JP5247232B2 - 多層フィルム - Google Patents

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Description

本発明は吸水性および耐熱性に優れ、かつ制電性(帯電防止性)に優れた多層フィルムに関する。特に、本発明は、半導体、プリント基板、ICチップ、読取ヘッドなど電子機器部品の包装フィルムとして好適に使用できる多層フィルムに関する。
半導体等の電子機器部品は、外部からの湿気により性能の劣化を生じ得る。そこで、本出願人は、電子機器部品を湿気から保護するための包装フィルムとして使用され得る、吸水性に優れたフィルムに関する出願を先に行った(特願2007−196438)。上記吸水性フィルムは、ポリエチレン系樹脂組成物と特定の粒子径の吸水性フィラーを含む。上記ポリエチレン系樹脂組成物は、特定の物性を有するエチレン系重合体と酸変性樹脂とを含み、その結果得られるフィルムは、吸水性と共に耐熱性に優れ、かつ樹脂組成物と吸水性フィラーとの混和性向上により製膜性にも優れる。
しかし、電子機器部品は、静電気によっても性能の劣化を生じ得る。例えば、静電気により塵埃が電子機器部品に吸着すると、それにより性能の劣化や故障が生じ得る。また、静電気が電子機器部品に直接作用することにより、性能の劣化や故障を生じる場合もある。そこで、上記吸水性フィルムを電子機器部品の包装用フィルムとして使用するとき、帯電を抑えるべく、上記フィルムが、制電性を有するのが好ましい。
電子機器部品の包装用として、水分吸収層と帯電防止層とからなる積層体が提案されている(例えば、特許文献1)。上記水分吸収層は、ベース樹脂100質量部に対して水分吸収剤としてのポリアクリル酸変性樹脂を5質量部含む。ポリアクリル酸変性樹脂は、紙オムツなどの、大量の液体の水分を吸収する用途には有用であるが、電子機器包装材に要求されるのは、空気中の湿気を吸収して乾燥状態を保つことであり、このような極低量の水分をさらに低減する目的には不向きである。この目的には、合成ゼオライト、無水硫酸マグネシウムなどの無機系吸水剤を使用し、これを、5質量部のような少量ではなく、もっと多量に配合する必要がある。しかし、多量の無機系吸水剤を配合した樹脂は、フィルム化が困難である。
特開2005−139315号公報
本発明者は、先に行った上記出願における吸水性フィルムは外観が良好であり(表面にブツ等の欠陥がない)かつ均一な膜厚を有し、したがって、これに制電層を設けることにより、吸水性および制電性に優れるとともに良好な外観および均一な膜厚を有する多層フィルムが得られることを見出した。
すなわち、本発明は、吸水性樹脂層(I)および制電性樹脂層(II)を有する多層フィルムであって、制電性樹脂層(II)は、23℃および相対湿度10%での表面固有抵抗が1.0×10Ω/sq.〜1.0×1012Ω/sq.であり、吸水性樹脂層(I)は、
(A)ポリエチレン系樹脂組成物100質量部、および
(B)吸水性フィラー7〜200質量部
を含む吸水性樹脂組成物からなり、ポリエチレン系樹脂組成物(A)は、
(A−1)下記(i)〜(iv)の特性を有するエチレン系重合体99〜60質量%、
(i)DSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ融点(Tm)が110℃以上である、
(ii)DSC融解曲線における融解熱量(ΔH)が90〜180J/gである、
(iii)110℃における結晶化度(Xc110)が10〜60%である、および
(iv)MFR(190℃、21.18N)が0.1g/10分以上10g/10分未満である、
および
(A−2)酸変性樹脂1〜40質量%
を含み、ここで成分(A−1)と成分(A−2)の量の合計が100質量%であり、吸水性フィラー(B)は、30μm以下の粒子径(D99)および20μm以下の粒子径(D50)を有する、ここでD99およびD50はそれぞれ粒子径分布において粒子径の小さい方から累積して99質量%、および50質量%になる点における粒子径を言う、ところの多層フィルムである。
本発明の多層フィルムは、良好な外観および均一な膜厚を有するとともに、吸水性、耐熱性および制電性に優れるので、半導体、プリント基板、ICチップ、読取ヘッドなどの電子機器部品のための包装フィルムとして非常に有用である。
吸水性樹脂層(I)
吸水性樹脂層(I)は、ポリエチレン系樹脂組成物および吸水性フィラーを含む吸水性樹脂組成物からなる。
(A)ポリエチレン系樹脂組成物
本発明におけるポリエチレン系樹脂組成物は、エチレン系重合体(A−1)および酸変性樹脂(A−2)を含む。
(A−1)エチレン系重合体
エチレン系重合体は、十分な耐熱性およびフィラー受容性を有するように、下記(i)〜(iv)を満たすことが必要である。
(i)DSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ融点(Tm)が110℃以上である、
(ii)DSC融解曲線における融解熱量(ΔH)が90〜180J/gである、
(iii)110℃における結晶化度(Xc110)が10〜60%である、および
(iv)MFR(190℃、21.18N)が0.1g/10分以上10g/10分未満である。
上記ピークトップ融点(Tm)が110℃より低いと、耐熱性が不充分になる場合がある。上記ピークトップ融点(Tm)は、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上である。
また、上記融解熱量(ΔH)が90J/g未満であると、耐熱性が不充分になる場合があり、180J/gを超えるとフィラー受容性が不足し、製膜性に劣る場合がある。上記融解熱量(ΔH)は、好ましくは100〜170J/gである。
また、上記結晶化度(Xc110)が10%未満では耐熱性が不充分になる場合があり、60%を超えるとフィラー受容性が不足し、製膜性に劣る場合がある。上記結晶化度(Xc110)は、好ましくは15〜45%である。なお、110℃における結晶化度とは、DSC融解曲線における融解熱量ΔH全体に対する110℃以上での融解熱量の割合を意味する。
さらに、上記MFRが10g/10分以上では、ポリエチレン系樹脂組成物(A)と吸水性フィラー(B)との溶融混練性(フィラー分散性)が不充分になり、フィルム製膜時の引落性が低下する場合があり、0.1g/10分未満では、フィルムの肉厚調整が困難になる場合がある。上記MFRは、好ましくは0.2〜7g/10分、最も好ましくは0.5〜5g/10分である。
なお、本明細書において、DSC融解曲線は、特に断らない限り、TA Instruments(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社)のDSC Q1000型を使用し、試料を190℃で5分間保持した後、10℃/分の降温速度で−10℃まで冷却し、−10℃で5分間保持した後、10℃/分の昇温速度で190℃まで加熱するという温度プログラムでDSC測定を行って得られる曲線である。
本発明におけるエチレン系重合体は、上記(i)〜(iv)の要件を満たすものであれば特に制限されない。例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンとα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等)とのコポリマーが挙げられる。酢酸ビニル、メチルアクリレート、エチルアクリレートなどをコモノマーとするエチレンコポリマーは、コモノマーによる結晶性低下が大きいため、上記(i)〜(iv)の要件を満たすことが難しい。
エチレン系重合体は、1種を単独で、または2種以上を任意に配合した混合物として使用することが出来る。混合物として使用する場合には、混合物全体が上記要件(i)〜(iv)を満たすようにすればよい。
(A−2)酸変性樹脂
酸変性樹脂は、疎水性であるエチレン系重合体(A−1)と親水性である吸水性フィラー(B)との混和性を改良して吸水性フィラーの分散を促進し、製膜したときにフィルムにブツなどの欠点が発生しないようにするための成分である。
本発明に使用する酸変性樹脂は、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された樹脂であれば何でも良い。不飽和カルボン酸の例としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸が挙げられ、その誘導体の例としては、例えば、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水フマル酸等のエステルおよび無水物が挙げられる。上記樹脂としては、直鎖状ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル(VA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート(EA)共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体などのエチレン系重合体、プロピレン系重合体、スチレン系エラストマーが挙げられる。エチレン系重合体(A−1)との混和性の点から、上記樹脂がエチレン系重合体であるものが最も好ましい。
