JP5261987B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、固体高分子型燃料電池を備えた燃料電池システムに係り、特に低温時の起動性を改良した燃料電池システムに関する。
燃料電池は電解質を燃料極と酸化剤極によってはさむ構造を有し、燃料極に燃料ガス、酸化剤極に酸化剤ガスを供給することによって発電を行う。自動車用途においては電解質として、一般的には水素イオン導電性を有する高分子電解質膜を利用する場合が多い。燃料ガスとして水素、酸化剤ガスとして空気を燃料電池に供給すると、以下のような反応が起こる。
[燃料極 ]:2H2 → 4H+ + 4e- … (化1)
[酸化剤極]:O2 +4H+ +4e- → 2H2O … (化2)
したがって燃料電池は副生成物として水しか排出しないため、内燃機関のような汚染物質または温暖化ガスなど地球環境に対するダメージを与える物質を放出しない利点がある。
生成された水が燃料電池内部から適切に除去されない場合、反応ガス流路やガス拡散層に残留し反応ガスの拡散の阻害を引き起こしてしまう。一般にフラッディングと呼ばれる前記現象は、反応ガスが触媒に到達することを妨げるため発電性能の低下を引き起こす要因となる。特に氷点下においては、残留した水の凍結により発電ができない問題がある。このような燃料電池システムを車両に搭載した燃料電池車両を氷点下から起動した場合には、発電が不安定になってしまうため、暖機運転が完了しセル電圧が通常通りに戻るまで円滑に走行することができなく、運転者が不快感を感じてしまう問題点が有る。
そこで、低温下における起動時にスタックの温度とセル電圧をモニターし、その値に基づき燃料電池スタックから取り出し可能な制限電流を求め、この制限電流が所定値を超えた時に車両を発進可能とする技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
特開2004−178998号公報(第7頁、図2)
しかしながら車両が停止した状態で燃料電池システムが消費する電流は上記制限電流以下となる場合が多い。このため暖機中は制限電流以下で発電し、車両発進時に制限電流を最大とする大きな電流で発電を行うことになる。したがって燃料電池が発電可能な最大電流で発電できるか否かが判明するのは車両発進時となり、発電ができない場合は発進直後に車両が停止するという問題点があった。
上記問題点を解決するために、本発明は、燃料電池システム起動時の燃料電池状態が所定条件を満たしていれば、燃料電池の通常発電を許可する一方、所定条件を満たしていなければ、通常発電を許可せず暖機発電を行う燃料電池システムにおいて、燃料電池システム起動時に、所定の基準暖機電力で所定の時間、前記燃料電池の状態を診断するための診断発電を行なわせ、該診断発電中に測定される燃料電池スタックの電圧値から、診断発電開始直後に一旦低下した電圧が取り得る最低値を検出し、前記燃料電池スタックの電圧値の前記最低値が所定の最高診断電圧値より大きい場合、前記燃料電池に通常発電を許可する条件である通常発電許可条件として、燃料電池の通常発電許可温度を基準値よりも高くなるように変更することを要旨とする。
本発明によれば、暖機発電中または通常発電開始後の発電電力低下や発電中止を回避することができる燃料電池システムを提供することができるという効果がある。
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。尚、以下に説明する各実施例は、特に限定されないが、低温時の起動性が要求される燃料電池車両に適した燃料電池システムである。本発明を燃料電池車両に搭載する燃料電池システムに適用した場合、小電力の暖機発電終了後に車両走行のための大電力の発電を行う際に、暖機発電中に車両走行可能か判断し、車両走行が不可能な場合は車両走行を可能にするための手段を提供することができる。
発明者の研究によれば、室温以下や特に氷点下において燃料電池の発電を開始するとき、発電電力が同じ場合は燃料電池の初期状態、特にMEA(膜電極接合体)の水分状態によって電圧挙動が図1のように変化する。即ち、暖機発電開始直後に、燃料電池電圧は一旦低下するが、この燃料電池電圧の最低値と、暖機発電開始後の安定性に関連がある。
