以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔画像記録方法の説明〕
図1(a)〜(d)には、本発明の実施形態に係る画像記録方法を模式的に図示した。本例に示す画像記録方法は、図1(a)に図示する記録媒体16のコート層16Aの厚み(コート層厚みt)を判断する判断工程と、図1(b)に図示する浸透抑制剤付与工程と、図1(c)に図示する処理液付与工程と、図1(d)に示すインク打滴工程と、を含んで構成されている。
図1(a)に示す判断工程は、記録媒体16のコート層厚みtを判断する工程である。図1(a)に示す記録媒体16は、画像記録面にコート層16Aがコーティングされた構造を有し、コーティング材料としては多孔性微粒子(例えば、多孔質シリカ)が用いられている。なお、コーティング材料に高分子系材料を用いた記録媒体を適用してもよい。
コート層厚みtを判断する方法には、所定の記憶領域(図2の紙種データ格納領域)に予め記録媒体16の種類ごとにコート層厚みtを記憶しておき、自動判別(又は、手動入力)により記録媒体16の種類の情報を得て、紙種データ格納領域を参照してコート層厚みtを判断する方法が適用される。なお、記録媒体16のコート層厚みtを所定の検出素子(検出手段)によって直接検出してもよい。
図1(b)に示す浸透抑制剤付与工程は、記録媒体16に水及び親水的な有機溶剤の浸透を抑制する浸透抑制剤(第1の処理剤;液滴化された浸透抑制剤を符号1で図示)を付与する。浸透抑制剤の付与量(浸透抑制剤量)は、判断工程によって判断されたコート層厚みtに応じて、記録媒体16に発生するカールが所定範囲内になるように、かつ、浸透抑制剤の塗り過ぎによる画像定着性の低下が起こらないように最適量が求められる。
すなわち、本例に示す画像記録方法では、カールの抑制と画像定着性低下の抑制という2つの観点から、浸透抑制剤量の最適量を求めるパラメータとしてコート層厚みtを見出した。換言すると、コート層厚みtに基づきカールが所定範囲となる浸透抑制剤量を求め、最適量の浸透抑制剤を付与することで浸透抑制剤の過剰な付与による画像定着性の低下という問題も同時に解決した。なお、浸透抑制剤量の決定方法についての詳細は後述する。
浸透抑制剤としては、有機溶剤にラテックスを分散した溶液、有機溶剤にポリマーを溶解した溶液、ワックス等が好適に用いられる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、石油類等の非水性溶剤(溶剤自体が紙のカールを発生させないもの)が好適に用いられる。なお、溶媒が水等のカールを発生させる溶媒であっても、第1の処理剤の付与量が最適化されるので使用可能である。
浸透抑制剤の付与方法としては、インクジェット方式による打滴や(ノズル51から浸透抑制剤を微液滴化して打滴する態様を図1(b)に図示)、スプレー塗布、ローラ塗布、バー塗布等が好適に用いられる。インクジェット方式を適用する場合には、浸透抑制剤を後述する色材入りインクの打滴箇所及びその周辺のみに選択的に付与することができ、好適である。
本例に示す浸透抑制剤には、加熱により皮膜化される微粒子を含有しているので、浸透抑制剤を付与した後に、加熱処理を施して浸透抑制剤の溶媒成分を蒸発させるとともに、樹脂成分(ラテックス、溶解ポリマーなど)を皮膜化させることで、より好ましい浸透抑制層が形成される。
図1(c)に示す処理液付与工程は、浸透抑制剤付与工程によって記録媒体16の表面に浸透抑制剤層1Aが形成された後に、後述の色材入りインク(図1(d)に符号3で図示)中の色材(顔料もしくは染料)を凝集若しくは増粘させる成分を持つ物質(処理液、第2の処理剤;図1(c)に微液滴化した処理液2を図示)を付与する。
処理液の具体例として、インクと反応してインク中の色材を析出あるいは不溶化させる処理液や、インク中の色材を含む半固体状の物質(ゲル)を生成する処理液等が挙げられる。そして、インクと処理液との反応を引き起こす方法として、インク中のアニオン性の色材と処理液中のカチオン性の化合物を反応させる方法や、互いにpHの異なるインクと処理液を混合させることでインクのpHを変化させてインク中の顔料の分散破壊を起こし顔料を凝集させる方法、処理液中に含有する多価金属塩との反応によりインク中の顔料の分散破壊を起こし顔料を凝集させる方法などが挙げられる。
処理液の付与方法としては、浸透抑制剤の付与方法同様に、インクジェット方式による打滴(ノズル51’から処理液を微液滴化して打滴する態様を図1(c)に図示)、スプレー塗布、ローラ塗布、バー塗布等が好適に用いられる。インクジェット方式を適用する場合には、処理液を後述する色材入りインクの打滴箇所及びその周辺のみに選択的に付与することができ、好適である。
上述したように浸透抑制剤を予め付与している場所(浸透抑制剤層1A上)に処理液を付与するため、処理液は記録媒体16の内部への浸透が抑制される。なお、後述のインク中の色材成分が凝集した後に、記録媒体16(浸透抑制剤層1A)と接着せず処理液層2A中に浮遊してしまうことを防止するために、処理液を付与した後(処理液層2Aが形成された後)に処理液中の溶媒を乾燥(蒸発)させることが好ましい。
図1(d)には、インク打滴工程は、インクジェット方式で入力画像に対応したドット3Aを形成するために、ノズル51”からインク液滴3を打滴する。即ち、予め処理液層2Aが形成された領域に対して画像データに応じてインク液滴を打滴し、記録媒体16上に所望の画像を記録する。
上述した画像記録方法によれば、記録媒体16のコート層厚みtに応じて浸透抑制剤の付与量を制御(最適化)するので、浸透抑制剤の過剰付与による画像の定着性低下が抑制される。また、浸透抑制剤の機能によって処理液2及びインク液滴3の溶媒成分の記録媒体16内への浸透が抑制され、画像記録後の記録媒体におけるカールの発生が抑制される。さらに、処理液2が記録媒体16に浸透せずに記録媒体16の表面に保持されるので、記録媒体16(処理液層2A)に着弾したインク液滴3は記録媒体16の表面にすばやく定着し、インクのにじみ等の画像異常の発生が防止される。
〔判断工程の説明〕
次に、図1(a)に図示した判断工程について、さらに詳細に説明する。
図2は、判断工程の制御の流れを示すフローチャートである。同図に示すように、まず、記録媒体16の種類が設定される(ステップS10)。記録媒体16の種類の設定方法は、記録媒体16の種類の情報が記憶されたICタグ等の情報記憶体を記録媒体16が収容されるカセット等に取り付けておき、該情報記憶体から自動的に読み出してもよいし、ユーザインターフェースを介してユーザが直接設定してもよい。また、記録媒体16の搬送路上に設けられたCCDなどの撮像素子によって記録媒体16を読み取り、その読取結果から記録媒体16の種類を判断してもよい。
ステップS10において記録媒体16の種類が判断されると、紙種データ格納領域(図14に符号94で図示するデータベース格納部内の一部の領域)に記憶されている記録媒体16の種類(紙種)ごとのコート層厚みtのデータが参照される(ステップS12)。
なお、コート層厚みtの値を直接入力してもよいし、コート層厚みtを直接検出してもよい。コート層厚みtを直接入力する具体例として、装置をコントロールするコンソールやPCからの入力する方法や、装置と一体となっている入力デバイス(ユーザインターフェイス)からの入力する方法が挙げられる。