酸変性樹脂は、好ましくは0.1〜10g/10分のMFR(190℃、21.18N)を有する。さらに好ましくは、0.2〜7g/10分、最も好ましくは0.5〜5g/10分である。MFRが上記上限より高いと、フィルム製膜時の引落性が低下する場合がある。MFRが上記下限より低いと、フィルムの肉厚調整が困難になる場合がある。
酸変性樹脂の具体例としては、三井化学(株)製のアドマー(商品名)、日本ポリオレフィン(株)製のアドテックス(商品名)、クロンプトン社製のポリボンド(商品名)および住友化学(株)製のボンドファースト(商品名)が挙げられる。
酸変性樹脂は、単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリエチレン系樹脂組成物(A)は、エチレン系重合体(A−1)99〜60質量%および酸変性樹脂(A−2)1〜40質量%を含み、ここで成分(A−1)と成分(A−2)の量の合計が100質量%である。より好ましくは、エチレン系重合体(A−1)97〜70質量%および酸変性樹脂(A−2)3〜30質量%であり、更に好ましくは、エチレン系重合体(A−1)95〜80質量%および酸変性樹脂(A−2)5〜20質量%である。酸変性樹脂(A−2)が少ない(すなわち、エチレン系重合体(A−1)が多い)と、吸水性フィラー(B)の分散が不充分になり、製膜の際に目脂が多く発生したり、得られるフィルムにブツなどの欠点が発生し易くなったりする。一方、酸変性樹脂(A−2)が多い(すなわち、エチレン系重合体(A−1)が少ない)と、酸変性樹脂と吸水性フィラーとの相互作用が非常に強くなり、吸水性樹脂組成物の製造時の混練負荷や製膜時の押出負荷が高くなる場合がある。また、得られるフィルムの引張伸びが低下する場合がある。
(B)吸水性フィラー
吸水性フィラーは、吸水性を有し、溶剤に溶出しない安定的なものであればどのようなものでも良い。例えば、無水硫酸マグネシウム、酸化アルミニウム、シリカゲル、石灰、焼成ハイドロタルサイトおよびモレキュラーシーブが挙げられ、これらを、単独で、または2種以上の組み合わせで使用することができる。
これらのフィラーのうち、吸水量が飽和状態に達したことが一目で分かる機能(インジケータ機能)を有するものは便利であり、より好ましい。例えば、モレキュラーシーブは、吸水とともにフィルムの透明度を大きく増すことで飽水状態に達したことを示す。また、無水硫酸マグネシウムは、吸水とともに体積が増加してフィルムに皺が生じることで飽水状態に達したことを示す。
吸水性フィラーは、ポリエチレン系樹脂組成物に良好に分散されてブツなどの欠点のない均一なフィルムが得られるように、制御された粒子径分布を有するものが使用される。すなわち、本発明で使用される吸水性フィラーは、30μm以下の粒子径(D99)および20μm以下の粒子径(D50)を有し、ここでD99およびD50はそれぞれ、粒子径分布において粒子径の小さい方から累積して99質量%および50質量%になる点における粒子径を言う。D99は、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。また、D50は、好ましくは0.01〜15μm、より好ましくは0.1〜10μmである。上記上限を超えるような粒子の粗いフィラーは、製膜したときに、フィルムの欠点や異物となる場合がある。また、粒子の細か過ぎるフィラーは、凝集してフィルムの欠点や異物になったり、凝集しなかった場合には多量の空気を抱き込んで吸水性樹脂組成物製造の際の溶融混練作業性を悪くしたりする場合がある。粒子径分布を制御するには、大きな粒子を生成してそれを粉砕、分級する方法、及び最初から細かい粒子を生成して分球する方法がある。粒子径分布を上記範囲内に制御出来るならどちらの方法でも良く、特に限定はされないが、押出負荷および製膜性の観点から、細かい粒子を最初から生成する方法がより好ましい。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、ポリエチレン系樹脂組成物(A)100質量部に対して吸水性フィラー(B)を7〜200質量部、好ましくは10〜150質量部、より好ましくは15〜120質量部の量で含む。吸水性フィラー(B)の配合量が上記下限未満の場合には、充分な吸水機能が得られず、上記上限を超えると、製膜性が低下する場合がある。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、上記成分の他に、必要に応じて、スリップ剤、リン系、フェノール系、硫黄系などの酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの耐候剤、銅害防止剤、芳香族リン酸金属塩系、ゲルオール系などの造核剤、グリセリン脂肪酸モノエステルなどの帯電防止剤、着色剤、芳香剤、抗菌剤、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、タルク、金属水和物などのフィラー、グリセリン脂肪酸エステル系、パラフィンオイル、フタル酸系、エステル系などの可塑剤等の添加剤を含んでいてもよい。
上記スリップ剤は、吸水性樹脂組成物の製造時の溶融混練作業性を向上させ、また製膜時のダイカスや目脂などの発生を回避することが出来る。スリップ剤としては、ステアリン酸カルシウムなどの金属石鹸、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどの脂肪酸アミド、ポリエチレンワックス、シリコンガム、シリコンオイルなどが挙げられる。スリップ剤の添加量は、ポリエチレン系樹脂組成物(A)100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、上記成分(A−1)、(A−2)および(B)ならびに所望により任意の添加剤を溶融混練することにより得ることが出来る。溶融混練は、二軸押出機、バンバリーミキサーなどの慣用の装置を使用して行うことができる。混練温度は、製膜時の吸湿発泡トラブルを回避するため、フィルム製膜温度よりも高くすることが好ましい。得られた組成物は、造粒機によってペレット化した後、Tダイ等を使用する通常の製膜に付することができるが、その場合には、ペレット化を、ホットカット法などの水を介在させない方法で行うことが好ましい。また真空ベントを設けたり、ギヤポンプ等を介したりしても良い。更に、ペレット化することなく、直接製膜に付する方法、例えば、溶融混練して得られた組成物をそのままギヤポンプ等を介してTダイに送って製膜する方法を使用することもできる。
制電性樹脂層(II)
制電性樹脂層(II)は、23℃の温度および10%の相対湿度での表面固有抵抗が、1.0×10Ω/sq.〜1.0×1012Ω/sq.、好ましくは1.0×10Ω/sq.〜1.0×1011Ω/sq.、より好ましくは1.0×10Ω/sq.〜1.0×1010Ω/sq.である。上記上限を超えると、制電性が十分でなく、その結果、電子機器部品への塵埃の吸着が生じて電子機器部品の性能低下や故障を招く場合がある。上記表面固有抵抗が1.0×1010Ω/sq.以下であると、静電気の電子機器部品への直接的作用をも回避することができるので、特に好ましい。
制電性樹脂層を構成する樹脂組成物は、上記表面固有抵抗を有するものであれば特に制限されないが、制電性と製膜性とのバランスの点から、下記成分(a)〜(c)を含む組成物が好適に使用され得る。
(a)熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーおよび未加硫ゴムから成る群から選ばれる1以上の高分子化合物20〜80質量部、および
(b)表面が、ポリアルキレンエーテル、ポリエステル、ポリアミン、ポリスルフィドおよびポリアクリロニトリルから成る群から選ばれる少なくとも1種の(共)重合体で被覆された無機充填材80〜20質量部
からなる合計100質量部、ならびに
(c)Li 、Na、K、Mg 2 +およびCa2+ から成る群から選ばれるカチオンとCl、Br、F、I、NO 、SCN、ClO 、CFSO 、BF 、(CFSOおよび(CFSOから成る群から選ばれるアニオンとによって構成される1以上の金属塩0.01〜20質量部。
(a)成分
(a)成分は、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーおよび未加硫ゴムから成る群から選ばれる1以上の高分子化合物であれば、特に制限されない。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル;ポリスチレンやアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)などのポリスチレン系樹脂;ポリ(メタ)アクリレート系樹脂;低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステルおよび脂肪族系ポリエステル;液晶ポリエステル;ポリフェニレンオキシドなどの芳香族ポリエーテル;ポリアセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリイミド;ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのスルホン系ポリマーなどが挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミドなどの有極性エラストマー;ポリオレフィン系、ポリスチレン系(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体(部分水添スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、SBBS)、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS))などの無極性型エラストマーなどが挙げられる。