図1に一点鎖線で示すように、標準暖機電力で暖機開始した場合の燃料電池電圧の最低値Vmin3がある電圧値VH より高ければ、暖機発電中は標準的な挙動を示すが、通常発電へ移行した後に、発電電力低下や発電停止に至る。図1に実線で示すように、標準暖機電力で暖機開始した場合の燃料電池電圧の最低値Vmin2がある電圧値VL 以上かつある電圧値VH 以下であれば、暖機発電中、及び通常発電開始後も発電電力低下や発電停止をすることなく、安定した発電が行える。図1に破線で示すように、標準暖機電力で暖機開始した場合の燃料電池電圧の最低値Vmin1がある電圧値VL より低ければ、暖機発電中に、発電電力低下や発電停止に至るが、通常発電開始後は、安定した発電を行える。
発明者は暖機発電中の燃料電池電圧の最低値Vmin と、暖機発電中の挙動や通常発電開始後の発電状態の間に以下の表1に示すような相関性があることを見出した。
Figure 0005261987
そこで本発明は、燃料電池システム起動時の燃料電池状態が所定条件を満たしていれば、燃料電池の通常発電を許可する一方、所定条件を満たしていなければ、通常発電を許可せず暖機発電を行う燃料電池システムにおいて、燃料電池システム起動時に、所定の基準暖機電力で所定の時間、前記燃料電池の状態を診断するための診断発電を行なわせ、該診断発電中に測定される燃料電池の電圧値から最低値を検出し、該最低値に基づいて、前記燃料電池に通常発電を許可する条件である通常発電許可条件、または診断発電に続く暖機発電の条件である暖機発電条件を変更することを要旨とする。
このように、所定の基準暖機電力で所定時間、診断発電を実施することによって燃料電池電圧の低下を引き起こし、そのときの燃料電池電圧の最低値から暖機発電中、および通常発電開始後の挙動を予測し、発電電力低下あるいは発電停止が予測される場合は、暖機発電条件、または通常発電許可条件の変更によって、少なくとも発電停止を回避することができる。
ここで基準暖機電力は、任意の電力を設定することができるが、可能な限り大きな電力で発電をしたほうが電圧低下が明確に現れる。たとえば、燃料電池システムを運転する上で最低限必要な電力を基準暖機電力とすることもできる。
また、診断発電を行う所定時間は、任意の時間を設定することができるが、所定の基準暖機電力では暖機発電が継続できない場合もあるため、燃料電池電圧の最低値が検出できる最短の時間とすることが好ましい。燃料電池や燃料電池システムの構成に依存するが、一般的に発電が停止しない場合は発電開始後5秒以内に燃料電池電圧が回復を始めるため、診断発電の所定時間は、例えば5秒とする。
図2は、本発明に係る燃料電池システムの実施例1の構成を説明するシステム構成図である。同図において、燃料電池システム1は、固体高分子型の燃料電池スタック2を備えている。燃料電池スタック2は、多数のセルを電気的に直列に接続し、各セルのガス流路としては並列に接続したものである。燃料電池スタック2は、その両端部に、電流取り出し用の負極(アノード、燃料極)エンドプレート3と、正極(カソード、酸化剤極)エンドプレート4とを備えている。
水素タンク5は、燃料ガスとしての水素ガスを高圧で貯蔵する。水素タンク5の高圧水素ガスは、水素圧力調整弁6により燃料電池の運転圧力まで減圧され、燃料電池スタック2のアノード入口へ供給される。アノードで消費されなかった水素ガスは、燃料電池スタック2のアノード出口から排出され、水素循環路8及び水素循環ブロア9を介してアノード入口へ循環される。またアノード出口に連通するパージ弁7が設けられている。パージ弁7は、アノード及び水素循環路8に蓄積した窒素等の不純物を排出する際に開かれ、通常は閉じている。
空気コンプレッサ10は、酸化剤ガスとして取り込んだ空気を圧縮して燃料電池スタック2のカソード入口へ供給する。カソード出口には、空気排圧弁11が設けられ、カソード圧力を制御する。
また、燃料電池スタック2の温度を制御するための冷却システムが設けられている。この冷却システムは、冷却液を循環させる冷却液ポンプ12と、冷却液の熱を放出するラジエータ13と、起動時に冷却液を加熱することにより燃料電池スタック2を加熱する加熱手段である電気ヒータ14と、燃料電池スタック2の冷却液出口に配置された冷却液温度計15とを備えている。冷却液は、水にエチレングリコール等の凝固点降下剤を車両使用環境に応じた濃度で溶かしたもので、氷点下でも凍結しない冷却液である。
