JP3793780B2 - マグネシウム合金用結晶微細化材、鋳造用マグネシウム合金材、鋳造体およびその製造方法 - Google Patents

マグネシウム合金用結晶微細化材、鋳造用マグネシウム合金材、鋳造体およびその製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はアルミニウム含有マグネシウム合金用結晶微細化材、鋳造用アルミニウム含有マグネシウム合金材、マグネシウム合金鋳造体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム合金は、アルミニウムの3分の2、鋼の4分の1と実用金属合金として最も軽い。またアルミニウム合金や鋼と比較して、切削性、振動吸収性、耐くぼみ性、同一重量で比較したときの比強度、比剛性等に優れている。さらにプラスチックスに比較して、電磁シールド性、放熱特性、美観触感性、リサイクル性に優れている。このため、プラスチックスの代替としてノートパソコンやビデオカメラなどの筐体、鋼やアルミの代替として自動車用ドアフレーム、自動車用ホイール等に多用されている。
【0003】
マグネシウム合金、特に鋳造用マグネシウム合金はアルミニウムを含有する合金がJIS規格、ASTM規格等に規定され、一般的に使用されている。このアルミニウム含有マグネシウム合金の鋳造体は、製造方法として単に合金地金を溶解、注湯、凝固させただけでは平均結晶粒径が大きくなり、引張強度などの機械的性質も低下する。このため、結晶粒組織を微細化して機械的性質を向上させている。
【0004】
従来、アルミニウム含有マグネシウム合金鋳造体は溶解工程において、次の2種類の方法により、結晶粒の微細化処理を行なって微細結晶粒組織を得ている。
(1)ヘキサクロロエタンなどを、アルミニウム含有マグネシウム合金溶湯に添加し、凝固させる。
(2)アルミニウム含有マグネシウム合金溶湯を高温に加熱し、急冷した後、注湯、凝固させる。
【0005】
また、特開2000−104136号には、マグネシウム合金に硼素およびマンガンを含有させることにより、微細結晶粒をもつマグネシウム合金およびその製造方法が開示されている。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の(1)および(2)の方法では、微細化処理を行なったアルミニウム含有マグネシウム合金材を再溶解すると微細化の効果が消失する。そのため、合金材の溶解毎に結晶粒微細化処理を行なわなければならないという問題がある。
また、結晶粒の微細化処理を行なっても、溶湯状態で長時間保持することにより、微細化の効果が消失する。例えばアルミニウム含有マグネシウム合金材を溶湯状態で 30 分間保持した場合と、 60 分間保持した場合とで、その結晶粒径は 1.5 倍から 2.0 倍程度に大きくなってしまう。そのため、微細化処理後すぐに注湯を行なう必要があリ、鋳造工程の手順などが制約されるという問題がある。
【0007】
さらに(1)の方法は微細化処理中に塩素ガスが発生するため、鋳造作業環境を悪くする問題があり、(2)の方法は、溶湯を高温に加熱するため、溶湯の発火の危険性、マグネシウム溶湯への鉄の混入などの問題がある。
【0008】
特開2000−104136号では、マグネシウム合金に硼素およびマンガンとを適量含有させることが必要となる。特に、マンガンの過剰含有は結晶微細化の効果を低下させる。このため、この方法では、厳密な成分調整が必要となる。
【0009】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、簡易に微細結晶粒が得られ、かつ再溶解しても、あるいは溶湯状態で長時間保持しても、微細結晶粒組織を保持できる鋳造用のアルミニウム含有マグネシウム合金の微細化材、再溶解可能なマグネシウム合金材、鋳造体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る結晶微細化材は、アルミニウム含有マグネシウム合金材を溶湯処理するための結晶微細化材であって、該結晶微細化材は非酸化性ガス雰囲気中において、上記アルミニウム含有マグネシウム合金材が溶融する温度に加熱したときに、残留物が残存する糖類を含むことを特徴とする。
