JP2005306025A - インクジェット記録装置及び液塗布方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】インクの浸透速度に応じた液塗布制御を行うことで、多種多様な被記録媒体上に好ましい画像を形成するインクジェット記録装置及び液塗布方法を提供する。
【解決手段】処理液塗布部11によって画像によらず記録紙16に塗布される処理液と画像に応じて印字ヘッドから吐出されるインクとを記録紙16上で混合させて所望の画像を形成するインクジェット記録装置10において、記録紙16に先に塗布される処理液の浸透速度に応じて、インクが打滴されるときに記録紙16の表面にインクと混合反応が可能なの処理液が残るように処理液の塗布量が変更される。処理液の塗布量変更の代わり、記録紙16の搬送速度、記録紙16の温度を制御してもよい。処理液の塗布量変更が行われる際には画像の階調不良を防止するために画像処理が行われ、印字ヘッドから打滴されるインク量も変更される。
【選択図】 図1

Description

本発明はインクジェット記録装置及び液塗布方法に係り、特に2種類の液を混合させて色材の不溶性機能或いは定着性機能を発揮するインクの打滴制御技術に関する。
近年、画像やドキュメント等のデータ出力装置としてインクジェットプリンターが普及している。インクジェットプリンターは記録ヘッドに備えられたノズル等の記録素子をデータに応じて駆動させ、該ノズルから吐出されるインクによって記録紙などの被記録媒体(記録メディア)上にデータを形成することができる。
インクジェットプリンターでは、多数のノズルを有する記録ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させ、該ノズルからインク滴を吐出させることによって被記録媒体上に所望の画像が形成される。
インクジェット記録装置に用いられる被記録媒体には様々なものがあり、被記録媒体の種類に応じてインク種を切り換えたり、インクの打滴制御を変更したりすることで、当該被記録媒体に好ましい画像が形成される。
例えば、被記録媒体の内部に打滴されたインクが浸透する浸透タイプの媒体では、インク溶質が被記録媒体内部の受像層に保持される染料系インクが用いられ、被記録媒体上に打滴されたインクを該被記録媒体内部に素早く浸透させることで、ドット形状が崩れることや色を重ねる際の色むら、階調不良を低減させることができる。
一方、打滴されたインクが被記録媒体の表面に定着する非浸透タイプの媒体では、インク溶質が媒体表面で固化する顔料系インクが用いられ、被記録媒体上に打滴されたインク滴から素早く水分を除去してインクを定着させるような工夫がなされている。
特許文献1に記載されたインクジェットプリント装置およびインクジェットプリント方法では、同一位置或いは近傍位置にプリント性向上液とインクを吐出させ、先に吐出したプリント性向上液或いはインクのうち何れか一方の液滴の一部が被プリント材の表面に残留している時間内に、もう一方の液滴の吐出を行うように構成されている。
また、特許文献2に記載されたインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法では、選択された記録モードで記録を行うインクジェット記録装置において、高速記録モード時は低速記録モード時に比べて1画素あたりのインク打ち込み量を小さくし、且つ、黒インクの記録では不溶化処理液を吐出するように構成されている。
また、特許文献3に記載されたインクジェット方法およびインクジェット記録装置では、インクを吐出する記録ヘッドとインクの色材に所定の作用を生じさせる処理液を吐出する記録ヘッドを用い、インクの色材の量又は、種類に応じて吐出する処理液の量が異なるように構成されている。
特開平8−281931号公報 特開2002−210947号公報 特開2002−321349号公報
しかしながら、多種多様な被記録媒体を用いる際には、被記録媒体と使用するインクの組み合わせの違いによって液滴の浸透速度が大きく異なるため、各被記録媒体とインクの組み合わせに適した処理液及びインクの付加量を制御する必要がある。例えば、浸透の早い普通紙等の場合と浸透の遅い印刷用塗工紙等の場合とでは一定時間後に被記録媒体上に残されている液量が異なるため、打滴量、残留水分処理等、それぞれの媒体種に適切な手段をとらないと、良好な画像を形成することは難しい。
特許文献1に記載されたインクジェットプリント装置およびインクジェットプリント方法では、被プリント材の種類が変わった場合、具体的に液が該被プリント材上に残留している時間をどう判断すればよいかという技術が開示されていない。また、インクとプリント性能向上液は何れもインクジェットヘッドから吐出されるために、プリント性能液はインクジェットヘッドにて吐出可能な液物性(粘度、表面張力等)を有する必要がある。
また、特許文献2に記載されたインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法では、記録モードの選択によってインク打滴量を制御する技術が開示されているが、被記録媒体の違いによって打滴量を制御する技術に関しては開示されていない。
また、特許文献3に記載されたインクジェット方法およびインクジェット記録装置では、インクの色材の量や種類に応じて処理液滴量を制御する技術が開示されているが、被記録材の違いによって打滴量を制御する技術が開示されていない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、インクの浸透速度に応じた塗布制御を行うことで、多種多様な被記録媒体上に好ましい画像を形成するインクジェット記録装置及び液塗布方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために請求項1に係る発明は、少なくとも2種類の液を混合させて被記録媒体上に画像を形成させるインクジェット記録装置であって、前記被記録媒体上に第1の液を塗布する第1の塗布手段と、第2の液を前記被記録媒体に形成される画像に応じて塗布する第2の塗布手段と、前記第1の塗布手段及び前記第2の塗布手段と前記被記録媒体とを相対的に移動させる移動手段と、前記第1の液及び前記第2の液のうち少なくとも何れか一方の浸透速度に応じて、前記第1の液の塗布量を変更する第1の液の塗布量変更制御、前記第2の液の塗布量を変更する第2の液の塗布量変更制御、前記移動手段による前記被記録媒体の相対移動速度制御、及び前記被記録媒体の温度可変制御のうち少なくとも何れか1つの制御を実行する制御手段と、を備えたことを特徴としている。
即ち、第1の液の浸透速度及び第2の液の浸透速度のうち少なくとも何れか一方の浸透速度情報に応じて、該第1の液の塗布量変更制御、該第2の液の塗布量変更制御、被記録媒体の搬送速度制御、及び被記録媒体の温度制御を実行するように制御するので、第1の液と第2の液とが確実に混合され、第1の液及び第2の液の混合反応が確実に行われる。
被記録媒体の温度を制御するために、被記録媒体の温度を可変させるヒータや冷却手段などの温度可変手段が備えられている。
被記録媒体には、連続紙、カット紙、シール用紙などに紙類やOHPシートなどの樹脂シート、フイルム、布、金属、その他材質を問わず様々な媒体を含む。また、被記録媒体には記録媒体、記録メディア、被吐出媒体、受液媒体、画像形成媒体などと呼ばれる媒体を含んでいる。
請求項2に示すように、請求項1に記載された発明は、前記第1の液及び前記第2の液のうち少なくとも何れか一方の浸透速度を予め記憶する記憶手段を備え、前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された前記第1の液の浸透速度情報及び前記第2の液の浸透速度情報のうち少なくとも何れか一方の前記被記録媒体への浸透速度情報に基づいて、前記第1の液の塗布量を変更する第1の液の塗布量変更制御、前記第2の液の塗布量を変更する第2の液の塗布量変更制御、前記移動手段による前記被記録媒体の相対移動速度制御、及び前記被記録媒体の温度可変制御のうち少なくとも何れか1つの制御を実行することを特徴としている。
即ち、第1の液及び第2の液の浸透速度を予め記録手段に記録しておくと、第1の液及び第2の液の浸透速度を計測せずに済む。
