JP5262117B2 - スピンコート装置及びその温度制御方法、並びに光ディスク製造装置及び光ディスク製造方法 - Google Patents
スピンコート装置及びその温度制御方法、並びに光ディスク製造装置及び光ディスク製造方法 Download PDFInfo
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Description
このブルーレイディスク規格では、高NAの光学系においてチルトマージンを確保するため、記録光及び再生光を従来の基板側からではなく、0.1mm程度の厚さに設定されたカバー層を通して照射するように設計されている。
そこで、ディスク基板の回転中心に滴下する方法に代えて、ディスク基板の中心開口部の周囲に環状に紫外線硬化樹脂組成物を滴下し、展延する時に熱をかけて紫外線硬化樹脂組成物の展延性を向上させて、カバー層の厚みを均一にする方法が考えられる。
しかしこの場合、ディスク基板の外周を囲うように設けられたスピンカップも加熱されることになる。そして、処理時間を短縮すべく、スピンカップが完全に冷却(放熱)しないうちに次のスピンコート処理(加熱)を行うと、展延時に上昇する各回のスピンカップの到達温度が、スピンコート処理の回数を追う毎に上昇し、相当回数のスピンコート処理を行った後に、ある温度で収束(安定化)する。展延時のスピンカップの到達温度は、紫外線硬化樹脂組成物の温度(展延性)に影響するため、スピンコート処理の回数を追う毎に展延時のスピンカップの到達温度が上昇し、紫外線硬化樹脂組成物の温度もスピンコート処理の回数を追う毎に上昇することになる。
その結果、各回のスピンカップの到達温度が安定化するまでは、スピンコート処理の回数毎に、カバー層の厚みが異なることになってしまう。このため、各回のスピンカップの到達温度が安定化するまで、相当回数の捨て処理(良好な膜厚を得られないスピンコート処理)を行うことを余儀なくされていた。
<1> ディスク基板を回転可能に保持する回転テーブルと、
前記回転テーブルに保持されたディスク基板の外周を囲うスピンカップと、
前記ディスク基板上に紫外線硬化樹脂組成物を滴下する滴下手段と、
前記回転テーブルを介して前記ディスク基板を回転させ、前記紫外線硬化樹脂組成物を前記ディスク基板上に展延する回転手段と、
前記ディスク基板上の紫外線硬化樹脂組成物を加熱する加熱手段と、
複数回に亘るスピンコート処理において、各回の展延時に前記加熱手段により上昇する前記スピンカップの到達温度が、一定となるように制御する温度制御手段と、を有することを特徴とするスピンコート装置である。
該<1>に記載のスピンコート装置においては、前記温度制御手段を備えたことで、複数回に亘るスピンコート処理において、各回の展延時に加熱手段により上昇するスピンカップの到達温度が、一定となる。このため、各回の展延時の紫外線硬化樹脂組成物の温度を短時間で(少ない回数のスピンコート処理で)安定化させることができる(各回のスピンコート処理毎に紫外線硬化樹脂組成物の温度が異なることがない)。したがって、複数回に亘るスピンコート処理において、大量の捨て処理を行うことなく、ディスク基板上に紫外線硬化樹脂組成物を均一な厚さに展延することができる。
<2> 滴下手段が、回転手段により回転しているディスク基板に対し、該ディスク基板の中心に設けられた円形開口部の周囲に環状に紫外線硬化樹脂組成物を滴下する前記<1>に記載のスピンコート装置である。
<3> 温度制御手段がスピンカップに形成された流路と、該流路に媒体を供給する供給手段とを有する前記<1>から<2>のいずれかに記載のスピンコート装置である。
<4> スピンカップが、表面に流路が設けられたスピンカップ本体と、該流路を覆う断熱カバーとを有する前記<3>に記載のスピンコート装置である。
前記<3>及び<4>のいずれかに記載のスピンコート装置においては、温度制御手段として流路、供給手段、断熱カバーなどを用いることにより、複数回に亘るスピンコート処理において、各回の展延時に加熱手段により上昇するスピンカップの到達温度を一定に制御することができる。
<5> 温度制御手段が、スピンカップの温度を検知する検知手段と、該検知した温度に基づいて、媒体の温度をフィードバック制御する温調手段と、を有する前記<3>から<4>のいずれかに記載のスピンコート装置である。
