以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る自動運転車両の構成概要図である。図2は、本実施形態に係る自動運転車両の走行状態の説明図である。
図1に示すように、本実施形態に係る自動運転車両1は、運転者の運転操作なしに予め設定された走行計画に従って自動運転走行可能な車両であり、例えば目標速度パターン及び目標走行軌跡を生成し、自動運転制御中にその目標速度パターン及び目標走行軌跡に従い加減速制御及び操舵制御が実行され車両走行が行われる。目標速度パターンは、時刻に応じて目標車両位置又は目標車速を設定したパターンであり、目標位置パターンとして設定してもよい。
この目標速度パターンは、車両情報、道路情報などに基づいて設定される。車両情報としては、例えば、車両加速性能、車両減速性能、車重、許容最大加速度、許容最大減速度、許容最大ジャーク、最高速度、最大横加速度、最大ハンドル角速度、最小定常速度、最小定常加速度、最小定常ジャーク、加減速時の加減速変化回数、緊急ブレーキ性能、故障判定時間、速度制御誤差情報、位置制御誤差情報が用いられる。
道路情報は、目標速度パターンを生成するために用いられる外部環境情報であり、例えば、道路勾配、道路カーブRが用いられる。目標走行軌跡は、地図上の車両の目標走行経路及び走行レーン内における走行軌跡を設定したものである。
この自動運転車両1は、自動運転制御による走行と運転者の手動運転による走行を切り替え可能とすることが好ましい。例えば、自動車専用道路や高速道路などでは自動運転制御を実行し、それらの道路以外では自動運転制御を実行せず運転者の手動運転が行われる。自動運転制御と手動運転との切り替えは、車両に設置される運転モード切替スイッチの操作によって切り替えてもよいし、走行する道路を認識し道路の種類によって自動的に自動運転モードと手動運転モードを切り替えるなどしてもよい。
また、図2に示すように、自動運転車両1は、先行する車両Aに追従して隊列を組み、自動運転制御を実行するものに適用することが好ましい。例えば、車々間通信により他車と現在の車両位置及び車速、目標速度パターン、目標走行軌跡などを通信し、適合する他車と車群を組んで走行する。この場合、隊列走行する車両の車間を短くすることが望ましい。車間距離を短くすることにより、隊列への他車の割り込みを防止でき走行安全性を向上させることができる。また、後方走行車の走行空気抵抗を低減でき、燃費の低減が図れる。
図1に示すように、自動運転車両1は、ECU(Electronic Control Unit)10を備えている。ECU10は、自動運転車両1に搭載され、自動運転制御を行う電子制御ユニットであり、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。
このECU10は、目標速度パターンを随時生成する目標速度パターン生成手段と機能するものである。また、他車と隊列して走行する場合には、自車の目標速度パターン及び他車の目標速度パターンに基づいて隊列走行速度パターンを随時生成する隊列走行速度パターン生成手段としても機能する。さらに、生成した隊列走行速度パターンに応じて自車の走行制御を行う走行制御手段として機能する。また、ECU10は、睡眠状態、車酔い状態などの車両搭乗者の体調に応じた自動運転制御を行う運転制御手段として機能する。
自動運転車両1は、通常の車両と同様に、車輪、サスペンションなどの走行機構を備え、駆動源となるエンジン(内燃機関)30、各車輪に制動力を与えるブレーキ装置34を備えている。エンジン30の動力は、図示しない変速機、動力伝達機構などを通じて走行駆動力が駆動輪へ伝達される。また、自動運転車両1には、エンジン30の駆動力を調節するための手段としてスロットルバルブの開度を調節するスロットルアクチュエータ32が設けられている。スロットアクチュエータ32は、ECU10から出力される制御信号に従って作動する。その際、ECU10は、車両の加減速制御手段として機能する。
自動運転車両1には、ブレーキ装置34の制動力を調節するための手段として、ブレーキ装置34に供給される油圧を調節するブレーキアクチュエータ36が設けられている。ブレーキアクチュエータ36は、ECU10から出力される制御信号に従って作動する。その際、ECU10は、車両の加減速制御手段として機能する。
なお、駆動源であるエンジン30に代えてモータを用いてもよいし、エンジン30とモータを併用してもよい。