また、コート層厚みtを直接検出する方法としては、検出素子を記録媒体に接触させる方法が挙げられる。具体的には、先端部が針形状を有する検出素子を記録媒体に刺し、途中で抵抗が大きく変わったところをコート層と原紙層の境目と判断し、コート層厚みを判断する方法が考えられる。
その後、ステップS14において、入力された記録媒体16は紙種データ(コート層データ)が存在するものであるか否かが判断され、紙種データが存在する場合には、コート層厚みtに応じた浸透抑制剤量が設定され(ステップS16)、当該浸透抑制剤量は浸透抑制剤量記憶領域(図14に符号96で図示)に記憶され(ステップS18)、浸透抑制剤設定量に応じた浸透抑制剤の付与が行われる(ステップS20)。
一方、ステップS14において、紙種データが存在しないものであると判断されると(No判定)、デフォルトの浸透抑制剤量が設定され(ステップS22)、当該デフォルトの浸透抑制剤量は浸透抑制剤量記憶領域に記憶され(ステップS18)、浸透抑制剤設定量に応じた浸透抑制剤の付与が行われる(ステップS20)。
なお、紙種データが存在しない場合には、その旨をユーザに報知するように構成する態様が好ましい。また、紙種データが存在しない旨が報知されたときにデフォルトの浸透抑制剤量をユーザが設定できるように構成する態様が好ましい。
図3には、浸透抑制剤量を決定するためのデータテーブル(コート層厚みtと浸透抑制剤量の関係)の一例をグラフ形式で模式的に図示する。このようなデータテーブルを予め作製し、所定の記憶領域(図14のデータベース格納部94)記憶しておき、当該データベースを参照して浸透抑制剤量を求めることができる。
コート層厚みtが大きい記録媒体はコート層内により多くのインクを保持することができるので、カールが発生しにくいものであり、浸透抑制剤の付与量はより少なくすることができる。
一方、コート層厚みtが小さい記録媒体はコート層内に保持することができるインクの量が少ないので、カールを抑制するためにはより多い量の浸透抑制剤を必要とする。図3に示すコート層厚みtと浸透抑制剤量yとの関係は、以下に示す実験やシミュレーションによって求めることが可能である。
なお、本例に示す浸透抑制剤量yを決める方法では、基材の材質や厚みなどコート層厚みt以外の条件が同じものであっても、コート層厚みtが異なるものは異なる種類として取り扱われる。
ここで、図2のステップS22におけるデフォルトの浸透抑制剤量について説明する。デフォルトの浸透抑制剤量は、図3(a)に示す直線上のいずれかの値とすることができ、以下のように記録媒体のグレードにより決定することができる。なお、以下に示すデフォルトの浸透抑制剤量はあくまでも例示であり、適宜変更することができる。
記録媒体(用紙)のグレードが分かる場合には、グレードに応じて図3(a)におけるコート層の厚みを設定し、その厚みに対応する浸透抑制剤量をデフォルトの浸透抑制剤量とする。
「A2マット以下のグレード」(A2マット、再生紙)の場合には、A2マット場合のコード層厚みtは7.156μm、再生紙の場合のコート層厚みtは5.125μmとする。なお、当該コート層厚みtは、それぞれのグレードに対応するいくつかの記録媒体についてコート層厚みtを実測し、その平均値である。
また、「A2マット以下以外のグレード」(板紙、アートポスト、A1グロス、A1マット、A2グロス)の場合には、平均のコート層厚みtが8.1μmであり、A2マット以下のグレードよりも比較的厚いため、抑制剤を付与しなくてもカールが発生する可能性が極めて低いので、浸透抑制剤を付与しない。すなわち、デフォルトの浸透抑制剤量はゼロとする。
記録媒体のグレードが分からない場合には、各グレードの平均のコート層厚みt(板紙を除く)は10μm程度であるため、「A2マット以下以外のグレード」と同様に浸透抑制剤を付与しない。図3(b)に、いくつかの記録媒体のコート層厚みを実測したデータを示す。
〔データテーブル作成の説明〕
次に、コート層厚みtと浸透抑制剤量の関係を示すデータテーブルを実験により作製する方法について説明する。
当該実験では、コート層厚みtが異なる9種類の記録媒体(用紙1〜9)を用いて、浸透抑制剤の付与条件を「浸透抑制剤なし」、「少量条件」、「多量条件」の3段階に変えて、塗布バーを使用して浸透抑制剤を付与した後に塗布バーを使用して処理液を付与し、常温で1日間乾燥させた後にカール量|C|を測定した。
用紙1〜9のうち、用紙1と用紙2は同一のもので秤量違い(用紙1よりも用紙2の秤量が大きい)である。同様に、用紙3と用紙4、用紙5と用紙6も同一のもので秤量違い(用紙3よりも用紙4の秤量が大きく、用紙5よりも用紙6の秤量が大きい)である。
塗布バーを使用した液体塗布は、簡易な塗布方法であるが、バーに刻まれているピッチ幅や溝の深さを変えることにより付与量を定量的に変化させることができる。
ここでいう「カール量|C|」は、カール方向に5mm×50mmに裁断したサンプルを測定板にあて、カールを半径Rの円の孤とみなして、C=10/R(cm)とした時の値である。カール量の単位は10/cmである。
また、後述する「カール値C」は、描画面側が伸びる(非描画面側に傾く)場合をマイナス、その反対側に伸びる場合をプラスとして方向付けをしている。この測定方法では、重力の影響がないためカール値Cが歪み量に比例し、幅方向のカールを測定できることで巻き癖の要因と分離できる。
また、本実験に使用した浸透抑制剤A及び処理液の処方は、以下に示すとおりである。なお、本実験では浸透抑制剤Aを使用したが、浸透抑制剤Bを使用しても同様の結果を得ることができる。
(浸透抑制剤A)
浸透抑制剤Aは、以下に示す処方によって作製した。
下記〔化1〕に示す構造の分散安定剤〔Q−1〕10g、酢酸ビニル100g及びアイソパーH(エクソン社製商品名)384gの混合溶液を窒素気流下で攪拌しながら温度70℃に加熱した。
重合開始剤として、2,2−アゾビス(イソバレロニトリル;略称A.I.V.N.)0.8gを加え、3時間反応した。重合開始剤を添加して20分後に白濁を生じ、反応温度は88℃まで上昇した。
更に、該重合開始剤を0.5g加え、2時間反応した後、温度を100℃まで上げ、2時間攪拌し、未反応の酢酸ビニルを留去した。冷却後、200メッシュのナイロン布を通し、得られた白色分散物は、重合率90%で平均粒径0.23μmの単分散性が良好なラテックスである。なお、該ラテックスの粒径は、粒子径計測装置CAPA−500(堀場製作所製)で測定した。
上記白色分散物(ラテックス)の一部を遠心分離機(回転数1×104r.p.m、回転時間60分)にかけて、沈降した樹脂粒子分を捕集し、乾燥し、該樹脂粒子分の重量平均分子量(Mw)とガラス転移点温度(Tg)、最低造膜温度(MFT)を測定した。Mw=2×105(ポリエチレン換算GPC値)、Tg=38℃、MFT=28℃であった。
(浸透抑制剤B)
浸透抑制剤Bは、以下に示す処方によって作成した。
下記〔化2〕に示す構造の分散安定剤〔Q−2〕15g、ベンジンメタクリレート75g、メチルアクリレート25g、3−メルカプトプロピオン酸メチル1.3g及びアイソパーH(エクソン社製商品名)552gの混合溶液を窒素気流下で攪拌しながら温度50℃に加熱した。
重合開始剤として、2,2アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル;略称A.C.P.P.)1.0gを加え、2時間反応した。更に、A.C.P.P.1.を0.8g加え2時間反応後、重合開始剤A.I.V.N.を0.8g加えた後、反応温度を75℃に設定し、3時間反応した。