該<5>に記載のスピンコート装置においては、温度制御手段として、スピンカップの温度を検知する検知手段と、該検知した温度に基づいて、媒体の温度をフィードバック制御する温調手段とを有しているので、スタート時からスピンカップの到達温度を安定化させることができ、樹脂膜の膜厚が安定し、不良品の発生を防止できる。
<6> 各回のスピンコート処理終了後、次回のスピンコート処理の開始までの間に、スピンカップ内の空気を吸引して排気する吸引手段を有する前記<1>から<5>のいずれかに記載のスピンコート装置である。
<7> 吸引手段が、スピンカップの上面開口に臨む吸引口を有する前記<6>に記載のスピンコート装置である。
前記<6>及び<7>のいずれかに記載のスピンコート装置においては、各回のスピンコート処理終了後、次回のスピンコート処理の開始までの間に、スピンカップ内の空気を吸引手段で強制排気することによりピーク温度及び下降時の温度のバラツキ小さくなり、樹脂膜の膜厚の安定化が実現できる。
<8> 回転テーブルに保持されたディスク基板の外周を囲うスピンカップを有するスピンコート装置の温度を制御する方法であって、
前記ディスク基板上に滴下された紫外線硬化樹脂組成物を、加熱しながら前記ディスク基板上に展延する展延工程と、
複数回に亘るスピンコート処理において、各回の展延工程で加熱により上昇する前記スピンカップの到達温度が、一定となるように制御する温度制御工程とを含むことを特徴とするスピンコート装置の温度制御方法である。
該<8>に記載のスピンコート装置の温度制御方法においては、前記温度制御工程により、複数回に亘るスピンコート処理において、各回の展延時に加熱手段により上昇するスピンカップの到達温度が一定となる。各回の展延時に加熱手段により上昇するスピンカップの到達温度が一定となり、各回の展延時の紫外線硬化樹脂組成物の温度を短時間で安定化でき、複数回に亘るスピンコート処理において、大量の捨て処理を行うことなく、ディスク基板上に紫外線硬化樹脂組成物を均一な厚さに展延することができる。
<9> 展延工程が、ディスク基板上に紫外線硬化樹脂組成物を滴下する滴下工程と、ディスク基板上の紫外線硬化樹脂組成物を加熱しながら回転させて、紫外線硬化樹脂組成物からなる樹脂膜を前記ディスク基板上に形成する樹脂膜形成工程と、ディスク基板上に形成された樹脂膜を回転させて余分な紫外線硬化樹脂組成物を振り切る振切工程とを含む前記<8>に記載のスピンコート装置の温度制御方法である。
<10> スピンカップに形成された流路に媒体を供給することで、前記スピンカップの到達温度が一定となるように制御する前記<8>から<9>のいずれかに記載のスピンコート装置の温度制御方法である。
<11> スピンコート処理終了後、次回のスピンコート処理の開始までの間に、スピンカップ内の空気を吸引して排気する吸引工程を含む前記<8>から<10>のいずれかに記載のスピンコート装置の温度制御方法である。
<12> 前記<1>から<7>のいずれかに記載のスピンコート装置を少なくとも有してなり、該スピンコート装置によりカバー層を形成することを特徴とする光ディスク製造装置である。
該<12>に記載の光ディスク製造装置においては、本発明のスピンコート装置を用いることにより均一な厚みのカバー層を効率よく形成することができ、高品質なブルーレイディスク等の光ディスクを製造することができる。
<13> 前記<1>から<7>のいずれかに記載のスピンコート装置を用いて、カバー層を形成するカバー層形成工程を少なくとも含むことを特徴とする光ディスク製造方法である。
該<13>に記載の光ディスク製造方法においては、本発明のスピンコート装置を用いることにより均一な厚みのカバー層を効率よく形成することができ、高品質なブルーレイディスク等の光ディスクを製造することができる。
本発明のスピンコート装置は、回転テーブルと、スピンカップと、滴下手段と、回転手段と、加熱手段と、温度制御手段とを有してなり、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
本発明のスピンコート装置の温度制御方法は、展延工程と、温度制御工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
