本発明に係る化学分析装置の実施例1を、図1乃至図14を参照して説明する。
図1は、実施例1に係る化学分析装置の構成を示したブロック図である。この化学分析装置100は、被検試料と試薬を混合して各検査項目を測定するための分析チップ1と、この分析チップ1の測定により得られた信号を処理して分析データを生成する装置本体10とを備えている。
分析チップ1は、各検査項目の測定方法に応じて、光学的に測定する検査項目の試薬が1試薬系である場合の第1試薬を収容した第1の分析チップ2、光学的に測定する検査項目の試薬が2試薬系である場合の第1及び第2試薬を収容した第2の分析チップ3、及び電気化学的に測定する検査項目である場合の第1試薬を収容した第3の分析チップ4等により構成される。
装置本体10は、化学分析装置100の操作者が容易に運ぶことができるサイズであり、着脱可能な分析チップ1を保持するインターフェース部11と、分析チップ1の各ユニットを制御する液体制御部7と、分析チップ1を用いた測定で得られた信号を検出する検出部8と、検出部8で検出された検出信号から分析データを生成するデータ処理部9と、データ処理部9で生成された分析データなどを保存する記憶部12とを備えている。
また、データ処理部9で生成された分析データを出力する出力部13と、各種コマンド信号などを入力する操作部14と、操作部14からの入力情報に基づいて液体制御部7、検出部8、データ処理部9、記憶部12、及び出力部13の制御やシステム全体の制御を統括して行うシステム制御部15とを備えている。
インターフェース部11は、開口部111を有し、この開口部111への挿入により、装置本体10に着脱自在に装着された分析チップ1を保持する。
液体制御部7は、インターフェース部11に保持された分析チップ1の近傍に配置され、分析チップ1の各ユニットを駆動して分析チップ1内の被検試料等を送液する送液機構71と、被検試料と試薬の混合液を撹拌する撹拌機構72と、送液機構71及び撹拌機構72を制御する制御部73とを備えている。
検出部8は、インターフェース部11に保持された分析チップ1の各第1及び第2の分析チップ2,3に係合する第1の検出部81、及び第3の分析チップ4に係合する第2の検出部82を備えている。第1の検出部81は、例えば半導体レーザや発光ダイオード等の光源、及びこの光源からの光を検出するフォトダイオード等の受光素子を有する。そして、各第1及び第2の分析チップ2,3内の混合液に光を照射し、その混合液内を透過した光を検出して電気信号に変換する。更にその電気信号を増幅してデータ処理部9へ出力する。また、各第1及び第2の分析チップ2,3内における被検試料等の検出信号をシステム制御部15へ出力する。
第2の検出部82は、第3の分析チップ4内の混合液の測定により検出された検出信号を増幅する。そして増幅した信号をデータ処理部9へ出力する。また、第3の分析チップ4内における被検試料の検出信号をシステム制御部15へ出力する。
データ処理部9は、検出部8の各第1及び第2の検出部81,82から出力された信号をデジタル信号に変換する収集部91と、収集部91からの信号に基づいて被検試料に含まれる各検査項目成分の分析データを生成する処理部92とを備えている。処理部92は、収集部91から出力された信号に対応する各検査項目のキャリブレーションテーブルを記憶部12から読み出した後、このキャリブレーションテーブルを用いて被検試料に含まれる各検査項目成分の濃度値や酵素活性値等の分析データを生成する。そして、生成した分析データを記憶部12に保存すると共に出力部13に出力する。
記憶部12は、記憶回路を備え、操作部14から入力された入力情報やデータ処理部9の処理部92から出力された分析データ等を保存する。また、分析データの生成に用いられるキャリブレーションテーブルなどを保存している。
出力部13は、液晶パネル等を有し、データ処理部9の処理部92から出力された分析データを表示する。なお、前述した表示以外にも、表示灯による点灯を利用した視覚伝達手段、音声による聴覚を利用した聴覚伝達手段によっても伝達するようにしてもよい。更には、それら複数の手段を併用するようにしてもよい。
操作部14は、操作パネル上にボタンなどの入力デバイスを備え、被検体の情報の入力、分析チップ1に収容された被検試料の測定操作、記憶部12に保存されている様々な分析データの出力操作等を行う。
以下、分析チップ1の各第1乃至第3の分析チップ2,3,4の構成の詳細、及び各第1乃至第3の分析チップ2,3,4を用いた化学分析装置100の動作の一例を説明する。
先ず、図1乃至図7を参照して、分析チップ1の第1の分析チップ2の構成及び第1の分析チップ2を用いた化学分析装置100の動作を説明する。図2は、第1の分析チップ2の構成を示すブロック図である。図3は、第1の分析チップ2の構造を示す図である。図4は、第1の分析チップ2を用いた化学分析装置100の動作を示すフローチャートである。図5は、第1の分析チップ2内における被検試料の送液を説明するための図である。図6は、第1の分析チップ2及び装置本体10の外観を示す図である。図7は、第1の分析チップ2の変形例を示す断面図である。
図2において、第1の分析チップ2は、注入された被検試料を収容する収容槽22、この収容槽22と第1の反応流路24で連通している第1の反応室23、第1の反応室23と第1の圧力流路26で連通している第1の圧力室25、第1の反応流路24を開閉する第1のバルブ27、第1の圧力流路26を開閉する第2のバルブ28、及び収容槽22から第1の反応室23を介して第1の圧力流路26へ流入した被検試料を検出する第1の検出器29の各ユニットを備えている。
図3(a)は、第1の分析チップ2の上面図であり、図3(b)は図3(a)に示した第1の分析チップ2のA−A線における断面図である。この第1の分析チップ2の各ユニットは、ガラス、シリコン、プラスチック、セラミックス等の材料を用いて微細加工することにより形成された第1の基板211及びこの第1の基板211の下面に上面が接合された第2の基板212により構成される基板21の内外に配置される。
収容槽22は、基板21の上面の一端部近傍に配置された開口部を有し、その開口部から注入された被検試料を収容する。
第1の反応室23は、基板21内の収容槽22よりも他端部側に配置され、1試薬系の各検査項目に応じた所定量の第1試薬、及びこの第1試薬と被検試料の混合液(第1の混合液)を撹拌するための第1撹拌子231を収容している。また、第1の反応室23内の互いに対向する側面を形成している基板21の第2の基板212の両側壁を貫通する2つの貫通孔が、装置本体10における検出部8の第1の検出部81からの光を透過する2つの透過材232で閉塞されている。
第1の撹拌子231は、例えば磁石であり、装置本体10における液体制御部7の撹拌機構72に設けられた例えば電磁石により回転又は上下移動して第1の混合液を撹拌する。
