JP4342087B2 - 光情報媒体の製造方法および製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、再生専用光ディスク、光記録ディスク等の光情報媒体を製造する方法と、この方法に用いる装置とに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、再生専用光ディスクや光記録ディスク等の光記録媒体では、動画情報等の膨大な情報を記録ないし保存するため、記録密度向上による媒体の高容量化が求められ、これに応えるために、高記録密度化のための研究開発が盛んに行われてきた。
【0003】
その中のひとつとして、例えばDVD(Digital Versatile Disk)にみられるように、記録・再生波長を短くし、かつ、記録・再生光学系の対物レンズの開口数(NA)を大きくして、記録・再生時のレーザービームスポット径を小さくすることが提案されている。DVDをCDと比較すると、記録・再生波長を780nmから650nmに変更し、NAを0.45から0.6に変更することにより、6〜8倍の記録容量(4.7GB/面)を達成している。
【0004】
しかし、このように高NA化すると、チルトマージンが小さくなってしまう。チルトマージンは、光学系に対する光記録媒体の傾きの許容度であり、NAによって決定される。記録・再生波長をλ、記録・再生光が入射する透明基体の厚さをdとすると、チルトマージンは
λ/(d・NA3
に比例する。また、光記録媒体がレーザービームに対して傾くと、すなわちチルトが発生すると、波面収差(コマ収差)が発生する。基体の屈折率をn、傾き角をθとすると、波面収差係数は
(1/2)・d・{n2・sinθ・cosθ}・NA3/(n2−sin2θ)-5/2
で表される。これら各式から、チルトマージンを大きくし、かつコマ収差の発生を抑えるためには、基体の厚さdを小さくすればよいことがわかる。実際、DVDでは、基体の厚さをCD基体の厚さ(1.2mm程度)の約半分(0.6mm程度)とすることにより、チルトマージンを確保している。
【0005】
ところで、より高品位の動画像を長時間記録するために、基体をさらに薄くできる構造が提案されている。この構造は、通常の厚さの基体を剛性維持のための支持基体として用い、その表面にピットや記録層を形成し、その上に薄型の基体として厚さ0.1mm程度の光透過層を設け、この光透過層を通して記録・再生光を入射させるものである。この構造では、従来に比べ基体を著しく薄くできるため、高NA化による高記録密度達成が可能である。このような構造をもつ媒体は、例えば特開平10−320859号公報および特開平11−120613号公報に記載されている。
【0006】
厚さ0.1mm程度の光透過層を設けることにより、開口数NAの大きい、例えばNAが0.85程度の対物レンズが使用可能となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
厚さ0.1mm程度の光透過層の形成方法としては、例えばスピンコート法が挙げられる。スピンコート法を用いる場合、回転テーブルに固定したディスク基板の表面に樹脂を供給し、ディスク基板を回転させて、遠心力により樹脂を展延する。ディスク基板には、駆動装置に装填する際に利用する中心孔が形成されているため、樹脂を回転中心(ディスク基板の中央)に供給することはできず、回転中心から等距離に環状に供給することになる。しかし、樹脂供給位置が回転中心から離れるほど、光透過層の径方向での厚さむらが大きくなってしまう。
【0008】
光透過層の径方向での厚さむらを低減するため、ディスク基板の中心孔を、板状部材、円板部、閉塞板、キャップ等の閉塞手段により塞ぎ、この閉塞手段の中央付近、すなわち回転中心付近に樹脂を供給する提案がなされている(特開平10−320850号公報、同10−249264号公報、同10−289489号公報、同11−195250号公報、同11−195251号公報)。
【0009】
しかし、上記特開平10−320850号公報、特開平10−249264号公報、特開平11−195250号公報には、閉塞手段である板状部材ないしキャップをスピンコート後に取り外す方法が記載されておらず、工業的に利用することが困難である。
【0010】