前記展延工程は、前記ディスク基板上に滴下された紫外線硬化樹脂組成物を、加熱しながら前記ディスク基板上に展延する工程であり、滴下工程と、樹脂膜形成工程と、振切工程とを含むことが好ましい。
以下、本発明のスピンコート装置及びスピンコート装置の温度制御方法について、詳細に説明する。
前記ディスク基板としては、形状、大きさ、材料等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状及び大きさは、準拠する光ディスクの規格に適した形状、大きさ、厚み、溝形状を有するように成形したものを用いることができる。
前記材料としては、ガラス、セラミックス、樹脂などが挙げられ、これらの中でも、樹脂が成形性、コストの点から好適である。
前記樹脂としては、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成形性、光学特性、コストの点で優れるポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂が特に好ましい。
前記回転テーブルは、スピンコート処理を行う際に、ディスク基板を載置する回転可能な台であり、回転手段の動力により、ディスク基板の載置面に対して垂直方向を軸として回転する。この回転の中心は、回転テーブルに固定したディスク基板の中心となるよう構成されている。
前記ディスク基板は、その中央開口部をセンターピンに嵌め込み、位置決め及び回転テーブルへ固定されている。また、バキューム装置等を用いて基板を回転テーブルに吸い付けて固定してもよい。ディスク基板は回転テーブルに固定されることにより、回転テーブルと一体となって回転する。
前記スピンカップは、回転テーブルに保持された前記ディスク基板の外周を囲うカップ状の部材である。
前記スピンカップには、後述する温度制御手段が設けられている。前記スピンカップは、表面に流路が設けられるカップ状のスピンカップ本体と、該流路を覆う断熱カバーとを有することが好ましい。
前記回転手段は、前記回転テーブルを介して前記ディスク基板を回転させ、前記紫外線硬化樹脂組成物を前記ディスク基板上に展延する手段であり、例えば駆動モーターなどが挙げられる。
前記滴下工程は、ディスク基板上に紫外線硬化樹脂組成物を滴下する工程であり、滴下手段により好適に行うことができる。
前記滴下手段は、前記回転テーブルに保持されたディスク基板を第1の回転速度で回転させながら、該ディスク基板の中心に設けられた円形開口部の周囲に環状に紫外線硬化樹脂組成物を滴下する手段であり、例えばノズルとアームとポンプと貯蔵容器との組み合わせなどが挙げられる。
前記滴下位置としては、ディスク基板の中心に設けられた円形開口部の周囲であり、該円形開口部に環状に滴下する。前記滴下手段としては、適宜移動可能であり、滴下位置を変更可能なものが好ましく、不使用時には、退避可能であるものが好ましい。なお、滴下手段の数は1つに限られず、2以上であっても構わない。
前記紫外線硬化樹脂組成物の滴下量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばブルーレイディスクのカバー層を形成する場合には、最終的な厚みが0.1mmとなるように調整することができる。
前記第1の回転速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、50rpm〜100rpmが好ましい。
なお、広く光(可視光、紫外線、赤外線を含む)、電磁波(波長を問わず)、X線、電子線、更には超音波等の振動波も含めた放射線により硬化する材料を用いることもできるが、一般的には省エネルギーで、かつ高速に硬化可能な点から紫外線硬化樹脂組成物が好適に用いられている。
前記加熱手段は、前記ディスク基板上の紫外線硬化樹脂組成物を加熱する手段である。
前記加熱手段による加熱は、前記滴下手段による紫外線硬化樹脂組成物の滴下を停止して前記ディスク基板上に加熱手段を移動し、前記加熱手段より前記ディスク基板上に滴下された前記紫外線硬化樹脂組成物を加熱することにより行われることが好ましい。
前記加熱手段としては、適宜移動可能であり、加熱位置を変更可能なものが好ましく、不使用時には、退避可能であるものが好ましい。なお、加熱手段の数は1つに限られず、2以上であっても構わない。