次いで、温度90℃に加温し、減圧度20〜30mmHg下に未反応単量体を留去した後、冷却し、200メッシュのナイロン布を通し、得られた白色分散物は、重合率98%で平均粒径0.20μmの単分散性が良好なラテックスである。なお、該ラテックスの粒径は、粒子径計測装置CAPA−500(堀場製作所製)で測定した。
該樹脂粒子分の重量平均分子量(Mw)は2×104(ポリエチレン換算GPC値)、
なお、本実験では、浸透抑制剤の濃度は10重量パーセントとしたので、浸透抑制剤の溶質量は溶液量の10%である。浸透抑制剤の調液方法については、後述する装置構成例の中で説明する。
(処理液)
クエン酸(和光純薬製) :15質量部
オルフィンE1010(日信科学製) :1質量%
イオン交換水 :残部
図4には、実験結果を一覧表形式で図示する。同図に示す実験結果では、好ましいカール抑制効果を得られる場合の判断基準を|C|≦1として評価○で示し、若干のカールが発生するが問題とならない場合の判断基準を1<|C|≦2として評価△で示す。カール量が大きく問題となる場合(カール抑制効果を得られない場合)の判断基準を|C|>2として評価×で示す。
なお、本実験のように、塗布バーを用いた場合には、塗布条件を同じとしても(同じ形状の溝を有するバーを用いたとしても)、浸透抑制剤量(g/m2)は記録媒体の物性(浸透性、濡れ性)によって変わってしまう。図4中「少量」条件における浸透抑制剤量は1.39g/m2〜3.0g/m2、「多量」条件における浸透抑制剤量は2.78g/m2〜5.65g/m2となっている。
(すべての条件で評価○の場合)
用紙1(t≒9.6μm)、用紙2(t≒12.1μm)を使用した場合には、「浸透抑制剤なし」、「少量」、「多量」のすべての条件で評価○となっている。
(浸透抑制剤なしでは評価△、少量、多量では評価○の場合)
用紙3(t≒7.1μm)、用紙4(t≒8.1μm)、用紙8(t=7.5μm)は、「浸透抑制剤なし」の場合には評価△であるが、「少量」、「多量」の場合には評価○となる。
(浸透抑制剤なし、少量では評価△、多量では評価○の場合)
用紙6(t=5.5μm)は、「浸透抑制剤なし」、「少量」」の場合に評価△であるが、「多量」の場合に評価○となる。
(浸透抑制剤なしでは評価×、少量、多量では評価△の場合)
用紙5(t=5.1μm)は、「浸透抑制剤なし」の場合には評価×であるが、「少量」、「多量」の場合には評価△となる。
(浸透抑制剤なし、少量では評価×、多量では評価△の場合)
用紙7(t=4.5μm)、用紙9(t=4.0μm)は、「浸透抑制剤なし」、「少量」の場合には評価×であるが、「多量」の場合には評価△となる。
なお、本実験では、処理液の塗布にも塗布バーを用いたので、すべての記録媒体について同じ条件で塗布しているが、上述した理由により処理液の塗布量は記録媒体によって異なっている。しかし、図5に示すように、用紙5は処理液塗布量が相対的におよそ2(g/m2)程度変わったとしてもほぼ同じカール量であり、処理液塗布量はカール量には影響しないことが確認されている。また、他の用紙でも処理液塗布量は同じように考えることができる。
図6は、図4に示す表からコート層厚みtと浸透抑制剤量との関係をグラフ形式で表したものである。図6中、▲のプロットは浸透抑制剤なし、◆のプロットは少量、■のプロットは多量である。また、図6に図示する実線は評価○と評価△の境界線であり、破線は評価△と評価×の境界線である。
図6に示すグラフから、浸透抑制剤量をyとして評価○と評価△の境界線は、次式(1)で表すことができる。
y=−3×t+21.9 …(1)
また、評価△と評価×の境界線は、次式(2)で表すことができる。
y=−3×t+15.9 …(2)
先にも説明したように、上記式(1)、(2)をデータベース化して記憶しておくことで、コート層厚みtに応じて浸透抑制剤量yが設定される。例えば、カール値Cを|C|≦1とする場合には、上記(1)に基づくデータテーブルを参照し、カール値Cを|C|≦2とする場合には、上記(2)に基づくデータテーブルを参照して浸透抑制剤量yを設定することができる。なお、上記(1)、(2)を用いて演算により浸透抑制剤量yを求めてもよい。
図7には、コート層厚みtとカール値Cとの関係をグラフ形式で図示する。
図7に符号100を付した直線は「浸透抑制剤なし」の場合であり、次式(3)で表される。
C=0.3206×d−3.7259 …(3)
符号102を付した直線は「少量」の場合であり、符号104を付した直線は「多量」の場合である。それぞれ、次式(4)、(5)で表される。
C=0.3109×d−3.3178 …(4)
C=0.1862×d−1.9815 …(5)
図7に示すように、コート層厚みtとカール値Cは比例関係を示しているので、コート層厚みtが大きいほど、コート層内に蓄えることができる溶媒量(液体量)が増え、原紙(基材)をぬらしにくくなり、カールを抑制している。
上記の如く構成された画像記録方法によれば、浸透抑制剤によって記録媒体のカールを抑制する際に、使用される記録媒体のコート層厚みに応じて浸透抑制剤の付与量を最適値に設定するので、浸透抑制剤の過剰塗布による画像の定着性の低下が抑制されるとともに、記録媒体のカールが抑制される。
また、コート層厚みが比較的大きいカールしにくい記録媒体については、余分な浸透抑制剤を付与せずに済む。さらに、コート層厚みをパラメータとすることで、特殊な記録媒体への適用も可能である。
本例では、コート層厚みと浸透抑制剤付与量との関係を予めデータベース化して記憶する態様を例示したが、上記式(1)、(2)を用いて浸透抑制剤付与量を演算によって求めてもよい。
〔装置構成〕
次に、図1(a)〜(c)に示した画像記録方法が適用される画像記録装置(インクジェット記録装置)について説明する。
(全体構成)
図8は本例に示すインクジェット記録装置10の全体構成図である。
図8に示すように、インクジェット記録装置10は、CMYK各色に対応するヘッド12C,12M,12Y,12Kを含むインク打滴部12から、記録媒体搬送部14によって所定の記録媒体搬送方向Sに搬送される記録媒体16に対して、CMYK各色のインクを打滴して所望のカラー画像を記録するオンデマンド方式の画像形成装置である。
インクジェット記録装置10は、浸透抑制剤(図1(a)参照)を記録媒体16に付与する浸透抑制剤付与部18と、浸透抑制剤付与時の記録媒体16を加熱するヒータ19と、浸透抑制剤中の溶媒を乾燥させる浸透抑制剤乾燥部20と、乾燥処理が施された樹脂膜(浸透抑制剤膜;図1(a),(b)参照)に処理液を付与する処理液付与部22と、処理液中の溶媒を乾燥させる処理液乾燥部24と、上述したインク打滴部12と、記録媒体16上のインク中の溶媒を乾燥させるインク乾燥部26と、インク色材を記録媒体16に定着させる処理を施す定着加圧部28と、を含んで構成されている。
記録媒体搬送部14に保持された記録媒体16は図8における左から右へ搬送され、先ず浸透抑制剤付与部18から浸透抑制剤が付与される。本例では、記録媒体搬送部14の浸透抑制剤付与部18の直下にヒータ19を内蔵し、浸透抑制剤の付与直前、浸透抑制剤付与中及び浸透抑制剤付与直後の記録媒体16に加熱処理を施し、浸透抑制剤中の樹脂によって記録媒体16の画像形成面に樹脂膜(浸透抑制膜)を形成するように構成されている。