未加硫ゴムとしては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレンターポリマー(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(AR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。
これらの熱可塑性エラストマーや未加硫ゴムには可塑剤やプロセス油などの加工油が含まれていてもよい。
(a)成分は、吸水性樹脂組成物との共押出によってより経済的に多層フィルムを得るという観点から、(a)ポリオレフィン系樹脂であるのが好ましく、例えば、ホモポリプロピレン、少量のエチレンおよび/または1−ブテンがランダム共重合されたランダムポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂および高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂が挙げられる。これらの2種以上の樹脂を組み合わせて用いることもできる。
中でも、MFR(230℃、21.18N)が1〜10 g/10minであるポリプロピレン系樹脂およびMFR(190℃、21.18N)が0.5〜5 g/10minであるポリエチレン系樹脂が製膜性の点から特に好ましい。
(b)成分
(b)成分は、表面処理された無機充填材であって、無機充填材の表面が、アルキレンエーテル、エステル、アミン、スルフィドおよびアクリロニトリルのいずれか1つ以上を繰り返し単位とするセグメントを有する(共)重合体の1以上によってコーティングされもしくはグラフト結合されて被覆されたものである。
無機充填材は、特に限定されるものではなく、公知の無機充填材を使用することができるが、なかでも炭酸カルシウム、タルク、雲母、ガラス、珪酸カルシウム、セリサイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、モンモリロナイト、ゼオライト、酸化チタン、カオリンなどが好ましい。無機充填材の形態は特に限定されるものではなく、粒子径の小さなものから繊維状、テトラポット状、鱗片状などのアスペクト比の大きな形状のものまで使用可能である。
無機充填材の表面処理(被覆)に使用される上記(共)重合体は、有極性官能基であるエステル基、エーテル基、水酸基、アミン基、カルボニル基、エポキシ基、スルホン酸基や、無極性基であるアルキル基、アルキル基置換フェニル基等を骨格中に有していてもよい。好ましい(共)重合体は、アルキレンエーテルおよび/またはエステルを繰り返し単位とするセグメントを有するものである。
アルキレンエーテルおよび/またはエステルを繰り返し単位とするセグメントを有する(共)重合体は、様々な合成方法によって得られ、その形態にも様々のものがある。一例として、末端水酸基を有する直鎖状または分岐状ポリマーポリオールタイプおよびそれらの末端水酸基がメチル基、エチル基、t−ブチル基などでキャップされたタイプが挙げられる。
上記直鎖状ポリマーポリオールとして、例えば、末端に水酸基を有し、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびブタンジオールの群から選ばれる少なくとも1種の化合物を構成成分として有する直鎖状ブロック共重合体を骨格として有するものが挙げられる。
上記分岐状ポリマーポリオールとしては、例えば、ケン化度30〜100モル%、数平均分子量1,000〜20,000およびエチレン単位含量1〜90質量%のエチレン・飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体ケン化物にアルキレンオキサイドを、上記ケン化物中の水酸基数に対して10モル%〜50モル%の割合でグラフトしたものが挙げられる。
上記エチレン・飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体の製造方法については特に制限はなく、公知の方法、例えば高圧ラジカル重合法などにより製造し得る。飽和カルボン酸のビニルエステルとしては、特に限定はないが、炭素数が2〜4程度の脂肪族カルボン酸のビニルエステルが好ましく、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどが挙げられ、またこれらは適宜混合して使用することもできる。これらの中では酢酸ビニルが最も好ましい。
また、エチレンおよび飽和カルボン酸ビニルエステルのほかに、更なる共重合原料として、少量のα,β-不飽和カルボン酸のアルキルエステル、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどおよびこれらの2種以上の混合物などを用いることもできる。エチレン・飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体のエチレン含有量は、通常、1〜90質量%程度、好ましくは40〜80質量%程度である。また、数平均分子量は、通常、1,000〜20,000程度、好ましくは1,000〜10,000程度である。
エチレン・飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体のケン化についても、その方法に特に制限はなく、例えばエチレン・飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体とアルコールをアルカリ触媒の存在下で加熱してケン化することができる。次いで、アルコールを除去した後、アルキレンオキサイドを導入し、グラフトすることができる。ケン化方法では、用いるエチレン・飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体の分子量、飽和カルボン酸ビニルエステルの含有量などに起因する特性に応じて、アルコールとの不均一液相系、アルコール溶液系、アルコール中ペレット分散系などが適宜採用できる。ケン化度は、エチレン・飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体の飽和カルボン酸ビニルエステル含量によっても変わり、特に限定されないが、通常、30〜100モル%程度、好ましくは50〜100モル%程度である。
エチレン・飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体ケン化物へのアルキレンオキサイドの付加方法については特に制限はないが、該ケン化物に、アルキレンオキサイドを気体状で反応させることが一般的である。アルキレンオキサイドとしては特に限定はないが、通常、炭素数が2〜4程度のものが好ましく、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、環状エーテルである共重合体変性物などが挙げられる。中でも、エチレンオキサイドが好ましく使用される。アルキレンオキサイドは、2種以上使用することもでき、この場合、ブロック付加してもランダム付加しても良い。アルキレンオキサイドの付加量は、特に限定はないが、ケン化物100質量部に対して、通常、20〜1,000質量部程度、好ましくは50〜500質量部程度である。
エチレン・飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体ケン化物のアルキレンオキサイド付加物は、エチレン・飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体をケン化して飽和カルボン酸ビニルエステルの一部もしくはすべてをビニルアルコール構造に変化させたものに、アルキレンオキサイドをグラフトすることにより製造したものであり、主鎖がポリエチレン単位、側鎖がポリオキシアルキレン単位を有した構造と推定される。
本発明で用いるエチレン・飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体としては、市場入手性、価格などから、エチレン・酢酸ビニル共重合体が特に好適であり、酢酸ビニル単位含有量5〜50質量%、数平均分子量が1,000〜5,000のものが、バルクケン化反応が容易なことからより好適である。
エチレン・酢酸ビニル共重合体のケン化度は、30〜100モル%の範囲であると、(a)成分との相溶性がよくなるので好ましい。エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物へのアルキレンオキサイド付加量は、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物に対して50〜1,000重量%であることが、(a)成分との相溶性および帯電防止性の点でより好ましい。