第1の反応流路24は、一端が収容槽22内の底部に位置し、他端が第1の反応室23内の上部の一部に位置している。そして、収容槽22と第1の反応室23の間を連通している。
第1の圧力室25は、収容槽22内の被検試料を第1の反応室23内へ送液するために設けられ、基板21内の他端部の近傍に配置される。そして、空気、窒素ガス等の気体を収容している。
第1の圧力流路26は、一端が第1の反応室23内上部の他部に位置し、他端が第1の圧力室25内上部に位置している。そして、第1の反応室23と第1の圧力室25の間を連通している。
第1のバルブ27は、液体制御部7の送液機構71により例えば電磁式に駆動するマイクロバルブであり、第1の反応流路24の第1の反応室23の近傍に配置され、第1の反応流路24を開閉可能に閉鎖している。また、第2のバルブ28は、送液機構71により第1のバルブ27と同様に駆動するマイクロバルブであり、第1の圧力流路26の第1の反応室23の近傍に配置され、第1の圧力流路26を開閉可能に閉鎖している。
そして、第1の反応室23内に第1撹拌子231、第1試薬、及び大気圧とほぼ同じ圧力の気体を封入している。また、第1の圧力室25内に大気圧よりも低い圧力の気体を封入している。このように、大気圧よりも低い圧力の気体を封入することにより、第1の圧力室25の容積を小さくすることができる。
第1の検出器29は、第1の圧力流路26の第2のバルブ28よりも第1の圧力室25側の第2のバルブ28近傍に配置される。そして、第1の反応流路24及び第1の圧力流路26の開放により、第1の反応室23を通過して第1の圧力流路26へ流入した収容槽22からの被検試料を検出する。検出した検出信号は、第1の検出部81に出力される。
図4は、第1の分析チップ2を用いた化学分析装置100の動作を示したフローチャートである。化学分析装置100の操作者により、図5(a)に示すように、測定液量の被検試料が第1の分析チップ2の開口部から収容槽22内へ注入される。そして、測定液量の被検試料を収容した第1の分析チップ2を、図6に示すように、装置本体10の開口部111から挿入した後、装置本体10の操作部14から検査開始の操作を行うことにより、化学分析装置100は動作を開始する(ステップS1)。
システム制御部15は、操作部14からの入力情報に基づいて、液体制御部7、検出部8、データ処理部9、記憶部12、及び出力部13を制御する。液体制御部7の送液機構71は、制御部73の制御により、第1の分析チップ2の第1及び第2バルブ27,28を駆動して第1の反応流路24及び第1の圧力流路26を開放する(ステップS2)。
第1の圧力室25は、内部の気体の収縮により収容槽22内の被検試料で閉塞された第1の反応流路24内及び第1の反応室23内の気体を吸引して、収容槽22内の被検試料を第1の反応室23内へ送液する。
このように、第1の分析チップ2の第1の圧力室23内に大気圧よりも低い圧力の気体を封入し、この封入した気体の収縮を利用することにより、圧力発生手段、この圧力発生手段により発生した圧力を伝達する非圧縮性媒質、及びこの非圧縮性媒質を密封する容器とダイアフラム部材により構成される送液機構を必要とせず、第1の分析チップ2の収容槽22に注入された被検試料を送液することができる。これにより、装置本体10の小型化を図ることができる。
第1の反応室23内へ送液された被検試料は、第1の反応室23内の気体の部分に充填された後、第1の圧力流路26へ流入する。第1の検出器29は、第1の圧力流路26へ流入した被検試料を検出し、その検出信号を検出部8の第1の検出部81を介してシステム制御部15へ出力する(ステップS3)。
なお、第1の反応室23内に封入された気体の部分の容積に第1の圧力流路26の一端と第1の検出器29間の容積を加算した容積よりも多く、収容槽22の容積以下の量である測定液量の被検試料が収容槽22内に収容されていると、第1の反応室23内へ送液された被検試料が第1の検出器29で検出されたとき、図5(b)に示すように、第1の反応流路24の第1のバルブ27よりも収容槽22側に被検試料が残存し、第1の反応室23内の封入されていた気体の部分に被検試料が充填されている。
システム制御部15は、第1の検出部81から出力された第1の検出器29の検出信号に基づいて、第1の反応室23が被検試料及び第1試薬で充填されていると判断し、制御部73に指示する。送液機構71は、制御部73の制御により、第1及び第2バルブ27,28を駆動して第1の反応流路24及び第1の圧力流路26を閉鎖する(ステップS4)。
このように、第1及び第2バルブ27,28で第1の反応流路24及び第1の圧力流路26を閉鎖することにより、第1の反応室23内の第1試薬の量に応じた被検試料を定量することができる。
第1の反応流路24及び第1の圧力流路26が閉鎖された後、液体制御部7の撹拌機構72は、第1の反応室23内の第1撹拌子231を駆動して第1の混合液を撹拌する(ステップS5)。
撹拌してから所定時間後に、第1の検出部81は、第1の反応室23内の第1の混合液に光を照射し、その第1の混合液内を透過した光を検出して電気信号に変換する(ステップS6)。次いで、電気信号に変換した検出信号を増幅してデータ処理部9へ出力する。
データ処理部9の収集部91は、検出部8の第1の検出部81から出力された信号をデジタル信号に変換する。処理部92は、収集部91から出力された信号に対応する検査項目のキャリブレーションテーブルを記憶部12から読み出した後、このキャリブレーションテーブルを用いて分析データを生成する。そして、生成した分析データを記憶部12に保存すると共に出力部13に出力する。記憶部12は、データ処理部9から出力された分析データを保存する。出力部13は、データ処理部9から出力された分析データを表示する(ステップS7)。
そして、出力部13に分析データが出力された時点で、システム制御部15が、液体制御部7、検出部8、データ処理部9、記憶部12、及び出力部13を停止させることにより、化学分析装置100は測定を終了する(ステップS8)。
測定終了後、操作者は、測定を終了した第1の混合液が収容された第1の分析チップ2を装置本体10から取り外して医療廃棄物として廃棄する。
なお、第1の分析チップ2の第1の反応室23及び第1の圧力室25を、図7に示すように、第1の反応室23a及び第1の圧力室25aに置き換えた第1の分析チップ2aを用いて測定するようにしてもよい。この第1の分析チップ2aの各ユニットは、第1の基板211及びこの第1の基板211の下面に上面が接合する第2の基板212aにより構成される基板21aの内外に配置される。第1の反応室23a内の底面を形成している第2の基板212aの下壁を貫通する貫通孔を閉塞する着脱可能な第1の栓233が配置される。また、第1の圧力室25a内の一側面を形成している第2の基板212aの他端部の側壁を貫通する貫通孔を閉塞する着脱可能な第2の栓251が配置される。