また、請求項3に示すように、請求項1に記載された発明は、前記第1の液及び前記第2の液のうち少なくとも何れか一方の浸透速度を計測する計測手段を備え、前記制御手段は、前記計測手段によって計測された前記第1の液の浸透速度及び前記第2の液の浸透速度のうち少なくとも何れか一方の前記被記録媒体への浸透速度に応じて、前記第1の液の塗布量を変更する第1の液の塗布量変更制御、前記第2の液の塗布量を変更する第2の液の塗布量変更制御、前記移動手段による前記被記録媒体の相対移動速度制御、及び前記被記録媒体の温度可変制御のうち少なくとも何れか1つの制御を実行することを特徴としている。
即ち、第1の液及び第2の液の浸透速度を計測するように構成すると、リアルタイムで第1の液及び第2の液の浸透速度を計測でき、第1の液及び第2の液の対応範囲に制約がない。
浸透速度計測手段は、第1の塗布手段及び第2の塗布手段よりも前段側に備えられることが好ましい。
また、請求項4に示すように、請求項3に記載された発明は、前記計測手段は、前記被記録媒体表面の液滴の光沢反射量を測定する光沢反射量測定手段を備えたことを特徴としている。
光沢反射量測定手段には、被記録媒体上の液滴に光を照射させる光源と、該光源から照射された光のうち該液滴によって反射される光を検出する検出手段を備える態様がある。
また、請求項5に示すように、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載された発明は、前記制御手段は、前記第1の液或いは前記第2の液のうち被記録媒体に先に塗布された液の浸透速度に応じて、前記第1の液及びは前記第2の液のうち少なくとも何れか一方の液の塗布量を変更する塗布量変更制御を実行することを特徴としている。
即ち、第1の液或いは第2の液のうち先に塗布された液の浸透速度に応じて、前記第1の液及びは前記第2の液のうち少なくとも何れか一方の液の塗布量を変更する塗布量変更制御が実行されるので、後に塗布される液の塗布時に被記録媒体上の先に塗布される液の残量が第1の液及び第2の液の混合可能な量以上残っているので、確実に第1の液及び第2の液の混合反応が行われる。
第1の液を先に塗布してもよいし、第2の液を先に塗布してもよい。
また、請求項6に示すように、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載された発明は、前記第1の液は前記被記録媒体上に形成される画像のデータによらずに塗布される透明性を有する処理液を含み、前記第2の液は前記画像のデータに応じて前記被記録媒体上に塗布されるインクを含み、前記被記憶媒体への前記第1の処理液の浸透速度、或いは、前記第1の処理液の塗布量のうち少なくとも何れか一方に応じて前記画像データの処理を行う画像処理手段を備えたことを特徴としている。
即ち、画像データによらず被記録媒体上に塗布される処理液と画像データに応じて被記録媒体上に塗布されるインクとを確実に混合反応させることができ、インクに含まれる色材の不溶性及び定着性を向上させることができる。
また、処理液の塗布量の増減に合わせてインクの塗布量を増減させるように制御されるので、例えば、処理液の塗布量が変更されると第2の液との反応させて形成される画像の濃度が変わってしまい階調不良が起こることを防止し、浸透速度に適した処理液の塗布量及びインクの塗布量になるように画像処理が行われる。
不溶性には、例えば、インク色材がインク溶媒に溶解せずに該インク溶媒が蒸発した後に該インク色材が析出される性質や、処理液とインクが反応すると色材(溶質)を溶媒に入れても溶けないで沈殿する性質が含まれている。
一方、定着性には、インク色材(インク溶質)が被記録媒体表面或いは内部のうち何れか一方に保持された状態を含んでいる。
なお、ここでいう画像によらず液を塗布する態様には、被記録媒体の画像形成可能領域のうち所望の画像が形成される領域に液を塗布する態様を含んでいてもよい。
また、請求項7に示すように、請求項1乃至6のうち何れか1項に記載された発明は、前記被記録媒体に画像が形成された後に前記被記録媒体上に残留する前記第1の液及び前記第2の液のうち少なくとも何れか一方を回収する液回収手段を備えたことを特徴としている。
即ち、被記録媒体上に画像が形成された後に該被記録媒体を乾燥させる乾燥手段の負荷を低減させることができる。被記録媒体に非浸透性媒体が適用される場合に特に有効である。
乾燥手段は、被記録媒体上の液を吸収するスポンジなどの吸収部材を備えた液吸収手段でもよいし、被記録媒体を液塗布手段及び液吐出手段と相対移動させる際に該被記録媒体を保持する保持手段(例えば、搬送ベルトや搬送ローラなどの搬送手段)を過熱する加熱手段を備えてもよい。
また、請求項8に示すように、請求項7に記載された発明は、前記被記録媒体上に画像が形成された後の前記第1の液或いは前記第2の液のうち少なくとも何れか一方の残量を予測する液残量予測手段を備え、前記液回収手段は、前記液残量予測手段の予測結果に基づいて前記被記録媒体上に残っている前記第1の液及び前記第2の液のうち少なくとも何れか一方を回収することを特徴としている。
液残量を予測する態様は、液種ごとに被記録媒体の種類、温度、被記録媒体へ塗布(着弾)してからの時間経過などをパラメータとして予めデータベース化したものを記録しておき、該データベースから該当するデータを読み出してもよいし、前記パラメータを用いた演算を実行して該予測値を算出してもよい。
また、請求項9に示すように、請求項1乃至8のうち何れか1項に記載された発明は、前記第1の塗布手段は 前記被記録媒体上に接触しながら前記第1の液を塗布する柔軟多孔質部材を含むことを特徴としている。
第1の液を被記録媒体上に塗布させる態様は、ローラを回動させながら該ローラと被記録媒体とを相対的に移動させて、該第1の液を被記録媒体の第1の液塗布領域前面に塗布させる態様でもよいし、ブレード状の部材やスポンジ状の部材などを用いて該部材を被記録媒体に面接触させながら液を塗る態様でもよい。
第1の液はローラなどによって被記録媒体に塗布されるので、吐出孔から液滴を吐出させる吐出ヘッドでは取り扱うことが難しい高粘度の液を取り扱うことができる。
また、請求項10に示すように、請求項1乃至9のうち何れか1項に記載された発明は、前記第1の液は前記第2の液より相対的に粘度が高いことを特徴としている。
即ち、第1の液を高粘度化すると第1の液の浸透速度を遅くすることができるので、該第1の液が被記録媒体に完全浸透するまでに第2の液を被記録媒体上に着弾させることが可能になる。
第1の液を高粘度化する態様には、温度可変手段等を用いて被記録媒体の温度を下げる態様がある。
また、請求項11に示すように、請求項1乃至10のうち何れか1項に記載された発明は、前記第2の塗布手段は、前記被記録媒体へ第2の液を吐出させる吐出ヘッドを含むことを特徴としている。
吐出ヘッドには、被吐出媒体の全幅に対応する長さにわたって液滴を吐出させる吐出孔が並べられたフルライン型吐出ヘッドや、被吐出媒体の全幅に対応する長さよりも短い長さにわたって液滴を吐出させる吐出孔が並べられた短尺ヘッドを被吐出媒体の幅方向に走査させながら被吐出媒体上に液滴を吐出させるシリアル型吐出ヘッド(シャトルスキャン型吐出ヘッド)などがある。吐出ヘッドにはインクジェット記録装置において被記録媒体へインクを吐出させる印字ヘッドを含んでいてもよい。なお、ここでいう被吐出媒体とは、被記録媒体を含んだ吐出ヘッドから吐出された液を受ける受液媒体をいう。
また、フルライン型の吐出ヘッドには、被吐出媒体の全幅に対応する長さに満たない短尺の吐出孔列を有する短尺ヘッドを千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、被吐出媒体の全幅に対応する長さとしてもよい。
また、請求項12に示すように、請求項1乃至11のうち何れか1項に記載された発明は、前記第1の液はカチオン性ポリマーを有する透明液を含み、前記第2の液はアニオン性ポリマーを有する色インクを含むことを特徴としている。
即ち、第1の液として正に荷電した界面活性イオンを含む重合体であるカチオン性ポリマーを有する透明液を被記録媒体上に塗布し、第2の液として負に電荷した界面活性イオンを含む重合体であるアニオン性ポリマーを含んだ色インクを吐出させると、第1の液及び第2の液との反応によりインクの不溶性及びインクの定着性を実現させることができる。
