JP5254671B2 - 架橋高分子固体電解質およびその製造方法 - Google Patents
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Description
一方、高分子固体電解質膜は、室温付近においてイオン伝導性が低いという問題がある。また、高いイオン伝導性を持つように、高分子固体電解質の膜厚さを薄くすると、膜の機械的強度が低くなるという問題がある。
また、分子末端がアルコキシドになっているポリアルキレンオキサイドと金属アルコキシドと電解質塩化合物を混合加熱し縮合重合して得られるポリアルキレンオキサイド架橋体を含む高分子固体電解質が知られている(特許文献2)。
また、ポリエチレングリコールジアクリレート等のアクリロイル変性ポリアルキレンオキシド/電解質塩/有機溶媒からなる組成物に紫外線等の活性光線を照射することにより、高分子固体電解質を形成する方法が開示されている(特許文献3)。
また、特定のブロック鎖の組合せから構成されるブロック−グラフト共重合体に、反応性ポリアルキレンオキサイドとリチウム系無機塩を添加し、この反応性ポリアルキレンオキサイドを電子線を照射することで架橋反応させる架橋型高分子固体電解質の製造方法が開示されている(特許文献4)。
本発明に好適なポリエチレンオキサイドとしては、後述する架橋高分子固体電解質の製造方法において、溶媒に溶解し易い分子量である重量平均分子量20,000〜600,000であり、好ましくは50,000〜100,000である。分子量が20,000未満であると機械的強度が得られず、600,000をこえると溶液粘度が高くなりすぎる。また、分子量分布を定める多分散度が2.0未満のポリエチレンオキサイドが好ましい。該特性を有するポリエチレンオキサイドの市販品としては、例えば明成化学工業株式会社の商品名アルコックLシリーズが挙げられる。
式(1)において、R2で表される炭素数2〜4の2価の炭化水素基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。nは1〜23の整数であり、好ましくはnが13〜14である。
これらの中でポリエチレングリコールジアクリレート(n=13または14)がポリエチレンオキサイドとの相溶性に優れているため好ましい。
具体的には周期律表第1族または第2族金属塩を例示できる。特にLiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2またはLiN(C2F5SO2)2等のリチウム塩が好ましい。
そのため、ポリエチレンオキサイドに対するリチウム塩の配合割合は、リチウムイオンの数とポリエチレンオキサイド中に含まれる酸素原子の数との比である(Li/O)で表すことが好ましい。
破断強度は、Strograph−R1(東洋精機社製)を用いて測定した。5mm×80mmの試験片を用いた。フィルム厚さより試験片の断面積を計算して破断強度の計算に使用した。また、測定は500mm/分の一定速度で引き伸ばされ、最大の引張強度を破断強度とした。
熱分析測定は、DSC8230(理学電機社製)を用いて、純αアルミナ粉を標準物質とした。昇温速度は5℃/分で測定した。
図1に示すように、(Li/O)が1/36と、1/54の場合とを比較すると、リチウムイオン量の割合が少ない1/54がより高い破断強度を示した。しかし、1/54は電子線照射線量が多くなると破断強度が低くなった。これはおそらく、ポリマー鎖の断片化によるものであると思われる。また、図1は電子線照射が破断強度を増す働きをし、そしてその効果は共架橋剤を加えたときに著しく高められることを示している。
図3において、Tcは、初め低下し、共架橋剤の配合量が6重量部をこえると、殆ど一定になった。ΔHcは共架橋剤の配合割合が増えるに伴い直線的に減少した。これらのデータは、共架橋剤の配合によって架橋構造の生成が促進され、結果として、高分子固体電解質の非晶質構造の安定化や結晶性の減少が起こることを示唆している。
ゲル含有量は、0.1gの架橋高分子固体電解質を5日間アセトニトリル溶媒に室温で浸漬した。その後、溶解せずに残った部分を分離して3時間80℃で乾燥した。ゲル含有量(重量%(wt%))は次の等式で計算した。
ゲル含有量(wt%)=[乾燥後の重量/浸漬前の重量(0.1g)]×100
図4において、(Li/O)=1/54と1/36の架橋高分子固体電解質は、電子線照射による緩やかなゲル含有量の上昇を示し、共架橋剤を配合した1/36のサンプルは短い電子線照射による急激な上昇を示している。リチウムイオン濃度が高い(Li/O)=1/16.7の場合は、低いリチウム濃度の架橋高分子固体電解質と比較して、ゲル含有量の増加が少ない。リチウムイオン濃度が高い架橋高分子固体電解質における架橋反応は、電子線照射だけではあまり進まないが、共架橋剤の配合によって、顕著にゲル化が進む。
ポリエチレングリコールジアクリレートの両端不飽和結合がポリエチレンオキサイド鎖に結合して架橋構造を形成する場合、ポリエチレングリコールジアクリレートに含まれているエステル結合のカルボニル基の伸縮振動(1730cm-1)が観測される。一方、架橋構造を形成しない場合、未反応のポリエチレングリコールジアクリレートはアセトニトリル洗浄で除去されるのでカルボニル基の伸縮振動は観測されない。
図5に示すように、ポリエチレングリコールジアクリレートの配合量が増加するに伴って、1730cm-1におけるカルボニルピークの強度が線形的に増加しており、ポリエチレングリコールジアクリレートが共架橋剤として働いて、ポリエチレンオキサイド内に架橋構造を形成することを示している。架橋密度はポリエチレングリコールジアクリレートの濃度に依存する。