冷却液温度計15は燃料電池から排出される冷却液温度を測定しているため、燃料電池スタック2の内部温度を測定することができる。測定された温度信号はシステム制御装置18に送信される。
尚、本実施例では、燃料電池の加熱手段として、燃料電池の冷却液を加熱するヒータ14を設けたが、加熱手段はこれに限らず、燃料電池スタック2の内部に組み込まれた電気ヒータ等であってもよい。
燃料電池スタック2が発電した電力は、負荷制御装置16に供給される。供給された電力は、燃料電池自動車の走行用モーターや燃料電池システムを運転するための補機類の駆動用電力として使用される。また、負荷制御装置16は、システム制御装置18に信号に応じて、暖機発電電力や通常発電電力の大きさを制御する。
また燃料電池システム1は、燃料電池スタック2の電圧を測定するための燃料電池電圧計17を備え、測定された電圧信号はシステム制御装置18に送信される。
システム制御装置18は、燃料電池システム全体を制御するため、水素圧力調整弁6、パージ弁7、水素循環ブロワ9、空気コンプレッサ10、空気背圧弁11、冷却液ポンプ12、ヒータ14、負荷制御装置16に対して制御信号を送信する機能を有する。
また、システム制御装置18は、負荷制御装置16へ、暖機発電電力の取り出しや通常発電電力の取り出しの指示、及び取り出し電力の大きさ及び上限を指示する信号を出力する。さらに、システム制御装置18は、本発明における燃料電池システム起動時の制御を行う。システム制御装置18は、特に限定されないが、本実施例では、CPUと、プログラムROMと、作業用RAMと、入出力インタフェースとを備えたマイクロプロセッサで構成されている。
図3は、システム制御装置18が実行する本実施例1における燃料電池システム起動時の制御フローチャートである。図3において、まず、燃料電池システムの起動が開始されると、システム制御装置18は、燃料電池スタック2へ水素圧力調整弁6から水素ガス、空気コンプレッサ10から空気の供給を開始する。同時に、システム制御装置18は、冷却液ポンプ12を僅かに駆動して、燃料電池スタック2の冷却液出口から燃料電池スタック2内部の冷却液が冷却液温度計15の位置へ排出されるように制御する。
次いで、ステップ(以下、ステップをSと略す)10において、システム制御装置18は、冷却液温度計15が示す燃料電池温度Tを読み込む。次いでS12において、システム制御装置18は、燃料電池温度Tが0℃より高いか否かを判定する。S12の判定温度は、生成水の凍結が起こらない温度を設定する。基本的には0℃となるが、燃料電池の構成や温度計測点の場所、さらに温度計測誤差や燃料電池内の温度分布を考慮して、たとえば0℃以上10℃以下を設定してもよい。
S12の判定で燃料電池温度Tが0℃より高ければ、S38へ移る。S38では、システム制御装置18は、通常発電を許可する信号を負荷制御装置16へ送信して、起動を終了する。
S12の判定で燃料電池温度Tが0℃以下であれば、S14へ進む。S14では、システム制御装置18は、暖機発電電力に基準値である基準暖機電力を設定し、通常発電許可温度T1 に所定の基準値を設定する。ここで、通常発電許可温度T1 の基準値は、例えば、15℃が使用される。次いでS16では、システム制御装置18は、診断発電の所定時間を計測するため、タイマの計測を開始する。次いでS18で、システム制御装置18は、負荷制御装置16へ基準暖機電力で診断発電を開始することを指示する。負荷制御装置16は、基準暖機電力で燃料電池スタック2から電力取り出しを開始する。
次いでS20で、システム制御装置18は、燃料電池電圧計17により燃料電池スタック2の電圧を測定して、測定値を読み込み、これを時系列データとして内部に記憶する。次いでS22で、システム制御装置18は、S16のタイマ計測開始から、診断発電を行う所定時間である5秒が経過したか否かを判定する。S22の判定で5秒経過していなければ、診断発電を継続するために、S20へ戻る。S22の判定で5秒経過していれば、S24へ進む。