また、前記目的を達成するために請求項13に係る発明は、少なくとも2種類の液を混合させて被記録媒体上に画像を形成させるインクジェット記録装置の液塗布方法であって、前記被記録媒体上に第1の塗布手段を用いて第1の液を塗布する第1の塗布工程と、第2の塗布手段を用いて第2の液を前記被記録媒体に形成される画像に応じて塗布する第2の塗布工程と、前記第1の塗布手段及び前記第2の塗布手段と前記被記録媒体とを相対的に移動させる移動工程と、前記第1の液及び前記第2の液のうち少なくとも何れか一方の浸透速度に応じて、前記第1の液の塗布量を変更する第1の液の塗布量変更制御、前記第2の液の塗布量を変更する第2の液の塗布量変更制御、前記移動工程における前記被記録媒体の相対移動速度制御、及び前記被記録媒体の温度可変制御のうち少なくとも何れか1つの制御を実行する制御工程と、を含むことを特徴としている。
本発明によれば、被記録媒体上に塗布される第1の液及び被記録媒体上に形成される画像に応じて塗布される第2の液のうち少なくとも何れか一方の浸透速度に応じて、第1の液の塗布量変更制御、第2の液の塗布量変更制御、前記被記録媒体の相対移動速度制御、及び前記被記録媒体の温度可変制御のうち少なくとも何れか1つの制御が実行されるので、第1の液と第2の液とが確実に混合され、第1の液及び第2の液の混合反応が確実に行われる。
第1の液に透明性を有する処理液を適用し、第2の液に色材を含んだ色インクを適用すると、処理液とインクとが確実に混合されると共に該処理液と該インクの混合反応が確実に行われ、色材の不溶性及び定着性を確保することができる。
以下、図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、2種の液の混合により、色材の不溶性機能(溶媒に溶質である色材が溶け込まない性質)及び定着性機能を有するインクによって画像形成を行うように構成されている。
インクジェット記録装置10は、画像によらず塗布される透明性を有する処理液(第1の液、A液)を塗布する柔軟多孔質部材を含んだローラ(図10に符号11Aで図示)を有する処理液塗布部11(処理液塗布部11の詳細は後述)、画像情報に基づき2液目(B液)の色インクを吐出させるインクの色ごとに設けられた複数の印字ヘッド12K,12M,12C,12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、処理液塗布部11によって記録紙16の表面に塗布される処理液の浸透速度を計測する浸透速度計測部20、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印字済みの記録紙16(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1では、給紙部18の一例としてカット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給する給紙トレーが示されているが、給紙トレーに代えて、又はこれと併用して、ロール紙(連続用紙)のマガジンを用いてもよいし、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、給紙部18にロール紙のマガジンを適用する場合には、処理液塗布部11の前段に記録紙16のカールを除去するデカール処理部が備えられる。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク打滴制御を行うことが好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図示しない、裁断用のカッター(第1のカッター)が設けられ、該第1のカッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。なお、本例では記録紙16にカット紙を使用するので、前記第1のカッターは不要である。
本実施形態では画像が形成される被記録媒体に記録紙(カット紙)16を適用したが、本発明の適用範囲は紙類に限定されず様々な媒体(メディア)を適用可能である。被記録媒体の例を挙げると、樹脂シート、フイルム、金属、布、木などがある。
給紙部18から給紙された記録紙16は、浸透速度計測部20を経て吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示,図7中符号88として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の反時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の右から左へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に記録紙16の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される記録紙搬送路上において処理液塗布部11の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、処理液塗布前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、処理液の粘度をコントロールすると共にインクが着弾後乾き易くなる。また、インクジェット記録装置10には、記録紙16(記録紙16に処理液塗布部11によって塗布された処理液)を冷却する冷却器43が備えられている。冷却器43は、ベルト33の処理液塗布部11に対応する部分に設けられ、冷却水や冷媒が充填された管状部材を適用してもよいし、記録紙16に冷風を吹き付ける冷却ファンを適用してもよい。即ち、冷却器43によって記録紙16の温度を下げることができればよく、冷却器43には上述した態様以外にも様々な態様を適用することができる。更に、図1には図示しないが記録紙16の温度を検出する温度検出器が設けられている。この温度検出部によって検出された温度情報に基づいて、加熱ファン40或いは冷却器43の制御が行われる。なお、加熱ファン40及び冷却器43の制御の詳細は後述する。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを記録紙搬送方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。詳細な構造例は後述するが(図3乃至図5)、各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yは、図2に示したように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の送り方向(以下、記録紙搬送方向という。)に沿って上流側から黒(K)、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K,12M,12C,12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色ごとに設けられてなる印字部12によれば、副走査方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、本例では、KMCYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
本実施形態では記録紙16の全幅をカバーするフルライン型の印字ヘッドを例示したが、本発明は短尺の印字ヘッドを記録紙16の幅方向に走査させながら主走査方向に沿って1ラインを形成させるシャトルスキャン型印字ヘッドにも適用可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは不図示の管路を介して各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
浸透速度計測部20は、処理液塗布部11の記録紙搬送路上流側に設けられた検出領域41の記録紙16の印字面側に設けられ、記録紙16上に浸透速度を検出するための液滴を供給する液供給部20A、記録紙16の液滴に光源から光を照射させて液滴面の反射光を検出する検出部20Bから構成される。検出領域41では記録紙16と検出部20Bとの平面性及びクリアランスを確保するために、ローラ41Aによってローラ・ニップ搬送される。もちろん、検出領域41における記録紙16の搬送には、記録紙16を搬送ベルト上に固定させながら搬送する態様を適用してもよい。浸透速度の検出に用いた記録紙16はそのまま排出して廃棄してもよいし、画像を形成させてもよい。なお、浸透速度計測部20における浸透速度の計測の詳細は後述する。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列と、から成る色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K,12M,12C,12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各印字ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