上記エチレン・飽和カルボン酸ビニルエステル共重合体ケン化物のアルキレンオキサイド付加物のほかに、上記分岐状ポリマーポリオールとして、末端に水酸基を有するポリマーポリオールであって、3官能ポリオール構造へアルキレンオキサイドをグラフトして得られる分岐状ポリマーポリオールも使用可能である。3官能ポリオール構造の3官能ポリオールとしては、ピロガロール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼンなどのトリヒドロキシ芳香族化合物、グリセリン1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタンなどの脂肪族トリオール、トリエタノールアミンなどのトリアルコールアミン類などが挙げられる。
また、スチレン・無水マレイン酸共重合体とポリアルキレンオキシドモノアルキルエーテルとの反応によって得られる分岐状ポリマーポリオールも使用可能である。例えば、スチレン・無水マレイン酸共重合体の数平均分子量が1,000〜400,000で、無水マレイン酸に対するスチレンの共重合モル比が1/1〜1/9であり、ポリアルキレンオキシドモノアルキルエーテルの数平均分子量が100〜5,000であり、該ポリアルキレンオキシドモノアルキルエーテルが下記式(1)で示される分岐状ポリマーポリオールが挙げられる。
1O−(CH2−CH−O)m−H
│ ………(1)
2
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキレン基、R2は水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、mは5〜100の整数を示す。)
上記ポリアルキレンオキシドモノアルキルエーテルとしては、単独のみならず、2種以上の組合せ(例えば、式(1)においてR2が水素のものとメチル基のもの)であっても良い。中でも、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテルが、スチレン・無水マレイン酸共重合体との反応性の面で好ましい。
上記分岐状ポリマーポリオールとして、ポリアルキレンオキシドモノアルキルエーテルの末端水酸基とスチレン・無水マレイン酸共重合体の酸無水物基との反応による、ポリスチレンを主鎖としてポリアルキレンオキシドモノアルキルエーテルを側鎖とする櫛形ポリマーポリオールも挙げられる。上記櫛形ポリマーポリオールでは、ポリアルキレンオキシドモノアルキルエーテルの数平均分子量が100未満であるとポリマーポリオール自体がもつ帯電防止機能が不充分となり、一方、5,000を超えるとスチレン・無水マレイン酸共重合体との反応性が劣る。式(1)のR1の炭素数が4を超えると、イオン伝導性が劣る。
これらの分岐状ポリマーポリオールも、それらの水酸基数に対するアルキレンオキサイドのグラフト量が10モル%〜50モル%であることが望ましい。50モル%を超えると結晶化などが起こり固体状となり取扱いが困難となり、一方、10モル%未満では(c)成分の溶解が不充分となるほか、制電性が低下する。
上記アルキレンエーテルおよび/またはエステルを基本繰り返し単位とするセグメントを有する(共)重合体として、芳香族イソシアナート、脂肪族イソシアナートなどの鎖延長剤を使用して得られる直鎖状または分岐状ポリエーテルブロック共重合型ポリマーポリオールも使用可能である。このような構造体の例としては、セグメント化ポリウレタンエラストマーなどを挙げることができる。
また、上記アルキレンエーテルおよび/またはエステルを基本繰り返し単位とするセグメントを有する(共)重合体として、ハードセグメントおよびソフトセグメントからなるエラストマー骨格のものも使用可能である。例えば、ハードセグメントとしてポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル構造を有するものであって、ソフトセグメントとしてポリエーテル構造を有するポリエステル/ポリエーテル型、またはソフトセグメントとしてポリエステル構造を有するポリエステル/ポリエステル型のエラストマーが挙げられる。上記ポリエステル/ポリエーテル型は、例えば、テレフタル酸ジメチルと1,4ブタンジオールならびにポリテトラメチレンエーテルグリコールなどを出発原料として、エステル交換反応、重縮合反応によって合成され得る。
また、上記アルキレンエーテルおよび/またはエステルを基本繰り返し単位とするセグメントを有する(共)重合体として、ポリアミドエラストマーも使用可能である。ポリアミドエラストマーとは、ポリアミド拘束相と、ソフトセグメントとしてのポリエーテルおよび/またはポリエステル構造を有する熱可塑性エラストマーの総称である。例えば、ポリアミド拘束相としてPA(ポリアミド)12成分を用いたポリアミドエラストマーは、ラウリルラクタム、ジカルボン酸およびポリエーテルジオールを原料とし、ラクタム開環触媒としての水を加えて、加圧加熱下の反応でカルボキシルテレケリックナイロン12オリゴマーを得、次にポリエーテルジオールとの縮合反応によって得られる。ポリアミド拘束相としては、PA(ポリアミド)6なども用いられる。
本発明に使用できるポリアミドエラストマーは、基本構造的にはポリエステルブロックポリアミドエラストマー、ポリエーテルエステルブロックポリアミドエラストマーである。構成要素として使用されるジオールの種類などによって様々な特性を持ったポリアミドエラストマーが使用できる。
上記ポリアミドエラストマーは、一般的にはガラス転移点(Tg)が40℃以下であるのが好ましく、さらに好ましくは25℃以下である。Tgが40℃を超えると、通常の使用環境下では充分な導電性を得ることができない。また、重量平均分子量は、1,000〜100,000であるのが好ましく、さらに好ましくは5,000〜50,000である。
また、上記アルキレンエーテルおよび/またはエステルを基本繰り返し単位とするセグメントを有する(共)重合体として、脂肪族ポリエステルも使用可能である。脂肪族ポリエステルは、工業的には、脂肪族ジカルボン酸と過剰のジオールを出発原料として脱水重縮合反応および脱ジオール反応によって合成されるもの、カプロラクトンの開環重合などによって合成されるものなどが挙げられる。
本発明に用いられる脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートなどの、コハク酸と1,4−ブタンジオールの2元系縮合物、コハク酸およびアジピン酸と1,4−ブタンジオールの3元系縮合物からなるものが挙げられる。また、これらの生分解性を損わない範囲で、機能性の改質を目的として、イソシアネート基、ウレタン基、芳香族環などを構造中に導入したものや、ポリ乳酸などを共重合したコポリエステルのような種々の共重合体も用いることができる。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートおよびそれらの共重合体など、各種高分子量タイプが工業生産されている。脂肪族ポリエステルとして、生分解性機能がある市販品を用いることができ、例えば、ポリブチレンサクシネートアジペートである昭和高分子(株)製の生分解性脂肪族ポリエステル(商品名ビオノーレ)やポリカプロラクトンであるダイセル化学工業(株)製の商品名CELGREENPH7などがあり、用途や特性に応じて任意に選定することができる。
上記脂肪族ポリエステルは、一般的にはガラス転移点が30℃以下であるのが好ましい。30℃を超えると、充分な制電性を得ることができなくなることがある。
また、上記アルキレンエーテルおよび/またはエステルを基本繰り返し単位とするセグメントを有する(共)重合体として、ポリエーテル系アミド樹脂も使用可能である。上記ポリエーテル系アミド樹脂は、ポリエーテルセグメントを有する高分子の非イオン系界面活性剤の1種であり、ポリエーテルエステルアミド樹脂、ポリエーテルアミドイミド樹脂などが挙げられる。具体的には、エチレングリコール・アミド共重合体、エチレングリコール・メタクリレート共重合体、エチレングリコール系・エステルアミド共重合体など、エーテルセグメントとアミドセグメントを共重合した制電性エラストマーである。中でも、両末端にカルボキシル基を有するポリアミドとビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物および/またはポリオキシアルキレングリコールから誘導されるポリエーテルエステルアミド樹脂が好ましい。
アミン、スルフィドおよびアクリロニトリルのいずれか1つ以上を基本繰り返し単位とするセグメントを有する(共)重合体としては、ポリアクリロニトリル、トリアジンジチオール化合物と脂肪族ジハライドとの重縮合反応によるポリスルフィド系熱可塑性エラストマー、ポリウレア樹脂の主原料として用いられるポリアミンや非タンパク性脂肪族化合物などが挙げられる。
上記(共)重合体による無機充填材の表面処理方法は、特に限定されるものではない。例えば、特開平10−176079号公報などに例示されているように、無機充填材の表面を水溶性カチオン系、アニオン系高分子界面活性剤によって処理したものを上記(共)重合体と共に有機溶媒に溶解し、ヘンシェルミキサーやリボンミキサーなどを用いて混合させる方法などが挙げられる。上記水溶性カチオン系、アニオン系高分子界面活性剤としては、第1、2、3級アミン塩型カチオン系低分子、高分子界面活性剤および第4級アンモニウム塩型カチオン系低分子界面活性剤、または高分子界面活性剤が挙げられる。