S24では、システム制御装置18は、5秒間の診断発電中の燃料電池電圧Vの最小値Vmin を検出する。次いでS26で、システム制御装置18は、最小値Vmin と、所定の最大診断電圧値VH ,及び所定の最小診断電圧値VL と、を比較して燃料電池スタック2の状態を判断する。ここで、最大診断電圧VH 、最低診断電圧VL は、実験的に求めて設定された値である。この実験は、MEAの水分含有量及び起動時の燃料電池スタックの温度を様々に変えて、基準暖機電力による診断発電とこれに続く暖機発電及び通常発電を行い、診断発電中の燃料電池電圧の最低値を求める実験である。そしてこれらの実験において、暖機発電中または通常発電移行後の発電電力不足や発電停止が生じることなく、安定した起動が行えた場合の診断発電中の燃料電池電圧の最小値の範囲を求めて、多少の安全度を顧慮したマージンをとって最大診断電圧VH 及び最低診断電圧VL を設定した。
S26の判断で、最小値Vmin が最大診断電圧値VH を超えていれば、燃料電池スタック2のMEAの水分状態が水分過剰と判断してS28へ進む。S28では、通常発電許可条件の変更を行う。表1に示したとおり、MEAが水分過剰であれば、通常発電へ移行した際に、発電電力が低下したり或いは発電停止となる虞があるので、図6のような制御マップを検索して、燃料電池電圧の最低値Vmin に応じて通常発電許可温度T1 を高くなるように再設定する。通常発電許可温度T1 を高めると、温度が高くなればなるほど飽和水蒸気圧が上昇するとともに、燃料電池温度がT1 まで上昇するのに要する時間が延長されるので、暖機発電中に過剰な水分が燃料電池排気として排出され、通常発電許可時にMEAの水分状態が適正な標準状態となることができる。図6の制御マップは、例えば実機や燃料電池の水分出入モデルのシミュレーションにより実験的に求めてシステム制御装置18に記憶させるものとする。
尚、フローチャートには示さなかったが、S28において、通常発電許可条件の変更としての通常発電許可温度T1 の再設定に加えて、暖機発電条件の変更を行ってもよい。暖機発電条件の変更の一例として、燃料電池スタック2へ供給する酸化剤ガス流量を基準流量から増加させるような変更を行ってもよい。酸化剤ガス流量を増加させると、燃料電池スタック2から排出される酸化剤ガスにより排出させる水分量が増加して、MEAの過剰水分を低減することができる。
さらに、S28において、暖機発電条件の変更として、暖機発電電力を基準値より小さくなるような再設定を行ってもよい。暖機発電電力を小さくすると、暖機発電中の生成水量が減少し、MEAの過剰水分を低減することができる。また、暖機発電の条件変更としては、暖機発電電力の変更のみならず、例えば、ヒータ14に通電する、或いは通電電流を増加するような条件変更であってもよい。これにより、暖機発電電力低下による燃料電池の昇温速度の低下を回避することができる。
S26の判断で、最小値Vmin が最小診断電圧値VL 以上、かつ最小値Vmin が最大診断電圧値VH 以下であれば、燃料電池スタック2のMEAの水分状態が適正な標準状態と判断してS32へ進む。
S26の判断で、最小値Vmin が最小診断電圧値VL 未満であれば、燃料電池スタック2のMEAの水分状態が水分不足状態と判断してS30へ進む。S30では、暖機発電条件の変更を行う。表1に示したとおり、MEAが水分不足であれば、暖機発電中に、発電電力が低下したり或いは発電停止となる虞があるので、図7のような制御マップを検索して、燃料電池電圧の最低値Vmin に応じて暖機発電電力が小さくなるように再設定する。暖機発電電力を低下させると、通常発電許可温度T1 に至るまでの暖機時間が延長し、その間の生成水量が増加して通常発電許可時にMEAの水分状態が適正な標準状態となることができる。図7の制御マップは、例えば実機や燃料電池の水分出入モデルのシミュレーションにより実験的に求めてシステム制御装置18に記憶させるものとする。