また、上記糖類がショ糖であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る鋳造用アルミニウム含有マグネシウム合金材は、溶解時に溶湯処理をすることなく微細結晶粒組織を形成できるマグネシウム合金鋳造体を鋳造するための合金材であって、上記微細結晶粒組織が上述した本発明に係る結晶微細化材を用いて溶湯処理されたことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るマグネシウム合金鋳造体は、微細結晶粒組織を有するアルミニウム含有マグネシウム合金鋳造体であって、該鋳造体が上述した本発明に係る結晶微細化材を用いて溶湯処理されたことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る鋳造用マグネシウム合金鋳造体の製造方法は、アルミニウム含有マグネシウム合金材を溶解する工程と、結晶微細化材を用いて溶湯処理する工程とを含んでなり、上記微細化材が上述した本発明に係る結晶微細化材であることを特徴とする。
【0014】
鋳造用アルミニウム含有マグネシウム合金材の結晶微細化材として、非酸化性ガス雰囲気中において、上記マグネシウム合金鋳造体が溶融する温度まで加熱したときに、残留物が残存する有機化合物を含む結晶微細化材を用いることにより、マグネシウム合金材の結晶が微細化するとともに、その合金材を再溶解しても微細化された結晶状態が保持される現象を見出した。また、アルミニウム含有マグネシウム合金材鋳造時に溶湯状態で保持しても結晶粒が殆んど増大しない現象を見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
鋳造用アルミニウム含有マグネシウム合金材としては、マグネシウムを主成分としてアルミニウムを合金全体に対して 1 重量%〜 20 重%含有する合金である。
マグネシウム合金材中のアルミニウム以外の含有元素としては、亜鉛、マンガン、シリコン、銀、カルシウム、希土類元素などがある。これらは、1つあるいは、2つ以上の元素を目的に応じて含有できる。また、鉄、ニッケル、ベリリウムなどの不可避的不純物を含むこともできる。
【0016】
具体的な鋳造用アルミニウム含有マグネシウム合金材としては、ASTM規格におけるマグネシウム合金の記号の付け方に従って表示したときに、AZ91D、AM100A等に示されるようにアルミニウムを表す「A」で始まる鋳造用アルミニウム含有マグネシウム合金材が好ましい。本発明に係る結晶微細化材がマグネシウム合金溶湯中でアルミニウムと反応して微細結晶を生成する核が形成できるためと考えられる。
【0017】
本発明に係る結晶微細化材は有機化合物を含む結晶微細化材であって、その有機化合物を非酸化性ガス雰囲気中で熱分解させたときにガス状になって揮散することなく、少なくともマグネシウム合金材が溶融する温度において、残留物が残存する有機化合物である。
有機化合物であれば、マグネシウム合金材の溶融温度においてガス状になって揮散する物質であっても結晶を微細化させる効果を有する。結晶粒径は鋳造体の肉厚、鋳造時の冷却速度等によっても異なるが、より微細な結晶粒径、例えば 200μm 以下、好ましくは 150μm 以下、より好ましくは 100μm 以下の結晶粒径を得るためには合金材溶融温度において残留物が残存する有機化合物が好ましい。
【0018】
マグネシウム合金材溶融温度において有機化合物の残留物が残存するか否かは、熱分析装置において熱重量曲線(TG)を測ることで判断できる。例えば試料重量として 0.1mg 〜10g 、昇温速度として 0.1〜100 ℃/分、測定雰囲気としてヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス等の非酸化性ガス中でTGを測定したとき、マグネシウム合金材の溶融温度において、重量残が 0 重量%とならない有機化合物である。有機化合物の重量残は 5 重量%以上、好ましくは 10 重量%以上であることが好ましい。有機化合物の重量残は炭化物を含む物質であり、この炭化物中の炭素がアルミニウムと反応して微細結晶を生成する核になるものと考えられる。
【0019】
マグネシウム合金材の溶融温度は合金の種類や組成によって異なる。本発明においては、マグネシウム合金材の好適な溶融温度として 700℃を採用できる。したがって、 700℃における重量残が上記範囲にある有機化合物であれば結晶微細化材として好ましい。
【0020】