なお、ポリエチレングリコールジアクリレートを配合しない場合でも、電子線照射の後、小さいカルボニルピークを示すことが認められた。これは、電子線照射により、ポリエチレンオキサイド鎖の解離・再結合に起因するものと考えられる。
上述した固体電解質塩、共架橋剤およびポリアルキレンオキサイドを同一の溶媒に溶解して溶液とする。
使用することができる溶媒としては、上記材料をそれぞれ溶解できる溶媒を用いる。そのような溶媒としては、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、および水が挙げられる。これらの溶媒を単独でまたは2種以上の混合物でも使用可能であり、その混合割合および方法は任意である。
これらの中で好ましい溶媒は、アセトニトリルである。
また、溶解して溶液とする場合、最初にポリアルキレンオキサイドを溶解させる。必要ならば、加熱することにより溶解を促進させることができる。次に固体電解質塩および共架橋剤を室温で加えて十分に撹拌することにより溶液とする。
塗布方法については特に制限なく、公知の塗工機を用いて、基板上に溶液を塗布する。塗布厚さおよび塗布回数については、架橋高分子固体電解質の厚さに応じて適宜選択される。好ましくは、溶液の粘度を調整することにより、1回塗布することが好ましい。
塗布後、乾燥する。乾燥条件は、基板および溶液の種類、電子線照射条件等によって選択される。
照射線量とイオン伝導度との関係を測定した結果を図6、図7に示す。図6は共架橋剤を配合しなかった場合であり、図7はポリエチレンオキサイド100重量部に対して、共架橋剤を12重量部配合した例である。なお、(Li/O)=1/36の試料を用いた。イオン伝導度は交流インピーダンス法によって測定した。まず、試料を80℃まで加熱し、1℃/3分の降温速度で10℃まで冷却した。イオン伝導度の測定は、冷却過程において2℃毎に行なった。各測定において測定容器を5分間維持した後測定した。
図6、図7に示すように、イオン伝導性の値が降下を示す温度は、照射線量が増加するにつれて大きくなった。この温度は結晶化温度Tcに相当する。電子線照射により、Tcが低温側に移行して、高いイオン伝導性が維持されるのが分かる。共架橋剤を12重量部配合し、照射線量が42Mradのときに最も低い26℃というTcを示した。
ポリエチレンオキサイド(明成化学工業社製、重量平均分子量 80,000)32.87gを、加熱したアセトニトリル溶媒67.13gに加え、撹拌速度1000rpmで撹拌して高分子溶液とする。次にLiN(CF3SO2)2を5.96gおよびポリエチレングリコールジアクリレート(東亞合成社製、n=13〜14)を3.94g上記高分子溶液に加えて撹拌速度1000rpmで撹拌して混合溶液を作製する。
基板として、離型剤として知られるシリコンコーティングしたポリエステルフィルム上に、上記混合溶液をドクターブレードを使って塗布し、それをまず70℃で乾燥させ、次に100℃で乾燥させてアセトニトリル溶媒を除去する。得られたフィルムは(Li/O)=1/36、共架橋剤濃度12部である。
このフィルムに電子線照射を行なった。照射は(Curetron EBC-200(NHV 社製)を用いて、窒素雰囲気中、乾燥したフィルムに対して、加速電圧が200kVの条件で、1回につき3.5Mradの照射強度で12回、合計42Mradの照射をした。
得られた架橋高分子固体電解質のフィルムの破断強度は3.5MPaであった。
イオン伝導度の測定は、インピーダンス法によって測定した。フィルム/アルミニウム層の反対側に、対極としてリチウム金属シートを置く。Solartron 1260 frequency response analyzerと1287 electrochemical interface(Scribner Associates Inc.)を用いて、1×106〜0.1Hzの周波数域で10mVの交流を流す。スペクトルは、高周期域における大きな抵抗成分を示す。評価された抵抗値は、フィルムの厚さと電解質の表面積によって標準化する。温度は10から80℃に調整し、アレニウスプロットをする。
得られた結果を図7に示す。26℃以上で優れたイオン伝導性を示した。
ポリエチレングリコールジアクリレートを添加しない以外は実施例と同様の条件で架橋高分子固体電解質のフィルムを得た。
このフィルムの破断強度は4.2MPaであり、36℃以上で優れたイオン伝導性を示した(図6参照)。
Claims (3)
- 固体電解質塩および共架橋剤を含むポリエチレンオキサイドを電子線照射により架橋処理してなる架橋高分子固体電解質であって、
前記ポリエチレンオキサイドは、重量平均分子量が20,000〜600,000であり、多分散度が2.0未満であり、
前記共架橋剤は、前記ポリエチレンオキサイドよりも重量平均分子量が小さい下記式(1)で表されるポリエチレングリコール(メタ)アクリレートであり、前記ポリエチレンオキサイド100重量部に対して、3〜30重量部含まれていることを特徴とする架橋高分子固体電解質。
- 前記固体電解質塩がリチウム電解質塩であり、該リチウム電解質塩の配合割合は、リチウムイオンの数と前記ポリエチレンオキサイド中に含まれる酸素原子の数との比である(Li/O)の値が(1/8)〜(1/60)であることを特徴とする請求項1記載の架橋高分子固体電解質。
- 請求項1記載の架橋高分子固体電解質の製造方法であって、
固体電解質塩、共架橋剤およびポリエチレンオキサイドを溶媒に溶解して溶液とする工程と、
基板上に前記溶液を塗布・乾燥する膜形成工程と、
前記膜に電子線照射する工程とを備えることを特徴とする架橋高分子固体電解質の製造方法。
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