これに対し上記特開平10−289489号公報には、スピンコート後、閉塞手段である円板部を打ち抜きまたは電磁石による吸着により取り外すことが記載されている。しかし、打ち抜きおよび電磁石による取り外しは工程上煩雑である。また、取り外しの際の閉塞手段の加速度が大きいため、樹脂塗膜に乱れが生じやすい。
【0011】
また、上記特開平11−195251号公報には、円形状のキャップの中央に支持体を一体化した構造の閉塞手段が記載されている。同公報には、この支持体を設けることにより、閉塞手段の着脱や位置合わせが容易になる旨が記載されている。この支持体は、少なくとも1つの孔を有する中空筒状のものであるか、複数の棒状体である。中空筒の内部または複数の棒状体で包囲された領域に樹脂を注入した後、ディスク基板と閉塞手段とを一体的に回転させることにより、ディスク基板上に樹脂層が形成される。この閉塞手段を用いれば、閉塞手段の取り外しは容易となる。
【0012】
しかし、この閉塞手段では、中空筒に設けられた孔または隣り合う棒状体の間から樹脂を流出させてスピンコートを行う。したがって、支持体の壁(孔以外の領域)または棒状体に樹脂が堰き止められてしまう。また、堰き止められた樹脂が、予測できないタイミングで一挙にディスク基板上に流出することがある。そのため、塗膜にむらが生じやすい。また、この閉塞手段は、樹脂と接触する面の形状が複雑であり、かつ、樹脂と接触する面積が大きいため、閉塞手段の洗浄が困難である。閉塞手段表面に樹脂が残存すると、塗膜にむらが生じやすい。また、同公報の表1には、中空筒の外径が4〜16mmの場合について塗膜の厚さ変動を調べているが、この結果から、塗膜の厚さむらは中空筒の外径に依存し、外径が大きいほど厚さむらが大きくなることがわかる。すなわち、中空筒の内部に樹脂を供給しても、塗布開始位置は回転中心とは一致せず、中空筒の外周位置が塗布開始位置となると考えられる。なお、樹脂の粘度が比較的高いことを考慮すると、中空筒の外径を4mm未満とすることは困難であるため、同公報記載の方法では、樹脂塗膜の厚さむらを著しく小さくすることは難しい。
【0013】
本発明の目的は、支持基体表面に情報記録面を有し、この情報記録面上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録または再生用のレーザー光が照射される光情報媒体を製造するに際し、製造工程および製造装置の複雑化を最小限に抑えた上で、光透過層の厚さむらを小さくすることである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(3)の本発明により達成される。
(1) 中心孔を有するディスク状の支持基体上に、情報記録面を有し、この情報記録面上に、樹脂を含有する光透過層を有し、この光透過層を通して記録または再生のためのレーザー光が入射するように使用される光情報媒体の前記光透過層を形成するための装置であって、
前記情報記録面を設けた前記支持基体を含む基板を載置し、回転させるための回転テーブルと、
前記中心孔を塞ぐための閉塞手段と、
樹脂を含有する塗布液を吐出するための吐出手段とを備え、
前記閉塞手段が、前記中心孔を塞ぐための円板部と、この円板部の中央に一体化された支持軸とを有し、
前記支持軸の外周面に前記塗布液が供給される光情報媒体の製造装置。
(2) 前記支持軸の少なくとも一部が、前記円板部に向かって直径が漸減する円錐台状である上記(1)の光情報媒体の製造装置。
(3) 上記(1)または(2)の光情報媒体の製造装置を用い、
前記回転テーブル上に載置した前記基板の前記中心孔を、前記円板部で塞いだ状態で、前記吐出手段から吐出された前記塗布液を前記支持軸に沿って前記円板部上に供給し、前記基板を前記閉塞手段と共に回転させることにより、前記円板部上に供給された塗布液を前記基板上に展延して樹脂層を形成する工程と、
前記樹脂層を硬化することにより光透過層とする工程とを有する光情報媒体の製造方法。
【0015】
【作用および効果】
本発明の製造装置は、図1および図3に示すように、中心孔101を有するディスク基板100を載置して回転させるための回転テーブル2と、中心孔101を塞ぐための閉塞手段3と、樹脂を含有する塗布液5を吐出するための吐出手段(ノズル4)とを備える。閉塞手段3は、中心孔101を塞ぐための円板部31と、この円板部31の中央に一体化された支持軸32とを有する。塗布液5は、支持軸32の外周面に供給される。