上記(共)重合体によって被覆された無機充填材は、例えば、無機充填材100質量部に対し、上記(共)重合体を好ましくは0.5〜15質量部、さらに好ましくは1〜10質量部配合して得られる。上記の(共)重合体の量が0.5質量部未満では制電性が不十分であり、一方、上記(共)重合体が15質量部を超えると、制電性は良好であるが、被覆された無機充填材のベタツキが強くなって、得られる組成物の供給性に問題が生じる(つまり、安定的な吐出および押出が出来ない)ほか、(a)成分を可塑化する作用が加わって成形収縮率が大きくなり、変形および機械特性の低下を生じるため、製膜後のフィルムの巻取性、巻姿が低下することがある。
このようにして得られる、表面が上記の(共)重合体で被覆された無機充填材の平均粒径は0.05〜10.0μmが好ましく、より好ましくは0.1〜3.0μm、さらに好ましくは0.3〜2.0μmである。上記粒径が0.05μm未満の場合や、10.0μmを超える場合では、被覆された無機充填材の製造性や樹脂組成物中での分散性に問題がある。
(b)成分の量は、(a)成分と(b)成分の合計100質量部において、(a)成分20〜80質量部および(b)成分80〜20質量部となる量である。好ましくは(a)成分30〜70質量部および(b)成分70〜30質量部、さらに好ましくは(a)成分40〜60質量部および(b)成分60〜40質量部となる量である。(b)成分の配合割合が80質量部を超えると、制電性は良好であるが、製膜性やフィルム外観に劣るとともに機械特性の低下を招く。一方、(b)成分が20質量部未満では、制電性が不充分である。
(c)成分
(c)金属塩におけるカチオンは、Li 、Na、K、Mg 2 +およびCa2+ から成る群から選ばれる。好ましくは、イオン半径の小さいLiおよびNaであり、特に好ましくはLiである。アニオンは、Cl、Br、F、I、NO 、SCN、ClO 、CFSO 、BF 、(CFSOおよび(CFSOから成る群から選ばれる。好ましくは、ClO 、CFSO 、(CFSOおよび(CFSOである。上記好ましいアニオンは、カチオンの解離を促進させ、より少ない添加量で効果を生じるという利点がある。
上記カチオンおよびアニオンによって構成される金属塩類は数多くあるが、中でも、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドLi・N(CF3SO22、ナトリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドNa・N(CF3SO22、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドLi・C(CF3SO23、ナトリウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドNa・C(CF3SO23を用いることが好ましく、さらに好ましくは、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドおよびリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドである。これらは、より少ない添加量で制電性樹脂組成物の固有抵抗を低下させることができる。上記制電性樹脂組成物は、これらの金属塩を少なくとも1種含有する。
(c)成分の量は、(a)成分と(b)成分の合計100質量部に対して、0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜20質量部、特に好ましくは0.5〜10質量部である。上記量が0.01質量部未満では、充分な制電性および良好な製膜性、フィルム外観を得ることが難しく、一方、20質量部を超えると、得られる組成物の粘度が著しく増大し、成形加工が困難となるほか、機械特性や熱安定性の低下を招く場合がある。
(c)成分は、好ましくは、(d)水および/またはアルコール系溶媒に溶解させて、溶液の状態で配合される。その場合、(d)成分100質量部に対して(c)成分を5〜100質量部の割合で溶解させた溶液を、(a)成分と(b)成分の合計100質量部に対して、(c)成分が0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜20質量部、特に好ましくは0.5〜10質量部になるような量で配合する。
(d)水および/またはアルコール系溶媒としては、水を主な成分として含む溶媒、例えば、一般的な水,純水、蒸留水、またはイオン交換水など、およびアルコールを主な成分として含む溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどのC1〜C4アルコールが挙げられる。これらの溶媒は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらの溶媒には、アセトンなどの親水性(特に水溶性)有機溶媒を添加してもよい。
上記溶媒は、金属塩の溶解性、解離安定性および電気伝導性の促進に効果がある。
なお、上記溶媒は、上記制電性樹脂組成物を製膜する前に除去されていることが好ましい。上記溶媒が残っていると、上記制電性樹脂組成物からなる層(II)と上記吸水性樹脂組成物からなる層(I)を有する多層フィルムにおいて、層(I)が上記溶媒を吸収して、層(I)の吸水性が低下するからである。上記溶媒は、上記制電性樹脂組成物の通常の溶融混練によってほぼ完全に揮発除去され得る。
本発明における制電性樹脂層(II)は、上記制電性樹脂組成物における(c)成分に代えて(e)極性基を有する熱可塑性樹脂を含む組成物で構成してもよい。
(e)成分
(e)成分は、極性基を有する熱可塑性樹脂であり、(a)成分以外の、分子構造内に極性基を有する熱可塑性樹脂であればいかなるものでもよい。好ましくは、(e−1)オレフィン成分を主体とするブロック(α)と親水性成分を主体とするブロック(β)とを有するブロックコポリマーおよび/またはグラフトコポリマー、(e−2)ポリエーテルエステルアミドおよび(e−3)ポリウレタンエラストマーであり、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(e−1)成分
(e−1)成分であるコポリマーは、ブロック(α)とブロック(β)とが、好ましくはエステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合およびイミド結合よりなる群から選ばれる少なくとも1種の結合を介して結合した構造を有する。上記コポリマーは公知であり、例えば、特開2001−278985号公報に記載されているものを使用することができる。市販品としては、例えば、ペレスタット300(商標、三洋化成工業株式会社製)が挙げられる。
上記オレフィン成分を主体とするブロック(α)としては好ましくは、カルボニル基(好ましくは、カルボキシル基、以下同じ。)をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(α1)、水酸基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(α2)、アミノ基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(α3)、カルボニル基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(α4)、水酸基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(α5)、アミノ基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(α6)、またはカルボニル基をポリマーの主鎖から分岐するかたちで導入したポリオレフィン(α7)などを使用し得る。これらのうち、変性のし易さから、カルボニル基を有するポリオレフィン(α1)および(α4)がより好ましい。
(α1)としては、両末端が変性可能なポリオレフィンを主成分(含有量50重量%以上、好ましくは75重量%以上)とするポリオレフィン(α0)の両末端にカルボニル基を導入したものが用いられる。ここで、(α0)としては、炭素数2〜30のオレフィンの1種または2種以上の混合物(好ましくは炭素数2〜12のオレフィン、特に好ましくはプロピレンおよび/またはエチレン)の重合によって得られるポリオレフィン、および高分子量のポリオレフィン(好ましくは炭素数2〜30のオレフィン、より好ましくは炭素数2〜12のオレフィンの重合によって得られるポリオレフィン、特に好ましくはポリプロピレンおよび/またはポリエチレン)の熱減成法によって得られる低分子量ポリオレフィンが挙げられる。(α2)としては、(α0)の両末端に水酸基を導入したものが用いられる。(α3)としては、(α0)の両末端にアミノ基を導入したものが用いられる。
(α4)としては、片末端が変性可能なポリオレフィンを主成分(含有量50重量%以上、好ましくは75重量%以上)とするポリオレフィン(α00)の片末端にカルボニル基を導入したものが用いられる。(α5)としては、(α00)の片末端に水酸基を導入したものが用いられる。(α6)としては、(α00)の片末端にアミノ基を導入したものが用いられる。(α7)としては、(α00)の主鎖から分岐した形でカルボニル基を導入したものが用いられる。
