である。また、別の好適な実施態様においては、r5〜6、q1〜2は各々独立して0から2の整数である。
上記ジオール化合物(a)としては、例えば、ビスフェノール類〔例えば、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルケトン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−n−ブタン、ジ−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)−プロパン、一般式(6)に示される多官能水酸基含有縮環構造化合物、一般式(6)に示される多官能水酸基含有縮環構造化合物以外のビス(ヒドロキシフェニル)型縮環構造化合物など〕、ビスナフトール類〔例えば、2,2’−ジヒドロキシビナフタレン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンなど〕、ジヒドロキシアレーン類〔例えば、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン等の単環式ジヒドロキシアレーン、あるいは1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレンなどのジヒドロキシナフタレン類などの多環式ジヒドロキシアレーン〕、などが挙げられ、それぞれ置換基[アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)など]を有していてもよい。
これらのジオール化合物(a)は、1種で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記二官能性エポキシ樹脂(b)としては、例えば、ジオール化合物のジグリシジルエーテル〔又は、ジオール化合物を原料とするエポキシ樹脂、例えば、ジオール化合物又はそのアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなど)付加体のジグリシジルエーテル、これらのジグリシジルエーテルがさらに反応(付加重合)したエポキシ樹脂など〕、グリシジルエステル型化合物〔又は、ジカルボン酸を原料とするグリシジルエステル型化合物、例えば、ジカルボン酸とエピハロヒドリン(エピクロロヒドリンなど)との反応物、ダイマー酸グリシジルエステルなど〕などが挙げられ、それぞれ置換基〔アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)など〕を有していてもよい。上記ジオール化合物のジグリシジルエーテルの具体例としては、ビスフェノール系エポキシ樹脂〔例えば、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、4,4’−ジ(グリシジルオキシ)−ジフェニルエーテル、4,4’−ジ(グリシジルオキシ)−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジ(グリシジルオキシ)−3,3’ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジ(グリシジルオキシ)ビフェニル、4,4’−ジ(グリシジルオキシ)−ジフェニルスルフィド、4,4’−ジ(グリシジルオキシ)−ジフェニルスルホン、4,4’−ジ(グリシジルオキシ)−ジフェニルケトン、ビス−(4−グリシジルオキシフェニル)−メタン、1,1−ビス−(4−グリシジルオキシフェニル)−エタン、1,1−ビス−(4−グリシジルオキシフェニル)−n−ブタン、ジ−(4−グリシジルオキシフェニル)−シクロヘキシル−メタン、1,1−ビス−(4−グリシジルオキシフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン、2,2−ビス−(4−グリシジルオキシ−3,5−ジブロモフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−グリシジルオキシ−3,5−ジクロロフェニル)−プロパン、一般式(7)に示される縮環構造含有エポキシ樹脂、一般式(7)に示される縮環構造含有エポキシ樹脂以外のビス(グリシジルオキシフェニル)型縮環構造化合物など〕、ビスナフトール系エポキシ樹脂〔例えば、2,2’−ジグリシジルオキシビナフタレン、ビス(2−グリシジルオキシナフチル)メタンなど〕、ジ(グリシジルオキシ)アレーン類〔例えば、カテコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル等の単環式ジ(グリシジルオキシ)アレーン、あるいは1,5−ジ(グリシジルオキシ)ナフタレン、1,6−ジ(グリシジルオキシ)ナフタレン、1,4−ジ(グリシジルオキシ)ナフタレンなどのジ(グリシジルオキシ)ナフタレン類などの多環式ジ(グリシジルオキシ)アレーン〕、脂環式ジオール類のジグリシジルエーテル〔例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなど〕、脂肪族ジオール類のジグリシジルエーテル〔例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルチオエーテルなど〕が挙げられる。上記ジカルボン酸の具体例としては、芳香族ジカルボン酸〔例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸など〕、脂環式ジカルボン酸〔例えば、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸、テトラヒドロテレフタル酸など〕、脂肪族ジカルボン酸〔例えば、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸など〕が挙げられる。