【0016】
本発明では、閉塞手段3に支持軸32を設けるため、媒体製造工程における閉塞手段3の取り扱いが容易となり、特に、スピンコート後に閉塞手段3を取り外すことが容易となる。
【0017】
なお、前述したように特開平11−195251号公報には、中空筒状の支持体または複数の棒状体からなる支持体を設けた閉塞手段が記載されているが、これに比べ、本発明で用いる閉塞手段には以下に説明する利点がある。
【0018】
前記特開平11−195251号公報では、支持体の壁または棒状体により樹脂が堰き止められてしまうため、前述したように塗膜にむらが生じやすい。これに対し本発明では、支持軸の外周面に塗布液を供給してスピンコートを行うため、塗膜にむらが生じにくい。また、本発明では、樹脂が付着するのは支持軸の外周面であるため、同公報記載のものに比べ閉塞手段の洗浄が容易である。また、同公報では、中空筒状の支持体の内部に粘度の比較的高い塗布液を供給するので、塗布液の流動性を確保するために支持体の外径を小さくすることができず、そのため、塗布開始位置が回転中心から比較的遠くなってしまう。これに対し本発明では、同公報に比べ支持軸の外径を著しく小さくできるので、塗膜の厚さむらを著しく低減できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明により製造される光情報媒体の構成例を、図8に示す。この光情報媒体は記録媒体であり、支持基体120上に、情報記録面として記録層104を有し、この記録層104上に光透過層102を有する。記録または再生のためのレーザー光は、光透過層102を通して入射する。
【0020】
本発明は、記録層の種類によらず適用できる。すなわち、例えば、相変化型記録媒体であっても、ピット形成タイプの記録媒体であっても、光磁気記録媒体であっても適用できる。なお、通常は、記録層の少なくとも一方の側に、記録層の保護や光学的効果を目的として誘電体層や反射層が設けられるが、図8では図示を省略してある。また、本発明は、図示するような記録可能タイプに限らず、再生専用タイプにも適用可能である。その場合、支持基体120と一体的に形成されるピット列が、情報記録面を構成することになる。
【0021】
次に、光透過層の形成方法を説明する。
【0022】
まず、図1および図2に示すように、回転テーブル2上にディスク基板100を載置する。このディスク基板100は、情報記録面を設けた支持基体であり、中心孔101を有する。ディスク基板100は、中心孔101が回転テーブル2の環状の突起21に填め込まれて固定される。なお、これらの図は断面図であるが、断面に現れる端面だけを表示し、奥行き方向の図示は省略してある。これ以降の断面図においても同様である。
【0023】
次いで、閉塞手段3により中心孔101を塞ぐ。この閉塞手段3は、中心孔101を塞ぐための円板部31と、その中央に一体化された支持軸32と、中心孔101に対向する側において円板部31に一体化された凸部33とを有する。凸部33を、突起21の内周部に嵌合することにより、閉塞手段3は回転テーブル2に固定されると共に、ディスク基板100と閉塞手段3との位置決めを行うことができる。ただし、ディスク基板100および閉塞手段3の回転テーブル2への固定方法は特に限定されず、例えば、ディスク基板100と閉塞手段3とが嵌合した状態で、閉塞手段3を回転テーブル2に嵌合させるものであってもよい。
【0024】
次に、図3に示すように、樹脂または樹脂溶液からなる塗布液5をノズル4から吐出し、支持軸32の外周面に塗布液5を供給する。このとき、回転テーブル2を比較的低速、好ましくは20〜100rpmで回転させ、円板部31上に一様に塗布液が行き渡るようにする。本発明で用いる樹脂は特に限定されず、例えば、エネルギー線硬化型樹脂を用いてもよく、熱硬化性樹脂を用いてもよいが、好ましくはエネルギー線硬化型樹脂、特に紫外線硬化型樹脂を用いる。
【0025】
次いで、図4に示すように、回転テーブル2を比較的高速で回転させることにより塗布液5を展延する。これにより、ディスク基板100上に樹脂層51が形成される。
【0026】
