JPH1129843A - アルミダイカスト品の熱処理方法 - Google Patents

アルミダイカスト品の熱処理方法

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JPH1129843A
JPH1129843A JP18401097A JP18401097A JPH1129843A JP H1129843 A JPH1129843 A JP H1129843A JP 18401097 A JP18401097 A JP 18401097A JP 18401097 A JP18401097 A JP 18401097A JP H1129843 A JPH1129843 A JP H1129843A
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aluminum die
heat treatment
cast product
treatment
die casting
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Sanetsugu Onishi
脩嗣 大西
Shigetaka Morita
茂隆 森田
Atsuhito Seki
篤人 関
Nozomi Kageyama
望 影山
Masaaki Koga
正明 古閑
Toshifumi Kikuchi
俊史 菊地
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 元来ガスを含有しているアルミダイカスト品
の熱処理方法を提供することである。 【解決手段】 本発明のアルミダイカスト品の熱処理方
法は、元来ガスを含有しているアルミダイカスト品を熱
処理炉内で520〜560℃×1秒〜30分の加熱保持
を行い、その後水中焼入れする溶体化処理を施すことを
特徴とする。また、水中焼入れを施した後に、さらに人
工時効処理を施すことを特徴とする。また熱処理炉の雰
囲気圧をプラスとして、フクレを抑圧してその発生を防
止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウム合金
ダイカスト(以下、「アルミダイカスト品」という。)
の熱処理方法に関し、詳しくは高温−極く短時間加熱保
持した後急冷する溶体化処理を基本として、アルミダイ
カスト品のブリスター(以下「フクレ」という。)の発
生を防止する熱処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ダイカスト法は金型に溶湯を高速で鋳込
む鋳造法で、薄肉で寸法精度と鋳肌の優れた鋳物を短時
間で大量に生産することができる。そのため、アルミダ
イカスト品は強度をさほど必要としない自動車部品等に
広く使用されている。しかし、一般のダイカスト法で
は、高速で鋳込むため空気を巻き込みやすく機械的性質
のばらつきが大きい。またアルミダイカスト品は、低圧
鋳造法、重力鋳造法や溶湯鍛造法等で製造されたアルミ
鋳物品に比べて含有ガス量が多いので、強度を付与しよ
うとして熱処理を施すとフクレを生じる場合が多く、強
度部材への適用が制限されている。熱処理可能なダイカ
スト品を製造する方法として、金型内に酸素を吹き込ん
で射出を行うダイカスト法もあるが、酸素吹き込み時に
アルミ溶湯と発熱反応が起り金型寿命が短いことなどか
ら広く実用化されるまでには至っていない。最近では、
真空ダイカストによる強度部材が実用化されはじめられ
ている。しかし、ダイカスト鋳造の後に、引張特性を付
与するために必要とされる溶体化処理等の熱処理条件に
ついては明らかではない。
【0003】特公平4−71983号公報には、スクイ
ズキャストや低圧金型鋳造等の加圧鋳造の後、極く短時
間の熱処理を施すことによって、すぐれた靱性を得るこ
とができるとする加圧鋳造用高力アルミニウム合金を開
示している。この開示された加圧鋳造用高力アルミニウ
ム合金について、詳述すれば、公知のAl−Si−Cu
−Mgからなる合金系、即ち重量%で、Si:5〜13
%、Cu:1〜5%、Mg:0.1〜0.5%を含むア
ルミニウム合金に少量のSrを0.005〜0.3%添
加することにより、加圧鋳造後の合金材にT6処理(溶
体化処理−人工時効処理を施す熱処理)を施すに当たっ
て、溶体化によって人工時効後の合金材に高い引張強さ
と伸び率を与えるとするものである。
【0004】また、前記公知のSi:5〜13%、C
u:1〜5%、Mg:0.1〜0.5%を含むアルミニ
ウム合金に0.005〜0.3%のSrと0.05〜
0.5%のTiとを共存添加することにより,または
0.005〜0.3%のSrと0.05〜0.5%のT
iと0.05〜0.3%のBの3種類の元素を共存添加