印字検出部24の後段には、記録紙16上に残留した不要液を回収する不要液回収部42が設けられている。不要液回収部42の詳細は後述するが、多孔質部材や不織布部材から構成されるローラやスポンジを記録紙16の表面に押圧させて、記録紙16上の不要液を吸い取り回収する。
不要液回収部42の後段には、後乾燥部44が設けられている。後乾燥部44は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部44の後段には、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する不図示の加圧ローラで加圧し、画像面に凹凸形状を転写する加熱・加圧部(不図示)が設けられている。
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り替える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、不図示のカッター(第2のカッター)によってテスト印字の部分を切り離す。第2のカッターは、排紙部26の直前に設けられ、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。第2のカッターの構造は前述した第1のカッターと同様であり、固定刃と丸刃とから構成される。
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
次に、印字ヘッドの構造について説明する。インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12K,12M,12C,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
図3(a) は印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b) はその一部の拡大図である。また、図3(c) は印字ヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図4はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図3(a) ,(b) 中の4−4線に沿う断面図)である。記録紙面上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、印字ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例の印字ヘッド50は、図3(a) 〜(c) 及び図4に示したように、インク滴が吐出されるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等から成る複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリックス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上のノズルピッチの高密度化を達成している。
即ち、本実施形態における印字ヘッド50は、図3(a) ,(b) に示すように、インクを吐出する複数のノズル51が記録紙搬送方向と略直交する方向に記録紙16の全幅に対応する長さにわたって配列された1列以上のノズル列を有するフルラインヘッドである。
また、図3(c) に示すように、短尺の2次元に配列されたヘッド50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、印字媒体の全幅に対応する長さとしてもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。
圧力室52の天面を構成している振動板56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
かかる構造を有する多数のインク室ユニット53を図5に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなる。
即ち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。以下、説明の便宜上、ヘッドの長手方向(主走査方向)に沿って各ノズル51が一定の間隔(ピッチP)で直線状に配列されているものとして説明する。
なお、用紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等の駆動制御が行われ、記録紙16の幅方向(記録紙搬送方向と直交する方向)に1列のドットによるライン、又は、複数列のドットから成るラインを印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図5に示すようなマトリクスに配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1列のドットによるライン、又は、複数列のドットから成るラインの印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。主走査方向に1列のノズルが配置されていてもよい。また、本実施形態では圧力室内のインクに吐出力を付与するアクチュエータ58にピエゾ素子(圧電素子)を用いて、アクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクに吐出を付与する吐出力付与手段はピエゾ素子には限定されず、他の圧電素子を適用してもよい。
また、本例ではピエゾ素子に代表されるアクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方法が採用されているが、本発明の適用範囲はインクを吐出させる方法は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方法を適用できる。
図6はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。
インク供給タンク60はインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた打滴制御を行うことが好ましい。なお、図6のインク供給タンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図6に示したように、インク供給タンク60と印字ヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図6には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面の清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、アクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(アクチュエータ58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)アクチュエータ58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、アクチュエータ58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合には印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(