また、該ヒータ19の加熱領域には記録媒体16の温度(記録媒体16の画像形成面の温度)を検出する温度センサ31が設けられて、温度センサ31の検出結果に基づいて記録媒体16の温度が一定範囲内になるように、ヒータ19が制御される。温度センサ31は非接触型の温度センサが好適に用いられる。
ヒータ19には赤外線ヒータが好適に用いられる。なお、ヒータ19の配置は図3の配置に限定されず、記録媒体16に付与された浸透抑制剤中の樹脂によって、処理液が打滴されるまでに樹脂膜が形成されればよく、浸透抑制剤付与部18の記録媒体搬送方向上流側に配置されていてもよいし、浸透抑制剤付与部18の記録媒体搬送方向下流側に配置されていてもよい。また、記録媒体搬送方向上流側から下流側にわたって広範囲に配置されていてもよい。
本例では、記録媒体搬送部14にヒータ19を内蔵する態様を例示したが、ヒータ19を記録媒体16の画像形成面に対向するように配置してもよい。また、ヒータ19に代わり、記録媒体16に乾燥風や熱風を吹きつける方式で記録媒体16を加熱してもよいし、ヒータ19と送風による加熱を併用してもよい。
その後、浸透抑制剤付与部18の記録媒体搬送方向下流側に設けられる浸透抑制剤乾燥部20によって浸透抑制剤の乾燥処理が施される。
浸透抑制剤の乾燥処理の後に、浸透抑制剤乾燥部20の記録媒体搬送方向下流側に設けられる処理液付与部22から処理液が付与され、更に、処理液付与部22の記録媒体搬送方向下流側に設けられる処理液乾燥部24によって処理液の乾燥処理が施される。乾燥処理が施された処理液は、固体状の処理液層(図1(c)参照)となる。
記録媒体16に樹脂膜及び処理液層が形成されると、処理液乾燥部24の記録媒体搬送方向下流側に設けられるインク打滴部12から画像データに応じてインク液滴が打滴され、インク打滴部12の記録媒体搬送方向下流側に設けられるインク乾燥部26によってインクの乾燥処理が施される。
記録媒体搬送部14には、複数のローラに巻き掛けられた無端状のベルトの表面に記録媒体16を保持して搬送するベルト搬送や、ドラムの外周面に記録媒体16を保持し、ドラムを所定の回動方向に回動させてドラムの外周面上で記録媒体16を搬送するドラム搬送などの方式が好適に用いられる。また、記録媒体搬送部14に記録媒体16を保持する方式には、エアの吸引によるエア吸着、静電気による静電吸着、用紙の端部をニップ保持する方式などの様々な方式を適用することができる。
本例の浸透抑制剤付与部18及び処理液付与部22にはインクジェット方式(インクジェットヘッド)が好適に用いられる。もちろん、インクジェット方式に代わり、塗布バーや塗布ローラ等の塗布部材による塗布方式やスプレー方式などの方式を適用してもよい。
本例の各乾燥部には共通の構成が適用される。即ち、本例に示す各乾燥部では、媒体上方から(記録媒体16の画像形成面側から)乾燥処理が施される。乾燥処理は赤外線乾燥と乾燥風の併用が好ましい。また、インク中の溶媒の乾燥に代わり、もしくは乾燥と併用して、多孔質ローラによる溶媒吸収を行ってもよい。また、記録媒体16を保持する構造体(例えば、ベルトやドラムの内部)にヒータを内蔵する態様を適用することも可能である。
インクの打滴量は浸透抑制剤の打滴量や処理液の打滴量よりも多くなるので、インク打滴部12の後段に設けられるインク乾燥部26は、他の乾燥処理部よりも容量を大きくし、強力に乾燥させるように構成する態様が好ましい。
インク乾燥部26の記録媒体搬送方向下流側に設けられる定着加圧部28では、色材凝集体に対して、0.5〜2.0MPa程度の圧力とT2(=70〜100℃)程度の加熱をかけ、インク中の分散ポリマー(樹脂成分)を溶融させ、記録媒体16(図1(a),(b)に図示する樹脂膜1A)との密着を強化することが好ましい。即ち、定着加圧部28にはヒータ(不図示)を内蔵した押圧ローラが好適に用いられる。なお、ヒータ部分を記録媒体搬送部14に内蔵することも可能である。
定着加圧部28の記録媒体搬送方向には、センサ30が設けられている。センサ30は、記録媒体16に記録された画像を撮像する撮像素子(CCD)を含んで構成される。本例のインクジェット記録装置10では、センサ30による撮像結果に基づいて、インク打滴部12の色ごとに異常(インクの吐出異常)の有無が判断される。
センサ30は、カラー画像を読み取り可能に構成されている。例えば、RGBの各色に対応したフィルタRGBの各色に対応したセンサを別個に備えてもよいし、所定の配列で並べられたRGBの各色に対応したカラーフィルタを備える構成でもよい。また、撮像素子を1列に並べたラインセンサを用いてもよいし、撮像素子を2次元状に並べたエリアセンサを用いてもよい。
図示は省略するが、インクジェット記録装置10には、記録媒体搬送部14に記録媒体16を供給する給紙部が設けられている。複数種類の用紙(記録媒体)を利用可能な構成にした場合(記録媒体16が収容されるマガジンを複数備える場合)、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体を各マガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出及び処理液付与、浸透抑制剤の付与を実現するようにインク吐出制御及び処理液付与制御、浸透抑制剤付与制御を行うことが好ましい。
なお、ロール状に巻かれた長尺の連続用紙等を用いる場合には、浸透抑制剤付与部18の前段に記録媒体16を所定の長さにカットするカッターが設けられている。裁断用のカッターの構成例を挙げると記録媒体16の幅以上の長さを有する固定刃と、該固定刃に沿って移動する丸刃とから構成され、印字裏面側に固定刃が設けられ、記録媒体16の搬送路を挟んで印字面側に丸刃が配置される構成が挙げられる。
また、図示は省略するが、インクジェット記録装置10には、インク打滴部12の各ヘッド12C,12M,12Y,12Kにインクを供給するインク貯蔵/装填部を備えている。インク貯蔵/装填部は、各ヘッド12C,12M,12Y,12Kに対応する色のインクを貯蔵するインク供給タンク(図13に符号60で図示)を有し、各色のインクは所要のインク流路を介して各ヘッド12C,12M,12Y,12Kと連通されている。また、インク貯蔵/装填部は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有する部材が用いられる。
なお、上述したインク貯蔵/装填部と同様に、浸透抑制剤付与部18に対して浸透抑制剤を供給する構成を備えるとともに、処理液付与部22に対して処理液を供給する構成を備えている。また、本例に示すインクジェット記録装置10は上述した構成以外にも、記録媒体搬送部14の用紙を保持する面の汚れを除去するクリーニング処理部や、用紙搬送路上における記録媒体16の位置を検出する位置検出センサ、インク打滴部12の周辺など装置各部の温度を検出する温度センサ、画像記録後の記録媒体16を装置外部に排出する排紙部、上述した各部を用紙搬送路上と所定の退避位置との間を移動させる移動機構などを備えている。
(印字部の説明)
次に、インク打滴部12について詳説する。図9に示すように、インク打滴部12の各ヘッド12C,12M,12Y,12Kは、記録媒体16における画像記録領域の最大幅に対応する長さを有し、そのインク吐出面には画像記録領域の全幅にわたりインク吐出用のノズル(図10に符号51で図示)が複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。