前記加熱温度は、用いる紫外線硬化樹脂組成物などに応じて異なり適宜変更することができるが、200℃〜500℃が好ましい。
前記樹脂膜形成工程は、ディスク基板上の紫外線硬化樹脂組成物を加熱しながら回転させて、紫外線硬化樹脂組成物からなる樹脂膜を前記ディスク基板上に形成する工程であり、前記加熱手段により前記ディスク基板上の紫外線硬化樹脂組成物を加熱しながら第1の回転より高速で第2の回転速度で回転させて、紫外線硬化樹脂組成物からなる樹脂膜を前記ディスク基板上に形成することが好ましい。
前記第2の回転速度としては、前記第1の回転速度より高速であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、100rpm〜200rpmが好ましい。
前記振切工程は、ディスク基板上に形成された樹脂膜を回転させて余分な紫外線硬化樹脂組成物を振り切る工程であり、前記加熱手段による加熱を停止した後、前記ディスク基板上から前記加熱手段を外側に移動し、前記ディスク基板上に形成された樹脂膜を第2の回転速度より高速の第3の回転速度で回転させて、余分な樹脂組成物を振り切ることが好ましい。
前記第3の回転速度としては、前記第2の回転速度より高速であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、800rpm〜1,500rpmが好ましい。
前記温度制御工程は、複数回に亘るスピンコート処理において、各回の展延時に前記加熱手段により上昇する前記スピンカップの到達温度が、一定となるように制御する工程であり、温度制御手段により好適に行うことができる。
前記温度制御の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)スピンカップを冷却してスタート時の温度を保持する方法、(2)サチレートした時のスピンカップの温度を保持する方法などが挙げられる。
前記(i)〜(ii)における管としては、大きさ、形状、材料などについて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ステンレススチール(SUS)、Cu、Al等の金属製の管が好適である。
前記(i)の管は断熱材で被覆することが好ましく、該断熱材としては、例えば発泡ポリプロピレン、発泡ウレタンなどが挙げられる。
前記(ii)では、スピンカップ本体を厚肉に形成して、該スピンカップ本体に管を埋設する。また、スピンカップ本体に冷却溝を加工し、ロウ付けやOリングなどで密閉した構造としてもよい。
前記(i)〜(iii)における媒体としては、例えば水、空気、エチレングリコール、油などが挙げられる。これらの中でも、水が好ましい。該水としては、冷却水及び温水のいずれであってもよい。
前記温調手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば射出成形機で使用する金型温調機などが挙げられる。
前記吸引手段としては、スピンカップ内の加熱された空気を速やかに排出することができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばブロアー、シロッコファン、ターボファンなどが挙げられる。前記吸引手段としては、スピンカップの上面開口に臨む吸引口を有するものが好ましい。前記吸引手段は、適宜移動可能であり、吸引位置を変更可能なものが好ましく、不使用時には、退避可能であるものが好ましい。なお、吸引手段の数は1つに限られず、2以上であっても構わない。
ディスク基板15は、スピンコート処理を施す基板であり、中央部に開口部を有するディスク状の構造とされた光ディスク製造用の基板である。回転テーブル9は、スピンコートを行う際に、ディスク基板15を載置する台であり、図示を省略している回転駆動モータなどの動力により、ディスク基板15の載置面に対して垂直方向を軸として回転する。なお、この回転の中心は、回転テーブル9に固定したディスク基板15の中心となるよう構成されている。