また、自動運転車両1には、車輪の回転を検出する車輪速センサ41、電波受信によって車両位置を検出するGPS(Global Positioning System)装置40が設けられている。車輪速センサ41は、車速検出手段として機能するものであり、例えば電磁ピックアップ式のものが用いられる。GPS装置40は、衛星から発信された電波を受信し、その電波情報に基づいて現在位置を検出するものであり、車両の位置検出手段として機能する。この位置検出手段としては、GPS装置40に代えてその他の装置を用いてもよい。例えば、路面に沿って一定間隔で埋設された磁気マーカを検出する磁気センサを用いてもよい。
自動運転車両1には、操舵モータ44が設けられている。操舵モータ44は、車両の操舵力伝達機構に対し操舵力を与え自動操舵を行うものであり、操舵制御機構として機能する。操舵モータ44は、例えば、ステアリングシャフトなどの操舵力伝達機構に取り付けられ、ギヤ機構などを通じて操舵力を付与する。この操舵モータ44は、ECU10から出力される制御信号に従って作動する。この操舵モータ44としては、電動パワーステアリングステアリングシステムに用いられるアシストモータを利用することが好ましい。
自動運転車両1には、路車間通信部42が設けられている。路車間通信部42は、路面に埋設されたループアンテナ91と通信を行い、交通情報などを通信するものであり、例えば電波を情報伝達媒体として通信を行う通信機が用いられる。路面内のループアンテナ91は、インフラ設備として設けられる路車間通信器90に接続されている。
自動運転車両1には、車々間通信部43が設けられている。車々間通信部43は、他車との通信を行う車々間通信手段であり、車両の現在位置、目標速度パターン、制御目標位置などの車両情報を互いに通信する。
自動運転車両1には、生体センサ45が設けられている。生体センサ45は、運転者の睡眠状態を検出するセンサであり、例えばハンドルに取り付けられる心電図検出センサが用いられる。この場合、運転者の心電図に基づいて睡眠状態であるか否かが検出される。
また、生体センサ45として、運転者を撮像する撮像カメラを併用してもよい。この場合、運転者の撮像画像に基づき運転者が目を閉じているかどうかを認識でき、運転者が所定時間以上連続して目を閉じているか否かによって睡眠状態であるか否かを判断することができる。さらに、生体センサ45として、脳波検出センサを用いる場合もある。この場合、運転者の脳波に基づいて運転者が睡眠状態であるか否かを判断することができる。
次に、本実施形態に係る自動運転車両1における自動運転制御について説明する。
自動運転車両1の自動運転制御は、例えば運転者による自動運転スイッチの操作や車両が自動運転区域に入ったことなどにより開始される。自動運転制御は、運転者の運転操作なしに予め設定された目標速度パターン及び目標走行軌跡に基づいてECU10からの制御信号に従ってエンジン駆動、ブレーキ作動、ハンドル操舵が行われる。自動運転制御中においては、運転者の体調状態が検出され、その体調に応じた自動運転制御が実行される。
図3は、本実施形態に係る自動運転車両1における睡眠自動走行制御処理のフローチャートである。
この睡眠自動走行制御処理は、自動運転制御中に実行される処理であり、運転者の睡眠状態に応じた運転制御を行うものである。この睡眠自動走行制御処理は、例えばECU10により所定の周期で繰り返し実行される。
まず、図3のS10に示すように、睡眠状態の検出処理が行われる。睡眠状態の検出処理は、運転者の睡眠状態を検出する処理であり、例えば運転者が睡眠状態であるかどうかが検出され、睡眠状態である場合にはその睡眠レベルが検出される。睡眠状態は、生体センサ45の出力信号に基づいて検出される。例えば、睡眠状態である否かは、運転者の心電図の状態、脳波の状態又は撮像映像の閉眼状態などに基づいて判断される。また、睡眠レベルは、運転者の脳波の状態や睡眠状態となったときからの経過時間などにより判断される。睡眠状態となったときから、一定周期で浅い眠りのレム睡眠と深い眠りのノンレム睡眠を繰り返すため、睡眠経過時間から睡眠レベル(例えば、レム睡眠、睡眠レベル1〜4)を推定することができる。
そして、S12に移行し、運転者が覚醒状態であるか否かが判断される。この判断は、S10の睡眠状態検出処理の処理結果に基づいて行われ、S10にて運転者が睡眠状態でないと判断された場合には運転者が覚醒状態であると判断される。一方、S10にて運転者が睡眠状態であると判断された場合には、S12では運転者が覚醒状態でないと判断される。