ヘッド12C,12M,12Y,12Kは、記録媒体16の搬送方向(副走査方向;符号Aで図示)に沿って上流側からシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),黒(K)の色順に配置され、それぞれのヘッド12C,12M,12Y,12Kが用紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に延在するように固定設置される。
記録媒体16の全幅をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッドを各色インクに対してそれぞれ設ける構成によれば、用紙搬送方向について、記録媒体16とインク打滴部12の各ヘッド12C,12M,12Y,12Kとを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち、1回の副走査で)、記録媒体16の画像記録領域に画像を形成することができる。これにより、ヘッド12C,12M,12Y,12Kが用紙搬送方向と直交する主走査方向に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
(ヘッドの構造)
次に、ヘッド12C,12M,12Y,12Kの構造について詳説する。ヘッド12C,12M,12Y,12Kの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示す。なお、処理液付与部22に含まれるインクジェットヘッド(処理液ヘッド)にもヘッド50と同様の構成を適用することができるので、本例のインクジェット記録装置10に含まれるインクジェットヘッドについて、ヘッド12C,12M,12Y,12Kを用いて説明する。
図10(a)はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図10(b)はその一部の拡大図である。また、図10(c)はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図11はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図10(a),(b)中のA−A線に沿う断面図)である。
記録媒体16上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図10(a),(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(副走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
主走査方向に記録媒体16の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図10(a)の構成に代えて、図10(c)に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体16の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドモジュールを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。図11に示すように、各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインク供給タンク(図11中不図示、図13に符号60で図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは図11の共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の天面を構成し共通電極と兼用される振動板56には個別電極57を備えた圧電素子58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによって圧電素子58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
かかる構造を有するインク室ユニット53を図12に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、記録媒体16の幅方向(記録媒体16の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図10(a),(b)に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル51-11、51-12、51-13、51-14、51-15、51-16を1つのブロックとし(他にはノズル51-21、…、51-26を1つのブロック、ノズル51-31、…、51-36を1つのブロック、…として)、記録媒体16の搬送速度に応じてノズル51-11、51-12、…、51-16を順次駆動することで記録媒体16の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと記録媒体16とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。即ち、本実施形態では、記録媒体16の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する記録媒体16の幅方向が主走査方向ということになる。なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。
また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表される圧電素子58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、記録媒体16の幅方向の長さに満たない短尺のヘッドを記録媒体16の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると記録媒体16を幅方向と直交する方向に所定量だけ移動させて、次の印字領域の記録媒体16の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して記録媒体16の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
(供給系の構成)
図13はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インク供給タンク60はヘッド50にインクを供給する基タンクであり、先に説明したインク貯蔵/装填部に含まれる。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
図13に示すように、インク供給タンク60とヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図13には示さないが、ヘッド50の近傍又はヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ヘッド50のインク吐出面の清掃手段としてクリーニングブレード66が設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニット(メンテナンス手段)は、不図示の移動機構によってヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電素子58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(圧電素子58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)圧電素子58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