センターピン7は、ディスク基板15の開口部を嵌め込み基板15の中央部の開口部を塞ぐことで、ディスク基板15の位置決め及び回転テーブル9への固定等を行うためのものである。なお、バキューム装置等を用いてディスク基板15を回転テーブル9に吸い付けて固定してもよい。ディスク基板15を回転テーブル9に固定することで、該ディスク基板15は、回転テーブル9と一体となって回転する。
図1Bのスピンカップは、前記管23中に媒体として冷却水を循環させることにより、スピンカップ20の温度上昇を防止することができ、スピンカップ20の温度上昇を35℃に抑えることが可能となり、スピンカップの到達温度を短時間で安定領域に到達させることができる。
この図1Cのスピンカップは、前記管23中に媒体として冷却水を循環させることにより、スピンカップ20の温度上昇を防止することができ、スピンカップ20の温度上昇は35℃に抑えることが可能となり、スピンカップの温度を短時間で安定領域に到達させることができ、スピンカップの到達温度が、一定となるように制御することができる。
まず、図3Aに示すように、ディスク基板15を第1の回転速度で回転させながら、前記ディスク基板15の中心に設けられた円形開口部の周囲に、滴下手段としてのノズル10により紫外線硬化樹脂組成物11を滴下する(滴下工程)。
滴下手段としてのノズル10による前記紫外線硬化樹脂組成物11の滴下を停止して、前記ディスク基板15上に加熱手段12を移動する。
次に、図3Bに示すように、加熱手段12から前記ディスク基板15上の紫外線硬化樹脂組成物11に熱を放射する。
前記加熱手段12から前記ディスク基板15上の前記紫外線硬化樹脂組成物に熱を放射しながら第1の回転より高速の第2の回転速度で回転させて、前記紫外線硬化樹脂組成物11からなる樹脂膜を前記ディスク基板15上に展延する(樹脂膜形成工程)。
次に、前記加熱手段12からの加熱を停止した後、前記ディスク基板15上から前記加熱手段12を外側に移動する。
前記ディスク基板15上に形成された紫外線樹脂組成物11からなる樹脂膜を第2の回転速度より高速の第3の回転速度で回転させて、余分な樹脂組成物を振り切る(振切工程)。引き続き、滴下工程から前記振切工程を繰り返す。この際、前記滴下工程から前記振切工程の間で、温度制御工程を行う。前記温度制御工程は温度制御手段により行われ、該温度制御手段として、スピンカップを冷却もしくは加温可能な媒体を循環する管23と、温調手段13と、スピンカップ内の空気を吸引して排気する吸引手段16とを備えており、これらの働きにより、複数回に亘るスピンコート処理において、各回の展延時に前記加熱手段により上昇する前記スピンカップの到達温度が、一定となるように制御する。
そこで、図3Cに示すように、余分な紫外線硬化樹脂組成物を振切後、吸引手段16により強制的にスピンカップ25内の加熱された空気を排出することで、スピンカップ25内の空気の温度を、スピンコート装置内の温度と同じ23℃〜24℃に調節することができる。
本発明の光ディスク製造装置は、本発明の前記スピンコート装置を少なくとも有してなり、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
前記スピンコート装置により光ディスクのカバー層を形成する。
前記その他の手段としては、光ディスクの層構成などに応じて異なるが特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタ装置、紫外線照射装置、ディスク回転装置、搬送手段、制御手段などが挙げられる。
前記その他の工程としては、光ディスクの層構成などに応じて異なるが特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば反射層形成工程、誘電体層形成工程、記録層形成工程などが挙げられる。
次いで、下部保護層上に、本発明の前記スピンコート方法により紫外線硬化樹脂組成物を塗布し、厚み0.1mmのカバー層を形成して、全体厚み約1.2mmの光記録媒体を作製することができる。
図1Aに示すスピンカップ20を具備したスピンコート装置を用いて、図2に示す製造工程フローで、下記組成の紫外線硬化樹脂組成物からなる樹脂膜の形成を連続して行った。
−紫外線硬化樹脂組成物の組成−