上記のTG測定で残留物が残存する有機化合物としては、炭化水素化合物、酸素含有炭化水素化合物、有機金属化合物、または窒素、硫黄等含有炭化水素化合物等が挙げられ、これらは低分子有機化合物、有機高分子化合物等であってもよい。溶湯中で発生するガスの毒性が少ない化合物として、炭化水素化合物、酸素含有炭化水素化合物が本発明に好適である。
【0021】
炭化水素化合物、酸素含有炭化水素化合物としては、例えば、糖類、すなわち、果糖、ブドウ糖などの単糖類、麦芽糖、ショ糖、乳糖などの二糖類、デンプン、セルロースなどの多糖類の単体、もしくはこれらを含む化合物、混合物などが好ましい。
【0022】
好ましい結晶微細化材の一例であるショ糖を例にとり、そのTG測定結果を図1に示す。図1はアルゴンガス中で測定したTGの結果であり、測定条件は、石英セルを用いて、試料重量 100mg、昇温速度 5℃/分で測定した例である。ショ糖は約 150 ℃( 423K )から熱分解による重量減少が始まり約 330 ℃( 603K ) 付近より重量減少の変化率が小さくなり、約 700 ℃( 923K ) 付近においても約 20 重量%以上の残留物が残存している。ショ糖の分子構造より、この残留物は炭化物と考えられる。
【0023】
本発明に係る結晶微細化材は上記有機化合物単独でもよい。また、上記有機化合物をアルミ箔あるいは高分子シートなどで包む、または、アルミ材あるいは高分子材中に分散させた状態で結晶微細化材とすることができる。包むまたは分散させることにより結晶微細化材の保存安定性が向上し、また溶湯中に添加するときの作業性が向上する。
【0024】
本発明に係るアルミニウム含有マグネシウム合金鋳造体を鋳造するための合金材は、上述した結晶微細化材を用いて溶湯処理することで微細結晶粒組織が得られる。この合金材より得られる鋳造体は微細結晶粒組織を有するため、鋳造体の引張強度が約 200MPa と高い。またこの合金材は、鋳造体を再溶解して得られる再生鋳造体が最初の合金材と略同一の微細結晶粒組織を有することで特徴づけられる。
【0025】
アルミニウム含有マグネシウム合金鋳造体における微細結晶粒組織は、溶体化処理を行なった後に測定される。これは、アルミニウム含有マグネシウム合金鋳造体の結晶粒界に晶出するβ(Mg17Al20)化合物により結晶粒界が不明瞭になるため、β化合物を一部固溶させて結晶粒界を明確にするためである。鋳造後の 400℃× 4 時間程度の溶体化処理では、平均粒子径は変化しない。
【0026】
アルミニウム含有マグネシウム合金材への結晶微細化材の添加量は、合金溶湯 1g に対し、結晶微細化材中の炭素換算で 0.0000001〜0.01mol に相当する量が好ましく、より好ましくは 0.00001〜0.001mol の範囲である。0.0000001mol 未満では結晶微細化の効果が得られず、0.01mol をこえると結晶粒が粗大化する場合がある。
【0027】
なお、再溶解しても微細結晶粒組織を保持できるアルミニウム含有マグネシウム合金鋳造体を鋳造するための合金材としては、上述した有機化合物からなる結晶微細化材に代えて、あるいは該結晶微細化材とともに黒鉛、カーボンブラックなどの炭素材を用いることができる。炭素材の添加量は上記結晶微細化材の添加量と同一である。
【0028】
アルミニウム含有マグネシウム合金鋳造体の製造方法を図2により説明する。図2は製造工程の概要を示す図である。
アルミニウム含有マグネシウム合金地金1を準備し、公知の防燃ガス3で表面が覆われた溶解炉2に投入して、地金1を溶解する(図2(a))。
次に、プランジャーまたはフォスフォライザーなどの冶具4を用いて、結晶微細化材5をアルミニウム含有マグネシウム合金溶湯に沈める(図2(b))。この工程においては、溶湯の上部から結晶微細化材5を添加してもよい。
結晶微細化材5がマグネシウム合金溶湯中で分解ガスを発生させながら残留炭化物として溶湯中に残留することにより、結晶微細化処理がなされるものと考えられる。
【0029】
溶湯処理はマグネシウム合金が溶解している状態で行なう。溶湯処理温度としては、合金成分により異なるが、例えば600〜800℃の温度範囲が好ましく、特に 700〜790℃の範囲がより好ましい。600℃未満では半溶融状態であり、800℃の温度をこえると溶湯の発火の危険性、溶解炉内壁より溶湯への鉄分混入のおそれが増加する。また、溶湯処理中、あるいは処理後の溶湯に、撹拌やアルゴンガスなどの非酸化性ガスによるバブリングを行なうと、残留した残留炭化物のマグネシウム合金溶湯中での分散の効果により、微細結晶粒組織が得られやすく、また再溶解時の微細結晶粒組織の保持効果が向上する。