S12にて運転者が覚醒状態であると判断された場合には、睡眠自動走行制御処理を終了する。一方、S12にて運転者が覚醒状態でないと判断された場合には、レム睡眠状態であるか否かが判断される(S14)。レム睡眠状態でないと判断された場合には、S18に移行する。
一方、S14にてレム睡眠状態であると判断された場合には、自動運転継続可能時間T1がレム睡眠周期時間T0より短いか否かが判断される(S16)。自動運転継続可能時間T1は、自動運転制御によって継続して走行できる時間であり、例えば自動運転区間の残り距離と平均車速から演算される。レム睡眠周期時間T0は、予めECU10に設定される時間であり、例えば90分として設定される。
S16にて自動運転継続可能時間T1がレム睡眠周期時間T0より短いと判断された場合には、覚醒処理が行われる(S20)。覚醒処理は、運転者を覚醒状態とする処理であり、例えば車両のレーンチェンジの回数を増やすなど運転者の覚醒を促すように運転制御を実行する。覚醒処理の詳細については後述する。S20の覚醒処理を終えたら、S24に移行する。
一方、S16にて自動運転継続可能時間T1がレム睡眠周期時間T0より短くないと判断された場合には、睡眠レベルに応じた走行可能時間T2が演算される(S18)。睡眠レベルに応じた走行可能時間T2は、予めECU10に設定されたマップを用いて演算される。例えば、眠りが浅い順に睡眠レベルがレム睡眠、睡眠レベル1、睡眠レベル2、睡眠レベル3、睡眠レベル4と設定されている場合、レム睡眠は3分、睡眠レベル1は5分、睡眠レベル2は10分、睡眠レベル3は15分、睡眠レベル4は20分というように睡眠レベルに対応して走行可能時間T2がマップとして設定される。このマップにより運転者の睡眠状態に応じて走行可能時間T2が演算される。
そして、S22に移行し、自動運転継続可能時間T1が睡眠レベルに応じた走行可能時間T2より短いか否かが判断される。S22にて自動運転継続可能時間T1が睡眠レベルに応じた走行可能時間T2より短いと判断された場合には、S20に移行する。一方、S22にて自動運転継続可能時間T1が睡眠レベルに応じた走行可能時間T2より短くないと判断された場合には、追従走行中であるか否かが判断される(S24)。
すなわち、S24では先行車両に追従走行制御を実行中であるか否かが判断される。S24にて先行車両に追従走行制御を実行中でない場合には、S28に移行する。一方、S24にて先行車両に追従走行制御を実行中である場合には、大型車優先追従制御処理が行われる。大型車優先追従制御処理は、トラック、バスなどの大型車に優先して追従走行を行う処理である。例えば、先行する車両の中に大型車がある場合には、その大型車を先行車両として追従走行制御を行う。また、大型車でない車両を先行車両として追従走行制御している場合、先行車両となり得る大型車が現れた場合には、先行車両を大型車に替えて追従走行制御を行う。
そして、S28に移行し、車両挙動上限値設定処理が行われる。車両挙動上限値設定処理は、自動運転制御における車両挙動上限値を運転者の覚醒状態時と比べて高く設定する処理である。例えば、車両の加減速上限値、横加速度上限値が覚醒状態時と比べて高く設定される。
そして、この車両挙動上限値に応じて目標速度パターン及び目標走行軌跡の生成が行われ(S30、S32)、それらの目標速度パターン及び目標走行軌跡に従った自動運転制御が実行される(S34)。S34の自動運転制御処理を終えたら、睡眠自動走行制御処理の一連の制御処理を終了する。
この睡眠自動走行制御処理によれば、運転者が睡眠状態である場合にその睡眠状態がレム睡眠状態か否かを判断し、運転者の睡眠状態がレム睡眠状態であって自動運転継続可能時間T1がレム睡眠周期時間T0より短い場合に、運転者の覚醒を促すように運転制御を行う。これにより、レム睡眠状態で搭乗者を起こし快適に目覚めさせることができる。このため、自動運転から手動運転に切り替わった際に快適な状態で運転操作することができる。