そして、測定後に廃棄の対象となった第1の分析チップ2aを回収した後、第1及び第2の栓233,251を取り外して第1の分析チップ2a内の各流路及び各室を、洗浄及び消毒する。更に、第1の反応室23a内に新たに第1試薬及び第1撹拌子231を入れて第1及び第2の栓233,251を取り付けた後、第1及び第2のバルブ27,28を開閉して、第1の圧力室25aを所定の圧力に減圧封入することにより、再利用することができる。これにより、医療廃棄物を低減して限られた資源を有効に活用することができる。
次に、図1乃至図10を参照して、分析チップ1の第2の分析チップ3の構成及び第2の分析チップ3を用いた化学分析装置100の動作の一例を説明する。図8は、第2の分析チップ3の構成を示すブロック図である。図9は、第2の分析チップ3の構造を示す図である。図10は、第2の分析チップ3を用いた化学分析装置100の動作を示すフローチャートである。以下において、第1の分析チップ2と同じ機能を有するユニットには同じ符号を付与し、その説明を簡略化又は省略する。
図8において、第2の分析チップ3は、収容槽22、2試薬系の各検査項目の第1試薬及び第1撹拌子231を収容した第1の反応室23、第1の反応流路24、第1の圧力室25、第1の圧力流路26、第1のバルブ27、第2のバルブ28、及び第1の検出器29の各ユニットを備えている。
また、第1の反応室23と第2の分析チップ3の外部の間を連通している外部流路30a、第1の反応室23と第2の反応流路30bで連通している第2の反応室32、外部流路30aを開閉する第3のバルブ30c、及び第2の反応流路30bの一端の近傍を開閉する第4のバルブ30dの各ユニットを備えている。
更に、第2の反応室32と第2の圧力流路34で連通している第2の圧力室33、第2の反応流路30bの他端の近傍を開閉する第5のバルブ35、第2の圧力流路34を開閉する第6のバルブ36、及び第1の反応室23からの第1の混合液を検出する第2の検出器37の各ユニットを備えている。
図9(a)は、第2の分析チップ3の上面図であり、また図9(b)は図9(a)に示した第2の分析チップ3のB−B線における断面図であり、更に図9(c)は図9(b)に示した第2の分析チップ3のC−C線における断面図である。この第2の分析チップ3の各ユニットは、第1の分析チップ2における第1及び第2の基板211,212の追加工により形成された第1及び第2の基板211b,212b、並びにガラス、シリコン、プラスチック、セラミックス等の材料の微細加工により形成され、第2の基板212bの下面に上面が接合された第3の基板311により構成される基板31の内外に配置される。
外部流路30aは、一端が第1の反応室23内上部の中央付近に位置し、他端が基板31の外側面に位置している。そして、第1の反応室23と基板31外部の間を連通している。
第2の反応室32は、基板31内の第1の反応室23下方の第1の反応室23よりも他端部側に配置され、第1の反応室23に収容された第1試薬と対を成す所定量の第2試薬、及び第1の混合液と第2試薬の混合液(第2の混合液)を撹拌する第2撹拌子321を収容している。また、第2の反応室32内の互いに対向する側面を形成している基板31の第3の基板311の両側壁を貫通する2つの貫通孔が、検出部8の第1の検出部81からの光が透過する2つの透過材322で閉塞されている。
第2の反応流路30bは、一端が第1の反応室23内の底部に位置し、他端が第2の反応室32内上部の一部に位置している。そして、第1の反応室23と第2の反応室32の間を連通している。
第3のバルブ30cは、外部流路30aの第1の反応室23の近傍に配置され、外部流路30aを開閉可能に閉鎖している。また、第4のバルブ30dは、第2の反応流路30bの第1の反応室23の近傍に配置され、第2の反応流路30bの一端近傍を開閉可能に閉鎖している。更に、第1及び第2のバルブ27,28は、第1の反応流路24及び第1の圧力流路26を閉鎖している。そして、第1の反応室23内に第1撹拌子231、第1試薬、及び大気圧とほぼ同じ圧力の気体を封入している。また、第1の圧力室25内に大気圧よりも低い圧力の気体を封入している。
第2の圧力室33は、第1の反応室23内の第1の混合液を第2の反応室32内へ送液するための吸引を行うために設けられ、基板31内の他端部近傍に配置される。そして、空気、窒素ガス等の気体を収容している。なお、第1の圧力室25と第2の圧力室33を合わせて1つの圧力室に置き換えるようにしてもよい。
第2の圧力流路34は、一端が第2の反応室32内上部の他部に位置し、他端が第2の圧力室33内上部に位置している。そして、第2の反応室32と第2の圧力室33の間を連通している。
第5のバルブ35は、第2の反応流路30bの第2の反応室32の近傍に配置され、第2の反応流路30bの他端部近傍を開閉可能に閉鎖している。第6のバルブ36は、第2の圧力流路34の第2の反応室32の近傍に配置され、第2の圧力流路34を開閉可能に閉鎖している。
そして、第2の反応室32内に第2撹拌子321、第2試薬、及び大気圧とほぼ同じ圧力の気体を封入している。また、第2の圧力室33内に大気圧よりも低い圧力の気体を封入している。このように、大気圧よりも低い圧力の気体を封入することにより、第2の圧力室33の容積を小さくすることができる。
第2の検出器37は、第2の圧力流路34の第6のバルブ36よりも第2の圧力室33側の第6のバルブ36近傍に配置される。そして、外部流路30a、第2の反応流路30b、及び第2の圧力流路34の開放により、第2の反応室32を通過して第2の圧力流路34へ流入した第1の反応室23からの第1の混合液を検出する。検出した検出信号は第1の検出部81に出力される。
図10は、第2の分析チップ3を用いた化学分析装置100の動作を示したフローチャートである。化学分析装置100の操作者により、測定液量の被検試料が第2の分析チップ3の開口部から収容槽22内へ注入される。被検試料を収容した第2の分析チップ3を装置本体10の開口部111から挿入し、装置本体10の操作部14から検査開始の操作を行うことにより、化学分析装置100は動作を開始する(ステップS11)。
システム制御部15は、操作部14からの入力情報により、液体制御部7、検出部8、データ処理部9、記憶部12、及び出力部13を制御する。液体制御部7の送液機構71は、制御部73の制御により、第2の分析チップ3の第1及び第2バルブ27,28を駆動して第1の反応流路24及び第1の圧力流路26を開放する(ステップS12)。
第1の圧力室25は、内部の気体の収縮により収容槽22内の被検試料で閉塞された第1の反応流路24及び第1の反応室23内の気体を吸引して、収容槽22内の被検試料を第1の反応室23内へ送液する。次いで、送液された被検試料が第1の反応室23内の気体の容積の部分を充填した後、第1の圧力流路26へ流入する。
