JP5236948B2 - アルミニウム合金高圧ダイカスト鋳物の熱処理 - Google Patents

アルミニウム合金高圧ダイカスト鋳物の熱処理 Download PDF

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Description

本発明は、高圧ダイカスト時効性アルミニウム合金の鋳物の熱処理方法に関する。
高圧ダイカスト(HPDC)は、精密な寸法公差及びなめらかな表面仕上げが要求される金属部材の大量生産に広く使用されている。しかしながら、従来のHPDCによって製造した部品の欠点の一つは、比較的多孔質であるということにある。凝固中の収縮ポロシティ、そしてまた金型壁潤滑油の分解により生じた空気、水素又は蒸気のような封入ガスの存在のために、内部気孔が生じる。
HPDCアルミニウム合金からなる鋳物は、熱処理の影響を受けやすいと考えられない。このことは、ガス又はガス形成化合物を含む内部気孔が、従来の高温(例えば500℃)での溶体化処理中に膨張し、鋳物上に表面ブリスターの形成をもたらすからである。かかるブリスターの存在は、視覚的に受入れがたい。更に、高温での溶体化処理中の内部気孔の膨張は、かかる高圧ダイカスト鋳物の寸法安定性及び機械的特性の両方に悪影響を与える可能性がある。
アルミニウム協会並びに鉱物、金属及び材料協会から出版されている、アルテンホール(Altenpohl )著、“アルミニウム、技術、応用及び状況”、第6版、p.96−98で議論されているように、高圧ダイカスト鋳物が比較的気孔のないようにし。その結果ブリスターの不在かで熱処理可能にする技術がある。かかる技術としては、真空ダイカスト法、気孔を生じないダイカスト法、スクイズキャスティング及びチクソキャスティング法が挙げられるが、これら全てがコスト上の不利益を伴う。
これらの技術の内、鋳物中のポロシティを減らす目的で、真空システムがよく使用される。多くの場合、ポロシティの残存レベルが熱処理を可能にするには依然として著しく高いものである。しかしながら、いくつかの例外がある。
例えば、リンら著の特許文献1では、改良Al−Si−Mg−Mn合金がアルコアのAVDCダイカスト法を用いることにより、得られた鋳物中のポロシティを非常に少なくできる高圧ダイカスト鋳物であることを開示している。この合金組成はFeを0.15未満、Tiを0.3未満、Srを0.04未満含み、実質的に銅、クロム及びベリリウムを含まない。これは、オーストラリア鋳造合金記号表示CA601及びCA603(アルミニウム標準規格及びデータ−インゴットと鋳物、1997年)のみならず鋳造合金AA357に類似する。AVDC法は、極めて高い真空圧を用いて、比較的気孔がポロシティがなく、溶接可能で且つ熱処理も出来ると報告されている成分を製造する(例えば、http://www.alcoa.com/locations/germany_soest/en/about/avdc.asp, 2005を見ること)。リンらの先行技術においては、鋳物をX線分析によって検査し、ポロシティの含量に関しては優れた状態にあることが見出されている。このような高真空鋳造法は、950−1020°F(510−549℃)での10−45分間の溶体化処理、70−170°F(周囲は77℃)での水中における焼き入れ、及び320−360°F(160−182℃)で1−5時間の人工時効を行うことにより、航空宇宙応用に適した性質を実現できると見られている。この先行技術中に教唆されている熱処理スケジュールによれば、検査した合金の表面上に軽微なブリスターが現れたことが報告されており、これは封入潤滑油によって生じると見られている。しかしながら、かかる合金は構造保全性が高いことが開示されており、航空宇宙応用に適していると見なされていた。
ポロシティを減少又は除去して熱処理を容易にする技術の他の例は、ミキ著の特許文献2に開示されており、これはAl−Si−Mg−Mn合金から製造された成分が、従来通りに気孔のないダイカスト法に続いて熱処理できることである。かかるダイカスト法は、明らかに以前の研究であるラドトケらの特許文献3に基づいており、この場合ダイキャビティーを溶融金属と組合わせて生成する鋳物中のポロシティのレベルを減ずる反応性の気体でパージする。
アルミニウム合金用の従来の熱処理手順は、通常下記の3つの段階を含む。
(1)合金化(溶質)元素を溶解し、ミクロ構造を均質化又は修正するために合金の融点以下の比較的高温で、多くの場合は8時間を超える時間での溶体化処理。
(2)溶質元素を過飽和固溶体中に保持するために、冷水又は熱水中に入れること等による速やかな冷却又は焼き入れ。
(3)合金を析出硬化又は強化を実現するに適した一つの温度、時には第二の温度で一定時間保持することによる合金の時効。
時効に起因する強化は、過飽和固溶体中に取り込まれた溶質が粒子中の至る所で微細分散し、スリップ処理による変形に抵抗する合金の能力を増加させる析出物を形成するために生じる。最大硬化又は強化は、時効処理がこれら微細析出物の少なくとも一つのタイプの臨界分散の形成につながる場合に生じる。
上述した熱処理手順の代替は、T5焼きもどしとして知られているものである。この場合、いくらかの高温を保っている間に合金を鋳造直後に焼き入れし、その後に人工時効して物性を更に穏やかに改善する。
溶体化処理条件は、種々の合金系によって異なる。一般に、Al−Si−Xに基づく合金を鋳造するには、溶体化処理を525℃から540℃で数時間実行して、合金中にSi(ケイ素)粒子の適切な球状化焼きなましを生じ、かつ熱処理に適した適切な飽和固溶体を生じる。例えば、金属ハンドブック、第9版、第15巻、p.758−759には、鋳造合金を溶体化処理してこれらの変化を提供するための一般的な時間及び温度を提供する。通常、Al−Si−Xに基づく合金の溶体化処理時間は、特定の合金及び溶体化処理の温度に応じて4から12時間の間であり、多くの合金では8時間以上である。溶体化処理の時期は、通常、合金が所望の溶体化処理温度の小さな範囲(例えば10℃以内)内に達すると開始するものと見られており、これは炉の特性及び負荷の大きさによって変えることができる。しかしながら、このプロセスは、従来のアルミニウム合金高圧ダイカスト鋳物に適用すると、鋳物上に実質的に受入れがたい表面ブリスターを生じるため、適切でない。
米国特許第6773666号公報 米国特許第4104089号公報 米国特許第3382910号公報
本発明は、アルテンホール及び他の出典中で議論されているような、より高価な代替の成分製造技術を使用する必要性を取り除く時効性アルミニウム合金の高圧ダイカスト(HPDC)鋳物の熱処理方法を提供する。本発明は全ての時効性アルミニウム合金HPDC鋳物に適用できるが、特にダイカスト法により内部気孔が残存するものに適用できる。かかる鋳物は、冷圧室ダイカスト機を使用し、また、従来の熱処理の影響を受けやすいような十分に気孔のない鋳物を選択するために生成する鋳物中のポロシティのレベルを測定する必要がないような、従来の又は通常のHPDC法と見なすことができるものによって製造することができる。即ち、型キャビティーから空気を引き抜く高真空の利用なしに、かつ型キャビティーから空気をパージするための反応性ガスの使用なしに、合金を金型中の一以上の型キャビティーを充填するように加圧下で鋳造する。従って、合金は、鋳造の開始に自然な周囲雰囲気にさらし、大気圧である金型内で鋳造できる。結果として、本発明を適用可能な鋳造は、ポロシティの存在によって特徴付けることが出来る。ポロシティの存在は、いくつかの方法によって決定することができる。例えば、鋳放し合金の断面の光学顕微鏡検はポロシティを示すであろう。X線写真もまたポロシティを示すが、容易に観察するに十分解析可能又は大きいもののみである。