また、睡眠自動走行制御処理において、運転者の睡眠状態がレム睡眠状態でなく自動運転継続可能時間T1がレム睡眠周期時間T0より短い場合に、自動運転継続可能時間T1がより長くなるように運転制御を行うことが好ましい。例えば、目標速度パターンを変更して平均車速を下げるなどして自動運転継続可能時間T1がレム睡眠周期時間T0以上となるように運転制御を行う。これにより、自動運転制御中に運転者の睡眠状態がレム睡眠となり、運転者をレム睡眠状態で起こすことができる。このため、運転者を快適に目覚めさせて、自動運転から手動運転に切り替わった際に快適な状態で運転操作させることができる。
睡眠自動走行制御処理によれば、運転者が睡眠状態であると検出された場合に覚醒状態時と比べて車両挙動上限値を高めて運転制御を行うことにより、睡眠状態の運転者に不快感を与えることなく、車速を上げて自動運転することができる。このため、目的地へ早く到達することができる。
また、睡眠自動走行制御処理によれば、運転者が睡眠状態であって車両が追従走行制御中である場合に大型車を優先して追従することにより、睡眠によって運転者が圧迫感を受けることなく、走行の空気抵抗を小さくして燃費向上を図ることができる。
その際、覚醒状態時と比べて先行車両との車間距離を短くして運転制御を行うことが好ましい。これにより、走行空気抵抗をより小さくすることができ、燃費向上を図ることができる。
図4は、本実施形態に係る自動運転車両1における覚醒処理のフローチャートである。
この覚醒処理は、自動運転制御中に実行される処理であり、図3のS20のように睡眠状態である運転者を覚醒状態とする場合などに実行される処理である。
まず、図4のS40に示すように、車両が走行する道路に所定以上の長い直線区域があるか否かが判断される。例えば、ECU10に予め記憶される地図情報、自車の位置情報及び走行方向情報に基づいて、自車が走行する前方の道路に所定以上の長い直線区間があるか否かが判断される。
S40にて車両が走行する道路に所定以上の長い直線区域があると判断された場合には、レーンチェンジ増加処理が行われる(S44)。レーンチェンジ増加処理は、車両の車線変更の頻度を通常制御時より増加させる処理であり、車両の運転制御によって睡眠状態の運転者を覚醒させるために実行される。例えば、覚醒処理が必要でない場合と比べて車両のレーンチェンジが増えるように運転制御目標値が設定され、その運転制御目標値に応じてECU10から操舵モータ44に制御信号が出力され、車両のレーンチェンジが頻繁に実行される。S44のレーンチェンジ処理を終了したら、S46に移行する。
一方、S40にて車両が走行する道路に所定以上の長い直線区域がないと判断された場合には、運転者の覚醒レベルが低下しているか否かが判断される(S42)。この判断処理は、運転者の脳波、心電図などから覚醒レベルが低下しているか否かを判断する処理である。
S42にて運転者の覚醒レベルが低下していると判断された場合には、S44に移行し、レーンチェンジ処理が実行される。一方、S42にて運転者の覚醒レベルが低下していないと判断された場合には、S46に移行する。
S46では運転者の睡眠レベルが浅いか否かが判断される。この判断処理は、運転者の脳波、心電図などから睡眠レベルが所定レベルより浅いか否かを判断する処理である。S46にて運転者の睡眠レベルが浅いと判断された場合には、強制覚醒処理が行われる(S48)。強制覚醒処理は、車両運転制御以外の方法により強制的に運転者を覚醒状態とする処理であり、例えば運転席のシートを振動させたり、運転者の頭部に冷風を吹きかけるなどの処理が行われる。
一方、S46にて運転者の睡眠レベルが浅くないと判断された場合には、目標走行軌跡の生成が行われ(S50)、その目標走行軌跡に従った自動運転制御が実行される(S52)。S52の自動運転制御処理を終えたら、覚醒処理の一連の制御処理を終了する。
この覚醒処理によれば、運転者の覚醒が必要となった場合に車両のレーンチェンジが増えるように運転制御を行うことにより、走行行為により運転者の覚醒を促すことができ、違和感を与えることなく目覚めさせることができる。このため、シート振動などの覚醒技術と比べてシームレスな刺激によって快適に目覚めさせることができる。
図5は、本実施形態に係る自動運転車両1における睡眠誘導走行処理のフローチャートである。
この睡眠誘導走行処理は、自動運転制御中であって運転者の睡眠が許容できる状況下で運転者を睡眠へ誘導する処理であり、例えば運転者がスイッチ操作などにより睡眠誘導モードを設定した場合に実行される。