二官能性エポキシ樹脂(b)は、1種で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のフェノキシ樹脂の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記方法の他に一般式(6)に示される多官能水酸基含有縮環構造化合物を少なくとも含む前記ジオール化合物(a)とエピハロヒドリン(例えばエピクロロヒドリン)とを反応させる方法などによっても製造できる。エピハロヒドリンを使用する方法では、副生成物として塩が生成し得るため、該塩を除去するための精製操作が必要で、製造工程が煩雑となる。(例えば、エピクロルヒドリンを使用した場合は、塩化ナトリウムなどが生成する。)しかし、上記方法〔I〕、〔II〕を用いた場合、塩の生成が無く、効率よく目的のフェノキシ樹脂を得ることができるため、上記方法〔I〕、〔II〕は、好適といえる。
上記方法〔I〕、〔II〕における全ジオール化合物(a)と全二官能性エポキシ化合物(b)の使用割合は、全ジオール化合物(a)1モルに対して、全二官能性エポキシ化合物(b)は、例えば、0.2〜5.0モルの割合が好ましく、より好ましくは0.5〜1.5モルである。
尚、前記方法において、反応は、触媒(反応促進剤)を用いることが出来る。触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−1(DBU)などの第3級アミン類;テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、メチルトリブチルアンモニウムヨーダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリフェニルベンジルアンモニウムクロライド、テトラブチル硫酸水素アンモニウムなどの第4級アンモニウム塩類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、などのイミダゾール類;エチルホスフィン、プロピレンホスフィン、フェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどのホスフィン類;テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩類;ベンジルテトラメチレンスルホニウムブロマイド、トリフェニルスルホニウムブロマイド、トリフェニルスルホニウムクロライドなどのスルホニウム塩類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物類などが挙げられる。これらの触媒は、1種で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
触媒の使用割合は、全ジオール化合物(a)又は二官能性エポキシ樹脂(b)100重量部に対して、例えば、0.01〜5.0重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3.0重量部程度である。
また、反応は、必要に応じて、溶媒の非存在下又は存在下で行うことができる。
溶媒を用いる場合、例えば、次の溶剤が用いられる:水;メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;ならびに2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
このような溶剤を添加する場合、その使用割合は、組成全体の5〜70重量%が好ましい。
反応は、常圧下又は加圧下で行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気中で行ってもよい。
本発明のフェノキシ樹脂の重量平均分子量は、用途により異なるが、流動性、成形性等の点から、好ましくは、1500〜2000000、より好ましくは3000〜100000である。
本発明のフェノキシ樹脂組成物は、上記縮環構造含有フェノキシ樹脂(D)を含有する。この縮環構造含有フェノキシ樹脂(D)は1種のみを単独で使用できる他、2種以上の混合物としても使用することができる。本発明のフェノキシ樹脂組成物は、上記縮環構造含有フェノキシ樹脂(D)を10〜90重量%含有することが好ましい。
この樹脂組成物には、必要に応じて(i)硬化性の化合物(硬化性モノマー、オリゴマー、または樹脂)、(ii)反応性希釈剤、(iii)硬化剤、(iv)硬化促進剤、(v)硬化性を有さないオリゴマー又は樹脂、(vi)添加剤、(vii)溶剤などが含有され得る。
上記(i)の硬化性の化合物としては、例えば、多官能水酸基含有化合物〔例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビフェノールなどのビスフェノール類;例えば、ジヒドロキシビナフタレン、ビス(ヒドロキシナフチル)メタンなどのビスナフトール類;例えば、フェノール樹脂、クレゾールノボラック型樹脂などの多官能フェノール系化合物;例えば、ピロガロール、レゾルシン、ハイドロキノン、ジヒドロキシナフタレンなどの単環式及び多環式ヒドロキシアレーン類;一般式(6)に示される水酸基含有縮環化合物;一般式(6)に示される水酸基含有縮環化合物以外の多官能水酸基含有縮環構造化合物〕、多官能エポキシ樹脂〔例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどのビスフェノール系エポキシ樹脂;例えば、ジグリシジルオキシビナフタレン、ビス(グリシジルオキシナフチル)メタンなどのビスナフトール系エポキシ樹脂;フェノール樹脂、クレゾールノボラック型樹脂などの多官能フェノール系エポキシ樹脂;例えば、カテコールジグリシジルエーテル、ピロガロールトリグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジ(グリシジルオキシ)ナフタレンなどの単環式及び多環式アレーン系エポキシ樹脂;一般式(7)に示される縮環構造含有エポキシ樹脂;一般式(7)に示されるエポキシ樹脂以外の縮環構造含有多官能エポキシ樹脂〕、アルキド樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、及び本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂(D)以外のフェノキシ樹脂などが挙げられる。これら硬化性の化合物は1種のみを単独で使用できる他、2種以上を混合しても使用することができる。