このように、第2の分析チップ3の第1の圧力室25内に大気圧よりも低い圧力の気体を封入し、この封入した気体の収縮を利用することにより、圧力発生手段、この圧力発生手段により発生した圧力を伝達する非圧縮性媒質、この非圧縮性媒質を密封する容器、ダイアフラム部材等の送液機構を必要とせず、収容槽22に注入された被検試料を送液することができる。これにより、装置本体10の小型化を図ることができる。
第1の検出器29は、第1の圧力流路26へ流入した被検試料を検出し、その検出信号を装置本体10における検出部8の第1の検出部81を介してシステム制御部15へ出力する(ステップS13)。
システム制御部15は、第1の検出部81から出力された第1の検出器29の検出信号に基づいて、第1の反応室23内が被検試料及び第1試薬で充填されていると判断し、制御部73に指示する。送液機構71は、制御部73の制御により、第1及び第2バルブ27,28を駆動して第1の反応流路24及び第1の圧力流路26を閉塞する(ステップS14)。
第1の反応流路24及び第1の圧力流路26が閉鎖された後、液体制御部7の撹拌機構72は、第1の反応室23内の第1撹拌子231を駆動して第1の混合液を撹拌する(ステップS15)。
第1の混合液を撹拌した後、送液機構71は、制御部73の制御により、第3乃至第6のバルブ30c,30d,35,36を駆動して外部流路30a、第2の反応流路30b、及び第2の圧力流路34を開放する(ステップS16)。
なお、第1の反応室23内の撹拌した後の第1の混合液に第1の検出部81から光を照射し、その第1の混合液内を透過した光を検出して第1の混合液に含まれる被検試料による色調の変化を測定するようにしてもよい。
第2の圧力室33は、内部の気体の収縮により第1の反応室23内の第1の混合液で閉塞された第2の反応流路30b内及び第2の反応室32内の気体を吸引して、その第1の混合液を第2の反応室32内へ送液する。次いで、送液された第1の混合液が第2の反応室32内の気体の部分を充填した後、第2の圧力流路34へ流入する。
このように、第2の分析チップ2の第2の圧力室33内に大気圧よりも低い圧力の気体を封入し、この封入した気体の収縮を利用することにより、圧力発生手段、この圧力発生手段により発生した圧力を伝達する非圧縮性媒質、この非圧縮性媒質を密封する容器、ダイアフラム部材等の送液機構を必要とせず、第1の反応室23内の第1の混合液を送液することができる。これにより、装置本体10の小型化を図ることができる。
第2の検出器37は、第2の圧力流路34へ流入した第1の混合液を検出し、その検出信号を検出部8の第1の検出部81を介してシステム制御部15へ出力する(ステップS17)。
なお、第2の反応室32内へ送液された第1の混合液が第2の検出器37で検出されたとき、第2の反応流路30bの第5のバルブ35よりも第1の反応室23側に第1の混合液が残存し、第2の反応室32内の封入されていた気体の部分には第1の混合液が充填されている。
システム制御部15は、第1の検出部81から出力された第2の検出器37の検出信号に基づいて、第2の反応室32内が第1の混合液及び第2試薬で充填されていると判断して、制御部73に指示する。送液機構71は、制御部73の制御により、第5及び第6バルブ35,36を駆動して第2の反応流路30bの他端部近傍及び第2の圧力流路34を閉鎖する(ステップS18)。
このように、第5及び第6バルブ35,36で第2の反応流路30b及び第2の圧力流路34を閉塞することにより、第2の反応室32内の第2試薬の量に応じた第1の混合液を定量することができる。
第2の反応流路30bの他端部近傍及び第2の圧力流路34が閉鎖された後、撹拌機構72は、第2の反応室32内の第2撹拌子321を駆動して第2の混合液を撹拌する(ステップS19)。
撹拌してから所定時間後に、第1の検出部81は、第2の反応室32内の第2の混合液に光を照射し、その第2の混合液内を透過した光を検出して電気信号に変換する(ステップS20)。次いで、電気信号に変換した検出信号を増幅してデータ処理部9へ出力する。
データ処理部9は、検出部8の第1の検出部81から出力された信号に基づいて分析データを生成する。そして、生成した分析データを記憶部12に保存すると共に出力部13に出力する。記憶部12は、データ処理部9から出力された分析データを保存する。出力部13は、データ処理部9から出力された分析データを表示する(ステップS21)。
そして、出力部13に、分析データが出力された時点で、システム制御部15が液体制御部7、検出部8、データ処理部9、記憶部12、及び出力部13を停止させることにより、化学分析装置100は測定を終了する(ステップS22)。
測定終了後、操作者は、測定を終了した各液体が収容された第2の分析チップ3を装置本体10から取り外して廃棄する。
次に、図1乃至図12を参照して、分析チップ1の第3の分析チップ4の構成及び第3の分析チップ4を用いた化学分析装置100の動作の一例を説明する。図11は、第3の分析チップ4の構成を示すブロック図である。図12は、第3の分析チップ4の構造を示す図である。以下において、第1及び第2の分析チップ2,3と同じ機能を有するユニットには同じ符号を付与し、その説明を簡略化又は省略する。
図11において、第3の分析チップ4は、収容槽22、第1試薬及び第1撹拌子231を収容した第1の反応室23b、第1の反応流路24、第1の圧力室25、第1の圧力流路26、第1のバルブ27、第2のバルブ28、第1の検出器29、及び各検査項目の成分を特異的に検出するセンサ42の各ユニットを備えている。
図12(a)は、第3の分析チップ4の上面図であり、図12(b)は図12(a)に示した第3の分析チップ4のD−D線における断面図である。この第3の分析チップ4の各ユニットは、ガラス、シリコン、プラスチック、セラミックス等の材料を用いて微細加工することにより形成された第1の基板211及びこの第1の基板211の下面に上面が接合され第2の基板411により構成される基板41の内外に配置される。
第1の反応室23b内の一側面を形成している基板41の第2の基板411の一側壁を貫通する貫通孔がセンサ42により閉塞されている。
センサ42は、ナトリウムイオンなどの電解質に選択的に感応するイオン選択性電極及びこの電極の基準となる参照電極により構成されるイオンセンサ、グルコースなどの検査項目の成分に選択的に反応するグルコースオキシダーゼ(GOD)等を含む高分子膜が固定化された酵素センサ等により構成される。そして、第1の反応室23b内の第1の混合液に含まれる各検査項目の成分を検出し、その検出信号を装置本体10における検出部8の第2の検出部82へ出力する。