睡眠誘導走行処理は、まず、図5のS60に示すように、運転者の睡眠を許容できるか否かが判断される。例えば、自動運転区間がもうすぐ終わってしまい手動運転に切り替えられる場合には、運転者の睡眠を許容できないと判断される。これに対し、自動運転区間が所定以上長く続く場合には、運転者の睡眠を許容できると判断される。
S60にて運転者の睡眠を許容できないと判断された場合には、S94に移行する。一方、S60にて運転者の睡眠を許容できると判断された場合には、車両が走行する道路に所定以上の長い直線区域があるか否かが判断される(S62)。例えば、ECU10に予め記憶される地図情報、自車の位置情報及び走行方向情報に基づいて、自車が走行する前方の道路に所定以上の長い直線区間があるか否かが判断される。
S62にて車両が走行する道路に所定以上の長い直線区域があると判断された場合には、レーンチェンジ抑制処理が行われる(S64)。レーンチェンジ抑制処理は、車両の車線変更を抑制する処理であり、自動運転制御中において必要最小限のレーンチェンジのみを実行し、できるだけレーンチェンジを実行しないように運転制御目標値が設定される。これにより、車両の車線変更を抑制した走行制御が行われる。
そして、S66に移行し、速度変化抑制処理が行われる。速度変化抑制処理は、車両の走行速度の変化を抑制する処理であり、自動運転制御中においてできるだけ車速が変化しないように運転制御目標値が設定される。これにより、車両の車速変化を抑制した走行制御が行われる。S66の速度変化抑制処理を終了したら、S88に移行する。
一方、S62にて車両が走行する道路に所定以上の長い直線区域がないと判断された場合には、現時点における車両に加わる加速度の周波数成分の取得処理が行われる(S68)。例えば、車両に搭載される加速度センサの出力についてフーリエ解析などの周波数解析を行うことにより、車両の前後方向、左右方向における加速度の周波数成分の取得が行われる。なお、ここでいう加速度は、マイナスの加速度、すなわち減速度も含むものである。
そして、S70に移行し、計画加速度の周波性成分の算出処理が行われる。計画加速度の周波性成分の算出処理は、ECU10に設定される走行目標軌跡などの走行計画から計画加速度の周波数成分を算出する処理である。そして、S72に移行し、予想加速度の周波数成分の算出処理が行われる。予想加速度の周波数成分は、S68で取得された現時点の加速度周波数成分に対しS70で算出された計画加速度周波数成分を加算することにより算出すればよい。
そして、S74に移行し、目標速度調整処理が行われる。目標速度調整処理は、予想加速度周波数成分が1/fゆらぎ分布(周波数が高いほど強度が低い分布)となるように車両の目標速度を調整する処理である。例えば、予想加速度周波数成分分布において低周波成分のピークが小さすぎる場合にはゆっくりとした速度変化を増やし、低周波成分のピークが大きすぎる場合にはゆっくりとした速度変化を減らすように、車両の目標速度を調整し、予想加速度周波数成分が1/fゆらぎ分布となるように目標速度パターンが修正更新される。
そして、S76に移行し、目標横位置調整処理が行われる。目標横位置調整処理は、予想加速度周波数成分が1/fゆらぎ分布となるように車両の目標横位置を調整する処理である。例えば、予想加速度周波数成分分布において低周波成分のピークが小さすぎる場合にはゆっくりとした操舵変化を増やし、低周波成分のピークが大きすぎる場合にはゆっくりとした操舵変化を減らすように、車両の目標横位置が調整される。
そして、S78に移行し、レーンチェンジ頻度調整処理が行われる。レーンチェンジ頻度調整処理は、予想加速度周波数成分が1/fゆらぎ分布となるように車両走行におけるレーンチェンジ頻度を調整する処理である。例えば、予想加速度周波数成分分布において中間周波成分のピークが小さすぎる場合にはレーンチェンジの頻度を増やし、中間周波成分のピークが大きすぎる場合にはレーンチェンジの頻度を減らすように、車両のレーンチェンジ頻度が調整される。
そして、S80に移行し、予想加速度周波数成分において高周波成分が不足しているか否かが判断される。このS80にて予想加速度周波数成分において高周波成分が不足していないと判断された場合には、S88に移行する。一方、S80にて予想加速度周波数成分において高周波成分が不足していると判断された場合には、蛇行走行を回避すべきか否かが判断される(S82)。例えば、車両の搭乗者の車酔い特性によって蛇行回避が設定されている場合などには、蛇行走行を回避すべきであると判断される。そのような設定がない場合には、蛇行走行を回避しなくてもよいと判断される。