親水性成分を主体とするブロック(β)としては、ポリエーテル含有親水性ポリマー、好ましくは、ポリエーテルセグメントを有するもの、ポリエーテルエステルセグメントを有するもの、ポリエーテルアミドセグメントを有するもの、ポリエーテルエステルアミドセグメントを有するものが使用できる。
ブロック(β)は、制電性の点から、好ましくは、体積抵抗率(後述のΑSTM D257に準じて測定される値)が1×10〜1×1011Ω・cm、より好ましくは1×10〜1×10Ω・cmである。
(e−2)ポリエーテルエステルアミド
(e−2)成分は、ポリエーテルセグメントを有する高分子の非イオン系界面活性剤の1種である。(e−2)成分の具体例としては、ポリエチレングリコール・ポリアミド共重合体、ポリエチレングリコール系ポリエステルアミド共重合体などの、ポリエーテルセグメントを有する制電性エラストマーが挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。好ましくは、両末端にカルボキシル基を有するポリアミドとビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物および/またはポリオキシアルキレングリコールから誘導されるポリエーテルエステルアミド樹脂が使用される。
(e−3)ポリウレタンエラストマー
(e−3)成分は、ウレタン基を持つ熱可塑性エラストマーであり、ソフトセグメントとしての、長鎖グリコールとイソシアネートの反応で得られるポリウレタンと、ハードセグメントとしての、短鎖グリコールとイソシアネートからなるポリウレタンとの直鎖状のマルチブロックコポリマーであり、必要に応じて、架橋剤(鎖延長剤)も用いられる。
上記長鎖グリコールとしては、ポリエーテル系としてポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールあるいはそれらの共重合体が挙げられ、ポリエステル系としてポリアジペート、ポリラクトン、ポリカーボネートなどが挙げられる。
上記短鎖グリコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのような脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールなどのような脂環族グリコール、ハイドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルのような芳香族グリコールが通常使用される。
上記イソシアネートとしては、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4′&2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)などが用いられる。
上記架橋剤(鎖延長剤)としては、3,3−ジクロロ−4,4−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)などの芳香族ジアミンなどが用いられる。
(e)成分は、ガラス転移温度が60℃以下のものが好ましく、さらに好ましくは50℃以下、特に好ましくは40℃以下、より好ましくは、30℃以下である。ガラス転移温度が60℃を超えると、充分な制電性効果を得ることができない。
(e)成分の配合量は、上記(a)および(b)成分の合計100質量部に対し、3〜40質量部、さらに好ましくは4〜30質量部、特に好ましくは5〜20質量部である。この量が3質量部未満では、環境依存性の少ない制電性能が得られなく、一方、40質量部を超えると機械特性、成形加工性が著しく低下する。なお、制電性は一般に、環境湿度の影響を受け得る。
制電性樹脂組成物が上記(a)、(b)および(e)成分を含むとき、さらに上記(c)成分を含んでもよい。(c)成分を含むことにより、制電性をさらに高めることができる。この場合の(c)成分の量は、(a)成分と(b)成分の合計100質量部に対して、0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜20質量部、特に好ましくは0.5〜10質量部である。上記量が0.01質量部未満では、充分な制電性および良好な製膜性、フィルム外観を得ることが難しく、一方、20質量部を超えると、得られる組成物の粘度が著しく増大し、成形加工が困難となるほか、機械特性や熱安定性の低下を招く場合がある。
(c)成分を配合するときは、上記で述べたのと同様に、(d)水および/またはアルコール系溶媒に溶解させて、溶液の状態で配合するのが好ましい。
上記制電性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわないかぎり、その他の無機充填材、安定剤、着色剤、強化用ゴム、エラストマー成分、可塑剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、安定剤、補強剤、滑剤、発泡剤、耐候(光)剤、金属粉などの添加剤を目的に応じて任意に配合することができる。
上記制電性樹脂組成物は、上記(a)および(b)成分、ならびに(c)成分(またはその溶液)および/または(e)成分を、所望により任意の添加剤と共に、通常の方法に従って溶融混練することにより得ることができる。具体的には、タンブラー、ヘンシェルミキサーなどの予備混合機に上記成分を仕込み、均一に混合する。その後、混合物を押し出し機に供給して溶融混練し、ダイから押し出すとともにペレタイザーによりペレット化する。押し出し機としては、ベント付きの単軸、二軸異方向、二軸同方向押し出し機が望ましい。また、押し出し機に代えて、スーパーミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、タンブラー、コニーダーなどの混練機を用いても良い。混練の温度としては、100〜280℃が好ましく、さらに好ましくは120〜250℃である。上記溶媒(d)は、配合された場合、この混練時にほぼ完全に揮発除去される。
吸水性樹脂層(I)と制電性樹脂層(II)との積層はどのような方法でも良く、制限されないが、経済性の観点から制電性樹脂層(II)のベース樹脂(a)としてポリオレフィン系樹脂を選択し、共押出方法で製膜することが好ましい。積層は、例えば、吸水性樹脂層(I)の片面または両面に制電性樹脂層(II)を有するように行われる。
本発明の多層フィルムは、吸水性、制電性および耐熱性に優れるとともに、良好な外観および均一な膜厚を有し、半導体、プリント基板、ICチップ、読取ヘッドなど電子機器部品の包装フィルムとして特に有用である。上記包装フィルムとして使用するとき、フィルムの機能とコストとのバランスの点から、吸水性樹脂層(I)の両面に制電性樹脂層(II)を積層し、最外層としての制電性樹脂層(II)の表面固有抵抗を1.0×1011Ω/sq.レベルにして塵埃の付着を防止し、最内層としての制電性樹脂層(II)の表面固有抵抗を1.0×10Ω/sq.レベルにして静電気の電子機器部品への直接的トラブルを防止するのが好ましい。
本発明の多層フィルムは、包装フィルムとしての防湿機能さらに高めるために、アルミニウムの層(IV)をさらに設けることができる。アルミニウムの層(IV)としては、通常のアルミニウム箔を使用することができる。例えば、東洋アルミニウム株式会社、三菱アルミニウム株式会社、日本製箔株式会社、サン・アルミニウム工業株式会社、住軽アルミ箔株式会社、東海アルミ箔株式会社などから市販されている各種グレードのアルミニウム箔を使用することができる。アルミニウムの層(IV)を有する多層フィルムとして、例えば、吸水性樹脂層(I)の一方の面に、最内層としての制電性樹脂層(II)を有し、他方の面に、酸変性ポリオレフィン樹脂の層(III)、アルミニウムの層(IV)およびポリアミドの層(V)が順次積層されたフィルムが挙げられる。また、ポリアミドの層(V)の露出面に保護層としてのポリエステル系樹脂の層(VI)をさらに設けてもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂の層(III)は、吸水性樹脂層(I)とアルミニウムの層(IV)との間に十分な接着強度を付与するための層である。層(IV)を構成する酸変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂であれば何でも良い。不飽和カルボン酸の例としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸が挙げられ、その誘導体の例としては、例えば、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水フマル酸等のエステルおよび無水物が挙げられる。上記ポリオレフィン樹脂としては、直鎖状ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル(VA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート(EA)共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体などのエチレン系重合体、プロピレン系重合体、スチレン系エラストマーが挙げられる。酸変性ポリオレフィン樹脂は、単独で、または2以上を組み合わせて使用することができる。また、本発明の目的に反しない範囲において、酸変性されていないポリオレフィン樹脂を配合しても良い。