S32では、システム制御装置18は、負荷制御装置16へ設定された暖機発電電力の取り出しを指示し、暖機発電を行う。次いでS34で、システム制御装置18は、燃料電池温度Tを冷却液温度計15により測定し、S36で燃料電池温度Tが通常発電許可温度T1 を超えたか否かを判定する。S36の判定で燃料電池温度Tが通常発電許可温度T1 を超えていなければ、暖機発電を継続するためにS32へ戻る。S36の判定で燃料電池温度Tが通常発電許可温度T1 を超えていれば、S38へ進み、システム制御装置18は、負荷制御装置16へ通常発電を許可する指示を送信して、起動を終了する。
次に、本発明に係る燃料電池システムの実施例2を説明する。実施例2の燃料電池システムの構成は、図2に示した実施例1の構成と同様である。
図4、図5は、実施例2におけるシステム制御装置18が実行する制御フローチャートである。図4において、まず、燃料電池システムの起動が開始されると、システム制御装置18は、燃料電池スタック2へ水素圧力調整弁6から水素ガス、空気コンプレッサ10から空気の供給を開始する。同時に、システム制御装置18は、冷却液ポンプ12を僅かに駆動して、燃料電池スタック2の冷却液出口から燃料電池スタック2内部の冷却液が冷却液温度計15の位置へ排出されるように制御する。
次いで、S10において、システム制御装置18は、冷却液温度計15が示す燃料電池温度Tを読み込む。次いでS12において、システム制御装置18は、燃料電池温度Tが0℃より高いか否かを判定する。S12の判定温度は、生成水の凍結が起こらない温度を設定する。基本的には0℃となるが、燃料電池の構成や温度計測点の場所、さらに温度計測誤差や燃料電池内の温度分布を考慮して、たとえば0℃以上10℃以下を設定してもよい。
S12の判定で燃料電池温度Tが0℃より高ければ、S64へ移る。S64では、システム制御装置18は、通常発電を許可する信号を負荷制御装置16へ送信して、起動を終了する。
S12の判定で燃料電池温度Tが0℃以下であれば、S14へ進む。S14では、システム制御装置18は、暖機発電電力に基準値である基準暖機電力を設定し、通常発電許可温度T1 に所定の基準値を設定する。ここで、通常発電許可温度T1 の基準値は、例えば、15℃が使用される。次いでS16では、システム制御装置18は、診断発電の所定時間を計測するため、タイマの計測を開始する。次いでS18で、システム制御装置18は、負荷制御装置16へ基準暖機電力で診断発電を開始することを指示する。負荷制御装置16は、基準暖機電力で燃料電池スタック2から電力取り出しを開始する。
次いでS20で、システム制御装置18は、燃料電池電圧計17により燃料電池スタック2の電圧を測定して、測定値を読み込み、これを時系列データとして内部に記憶する。次いでS22で、システム制御装置18は、S16のタイマ計測開始から、診断発電を行う所定時間である5秒が経過したか否かを判定する。S22の判定で5秒経過していなければ、診断発電を継続するために、S20へ戻る。S22の判定で5秒経過していれば、S24へ進む。
S24では、システム制御装置18は、5秒間の診断発電中の燃料電池電圧Vの最小値Vmin を検出する。次いでS50で、システム制御装置18は、最小値Vmin と所定の最小診断電圧値VL とを比較して燃料電池スタック2の状態を判断する。ここで、最低診断電圧VL は、実験的に求めて設定された値である。この実験は、MEAの水分含有量及び起動時の燃料電池スタックの温度を様々に変えて、基準暖機電力による診断発電とこれに続く暖機発電及び通常発電を行い、診断発電中の燃料電池電圧の最低値を求める実験である。そしてこれらの実験において、暖機発電中または通常発電移行後の発電電力不足や発電停止が生じることなく、安定した起動が行えた場合の診断発電中の燃料電池電圧の最小値の範囲を求めて、多少の安全度を顧慮したマージンをとって最低診断電圧VL を設定した。
S50の判断で、最小値Vmin が最小診断電圧値VL 以上であれば、S54へ進む。S50の判断で、最小値Vmin が最小診断電圧値VL 未満であれば、燃料電池スタック2のMEAの水分状態が水分不足状態と判断してS52へ進む。S52では、暖機発電条件の変更を行う。表1に示したとおり、MEAが水分不足であれば、暖機発電中に、発電電力が低下したり或いは発電停止となる虞があるので、図7のような制御マップを検索して、燃料電池電圧の最低値Vmin に応じて暖機発電電力が小さくなるように再設定する。暖機発電電力を低下させると、通常発電許可温度T1 に至るまでの暖機時間が延長し、その間の生成水量が増加して通常発電許可時にMEAの水分状態が適正な標準状態となることができる。図7の制御マップは、例えば実機や燃料電池の水分出入モデルのシミュレーションにより実験的に求めてシステム制御装置18に記憶させるものとする。