S82にて蛇行走行を回避すべきあると判断された場合には、車両の加減速頻度が増加するように設定される(S84)。これにより、予想加速度周波数成分において高周波成分が高められ、予想加速度周波数成分分布を1/fゆらぎ分布に近づけることができる。
一方、S82にて蛇行走行を回避しなくてもよいと判断された場合には、車両の蛇行走行制御が設定される(S86)。これにより、予想加速度周波数成分において高周波成分が高められ、予想加速度周波数成分分布を1/fゆらぎ分布に近づけることができる。そして、S88に移行する。
S88では目標速度パターンの生成処理が行われ、その後、目標走行軌跡の生成処理が行われる(S90)。すなわち、S74の目標速度調整、S76の目標横位置調整、S78のレーンチェンジ頻度調整、S84の加減速頻度調整及びS86の蛇行走行調整を考慮して、目標速度パターン及び目標走行軌跡の修正更新が行われる。
そして、S92に移行し、エアコン温風処理が行われる。エアコン温風処理は、エアコンにより運転者の頭部に温風を吹きかける処理である。これにより、運転者を睡眠状態に誘導することができる。
そして、S94に移行し、自動運転制御処理が行われる。自動運転制御処理は、S88、S90で設定された目標速度パターン及び目標走行軌跡に従って車両の自動運転制御を実行する処理である。S94の自動運転制御処理を終えたら、睡眠自動走行制御処理の一連の制御処理を終了する。
この睡眠誘導走行処理によれば、運転者の睡眠が許容される状況下において、運転者を睡眠状態とすることができる。このため、この睡眠により運転者に活力を与えることができ、自動運転から手動運転に切り替わった際に快適な状態で運転操作を行うことができる。
また、睡眠誘導走行処理によれば、車両走行におけるゆらぎ状態が1/fゆらぎに近いものとなるため、自動走行を効果的に用い、運転者を睡眠に誘導することができる。
特に、車両の搭乗者の車酔いが検出された場合に有効である。すなわち、車両の搭乗者の車酔いが検出された場合に睡眠誘導走行処理を実行することにより、搭乗者を眠らせて車酔いを解消させることができる。
図6に、本実施形態に係る自動運転車両1における車酔い特性学習処理のフローチャートである。
車酔い特性学習処理は、車両の搭乗者の車酔いを起こしやすい車両運転状態を記録し、搭乗者の車酔い特性を学習する処理である。この処理は、車両の搭乗者が覚醒状態の時に実行される。
この車酔い特性学習処理は、まず、図6のS100に示すように、生体センサ入力値の取得処理が行われる。例えば、搭乗者の心電図、脳波を検出し、生体センサ入力値として記録する。そして、S102に移行し、車酔いスイッチがオンとなったか否かが判断される。車酔いスイッチは、車両に設置されるスイッチであって、例えば運転者などの搭乗者が車酔いを起こした場合にオン操作するスイッチである。
S102にて車酔いスイッチがオンとなったと判断された場合には、自己申告入力値が記録される(S104)。そして、S106に移行する。一方、S102にて車酔いスイッチがオンとなっていないと判断された場合には、車両状態入力値が取得される(S106)。車両状態入力値は、車両の前後加速度、ジャーク、横加速度、ヨーレートなどの車両の挙動状態に関する値である。
そして、S108に移行し、車両状態相関値の算出処理される。車両状態相関値の算出処理は、搭乗者が車酔いを起こした際の車両状態入力値に基づいて車両状態相関値を算出する処理である。車両状態相関値は、車両状態と搭乗者の車酔いの発生との相関値であり、例えば車両状態と搭乗者の車酔いの発生との相関が高いほど大きい値として算出される。このS108の車両状態相関値の算出処理を終えたら、車酔い特性学習処理の一連の処理を終了する。
この車酔い特性学習処理によれば、車両状態と搭乗者の車酔いとの相関をとることにより、車酔いを生じさせる車両状態を検出することができ、搭乗者の車酔い特性を学習することができる。
図7は、本実施形態に係る自動運転車両1における車酔い抑制自動走行処理のフローチャートである。
車酔い抑制自動走行処理は、自動運転制御中に実行され、車両の搭乗者の車酔いを抑制しながら運転制御する処理である。
この車酔い抑制自動走行処理は、まず、図7のS120に示すように、車酔い特性が学習済みであるか否かが判断される。すなわち、図6の車酔い特性学習処理が実行されているか否かが判断される。S120にて車酔い特性が学習済みでないと判断された場合には、事前調査結果に基づいて車両状態相関値が設定される(S122)。その際、事前調査結果がない場合には、車両状態相関値の標準値を設定してもよい。