本発明は、時効性アルミニウム合金の高圧ダイカストによって製造された鋳物の熱処理方法を提供し、該方法は下記のステップ:
(a)溶質元素を固溶体中に取り込むことが可能な温度でかつその温度範囲内に鋳物を加熱することにより該鋳物を溶体化処理し、
(b)鋳物を100℃以下の温度に焼き入れすることにより鋳物を冷却してステップ(a)を終結し、
(c)自然時効又は人工時効させることが可能な温度範囲で鋳物を保持することによりステップ(b)後の鋳物を時効させることを備え、
鋳物中に受入れがたいブリスターを生じる鋳物における気孔の膨張なしに時効硬化を可能にする溶質元素溶液のレベルを達成するようにステップ(a)を行うことを特徴とする。
一形態において、本発明は、通常ポロシティを示す時効性アルミニウム合金の高圧ダイカスト鋳物の熱処理方法を提供し、かかる方法は、
(a)溶質元素を固溶体に取り込むことが可能な温度でかつその温度範囲内にダイカスト鋳物を加熱し、かかる加熱を、
(i)鋳物の合金の固相線溶融温度より下の20から150℃の範囲内で、
(ii) 30分未満の時間で行い、
(b)鋳物を0から100℃の温度で液体焼入れ材中で焼き入れすることにより該鋳物をステップ(a)の温度範囲から冷却し、
(c)合金の硬化又は強化を示す時効硬化鋳物を製造し得る温度範囲で鋳物を保持することによりステップ(b)の焼き入れした鋳物を時効することを備え、
これにより時効硬化鋳物でのブリスター発生を少なくとも実質的に最小又は抑制することを特徴とする。
ステップ(b)における焼き入れは、ステップ(c)の強化に適した温度とすることができる。ステップ(c)における時効は、自然時効又は人工時効でもよい。すなわち、前者の場合、合金を周囲温度、つまり加熱を必要としないような0℃から45℃、例えば15℃から25℃の範囲内の一般的な大気温度で保持することができる。或いは、鋳物を周囲温度以上に加熱することにより人工時効してもよい。人工時効は、好ましくは50℃から250℃、より好ましくは130℃から220℃の範囲に加熱することによるものである。
ステップ(a)における加熱の持続時間は、固相線溶融温度より下の20から150℃の範囲の下限に加熱するための時間を含んでもよい。かかる範囲に達すると、鋳物を上記範囲内の一以上の温度レベルで30分間未満の持続時間保持できる。或いは、ステージ(a)における鋳物の加熱は、特定の温度範囲内において非等温にできる。
ステップ(a)は、少なくとも一部を非等温的に行うか又は実質上完全に非等温的に行ってもよい。或いは、ステップ(a)を実質的に等温で行ってもよい。
ステップ(c)において、鋳物に人工時効を施す場合、該鋳物を人工時効温度範囲内の一以上の温度レベルで保持してもよく、或いはかかる時効は、鋳物を上記範囲内の最大値まで増加させることができる温度によるように非等温的に実行できる。
ステップ(c)は、時効硬化鋳物が完全なT6焼き戻しの場合に比べ時効不足条件、ピーク時効条件、又は過時効条件にあるように実行してもよい。本発明の方法においては、鋳物をステップ(b)とステップ(c)の間で冷却してもよい。ステップ(c)が人工時効をもたらす場合、ステップ(c)に対する時効温度からの鋳物の冷却は、焼き入れによるものとすることができる。或いは、鋳物を空気又は他の媒体中での緩徐な冷却のようにステップ(b)で人工時効温度からゆっくりと冷却してもよい。ステップ(c)の後の鋳物は、通常その鋳放し条件から寸法変化がない。
従来の熱処理に関して、溶体化処理温度における時間は、最大溶質分固溶体の合金均質化及び発達をもたらすことにある。これに対し、本発明のステップ(a)では、合金が使用した時間枠不足により十分に均質化又は平衡化されず、また形成された固溶体はその所定の期間の温度で完全に平衡状態になることが期待されない。即ち、溶体化処理は、アルミニウム合金の熱処理における現在の実務対し事実上部分的なものである。
本発明に由来する熱処理された鋳物は、型キャビティーをほぼ完全に溶融合金により充填された従来の又は通常の高圧ダイカスト法によって製造してもよい。型キャビティーから空気を引き抜くための手法に高真空を適用しないので、合金中の乱流により封入ガス及び内部ポロシティを生じうる。また、鋳物を、コープらの国際特許出願WO026062号パンフレット中に開示され、また本発明に関して譲渡された技術の変形によって製造してもよい。コープらの技術においては、型キャビティー充填物が先頭部分の半固体合金によるもので、生成するポロシティが該合金中において更に細かく分散している。しかしながら、かかる従来の又は通常のHPダイカスト法の変形により製造した鋳物の熱処理は、場合によってはブリスターを生じる可能性があり、かかる変形の鋳物も本発明の適用による恩恵を受ける。
本発明の方法は、あらゆる時効性アルミニウム合金から製造した高圧ダイカスト鋳物に適用することができる。しかしながら、本発明に最も適した合金は、4.5から20質量%のSi、0.05から5.5質量%の銅, 0.1 から2.5質量%のFe及び0.01から1.5質量%のMgを有するAl−Si合金である。かかる合金は、任意に1.5質量%以下のNi、1質量%以下のMn及び3.5質量%以下のZnの少なくとも一種を含んでもよい。いずれにしても、偶発的な不純物以外の残余はアルミニウムからなる。存在しうる偶発的な不純物としては、特に限定されないが、Ti、B、Be、Cr、Sn、Pb、Sr、Bi、In、Cd、Ag、Zr、Ca、他の遷移金属元素、他の希土類元素及び希土類化合物並びにこれら化合物の炭化物、酸化物、窒化物、無水物及び混合物が挙げることができる。偶発的な不純物は鋳物間で変化する可能性があり、また、それらが存在することが本発明の著しい不利益となることはない。
特にAl−Si合金の鋳物を用いると、該鋳物をステップ(a)の前に100℃から350℃の範囲で予備加熱することができるので、ステップ(a)に適した温度範囲への加熱に要する時間を最小化できる。
かかるAl−Si合金を用いると、この後で詳細に記載するように、ケイ素は本発明の方法において重要な働きをする。
上述したように、本発明の方法によって熱処理した鋳物に、鋳造合金の固相線溶融温度から下の20から150℃の温度範囲で30分未満の期間の溶体化処理を施す。かかる温度範囲内での溶体化処理期間は20分未満、好ましくは例えば2から15分などの15分以下にしてもよい。
鋳物を水中で0から100℃の範囲のより高温で焼き入れすると、該鋳物は相当な熱エネルギー含量を有しうる。この場合、所要に応じて、合金をより高温から急速に冷却してもよい。
本発明方法のステップ(a)を始める前に、鋳物は、高真空又は反応性ガスを使用する必要なしに、従来の高圧ダイカストマシンにおいて高圧ダイカストされたものを意味する“鋳放し”と称される。ステップ(a)の開始前に、合金が周囲温度、又は予備加熱されているか又は鋳造プロセスからのいくらかの熱エネルギーを保持する場合には200℃から350℃のようなより高い中間温度にすることができる。ステップ(a)では、合金を本発明にかかわる溶体化処理ステップに適した温度範囲で適切な時間加熱する。ステップ(b)の後に、鋳物は“溶体化処理された”又は“溶体化処理及び焼き入れされた”と称することができる。ステップ(c)の後、鋳物は“析出硬化された”又は“時効硬化された”と称することができる。