気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構(ワイパー)により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル板表面)に摺動可能である。ノズル板にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル板に摺動させることでノズル板表面を拭き取り、ノズル板表面を清浄する。なお、該ブレード機構によりインク吐出面の汚れを清掃した際に、該ブレードによってノズル51内に異物が混入することを防止するために予備吐出が行われる。
また、図6には示さないが、インクジェット記録装置10には、図1に示す処理液塗布部11に処理液を供給する処理液供給系が設けられている。処理液部は図6に示すインク供給系と同様に、処理液を貯蔵する処理液供給部(図10(a) に符号11Aで図示)、処理液の流路、該流路に設けられるフィルタ、回収された不要な処理液を蓄える回収タンク等から構成されている。
図7はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、温度制御部78、温度検出部79、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段(画像メモリ)であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。
また、メモリ74はシステムパラメータやデータテーブル、データベースなどが記録させるシステムメモリを含んでいてもよい。メモリ74は、半導体素子から成るメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。なお、図7に示すメモリ74は複数のメモリから構成されていてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、温度制御部78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。温度制御部78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって冷却器43や後乾燥部44等のヒータ89を駆動する。
温度検出部79は、記録紙16の温度や印字ヘッド50内の温度を検出する温度センサ、該温度センサから得られる検出信号に所定の信号処理(ノイズ除去、増幅等)を施す信号処理部等から構成される。温度検出部79から得られた温度情報はシステムコントローラ72に送られ、各部の温度が所定の温度になるようにシステムコントローラ72から温度制御部78へ制御信号が送られる。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の打滴量や吐出タイミングの制御(打滴制御)が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現され
る。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図7において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド12K,12M,12C,12Yのアクチュエータを駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
不図示のプログラム格納部には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。前記プログラム格納部はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。
なお、前記プログラム格納部は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
浸透速度計測部20が有する検出部20Bから送られる検出信号に基づいて、システムコントローラ72は液滴の浸透速度を判断し、この浸透速度判断情報に合わせて処理液の塗布制御及び印字ヘッド50の打滴制御を実行する。
処理液の塗布制御は、給液制御部90によってローラ(図10に符号11Aで図示)に給液する処理液の量及び給液速度を制御し、また、該ローラの回動速度及び処理液塗布時の記録紙16の移動速度を制御する。なお、該ローラを回動させるモータや記録紙16の移動手段を駆動するモータは、図7のモータ88に含まれている。なお、浸透速度に応じた処理液塗布制御及び打滴制御の詳細は後述する。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行う。
なお、図1に示した例では、印字検出部24が印字面側に設けられており、ラインセンサの近傍に配置された冷陰極管などの光源(不図示)によって印字面を照明し、その反射光をラインセンサで読み取る構成になっているが、本発明の実施に際しては他の構成でもよい。
〔液塗布制御及び打滴制御〕
次に、インクジェット記録装置10の処理液塗布制御及びインク打滴制御について詳述する。
上述したように、本インクジェット記録装置10は、2種類の液を混合させた液によっ
て画像形成が行われる。インクジェット記録装置10は、記録紙16上の液の浸透速度を測定する機能を有し、その測定値(判定値)に基づいて2種類の液のうち一方の液である処理液の塗布量や、もう一方の液であるインクの打滴量が制御される。また、極端に浸透の遅い媒体に対して残留水分の吸い取りを行い、乾燥負荷を低減させるように制御が行われる。
図8は、図1に示した浸透速度計測部20の詳細を示すブロック図である。
図1に示した検出領域41には、その先頭に浸透速度を判定するための液滴を供給する液供給部20Aによって記録紙16に数滴の液が供給される。処理液塗布部11によって記録紙16上に塗布される処理液の浸透速度を判定する場合は、該処理液を液供給部20Aから記録紙16に対して供給する。もちろん、印字ヘッド50から吐出されるべきインクの浸透速度を判定してもよく、その場合は、該インクを液供給部20Aから記録紙16に対して供給する。
液供給部20Aには、インクジェットヘッドを適用してもよいし、微小シリンジを適用してもよい。記録紙16上に数滴の液滴を供給できればよい。
液供給部20Aの下流側には、光源及び受光部から成るセンサ20Cを数箇所に設け、液滴面の反射光量を検知する。液滴が記録紙16の表面上にある間には光沢反射的な信号が前記受光部によって検知され、液滴が記録紙16の表面上になくなると光沢反射的な信号が検知されなくなる。
センサ20Cの検出面側を記録紙16が移動し、センサ20Cからの検出信号が得られなくなった時点(位置)から浸透に要する時間(浸透速度)を判定する。記録紙16の移動速度を遅くするとより長い時間範囲で浸透速度判定が可能になる。
図8には、センサ20Cを数箇所に配列させる態様を例示したが、センサ20Cを1つ備え、センサ20Cから得られる検出信号を一定時間間隔で取得してもよいし、記録紙16を固定して、その記録面(液滴が供給されている面)側をセンサ20Cが走査するように構成してもよい。
例えば、センサ20Cに代わりCCDなどの撮像素子を備え、上述した液浸透判定と同じような仕組みでセンサをCCD読み取りとすることで、滲み広がりの速度を判定することができる。
図9にはセンサ20Cから得られた検出信号の一例を示す。図9は、未浸透状態の液滴を検出したときの検出信号の時間変化(信号波形)100を示している。未浸透状態の液滴では、信号波形100のように、少なくとも1箇所のピーク(変曲点)102を持った信号が検出される。一方、浸透が進んだ液滴の検出信号では、信号波形100に示したピーク102が小さくなったピーク102Aを持った信号波形104が検出され、更に、浸透が完了して記録紙16上に液滴が存在しないときには、信号波形100に示したピーク102を持たない信号波形106が検出される。
図10(a) 、(b) には、図1に示した、ローラ11Aを含んだ処理液塗布部11を示している。処理液塗布部11によって記録紙16に塗布される処理液は、印字ヘッド50から吐出される色材(染料)を含んだ色インクと混合させることで反応し、該色材の不溶性及び定着性が確保される。
該処理液は画像情報によらず記録紙16の画像形成面(記録面)一面に塗布される透明
性の液である。
図10(a) に示す態様では、該略記録紙幅の面幅を有するローラ11Aを記録紙16の表面に押圧し、記録紙16の幅方向全域に処理液を塗布すると共に、記録紙16を記録紙搬送方向に搬送させることで、記録紙16の全域に処理液を塗布させる。なお、処理液供給部11Bから、ローラ11Aに対して処理液を供給する。
