JP5253838B2 - 薄膜製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、触媒CVD(Chemical Vapor Deposition)、或いはHFCVD(Hot Filament CVD)、高温媒体CVD、ホットワイヤCVDなど呼ばれる方法によって得られる薄膜、及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、主にポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂からなる基材の表面に減圧系内のアンモニア、シラン、水素、或いは更に酸素などを原料として当該基材表面に形成されるSiN、SiONからなる薄膜、及びその製造する方法に関する。
ガスバリア性のプラスチックフィルムを得る方法として、プラスチックフィルムに無機材料のガスバリア性膜をコーティングすることが知られており、透明性のあるガスバリア性フィルムとして、電子ビーム蒸着法、スパッタ法、プラズマCVD法による酸化シリコンや酸化アルミニウムの膜が知られている。
中でも、原料のガスを分解し、反応により得られる化合物からなる薄膜をフィルム上に形成するいわゆる触媒CVDによる薄膜製造法は、減圧雰囲気下において加熱された金属フィラメントに原料ガスを接触させ、触媒反応により分解や活性化され化学種をフィルム上に薄膜状に堆積させるものであり、薄膜の形成時のフィルム温度が比較的低温であり、耐熱温度が比較的低いプラスチックフィルムであっても適用できる点で有用な方法である。
また、薄膜にガスバリア性等の機能性を付与するために、触媒CVDによってSiONからなる薄膜を形成する方法として例えば、ガス供給バルブからシランガスと窒素ガスとを供給し、プラズマを発生させてSiNによって薄膜を形成した後、さらに、酸素ガスを流しながらプラズマを発生させてSiN膜に酸素を注入して、SiONに改質する等の技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
しかし、かかる従来の技術では、薄膜の表面を形成するSiNとSiONとの混在する比率を調整することは可能であるが、形成される薄膜をSiNからなる層とSiONからなる層の多層構造を形成することはできなかった。また、SiNからSiONを生成する工程では、活性化したシランガスを一度排気しなければならないなど作業が煩雑であり、改善が望まれていた。
さらに、SiN、及びSiONからなる一連の薄膜において、SiN、又はSiONの比率を連続的に増減させることは従来の技術では不可能であった。
一方、薄膜において、SiNからなる薄膜とSiONからなる薄膜は、極性の差異等によって、透湿性、及び酸素透過性等の機能性に相異がある。一方、基材によって薄膜に要求される機能性が異なる場合もあり、薄膜を形成する基材の用途に応じてSiN、及びSiONとの比率を同一薄膜内において、異なった比率にした薄膜を基材に設けることが強く望まれていた。
特開2005−64167号公報(実施例1等)
そこで本発明は、上記問題点を解決するものであり、基材表面に形成される薄膜をSiNとSiONとの組成比を制御することにより多層構造を形成することを可能とし、さらには、SiN、及びSiONからなる一連の薄膜において、SiN、又はSiONの比率を連続的に増減させること等により、薄膜を形成する基材に要求される機能性を有した薄膜を形成することができる薄膜の製造方法、及びその製造方法によって形成された薄膜を提供することを目的とする。
本発明請求項1に記載の発明は、複数の種類の原料ガスを減圧下において反応させ、その反応物からなる薄膜を減圧系に配置された基材上に形成する薄膜製造方法において、第1の原料ガス導入口から窒素含有ガス、及び水素が系内に保持され、かつ加熱された金属体の近傍に供給されること、及び当該減圧系に第2の原料ガス導入口からシラン系ガスが導入されること、前記基材上の第1の原料ガス導入口から最近傍部、及び前記最近傍部を挟んだ両側部の何れか一以上に第3の原料ガス導入口からの酸素ガスが供給されることを特徴とする薄膜製造方法を提供するものである。