また、ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、圧電素子58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合にはヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
クリーニングブレード66はゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構によりヘッド50のインク吐出面に摺動可能である。インク吐出面にインク液滴または異物が付着した場合、クリーニングブレード66をインク吐出面に摺動させることでインク吐出面を拭き取り、インク吐出面を清掃する。
(制御系の説明)
図14は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システム制御部72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、定着加圧制御部79、プリント制御部80、画像バッファメモリ(不図示)、ヘッドドライバ84、浸透抑制剤付与制御部90、処理液付与制御部92等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。
画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像等を一旦格納する記憶手段であり、システム制御部72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システム制御部72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システム制御部72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
画像メモリ74には、システム制御部72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、画像メモリ74は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。画像メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。また、システム制御部72等を構成するプロセッサ類に内蔵されるメモリを画像メモリ74として用いてもよい。
モータドライバ76は、システム制御部72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバである。図14には、装置内の各部に配置されるモータ(アクチュエータ)を代表して符号88で図示されている。例えば、図14に示すモータ88には、図8の記録媒体搬送部14の駆動源として機能するモータや、各部の移動機構のモータ、図13のクリーニングブレード66を移動させる機構のモータなどが含まれる。
ヒータドライバ78は、システム制御部72からの指示にしたがって、ヒータ89を駆動するドライバである。図14には、インクジェット記録装置10に備えられる複数のヒータを代表して符号89で図示されている。例えば、図14に示すヒータ89には、図8の浸透抑制剤乾燥部20のヒータや、処理液乾燥部24のヒータ、インク乾燥部26のヒータなどが含まれている。
プリント制御部80は、システム制御部72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ84及び浸透抑制剤付与制御部90、処理液付与制御部92に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ84を介してヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。また、当該画像データに基づいて浸透抑制剤付与制御部90を介して浸透抑制剤付与部18の付与タイミングが制御されるとともに、処理液付与制御部92を介して処理液付与部22の処理液付与量や付与タイミングが制御される。
データベース格納部94は、当該装置の制御に用いられる各種データベースが格納されている記憶領域である、データベース格納領域は、紙種データ格納領域(図2参照)や、コート層厚みと浸透抑制剤量の関係が記憶されたデータベースの記憶領域などを含んで構成されている。
自動判別された記録媒体の種類に基づいて、紙種データ格納領域を参照して当該記録媒体のコート層厚みが判断され、コート層厚みに基づきコート層厚みと浸透抑制剤量の関係のデータベースを参照して浸透抑制剤量が決められる。当該浸透抑制剤量は浸透抑制剤量記憶領域96に記憶され、当該浸透抑制剤量に基づいて浸透抑制剤付与制御部90は浸透抑制剤付与部18を制御する。
プリント制御部80には不図示の画像バッファメモリが備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリに一時的に格納される。また、プリント制御部80とシステム制御部72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられる画像データに基づいてヘッド12C,12M,12Y,12Kの圧電素子58に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号を圧電素子58に印加して圧電素子58を駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図14に示すヘッドドライバ84には、ヘッド50の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、画像メモリ74に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データが画像メモリ74に記憶される。
画像メモリ74に蓄えられた画像データは、システム制御部72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80においてインク色ごとのドットデータに変換される。即ち、プリント制御部80は、入力されたRGBのラスターデータをKCMYの4色のドットデータに変換するRIP処理を行う。プリント制御部80で生成されたドットデータは、不図示の画像バッファメモリに蓄えられる。なお、浸透抑制剤のドットデータや処理液のドットデータも同様に生成される。
不図示のプログラム格納部には各種制御プログラムが格納されており、システム制御部72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部は動作パラメータ等の記憶手段(不図示)と兼用してもよい。