【0030】
次いで鋳型6等に溶湯を注湯し凝固させて、微細結晶粒組織を有し、かつ再溶解しても微細結晶粒組織を保持できる鋳造体7とする(図2(c))。
【0031】
本発明方法で得られたアルミニウム含有マグネシウム合金鋳造体は、再溶解しても微細結晶粒組織を有する。その結果、引張強度、靱性、伸びなどの機械的性質が優れたマグネシウム合金鋳造体を複数回製造できる。
【0032】
また、本発明により製造された鋳造用マグネシウム合金材はダイカスト、重力鋳造、低圧鋳造、高圧鋳造などに使用できる。
上記各鋳造法を用いることにより、微細結晶粒組織が得られ、かつ再溶解しても微細結晶粒組織を維持できるアルミニウム含有マグネシウム合金鋳造体が得られる。また、結晶微細化材が添加された溶湯、または、それを再溶解した溶湯は、長時間保持しても結晶微細化の効果を持続できる。
【0033】
【実施例】
実施例1
1 kg のAZ91合金地金(Al:9.1 重量%、Zn:0.7 重量%、Mn:0.22 重量%、Si:0.03 重量%、Cu:0.006 重量%、Ni:0.001 重量%、Fe:0.002 重量%、Be:0.001 重量%、Mg:残部)をS45C製るつぼに入れ、SF6ガス雰囲気中で 730 ℃まで加熱溶解した。5 分間保持後、アルミ箔で包んだ 0.3 重量%ショ糖を、フォスフォライザーを用い、AZ91合金溶湯に沈めて、溶湯処理を行なった。溶湯処理後、直ちにφ20mm 高さ200mm の金型に注湯してAZ91合金鋳造体を得た。また、引張強さおよび伸び測定用の試験片をJISH5203に従って作製した。
【0034】
鋳造後の鋳造体は、 400℃×4 時間の溶体化処理を行ない、組織観察および平均粒径を求めた。結果を図3に示す。図3は溶体化処理後の実施例1の組織写真である。図3よりショ糖を用いた溶湯処理による微細化が確認できる。なお、実施例1で得られた鋳造体の結晶粒の平均粒径は 90μm である。
【0035】
比較例1
溶湯処理を行なわない以外は実施例1と同一の条件、方法でAZ91合金鋳造体を得て、同様に溶体化処理を行ない、組織観察および平均粒径を求めた。結果を図4に示す。図4は溶体化処理後の比較例1の組織写真である。実施例1の鋳造体の結晶粒の平均粒径は 90μm に対して、比較例1の平均粒径は 235μm である。
【0036】
実施例1および比較例1でそれぞれ得られたAZ91合金鋳造引張試験片の機械的強度を引張強さおよび伸びの値で評価した。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
Figure 0003793780
表1に示すように、実施例1のAZ91合金は、比較例1に比較して、引張強さが約 1.3 倍、伸びが約 2 倍に向上した。
【0038】
実施例2
実施例1と同一の条件、方法でAZ91合金鋳造体を溶湯処理した。その後、溶湯を 730℃で 60 分間保持した。保持後φ20mm 高さ200mm の金型に注湯してAZ91合金鋳造体を得た。実施例1と同一の条件、方法で溶体化処理を行ない、組織観察および平均粒径を求めた。結果を図5に示す。図5は溶体化処理後の実施例2の組織写真である。実施例2の鋳造体の結晶粒の平均粒径は 109μm であリ、 730℃で 60 分間溶湯を保持しても保持前の実施例1と略同一の微細結晶粒組織が得られることが確認できる。
【0039】
実施例3
AZ91合金地金に代わり実施例1で得られたAZ91合金鋳造体を用いて、溶湯処理を行なうことなくSF6ガス雰囲気中で 730 ℃で再溶解し、直ちにφ20mm 高さ200mm の金型に注湯してAZ91再溶解合金鋳造体を得た。実施例1と同一の条件、方法で溶体化処理を行ない、組織観察および平均粒径を求めた。結果を図6に示す。図6は溶体化処理後の実施例3の組織写真である。実施例3の鋳造体の結晶粒の平均粒径は 87μm であリ、再溶解後も実施例1と略同一の微細結晶粒組織を維持できることがわかる。
【0040】
比較例2