紫外線硬化性樹脂組成物は、少なくともラジカル重合性オリゴマーやモノマーと、光重合開始剤とを含有しており、光重合開始剤は150nm〜450nmに有効吸収波長領域を持つ化合物が使用できる。ラジカル重合性オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物、エステル(メタ)アクリレート化合物、ポリカーボネート系化合物、ポリアクリル系化合物、ポリビニル系化合物等が使用できる。ラジカル重合性モノマーとしては、1分子中に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1つ有する(メタ)アクリレート化合物などが使用できる。また、(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能化合物及び2つ以上有する多官能化合物のいずれの化合物を用いてもよく、これらを適当な比率で併用してもよい。更に必要に応じて有機溶剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、表面潤滑剤、紫外線吸収剤、充填剤等の添加物も含有することができる。
次に、紫外線硬化樹脂組成物の滴下を停止して前記ディスク基板上に加熱手段としてのIRランプを移動し、該IRランプにより前記ディスク基板上に滴下された前記紫外線硬化樹脂組成物を65℃に加熱した。
次に、IRランプにより前記ディスク基板上に滴下された前記紫外線硬化樹脂組成物を加熱しながら第1の回転より高速の第2の回転速度(150rpm)で回転させて、紫外線硬化樹脂組成物からなる樹脂膜を前記ディスク基板上に形成した。
次に、IRランプによる加熱を停止した後、前記ディスク基板上からIRランプを外側に移動し、前記ディスク基板上に形成された樹脂膜を第2の回転速度より高速の第3の回転速度(1,200rpm)で回転させて、余分な紫外線硬化樹脂組成物を振り切った。
以上により、ディスク基板上に紫外線硬化樹脂組成物からなる樹脂膜を形成した。
連続的に樹脂膜を形成した間におけるスピンカップの温度とスピンコート装置の稼動時間との関係を図5に示す。図5中ピークの1つ1つが各回のスピンコート処理を表している。図5に示すように各回のスピンカップの温度は一定ではなく、変動しており、各回における最も高いスピンカップの温度が到達温度となる。
また、図5のA部分に相当するスタート時のディスク基板の半径方向の膜厚分布を図6に示し、図5のB部分に相当するスピンカップの到達温度が安定するディスク基板の半径方向の膜厚分布を図7に示す。なお、スピンカップの温度は、熱電対をスピンカップの複数個所に設置して連続的に測定した。また、樹脂膜の膜厚分布は、Dr.schenc社製のMT−200.Blueにより測定した。
図5〜図7の結果から、スタート時のスピンカップの到達温度が室温と同じ26℃では樹脂膜の膜厚は107μmであり、スタート後10分間でスピンカップの到達温度は40℃付近まで上昇し安定した。このときの樹脂膜の膜厚は100μmであった。スピンカップの到達温度が安定するまでの間は、樹脂膜の膜厚は変化するため、不良数は60枚であった(即ち、膜厚が安定化するまでのスピンコート処理回数が60回であった)。
なお、不良品か否かの判断は、安定した到達温度での樹脂膜の膜厚(ここでは100μm)に対し所定範囲(ここでは±2μm)を超えるものを不良品と判断した。また、「スピンカップの到達温度が安定」とは、樹脂膜の膜厚が上記所定範囲になったことを意味する。
比較例1において、図1Aのスピンカップ20の代わりに図1Bに示すスピンカップを有するスピンコート装置を用いた以外は、比較例1と同様にして、図2に示す製造工程フローで、ディスク基板上に紫外線硬化樹脂組成物からなる樹脂膜の形成を連続して行った。
図1Bのスピンカップ20は、図1Aのスピンカップ20のスピンカップ本体8上に、温度制御手段としてのステンレススチール(SUS)製の管23を渦巻状に設置し、該管23を断熱材22で覆い、該断熱材上にカバー21を設けたものである。なお、管23内の媒体としては19℃の水を循環させて用いた。また、加熱手段としては、IRランプを用いた。
連続的に樹脂膜の作製を行った際のスピンコート装置の稼働時間とスピンカップの温度との関係を図8に示す。図8中ピークの1つ1つが各回のスピンコート処理を表している。図5に示すように各回のスピンカップの温度は一定ではなく、変動しており、各回における最も高いスピンカップの温度が到達温度となる。