塗布液の展延条件は特に限定されない。スピンコート法において塗布液の粘度以外の条件を同一とした場合、理論的には、塗膜の厚さは塗布液の粘度の平方根に比例することが知られている。一方、回転数が大きいほど、また、回転時間が長いほど塗膜は薄くなる。したがって、スピンコート時の回転数および回転時間は、形成する樹脂層51の厚さおよび塗布液の粘度に応じて適宜決定すればよい。ただし、後述するように厚さ30〜300μm程度の光透過層を形成する場合には、塗布液の粘度は100〜100,000cP、回転数は500〜6,000rpm、回転時間は2〜10秒間の範囲からそれぞれ選択することが好ましい。
【0027】
次に、図5に示すように閉塞手段3をディスク基板100から離間する。用いる塗布液が紫外線硬化型樹脂を含有する場合、図6に示すように紫外線を照射して樹脂層51を硬化し、光透過層102とする。図6では、回転テーブル2上で紫外線を照射しているが、回転テーブルとは別に硬化用ステージを設けて、その上で硬化してもよい。また、ディスク基板を回転させながら閉塞手段を離間してもよい。
【0028】
なお、樹脂層51を硬化した後に、閉塞手段3をディスク基板100から取り外してもよい。しかし、硬化後に閉塞手段3を取り外すと、円板部3上に存在する樹脂層とディスク基板100上に存在する樹脂層との境界付近にバリが生じたり、硬化後の樹脂が破片となってディスク基板100上に飛散したりしやすい。したがって、閉塞手段3を取り外した後に樹脂層51を硬化することが好ましい。
【0029】
閉塞手段は、円板部と支持軸とを有するものであればよく、そのほかの構成は特に限定されない。図1に示す閉塞手段3は、円錐台状の円板部31と、円柱状の支持軸32とを有するものであるが、このほか、例えば図7(A)〜図7(D)にそれぞれ示す構成の閉塞手段も使用可能である。
【0030】
図7(A)に示す閉塞手段は、円錐台状の円板部31と、逆円錐台状の支持軸32とを有する。この閉塞手段を用いると、塗布液の塗布開始位置を円板部31の中央により近づけることができるので、塗膜の厚さむらをさらに低減できる。しかも、支持軸32の全体を細くする場合と異なり、支持軸32の機械的強度の低下を抑えることができる。また、支持軸32をチャック等により把持する場合に、落下しにくくなるので、閉塞手段の着脱および搬送の際に有利である。なお、支持軸32の全体が逆円錐台状である必要はない。すなわち、支持軸32の少なくとも一部が円板部31に向かって直径が漸減する円錐台状であって、かつ、それより円板部に近い領域において支持軸の直径が大きくならなければよい。
【0031】
図7(B)に示す閉塞手段は、円板部31の断面形状が図7(A)とは異なる。円板部31上に塗布液をむらなく展延するためには、外周部に向かって円板部31の厚さが漸減することが好ましい。その場合、円板部31の断面において、塗布液が展延される上縁の形状は、図7(A)に示すように直線状であってもよく、図7(B)に示すように曲線状であってもよい。また、図7(C)に示すように、円板部31の外周が垂直面であってもよい。ただし、図7(C)において円板部31の外周における厚さtは、好ましくは0.4mm以下である。厚さtが大きすぎると、樹脂層をむらなく塗布することが難しくなる。なお、図7(D)に示すように円板部31の厚さを均一としてもよい。
【0032】
本発明で用いる閉塞手段において、円板部31近傍における支持軸32の最小直径は、好ましくは4mm未満、より好ましくは2mm以下である。円板部31近傍における支持軸32の直径が大きすぎると、塗布開始位置が円板部31の中央から離れることになり、樹脂層51の径方向における厚さむらが大きくなってしまう。ただし、円板部31近傍における支持軸32の直径が小さすぎると、支持軸32の機械的強度が不十分となるので、上記最小直径は好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上である。支持軸32の長さは特に限定されず、その外周面への塗布液の供給が容易となるように、また、把持する際の取り扱いの容易さなどを考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは5〜100mm、より好ましくは10〜30mmとする。支持軸32が短すぎると、外周面への塗布液の供給がしにくくなり、また、把持もしにくくなる。一方、支持軸32が長すぎると、取り扱いが面倒になる。