本発明の熱処理を通常のポロシティを示すHPDCに適用すると、表面ブリスターが予期しないほど最小化されるか、又は全く存在しなくなる。成形品は寸法安定性を保ち、また機械的物性が大きく増加する可能性がある。
図1は、ゲートでの金属の速度を示すショットスピード26m/sにおけるHPDC法により製造したCA313合金の円筒状の引張サンプルの頭部断面の顕微鏡写真である。高真空又は反応性ガスのいずれかを使用することなしに、従来の冷圧室マシンを使用した。顕微鏡写真は従来の多くのHPDCに特有のポロシティを示し、また数ミクロンの大きさから数百ミクロンの大きさまでの気孔径範囲を示す。理解されるように、所定のHPDC中のポロシティの大きさ及びレベルは、鋳物間で広範に変えることができる。
図2のプロットは、本発明の例として代表的な溶体化処理の加熱サイクルを示す。“A”として矢印付けたプロットは、サンプルを取り付けてない炉内に設けた熱電対で得た加熱サイクルを示す。また、“B”として矢印付けたプロットは、直径12.2mmの筒断面の中間点でサンプル内に確実に組み込まれた熱電対で得た、重量約25gのより小さいHPDCサンプルの加熱速度を示す。こうした大きさ及び型のサンプルに対して、溶体化処理ステップ用の加熱の総時間は15分(900秒)である。このサンプルは、540℃に近い固相線温度を有するHPDC合金CA313である。かかる合金を490℃にセットした加熱炉中に置いた。このサンプルは130秒で390℃(固相線より約150℃低い)に達し、次いで最終的な指定温度である490℃まで次の290秒にわたって上げ続けた。指定温度に達するまでにかかった総時間は420秒、すなわち7分間であった。
また、図2は“C”として矢印付けたプロットを示し、これはより大きいHPDCサンプル内の2カ所に確実に埋め込んだ熱電対の熱サイクルを描画しており、一つはサンプルの断面中の炉中の強制気流中に直接位置し、もう一つはサンプル断面内の強制気流から完全に遮蔽して置いた。より大きなサンプルの質量は550gであり、壁の最大厚さは15.2mmであった。こうしたサンプルは、炉設定温度475℃に対し30分又はそれ以上の炉浸漬総時間で寸法の不安定性及びブリスターの発生を示すが、20分の炉浸漬総時間では何も示さないことが実験により見出された。この合金は555℃に近い固相線温度を有するCA605鋳造合金であった。この合金は450秒(7.5分)の加熱炉中の浸漬で395℃に達した。この合金の温度を、1140秒(19分)の浸漬時間まで上げ続けた。次いで、サンプルを475℃で60秒間保持し、水焼き入れした。この場合、溶体化処理ステージは事実上非等温的であった。
図2で追跡したサンプルに関して、CA313合金及びCA605合金は、説明した溶体化処理サイクル及び表示した溶体化処理温度及び時間からの焼き入れに続く人工時効(T6)中に、それぞれ強力な時効硬化反応を示した。
図2から明白なように、驚くべきことには、溶体化処理プロセスの多くが非等温的に実行されるため、等温的な溶体化処理においてサンプルによって費やされた時間が、特定の温度範囲中で費やされた時間よりも本発明で重要でなく、最終温度が焼き入れ前に到達した。本発明の方法に従い処理した結果、既知の熱処理法によって引き続き時効硬化した場合、HPDCサンプルにはブリスターがなかった。
図3中に示す鋳物3(a)から3(i)は、真空の適用及び反応ガスの使用なしに従来の冷圧室マシンを用いるHPDC法によって製造した。従って、各鋳造サイクルの開始時に、型キャビティーは周囲圧力であり、また型キャビティー充填中に溶融合金によって部分的に置き換えかつ部分的に封入し得る空気を含んでいた。それ故、これら鋳物は、約555℃の公称固相線温度を有し、Al−9Si−0.7Fe−0.6Mg−0.3Cu−0.1Mn−0.2Zn−(他の元素の総量が<0.2)(質量%で)を含む従来のオーストラリア指定合金CA605から、内部ポロシティを示すようになる条件下で製造した。かかる条件としては、型キャビティーに対するゲート内で約26m/sの緩徐なショットスピードが挙げられる。
CA605の合金組成の鋳物は、図3の鋳物に使用したHPDC法によって製造する場合、時効硬化熱処理の影響を受けにくいと見られている。これは、高温(例えば525−540℃)での溶体化処理中に内部気孔の拡張によって生じる表面ブリスターのためである。
図3に示した鋳物は、全長100mmの引張試験棒である。これらは長さ33mmで直径5.55mmの中央部内径断面を有し、長さ27mmで直径12.2mmの各ヘッド部と移行部分を通じて結合している。図3中に示す鋳物のうち、鋳物3(b)から3(i)はそれぞれ溶体化処理後について示しているが、鋳物3(a)は鋳放し状態である。溶体化処理は表1に提示した通りである。
Figure 0005236948
鋳物3(a)は、アルミニウム合金の高圧ダイカスト鋳物の品質仕上げ特性を示す。鋳放し条件での鋳物3(b)から3(i)は、それぞれ同一の高品質な表面の仕上がりを示し、図3(a)に示したものと同じ鋳造バッチから任意に選択した。公称固相線から約10℃低い545℃で16時間溶体化処理をした後の鋳物3(b)は、その全体にわたって相当なブリスターを示す。これは、封入内部ガス状ポロシティが膨張したことによるもので、これは恐らく溶体化処理温度での最大容積膨張に近い。更に、サンプルの寸法を測定したところ、長さ及び幅が著しい増加したことが明らかになった。このことは、寸法不安定性を導く高温クリープのプロセスに特有のものである。鋳物3(b)と対照的に、鋳物3(c)は、545℃で15分(該温度までの加熱を含む)間だけの溶体化処理後に、ブリスターのレベルが実質的に減少したものの、このレベルはまだ受入れがたいもので、依然としていくらかの高温クリープを生じた。535℃で0.25時間(該温度までの加熱を含む)溶体化処理した鋳物3(d)により更なる改善が示され、実質的にブリスターがなかったが、一方鋳物3(e)から3(i)もまたブリスターがなく、鋳物3(a)に匹敵する表面仕上げを有する。鋳物3(b)から3(i)は、鋳物の溶体化処理温度及び/又は総時間を減ずると、それに応じてブリスターの発生及び形成傾向が減少することを示す。
図4は、図3の鋳物3(a)から3(i)のそれぞれから調製した内部断面の顕微鏡写真4(a)から4(i)を示す。これらは、種々の熱処理条件に対するポロシティのレベルの差異を示す。更に、図4は熱処理により生じうるブリスターのレベル、またこれを本発明によっていかにして制御しうるかを示す。図4(a)は、鋳放し合金3(a)中に存在するポロシティを示し、これはまた溶体化処理前の鋳放し条件での鋳物3(b)から3(i)のそれぞれに特有のものを示す。図4(b)から4(f)は、溶体化処理の結果として生じた気孔の膨張を示す。図4(b)の場合、膨張が極端で、表面上での広範なブリスター発生及び図3に示した鋳物3(b)で明らかなような高温クリープを生じる。また、図4(c)は気孔の相当な膨張を示すが、鋳物3(b)と比較した場合に、鋳物3(c)で示されたブリスターのレベルの実質的な減少をもたらす。図4(d)から4(f)は、気孔膨張の有意であるが減少したレベルを示すが、これは鋳物3(d)から3(f)によって示されるような相当なブリスターを生じるには不十分なものであった。図4(g)から4(i)は、もし認識可能な気孔膨張があったとしても少ししかなく、高品質でブリスターのない鋳物3(g)から3(i)に一致する。