上記酸変性ポリオレフィン樹脂の具体例としては、三井化学(株)製のアドマー(商品名)、日本ポリオレフィン(株)製のアドテックス(商品名)、クロンプトン社製のポリボンド(商品名)および住友化学(株)製のボンドファースト(商品名)が挙げられる。
ポリアミドの層(V)は、ポリアミドの優れた機械的強度を利用して、多層フィルムの耐久性を高めるための層である。使用されるポリアミドは特に制限されず、例えばナイロン6 、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9T、ナイロンM5T、ナイロンナイロン612、ケブラー(Kevlar、デュポン社の商標)、ノーメックス(Nomex、デュポン社の商標)を包含する。
ポリアミドの市販例としては、宇部興産(株)製のUBEナイロン(ナイロン6)、UBEナイロン66(ナイロン66)、UBESTA(ナイロン12)、東レ(株)製のアラミン(ナイロン6、66、610など)、東洋紡績(株)製の東洋紡ナイロン(ナイロン6、66、6Tなど)、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のノバミッド(ナイロン6、66、12)、ユニチカ(株)製のユニチカナイロン6、ユニチカナイロン66、旭化成ケミカルズ(株)製のレオナ(ナイロン66)が挙げられる。
ポリエステル系樹脂の層(VI)を構成するポリエステル系樹脂は、特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)を包含する。
ポリエステル系樹脂の市販例としては、東洋紡績(株)製のバイロペット(PETおよびPBT)、東レ株式会社製のトレコン(PBT)、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のノバデュラン(PBT)、ユニチカ(株)のPET樹脂、および帝人化成(株)のPET樹脂、テオネックス(PEN)およびPBN樹脂が挙げられる。
吸水性樹脂層(I)への酸変性ポリオレフィン樹脂の層(III)の積層は、層(I)の上に層(III)のための溶融フィルムを押し出す押出ラミネート法、層(I)と層(III)とを熱ロールで挟み、互いに融着させる熱ラミネート法、層(I)と層(III)とを接着剤により貼り合わせるドライラミネート法などによって行うことができる。あるいは、層(I)および(III)のための樹脂を用いて共押出法により積層することもできる。上記接着剤としては、ポリオール系主剤とイソシアネート系硬化剤との通常の二液タイプのものを使用することができる。具体的には、三井化学ポリウレタン(株)製のタケラック(ポリオール系主剤)/タケネート(イソシアネート系硬化剤)二液タイプを挙げることができる。
酸変性ポリオレフィン樹脂の層(III)へのアルミニウムの層(IV)の積層および層(IV)の上へのポリアミドの層(V)の積層は、ドライラミネート法による接着によって行うことができる。接着剤としては、上記で挙げたものを使用することができる。
ポリアミドの層(V)へのポリエステル系樹脂の層(VI)の積層は、上記と同様にドライラミネート法による接着によって行うことができる。接着剤は、上記で挙げたものを使用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、使用した材料は以下の通りである。
材料
KF271:日本ポリエチレン(株)製の直鎖状低密度ポリエチレン、Tm=127℃、ΔH=127J/g、Xc110=26%、Xc120=23%、MFR=2.4g/10分、密度913kg/m
SP2040:プライムポリマー(株)製の直鎖状低密度ポリエチレン、Tm=117℃、ΔH=147J/g、Xc110=28%、MFR=4.0g/10分、密度920kg/m
UF240:日本ポリエチレン(株)製の直鎖状低密度ポリエチレン、Tm=123℃、ΔH=136J/g、Xc110=47%、MFR=2.1g/10分、密度920kg/m
SP2520:プライムポリマー(株)製の直鎖状低密度ポリエチレン、Tm=121℃、ΔH=154J/g、Xc110=38%、Xc120=19%、MFR=1.7g/10分、密度928kg/m
F−730NV:プライムポリマー(株)製のプロピレンランダムコポリマー、Tm=139℃、Xc120=66%、MFR=7g/10分
SP4530:プライムポリマー(株)製の高密度ポリエチレン、Tm=132℃、ΔH=185J/g、Xc110=80%、Xc120=72%、MFR=2.8g/10分、密度942kg/m
アドマーXE070:三井化学(株)製、無水マレイン酸変性エチレン系重合体、MFR=3 g/10分
アドマーQE060:三井化学(株)製、無水マレイン酸変性ポリプロピレン
モレキュラーシーブ4A:ユニオン昭和(株)製のモレキュラーシーブ4Aパウダー、D99=9.9μm、D50=2.5μm
無水硫酸マグネシウム−1:馬居化成工業(株)製の乾燥硫酸マグネシウムSN−00の粉砕物、D99=3.5μm、D50=1.3μm
無水硫酸マグネシウム−2:馬居化成工業(株)製の乾燥硫酸マグネシウムSN−00、D99=118μm、D50=24μm
LBT−77:堺化学工業(株)製のポリエチレンワックス
AFF−EML33re11:ポリアルキレンエーテルで表面被覆された炭酸カルシウム、ファイマテック(株)製、平均粒子径1.0μm
イミドリチウム塩:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
ペレスタット300:三洋化成工業(株)製((e−1)成分のための材料)
なお、上記F−730NVおよびSP4530については、DSC測定を、230℃で5分間保持した後、10℃/分の降温速度で−10℃まで冷却し、−10℃で5分間保持した後、10℃/分の昇温速度で230℃まで加熱するという温度プログラムを使用して行った。
実施例1〜8および比較例1〜8
吸水性樹脂組成物の製造
表1に示す配合量(質量部)の成分をドライブレンドし、(株)日本製鋼所の二軸押出機TEX28によりダイス出口樹脂温度220℃で溶融混練して吸水性樹脂組成物を得た。
Figure 0005247232
制電性樹脂組成物の製造
表2に示す配合量(質量部)の成分をタンブラーミキサーでドライプレブレンドし、(株)日本製鋼所の二軸押出機TEX28によりダイス出口樹脂温度220℃で溶融混練して制電性樹脂組成物を得た後、ペレット化した。上記溶融混練の際、真空ベントを使用して、(d)成分(蒸留水)を揮発除去した。上記ペレットは、製膜のために下記Tダイへ供給する前に、さらに充分乾燥した。
Figure 0005247232
多層フィルムの製造
上記で得られた吸水性樹脂組成物および制電性樹脂組成物を用いて、株式会社プラスチック工学研究所の2種3層スタックプレートTダイにより製膜して、制電性樹脂層(II)/吸水性樹脂層(I)/制電性樹脂層(II)の厚さ比1/3/1の多層(3層)フィルム(全厚50μm、)を得た。なお、吸水性樹脂組成物については、上記溶融混練により得られたものをそのままギヤポンプを介して上記Tダイへ供給した(ギヤポンプ出口樹脂温度 220℃)。また、制電性樹脂組成物については、上記で得られた、十分に乾燥させたペレットを、30mm単軸押出機を使用し(単軸押出機出口樹脂温度220℃)、ギヤポンプを介して上記Tダイへ供給した(ギヤポンプ出口樹脂温度 220℃)。
製膜条件は以下の通りである。
Tダイ出口樹脂温度:220℃
チルロール温度:40℃(エアナイフ使用)
引取速度:20m/分
こうして得られた多層フィルムを、露点温度−50℃以下にしたガス置換型グローブボックス(アズワン株式会社のSG−1000)の中に保管した。得られた多層フィルムについて、下記(1)〜(5)の評価試験を行った。結果を表3に示す。
評価試験
(1)フィルム外観
A4サイズに裁断したフィルム5枚の両面を目視で観察し、以下の基準で判定した。なお、以下の基準におけるブツの数は、5枚のフィルムの両面における合計数である。
○:直径0.1mm以上のブツがない。
△:直径0.5mm以上のブツはないが、直径0.1mm〜0.5mm未満のブツが1〜10個ある。
×:直径0.5mm以上のブツが1以上ある。
(2)膜厚安定性
フィルム幅の中心付近についてマシン方向に2cm毎に20個所の膜厚を測定し、その標準偏差が1.5μm以下を「○」、1.5μmを超えて3.0μm以下を「△」、3.0μmを超えるものを「×」とした。
(3)大気中の水分吸収能力
内容積400cmの透明防湿袋に6000cmの多層フィルムと上記グローブボックス中で状態調節した神栄株式会社のハンディタイプ温湿度計Hygropalm1を入れてヒートシールにより封止し、封止直後(初期)、25℃×15分後および25℃x2時間後の絶対湿度を測定した。測定は25℃で行った。
(4)表面固有抵抗
多層フィルムを所定の環境(23℃、相対湿度10%)で24時間、状態調節した後、三菱化学(株)の測定器(商品名ハイレスタ)を使用してASTM D257(印加電圧500V)に準じて測定した
(5)耐熱性