また、請求項2に記載の発明は、複数の種類の原料ガスを減圧下において反応させ、その反応物からなる薄膜を減圧系に配置された基材上に形成する薄膜製造方法において、第1の原料ガス導入口から窒素含有ガス、及び水素、及びシラン系ガスが系内に保持され、かつ加熱された金属体の近傍に供給されること、及び当該減圧系に前記基材上の第1の原料ガス導入口から最近傍部、及び前記最近傍部を挟んだ両側部の何れか一以上に第2の原料ガス導入口からの酸素ガスが供給されることを特徴とする薄膜製造方法を提供するものである。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1の特徴に加え、前記減圧系に隘路、又は隔壁板によって連通部を有するように第1室と第2室が形成され、前記第1室に加熱された金属体、第1の原料ガス導入口が、第2室に減圧のための排気口、第2の原料ガス導入口、更に第3の原料ガス導入口があることを特徴とする薄膜製造方法を提供するものである。
請求項4記載の発明は、請求項2の特徴に加え、前記減圧系に隘路、又は隔壁板によって連通部を有するように第1室と第2室が形成され、前記第1室に加熱された金属体、第1の原料ガス導入口が、第2室に減圧のための排気口、第2の原料ガス導入口があることを特徴とする薄膜製造方法を提供するものである。
請求項5記載の発明は、請求項3、又は4の特徴に加え、前記第2室に基材表面を前処理する表面改質装置、及び/又は基材表面を後処理する表面改質装置を設けた薄膜製造方法を提供するものである。
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかの特徴に加え、前記シラン系ガスがSiHである薄膜製造方法を提供するものである。
求項1乃至6のいずれかの製造方法により、SiN、及びSiONから形成されている薄膜を得ることができる。
本発明によれば、SiN(シリコンナイトライド)、及びSiON(シリコンオキシナイトライド)からなる薄膜を触媒CVD法により効率よく製造することができる。
また、基材表面に形成される薄膜をSiN、及びSiONの組成比を制御することにより、多層構造を形成することを可能とし、さらには、SiN、及びSiONからなる一連の薄膜において、SiN、又はSiONの比率を連続的に増減させることにより、薄膜を形成する基材に要求される機能性を有した薄膜を容易に形成することができる。
さらに、本発明製造方法によって得られた薄膜は部分的にSiN、及びSiONの比率が異なるため、各部分によって異なった機能性を付与することができ、当該薄膜が形成される基材に要求される機能性に合致した薄膜を得ることができる。
本発明によって得られる薄膜を形成するための基材として、フィルム、シート、板状物等形態は特に限定されず、当該基材を構成する素材も熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の合成樹脂の他、ステンレス、アルミニウム合金、鉄等の金属、及びセラミクス等を例示することができる。
基材が熱可塑性樹脂からなるフィルム、又はシート(以下、「フィルム等」という)の場合も、素材は特に限定されるものではなく、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などのエチレン系ポリマー、アイソタクチックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等のプロピレン系ポリマー、ポリ−4−メチルー1―ペンテン、ポリシクロオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド等のフィルムが例示される。本発明はこれらの素材からなる透明性を有するフィルム等を基材として用いる場合に好ましく用いられる。
また、上述したフィルム等を構成する熱可塑性樹脂の例示のうちでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましい。これら熱可塑性樹脂からなる基材層はガスバリア性膜の用途に応じて、単層であっても、二種以上の熱可塑性樹脂からなる積層体であってもよい。
さらに、基材の表面に、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニアルコール共重合体、アクリル樹脂、ウレタン系樹脂等がコーティングされていてもよい。
また、基材は、形成される薄膜との接着性を改良するために、その表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理、フレーム処理、脱脂処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。アンダーコートをする場合は、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートなどのアンダーコート剤が塗布される。