一方、S120にて車酔い特性が学習済みであると判断された場合には、その学習結果に基づいて車両状態相関値が設定される(S124)。そして、S126に移行し、搭乗者の睡眠状態に応じて車両状態相関値が補正される。例えば、搭乗者が睡眠状態であるときには、覚醒状態時と比べて車両状態相関値が小さく補正される。また、睡眠レベルが深いほど車両状態相関値が小さくなるように補正される。具体的には、レム睡眠の場合に通常値の0.5倍、睡眠レベル1の場合に通常値の0.4倍、睡眠レベル2の場合に通常値の0.3倍、睡眠レベル3の場合に通常値の0.2倍、睡眠レベル4の場合に通常値の0.1倍とされる。このように車両状態相関値を補正することにより、車酔いしにくい状態の場合には、迅速な車両走行制御を優先した車酔い抑制制御を実行できる。
そして、S128に移行し、搭乗者の乗車方向に応じて車両状態相関値が補正される。例えば、搭乗者が車両後方側を向いて乗車している場合には、通常乗車時と比べて車両状態相関値が大きく補正される。例えば、後ろ向きに乗車している場合には、車両状態相関値が通常値の2倍とされる。このように車両状態相関値を補正することにより、乗車方向により車酔いしやすい搭乗者の車酔いを抑制することができる。
そして、S130に移行し、搭乗者の乗車位置に応じて車両状態相関値が補正される。例えば、後部座席の搭乗者に対しては前部座席の搭乗者と比べて車両状態相関値が大きく補正される。具体的には、後部座席の搭乗者に対して前部座席の搭乗者と比べて車両状態相関値が1.5倍とされる。このように車両状態相関値を補正することにより、乗車位置によって前方視界が低く車酔いしやすい搭乗者に対し車酔いを抑制することができる。
そして、S132に移行し、搭乗者の視線に応じて車両状態相関値が補正される。例えば、遠い地点を見ている搭乗者に対してはそうでない場合と比べて車両状態相関値が小さく補正される。具体的には、視線検知センサにより搭乗者の視線位置を検知し、遠点を見ている場合には、車両状態相関値が0.7倍とされる。このように車両状態相関値を補正することにより、遠い地点を見ており車酔いしにくい状態の場合には、迅速な車両走行制御を優先した車酔い抑制制御を実行することができる。
そして、S134に移行し、車両の搭乗者のうち最大の車両状態相関値が抽出される。この場合、最大の車両状態相関値は、加速度などの車両状態の各要素ごとに抽出することが好ましい。
そして、S136に移行し、車両挙動上限値の設定処理が行われる。車両挙動上限値の設定処理は、最大の車両状態相関値に基づいて車両挙動上限値を設定する処理である。この車両挙動上限値を設定することにより、搭乗者の車酔いを起こしにくい状態で自動運転制御を実行することが可能となる。
そして、S138に移行し、車両挙動上限値を設定する際に横制御要素の設定を行うか否かが判断される。車両挙動上限値を設定する際に横制御要素の設定を行わない場合には、S142に移行する。一方、横加速度、ヨーレートなどの横制御要素の設定を行う場合には、上限速度の設定も併せて行われる(S140)。例えば、横加速度の上限値、ヨーレートの上限値が設定されると共に、道路線形(カーブR)に応じて上限速度も併せて設定される。具体的には、次の式(1)、(2)などを用いて上限速度Vmaxを設定することが好ましい。
Vmax=γ・R …(1)
Vmax=(Gy・R)1/2 …(2)
この式(1)、(2)において、γは車両のヨーレート、Rは道路の曲率半径、Gyは車両の横加速度である。
そして、S142に移行し、車両走行上、レーンチェンジが必須であるか否かが判断される。例えば、車線減少などでレーンチェンジが必須である場合には、レーンチェンジに延期余裕があるか否かが判断される(S148)。レーンチェンジに延期余裕がある場合には、S152に移行する。一方、S148にてレーンチェンジに延期余裕がない場合には、上限速度が低く補正される(S150)。
S142にてレーンチェンジが必須でないと判断された場合には、横制御における上限値を超過するか否かが判断される(S144)。横制御における上限値を超過しないと判断された場合は、S152に移行する。一方、S144にて横制御における上限値を超過すると判断された場合は、レーンチェンジが延期されるか、上限速度が低く設定される(S146)。