記録紙16を記録紙搬送方向に移動させる代わりに、ローラ11Aを記録紙搬送方向に沿って移動させるローラ移動手段を備え、ローラ11Aを記録紙搬送方向に移動させてもよい。
また、ローラ11Aに処理液を給液する処理液給液部11Bが記録紙16の反対側面に設けられている。処理液給液部11Bは記録紙16に処理液を塗布する領域以外であれば、何れの位置に設けられてもよい。
図10(b) には、ローラ11Aに処理液を給液する手段として、ローラ11Aの回動中心に供給管11Cを備えた態様を示している。
図10(a) 、(b) に示したローラにはスポンジのような柔軟多孔質部材や不織布など、記録紙16表面の凹凸を吸収して記録紙16の凹凸によらず処理液を記録紙16の表面上に略均一に塗布できる柔軟性と、所定の液量をしみ込ませることができる性質を備えた部材であればよい。
ここで、ローラ11Aによって記録紙16に塗布される処理液の量は、図1に示した浸透速度計測部20によって計測された処理液の浸透速度に応じて変えられる。即ち、処理液が早く浸透する場合には処理液の塗布量が多くなるように制御し、一方、処理液の浸透が遅い場合には処理液の塗布量が少なくなるように制御することで、印字ヘッド50からインクが打滴されるまで所定量の処理液が記録紙16の表面に残すことが可能になる。なお、処理液の浸透速度は記録紙16の種類(メディア種)によって変わる。
記録紙16上に塗布される液の量を可変させるには、例えば、ローラ11Aの回動速度を制御してもよいし、ローラ11Aが記録紙16を押圧する圧力を制御してもよい。
また、処理液を記録紙16に塗布するローラ11Aに多孔質部材等を用いることで、図1等に示した印字ヘッド50では打滴することが難しい高粘度液を取り扱うことができ、高粘度液を記録紙16に塗布させることが可能になる。処理液をインクよりも高粘度化することにより、処理液の記録紙16への浸透速度を遅くすることができ、処理液が記録紙16に完全浸透(記録紙16の表面に処理液が残っていない状態に)するまでに、記録紙16にインクを着弾させることができるようになる(記録紙16に処理液が着弾してからインクが着弾するまでの時間を長くすることができる)。
処理液塗布部11によって処理液が塗布された記録紙16が印字ヘッド50の印字領域に搬送されると、印字ヘッド50から画像情報に応じて色材を含んだ色インクが打滴される。記録紙16上に色インクが着弾すると、該色インクは先に塗布されている処理液と反応し、インクの不溶性及び定着性が実現される。
また、浸透速度計測部20から得られる浸透速度判定情報に基づいて、該浸透速度に適した打滴量になるように、印字ヘッド50から打滴される液量が変えられると共に、図7に示したプリント制御部80では該浸透速度に合わせて画像データを再構成するように画像データの処理が行われる。
上述したインク色材の不溶性及び定着性を実現する一例を挙げると、処理液には少なくともカチオン性ポリマーを含有する透明液を適用し、色インクには少なくともアニオン性ポリマーを含有するインクを適用する態様がある。もちろん、これ以外の液種の組み合わ
せによってもインク色材の不溶性及び定着性を実現可能である。
本インクジェット記録装置10では、浸透速度計測部20によって処理液の浸透速度を計測し、その結果に基づいて、処理液の塗布量を制御する処理液塗布制御、インクの打滴量を制御する打滴制御、記録紙16の温度を制御する温度制御、記録紙16の搬送速度を制御する搬送制御のうち少なくとも何れか1つの制御が行われる。
即ち、浸透速度計測部20によって検出された処理液の浸透速度(浸透速度判定情報)に合わせて処理液の塗布量及びインクの打滴量が最適化される。また、記録紙16の温度を制御することで、記録紙16上に塗布された(或いは着弾した)液の粘度を変えることができる。例えば、記録紙16の温度を上げると記録紙16上にある液の粘度が低くなり(言い換えると、やわらかくなり)、該液の浸透速度が速くなる。一方、記録紙16の温度を低くすると、記録紙16上の液の粘度が高くなり、該液の浸透速度が遅くなる。
なお、記録紙16の温度を制御するには図1に示す加熱ファン40を用いて記録紙16に熱風を吹き付けてもよいし、ベルト33にヒータや冷却パイプ(図1に示す冷却器43等)などの温調手段を備えてもよい。
また、吸着ベルト搬送部22の速度を制御して処理液塗布時からインク打滴時までに時間を制御してもよい。
このように、記録紙16の温度を可変させることで、記録紙16上にある処理液の浸透速度を制御することが可能である。
また、記録紙16の搬送速度を制御すると、処理液が塗布された記録紙16が印字ヘッド50の印字領域に達するまでの時間を制御することができる。
即ち、印字ヘッド50から打滴されたインクが記録紙16上に着弾するまでに、先に記録紙16上に塗布された処理液の浸透が完了せずに、所定量の処理液が記録紙16上に残される。また、処理液の塗布量を変えることによるインク濃度の低下を防ぎ、所定の濃度のドットを形成するために、印字ヘッド50から打滴されるインクの打滴量を増やす必要がある。
ここで、記録紙16には、図11(a) に示すように、記録紙16の内部16Aに色材が浸透して定着してドット120を形成する浸透紙及び、図11(b) に示す、主として記録紙16の表面16Bに色材が定着してドット120を形成する非浸透紙がある。また、図11(b) の符号122に示すように、非浸透紙でもインク(色材)の一部は内部に浸透する。なお、図11(a) 、(b) は記録紙16の断面を示している。
図1に示した処理液塗布部11によって記録紙16の表面16Bに塗布される処理液は、印字ヘッド50から吐出されるインクが記録紙16上に着弾するまで、完全に浸透せず記録紙16の表面16Bに少なくともその一部が残っている必要がある。
しかしながら、浸透速度の速い媒体では、図12(a) に示すように、記録紙16の内部16Aに処理液が完全に浸透してしまうことがある。なお、図12(a) に示した符号140は記録紙16の内部16Aに浸透した処理液を示している。
したがって、浸透速度の速いメディアでは、処理液の塗布量を多くするか、或いは液を増粘させて液の浸透を遅らせるか、記録紙16の搬送速度を早くして浸透が完了する前に印字ヘッド50の印字領域に処理液が塗布された記録紙16を搬送させる必要がある。
図12(b) に示す非浸透紙では、処理液の一部が記録紙16の内部16Aに浸透するが、塗布された処理液のほとんどの量は記録紙16の表面16Bに残留する。非浸透紙を用いる場合にも浸透速度を考慮して処理液の塗布量を変える態様が好ましい。なお、図12(b) に示した符号140は記録紙16の内部に浸透した処理液を示し、符号142は記録紙16の表面16Bに残留している処理液を示している。なお、図12に図示した、浸透した処理液の厚さ(深さ)及び表面に残った処理液の厚みがそれぞれ浸透した処理液及び表面に残った処理液の量に相当する。
図13(a) には、浸透紙を用いる場合に、処理液の塗布量を多くして記録紙16の表面16Bに所定量の処理液を残す態様を示している。符号140’は記録紙16の内部16Aに浸透した処理液を示し、符号142’は記録紙16の表面16Bに残っている処理液を示している。なお、図13中図12と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図13(b) には、浸透紙を用いる場合に、記録紙16の温度を下げて記録紙16上の処理液を増粘させ、該処理液の浸透速度を遅くする態様を示している。塗布される処理液の量を増やすことなく、印字ヘッド50から打滴されたインクが記録紙16の表面16Bに着弾するまで、記録紙16の表面16Bに所定の量(印字ヘッド50から打滴されるインクと反応してインク色材の不溶性及び定着性を確保するために必要最小限の量)の処理液を残すことができる。
図13(c) には、非浸透紙を用いる場合に、記録紙16の表面16Bに所定の量の処理液を塗布させた態様を示している。非浸透紙でも処理液の一部が記録紙16の内部16Aに浸透するので、浸透速度に応じて処理液の塗布量を変える態様が好ましい。符号140’は記録紙16の内部16Aに浸透した処理液を示し、符号142’は記録紙16の表面16Bに残った処理液を示している。