上記(i)の硬化性の化合物は、例えば、最終的な塗膜、接着層、成形品などにおける樹脂の性質を改善する目的で必要に応じて用いられ、本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂(D)に対して5〜70重量%含むことが好ましい。
上記(ii)の反応性希釈剤は、粘度調整を行うために添加する低粘度な水酸基含有化合物であり、例えば、二官能以上の水酸基含有化合物や二官能以上の低粘度エポキシ化合物が好ましい。上記二官能以上の水酸基含有化合物としては、例えば、次の化合物が挙げられる:ブタンジオール、アニリン、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリグリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、4−ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、メチル化ビニルシクロヘキセンジオキサイドなど。上記二官能以上の低粘度エポキシ化合物としては、例えば、次の化合物が挙げられる:ジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、アルキレンジグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、メチル化ビニルシクロヘキセンジオキサイドなど。これら反応性希釈剤は1種のみを単独で使用できる他、2種以上を混合しても使用することができる。
上記(ii)の反応性希釈剤は、必要に応じて用いることができ、本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂(D)に対して1〜50重量%含むことが好ましい。
上記(iii)の硬化剤としては、特に限定されないが、エポキシ類、ジオール類、オキサゾリジン類、ニトロアルコール類、ニトロアセタール類、ニトロ−オレフィン類、ニトロアミン類、ニトロヒドロピリミジン類、アミノニトロアルコール類、ニトロン類、ヒドロキシルアミン類及びイミン類などが挙げられる。
上記硬化剤の配合量は、一般的には、硬化剤の種類により異なり得るので一概に規定することはできないが、例えば、エポキシ類の場合、水酸基1モルに対してエポキシ基0.2〜2.0モルの割合が好ましく、より好ましくは0.5〜1.0モルである。他の種類の硬化剤の場合も、上記値を参照して当業者が適宜に使用することができる。
上記(iv)の硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7(DBU)などの第3級アミン類;テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、メチルトリブチルアンモニウムヨーダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリフェニルベンジルアンモニウムクロライド、テトラブチル硫酸水素アンモニウムなどの第4級アンモニウム塩類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、などのイミダゾール類;エチルホスフィン、プロピレンホスフィン、フェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどのホスフィン類;テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩類;ベンジルテトラメチレンスルホニウムブロマイド、トリフェニルスルホニウムブロマイド、トリフェニルスルホニウムクロライドなどのスルホニウム塩類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物類などが挙げられる。これらの触媒は、1種で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような硬化促進剤の配合量は、硬化性官能基を有する化合物〔例えば、上記(i)の硬化性の化合物〕100重量部に対して、0.05〜5.0重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3.0重量部である。
(v)硬化性を有さないオリゴマー又は樹脂としては、末端処理されたアルキド樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、及び本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂(D)以外のフェノキシ樹脂などが挙げられる。
上記(v)の硬化性を有さないオリゴマー又は樹脂は、例えば、最終的な塗膜、接着層、成形品などにおける樹脂の性質を改善する目的で必要に応じて用いられ、本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂(D)に対して5〜70重量%含むことが好ましい。
上記(vi)の添加剤としては、補強材または充填材、着色剤、難燃剤、難燃助剤、固体微粒子などが挙げられる。