次に、第3の分析チップ4を用いた化学分析装置100の動作について説明する。第3の分析チップ4を用いた化学分析装置100が、第1の分析チップ2を用いた場合と同様に動作する図4のステップS1乃至S5及びステップS7,S8の説明を省略し、ステップS6と異なるステップの動作を説明する。
このステップにおいて、第1の反応室23b内の第1の混合液を撹拌してから所定時間後に、センサ42はその第1の混合液に含まれる各検査項目の成分を検出し、その検出信号を第2の検出部82へ出力する。第2の検出部82は、センサ42からの検出信号を増幅してデータ処理部9へ出力する。
以上述べた本発明の実施例1によれば、各第1乃至第3の分析チップ2,3,4の各第1の圧力室25内に大気圧よりも低い圧力の気体を封入し、第1及び第2のバルブ27,28で第1の反応流路24及び第1の圧力流路26を開放することにより、収容槽22内の被検試料を各第1の反応室23,23b内へ送液することができる。
また、第2の分析チップ3の第2の圧力室33内に大気圧よりも低い気体を封入し、第3乃至第6のバルブ30c,30d,35,36で外部流路30a、第2の反応流路30b、及び第2の圧力流路34を開放することにより、第2の反応室32内へ第1の混合液を送液することができる。
これにより、圧力発生手段、この圧力発生手段により発生した圧力を伝達する非圧縮性媒質、この非圧縮性媒質を密封する容器、ダイアフラム部材等の送液機構を必要とせず、装置本体10の小型化を図ることができる。
そして、第1の検出器29で被検試料を検出したとき、第1及び第2のバルブ27,28で第1の反応流路24及び第1の圧力流路26を閉鎖することにより、各第1の反応室23,23b内の第1試薬の量に応じた被検試料を定量することができる。また、第2の検出器37で第1の混合液を検出したとき、第5及び第6のバルブ35,36で第2の反応流路30b及び第2の圧力流路34を閉鎖することにより、第2の反応室32内の第2試薬の量に応じた第1の混合液を定量することができる。
なお、上述した実施例1に限定されるものではなく、図13に示すように、N種類(N>1)の検査項目の測定が可能な第4の分析チップ5を用いて測定するように実施してもよい。この第4の分析チップ5は、N種類の例えば1試薬系の検査項目に対応する第1の分析チップ2の収容槽22を除いた各ユニットにより構成されるN個の第1の分析部2c1乃至2cNと、このN個の第1の分析部2c1乃至2cNの各第1の反応流路の一端が底部に位置する収容槽22aとを備えている。
図14(a)は、第4の分析チップ5の上面図であり、図14(b)は図14(a)に示した第4の分析チップ5のE−E線における断面図である。この第4の分析チップ5の各ユニットは、第1の分析部2c1乃至2cNの各第1の反応室内の第1の混合液に照射する光を透過する材料を用いて微細加工することにより形成されたガラス、プラスチック等の第1の基板511、この第1の基板511の下面に上面が接合された第2の基板512、及びこの第2の基板512の下面に上面が接合された第1の基板511と同じ材料からなる第3の基板513により構成される基板51の内外に配置される。これにより、第1の分析部2c1乃至2cNの各第1の反応室内の上壁及び下壁は第1及び第3の基板511,513により形成される。
また、装置本体10に、第4の分析チップ5の保持が可能な開口部を有するインターフェース部、及び第1の分析部2c1乃至2cNに対応するN個の第1の検出部81a1乃至81aN、及び第1の分析部2c1乃至2cNの制御が可能な液体制御部を設ける。そして、収容槽22aの被検試料を第1の分析部2c1乃至2cNの各第1の反応室内へ送液し、各第1の反応室内の第1の混合液に対して光の照射及び検出を行うことにより、同時に複数の検査項目の測定を行うことができる。
更に、各第1の反応室にセンサ42を配置し、このセンサ42に応じた数の第2の検出部を設けることにより、同時に複数の検査項目を測定することができる。
これにより、前記送液機構を必要とせず、被検試料を同時に複数の検査項目を測定することが可能となり、装置本体の小型化を図ることができる。
以下、本発明に係る化学分析装置の実施例2を、図15及び図22を参照して説明する。
図15は、実施例2に係る化学分析装置の構成を示したブロック図である。図15に示した実施例2が図1における実施例1と大きく異なる点は、実施例1に係る分析チップ1における各第1乃至第3の分析チップ2,3,4の第1の圧力室25を大気圧よりも大きな圧力の気体を封入した第1の圧力室に置き換えた点と、実施例2に係る図15の分析チップを制御する液体制御部に置き換えた点である。以下では、実施例2に係る各ユニットの実施例1と同様に機能するユニットは同じ符号を付与し説明を簡略化又は省略する。
図15において、化学分析装置100aは、被検試料と試薬を混合して各検査項目を測定するための分析チップ1a、及びこの分析チップ1aの測定により得られた信号を処理して分析データを生成する装置本体10aを備えている。
分析チップ1aは、各検査項目の測定方法に応じて、光学的に測定する検査項目の試薬が1試薬系である場合の第1試薬を収容した第1の分析チップ2c、光学的に測定する検査項目の試薬が2試薬系である場合の第1及び第2試薬を収容した第2の分析チップ3a、及び電気化学的に測定する検査項目である場合の第1試薬を収容した第3の分析チップ4a等により構成される。
装置本体10aは、着脱可能な分析チップ1aを保持するインターフェース部11、分析チップ1aを制御する液体制御部7a、分析チップ1aによる測定により得られた信号を検出する検出部8a、データ処理部9、記憶部12、出力部13、及び操作部14と、液体制御部7a、検出部8a、データ処理部9、記憶部12、及び出力部13の制御やシステム全体の制御を統括して行うシステム制御部15aとを備えている。
液体制御部7aは、インターフェース部11に保持された分析チップ1aの近傍に配置され、分析チップ1aの各ユニットを駆動して分析チップ1a内の被検試料等を送液する送液機構71aと、被検試料と試薬の混合液を撹拌する撹拌機構72aと、送液機構71a及び撹拌機構72aを制御する制御部73aとを備えている。
検出部8aは、インターフェース部11に保持された各第1及び第2の分析チップ2c,3aに係合する第1の検出部81a、及び第3の分析チップ4aに係合する第2の検出部82aを備えている。第1の検出部81aは、実施例1における第1の検出部81と同様に光源及び受光素子を有する。そして、各第1及び第2の分析チップ2c,3a内の混合液に光を照射し、その混合液内を透過した光を検出して電気信号に変換する。更にその電気信号を増幅してデータ処理部9へ出力する。また、各第1及び第2の分析チップ2c,3a内における被検試料等の検出信号を受信してシステム制御部15aへ出力する。