上記装置構成例には、記録媒体をベルト搬送方式により搬送する構成を例示したが、記録媒体の搬送方法にはドラム搬送方式などの他の搬送方式を適用してもよい。また、浸透抑制剤付与、処理液付与、インク打滴、乾燥等の各処理を独立した搬送ドラム(圧胴)を用いて行い、各圧胴間の記録媒体の受け渡しを渡し胴によって行う搬送方式にも適用可能である。
〔浸透抑制剤の説明〕
本例に示すインクジェット記録装置10に適用される浸透抑制剤について説明する。浸透抑制剤の組成例は、上述した実験に使用した浸透抑制剤A,Bの組成で説明したとおりであり、ここでは説明を省略する。
また、浸透抑制剤には、加熱により皮膜化する微粒子(熱可塑性樹脂)を含有しており、浸透抑制剤の付与後の乾燥処理時において熱可塑性樹脂が皮膜化し、浸透抑制剤層が形成される。
浸透抑制剤に用いられる熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは、−10℃以上100℃以下が好ましく、10℃以上70℃以下がさらに好ましく、30℃以上50℃以下が更に好ましい。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgが低いと、吐出の際にノズル面近傍で皮膜を形成しやすくなってしまい、浸透抑制剤の吐出の安定性が低下するという問題がある。一方、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgが高いと皮膜を形成する際に多大な熱をかける必要が発生するという問題がある。また、熱可塑性樹脂の形態は、樹脂が後述する溶媒に溶解若しくは粒子状態で分散されている形態があるが、浸透抑制剤を吐出する場合には粒子状態で分散させた方が溶液全体の粘度を下げることができ、好ましい。粒子の場合には粒子径は、0.01μm異常5μm以下の範囲が好ましく、0.05μm異常1μm以下の範囲がさらに好ましい。粒子径が小さすぎると紙の内部に粒子が浸透してしまって表面で皮膜が形成できないという問題があり、粒子径が大きすぎると熱をかけても十分な皮膜を形成できず、吐出時にノズルに粒子が詰まるという問題がある。熱可塑性樹脂の重量パーセント濃度は、1wt%以上40wt%以下の範囲が好ましく、5wt%以上30wt%以下の範囲がさらに好ましく、10wt%以上20wt%以下の範囲がさらに好ましい。
熱可塑性樹脂の濃度が低いと熱可塑性樹脂同士が十分に皮膜を形成せず、一部に欠陥ができてしまうという問題があり、濃度が高いと液の保存安定性が悪く(樹脂が析出する)、粘度が高すぎるという問題がある。
本例で用いる熱可塑性樹脂は、上述したガラス転移温度Tg、粒子径、重量パーセント濃度の各条件を満たすものであればいずれでもよく、具体的には、オレフィン重合体及び共重合体、塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン共重合体、アルカン酸ビニル重合体及び共重合体、アルカン酸アリル重合体及び共重合体、スチレン及びその誘導体の重合体及び共重合体、オレフィン−スチレンオレフィン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、アクリロニトリル共重合体、メタクリロニトリル共重合体、アルキルビニルエ−テル共重合体、アクリル酸エステル重合体及び共重合体、メタクリル酸エステル重合体及び共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、イタコン酸ジエステル重合体及び共重合体、無水マレイン酸共重合体、アクリルアミド共重合体、メタクリルアミド共重合体、水酸基変性シリコン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ケトン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、アミド樹脂、水酸基及びカルボキシル基変性ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、環化ゴム−メタクリル酸エステル共重合体、環化ゴム−アクリル酸エステル共重合体、複素環を含有する共重合体(複素環として例えば、フラン環、テトラヒドロフラン環、チオフェン環、ジオキサン環、ジオキソフラン環、ラクトン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、1,3−ジオキセタン環等)、セルロース系樹脂、脂肪酸変性セルロース系樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
次に、上述した熱可塑性樹脂を溶解若しくは分散させる非水溶媒について述べる。本例に用いる非水溶媒としては、上述した熱可塑性樹脂を安定的に溶解若しくは分散させておくことができ、溶媒自身が紙に浸透してもカールを起こさない、若しくはカールが軽微であるものであればよい。具体的には、直鎖状もしくは分枝状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素又は芳香族炭化水素、及びこれらのハロゲン置換体を用いることができる。例えばオクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(アイソパー;エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール;シェルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ;スピリッツ社の商品名)等を単独あるいは混合して用いることができる。
〔処理液の説明〕
本例に示すインクジェット記録装置10に適用される処理液(凝集処理液)の組成例は、上述した実験に使用した処理液の組成例と同じであり、ここでは説明を省略する。
〔インクの説明〕
以下に、本例に示すインクジェット記録装置10に適用されるインク(顔料系インク)の組成例を示す。
<顔料>
顔料の作製方法は以下のとおりである。
チバ・スペシャリティーケミカルズ社のCromophtal Jet Magenta DMQ(PR−122)10g、分散用ポリマー10.0g、グリセリン4.0g、及びイオン交換水26gを攪拌混合させて分散液を調製した。
次いで、超音波照射装置(SONICS社製 Vibra−cell VC−750、テーパーマイクロチップ:φ5mm、Ampitude:30%)を用いて、前述の分散液に、超音波を間欠照射(照射0.5秒/休止1.0秒)で2時間照射して顔料を更に分散させ、20質量%顔料分散液とした。
<インク>
本例に示すインクジェット記録装置10には、以下に組成を示すインクA,インクB,インクCを用いることが可能である。
(インクA)
顔料(マゼンダ) :4質量%
グリセリン(和光純薬製) :20質量%
ジエチレングリコール(和光純薬製):10質量%
オルフィンE1010(日信科学製):1質量%
イオン交換水 :残部
(インクB)
顔料(マゼンダ) :4質量%
ジョンクリル790(ジョンソンポリマー製):8質量部
グリセリン(和光純薬製) :20質量%
ジエチレングリコール(和光純薬製) :10質量%
オルフィンE1010(日信科学製) :1質量%
イオン交換水 :残部
なお、ジョンクリル790のDSC法によるガラス転移点温度(Tg)は、90℃である。
(インクC)
顔料(マゼンダ) :4質量%
ジョンクリル537(ジョンソンポリマー製):8質量部
グリセリン(和光純薬製) :20質量%
ジエチレングリコール(和光純薬製) :10質量%