上記補強剤または充填剤としては、粉末状あるいは繊維状の補強剤や充填剤が用いられる。粉末状の補強剤または充填剤としては、例えば次の素材でなる材料が挙げられる:酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩;ケイソウ土粉、塩基性ケイ酸マグネシウム、焼成クレイ、微粉末シリカ、溶融シリカ、結晶シリカなどのケイ素化合物;水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;その他、カオリン、マイカ、石英粉末、グラファイト、二硫化モリブデンなど。繊維状の補強剤または充填剤としては、次の材料が挙げられる:ガラス繊維、セラミック繊維、カーボンファイバー、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維など。
上記着色剤としては、例えば二酸化チタン、鉄黒、モリブデン赤、紺青、群青、カドミウム黄、カドミウム赤があり、上記難燃剤としては、アンチモン系難燃剤〔例えば、三酸化アンチモン〕、ハロゲン系難燃剤〔例えば、ブロム化合物〕、無機系難燃剤〔例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス〕、リン系難燃剤〔例えば、赤リン、リン酸アンモニウム類、リン酸アミド、リン酸エステル化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスホラン化合物、窒素含有有機系リン化合物〕、窒素系難燃剤〔例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、フェノチアジン〕、シリコーン系難燃剤〔例えば、シリコーンゴム、シリコーンオイル、シリコーン樹脂〕、有機金属塩系難燃剤〔例えば、フェロセン、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物〕などが挙げられる。尚、これら難燃剤は、難燃助剤として用いることも可能である。
上記固体微粒子としては、有機顔料や無機微粒子などが挙げられ、例えば光学材料、表示素子材料などの用途に好適に用いるために添加され得るものである。上記有機顔料の具体例としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物や、中心金属がCu、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn等の異種金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。また、上記無機微粒子の具体例としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化錫、酸化タンタル、酸化インジウムスズ、酸化ハフニウム硫酸バリウムなどの金属酸化物;炭酸カルシウム、塩化金、臭化金、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩化パラジウム、塩化白金酸、塩化金酸ナトリウム、硝酸銀、白金アセチルアセトナート、パラジウムアセチルアセトナートなどの金属塩;金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムなどの貴金属類;亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等を挙げることができる。これら固体微粒子の粒径は、例えば1nm〜5μmである。
尚、上記以外にも、(vi)の添加剤として、用途に応じて、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、可塑剤、耐衝撃改良剤、分散剤、帯電防止剤、抗菌剤、滑剤(レベリング剤)、密着付与剤、消泡剤などが含有され得る。
上記(vi)の添加剤は、いずれも1種で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(vi)の添加剤は、本発明の樹脂組成物の本来の性質を損なわない範囲の量で含有され得る。
上記(vii)の溶剤としては、例えば、次の溶剤が用いられる:メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;ならびに2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
このような溶剤を添加する場合、その配合量は、組成全体の5〜70重量%が好ましい。
本発明の組成物は、目的に応じた成形体とされる。この成形体は、組成物自体の硬化物でなる所望の形状の製品、あるいは基材上に形成された該組成物の硬化物でなる塗膜であってもよい。例えば上記組成物は、必要に応じて加熱溶融し、所定の型に流し込み、乾燥、冷却し、所望の形状の成形体が得られる。あるいは、溶媒を含む液状の組成物を基材上に塗布・乾燥することにより、基材上に硬化膜を形成することができる。また、特に上記組成物の内、硬化性を有するものは、例えば、必要に応じて加熱溶融し、所定の型に流し込んで加熱しあるいは放射線照射することにより硬化し、所望の形状の成形体が得られる。あるいは、溶媒を含む液状の組成物を基材上に塗布・乾燥し、次いで加熱しあるいは放射線照射することにより、基材上に硬化膜を形成することができる。
ここで、放射線とは、可視光線、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線などを総称していう。これらの中で、経済性および効率性の点から、実用的には、紫外線が最も好ましい放射線である。本発明に用いる紫外線としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、アーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプなどのランプから発振される紫外光を好適に使用することができる。紫外線よりも波長の短い上記放射線は、化学反応性が高いため理論的には紫外線より優れているが、経済性の観点から紫外線が実用的である。