第2の検出部82aは、第3の分析チップ4a内の混合液の測定により検出された検出信号を受信して増幅する。そして増幅した信号をデータ処理部9へ出力する。また、第3の分析チップ4a内における被検試料の検出信号を受信してシステム制御部15aへ出力する。
以下、分析チップ1aの各第1乃至第3の分析チップ2c,3a,4aの構成の詳細、及び各第1乃至第3の分析チップ2c,3a,4aを用いた化学分析装置100aの動作の一例を説明する。
先ず、図15乃至図17を参照して、分析チップ1aの第1の分析チップ2cの構成及び第1の分析チップ2cを用いた化学分析装置100aの動作を説明する。図16は、第1の分析チップ2cの構成を示すブロック図である。図17は、第1の分析チップ2cの構造を示す図である。
図16において、第1の分析チップ2cは、収容槽22b、第1の反応室23c、第1の反応流路24a、第1の圧力室25b、第1の圧力流路26a、第1の外部流路50、第1のバルブ27a、第7のバルブ51、第2のバルブ28a、及び第1の検出器29aの各ユニットを備えている。
図17(a)は、第1の分析チップ2cの上面図であり、図17(b)は図17(a)に示した第1の分析チップ2cのF−F線における断面図である。この第1の分析チップ2cの各ユニットは、ガラス、シリコン、プラスチック、セラミックス等の材料の微細加工により形成された第1の基板211c及びこの第1の基板211cの下面に上面が接合された第2の基板212cにより構成される基板21cの内外に配置される。
収容槽22bは、基板21c上面の中央よりも一端部よりに配置された開口部を有し、その開口部から注入された被検試料を収容する。
第1の反応室23cは、基板21c内の収容槽22bよりも他端部側に配置され、各検査項目に応じた所定量の第1試薬、及びこの第1試薬と被検試料の第1の混合液を撹拌するための第1撹拌子231を収容している。また、第1の反応室23c内の互いに対向する側面を形成している基板21cの第2の基板212cの両側壁を貫通する2つの貫通孔が、装置本体10aにおける検出部8aの第1の検出部81aからの光が透過する2つの透過材232により閉塞されている。第1の撹拌子231は、装置本体10aにおける液体制御部7aの撹拌機構72aにより第1の混合液を撹拌する。
第1の反応流路24aは、一端が収容槽22b内の底部に位置し、他端が第1の反応室23c内上部の一部に位置している。そして、収容槽22bと第1の反応室23cの間を連通している。
第1の圧力室25bは、基板21c内の収容槽22bよりも一端部側に配置され、空気、窒素ガス等の気体を収容している。
第1の圧力流路26aは、一端が第1の圧力室25b内上部に位置し、他端が収容槽22b内上部に位置している。そして、第1の圧力室25bと収容槽22bの間を連通している。第1の外部流路50は、一端が第1の反応室23c内上部の他部に位置し、他端が基板21cの他端面に位置している。そして、第1の反応室23cと基板21cの外部の間を連通している。
第1のバルブ27aは、第1の反応流路24aの第1の反応室23cの近傍に配置され、第1の反応流路24aを開閉可能に閉鎖している。また、第7のバルブ51は、第1の外部流路50の第1の反応室23cの近傍に配置され、第1の外部流路50を開閉可能に閉鎖している。そして、第1の反応室23c内に第1撹拌子231、第1試薬、及び大気圧とほぼ同じ圧力の気体を封入している。
また、第2のバルブ28aは、第1の圧力流路26aに配置され、第1の圧力流路26aを開閉可能に閉鎖している。そして、第1の圧力室25b内に大気圧よりも高い圧力の気体を封入している。このように、大気圧よりも高い圧力の気体を封入することにより、第1の圧力室25bの容積を小さくすることができる。
第1の検出器29aは、第1の外部流路50の第7のバルブ51よりも基板21cの他端部側の第7のバルブ51近傍に配置される。そして、送液機構71aによる収容槽22bの開口部の閉塞及び第1の反応流路24a、第1の圧力流路26a、第1の外部流路50の開放により、第1の反応室23cを通過して第1の外部流路50へ流入した収容槽22bからの被検試料を検出する。検出した検出信号は、第1の検出部81aに出力される。
次に、第1の分析チップ2cを用いた化学分析装置100aの動作を説明する。
測定液量の被検試料が開口部から収容槽22b内へ注入された第1の分析チップ2cが装置本体10aの開口部111から挿入される。装置本体10aにおける液体制御部7aの送液機構71aは、制御部73aの制御により第1の分析チップ2cの収容槽22bの開口部を閉塞した後、第1及び第2バルブ27a,28a並びに第7のバルブ51を駆動して第1の圧力流路26a、第1の反応流路24a、及び第1の外部流路50を開放する。
第1の圧力室25bは、内部の気体の膨張により収容槽22b内を加圧して、収容槽22b内の被検試料を第1の反応室23c内へ送液する。
このように、第1の分析チップ2cの第1の圧力室25b内に大気圧よりも高い圧力の気体を封入し、この封入した気体の膨張を利用することにより、圧力発生手段、この圧力発生手段により発生した圧力を伝達する非圧縮性媒質、この非圧縮性媒質を密封する容器、ダイアフラム部材等の送液機構を必要とせず、収容槽22bに注入された被検試料を送液することができる。これにより、装置本体10aの小型化を図ることができる。
次いで、送液された被検試料が第1の反応室23c内の気体の部分に充填された後、第1の外部流路50へ流入する。第1の検出器29aは、第1の外部流路50へ流入した被検試料を検出し、その検出信号を検出部8aの第1の検出部81aを介してシステム制御部15aへ出力する。
なお、第1の反応室23c内に封入された気体の部分の容積に第1の外部流路50の一端と第1の検出器29a間の容積を加算した容積よりも多く、収容槽22bの容積以下の量である測定液量の被検試料が収容槽22b内に収容されていると、第1の反応室23c内へ送液された被検試料が第1の検出器29aで検出されたとき、第1の反応流路24aの第1のバルブ27aよりも収容槽22b側に被検試料が残存し、第1の反応室23c内の封入されていた気体の部分に被検試料が充填されている。
システム制御部15aは、第1の検出部81aから出力された第1の検出器29aの検出信号に基づいて、第1の反応室23c内に被検試料及び第1試薬が充填されていると判断し、液体制御部7aの制御部73aに指示する。送液機構71aは、制御部73aの制御により、第1及び第7のバルブ27a,51を駆動して第1の反応流路24a及び第1の外部流路50を閉鎖する。
第1の反応流路24a及び第1の外部流路50が閉鎖された後、液体制御部7aの撹拌機構72aは、第1の反応室23c内の第1撹拌子231を駆動して第1の混合液を撹拌する。撹拌してから所定時間後に、第1の検出部81aは、第1の反応室23c内の第1の混合液に光を照射し、その第1の混合液内を透過した光を検出して電気信号に変換する。次いで、電気信号に変換した検出信号を増幅してデータ処理部9へ出力する。