この実施例1では、スタート時のスピンカップの到達温度は27℃であり、スタート後5分間でスピンカップの到達温度は35℃付近で安定していることが分かった。比較例1と比べて、到達温度が安定化し、樹脂膜の膜厚を一定に形成することができるまでの時間は短縮できた。また、27℃から35℃にスピンカップの到達温度が変化する間には樹脂膜の膜厚変動が生じ、不良数は30枚であった(即ち、膜厚が安定化するまでのスピンコート処理回数が30回であった)が、比較例1に比べて不良数を大幅に減少できた。
比較例1において、図1Aのスピンカップ20の代わりに図1Cに示すスピンカップ25を有するスピンコート装置を用いた以外は、比較例1と同様にして、図2に示す製造工程フローで、ディスク基板上に紫外線硬化樹脂組成物からなる樹脂膜の形成を連続して行った。
図1Cのスピンカップ25は、図1Aのスピンカップ20のスピンカップ本体8を厚肉とし、該スピンカップ本体8に温度制御手段としてのステンレススチール(SUS)製の管23を渦巻き状に埋設したものである。なお、管内の媒体としては19℃の水を循環させて用いた。また、加熱手段としては、IRランプを用いた。
この実施例2では、スタート時のスピンカップの到達温度は26℃であり、スタート後5分間でスピンカップの到達温度は35℃付近で安定していることが分かった。比較例1と比べて、スピンカップの到達温度が安定化し、樹脂膜の膜厚を一定に形成することができるまでの時間は短縮できた。また、26℃から35℃にスピンカップの到達温度が変化する間には膜厚変動が生じ、不良数は30枚(即ち、膜厚が安定化するまでのスピンコート処理回数が30回であった)であったが、比較例1に比べて大幅に減少できた。
比較例1において、図1Aのスピンカップ20の代わりに図1Cに示すスピンカップ25を有するスピンコート装置を用いた以外は、比較例1と同様にして、図4に示す製造工程フロー(ただし、温調フィードバック制御は行わない)で、ディスク基板上に紫外線硬化樹脂組成物からなる樹脂膜の形成を連続して行った。
図1Cのスピンカップ25は、図1Aのスピンカップのスピンカップ本体8を厚肉とし、該スピンカップ本体8に温度制御手段としてのステンレススチール(SUS)製の管23を渦巻き状に埋設したものである。なお、管内の媒体としては19℃の水を循環させて用いた。また、加熱手段としてはIRランプを用い、吸引手段としてはブロアーを用いた。
この実施例3では、スタート時のスピンカップの到達温度は26℃であり、スタート後5分間でスピンカップの到達温度は35℃付近で安定していることが分かった。比較例1と比べて、スピンカップの到達温度が安定し、樹脂膜の膜厚を一定に形成することができるまでの時間は短縮できた。また、26℃から35℃にスピンカップ温度が変化する間には膜厚変動が生じ、不良数は30枚(即ち、膜厚が安定化するまでのスピンコート処理回数が30回であった)であったが、比較例1に比べて大幅に減少できた。
比較例1において、図1Aのスピンカップの代わりに図1Cに示すスピンカップを有するスピンコート装置を用いた以外は、比較例1と同様にして、図3A〜図3C及び図4に示す製造工程フローで、ディスク基板上に紫外線硬化樹脂組成物からなる樹脂膜の形成を連続して行った。
図1Cのスピンカップ25は、図1Aのスピンカップ20のスピンカップ本体8を厚肉とし、該スピンカップ本体8に温度制御手段としてのステンレススチール(SUS)製の管23を渦巻き状に埋設したものである。なお、管内の媒体としては60℃の温水を循環させて用いた。
また、加熱手段としてはIRランプを用い、吸引手段としては、ブロアーを用い、温調機としては、射出成形機で使用する金型温調機を用いた。
連続的に樹脂膜の作製を行った際のスピンコート装置の稼働時間とスピンカップの温度との関係を図9に示す。また、図9のC部分に相当するスタート時のディスク基板の半径方向の膜厚分布を図10に、図9のD部分に相当する7分間後のディスク基板の半径方向の膜厚分布を図11に示す。
この実施例4では、温調フィードバック制御を行った結果、図9に示すようにスタート時からスピンカップの到達温度は40℃付近で安定していることが分かった。また、図10及び図11の結果から、スタート時から樹脂膜の膜厚は安定していることが分かった。なお、不良数はゼロであった。