記録紙表面の処理液の残存量が変わると、2液(処理液及びインク)間の反応時間が変わり、インク定着時の液の広がり(ドット径)が変わる。その為、記録紙16に対する処理液の浸透速度及び処理液の塗布量に応じて好ましい画像を形成させるための画像処理が行われる。その画像処理により、印字ヘッド50の打滴を制御する。
即ち、おおまかな傾向として、(1) 処理液残存量が多い→反応時間が短い→定着したドット径が小、(2) 処理液残存量が少ない→反応時間が長い→定着したドット径が大、という関係があり、上記傾向を考慮して、所定の濃度の画像となるように画像データを処理してインク打滴データが演算される。
記録紙16に画像が形成された後に、記録紙16の表面16Bに不要液(主としてインクと反応しなかった処理液)が残留することがある。本インクジェット記録装置10では、浸透速度計測部20から得られる浸透速度判定情報に基づいて、処理液の塗布量、インクの打滴量からインクの打滴終了時(即ち、画像形成完了時)における不要液残量を予測して、その予測値が予め設定されたしきい値を超える場合には、図1に示した、不要液回収部42を用いて、該不要液の回収を行う。
一方、予測値が設定されたしきい値を超えない場合には、不要液回収部42による不要液の回収を実行しないように制御が行われる。
なお、不要液回収部42によって回収できない液(水分)及び、記録紙16内の水分については、後段に設けられた後乾燥部44における乾燥により取り除かれる。
図14(a) 、(b) は不要液回収部42の概略構成図である。
図14(a) に示すように、不要液回収部42は多孔質部材から成るローラ180を回動させながら記録紙16の表面に押圧させて、記録紙16上にある不要液をローラ180に吸収させる。一方、不要液の回収を行わない場合には、ローラ180を記録紙16の表面に押圧させないようにローラ180を移動させる。
ローラ180の押圧/非押圧を切り換える態様には、押圧時には付勢部材によってローラ180に付勢して記録紙16に押圧させ、非押圧時には該付勢部材による付勢を解除するように構成してもよいし、ローラ180を移動させる移動手段を備えてもよい。なお、この付勢部材や移動手段は図7に示すシステムコントローラ72を含むシステム制御系によって制御される。
また、ローラ180の吸液性能を維持すると共にローラ180吸収面の清掃を行うために、ローラ180に吸収された不要液を回収し、ローラ180の表面に付着した異物を除去するローラ清掃部182が設けられている。
図14(b) には、不要液回収部42の他の態様を示す。
図14(b) に示す態様では、ローラ清掃部182は、ローラ180よりも吸液性能が高く、ローラ180に接触させてローラ180の表面に付着した異物と、ローラ180に吸収された不要液を移動させる清掃ローラ184と、清掃ローラ184の表面に押圧させて、清掃ローラ184の表面に付着した異物を除去すると共に、清掃ローラ184に吸収された液体を絞る絞りローラ186と、清掃ローラ184から回収された液をためる不要液タンク188と、を備えている。また、図14(b) の態様においても不要液の回収を行わない場合はローラ180を記録紙表面から移動させる。
ローラ180及び図14(b) に示した清掃ローラ184には柔軟多孔質材質以外にも不織布材質などを用いてもよい。また、絞りローラ186はブレードでもよい。
不要液回収部42を用いて不要液を回収することで、不要液回収部42の後段に設けられた後乾燥部44が必要以上の乾燥を行わずに済み、後乾燥部44にかかる負荷を低減させることができる。
本実施形態では図1及び図8に示した浸透速度計測部20により処理液の浸透速度を実測して浸透速度判定情報を得る態様を例示したが、予め、複数種の媒体に対する浸透速度判定情報を処理液種ごとにデータベース化して記録しておき、使用される媒体種及び処理液種から浸透速度判定情報を照合して、該データベースから浸透速度判定情報を取得するように構成してもよい。該データベースに記録されていない媒体及び処理液を用いる場合には浸透速度を実測して浸透速度判定情報を得るように構成すればよい。
なお、新たに浸透速度を実測した場合には当該媒体及び処理液の浸透速度判定情報を該データベースに登録できる態様が好ましい。
該データベースを記録する記録手段には、図7に示すメモリ74やシステムコントローラ72に内蔵されているメモリを用いてもよいし、専用のメモリを備えてもよい。
更に、該データベースを着脱可能な記録媒体に記録しておき、他の装置にも本インクジェット記録装置10において更新された該データベースを利用できるように構成する態様が好ましい。着脱可能な記録媒体に代わり、インクジェット記録装置10をネットワーク接続可能に構成しネットワーク上から最新のデータベースをダウンロードするように構成してもよい。
図15には、本インクジェット記録装置10の処理液塗布制御の他の態様におけるブロック図を示す。
図15に示すように、図1に示す浸透速度計測部20から得られる振動速度情報に基づいて、処理液浸透量検出部200において処理液浸透速度に代わり処理液浸透量を検出(算出)してもよい。また、インク浸透量検出部202において処理液とインクとの浸透特性の違いからインク浸透量を検出するように構成してもよい。なお、インク浸透量と処理液浸透量との関係を予めテーブル化して図7に示すメモリ74等に記憶しておくとよい。
この処理液浸透量情報及びインク浸透量情報に基づいて、システムコントローラ72では、処理液の塗布量を制御する処理液量制御部210、インクの打滴量を制御するインク量制御部212、図1に示すベルト吸着搬送部22を制御する移動速度制御部214、図7に示す温度制御部78に制御信号を送出する。なお、図15に示す処理液浸透量検出部200、インク浸透量検出部202、移動速度制御部214は、システムコントローラ72内の機能ブロックとしてもよい。また、処理液量制御部210、インク量制御部212は、図7に示すプリント制御部80内の機能ブロックとしてもよい。
次に、図16を用いて、上述した処理液塗布制御及びインク打滴制御の流れを説明する。図1に示す浸透速度計測部20から振動速度情報が得られると(ステップS10)、処理液浸透速度A(または、処理液浸透量)が判定され(ステップS12)、処理液浸透速度A、処理液塗布量B、図1に示すベルト吸着搬送部22の搬送速度C、記録紙16の温度Dの関係が記録されたテーブルにより、各パラメータが読み出され(図16のステップS14)、処理液塗布量Bが決められるとともに(ステップS16)、搬送速度Cが決められ(ステップS18)、記録紙16の温度Dが決められる(ステップS20)。
一方、画像情報 (画像データ)を取得すると(ステップS30)、この画像情報とステップS16,18,20で決められた各情報からインク打滴量Eが決められる(ステップS32)。
また、ステップS32で決められたインク打滴量情報Eと、ステップS16,18,20で決められた各情報から、不要液残量F(反応せずに記録紙16の表面に残留する処理液及びインク溶媒の総量)が予測され(ステップS40)、不要液残量Fが所定のしきい値を超えると、図14に示す不要液回収部42を稼動させるように制御が行われる。
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10では、画像情報によらずに記録紙16上に塗布される処理液の浸透速度を浸透速度計測部20によって計測し、浸透速度計測部20から得られる浸透速度判定情報に基づいて、インクが打滴されるまで所定量の処理液が記録紙16の表面に残っているように、処理液の塗布量、記録紙16の温度、記録紙16の搬送速度のうち少なくとも1つの制御が行われるので、記録紙16の種類に適した量の処理液及びインク滴の付与が可能になり、媒体種によらず印字品質が安定する。なお、処理液の塗布量を制御する場合にはインクの打滴量を変えるように画像処理が行われる。
浸透速度の計測は検出領域41に備えられた複数のセンサを用いて液の光沢反射信号を検出して行われるので、浸透速度判定情報を用いて浸透が早い媒体と浸透が遅い媒体との適切な液処理を施すことが可能になる。
また、画像形成後の記録紙16の表面に残留する不要液残量を予測して、予め設定されたしきい値よりも不要液残量が大きい場合には、不要液回収部42を働かせて記録紙16の表面にある不要液の回収を行うので、画像形成後に記録紙16の乾燥を行う後乾燥部44の負荷を低減させることができる。この不要液回収部42は、非浸透紙を用いる場合には特に有効である。