図5は、溶体化処理に続いて180℃で時効した際の、図3の鋳物3(b)から3(i)の各析出硬化に対する合金CA605のそれぞれの反応を示す。鋳物3(b)から3(i)のそれぞれについて図5中にプロットした点は、図5の右に示す説明文に従い区別され、黒ダイヤモンド及び545℃、16時間として示された3(b)から白三角及び485℃、0.25時間として示された3(i)と降順している。鋳物3(b)から3(g)について図5に示されているように、ピーク硬度を達成するための時効速度は、溶体化処理温度の上限545℃から下限505℃の間で変化しない。図5の破線は、鋳物3(b)から3(g)のそれぞれに由来するデータの一般的な傾向線である。505℃未満では、鋳物3(h)から3(i)に対する時効速度がいくらか減少する。しかしながら、鋳物3(h)から3(i)の合金の時効硬化で得られる硬度値は、依然として驚くほど高く、これは特に鋳物3(h)と3(i)に対する低温で短期間の溶体化処理により得られる。
図6は、図3に示した鋳物と同じ合金CA605及び試料寸法を使用し、同じ方法で製造した4つの鋳物6(a)から6(d)を示す。鋳物6(a)は鋳放し又は非加熱処理状態であり、一方鋳物6(b)から6(d)は515℃でそれぞれ5、15及び20分の溶体化処理されている。図6は鋳物の表面を示し、これから、鋳物6(d)に矢印付けように、約20分でブリスターが始まり、15分ではないことが分かる。
図7は、515℃で5分及び15分溶体化処理した際の、鋳物6(b)及び6(c)それぞれに対する時効硬化への合金CA605の反応を示す。鋳物6(b)と6(c)の合金間では硬化速度又はピーク硬度に差異がないことを図7から指摘しうる。
表IIは、真空の適用及び反応性ガスの使用なしに従来のHPDC法により調製し、一般的なレベルのポロシティを含み、その後様々な熱処理をした鋳物のCA605合金の引張特性を纏めている。これら鋳物に関して、26m/sの緩徐なショットスピード、82m/sの速いショット速度又は123m/sの非常に速いショット速度を使用した。これらスピードはゲートにおける金属の速度である。
Figure 0005236948
表IIにおいて、略語は以下意味を有する。
(1)サンプルAからDに関する“HPDC”は、図3及び4のそれぞれの鋳物について上記従来の方法により、またゲートにおいて26m/sの緩徐なショット速度を使用して調製した鋳物を示す。
(2)サンプルEからHに対する“速いスピードのHPDC”及びサンプルIに対する“非常に速いスピードのHPDC”は、それぞれ、82m/s及び123m/sの(ゲートにおける)ショット速度を示す。
(3)“CWQ”は冷水による焼き入れを示す。
(4)サンプルHに関する時効の指示記号としての“T614”は、ラムレーらの国際公開第WO02070770号パンフレットの開示に従う時効を表し、ここで初期温度における合金の人工硬化を比較的短い期間後に焼き入れすることによって拘束し、然る後合金を第2の時効が起こり得るに十分な温度及び時間で保持する。
表IIに示すように、本発明を使用することにより得ることが可能な引張特性により、非常に有益な時効硬化の効果が明らかになる。特性のレベルは、従来の時効処理と比較した場合、如何なる有意な妥協も反映せず、またそれにもかかわらず、ブリスターを示す熱処理した鋳物を用いることなく従来のHPDCにより製造した鋳物で得られた。また、表IIは、本発明に従い溶体化処理、焼き入れ及び時効する前に鋳造プロセスから焼き入れすること本発明にとって無益であることを表している。
図8は、図3に示した鋳物と同じ方法、同様の形態及び寸法で製造した鋳物8(a)から8(j)を示す。しかしながら、図8に示す鋳物は、538℃の通常の固相線温度を有し、また(質量%で)Al−8.8Si−3Cu−0.86Fe−0.59Zn−0.22Mg−0.2Mn−(Pb、Ni、Ti、Sn、Crの合計が<0.15)を含むことが見出された従来のオーストラリア指定合金であるCA313から製造した。
また、このCA313合金の鋳物は、鋳物8(a)から8(j)に使用した従来のHPDC鋳造法により製造される場合、表面ブリスターの発生及び寸法安定性の損失により熱処理の影響を受けやすいとは思われていない。
図8中に示す鋳物は、鋳物8(a)が鋳放し状態にあり、一方鋳物8(b)から8(j)が総浸漬時間15分で表IIIに示す様々な条件下において溶体化処理した点で異なる。
Figure 0005236948
鋳物8(b)は固相線温度に著しく近い溶体化温度により寸法の不安定性を示すが、次に低い溶体化温度での鋳物8(c)又は他の鋳物においてかかる不安定性の証拠は、もしあったとしてもほとんどない。しかし、鋳物8(b)及び8(c)は、それぞれ受容しがたいブリスターを示す。鋳物8(d)及び8(e)の両方は、許容しがたい棄却率を示す大きなブリスターを一つとより小さいブリスターのいくつかを示し、一方鋳物8(f)から8(j)は、溶体化処理後に上質な仕上がりを示し、またブリスターの痕跡を示さない。
一方として鋳物8(b)から8(j)と、また他方として図3の鋳物3(c)から3(i)との間の比較は、それぞれCA313合金とCA605合金の反応の間の差異を示す。このことは、CA605合金の溶体化処理に対する時間と温度との関係に比べて、CA313が所定の処理時間に対してより低い溶体化温度、又は所定の温度に対してより短い処理時間を用いる必要がある傾向を示す。この対比は、固相線温度より低い20℃−150℃の範囲内にするために溶体化処理温度を制御し、またHPDCアルミニウム合金を熱処理する場合にかかる温度領域において30分未満の時間を使用する必要があることを浮き彫りにする。
図9は、それぞれ図8の鋳物8(a)から8(i)の合金の視覚的なミクロ構造を示す顕微鏡写真9(a)から9(j)である。このように、図9は図4と同じような状況を提供するが、CA313合金の鋳物に関するものである。従って、図9(a)は鋳放しの鋳物8(a)に存在するポロシティを示す。図9(b)及び9(c)は、それぞれ鋳物8(b)及び8(c)に対する溶体化処理の間の気孔の膨張に由来するブリスター形成を示す。図9(d)から9(e)は、気孔膨張の実質的な回避を示し、その結果、鋳物8(d)から8(e)に対する溶体化処理に由来するブリスター形成が抑制され、一方図9(f)及び9(j)はそれぞれ気孔膨張及び鋳物8(f)及び8(j)に対する溶体化処理でのブリスター発生の実質的に完全な回避を示す。
図10は、図8に関して記載したそれぞれの溶体化処理条件の後の150℃での時効による図8の鋳物8(b)から8(j)の各CA313合金の析出硬化挙動を示す。合金CA605について図5に示した時効速度とは異なり、図10は、CA313合金の時効速度及びピーク硬度が溶体化処理温度を約490℃から480℃のレベルまで下げると増加し続け、次いで溶体化処理温度が上記レベル未満まで降下すると、再び減少し続けることを示す。各曲線は、それぞれ図10の右にある説明文に示した溶体化処理温度による鋳物と関連づけることができる。驚くべきことに、440℃のような低い温度で溶体化処理した合金でさえ、有用な時効硬化反応を示す。
図11は、24時間の時効までの図10と同様の析出硬化データを示す。プロットは、鋳物8(b)から8(j)の異なる溶体化処理温度に対する150℃における硬度の増加を時間の関数として示す。図11の記号は図10のものに対応する。