0.3 重量%ショ糖に代えて 2 重量%のヘキサクロロエタンを結晶微細化材として用いる以外は実施例1と同一の条件、方法でAZ91合金鋳造体を得た。実施例1と同一の条件、方法で溶体化処理を行ない、組織観察および平均粒径を求めた。結果を図7に示す。図7は溶体化処理後の比較例2の組織写真である。比較例2の鋳造体の結晶粒の平均粒径は 77μm である。その後、実施例3と同様に、得られたAZ91合金鋳造体の溶湯処理を行なうことなく再溶解し、金型に注湯してAZ91再溶解合金鋳造体を得た。その後、溶体化処理を行ない、組織観察および平均粒径を求めた。結果を図8に示す。図8は再溶解後の組織写真である。鋳造体の結晶粒の平均粒径は 123μm とほぼ倍に成長している。
図7および図8より、従来の結晶微細化材であるヘキサクロロエタンを用いて溶湯処理をしたAZ91合金鋳造体は、再溶解すると結晶微細化の効果が消失していることが分かる。
【0041】
【発明の効果】
本発明に係る結晶微細化材は、非酸化性ガス雰囲気中において、上記マグネシウム合金鋳造体が溶融する温度まで加熱したときに、残留物が残存する糖類を含むので、従来のヘキサクロロエタンに代わり微細結晶粒組織を有するアルミニウム含有マグネシウム合金鋳造体を鋳造できる。
また、上記糖類がショ糖であるので、鋳造作業環境を悪くすることなく微細結晶粒組織を有するアルミニウム含有マグネシウム合金鋳造体が鋳造できる。
【0042】
本発明に係る鋳造用アルミニウム含有マグネシウム合金材は、上記結晶微細化材を用いているので、微細結晶粒組織を有するアルミニウム含有マグネシウム合金鋳造体が鋳造できるとともに、再度結晶粒微細化処理を行なわずに、微細結晶粒組織を保持するマグネシウム合金鋳物が得られる。
また、マグネシウム合金溶湯を高温で保持しても、微細結晶粒を維持できることから、鎮静化による酸化物等の除去も可能になる。
【0043】
本発明に係るアルミニウム含有マグネシウム合金鋳造体は、上記結晶微細化材を用いて溶湯処理されているので、再溶解しても微細結晶粒を維持でき、優れた機械的強度を保持できる。
【0044】
本発明に係る鋳造用アルミニウム含有マグネシウム合金鋳造体の製造方法は、上記結晶微細化材を用いて溶湯処理する工程とを含んでいるので、塩素ガスなど環境負荷が大きいガスが発生しない。また、マグネシウム合金溶湯を高温で保持しても、微細結晶粒結晶粒を維持できることから、製造工程が複雑化しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルゴンガス中で測定したショ糖のTGである。
【図2】アルミニウム含有マグネシウム合金材の製造工程の概要図である。
【図3】実施例1の組織写真である。
【図4】比較例1の組織写真である。
【図5】実施例2の組織写真である。
【図6】実施例3の組織写真である。
【図7】比較例2の組織写真である。
【図8】比較例2の再溶解後の組織写真である。
【符号の説明】
1 アルミニウム含有マグネシウム合金地金
2 溶解炉
3 防燃ガス
4 冶具
5 結晶微細化材
6 鋳型
7 鋳造体

Claims (5)

  1. アルミニウム含有マグネシウム合金材を溶湯処理するための結晶微細化材であって、
    該結晶微細化材は非酸化性ガス雰囲気中において、前記アルミニウム含有マグネシウム合金材が溶融する温度に加熱したときに、残留物が残存する糖類を含むことを特徴とするマグネシウム合金用結晶微細化材。
  2. 前記糖類がショ糖であることを特徴とする請求項1記載のマグネシウム合金用結晶微細化材。
  3. 溶解時に溶湯処理をすることなく微細結晶粒組織を形成できるアルミニウム含有マグネシウム合金鋳造体を鋳造するための合金材であって、
    該合金材は請求項1記載のマグネシウム合金用結晶微細化材を用いて溶湯処理されたことを特徴とする鋳造用マグネシウム合金材。
  4. 微細結晶粒組織を有するアルミニウム含有マグネシウム合金鋳造体であって、
    該鋳造体は請求項1または請求項2記載のマグネシウム合金用結晶微細化材を用いて溶湯処理されたことを特徴とするマグネシウム合金鋳造体。
  5. アルミニウム含有マグネシウム合金材を溶解する工程と、結晶微細化材を用いて溶湯処理する工程とを含んでなるマグネシウム合金鋳造体の製造方法であって、
    前記結晶微細化材は請求項1または請求項2記載のマグネシウム合金用結晶微細化材であることを特徴とする鋳造用マグネシウム合金鋳造体の製造方法。
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