S54では、システム制御装置18は、負荷制御装置16へ設定された暖機発電電力の取り出しを指示し、暖機発電を行う。次いでS56で、システム制御装置18は、燃料電池温度Tを冷却液温度計15により測定し、S58で燃料電池温度Tが通常発電許可温度T1 を超えたか否かを判定する。S58の判定で燃料電池温度Tが通常発電許可温度T1 を超えていなければ、暖機発電を継続するためにS54へ戻る。S58の判定で燃料電池温度Tが通常発電許可温度T1 を超えていれば、S60へ進む。S60では、最小値Vmin が最大診断電圧値VH 以下か否かを判定する。S60の判定で最小値Vmin が最大診断電圧値VH 以下であれば、S64へ進む。S64では、通常発電を許可して、システム制御装置18は、負荷制御装置16へ通常発電を許可する指示を送信して、起動を終了する。
S60の判定で、最小値Vmin が最大診断電圧値VH を超えていれば、S62へ移り、システム制御装置18は、通常発電許可条件として、通常発電開始後に通常発電許可温度T1 よりも高い所定温度に達するまで、或いは通常発電開始後から所定時間の間、通常発電電力を制限する通常発電上限電力を設定し、通常発電を許可するために、S64へ移る。
図5は、通常発電上限電力が設定された場合のシステム制御装置18及び負荷制御装置16の動作を説明するフローチャートである。本フローチャートは、通常発電許可条件として、通常発電上限電力が設定された場合、通常発電開始後から所定時間の間、通常発電電力を通常発電上限電力に制限するフローチャートである。
図5において、通常発電が開始されると、システム制御装置18は、通常発電上限電力による電力制限の所定時間を計測するため、タイマの計測を開始する。次いでS72で、システム制御装置18は、S70のタイマ計測開始から、所定時間が経過したか否かを判定する。S70の判定で所定時間が経過していなければ、通常発電上限電力による制限を継続するために、S72へ戻る。S72の判定で所定時間が経過していれば、S74へ進み、システム制御装置18から負荷制御装置16へ通常発電上限電力の解除を指示して、終了する。
尚、通常発電許可条件として、燃料電池温度が通常発電許可温度T1 よりも高い所定温度に達するまで通常発電上限電力が設定された場合のフローチャートは省略する。この場合、冷却水温度計15により燃料電池温度Tを計測することと、燃料電池温度Tが所定温度に達したか否かを判定するステップとを繰り返し、燃料電池温度Tが所定温度に達したときに、システム制御装置18から負荷制御装置16へ通常発電上限電力の解除を指示することは図5からも容易に類推できるからである。
また通常発電上限電力を解除する所定温度は燃料電池の生成水排出量が生成水量よりも大きくなる温度とする。この温度は燃料電池や燃料電池システムの構成によって異なるが、たとえば飽和水蒸気量が生成水量を上回る温度を通常発電上限電力を解除する所定温度とすることができる。
燃料電池の昇温速度は実機による実験や燃料電池の熱モデルによる温度シミュレーションで求めることもできるため、通常発電上限電力を解除する温度までの昇温時間をあらかじめ求めておき、時間経過によって通常発電上限電力の解除のタイミングを決めることもできる。
暖機発電時から通常発電にかけての燃料電池電圧の時間変化を説明するタイムチャートである。 本発明に係る燃料電池システムの構成を説明するシステム構成図である。 実施例1の燃料電池システムのフローチャートである。 実施例2の燃料電池システムのフローチャートである。 実施例2の燃料電池システムのフローチャートである。 診断発電における燃料電池電圧の最低値Vmin から通常発電許可温度を求める制御マップの例を示す図である。 診断発電における燃料電池電圧の最低値Vmin から暖機発電電力を求める制御マップの例を示す図である。