図12は、一連の8つの鋳物12(a)から12(h)のCA313合金に対する490℃での溶体化処理時間の効果を示す。一連の鋳物はそれぞれ、図3に示した鋳物と同一のHPDC法により、また同じ形態及び寸法に製造した。鋳物12(a)は鋳放し状態であり、一方他の鋳物に関しては490℃での時間を表IVに示す。それ故、図12は490℃での保持時間の関数としてブリスターの発生を示す。
Figure 0005236948
鋳物12(d)から12(h)に示した矢印は、これら鋳物の表面上形成されたブリスターを示す。溶体化処理時間が増加するにつれて、約20分を起点として、ブリスターの発生が鋳物12(d)上での数個から120分の長時間で多数個まで増加する。
図13は、受け入れのままの状態及び緩徐な(26m/s)又は速いショット速度(82m/s)の何れかをゲートでの速度として用いて熱処理したCA313合金の引張特性のバラツキを示す。この場合、“HPDC”は上記表IVに示したのと同様の意味を有し、一方“速いスピード”は表II中の“高速HPDC”と同様の意味を有する。
表Vは、T6、T4、T6I4又はT6I7条件の何れかで調製したHPDC CA313合金の引張特性を示す。各合金は最高温度490℃で15分間(該温度までの加熱時間を含む)溶体化処理し、冷水で焼き入れし、それから時効した。T6焼き戻しに対する人工硬化を150℃で行った。T4焼き戻しに関しては、合金を上記の通り溶体化処理し、次いで〜22℃で14日間露曝した。
Figure 0005236948
T6I7条件に関しては、2又は4時間の不十分な時効を行い、次いで二次的析出を抑制するように油中約4℃/分で緩徐に冷却したサンプルを示す。T6I4焼き戻しは、表Iに示した例のようにT6引張特性と同等に得るよりむしろ伸びを保つように設計されている。これらを150℃で2時間人工時効し、焼き入れし、次いで4週間65℃で露曝する。合金サンプルは、図3に示した合金と同じ形態及び寸法の鋳物に由来する。
表VIは、焼き入れ及び析出硬化前15分又は120分のいずれかで溶体化処理した図3の鋳物の形態及び寸法の更なる鋳物に対して記録された従来のCA313 HPDC合金の引張特性を示す。表VIは、従来の溶体化処理時間に比べて短い溶体化処理時間を使用することによる機械的特性の利点を示す。析出硬化前に120分間の長い溶体化処理時間を受けたサンプルは、より大きなサンプルのバッチからゲージ長上に実質的なブリスター発生を示さないものとして選択されているが、図12の例中に示すように、この条件でも表面ブリスターが依然としてはっきり分かる。表VIは、表面ブリスターを示すのに加えて、120分の状態での機械的特性が、本発明によって処理されたサンプルに比べて減少していることを示す。
Figure 0005236948
表VIIは、真空の適用又は反応性ガスの使用なしに標準的なポロシティのレベルを含み、時効硬化処理に起因する試料大きさの潜在的な効果を検討するために円筒状試料及びより小さく平らな試料を製造するためのHPDCである合金CA313の引張特性のデータを示す。比較のために含まれる円筒状の試験片は、図3に示したものと同じ大きさ及び寸法である。
Figure 0005236948
これら特定の平らな鋳物は、ヘッド幅14mm、ヘッド長さ13mm、平衡ゲージ長30mm及びゲージ幅〜5.65mmを有する長さ70mm及び厚さ3mmの寸法である。かかる鋳物は、26m/sの緩徐なゲート内ショット速度及び82m/sの速いゲート内ショット速度で従来のHPDCにより調製した。表VII中の“緩徐な”及び“速い”という用語は、表IIと同じである。490℃から440℃の範囲での溶体化処理温度を、緩徐な速度及び速い速度の両方の高圧ダイカスト鋳物に対して検討した。5以上の試料をすべての条件で試験し、また溶体化処理の全浸漬時間を15分とした。表面品質は、検討した円筒状引張棒からわずかに異なっているのが見出されるので、同様に注目される。しかし、引張結果は異なった試料寸法間で良好な相関関係を示した。表VIIの結果を図14に纏める。図14において、黒ダイヤモンドは緩徐なスピードのHPDCの0.2%耐力を示し、白ダイヤモンドは緩徐なスピードのHPDCの引張強度を示し、黒三角は速いスピードのHPDC0.2%耐力を示し、白三角は速いスピードのHPDCの引張強度を示す。図14は、490℃で溶体化処理した合金よりもわずかに高い引張強度及び伸びを示すので、CA313合金のこれら変更した寸法に対する最適な溶体化処理温度が480℃であることを示唆している。
図15は、それぞれ同じCA313合金組成について、HPDC鋳物“A”に対する本発明の方法と、重力鋳型鋳物“B”の断面を比較している。合金はAl−9Si−3.1Cu−0.86Fe−0.53Zn− 0.16Mn−0.11Ni−0.1Mg−(Pb、Ti、Sn、Crは<0.1)の組成であった。
驚くべきことに、HPDC鋳造のCA313合金は、重力鋳造による同じ合金よりもより早く且つより高いレベルで硬化する。両鋳造法において、490℃に予備加熱した炉内での総浸漬時間は15分とした。図15は、本発明の方法が、異なる鋳造方法によって製造した合金の熱処理にある意味で適しているけれども、炉内浸漬時間が同じ場合には、HPDC鋳造に対する時効反応が実質的に改善されることを示す。
図16は、図15で使用したCA313合金に対する3つの異なる条件下での時効曲線を提供する。“A”は、HPDC合金でブリスター発生を避け強度を高めるために使用した従来既知の方法であるT5焼き戻しに関する。T5焼き戻しに関しては、鋳放し合金を鋳造に続いて直接熱処理する。この条件での時効に対しては、150℃で80−100時間の時効により、合金が約115VHNのピーク強度に達する。
図16中の“B”は、本発明の方法を使用した場合のT6焼き入れの例である。合金には、冷水の焼き入れ及び150℃での人工時効前に、490℃の溶体化処理温度までの加熱を含む総溶体化処理浸漬時間を15分とした。約153VHNのピーク硬度が約16−24時間の内に達する。
図16の“C”は、本発明の方法によるT4焼き戻しに関する。冷水による焼き入れ及び22℃での自然時効の前に、合金をサンプル“B”と同じように溶体化処理する。かかる合金は、22℃で約100時間の時効後、約120−124VHNのピーク硬度近くに達し、この後硬度がより長い持続時間でわずかだけ変化する。
図16中に示した方法プロセス“B”及び“C”の代替又は組み合わせにおいては、完全なT4焼き戻しを施した合金のサンプルをその後150℃で24時間人工時効した。この処理後の最終的な硬度は148VHNであった。この場合、合金を溶体化処理し、22℃で860時間自然時効し、次いで150℃で人工時効する。すなわち、必要に応じて、T4焼き戻し処理した合金を、その後の人工時効によって更に強化できる。
図17は、490℃にセットした炉内で15分の総浸漬時間により溶体化処理し、続いて150℃、165℃及び177℃で析出硬化したCA313合金の析出硬化反応を示す。熱処理への反応はそれぞれの場合で異なるけれども、全ての合金は析出硬化に特有の強度能力を示す。
図18は、500℃で15分の総浸漬時間溶体化処理し、冷水で焼き入れし、177℃で時効させたAl−9.2Si−1.66Cu−0.83Fe−0.72Zn−0.14Mn−0.11 Mg−(Ni、Cr、Caは<0.1)の組成と、〜574℃の固相線温度を有する合金に対する析出硬化反応を示す。図15及び16で用いたCA313合金に比べて減らしたCu含量を有するこの合金組成に対しては、選択した方法表示内で、時効硬化処理が依然として効果的である。