【0033】
円板部31の直径は、ディスク基板の中心孔101の直径よりも大きく、かつ、ディスク基板が有する環状の情報記録面の内径よりも小さければよい。ただし、塗布液5が円板部31の下面に回り込んで中心孔101の周面(ディスク基板の内周面)を汚染することがあるので、円板部31の直径は中心孔101の直径よりも4mm以上、特に8mm以上大きいことが好ましい。また、円板部31を取り外す際に、その近傍の樹脂層51の形状に乱れが生じやすいので、円板部31の直径は情報記録面の内径よりも3mm以上、特に5mm以上小さいことが好ましい。具体的な寸法は、中心孔の直径および情報記録面の内径によっても異なるが、通常、直径60〜130mm程度の光ディスクに本発明を適用する場合には、円板部31の直径は20〜40mm、特に25〜38mmの範囲内とすることが好ましい。
【0034】
閉塞手段の構成材料は特に限定されず、金属、樹脂、セラミックス等のいずれであってもよく、これらの2種以上を用いた複合材料であってもよい。また、円板部31と支持軸32とを相異なる材料から構成してもよい。ただし、機械的強度、耐久性、寸法精度が良好であることから、閉塞手段は金属から構成することが好ましい。金属としては、例えばステンレス合金、アルミニウム、アルミニウム合金が好ましい。
【0035】
閉塞手段3の表面、特に円板部31の全表面は、塗布液よりも表面張力が低いことが好ましい。閉塞手段3の表面が塗布液に対し濡れにくければ、閉塞手段の表面に付着した塗布液の洗浄が容易となる。表面張力の制御は、閉塞手段の構成材料を適宜選択することによっても可能であるが、表面張力を低くしたい領域にテフロン加工等の撥水・撥油処理を施すことが好ましい。
【0036】
次に、本発明により製造される媒体各部の具体的構成を説明する。
【0037】
支持基体120は、媒体の剛性を維持するために設けられる。支持基体120の厚さは、通常、0.2〜1.2mm、好ましくは0.4〜1.2mmとすればよく、透明であっても不透明であってもよい。支持基体120は、通常の光記録媒体と同様に樹脂から構成すればよいが、ガラスから構成してもよい。光記録媒体において通常設けられるグルーブ(案内溝)121は、図示するように、支持基体120に設けた溝を、その上に形成される各層に転写することにより、形成できる。グルーブ121は、記録再生光入射側から見て手前側に存在する領域であり、隣り合うグルーブ間に存在する凸条はランドと呼ばれる。
【0038】
光透過層102は、レーザー光を透過するために透光性を有する。光透過層の厚さは、30〜300μmの範囲から選択することが好ましい。光透過層がこれより薄いと、光透過層表面に付着した塵埃による光学的な影響が大きくなる。一方、光透過層が厚すぎると、高NA化による高記録密度達成が難しくなる。
【0039】
【実施例】
実施例1
以下の手順で、再生専用光ディスクサンプルを作製した。
【0040】
情報を保持するピットを形成したディスク状支持基体{ポリカーボネート製、外径120mm、内径(中心孔の直径)15mm、厚さ1.2mm}の表面に、Alからなる反射層をスパッタ法により形成した。
【0041】
次いで、閉塞手段を用いる本発明法を利用して、以下の手順で光透過層を形成した。用いた閉塞手段は、ステンレス合金から構成され、図1に示す形状を有するものであり、円板部31は直径38mm、支持軸32は直径1mm、長さ20mmである。
【0042】
まず、回転テーブルを60rpmで回転させながら紫外線硬化型樹脂(大日本インキ化学工業社製のSD301、粘度500cP)を支持軸32の外周面に供給し、次いで、回転テーブルを800rpmで5秒間回転させることにより前記反射層表面に樹脂を展延して樹脂層を形成した。次いで、閉塞手段をディスク基板から離間した後、樹脂層を紫外線硬化することにより光透過層とし、光ディスクサンプルを得た。
【0043】
このサンプルの情報記録面に相当する半径23〜58mmの領域において、上記光透過層の厚さをレーザーフォーカス変位計により測定した。その結果、光透過層の厚さは97±2μmの範囲内に収まり、径方向の厚さむらが極めて小さいことが確認できた。
【0044】
実施例2