符号の説明
1 燃料電池システム
2 燃料電池スタック
3 負極(アノード)
4 正極(カソード)
5 水素タンク
6 水素圧力調整弁
7 パージ弁
8 水素循環路
9 水素循環ブロワ
10 空気コンプレッサ
11 空気排圧弁
12 冷却液ポンプ
13 ラジエータ
14 ヒータ
15 冷却液温度計
16 負荷制御装置
17 燃料電池電圧計
18 システム制御装置

Claims (9)

  1. 燃料電池システム起動時の燃料電池状態が所定条件を満たしていれば、燃料電池の通常発電を許可する一方、所定条件を満たしていなければ、通常発電を許可せず暖機発電を行う燃料電池システムにおいて、
    燃料電池システム起動時に、所定の基準暖機電力で所定の時間、前記燃料電池の状態を診断するための診断発電を行なわせ、
    該診断発電中に測定される燃料電池スタックの電圧値から、診断発電開始直後に一旦低下した電圧が取り得る最低値を検出し、
    前記燃料電池スタックの電圧値の前記最低値が所定の最高診断電圧値より大きい場合、
    前記燃料電池に通常発電を許可する条件である通常発電許可条件として、燃料電池の通常発電許可温度を基準値よりも高くなるように変更することを特徴とする燃料電池システム。
  2. 燃料電池システム起動時の前記燃料電池の温度が通常発電許可温度の基準値以下の場合に、前記診断発電を実施し、前記燃料電池の温度が通常発電許可温度の基準値を超える場合には、前記診断発電を実施せず通常発電を許可することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記最低値と前記所定の最高診断電圧値との差が大きいほど、前記通常発電許可温度と基準値との差が大きくなるように前記通常発電許可温度を変更することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
  4. 前記診断発電中の燃料電池スタック電圧の前記最低値が所定の最高診断電圧値より大きい場合、
    前記診断発電に続く暖機発電時の酸化剤ガス流量を増加する制御を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の燃料電池システム。
  5. 前記診断発電中の燃料電池スタック電圧の前記最低値が所定の最高診断電圧値より大きい場合、
    前記通常発電許可条件として、通常発電開始後前記燃料電池温度が通常発電許可温度より高い所定温度に達するまで、あるいは通常発電開始から所定時間が経過するまで、通常発電電力に上限を設けることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の燃料電池システム。
  6. 前記診断発電中の燃料電池スタック電圧の前記最低値が所定の最高診断電圧値より大きい場合、
    前記診断発電に続く暖機発電の条件である暖機発電条件として、暖機発電電力を前記基準暖機電力よりも小さくなるように変更することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の燃料電池システム。
  7. 燃料電池システムの起動時に前記燃料電池を加熱する加熱手段を備え、
    前記診断発電中の燃料電池スタック電圧の前記最低値が所定の最高診断電圧値より大きい場合、
    前記加熱手段への電力供給を増やすように制御することを特徴とする請求項6に記載の燃料電池システム。
  8. 前記診断発電中の燃料電池スタック電圧の前記最低値が所定の最低診断電圧値より小さい場合、
    前記診断発電に続く暖機発電における発電電力を前記基準暖機電力よりも小さくなるように制御することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の燃料電池システム。
  9. 前記暖機発電において、
    前記燃料電池スタックの電圧に応じて、前記基準暖機電力を上限として前記暖機発電の電力を増加させるように制御することを特徴とする請求項8に記載の燃料電池システム。
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