図19は、図15に詳説したと同じ組成を有するHPDC CA313合金の鋳放し条件、本発明方法によるT4焼き戻し条件、又は本発明方法によるT6条件の何れかで試験した疲労試験結果を表示している。サンプルは表VIIに関して記載した平らな試験棒と同じ寸法であり、焼き入れ及び時効前に480℃で15分の総浸漬時間溶体化処理した。疲労試験は、31から310Nの曲げ荷重で、3点曲げ試験リグの中で実行した。図19に示すデータは少なくとも5つの別々の試験の平均である。この荷重レベルでの疲れ寿命は、T4焼き戻し及びT6焼き戻しの両方に関して鋳放し条件でのもの以上に増加した。
図20は、鋳放し条件でのCA605合金及びCA313合金の組成並びに本発明による様々な焼き戻しに対し熱処理した同一鋳造バッチからの同一組成の鋳物に対する仕様内である合金に対応するアルミニウム合金の引張強度に対する0.2%耐力のプロットを示す。各データ点は、5−10の引張サンプルの平均を表す。鋳放し特性は、“A”とラベルする。熱処理データ点は異なる焼き入れに対するもので、全て本発明を踏まえており、“B”とラベルする。
図21は、鋳放し合金“A”との比較で本発明による焼き戻しの範囲に関する故障時伸び%に対する耐力のプロットを示す。一般的に、強度が増加し、ある場合には伸びもまた増加する。
本発明の方法は、アルミニウムHPDC合金の本組成範囲に限定されない。HPDC合金の仕様に関する組成範囲は、国によって変わるが、多くの合金は合金の組成と等価であるか又は重複している。引張特性における合金化学の効果を9種類の合金を用いて検討したが、このいくつかは本発明の合金仕様の中に収まり、またいくつかは実験組成であった。表VIII−XVIに示す結果は、鋳放し状態、溶体化処理状態(本発明に従い溶体化処理し、直ちに試験した)、T4焼き戻し(25℃で2週間の自然時効)及びT6焼き戻し(150℃で24時間の時効)に関して示す。表VIII−XVIの全てについて、ゲート内でのショット速度を82m/sで一定に保った。
更に、表VIIIにおいて、溶体化処理した合金をT6合金と同じ期間の人工時効前に冷間で2%引き延ばした場合のT8焼き戻しの効果を示す。表VIIIに関して、合金を65℃の熱水での溶体化処理からの焼き入れに続いてT6焼き入れへ時効する場合を除いて、溶体化処理からの焼き入れ全てを冷水中で実行した。表VIIIに示すT8焼き戻しは、矯正のような形成操作が合金の製造中に必要になる可能性を示す。65℃のような熱水での焼き入れ及び保持により準備した例は、Al−Siに基づく鋳造合金の熱処理における一般的な工業的手法を示す。
各例において、合金の引張特性が変化することは明白である。特徴的なことに、また全く驚くべきことに、全ての条件における溶体化処理合金は、鋳放し合金の事実上2倍ないしそれより大きい伸びを示す。T4焼き入れにおいて、伸びが鋳放し条件よりも高いことが特徴的であり、また、合金の0.2%耐力及び引張強度が改善される。T6焼き入れにおいて、伸びは一般に鋳放し条件よりもごくわずかに低いが、0.2%耐力及び引張強度は著しく改善する。
Figure 0005236948
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表XVIIは、工業的に製造された統計的な数の高圧ダイカスト鋳物に適用した本発明の実施化を示す。鋳物は以下の特徴を有する。
鋳物A:合金 CA313:複雑な部品、薄い壁、一定の厚さ及び重量約54g
鋳物B:合金 CA313:単純な部品、最大厚さ約8mm、最小厚さ約2mm、及び重量約49g
鋳物C:合金 CA313:複雑な部品、同一鋳物内の薄い部分及び厚い部分、最大厚さ約7mm、最小厚さ約2mm、及び重量約430g
鋳物D:合金 CA605:単純な部品、厚い壁、一定な厚さの断面、最大厚さ15mm、重量約550g
鋳物E:合金 CA605:Dと同様だが異なる部分がある、及び重量約515g
鋳物F:合金 CA605:非常に複雑な部品、同一鋳物中の多様な厚さの断面、最小の壁厚さ1.4mm、最大の壁厚さ約15mm
合金CA605がAl−(9−10)Si−(0.7−1.1)Fe−<0.6Cu−(0.45−0.6Mg)−<0.5Ni−<0.5Zn−<0.15Sn−<(他成分)0.25の公称規格を有している一方で、合金CA313はAl−(7.5−9.5)Si−(3−4)Cu−<3Zn−<1.3Fe−<0.5Mn−<0.5Ni−<0.35Pb−<0.3Mg−<0.25Sn−<0.2Ti−<0.1Cr<(他成分)0.2の公称規格を有していることに注意すべきである。
鋳物AからFを種々の時間で製造すると、組成がこれら所定の範囲内で変化することが予期される。
鋳物AからFは、全て工業的条件で製造した。熱処理前に、全ての鋳物をX線照射した。Aの75の鋳物には、X線検査によって測定されるような大きなポロシティが比較的ないが、細かい気孔がより高倍率で精査することによって観察された。しかしながら、500個の鋳物BからFの全てが、大きさが10mmまでの寸法を有する相当量の細かい及び大きなポロシティを示した。かかるポロシティの例を、熱処理前にX線を照射した一連の鋳物E由来の鋳物に関して図22に示す。図22は、参考のための環の特徴として示した直径が8mmのボルト穴での鋳物の断面である。放射線写真内のダークコントラストの特性は、ダイカスト法から生じるポロシティである。
鋳物D及びEは、鋳物の表面をショットブラストして薄い材料層を除去し、粗い仕上げ面を創出した状態で得られる。
それぞれの部品について、本発明による処理の日常的な決定に従う熱処理スケジュールを決定し、全ての部品を空気中でT6焼き入れまで熱処理し、次いで空冷した。
品質検査に基づいて、各部品に視覚的な評価を与えた。この評価は以下の基準に基づいた:“完全”の評価は、鋳放し表面仕上げと同等か又は優れていることを示し、ブリスターがなく、また寸法の不安定性がない部品に与えた。
“許容可能”の評価は、大きさが1mm以下程度の一つの小さなブリスターを示し、一般に検出するのに相当な精査が必要な部品に与えた。
“不合格”の評価は、一つの大きなブリスター、多数の小さなブリスター、又は一群のブリスターを示す部品に与えた。
Figure 0005236948
従って、熱処理した全ての部品のほぼ89%が、ブリスターや寸法の不安定性のない完全な表面仕上がりを示し、10%が検出に精密な検査を必要とする一つの小さなブリスターを示し、また1.4%が不合格と分類される原因となる一つの大きなブリスター又は一群のブリスターを示した。
本発明は、既知の従来法よりも優れた以下の主な利点を有する。従来法によって製造したHPDC合金は、ブリスターの発生により熱処理が可能であると思われていなかった。高真空の適用又は反応性ガスの使用なしに、従来のHPDCから製造した時効性アルミニウム合金鋳物は、ここに記載した適切な処理パラメーター内に時間と温度を保持することによって、ブリスターを発生することなく適切に溶体化処理できる。それ故、かかる鋳物は自動車及び他の消費用途に対し視覚上健全なものとすることができる。鋳物の合金を析出硬化又は強化して、鋳放し材料よりも実質的に高い特性をもたらすことができる。多くの場合、T4焼き入れが延性を改善する。また、機械的特性についての利点を図20及び21に纏める。これらは、鋳放し高圧ダイカスト鋳物の特性と比較した本発明により熱処理した高圧ダイカスト鋳物に関する0.2%耐力、引張強度及び伸びのデータを示す。図20及び21中に示すデータは、鋳放しの引張特性と本発明の焼き入れの変形によって得られるものとの比較の間の差異を示す。熱処理焼き入れに関しては、ブリスターなしの多孔質高圧ダイカスト合金の溶体化処理及び次の熱処理の方法を、ここに記載した熱処理手順を利用して実行する。