することによって、加圧鋳造後の合金材にT6処理を施
し、靱性の向上を図るものである。そして、特公平4−
71983号公報によれば、引張強さ約400N/mm
2、伸び約11%が得られている。
【0005】特公平4−71983号公報には、第2頁
第4欄第9行〜第23行に記載のとおり、熱処理につい
て“熱処理に際しての加熱温度はこの種の合金で通常適
用される温度範囲、すなわち溶体化処理においては、5
00〜520°C、人工時効処理においては140〜1
80°Cが採用されるが、この発明における溶体化時間
は従来最高の引張強さ、伸びを得るために必要とされる
時間である4〜10時間を大幅に下まわる0.5〜2時
間程度で十分満足できる。なお、人工時効処理における
加熱時間は、従来この種の合金に適用される一般的な時
間範囲4〜10時間が採用されるが、この際、この合金
系の人工時効にあたって、しばしば採用される人工時効
処理の室温時効処理あるいは前段処理として施される6
0〜120°Cの温度で数時間の2段時効処理を施して
もよい。”との記載があることから、「極く短時間にお
ける熱処理」における溶体化時間は、「0.5〜2時間
程度」を意味するものと解される。
【0006】また、特開昭62−207848号公報に
は、「アルミニウム合金を金型内で加圧鋳造(明細書中
での説明で、射出圧力1000kg/mm2と記載され
ていることから、ここでいう加圧鋳造とは溶湯鍛造を意
味すると推察される。)した後、成形品が300℃まで
降温しないうちに、500〜550℃に保持された溶融
液に浸漬した後、さらに水中に焼入れを行うアルミニウ
ム合金の熱処理方法。および、上述の焼入れを行った上
で、人工時効処理を実施するアルミニウム合金の熱処理
方法。」を開示している。この特開昭62−20784
8号公報での説明の中で溶体化時間に関して、「500
〜550℃に保持された溶融液へ浸漬する溶体化処理時
間は5〜20分という極めて短時間にもかかわらず、引
張強さは30kg/mm2、降伏点は22kg/mm2
度保持できる。一方、従来法では、それらと同等の強度
に達するには2時間の溶体化が必要となる。」とも記載
されている。上記の特公平4−71983号公報および
特開昭62−207848号公報には、アルミダイカス
ト品の熱処理時に発生するフクレについては何等記載さ
れていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】アルミニウム合金鋳物
に靱性と強度を付与するためには、前述のとおり鋳造後
の鋳物に溶体化処理または単に人工時効処理を施すこと
が必要である。特に通常の肉厚が1.0〜1.5mm、
最大肉厚でも5〜7mm程度であるダイカスト品におい
て、強度部材に適用するにはどうしても熱処理を必要と
する。低圧鋳造などの普通の金型鋳造では、DAS2
(Dendrite ArmSpacing;デンドラ
イト2次枝間隔)が金型表面にあたる部位で概略30μ
mであるが、ダイカスト品ではDAS2が20μm以下
と金属組織が微細であるため、この微細な金属組織を粗
大化しないような適切な熱処理条件を必要とする。
【0008】ところが、ダイカスト法で鋳造されたダイ
カスト品に熱処理を施すとフクレが発生し易い。低圧鋳
造品や溶湯鍛造法による鋳造品等と比べてダイカスト品
は、脱ガス等の処理を施したとしても、通常のダイカス
ト法では高速鋳込みのために空気巻き込みによるガス含
有量が多く、ダイカスト品100g当たり通常1〜5c
c、場合によっては10cc以上のガスを含有してい
る。このため、ダイカスト品の熱処理、特に高温での溶
体化温度と保持時間、は重要な要素でありながら、熱処
理時にダイカスト品に発生するフクレを防止する適切な
熱処理方法が確立されていないため、ダイカスト品の強
度部材への用途拡大のネックとなっている。上述のごと
く、ダイカスト品の強度部材分野への用途拡大のために
は、熱処理による靱性、強度の付与が必要であるが、こ
の場合、熱処理時の熱の影響によるダイカスト品中に内
在する気泡のフクレを防止することができる熱処理方法
の確立が大きな課題である。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ダイカス
ト品の熱処理について鋭意研究し、従来の溶体化500
〜540℃×数時間では、アルミダイカスト品にフクレ
が発生すること、しかし人工時効処理150℃×5〜6
時間ではフクレが発生しないことを知見し、アルミダイ
カスト品自体の温度を高温の溶体化温度まで急速昇温を
行い、その温度で保持することなしに直ちに急冷を行え
ば、熱伝導の良いアルミと熱伝導の悪い気泡(ガス)と
の性質の差を利用してフクレを防止できることに想到
し、本発明をなした。