染料の不溶性及び定着性を実現するために液機能分離を処理液(1液目)は高粘度とすると、処理液のカチオン基を低粘度液よりも多くすることができ、機能実現がより確実になる。また、記録紙16に浸透紙を用いる場合には、処理液が記録紙16に浸透する前にインク滴を打滴することができる。
本実施形態では液滴の吐出ヘッドとしてインクジェット記録装置に用いられる印字ヘッドを例示したが、本発明は、ウエハやガラス基板、エポキシなどの基板類等の被吐出媒体上に液類(水、薬液、レジスト、処理液)を吐出させて画像、回路配線、加工パターンなどの立体形状を形成させる液吐出装置に用いられる吐出ヘッドにも適用可能である。
本発明の実施形態に係る印字ヘッドを搭載したインクジェット記録装置の基本構成図 図1に示したインクジェット記録装置の印字周辺の要部平面図 印字ヘッドの構造例を示す平面透視図 図3中の4−4線に沿う断面図 図3に示した印字ヘッドのノズル配列を示す拡大図 本実施形態に係る印字ヘッドを搭載したインクジェット記録装置におけるインク供給系の構成を示した概念図 本実施形態に係る印字ヘッドを搭載したインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図 浸透速度計測部の構成を示す概略構成図 浸透速度計測部に設けられたセンサから得られる検出信号の一例を示す図 液塗布部の構成を示す概略構成図 浸透紙及び非浸透紙に形成されるドットを示す図 浸透紙及び非浸透紙を説明する図 本発明に係る打滴制御によって塗布された処理液の浸透状況を示す図 不要液回収部の構成を示す概略構成図 処理液塗布制御部の一態様を示すブロック図 処理液塗布制御及びインク打滴制御の流れを示すフローチャート
符号の説明
10…インクジェット記録装置、11…処理液塗布部、11A…ローラ、11B…給液部、16…記録紙、20…浸透速度計測部、20A…液供給部、20B…検出部、20C…センサ、42…不要液回収部、50…印字ヘッド、72…システムコントローラ、74…メモリ

Claims (13)

  1. 少なくとも2種類の液を混合させて被記録媒体上に画像を形成させるインクジェット記録装置であって、
    前記被記録媒体上に第1の液を塗布する第1の塗布手段と、
    第2の液を前記被記録媒体に形成される画像に応じて塗布する第2の塗布手段と、
    前記第1の塗布手段及び前記第2の塗布手段と前記被記録媒体とを相対的に移動させる移動手段と、
    前記第1の液及び前記第2の液のうち少なくとも何れか一方の浸透速度に応じて、前記第1の液の塗布量を変更する第1の液の塗布量変更制御、前記第2の液の塗布量を変更する第2の液の塗布量変更制御、前記移動手段による前記被記録媒体の相対移動速度制御、及び前記被記録媒体の温度可変制御のうち少なくとも何れか1つの制御を実行する制御手段と、
    を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記第1の液及び前記第2の液のうち少なくとも何れか一方の浸透速度を予め記憶する記憶手段を備え、
    前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された前記第1の液の浸透速度情報及び前記第2の液の浸透速度情報のうち少なくとも何れか一方の前記被記録媒体への浸透速度情報に基づいて、前記第1の液の塗布量を変更する第1の液の塗布量変更制御、前記第2の液の塗布量を変更する第2の液の塗布量変更制御、前記移動手段による前記被記録媒体の相対移動速度制御、及び前記被記録媒体の温度可変制御のうち少なくとも何れか1つの制御を実行することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記第1の液及び前記第2の液のうち少なくとも何れか一方の浸透速度を計測する計測手段を備え、
    前記制御手段は、前記計測手段によって計測された前記第1の液の浸透速度及び前記第2の液の浸透速度のうち少なくとも何れか一方の前記被記録媒体への浸透速度に応じて、前記第1の液の塗布量を変更する第1の液の塗布量変更制御、前記第2の液の塗布量を変更する第2の液の塗布量変更制御、前記移動手段による前記被記録媒体の相対移動速度制御、及び前記被記録媒体の温度可変制御のうち少なくとも何れか1つの制御を実行することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記計測手段は、前記被記録媒体表面の液滴の光沢反射量を測定する光沢反射量測定手段を備えたことを特徴とする請求項3記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記制御手段は、前記第1の液或いは前記第2の液のうち被記録媒体に先に塗布された液の浸透速度に応じて、前記第1の液及び前記第2の液のうち少なくとも何れか一方の液の塗布量を変更する塗布量変更制御を実行することを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記第1の液は前記被記録媒体上に形成される画像のデータによらずに塗布される透明性を有する処理液を含み、前記第2の液は前記画像のデータに応じて前記被記録媒体上に塗布されるインクを含み、前記被記憶媒体への前記第1の処理液の浸透速度、或いは、前記第1の処理液の塗布量のうち少なくとも何れか一方に応じて前記画像データの処理を行う画像処理手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記被記録媒体に画像が形成された後に前記被記録媒体上に残留する前記第1の液及び前記第2の液のうち少なくとも何れか一方を回収する液回収手段を備えたことを特徴とす
    る請求項1乃至6のうち何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
  8. 前記被記録媒体上に画像が形成された後の前記第1の液或いは前記第2の液のうち少なくとも何れか一方の残量を予測する液残量予測手段を備え、
    前記液回収手段は、前記液残量予測手段の予測結果に基づいて前記被記録媒体上に残っている前記第1の液及び前記第2の液のうち少なくとも何れか一方を回収することを特徴とする請求項7記載のインクジェット記録装置。
  9. 前記第1の塗布手段は 前記被記録媒体上に接触しながら前記第1の液を塗布する柔軟多孔質部材を含むことを特徴とする請求項1乃至8のうち何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
  10. 前記第1の液は前記第2の液より相対的に粘度が高いことを特徴とする請求項1乃至9のうち何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
  11. 前記第2の塗布手段は、前記被記録媒体へ第2の液を吐出させる吐出ヘッドを含むことを特徴とする請求項1乃至10のうち何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
  12. 前記第1の液はカチオン性ポリマーを有する透明液を含み、前記第2の液はアニオン性ポリマーを有する色インクを含むことを特徴とする請求項1乃至11のうち少なくとも何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
  13. 少なくとも2種類の液を混合させて被記録媒体上に画像を形成させるインクジェット記録装置の液塗布方法であって、
    前記被記録媒体上に第1の塗布手段を用いて第1の液を塗布する第1の塗布工程と、
    第2の塗布手段を用いて第2の液を前記被記録媒体に形成される画像に応じて塗布する第2の塗布工程と、
    前記第1の塗布手段及び前記第2の塗布手段と前記被記録媒体とを相対的に移動させる移動工程と、
    前記第1の液及び前記第2の液のうち少なくとも何れか一方の浸透速度に応じて、前記第1の液の塗布量を変更する第1の液の塗布量変更制御、前記第2の液の塗布量を変更する第2の液の塗布量変更制御、前記移動工程における前記被記録媒体の相対移動速度制御、及び前記被記録媒体の温度可変制御のうち少なくとも何れか1つの制御を実行する制御工程と、
    を含むことを特徴とする液塗布方法。
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