また、本発明は、優れた機械的及び/又は化学的及び/又は物理的及び/又は処理特性を引き出す方法として、従来鋳造合金として指定又は見なされていなかった時効性アルミニウム合金に適用することができる。
また、本発明は、優れた機械的及び/又は化学的及び/又は物理的特性を引き出す方法として処理経路又は析出処理をさらに修飾するのに添加した微量元素を有する合金に関する。
図23から32は、それぞれCA313合金により製造した高圧ダイカスト鋳物に関する。かかる鋳物は、250トンの型締力、50mmのショットスリーブ内径及び400mmの長さを有する東芝水平型冷圧室マシンで26m/sのゲート内速度を用いて製造した。該鋳物は円筒状の引張試験片であり、これらは、真空及び反応性ガスを使用することなく製造し、通常レベルのポロシティを含んでいた。
図23から26は、それぞれ光学顕微鏡写真を示し、これらは図23に10μmのスケールバーにより示される同一倍率である。図23及び24は、鋳放し状態での鋳物のそれぞれ端及び中央領域で撮られた代表的な顕微鏡写真を示す。図23及び24は、α−アルミニウム及びこれら領域間の共晶相での通常の変化を示す。図25及び26は、鋳物を490℃で15分間(490℃への加熱時間を含む)溶体化処理した後の、図23及び24に相当する鋳物の顕微鏡写真を示す。それぞれ端及び中央領域を撮った図25及び26は、短い溶体化処理時間によって得た共晶ケイ素の予期しない球状化レベルを示す。
図27及び28は、図8に示したCA313合金の円形引張試験片の鋳物に対する490℃での溶体化処理時間による平均ケイ素粒子面積の変化(黒ダイヤモンド)及びケイ素粒子の数の変化(星印)のプロットを示す。図28のデータは鋳物の中央領域でとったが、図27のデータは鋳物の端の領域でとった。図27及び28のプロットは、図23から26に示した両領域間のミクロ構造の差異の結果として異なる。プロット上の各データ点は、122063μmの標準的な領域である固定領域から複数の視野でとった。また、図25及び26と一致して、図27及び28のプロットは、より長い溶体化処理時間に比べて本発明に必要とされる9l短い溶体化処理時間内で達成されるケイ素粒子の面積及び数の実質的な変化を示す。図27及び28のプロットに関して、異なる条件での試験サンプルを、研磨前に、同等のサンプル上の正確に同じ場所でダイヤモンドソーで区分した。
図23から28のデータを参照すると、ケイ素粒子は溶体化処理中に先ずより多くの粒子数を有するより小さな平均粒子面積を与えるように寸断されると思われる。次いで、かかる粒子は、490℃の選択した溶体化処理温度で約20分の溶体化処理時間(この温度までの加熱時間を含む)で緩徐に成長する。これらCA313の鋳物に対して、本発明による溶体化処理を施した場合、20分の溶体化処理時間(この温度までの加熱時間を含む)でブリスター発生が明らかになり始め、更に長い溶体化処理時間で次第により許容できなくなる。
図25及び26に示され、図27および28で説明した結果は、Siの球状化が急速に起こることが予想されないため、非常に驚くべきものである。このことは、本発明の熱処理法によるブリスター発生の回避がケイ素の急速な球状化の直接的結果であることを示唆するものではない。しかしながら、図25から28のデータは、溶質元素の完全な溶解前に溶体化処理温度でミクロ構造の変化が生じうる速度を明らかにする一方、ブリスターの回避が発生する全体的な変化の一部の特徴に起因し得ることは明白である。
図29及び30は、鋳放しであるか又はT6焼き入れを施したかの何れかである、鋳放しの鋳物及び熱処理した鋳物の後方散乱電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真である。図29及び30において、明相は銅(例は“A”でラベルしている)並びに鉄含有粒子(“B”及び“C”でラベルされている例)により生じるコントラストを示す。ケイ素は、アルミニウムと原子番号が近いため見出されない。鉄含有粒子は針状で(“B”とラベルしている例)又は角のある形状(“C”とラベルしている例)で存在し、これら両方は銅含有粒子ほど白く輝かない。図29と30の比較は、本発明の手順に従うと、銅に富む相の相当量が本発明の溶体化処理中に溶解することを示す。熱処理手順後の銅に富む粒子の残余の例は、“D”とラベルされており、未溶解の銅を含む小さなまだら粒子として組成分析によって見出される。
図31は、[101]αに近いCA313合金鋳物の鋳放し合金の透過電子顕微鏡(TEM)像を示す。これは、α−アルミニウム粒子が極めて僅かな強化θ’析出(析出の方向を矢印付けした)を示すことを表す。更なる分析により、鋳放し状態におけるいくらかのα−アルミニウム粒子が析出を強化するのに明らかに且つ完全に欠けていることを見出した。また、図32は、本発明による熱処理後の等価な鋳物の[101]α近くでとられたTEM像であり、ここで鋳物は490℃で15分間溶体化熱処理し、冷水で焼き入れし、次いで150℃でピーク強度へ人工時効され、強化θ’析出物の大きさ及び分布に実質的な変化を示す。
最後に、本発明の精神又は範囲を逸脱することなく、前記部品の構成及び配列に様々な変化、修飾及び/又は付加を導入しうることを理解すべきである。
図1は、ミクロ構造内に含まれるポロシティを示す従来の高圧ダイカスト合金の断面の顕微鏡写真である。 図2は、オーストラリア指定合金CA313及びCA605時効性合金を用いて、本発明の溶体化処理熱サイクルの例を示す曲線のプロットを示す。 図3は、一連の9つの同じように製造されたCA605時効性合金の鋳物3(a)から3(i)の表面外観の写真であり、鋳物(a)は鋳放しを、また鋳物3(b)から3(i)はそれぞれ熱処理後を示す。 図4は、図3の鋳物3(a)から3(i)のそれぞれの断面から撮った一連の顕微鏡写真4(a)から4(i)である。 図5は、図3の鋳物3(a)から3(i)に対する溶体化処理及び時効後の180℃での人工時効時間に対する硬度のプロットを示す。 図6は、図3に示した合金の同じように製造された4つの鋳物6(a)から6(d)の第2シリーズの写真であり、鋳物6(a)は鋳放しを、鋳物6(b)から6(d)はそれぞれ共通の溶体化処理温度における増加時間後を示す。 図7は、図6の鋳物6(b)及び6(c)に対する180℃での時効硬化時間に対する硬度のプロットを示す。 図8は、CA313時効性HPDCアルミニウム合金の同様に製造された10個の鋳物8(a)から8(j)の一連の写真であり、鋳物(a)は鋳放しを、鋳物8(b)から8(j)はそれぞれ溶体化処理後を示す。 図9は、図8の鋳物8(a)から8(j)のそれぞれの断面から取った一組の顕微鏡写真9(a)から9(j)である。 図10は、図8の鋳物8(b)から8(j)の合金の溶体化処理後の150℃での人工時効時間に対する硬度のプロットを示す。 図11は、150℃で24時間までの時効に関する図10と同様のデータを示すプロットであり、図8の鋳物8(b)から8(j)の各曲線は時効温度における時間の関数としての硬度の増加を示す。 図12は、図8aに示したものと同じように製造されたCA313合金の8つの鋳物12(a)から12(h)の一連の写真であり、鋳物12(a)は鋳放しを、鋳物12(b)から12(h)は共通の溶体化処理時間における各溶体化処理時間後を示す。 図13は、緩徐な又は速いショットスピードの高圧ダイカスト法で製造された鋳物12(c)に対応する鋳物に関する引張特性のバラツキを示す。 