本発明の薄膜製造方法に用いられる原料ガスとして、窒素含有ガスには、アンモニア、ヒドラジン、アジ化水素等が挙げられる。また、シラン系ガスには、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン等が挙げられる。尚、前記シラン系ガス、及び酸素ガスについては、当該ガスを単独で上記原料ガス導入口から供給してもよいし、膜厚の均一性などプロセスの安定性を保持する理由で、窒素ガスや不活性ガスとの混合ガスを上記原料ガス導入口から供給してもよい。
金属体には、タングステン、モリブデン、タンタル、チタン、バナジウム、オスミウム、高純度鉄、白金などがあり、タングステン、中でも高純度のタングステンが望ましい。金属体の形状はワイヤー、フィラメント状、さらにこれを2次加工したコイル状、バネ状、編み目状、格子状、ドーナツ状、さらには金属体の板にスリットを設けた形状等が例示される。
減圧系の圧力は、10―3Torr以下、通常10―7Torrのオーダーの真空度とすることが望ましい。
以下に、より具体的に本発明について図面を参照しつつ詳述する。図1は本発明の製造方法に用いられる触媒CVD装置の断面を模式的に表示したものである。
図1に示すように、減圧系を形成する減圧容器1には、第1室1Aと第2室1Bがあり、隔壁版2で連通している。当該隔壁板2は一般に多数の練通する孔を有する多孔板である。第1室1Aと第2室1Bはまた隘路で連通していてもよい。尚、本発明製造方法に用いる装置においては、第1室と第2室とが少なくとも連通していればよく、図1〜2に示すように必ずしも隔壁板を設ける必要はない。前記隔壁板は酸素ガスが第2室に導入された場合に当該酸素ガスが第1室に進入することによって、前記第1室に設けられた金属体が汚損されることを防止する観点から設ける方が好ましい場合がある。一方ではSiN等の薄膜を形成する物質が基材に到達する前に前記隔壁板に堆積してしまい、薄膜の形成効率を低下させる場合もある。かかる観点から、原料ガスの導入方法によって、隔壁板を設けるか設けないかを適宜選択することもできるが、以下、隔壁板が設けられている実施態様について詳述していく。
さらに、同図に示すように、第1室1Aには、フィルムの供給ロール10や巻取ロール11を第2の原料ガス供給口5や排気口7と隔離する仕切り部材12を設けることが望ましい。
また、図1に示すように、減圧容器1の第1室1Aに第1の原料ガス導入口4、及び金属体3がある。第2室1Bには、第2の原料ガス導入口5がある。また、系内のガスの排気は排気口7から排気される。排気口7は図示するように第2室1Bにあることが望ましい。第1室に排気口があると第2の原料ガス導入口から導入されるガスが隔壁板の連通部を通して第1室に流入し加熱金属に接することで必要とされる化学種とは異なる分解種が生成したり、導入された酸素ガスによって加熱された金属体の汚損が促進されるなどの問題が生じてしまうからである。
本発明製造方法においては、酸素ガスを導入する導入口は基材上の第1原料ガス導入口から最近傍部、及び前記最近傍部を挟んだ両側部の何れか一以上から酸素ガスが導入できることが好ましい。前記部位より酸素ガスを導入することにより、薄膜表面におけるSiN、及びSiONの比率を制御可能となることに加え、薄膜中のSiN、及びSiONの層の構成を随意に形成可能となるからである。
また、酸素ガスを導入する導入口は、基材上の第1原料ガス導入口から最近傍部、及び前記最近傍部を挟んだ両側部から酸素ガスを導入可能であれば、その手段は限定されず、例えば、1つの酸素ガスの導入口を基材上の第1原料ガス導入口から最近傍部、及び前記最近傍部を挟んだ両側部を移動可能に設置し、所望の位置に酸素ガスの導入口を移動させてから、所望の量の酸素ガスを導入してもよい。また、基材上の第1原料ガス導入口から最近傍部に1箇所、前記最近傍部を挟んだ両側部に各々1箇所の合計3箇所の酸素ガス導入口を設け、所望により酸素ガスを導入するタイミング、位置、及び酸素ガスの濃度等を適宜選択しながら、酸素ガスを導入してもよい。
図1に例示するように、酸素ガスの導入口として第3の原料ガス導入口が設けられている。即ち、第3の原料ガス導入口6bとして、フィルム8a上の第1原料ガス導入口から最近傍部に、第3の原料ガス導入口6a、及び第3の原料ガス導入口6cとして、前記最近傍部を挟んだ両側部に設けられている。ここで、第3の原料ガス導入口6aからは酸素ガスは図面の右側に向かって導入され、第3の原料ガス導入口6cからは酸素ガスは図面の左側に向かって導入され、第3の原料ガス導入口6bからは酸素ガスは図面の紙面の上方向に向かって導入される。