データ処理部9は、検出部8aの第1の検出部81aから出力された信号に基づいて、分析データを生成する。そして、生成した分析データを記憶部12に保存すると共に出力部13に表示する。
次に、図15乃至図19を参照して、分析チップ1aの第2の分析チップ3aの構成及び第2の分析チップ3aを用いた化学分析装置100aの動作の一例を説明する。図18は、第2の分析チップ3aの構成を示すブロック図である。図19は、第2の分析チップ3aの構造を示す図である。以下において、第1の分析チップ2cと同じ機能を有するユニットには同じ符号を付与し、その説明を簡略化又は省略する。
図18において、第2の分析チップ3aは、収容槽22b、第1試薬及び第1撹拌子231を収容した第1の反応室23c、第1の反応流路24a、第1の圧力室25b、第1の圧力流路26a、第1の外部流路50、第1のバルブ27a、第7のバルブ51、第2のバルブ28a、及び第1の検出器29aの各ユニットを備えている。
また、第2の外部流路30aa、第2の反応流路30ba、第3のバルブ30ca、第4のバルブ30da、第1の反応室23cの第1試薬と対を成す第2試薬及び第2撹拌子321を収容した第2の反応室32a、第2の圧力室33a、第2の圧力流路34a、第5のバルブ35a、第6のバルブ36a、及び第2の検出器37aの各ユニットを備えている。
図19(a)は、第2の分析チップ3aの上面図であり、図19(b)は図19(a)に示した第2の分析チップ3aのG−G線における断面図である。この第2の分析チップ3aの各ユニットは、第1の分析チップ2cにおける第1及び第2の基板211c,212cの追加工により形成された第1及び第2の基板211d,212d、並びにガラス、シリコン、プラスチック、セラミックス等の材料の微細加工により形成され、第2の基板212dの下面に上面が接合された第3の基板311aにより構成される基板31aの内外に配置される。
第2の外部流路30aaは、一端が第1の反応室23c内の上部の中央付近に位置し、他端が基板31aの外側面に位置している。そして、第1の反応室23cと基板31aの外部の間を連通している。また、第2の反応流路30baは、一端が第1の反応室23c内の底部に位置し、他端が第2の反応室32a内上部の一部に位置している。そして、第1の反応室23cと第2の反応室32aの間を連通している。
第3のバルブ30caは、第2の外部流路30aaの第1の反応室23cの近傍に配置され、送液機構71aにより第2の外部流路30aaを開閉可能に閉鎖している。また、第4のバルブ30daは、第2の反応流路30baの第1の反応室23cの近傍に配置され、第2の反応流路30baの一端近傍を開閉可能に閉鎖している。更に、第1及び第7のバルブ27a,51は、第1の反応流路24a及び第1の外部流路50を閉鎖している。そして、第1の反応室23c内に第1撹拌子231、第1試薬、及び大気圧とほぼ同じ圧力の気体を封入している。
第2の反応室32aは、基板31a内の第1の反応室23c下方の第1の反応室23cよりも他端部側に配置され、基板31aの第3の基板311aの両側壁を貫通する2つの貫通孔が2つの透過材322により閉塞されている。
第2の圧力室33aは、基板31a内の他端部近傍に配置され、空気、窒素ガス等の気体を収容している。また、第2の圧力流路34aは、一端が第2の反応室32a内上部の他部に位置し、他端が第2の圧力室33a内上部に位置している。そして、第2の反応室32aと第2の圧力室33aの間を連通している。
第5のバルブ35aは、第2の反応流路30baの第2の反応室32aの近傍に配置され、第2の反応流路30baの他端部近傍を開閉可能に閉鎖している。また、第6のバルブ36aは、第2の圧力流路34aの第2の反応室32aの近傍に配置され、第2の圧力流路34aを開閉可能に閉鎖している。そして、第2の反応室32a内に第2撹拌子321、第2試薬、及び大気圧とほぼ同じ圧力の気体を封入している。また、第2の圧力室33a内に大気圧よりも低い圧力の気体を封入している。このように、大気圧よりも低い圧力の気体を封入することにより、第2の圧力室33aの容積を小さくすることができる。
第2の検出器37aは、第2の圧力流路34aの第6のバルブ36aよりも第2の圧力室33a側の第6のバルブ36a近傍に配置される。そして、第2の外部流路30aa、第2の反応流路30ba、及び第2の圧力流路34aの開放により、第2の反応室32aを通過して第2の圧力流路34aへ流入した第1の反応室23cからの第1の混合液を検出する。検出した検出信号は第1の検出部81aに出力される。
次に第2の分析チップ3aを用いた化学分析装置100aの動作の一例を説明する。
測定液量の被検試料が開口部から収容槽22b内へ注入された第2の分析チップ3aが装置本体10aの開口部111から挿入される。装置本体10aにおける液体制御部7aの送液機構71aは、制御部73aの制御により、第2の分析チップ3aの収容槽22bの開口部を閉塞した後、第1及び第2バルブ27a,28a並びに第7のバルブ51を駆動して第1の圧力流路26a、第1の反応流路24a、及び第1の外部流路50を開放する。
第1の圧力室25bは、内部の気体の膨張により収容槽22b内を加圧して、収容槽22b内の被検試料を第1の反応室23c内へ送液する。次いで、送液された被検試料が第1の反応室23c内の気体の部分を充填した後、第1の外部流路50へ流入する。
このように、第2の分析チップ3aの第1の圧力室25b内に大気圧よりも高い圧力の気体を封入し、この封入した気体の膨張を利用することにより、圧力発生手段、この圧力発生手段により発生した圧力を伝達する非圧縮性媒質、この非圧縮性媒質を密封する容器、ダイアフラム部材等の送液機構を必要とせず、収容槽22bに注入された被検試料を送液することができる。これにより、装置本体10aの小型化を図ることができる。
第1の検出器29aは、第1の外部流路50へ流入した被検試料を検出し、その検出信号を検出部8aの第1の検出部81aを介してシステム制御部15aへ出力する。システム制御部15aは、第1の検出部81aから出力された第1の検出器29aの検出信号に基づいて、第1の反応室23c内に被検試料及び第1試薬が充填されていると判断し、制御部73aに指示する。
送液機構71aは、制御部73aの制御により、第1及び第7のバルブ27a,51を駆動して第1の反応流路24a及び第1の外部流路50を閉鎖する。第1の反応流路24a及び第1の外部流路50が閉鎖された後、液体制御部7aの撹拌機構72aは、第1の反応室23c内の第1撹拌子231を駆動して第1の混合液を撹拌する。
撹拌してから所定時間後に、送液機構71aは、第3乃至第6のバルブ30ca,30da,35a,36aを駆動して、第2の外部流路30aa、第2の反応流路30ba、及び第2の圧力流路34aを開放する。