オルフィンE1010(日信科学製) :1質量%
イオン交換水 :残部
なお、ジョンクリル537のDSC法によるガラス転移点温度(Tg)は、40℃である。
ここに説明した浸透抑制剤、処理液、インクの組成はあくまでも一例であり、他の組成を有するものを適宜適用することが可能である。
本例では、記録媒体(用紙)上にカラー画像を記録するインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はインクジェット記録装置に限定されず、浸透性を有する記録媒体に対して液体を用いてパターンなどの形状を形成する画像形成装置や液体吐出装置などに広く適用することが可能である。
以上、本発明の画像記録方法及び画像記録装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
<付記>
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(発明1):画像記録に使用される記録媒体のコート層の厚みを特定する特定工程と、前記記録媒体のカールが所定の範囲となるように、前記特定工程により特定された前記記録媒体のコート層の厚みに応じて記録媒体に対して液体の浸透を抑制する機能を有する第1の処理剤の付与量を決める第1の処理剤付与量決定工程と、前記第1の処理剤付与量決定工程によって決められた量の第1処理剤を前記記録媒体に付与する第1の処理剤付与工程と、前記第1の処理剤付与工程によって前記記録媒体に前記第1の処理剤が付与された後に、入力画像データに従って前記記録媒体にインク打滴を行うインク打滴工程と、を含むことを特徴とする画像記録方法。
本発明によれば、画像記録に使用される記録媒体のカール量が所定の範囲となるように、該記録媒体のコート層の厚みに応じて浸透抑制効果を有する第1の処理剤の付与量を決定し、当該記録媒体に適した量の第1の処理剤が付与されるので、効果的に記録媒体のカールが抑制されるとともに第1の処理剤の過剰な付与による画像の定着性の低下が抑制される。
第1の処理剤を付与する手段には、バー塗布方式、ローラ塗布方式、インクジェット方式などを適用可能である。
加熱よって皮膜化する微粒子を第1の処理剤中に分散させ、第1の処理剤の付与後に該微粒子を皮膜化させる加熱工程を含む態様が好ましい。
(発明2):発明1に記載の画像記録方法において、記録媒体のコート層の厚みと当該記録媒体のカールが所定の範囲となる前記第1の処理剤の付与量との関係を記憶する第1の処理剤付与量記憶工程を含み、前記第1の処理剤付与量決定工程は、前記特定工程により判断されたコート層の厚みに基づき、第1の処理剤付与量記憶工程により予め記憶されているコート層の厚みと第1の処理剤の付与量との関係を参照して前記第1の処理剤の付与量を決めることを特徴とする。
かかる態様によれば、記録媒体のカールが所望の範囲になるように、当該記録媒体のカールを効果的に抑制することが可能である。また、第1の処理剤の過剰な付与を回避することができ、画像の定着性の低下が抑制される。
コート層の厚みと第1の処理剤の付与量との関係は、実験、シミュレーション等により求めることが可能である。
(発明3):発明2に記載の画像記録方法において、画像記録に使用される記録媒体のカールの範囲を設定するカール範囲設定工程を含み、前記第1の処理剤付与量記憶工程は、前記コート層の厚みと複数のカールの範囲のそれぞれに対応する第1の処理剤の付与量との関係を記憶し、前記第1の処理剤付与量決定工程は、コート層の厚みとカール範囲設定工程によって設定されたカール範囲に対応する第1の処理剤の付与量との関係を参照して前記第1の処理剤の付与量を決定することを特徴とする。
かかる態様によれば、ユーザ等により所望のカール範囲が適宜設定され、記録媒体のカールが当該範囲内となるように第1の処理剤の付与量が最適化される。
(発明4):発明1乃至3のいずれかに記載の画像記録方法において、記録媒体の種類と当該記録媒体のコート層の厚みとの関係を予め記憶するコート層厚み記憶工程と、画像記録に使用される記録媒体の種類を入力する記録媒体種類入力工程と、を含み、前記特定工程は、前記コート層厚み記憶工程により記憶された記録媒体の種類と当該記録媒体のコート層の厚みとの関係を参照して、前記記録媒体種類入力工程により入力された記録媒体におけるコート層の厚みを判断することを特徴とする。
かかる態様において、記録媒体の種類を自動的に判別する記録媒体判別工程を含む態様が好ましい。
(発明5):発明1乃至3のいずれかに記載の画像記録方法において、前記特定工程は、当該画像記録に使用される記録媒体のコート層の厚みの値を入力するコート層値入力工程を含むことを特徴とする。
(発明6):発明1乃至3のいずれかに記載の画像記録方法において、前記特定工程は、前記記録媒体のコート層の厚みを検出する検出工程を含むことを特徴とする。
(発明7):発明1乃至6のいずれかに記載の画像記録方法において、前記第1の処理剤付与量決定工程は、前記特定工程により使用される記録媒体のコート層の厚みが特定できないときには、予め決められた値を第1の処理剤の付与量とすることを特徴とする。
かかる態様において、予め決められた値は、第1の処理剤付与量記憶工程により予め記憶されているコート層の厚みと第1の処理剤の付与量との関係から決める態様が好ましい。
(発明8):発明1乃至7のいずれかに記載の画像記録方法において、インク中の色材を凝集させる機能又はインクドットを増粘させる機能を有する第2の処理剤を前記記録媒体に付与する第2の処理剤付与工程を含むことを特徴とする。
かかる態様において、第2の処理剤を付与する手段には、バー塗布方式、ローラ塗布方式、インクジェット方式などを適用可能である。
(発明9):発明1乃至8のいずれかに記載の画像記録方法において、前記第1の処理剤は、油性溶媒に樹脂粒子を分散させた液体若しくは、油性溶媒に樹脂を溶解させた液体を含むことを特徴とする。
かかる態様によれば、第1の処理剤が好ましい浸透抑制効果を有し、好ましいカール抑制効果を発揮する。
(発明10):発明1乃至8のいずれかに記載の画像記録方法において、前記第1の処理剤は、ワックスを含むことを特徴とする。
かかる態様によれば、第1の処理剤にワックスを含むことで、より好ましい浸透抑制効果を発揮する。
(発明11):画像記録に使用される記録媒体に対して液体の浸透を抑制する機能を有する第1の処理剤を付与する第1の処理剤付与手段と、前記記録媒体のコート層の厚みを特定する特定手段と、前記記録媒体のカールが所定の範囲となるように、前記特定手段により特定された前記記録媒体のコート層の厚みに応じて前記第1の処理剤の付与量を制御する第1の処理剤付与量制御手段と、前記第1の処理剤が付与された後に、入力画像データに従って前記記録媒体にインク打滴を行うインクジェットヘッドと、を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様において、加熱により皮膜化する微粒子を第1の処理剤に分散させ、第1の処理剤を付与した後に第1の処理剤が付与された記録媒体を加熱する加熱手段を備える態様が好ましい。
1…浸透抑制剤、2…処理液、3…インク液滴、10…インクジェット記録装置、12…印字部、16…記録媒体、18…浸透抑制剤付与部、22…処理液付与部、72…システム制御部、74…画像メモリ、80…プリント制御部、84…ヘッドドライバ、90…浸透抑制剤付与制御部、94…データベース格納部、96…浸透抑制剤量記憶領域