そして、S152に移行し、目標走行軌跡の生成処理が行われる。そして、S154に移行し、車両に複数の異なる方向の揺れが併発しているか否かが判断される。車両に複数の異なる方向の揺れが併発していないと判断された場合には、S158に移行する。一方、車両に複数の異なる方向の揺れが併発していると判断された場合には、車酔いに悪影響を及ぼさないように、道路のカーブ走行時やレーンチェンジ中に加減速を併発しないように制御される(S156)。
そして、S158に移行し、目標速度パターンの生成処理が行われる。ここでは、車酔いを抑制した車両状態相関値を考慮して運転制御目標値である目標速度パターンが生成される。そして、S160に移行し、目標速度パターン及び目標走行軌跡に従って自動運転制御処理が行われる。S160の自動運転制御処理を終えたら、車酔い抑制自動走行処理の一連の制御処理を終了する。
この車酔い抑制自動走行処理によれば、搭乗者の車酔いを低減させる運転制御目標値を設定して運転制御を行うことにより、搭乗者の車酔いを低減させることができる。
また、予め車酔い状態と車両状態との相関関係、即ち車両状態相関値を学習し、その車両状態相関値に基づいて搭乗者の車酔いを低減させる運転制御目標値を設定して運転制御を行うことにより、搭乗者の車酔いを起こしにくい運転制御が行える。
以上のように、本実施形態に係る自動運転車両1によれば、車両の搭乗者の体調に応じた運転制御を行うことにより、搭乗者に不快感を与えることなく運転制御が行える。また、搭乗者の覚醒状態、睡眠状態に応じた車両運転が行われることにより、搭乗者に不快感を与えることなく、自動運転のメリットを享受することができる。
また、搭乗者が睡眠状態である場合に覚醒状態時と比べて車両挙動上限値を高めて運転制御を行うことにより、睡眠状態の搭乗者に不快感を与えることなく、車速を上げて自動運転することができる。
また、搭乗者が睡眠状態である場合に覚醒状態時と比べて車間距離を短くして運転制御を行うことにより、睡眠によって搭乗者が圧迫感を受けることなく、走行の空気抵抗を小さくして燃費向上を図ることができる。
また、レム睡眠状態の時に搭乗者の覚醒を促すように運転制御を行うことにより、レム睡眠状態で搭乗者を起こし快適に目覚めさせることができる。このため、自動運転から手動運転に切り替わった際に快適な状態で運転操作することができる。
また、自動運転継続可能時間がより長くなるように運転制御を行うことにより、自動運転継続可能時間をレム睡眠周期時間以上として、搭乗者をレム睡眠状態で起こし快適に目覚めさせることが可能となる。これにより、自動運転から手動運転に切り替わった際に快適な状態で運転操作することができる。
また、自動運転継続可能時間がレム睡眠周期時間以上となるように運転制御を行うことにより、搭乗者をレム睡眠状態で起こし快適に目覚めさせることが可能となる。これにより、自動運転から手動運転に切り替わった際に快適な状態で運転操作することができる。
また、搭乗者の覚醒が必要となった場合に車両のレーンチェンジが増えるように運転制御を行うことにより、走行行為により搭乗者の覚醒を促すことができ、違和感を与えることなく目覚めさせることができる。このため、シート振動などの覚醒技術と比べてシームレスな刺激によって快適に目覚めさせることができる。
また、本実施形態に係る自動運転車両1によれば、搭乗者の車酔い状態に応じた車両運転が行われることにより、搭乗者の車酔いの低減、防止が行える。その際、搭乗者の車酔いを低減させる運転制御目標値を設定して運転制御を行うことにより、搭乗者の車酔いを低減させることができる。
また、車酔い状態と車両状態との相関関係を学習し、その相関関係に基づいて搭乗者の車酔いを低減させる運転制御目標値を設定して運転制御を行うことにより、搭乗者の車酔いを起こしにくい運転制御が行える。
さらに、搭乗者の車酔いが検出された場合に搭乗者の睡眠を促すように運転制御を行うことにより、搭乗者を眠らせて車酔いを解消させることができる。
なお、上述した実施形態は本発明に係る自動運転車両の一例を示すものである。本発明に係る自動運転車両は、この実施形態に係る自動運転車両に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る自動運転車両を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。