第2の圧力室33aは、内部の気体の収縮により第1の反応室23c内の第1の混合液を吸引して、第2の反応室32a内へ送液する。次いで、送液された第1の混合液が第2の反応室32a内の気体の部分を充填した後、第2の圧力流路34aへ流入する。
このように、第2の分析チップ3aの第2の圧力室33a内に大気圧よりも低い圧力の気体を封入し、この封入した気体の膨張を利用することにより、圧力発生手段、この圧力発生手段により発生した圧力を伝達する非圧縮性媒質、この非圧縮性媒質を密封する容器、ダイアフラム部材等の送液機構を必要とせず、第1の反応室23c内の第1の混合液を送液することができる。これにより、装置本体10aの小型化を図ることができる。
第2の検出器37aは、第2の圧力流路34aへ流入した第1の混合液を検出し、その検出信号を第1の検出部81aを介してシステム制御部15aへ出力する。システム制御部15aは、第1の検出部81aから出力された第2の検出器37aの検出信号に基づいて、第2の反応室32a内が第1の混合液及び第2試薬で充填されていると判断し、制御部73aに指示する。
送液機構71aは、制御部73aの制御により、第5及び第6のバルブ35a,36aを駆動して第2の反応流路30ba及び第2の圧力流路34aを閉鎖する。第2の反応流路30ba及び第2の圧力流路34aが閉鎖された後、撹拌機構72aは、第2の反応室32a内の第2撹拌子321を駆動して第2の混合液を撹拌する。
撹拌してから所定時間後に、第1の検出部81aは、第2の反応室32a内の第2の混合液に光を照射し、その第2の混合液内を透過した光を検出して電気信号に変換する。次いで、電気信号に変換した検出信号を増幅してデータ処理部9へ出力する。データ処理部9は、第1の検出部81aから出力された信号に基づいて分析データを生成する。そして、生成した分析データを記憶部12に保存すると共に出力部13に表示する。
次に、図15乃至図21を参照して、分析チップ1aの第3の分析チップ4aの構成及び第3の分析チップ4aを用いた化学分析装置100aの動作を説明する。図20は、第3の分析チップ4aの構成を示すブロック図である。図21は、第3の分析チップ4aの構造を示す図である。以下において、第1及び第2の分析チップ2c,3aと同じ機能を有するユニットには同じ符号を付与し、その説明を簡略化又は省略する。
図20において、第3の分析チップ4aは、収容槽22b、第1試薬及び第1撹拌子231を収容した第1の反応室23d、第1の反応流路24a、第1の圧力室25b、第1の圧力流路26a、第1の外部流路50、第1のバルブ27a、第7のバルブ51、第2のバルブ28a、及び第1の検出器29a、及び各検査項目の成分を特異的に検出するセンサ42の各ユニットを備えている。
図21(a)は、第3の分析チップ4aの上面図であり、図21(b)は図21(a)に示した第3の分析チップ4aのJ−J線における断面図である。この第3の分析チップ4aの各ユニットは、ガラス、シリコン、プラスチック、セラミックス等の材料を用いて微細加工することにより形成された第1の基板211c及びこの第1の基板211cの下面に上面が接合され第2の基板411aにより構成される基板41aの内外に配置される。
第1の反応室23d内の一側面を形成している基板41aの第2の基板411aの一側壁を貫通する貫通孔がセンサ42により閉塞されている。そして、センサ42は、第1の反応室23d内の第1の混合液に含まれる各検査項目の成分を検出し、その検出信号を装置本体10aにおける検出部8aの第2の検出部82aへ出力する。
次に、第3の分析チップ4aを用いた化学分析装置100aの動作について説明する。第3の分析チップ4aを用いた化学分析装置100aは、第1の分析チップ2cを用いた場合と異なるステップの動作を説明する。このステップにおいて、第1の反応室23d内の第1の混合液を撹拌してから所定時間後に、センサ42はその第1の混合液に含まれる各検査項目の成分を検出し、その検出信号を第2の検出部82aへ出力する。第2の検出部82aは、センサ42からの検出信号を増幅してデータ処理部9へ出力する。
以上述べた本発明の実施例2によれば、各第1乃至第3の分析チップ2c,3a,4aの各第1の圧力室25b内に大気圧よりも高い圧力の気体を封入し、第1及び第2のバルブ27a,28a並びに第7のバルブ51で第1の反応流路24a、第1の圧力流路26a、及び第1の外部流路50を開放することにより、収容槽22b内の被検試料を各第1の反応室23c,23d内へ送液することができる。
また、第2の分析チップ3aの第2の圧力室33a内に大気圧よりも低い気体を封入し、第3乃至第6のバルブ30ca,30da,35a,36aで第2の外部流路30aa、第2の反応流路30ba、及び第2の圧力流路34aを開放することにより、第2の反応室32a内へ第1の混合液を送液することができる。
これにより、圧力発生手段、この圧力発生手段により発生した圧力を伝達する非圧縮性媒質、この非圧縮性媒質を密封する容器、ダイアフラム部材等の送液機構を必要とせず、装置本体10aの小型化を図ることができる。
そして、第1の検出器29aで被検試料を検出したとき、第1及び第2のバルブ27a,28aで第1の反応流路24a及び第1の圧力流路26aを閉鎖することにより、各第1の反応室23c,23d内の第1試薬の量に応じた被検試料を定量することができる。また、第2の検出器37aで第1の混合液を検出したとき、第5及び第6のバルブ35a,36aで第2の反応流路30ba及び第2の圧力流路34aを閉鎖することにより、第2の反応室32a内の第2試薬の量に応じた第1の混合液を定量することができる。
なお、上述した実施例2に限定されるものではなく、図22(a)に示すように、例えば第1の分析チップ2cから第2のバルブ28aを除き、第2の基板212cを追加工して第1の圧力室25bを拡張する。また、液体制御部7aに加熱手段を設ける。そして、加熱して第1の圧力室内の気体を熱膨張させることにより、閉塞された収容槽22b内を加圧して被検試料を各第1の反応室23c,23d内に送液するようにしてもよい。
また、図22(b)に示すように、拡張した第1の圧力室内の底部に熱で屈曲可能なバイメタル60、このバイメタル60の上に第1の圧力室内の側壁に密着して上下移動可能なピストン61を配置する。そして、加熱して第1の圧力室内のバイメタル60を屈曲させてピストン61を上へ移動させることにより、閉塞された収容槽22b内を加圧して被検試料を各第1の反応室23c,23d内に送液するようにしてもよい。
これにより、圧力発生手段、この圧力発生手段により発生した圧力を伝達する非圧縮性媒質、この非圧縮性媒質を密封する容器、ダイアフラム部材等の送液機構を必要とせず、装置本体の小型化を図ることができる。