図14は、時効硬化状態での更なる一連のCA313合金の鋳物の、溶体化処理温度に対する熱処理後の強度のプロットである。 図15は、市販の合金CA313に対する時効硬化反応のプロットであり、時効は、同一の溶体化処理時間に対するHPDCサンプル及び同じ合金のインゴットサンプルの間で比較している。 図16は、合金CA313に対する時効硬化反応のプロットであり、時効は本発明によるT4焼き戻し又はT6焼き戻し前に不連続溶体化処理ステップなしに(T5焼き戻し)又は不連続溶体化処理ステップの何れかで実行する。 図17は、市販の合金CA313の時効硬化反応のプロットであり、溶体化処理後の時効をそれぞれの温度で実行する。 図18は、HPDCによって製造された更なる時効性アルミニウム合金に対する時効硬化反応のプロットである。 図19は、鋳放し、T4及びT6条件に対するHPDCのCA313サンプルの3点曲げについて実行した比較疲労試験のプロットであり、T4焼き戻し及びT6焼き戻しについては本発明に従い準備した。 図20は、従来のHPDCによる鋳放しの適切な組成範囲内にあるアルミニウム合金CA605及びCA313と、本発明による異なる焼き戻しに関して熱処理を行った同様の組成範囲の鋳物との引張強度に対する0.2%耐力のプロットである。 図21は、鋳放し合金及び本発明による異なる焼き戻しに関して熱処理した合金の、伸び(故障における引張%)に対する0.2%耐力のプロットである。 図22は、CA605合金から製造した直径8mmのボルト穴内の鋳型近くのサンプル内でポロシティを示す厚さ〜15mmの壁を有し工業的に製造された部品のX線放射線写真である。 図23は、CA313合金の高圧ダイカスト鋳物の、それぞれ鋳物の端部及び中央での断面をとった光学顕微鏡写真である。 図24は、CA313合金の高圧ダイカスト鋳物の、それぞれ鋳物の端部及び中央での断面をとった光学顕微鏡写真である。 図25は、図23及び24に対応するが、本発明方法のステージ(a)に従い溶体化処理した後の鋳物のミクロ構造を示す。 図26は、図23及び24に対応するが、本発明方法のステージ(a)に従い溶体化処理した後の鋳物のミクロ構造を示す。 図27は、図25に示すような端部領域での溶体化処理温度で時間に対する各データ点に対する5つの個々の領域での122063μmの固定領域に関する平均ケイ素粒子面積及びケイ素粒子の数のプロットを示す。 図28は、図27と類似するが、図26に示した鋳物の中央領域に関するものである。 図29は、図23から26に関する各条件における鋳物の後方散乱電子顕微鏡(SEM)画像を示す。 図30は、図23から26に関する各条件における鋳物の後方散乱電子顕微鏡(SEM)画像を示す。 図31は、鋳放し状態での図23、24及び29の鋳物の透過電子顕微鏡(TEM)画像を示す。 図32は、図31と同様であるが、本発明によるT6焼き戻しに処理した合金を示す。

Claims (20)

  1. ガス状又は他のポロシティを示し、かつ、4.5から20質量%のSi、0.05から5.5質量%のCu、0.1から2.5質量%のFe、0.01から1.5質量%のMg、少なくとも1.5質量%以下のNi、1質量%以下のMn及び3.5質量%以下のZnの一つを有し、かつ残部がアルミニウム及び偶発的な不純物を有する時効性アルミニウム合金からなる、高圧ダイカスト鋳物の熱処理方法であって、かかる方法は、
    (a)溶質元素を固溶体に取り込むこと(溶体化処理)が可能な温度でかつその温度範囲内に、高真空の適用又は反応性ガスの使用なしに従来の高圧ダイカスト法によって製造された鋳物を加熱し、かかる加熱を、
    (i)鋳物の合金の固相線溶融温度より20℃下の温度から鋳物の合金の固相線溶融温度より150℃下の温度であり、525℃を超えない温度の範囲内で、
    (ii)30分未満の時間で行い、
    (b)鋳物を0から100℃の温度で液体焼入れ材中で焼き入れすることにより該鋳物をステップ(a)の温度範囲から冷却し、
    (c)0−250℃の範囲の自然時効又は人工時効温度において、ステップ(b)によって焼き入れした鋳物を時効することによって、少なくとも実質的にブリスターのない硬化又は強化鋳物を得ること、を特徴とする高圧ダイカスト鋳物の熱処理方法。
  2. 前記ステップ(c)における時効が、0℃から45℃又は15℃から25℃のような周囲温度での自然時効であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記ステップ(b)での焼き入れが、前記ステップ(c)の強化に適した温度へのものであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. ステップ(c)における時効が人工時効であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. 焼き入れした鋳物を、50℃から250℃の範囲の少なくとも一つ温度に加熱することにより人工時効を行うことを特徴とする請求項4記載の方法。
  6. 焼き入れした鋳物を、130℃から220℃の温度範囲に加熱することにより人工時効を行うことを特徴とする請求項4記載の方法。
  7. 請求項1のステップ(a)を一部非等温的に行うことを特徴とする請求項1から6の何れか一項記載の方法。
  8. 請求項1のステップ(a)を、実質的に完全に非等温的に行うことを特徴とする請求項1から6の何れか一項記載の方法。
  9. 前記ステップ(a)の一部を、実質的に等温的に行うことを特徴とする請求項1から6の何れか一項記載の方法。
  10. 鋳物を、ステップ(a)の前に100℃から350℃の範囲の温度に予備加熱することを特徴とする、請求項6が付加された場合の請求項1から9の何れか一項記載の方法。
  11. ステップ(c)を0℃から250℃以下の範囲において0℃から45℃、15から25℃、50から250℃、又は130から220℃のような少なくとも一つの温度レベルで実行することを特徴とする請求項1から10の何れか一項記載の方法。
  12. ステップ(c)後の鋳物が、完全なT6焼き戻しに比べて不十分な時効状態にあることを特徴とする請求項11記載の方法。
  13. ステップ(c)後の鋳物が、完全なT6焼き戻しに比べてピーク時効状態にあることを特徴とする請求項11記載の方法。
  14. ステップ(c)後の鋳物が、T6焼き戻しに比べて過時効状態にあることを特徴とする請求項11記載の方法。
  15. 鋳物をステップ(b)とステップ(c)の間で冷間加工することを特徴とする請求項1から14の何れか一項記載の方法。
  16. ステップ(c)の時効温度からの冷却が焼き入れによることを特徴とする請求項3から6の何れか一項記載の方法。
  17. ステップ(c)の時効温度からの冷却が空気又は他の媒体中での緩徐な冷却によることを特徴とする請求項3から6の何れか一項記載の方法。
  18. ステップ(c)後の鋳物は、表面ブリスターがないことを特徴とする請求項1から17の何れか一項記載の方法。
  19. ステップ(c)後の鋳物は、寸法変化がないことを特徴とする請求項1から18の何れか一項記載の方法。
  20. 請求項1から19の何れか一項の方法により製造した熱処理状態における時効性アルミニウム合金の高圧ダイカスト鋳物。
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