これに対し、実施例4において、図3Cに示すように、各回のスピンコート処理終了後、次回のスピンコート処理の開始までの間に、スピンカップ内の空気をブロアーによる強制排気を行い、スピンカップ内の雰囲気温度を測定した結果を図14、及びその際の樹脂膜の膜厚分布の結果を図15に示す。これらの結果から、各回のスピンコート処理終了後、次回のスピンコート処理の開始までの間に、スピンカップ内の空気をブロアーで強制排気することによりピーク温度及び下降時の温度のバラツキ小さくなり、樹脂膜の膜厚の安定化が実現できることが分かった。
8 スピンカップ本体
9 回転テーブル
10 滴下手段(ノズル)
11 紫外線硬化樹脂組成物
12 加熱手段(熱源)
13 温調手段
14 熱電対
15 ディスク基板
21 カバー
22 断熱材
23 流路(管)
20、25 スピンカップ
Claims (11)
- ディスク基板を回転可能に保持する回転テーブルと、
前記回転テーブルに保持されたディスク基板の外周を囲うスピンカップと、
前記ディスク基板上に紫外線硬化樹脂組成物を滴下する滴下手段と、
前記回転テーブルを介して前記ディスク基板を回転させ、前記紫外線硬化樹脂組成物を前記ディスク基板上に展延する回転手段と、
前記ディスク基板上の紫外線硬化樹脂組成物を加熱する加熱手段と、
複数回に亘るスピンコート処理において、各回の展延時に前記加熱手段により上昇する前記スピンカップの到達温度が、一定となるように制御する温度制御手段と、を有し、
前記温度制御手段が、前記スピンカップに形成された流路と、該流路に媒体を供給する供給手段とを有することを特徴とするスピンコート装置。 - 滴下手段が、回転手段により回転しているディスク基板に対し、該ディスク基板の中心に設けられた円形開口部の周囲に環状に紫外線硬化樹脂組成物を滴下する請求項1に記載のスピンコート装置。
- スピンカップが、表面に流路が設けられたスピンカップ本体と、該流路を覆う断熱カバーとを有する請求項1から2のいずれかに記載のスピンコート装置。
- 温度制御手段が、スピンカップの温度を検知する検知手段と、該検知した温度に基づいて、媒体の温度をフィードバック制御する温調手段と、を有する請求項1から3のいずれかに記載のスピンコート装置。
- 各回のスピンコート処理終了後、次回のスピンコート処理の開始までの間に、スピンカップ内の空気を吸引して排気する吸引手段を有する請求項1から4のいずれかに記載のスピンコート装置。
- 吸引手段が、スピンカップの上面開口に臨む吸引口を有する請求項5に記載のスピンコート装置。
- 回転テーブルに保持されたディスク基板の外周を囲うスピンカップを有するスピンコート装置の温度を制御する方法であって、
前記ディスク基板上に滴下された紫外線硬化樹脂組成物を、加熱しながら前記ディスク基板上に展延する展延工程と、
複数回に亘るスピンコート処理において、各回の展延工程で加熱により上昇する前記スピンカップの到達温度が、一定となるように制御する温度制御工程とを含み、
前記スピンカップに形成された流路に媒体を供給することで、前記スピンカップの到達温度が一定となるように制御することを特徴とするスピンコート装置の温度制御方法。 - 展延工程が、ディスク基板上に紫外線硬化樹脂組成物を滴下する滴下工程と、ディスク基板上の紫外線硬化樹脂組成物を加熱しながら回転させて、紫外線硬化樹脂組成物からなる樹脂膜を前記ディスク基板上に形成する樹脂膜形成工程と、ディスク基板上に形成された樹脂膜を回転させて余分な紫外線硬化樹脂組成物を振り切る振切工程とを含む請求項7に記載のスピンコート装置の温度制御方法。
- スピンコート処理終了後、次回のスピンコート処理の開始までの間に、スピンカップ内の空気を吸引して排気する吸引工程を含む請求項7から8のいずれかに記載のスピンコート装置の温度制御方法。
- 請求項1から6のいずれかに記載のスピンコート装置を少なくとも有してなり、該スピンコート装置によりカバー層を形成することを特徴とする光ディスク製造装置。
- 請求項1から6のいずれかに記載のスピンコート装置を用いて、カバー層を形成するカバー層形成工程を少なくとも含むことを特徴とする光ディスク製造方法。
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