さらに、第3の原料ガス導入口を酸素ガス供給ノズルに孔部を形成することにより設けてもよい。図3に一例の酸素ガス供給ノズルとそれに形成された第3の原料ガス導入口の平面図を示す。図3に示すように、酸素ガス供給ノズル35に孔部h3が形成されており、当該孔部h3が第3の原料ガス導入口となる。従って、前記孔部h3から、酸素ガスが第2室へ導入されることとなる。尚、酸素ガスを効率的にフィルム等の基材表面に供給する観点から、酸素ガスが基材表面に向かって供給されるように設けられていることが好ましい。例えば、図1によると、第3の原料ガス導入口6bが前記酸素ガス供給ノズルであった場合にはロール9の中心軸方向、即ち第3の原料ガス導入口6bの真上の方向に酸素ガスが供給されるように前記孔部h3が設けられていることが好ましい。
また、酸素ガス供給ノズルに孔部に代えてスリット、即ち、当該酸素ガス供給ノズルの長手方向に設けられた隙間から酸素ガスが導入されるようにしてもよい(図示せず)。尚、前記スリットは複数個設けられてもよい。
上述したように、第3の原料ガス導入口6a、6b、6cから、所望により、酸素ガスの導入口が適宜選択することができるため、薄膜表面のSiN、及びSiONの比率の制御、及び薄膜を形成する層の組成の制御も可能となる。例えば、薄膜を形成する層の組成を制御することにより、フィルム8a側の薄膜の表面はSiN:SiONが1:9であり、もう一方の側の薄膜の表面はSiN:SiONが9:1に形成する場合が挙げられる。
図1に示す装置によれば、本発明は第1の原料ガス導入口4からアンモニア等の窒素含有ガス、及び水素が、第1室1Aの加熱された金属体3の近傍に導入される。
一方、第2室には、第2の原料ガス供給口5からシラン系ガス、例えばSiHが導入される。第1の原料導入口4から第1室1Aに導入された原料ガスは、加熱された金属体に接触して分解されて生じた水素ラジカル等の活性種が、隔壁板2を通過して第2室1Bに移動することにより、第2の原料ガス導入口5から供給されるシラン系ガス、さらには第3の原料ガス導入口6a、6b、6cから供給された酸素ガスと反応し、フィルム8a上に薄膜状に堆積する。これにより、フィルム8a上にはSiN、及びSiONからなる薄膜が連続的に形成され、巻取ロール11に順次巻き取られる。
第3の原料ガス導入口6a、6b、6cの何れの導入口からどの程度の量の酸素ガスを供給するかは、所望の薄膜の層の組成、又は表面のSiN、及びSiONの比率によって適宜選択する。例えば、形成する薄膜のフィルム8a側表面にSiONの含有量を多くする場合には第3の原料ガス導入口6aから酸素ガスを供給すればよい。当該酸素ガスの供給によって、SiONが主要物質として基材上に堆積したのち、SiNが主要物質として堆積させることができるため、フィルム8a側の薄膜表面ではSiONの含有量が高く、他の一方の薄膜表面ではSiNの含有量が高くなるからである。
また、薄膜が堆積したフィルム8は、フィルム供給ロール10から巻き出され、ロール9に接しつつ第2室に導入されることにより、表面に薄膜が形成されている。薄膜が堆積したフィルム8は連続的にフィルム巻取りロール11側に巻き取られる。
また、第2室に基材表面を前処理するための表面改質装置(図示せず)を設けてもよい。表面改質装置はコロナ放電処理、或いはプラズマ処理をするための表面改質装置等が例示される。尚、基材の前処理としてプラズマ処理する場合には、酸素、窒素、不活性ガス等の気相中で行うことが好ましい。このように基材表面を改質処理することにより、製膜時により均一で表面状態が安定した薄膜を形成することができる。
さらに、第2室に基材に形成された薄膜表面を後処理するための表面改質装置(図示せず)を設けてもよい。表面改質装置はコロナ放電処理、或いはプラズマ処理をするための表面改質装置等が例示される。尚、基材に形成された薄膜表面の後処理としてプラズマ処理する場合には、薄膜表面に極性基を付与し濡れ性を向上させるという観点から、酸素、窒素、不活性ガス等の気相中で行うことが好ましい。このように基材に形成された薄膜表面を改質処理することにより、濡れ性が向上し、静電気に起因する異物の付着、又は混入を防止することができる。
また、本発明製造方法において、第1の原料ガス導入口からシラン系ガス(SiH等)、窒素含有ガス(アンモニア等)、及び水素が、加熱された金属体3の近傍に導入され、第2の原料ガス導入口5から酸素ガスが導入されてもよい。