株式会社東洋精機製作所のHG−100型ヒートシール試験機を用い、80〜130℃の所定のシール温度でフィルムをその縦延伸方向がT字剥離試験の引張方向になるように融着した(3秒間、圧力0.2MPa)。次いで、T字剥離試験を、株式会社東洋精機製作所のAE−CT型引張試験機を使用し、引剥幅25mm、引剥速度100mm/分、引剥角度180°で行った。より高いシール温度まで○判定になるものが耐熱性の良いフィルムである。
○:全くあるいは殆ど融着していない(引剥強度<0.1N/25mm)
△:僅かに融着している(引剥強度0.1〜2.0N/25mm)
×:融着している(引剥強度>2.0N/25mm)
Figure 0005247232
表3から明らかなように、実施例の多層フィルムはいずれも良好な外観および均一な膜厚(膜厚安定性)を有し、かつ制電性、吸水性および耐熱性に優れる。
一方、吸水性樹脂組成物における(A−1)成分としてプロピレン系重合体を使用した比較例1およびΔHおよびXc110が高過ぎるものを使用した比較例2では、上記組成物における吸水性フィラーの混和性に劣り、多層フィルムの外観および膜厚安定性が不満足なものになった。吸水性樹脂組成物における(A−2)成分の量が多すぎる比較例3では、(A−2)成分と吸水性フィラーとの相互作用が強過ぎて吸水性樹脂組成物の流動性に劣り、その結果、多層フィルムの外観および膜厚安定性が不満足なものになった。(A−2)成分を使用しなかった比較例4および吸水性フィラーの量が多過ぎる比較例5では、吸水性フィラーの分散が不十分であり、その結果、多層フィルムの外観および膜厚安定性が不満足なものになった。吸水性フィラーの量が本発明の範囲未満である比較例6および7の多層フィルムは、吸水性に劣る。吸水性フィラーとして粒度の粗いものを使用した比較例8では、上記フィラーの分散が不十分であり、その結果、多層フィルムの外観および膜厚安定性が不満足なものになった。なお、比較例1、3、5および8の多層フィルムは、外観および膜厚安定性が悪かったため、上記(3)〜(5)の試験を行わなかった。
実施例9〜10
アルミニウムの層を有する多層フィルムの製造
表4に示す構成の多層フィルムを、以下のように製造した。まず、上記で得た吸水性樹脂組成物および制電性樹脂組成物ならびに層(III)のための酸変性ポリオレフィン樹脂を用いて、株式会社プラスチック工学研究所の3種3層スタックプレートTダイにより、全厚60μm、層(II)/層(I)/層(III)の厚み比1/3/1のフィルムを製造した。製造条件は、Tダイ出口樹脂温度220℃、チルロール温度40℃(エアナイフ使用)、引取速度20 m/分であった。次いで、得られたフィルムの層(III)の上に、層(IV)としての無処理のアルミニウム箔(東洋アルミニウム(株)製、厚さ9μm)、層(V)としての二軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ株式会社製のエンブレムONUM、厚さ 15μm)および層(VI)としての二軸延伸PETフィルム(ユニチカ株式会社のEMBLET−S、厚さ25μm)を順次、平野金属のテストラミネーターMODEL200によりドライラミネートして積層した。各ドライラミネートにおいて使用した接着剤は、三井化学ポリウレタン株式会社のタケラックA−310/タケネートA−3=12/1(質量比)配合液である。ラミネート後、60℃×90時間の養生を行った。
得られた多層フィルムについて、下記の吸湿試験を行った。結果を表4に示す。
吸湿試験
10cm×10cmのフィルム片を2枚切出し、層(II)を内側とする袋状になるように互いに合わせ、四辺をシール幅1mmでヒートシールした。このとき、上記袋の中に、未開封瓶から取り出したシリカゲル(青色)3粒を封入した。この袋を、60℃、相対湿度90%の環境に30日間晒した後、シリカゲルを取り出し、その吸湿度合いをシリカゲルの色で判定した。
○:3粒とも未開封瓶のものとほとんど同じ青色のままである。
△:3粒とも少し薄い青色になった。
×:吸湿が進んで3粒とも青味の失せた色になった。
Figure 0005247232
表4から明らかなように、アルミニウムの層を有する多層フィルムは、苛酷な環境下でも内容物の乾燥状態を保つことができる。
参考例1および2
実施例9および10の多層フィルムにおいて層(I)および(II)を有せず、層(III)〜(VI)のみから成る多層フィルムをそれぞれ参考例1および2とし、層(III)が内側になるようにヒートシールして上記吸湿試験を行ったところ、結果は×であった。これは、ヒートシール部分からの水分の透過によりシリカゲルが完全に吸湿したためと考えられる。

Claims (9)

  1. 吸水性樹脂層(I)および制電性樹脂層(II)を有する多層フィルムであって、制電性樹脂層(II)は、23℃および相対湿度10%での表面固有抵抗が1.0×10Ω/sq.〜1.0×1012Ω/sq.であり、吸水性樹脂層(I)は、
    (A)ポリエチレン系樹脂組成物100質量部、および
    (B)吸水性フィラー7〜200質量部
    を含む吸水性樹脂組成物からなり、ポリエチレン系樹脂組成物(A)は、
    (A−1)下記(i)〜(iv)の特性を有するエチレン系重合体99〜60質量%、
    (i)DSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ融点(Tm)が110℃以上である、
    (ii)DSC融解曲線における融解熱量(ΔH)が90〜180J/gである、
    (iii)110℃における結晶化度(Xc110)が10〜60%である、および
    (iv)MFR(190℃、21.18N)が0.1g/10分以上10g/10分未満である、
    および
    (A−2)酸変性樹脂1〜40質量%
    を含み、ここで成分(A−1)と成分(A−2)の量の合計が100質量%であり、吸水性フィラー(B)は、30μm以下の粒子径(D99)および20μm以下の粒子径(D50)を有する、ここでD99およびD50はそれぞれ粒子径分布において粒子径の小さい方から累積して99質量%、および50質量%になる点における粒子径を言う、ところの多層フィルム。
  2. 制電性樹脂層(II)が、
    (a)熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーおよび未加硫ゴムから成る群から選ばれる1以上の高分子化合物20〜80質量部、および
    (b)表面が、アルキレンエーテル、エステル、アミン、スルフィドおよびアクリロニトリルのいずれか1つ以上を繰り返し単位とするセグメントを有する(共)重合体の1以上で被覆された無機充填材80〜20質量部
    からなる合計100質量部、ならびに
    (c)Li 、Na、K、Mg 2 +およびCa2+ から成る群から選ばれるカチオンとCl、Br、F、I、NO 、SCN、ClO 、CFSO 、BF 、(CFSOおよび(CFSOから成る群から選ばれるアニオンとによって構成される1以上の金属塩0.01〜20質量部
    を含む制電性樹脂組成物からなる、請求項1記載の多層フィルム。
  3. 制電性樹脂層(II)が、
    (a)熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーおよび未加硫ゴムから成る群から選ばれる1以上の高分子化合物20〜80質量部、および
    (b)表面が、アルキレンエーテル、エステル、アミン、スルフィドおよびアクリロニトリルのいずれか1つ以上を繰り返し単位とするセグメントを有する(共)重合体の1以上で被覆された無機充填材80〜20質量部
    からなる合計100質量部、ならびに
    (e)極性基を有する熱可塑性樹脂(ただし、(a)成分を除く)3〜40質量部
    を含む制電性樹脂組成物からなる、請求項1記載の多層フィルム。
  4. 制電性樹脂組成物が
    (c)Li 、Na、K、Mg 2 +およびCa2+ から成る群から選ばれるカチオンとCl、Br、F、I、NO 、SCN、ClO 、CFSO 、BF 、(CFSOおよび(CFSOから成る群から選ばれるアニオンとによって構成される1以上の金属塩0.01〜20質量部
    をさらに含む、請求項3記載の多層フィルム。
  5. (a)成分がポリオレフィン系樹脂である、請求項2〜4のいずれか1項記載の多層フィルム。
  6. (c)成分が、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドおよびリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドから成る群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2、4および5のいずれか1項記載の多層フィルム。
  7. 吸水性樹脂層(I)の一方の面に制電性樹脂層(II)を有し、他方の面に、酸変性ポリオレフィン樹脂の層(III)、アルミニウムの層(IV)およびポリアミドの層(V)が順次積層された、請求項1〜6のいずれか1項記載の多層フィルム。
  8. ポリアミドの層(V)の露出面にポリエステル系樹脂の層(VI)が更に積層された、請求項7に記載の多層フィルム。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項記載の多層フィルムからなる、電子機器部品用包装フィルム。
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