【0010】即ち、本発明のアルミダイカスト品の熱処
理方法は、該アルミダイカスト品100g当たり10c
c以下のガス含有量を有する該アルミダイカスト品を熱
処理炉内で520〜560℃×1秒〜30分加熱保持
し、その後水中焼入れする溶体化処理を施すことを特徴
とする。また、本発明のアルミダイカスト品の熱処理方
法は、該アルミダイカスト品100g当たり10cc以
下のガス含有量を有する該アルミダイカスト品を熱処理
炉内で520〜560℃×1秒〜30分に加熱保持し、
その後水中焼入れする溶体化処理を行い、さらに人工時
効処理145〜180℃×4〜8時間を施すことを特徴
とする。アルミダイカスト品100g当たり10cc以
下のガス含有量とするためには、真空ダイカスト法によ
ることが好ましい。
【0011】また、本発明のアルミダイカスト品の熱処
理方法は、溶体化処理は好ましくは、550〜560℃
×1秒〜20分加熱保持し、水中焼入れを施すか、また
は該水中焼入れを施した後、さらに人工時効処理を施す
ことを特徴とする。また、本発明のアルミダイカスト品
の熱処理方法においては、熱処理炉内での該アルミダイ
カスト品の昇温速度を15℃/分以上の急速昇温とする
ことを特徴とする。そして、前記熱処理炉内の雰囲気圧
を5〜10気圧とすることにより、アルミダイカスト品
の表面に圧力を作用させてフクレが発生し難くなるよう
にすると、フクレを防止するのにさらに良い効果を奏す
る。
【0012】本発明の熱処理方法では、溶体化処理の高
温での保持時間をなくすか、または極短時間として、熱
伝導度の良いアルミダイカスト品を高温の520〜56
0℃に急速昇温し、到達後直ちに温水焼入れを行う。ま
たはこの焼入れを行った後、さらに人工時効処理を行
う。520〜560℃、好ましくは550〜560℃と
高温で、保持時間が1秒〜30分と殆どゼロまたは極短
時間であるため、また15℃/分以上の昇温速度とする
とアルミダイカスト品の中に内在しているガス(N2
たはH2、あるいは両者)の膨張が生じる反応時間がな
い。そのため、フクレの発生がなくなる。しかもα固溶
体への最大Si固溶量も得られ、一般的な(溶体化処理
+人工時効処理)を行うT6処理より機械的性質の優れ
たものが得られる。なお、本発明における人工時効処理
は通常行われている人工時効処理140〜180℃×4
〜8時間を採用してよい。また、焼入れ時の水温は60
℃程度でよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
(実施例1)(JIS)AC4A(Al−8Si−0.
3Mg)をダイカスト機で鋳造したアルミダイカスト品
(床板、300角×肉厚2mm)を、大気雰囲気の温度
560℃に保持した熱処理炉内に装入し、急速加熱を行
い、アルミダイカスト品の温度が560℃に到達するや
いなや、ただちに熱処理炉から取り出し(約2秒を要し
た)、温水(60℃)中に焼入れする溶湯化処理を施し
た。次いで、150℃×6時間の人工時効処理を施し
た。得られたアルミダイカスト品から試験片を採取し、
調査した結果、フクレの発生は認められず、機械的特性
は引張強さ350N/mm2、耐力250N/mm2、伸
びは0.2%であった。溶体化処理前に測定した該アル
ミダイカスト品のガス含有量は該アルミダイカスト品1
00g当たりで7cc(ガス)を含んでいた。図1は、
実施例1における加熱保持560℃×2秒でのダイカス
ト品の金属組織顕微鏡写真を示す。実施例1において
は、溶体化温度560℃と融点近傍の温度でありなが
ら、保持時間が数秒と極めて短時間であったため、ガス
が膨張するための必要な時間を確保できず、フクレが発
生しなかったものと考えられる。
【0014】(実施例2)実施例1と同じ組成で鋳造し
たダイカスト品に溶体化540℃×1分とした以外は、
実施例1と同様のT6処理を施した。得られたアルミダ
イカスト品から試験片を採取し、調査した結果、引張強
さ250N/mm2、耐力160N/mm2および伸び約
8%が得られた。また金属組織顕微鏡写真は、図2に示
すように、溶体化540℃×1分を施すことにより、φ
20μm程度のフクレ(図2中の黒い塊状部分)の発生
が観察されたが、引張強さの低下は認められないことか
ら、この程度のフクレでは、影響は小さいものと考えら
れる。
【0015】機械的性質に関しては、一般的に共晶Si
は小さく丸いほうが良いとされている。実施例2におい
ては、計測した共晶Si粒子と同じ面積を持つ円の直径
として表示する共晶Si円相当径(μm)は約1.5μ
mで粗大化しておらず、また数1で表示する共晶Si円
形度は0.75と十分丸くなっていた。また、Mg2
iは、光学顕微鏡ではほとんど観察できない程度であっ
た。このことから、共晶Siを丸く小さくし、Mg2