成形方法および成形条件は特に限定されないが、例えば、所定の金型を用いて成形する場合には、加熱加圧による成形法やコールドプレスと呼ばれる低温成形法が用いられる。加熱加圧による方法としては、例えば、ハンドレイアップやスプレーレイアップと呼ばれる方法により常圧で本発明組成物を金型に充填した後、加熱成形させる方法;トランスファープレス装置を用いて射出成形により加熱圧縮する方法;および連続積層成形法、プルトルージョンと呼ばれる連続引抜成形法、フィラメントワインディング成形法などの連続成形法が挙げられる。またこれらの成形方法においては、上記樹脂組成物を補強剤と混合、あるいは補強剤に含浸させることにより中間成形材料を得、これを成形し、硬化させることもできる。補強剤としては、樹脂、ガラスなどでなる織布、不織布などが挙げられる。これを用いて得られる中間成形材料としては、例えば、SMC(シートモールディングコンパウンド)と呼ばれるシート状の中間成形材料;BMC(ベルクモールディングコンパウンド)あるいはプレミックスと呼ばれる液状または固形状の中間成形材料;ガラスクロスやマットなどに本発明組成物を含浸させたプリプレグなどが挙げられる。
本発明のフェノキシ樹脂組成物は、本発明の縮環構造含有フェノキシ樹脂(D)自身が難燃性付与効果を有するものである事から、硬化物の難燃性を付与させるために従来用いられている難燃剤を配合しなくても、硬化物の難燃性が良好であるが、より高度な難燃性を発揮させるために、少なくとも1種以上の難燃剤〔例えば、上記(vi)の添加剤における難燃剤〕を含有し、難燃性樹脂組成物とすることは、好適な実施態様である。
上記(vi)の添加剤における難燃剤及び難燃助剤において、ハロゲン系難燃剤は、ダイオキシン発生、アンチモン系難燃剤は、発ガン性が疑われているなど環境、健康への影響が懸念されるため、以下に示す無機系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、有機金属塩系難燃剤などの非ハロゲン系難燃剤が好適である。
上記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物〔例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム、ドロマイトなど〕、金属酸化物〔例えば、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、三酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛、酸化スズ、スズ酸亜鉛、酸化銅、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化ビスマス、酸化タングステン、酸化クロムなど〕、金属炭酸塩化合物〔例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタンなど〕、金属粉〔例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、コバルト、モリブデン、スズ、ニッケル、銅、ビスマス、タングステン、クロムなど〕、ホウ素化合物〔例えば、ホウ酸、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウムなど〕、低融点ガラス〔例えば、水和ガラス系、ホウ珪酸鉛系などのガラス状化合物など〕などが挙げられる。
このような無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、フェノキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、組成物100重量部中、0.1〜30重量部の範囲で配合することが好ましい。
前記リン系難燃剤としては、燐原子を含有する化合物であり、例えば、無機系、有機系に分類することができる。
無機系のリン系難燃剤としては、例えば、赤リン、リン酸アンモニウム類〔例えば、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなど〕、窒素含有無機系リン化合物〔例えば、リン酸アミド、ポリリン酸アミドなど〕などが挙げられる。尚、上記化合物は、例えば、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていてもよい。
有機系のリン系難燃剤としては、例えば、リン酸エステル化合物〔例えば、トリフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジクレジルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジ−2,6−キシレノールホスフェート)、レゾルシニルジフェニルホスフェートなど〕、ホスホン酸化合物〔例えば、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ホスホン酸金属塩など〕、ホスフィンオキシド化合物〔例えば、トリフェニルホスフィンオキシド、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド、ジフェニルホスフィニルハイドロキノンなど〕、ホスフィン酸化合物〔例えば、メチルエチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシドなどの環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体など〕、ホスホラン化合物〔例えば、1−メチル−1−オキソスルホラン,1−エチル−1−オキソスルホラン,1−フェニル−1−オキソスルホラン,1−メチル−1−オキソホスホラン,1−ノルマルプロピル−1−オキソホスホラン,1−フェニル−1−オキソホスホランなど〕、窒素含有有機系リン化合物〔例えば、ヘキサフェノキシトリホスファゼンなど〕などが挙げられる。