この場合、酸素ガスの導入口が第2の原料ガス導入口5となるため、上記同様、第2の原料ガス導入口が前記フィルム8a上の第1の原料ガス導入口から最近傍部、及び前記最近傍部を挟んだ両側部の何れか一以上から供給できることが必要であり、その手段としては、第2の原料ガス導入口を、例えば、前記フィルム上の第1の原料ガス導入口から最近傍部の1箇所、前記最近傍部を挟んだ両側部に各1箇所の合計3箇所に設けてもよいし、1つの第2の原料ガス導入口が前記フィルム上の第1の原料ガス導入口から最近傍部、及び前記最近傍部を挟んだ両側部を可動するように設けてもよい。
図2は本発明の製造方法に用いられる他の一例の触媒CVD装置の断面を模式的に表示したものである。図に示すように、第2室1Bには、フィルム8a上の第1の原料ガス導入口から最近傍部、及び前記最近傍部を挟んだ両側部、P1からP2まで点線に沿って可動するように設けられた第2の原料ガス導入口5から酸素ガスが導入される。第1の原料ガス導入口4から第1室1Aに導入された原料ガスは、加熱された金属体3に接触して分解されて生じた水素ラジカル等の活性種が、隔壁板2を通過して第2室1Bに移動することにより、第2の原料ガス導入口5から供給される酸素ガスと反応し、フィルム8a上に薄膜状に堆積する。従って、上述したように、酸素ガスの供給量、供給する位置等によって、形成する薄膜を組成するSiN、及びSiONの比率や当該薄膜の層の組成を制御することができる。これにより、フィルム8a上には所望のSiN、及びSiONからなる薄膜が連続的に形成され、巻取ロール11に巻き取られる。
さらに、既述した第3の原料ガス導入口と同様、第2の原料ガス導入口を酸素ガスの導入管に孔部を形成することにより設けてもよい。即ち、酸素ガス供給ノズルに孔部が形成されており、当該孔部が第2の原料ガス導入口となる。従って、前記孔部h3から、酸素ガスが第2室へ導入されることとなる。尚、酸素ガスを効率的にフィルム等の基材表面に供給する観点から、酸素ガスが基材表面に向かって供給されるように設けられていることが好ましい。例えば、図1によると、第3の原料ガス導入口6bが前記酸素ガス供給ノズルであった場合にはロール9の中心軸方向、即ち第3の原料ガス導入口6bの真上の方向に酸素ガスが供給されるように前記孔部h3が設けられていることが好ましい。
また、既述したように酸素ガス供給ノズルに孔部に代えてスリットから酸素ガスが導入されるようにしてもよい(図示せず)。尚、前記スリットは複数個設けられてもよい。
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
実施例及び比較例における物性値等は、以下の評価方法により求めた。
<評価方法>
(1)水蒸気透過度[g/(m・day)]:
厚さ50ミクロン(μm)の線状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ社製 商品名:T.U.X. FCS)の片面に、ウレタン系接着剤(ポリウレタン系接着剤(三井武田ケミカル社製 商品名:タケラックA310):12重量部、イソシアネート系硬化剤(三井武田ケミカル社製 商品名:タケネートA3):1重量部及び酢酸エチル(関東化学社製):7重量部)を塗布・乾燥後、得られたガスバリア性フィルムの金属薄膜面を貼り合わせ(ドライラミネート)、多層フィルムを得た。
その多層フィルムを2枚重ね合わせ、3方をヒートシールして(線状低密度ポリエチレンフィルム面)袋状にした後、内容物として塩化カルシウムを入れ、もう1方をヒートシールにより、表面積が0.005mになるように袋を作成し、これを温度40℃、湿度90%RHの条件で14日間調湿し、その後7日間調湿前後の袋重量差から水蒸気透過度を求めた。
(2)光線透過率(%)
HazeMeter(日本電色工業社製 NDH−300A)を使用して、ガスバリア性フィルム1枚の光線透過率をJIS K 7105に準拠して測定した。
実施例
図1に示すような第1室1Aと第2室1Bを隔てる隔壁板2を設けた。隔壁板には直径1mmの孔を2cm間隔でフィルム流れ方向に12個、フィルム流れ方向に対し垂直方向に10個、計120個設けたステンレス板(厚み1mm)を使用した。
第1の原料ガス導入口4からアンモニアガス、及び水素ガスを導入し、第2室には第2の原料ガス導入口5からシランガスを、第3の原料ガス導入口6bから酸素ガス(ヘリウム95%希釈)を導入できるようにした。なお、酸素ガス導入口は酸素ガス供給ノズルに孔部を設け基板へ向かって導入され、酸素供給ノズルとフィルム間距離を40mmである。金属体にはタングステンワイヤー(直径0.5mm)を使用した。