iをAl基地に固溶させるには、高温−短時間つまり5
40℃×1分の溶体化を施すことで十分有効であること
を示している。続いての通常の人工時効処理条件を適宜
選定して、Mg2Siの析出量を多くすることにより、
引張強さおよび耐力を向上させることができる。溶体化
処理の昇温速度は15〜18°C/minであった。な
お、この熱処理での温度は材料の温度である。
【0016】
【数1】
【0017】(実施例3)熱処理炉内にアルゴンガスを
吹き込んで、雰囲気圧を8気圧とした以外は、実施例2
と同様のT6処理を施した。得られたアルミダイカスト
品から試験片を採取し、調査した結果、アルミダイカス
ト品にフクレの発生は認められなかった。これは、雰囲
気圧の抑圧作用がフクレ発生防止の一因として効果を奏
したものと考えられる。
【0018】(比較例)実施例1と同じ組成で鋳造した
ダイカスト品に溶体化540℃×2時間とした以外は、
実施例2と同様のT6処理を施した。溶体化540°C
×2時間では、共晶Siの円形度が0.75と大きく、
Mg2 Siがほぼ固溶していた。しかし、溶体化540
°C×2時間では、図3に示すようにフクレがφ80μ
m程度に粗大化していた。これは、鋳物体積の1%程度
になるため、引張特性が急激に低下し(引張強さ140
N/mm2、0.2%耐力135N/mm2および伸び約
2%であった。)、好ましくない。
【0019】
【発明の効果】以上詳細に説明したとおり、本発明のア
ルミダイカスト品の熱処理方法によれば、高温−極短時
間の溶体化を施すことで、熱処理時に発生していたフク
レを防止でき、しかる後に時効処理を適切な時間施すこ
とで、優れた引張特性を付与できる。アルミダイカスト
品の、例えば自動車用部品等の強度部材への、用途拡大
への道を開く本発明の熱処理方法はその効果大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶体化560°C×約2秒を施した場合のブリ
スターの発生状況を示す金属組織顕微鏡写真(倍率:1
00倍)である。
【図2】溶体化540°C×1分(min)を施した場
合のブリスターの発生状況を示す金属組織顕微鏡写真
(倍率:100倍)である。
【図3】溶体化540°C×2時間(h)を施した場合
のフクレの発生状況を示す金属組織顕微鏡写真(倍率:
100倍)である。
【符号の説明】
(なし)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22F 1/00 691 C22F 1/00 691A (72)発明者 影山 望 埼玉県熊谷市三ケ尻5200番地 日立金属株 式会社熊谷工場内 (72)発明者 古閑 正明 埼玉県熊谷市三ケ尻5200番地 日立金属株 式会社熊谷工場内 (72)発明者 菊地 俊史 栃木県真岡市鬼怒ケ丘11番地 日立金属株 式会社素材研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミダイカスト品の熱処理方法であっ
    て、該アルミダイカスト品100g当たり10cc以下
    のガス含有量を有する該アルミダイカスト品を熱処理炉
    内で520〜560℃×1秒〜30分加熱保持し、その
    後水中焼入れする溶体化処理を施すことを特徴とするア
    ルミダイカスト品の熱処理方法。
  2. 【請求項2】 アルミダイカスト品の熱処理方法であっ
    て、該アルミダイカスト品100g当たり10cc以下
    のガス含有量を有する該アルミダイカスト品を熱処理炉
    内で520〜560℃×1秒〜30分加熱保持し、その
    後水中焼入れする溶体化処理を行い、さらに人工時効処
    理を施すことを特徴とするアルミダイカスト品の熱処理
    方法。
  3. 【請求項3】 前記溶体化処理は、好ましくは、550
    〜560℃×1秒〜20分未満加熱保持することを特徴
    とする請求項1または請求項2に記載のアルミダイカス
    ト品の熱処理方法。
  4. 【請求項4】 熱処理炉内での該アルミダイカスト品の
    昇温速度を15℃/分以上の急速昇温とすることを特徴
    とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のア
    ルミダイカスト品の熱処理方法。
  5. 【請求項5】 前記熱処理炉内の雰囲気圧を5〜10気
    圧とすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいず
    れか1項に記載のアルミダイカスト品の熱処理方法。
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