このようなリン系難燃剤の配合量としては、リン系難燃剤の種類、フェノキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、赤リンを難燃剤として使用する場合は、例えば、組成物100重量部中、0.1〜10重量部の範囲で配合することが好ましい。
前記窒素系難燃剤としては、窒素原子を含有する化合物であれば特に制限されるものではなく、例えば、トリアジン化合物〔例えば、メラミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、アンメリド、アンメリン、ホルモグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、サクシノグアナミン、グアニルメラミン、メラム、メレム、メロントリグアナミン、及びそれらの誘導体など〕、シアヌル酸化合物〔例えば、トリメチルシアヌレート、トリメチルイソシアヌレート、トリエチルシアヌレート、トリエチルイソシアヌレート、トリ(n−プロピル)シアヌレート、トリ(n−プロピル)イソシアヌレート、メチルシアヌレート、メチルイソシアヌレート、ジエチルシアヌレート、ジエチルイソシアヌレート、トリス(β−シアノエチル)イソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、メラミンシアヌレート、及びそれらの誘導体など〕、フェノチアジンなどが挙げられる。
このような窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、フェノキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、組成物100重量部中、0.1〜10重量部の範囲で配合することが好ましい。
前記シリコーン系難燃剤としては、例えば、シリコーンゴム〔例えば、メチルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴムなど〕、シリコーンオイル〔例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジエンシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイルなど〕、シリコーン樹脂〔例えば、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、フェニルシリコーンなど〕などが挙げられる。
このようなシリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、フェノキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、組成物100重量部中、0.05〜20重量部の範囲で配合することが好ましい。
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、有機コバルト塩化合物〔例えば、コバルトエチレンジアミン錯体、コバルトシクロヘキサンジアミン錯体、コバルトエチレンジアミン四酢酸錯体、コバルトピペリジン錯体、コバルトピリジン錯体、コバルトナフテン酸錯体、コバルトテトラアザシクロテトラドデカン錯体、コバルトテトラエチレングリコール錯体、コバルトアミノエタノール錯体、コバルトアセトアセトナート錯体、コバルトシクロヘキサジアミン錯体、コバルトペンタンジアミン錯体、コバルトグリシン錯体、コバルトトリグリシン錯体、コバルトナフチジリン錯体、コバルトフェナントロリン錯体、コバルトサリチル酸錯体、コバルトサリチルアルデヒド錯体、コバルトサリチリデンアミン錯体、コバルト錯体ポリフィリン、コバルトチオ尿素錯体など〕、有機スルホン酸金属塩〔例えば、トリクロロヘンゼンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホンスルホン酸カリウムなど〕、アセチルアセトナート金属錯体〔例えば、マンガンビス(アセチルアセトナート)ニッケルビス(アセチルアセトナート)、モリブデン二酸化物ジ(アセチルアセトナート)など〕、有機金属カルボニル化合物〔例えば、シクロペンタジエニルニッケルカルボニルダイマー、シクロペンタジエニルマンガントリカルボニル、シクロペンタジエニルモリブデントリカルボニルダイマーなど〕、などが挙げられる。
このような有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、フェノキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、組成物100重量部中、0.01〜10重量部の範囲で配合することが好ましい。
本発明は、上記フェノキシ樹脂組成物と繊維基材を含むプリプレグを包含する。
更に本発明のプリプレグについて説明する。