紫外線硬化樹脂として日本化薬社製のK2009(粘度2500cP)を用い、回転数2500rpmで4秒間スピンコートしたほかは実施例1と同様にして、光ディスクサンプルを作製した。このサンプルについて実施例1と同様な測定を行ったところ、光透過層の厚さは78±2μmに収まり、径方向の厚さむらが極めて小さいことが確認できた。
【0045】
実施例3
図7(A)に示す閉塞手段を用いたほかは実施例1と同様にして光ディスクサンプルを作製した。なお、この閉塞手段において、円板部31との接合部での支持軸32の直径は0.7mmであった。このサンプルについて実施例1と同様な測定を行ったところ、光透過層の厚さは98±1μmに収まり、径方向の厚さむらが実施例1よりも小さくなることが確認できた。
【0046】
比較例1
閉塞手段を使用せず、ディスク基板の半径19mmの位置に樹脂を供給したほかは実施例1と同様にして、光ディスクサンプルを作製した。このサンプルについて実施例1と同様な測定を行ったところ、光透過層の厚さは75±20μmであり、内周と外周との厚さの差は40μmと極めて大きくなった。
【0047】
比較例2
回転数800rpmで3秒間スピンコートしたほかは比較例1と同様にして、光ディスクサンプルを作製した。このサンプルについて実施例1と同様な測定を行ったところ、光透過層の厚さは96±25μmであった。すなわち、測定領域内における光透過層の最大厚さと最小厚さとの平均値は実施例1とほぼ同じにできたが、内周と外周との厚さの差は50μmと極めて大きくなった。
【0048】
比較例3
閉塞手段を使用せず、ディスク基板の半径19mmの位置に樹脂を供給したほかは実施例2と同様にして、光ディスクサンプルを作製した。このサンプルについて実施例1と同様な測定を行ったところ、光透過層の厚さは60±17μmであり、内周と外周との厚さの差は34μmと極めて大きくなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】光透過層の製造工程を説明する断面図である。
【図2】光透過層の製造工程を説明する断面図である。
【図3】光透過層の製造工程を説明する断面図である。
【図4】光透過層の製造工程を説明する断面図である。
【図5】光透過層の製造工程を説明する断面図である。
【図6】光透過層の製造工程を説明する断面図である。
【図7】(A)〜(D)は閉塞手段の構成例を示す断面図である。
【図8】光情報媒体の構成例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
2 回転テーブル
21 突起
3 閉塞手段
31 円板部
32 支持軸
33 凸部
4 ノズル
5 塗布液
51 樹脂層
100 ディスク基板
101 中心孔
102 光透過層
120 支持基体
121 グルーブ
104 記録層

Claims (3)

  1. 中心孔を有するディスク状の支持基体上に、情報記録面を有し、この情報記録面上に、樹脂を含有する光透過層を有し、この光透過層を通して記録または再生のためのレーザー光が入射するように使用される光情報媒体の前記光透過層を形成するための装置であって、
    前記情報記録面を設けた前記支持基体を含む基板を載置し、回転させるための回転テーブルと、
    前記中心孔を塞ぐための閉塞手段と、
    樹脂を含有する塗布液を吐出するための吐出手段とを備え、
    前記閉塞手段が、前記中心孔を塞ぐための円板部と、この円板部の中央に一体化された支持軸とを有し、
    前記支持軸の外周面に前記塗布液が供給される光情報媒体の製造装置。
  2. 前記支持軸の少なくとも一部が、前記円板部に向かって直径が漸減する円錐台状である請求項1の光情報媒体の製造装置。
  3. 請求項1または2の光情報媒体の製造装置を用い、
    前記回転テーブル上に載置した前記基板の前記中心孔を、前記円板部で塞いだ状態で、前記吐出手段から吐出された前記塗布液を前記支持軸に沿って前記円板部上に供給し、前記基板を前記閉塞手段と共に回転させることにより、前記円板部上に供給された塗布液を前記基板上に展延して樹脂層を形成する工程と、
    前記樹脂層を硬化することにより光透過層とする工程とを有する光情報媒体の製造方法。
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