厚さ50ミクロン(μm)の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材表面に、ウレタンアクリレート(ウレタンアクリレート系UV硬化塗材(新中村化学社製 商品名;UA−100H)を酢酸エチルで希釈し、メイヤーバーを用いて1.2g/m(固形分)になるように塗布し、100℃、15秒間乾燥した。続いて、コート面にUV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、UV強度:250mW/cm、積算光量:325mJ/cmの条件で紫外線を照射してアンダーコート層の重合を行った。
次にそのアンダーコート面に、CAT−CVDにより、厚さ60ナノメートルの無機薄膜層(SiON)を設けた。製膜条件は、SiH流量 12sccm、NH流量30sccm、H流量350sccm、O(ヘリウム95%希釈)流量14sccm、第2室1Bのガス圧力30Pa、金属体温度1800℃、基材温度80℃である。
得られたガスバリア性積層フィルムの水蒸気透過度、全光線透過度を前記の方法で測定した。結果を表1に示す。
Figure 0005253838
本発明の薄膜の形成されたフィルムはガスバリア性が優れており、液晶表示素子、有機EL等の素子、面状発光体、光ディバイス、太陽電池等の収納に利用することができる。
また、本発明によれば、SiN、及びSIONの組成比率を薄膜において制御することができるため、形成する基材に必要な機能性等を付与する自由度が向上し、触媒CVD法による薄膜を形成の用途が広がり、市場においてもより食品包装材料を始め、医療用途、工業用途等多様なニーズに対応可能となることが期待できる。
さらに、本発明の薄膜の製造方法によると、透明性が高いガスバリア性等機能性を有する薄膜が安定的、かつ効率的に得ることができるため、生産効率の向上等による製造コストの低減等の効果が期待できる。
本発明の方法を示す一例の触媒CVD装置の断面を模式的に表示したもの。 本発明の他の方法を示す一例の触媒CVD装置の断面を模式的に表示したもの。 本発明の方法に関する一例の触媒CVD装置を構成する酸素ガス供給ノズルとそれに形成された第3の原料ガス導入口の平面図を表示したもの。
符号の説明
1:減圧容器
2:隔壁板
3:金属体
4:第1の原料ガス供給口
5:第2の原料ガス供給口
6a、6b、6c:第3の原料ガス供給口
7:排気口
8:薄膜を形成したフィルム
9:ロール
10:供給ロール
11:巻き取りロール
12:仕切り部材
35:酸素ガス供給ノズル
1A:第1室
1B:第2室
8a:フィルム
h3:孔部

Claims (6)

  1. 複数の種類の原料ガスを減圧下において反応させ、その反応物からなる薄膜を減圧系に配置された基材上に形成する薄膜製造方法において、第1の原料ガス導入口から窒素含有ガス、及び水素が系内に保持され、かつ加熱された金属体の近傍に供給されること、及び当該減圧系に第2の原料ガス導入口からシラン系ガスが導入されること、前記基材上の第1の原料ガス導入口から最近傍部、及び前記最近傍部を挟んだ両側部の何れか一以上に第3の原料ガス導入口からの酸素ガスが供給されることを特徴とする薄膜製造方法。
  2. 複数の種類の原料ガスを減圧下において反応させ、その反応物からなる薄膜を減圧系に配置された基材上に形成する薄膜製造方法において、第1の原料ガス導入口から窒素含有ガス、及び水素、及びシラン系ガスが系内に保持され、かつ加熱された金属体の近傍に供給されること、及び当該減圧系に前記基材上の第1の原料ガス導入口から最近傍部、及び前記最近傍部を挟んだ両側部の何れか一以上に第2の原料ガス導入口からの酸素ガスが供給されることを特徴とする薄膜製造方法。
  3. 前記減圧系に隘路、又は隔壁板によって連通部を有するように第1室と第2室が形成され、前記第1室に加熱された金属体、及び第1の原料ガス導入口が、第2室に減圧のための排気口、第2の原料ガス導入口、及び第3の原料ガス導入口があることを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造方法。
  4. 前記減圧系に隘路、又は隔壁板によって連通部を有するように第1室と第2室が形成され、前記第1室に加熱された金属体、及び第1の原料ガス導入口が、第2室に減圧のための排気口、及び第2の原料ガス導入口があることを特徴とする請求項2に記載の薄膜製造方法。
  5. 前記第2室に基材表面を前処理する表面改質装置、及び/又は基材表面を後処理する表面改質装置を設けた請求項3、又は4に記載の薄膜製造方法。
  6. 前記シラン系ガスがSiH4であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の薄膜製造方法。
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