本発明のプリプレグの製造方法は、少なくとも本発明のフェノキシ樹脂組成物を用いること以外は、従来の方法により作製が可能であり、特に限定はされない。本発明のプリプレグの製造方法として、例えば、繊維からなるシート状補強基材(繊維基材)にホットメルト法(ドライ法)又はソルベント法(ウェット法)により製造することができる。ホットメルト法は、例えば、有機溶剤を含有しない樹脂組成物を樹脂と剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それをシート状補強基材にラミネートする、若しくは、ダイコーターにより直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。またソルベント法は、例えば、樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂ワニス(樹脂組成物)にシート状補強基材を浸漬し、樹脂ワニスをシート状補強基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。各々の方法により、すなわち、フェノキシ樹脂組成物が繊維からなるシート状補強基材に含浸した状態となるプリプレグとすることができる。また、シート状補強基材表面に樹脂組成物を付着させ、プリプレグとした後、堆積させ、繊維強化複合材料を製造する際に、繊維内部に樹脂組成物を含浸させることも出来る。
繊維からなるシート状補強基材としては、一般に、プリプレグ用繊維として常用されているものを用いることができ、具体的には、例えば、炭素繊維(例えば、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維)、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ポリエステル繊維、ボロン繊維、タングステンカーバイド繊維、ガラス繊維などが挙げられる。繊維の形態としては短繊維、ロービング、クロス、或いは不織布などのいずれの形態で有っても良い。
またプリプレグの形態としてはヤーンプリプレグ、シートプリプレグが挙げられ、シートプリプレグとしては一方向プリプレグ、二方向プリプレグ、不織布プリプレグが挙げられる。これらの繊維は、用途に応じて選択することができ、例えば、比強度、比弾性率が良好で軽量化を目的とした場合、炭素繊維や黒鉛繊維などが好ましく、さらには、比強度、比弾性率が高いことを要求される用途には、強化繊維が単一方向に引き揃えられた配列が適しているが、これ以外の形態で強化繊維を用いることも可能である。
本発明のプリプレグにおいて、フェノキシ樹脂組成物には、さらに、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、シリカ、カーボンブラック、炭化ケイ素、アルミナ水和物等の粒状物を混用することも、樹脂の粘度を適切なものにしたり、得られる複合材料の物性、例えば圧縮強度、靭性等を改良するために有効であり、好ましい。
得られたプリプレグを積層後、積層物に圧力を付与しながら樹脂組成物を加熱硬化させる方法などにより、本発明による繊維強化複合材料が作製される。
ここで熱および圧力を付与する方法としては、例えば、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法および内圧成形法などが挙げられる。
また、上記積層の方法としては、本発明のプリプレグを少なくとも一枚用いておれば良く、例えば、それを他のプリプレグ、シート状補強基材、金属箔などと積層させることも出来る。
さらに、本発明の繊維強化複合材料は、プリプレグを経ず、フェノキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させた後、加熱硬化させる方法、例えば、ハンド・レイアップ法、フィラメント・ワインディング法、プルトルージョン法、レジン・インジェクション・モールディング法、およびレジン・トランスファー・モールディング法等の成形法によっても作製できる。
上記フェノキシ樹脂組成物を金属箔に塗布させて得られてなる樹脂付き金属箔も本発明のひとつであり、樹脂付き金属箔の製造法は特に限定されるものではないが、例えば、フェノキシ樹脂組成物を、金属箔の片面又は両面に塗布した後、乾燥させ樹脂層を金属箔上に形成することができる。塗布は、公知の方法により実施可能であり、例えばロールコーター、グラビアコーター、キスコーター、コンマコーター等を用いて行うことができる。塗布する厚みは、好適には、乾燥後又は硬化時の樹脂層の厚みが10μm以下となる程度である。
この場合の金属箔の材質は特に限定されるものではないが、例えば、銅、アルミニウム及びニッケル等の金属箔や、これらの金属と他の金属との合金からなる金属箔を用いることができる。
上記金属箔上に形成させた樹脂層は、硬化していても、半硬化の状態でもよく、特に、硬化剤を含む半硬化の樹脂層の場合、接着層となる。例えば、金属張積層板は、上記接着層付き金属箔とプリプレグを積層して加熱加圧成形して得ることができる。このときのプリプレグとしては、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂あるいはこれらの混合物等と、それぞれの樹脂の硬化剤をガラス繊維、有機繊維等の基材に含浸させて公知の方法により作製されたものを用いることができ、本発明のプリプレグも同様に用いることが出来る。
例えば、上記金属張積層板に穴開け加工、金属めっき加工、エッチングなどの処理を施し、回路を形成すると、プリント配線板となり得る。
上記フェノキシ樹脂組成物をフィルム化させて得られてなる絶縁性樹脂フィルムも本発明のひとつであり、その製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、上記樹脂組成物をキャリアフィルムの片面に塗布・乾燥させた後、樹脂成分を半硬化させて製造することができる。この場合のキャリアフィルムの材質は特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステルフィルム及びポリイミドフィルム等を用いることができる。塗布時の乾燥温度は、使用する溶媒の沸点〜沸点+15℃が好ましい。また、半硬化させる場合、150℃以下であることがこのましい。乾燥後のフィルムの膜厚は、特に制限はなく、使用する用途により異なるが、絶縁性の観点から、10〜80μmが好ましい。