JP2011144443A - セミソリッド鋳造用アルミニウム合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高温度での熱処理(溶体化処理−焼入れ処理等)を施すことなく鋳造のままでも高強度を確保することができるアルミニウム合金を提供する。
【解決手段】 アルミニウム合金を、質量%で、Si:4〜8%,Mg:0.3 〜1.0 %,Cu:0.5 〜2.5 %を含むか、必要により更にSr:0.003 〜0.02%,Ti:0.2 %以下の1種又は2種をも含み、残部がAl及び不可避的不純物から成る化学組成と成し、固相と液相とが共存する状態の合金材料を型に充填して凝固させる“セミソリッド鋳造”用として用いるようにする。
【選択図】 なし
【解決手段】 アルミニウム合金を、質量%で、Si:4〜8%,Mg:0.3 〜1.0 %,Cu:0.5 〜2.5 %を含むか、必要により更にSr:0.003 〜0.02%,Ti:0.2 %以下の1種又は2種をも含み、残部がAl及び不可避的不純物から成る化学組成と成し、固相と液相とが共存する状態の合金材料を型に充填して凝固させる“セミソリッド鋳造”用として用いるようにする。
【選択図】 なし
Description
本発明は、高温度での熱処理(溶体化処理−焼入れ処理)を施すことなく高強度を確保することができるセミソリッド鋳造用アルミニウム合金に関するものである。
近年、例えば車両のシャ−シ部材やホイ−ルあるいは自動車のエンジン部材等といった鉄系金属が主流をなしていた各種部材にも軽量化の要請は止まるところを知らず、そのためこれらの部材にアルミニウム合金を適用する機運が加速化してきて、形状付与の点で有利な鋳造用の高強度アルミニウム合金の需要や品質改善要求が増加している。
従来、高強度が得られる鋳造用のアルミニウム合金としてAl−Si−Mg系の合金が知られているが、このAl−Si−Mg系合金は析出硬化型鋳造用アルミニウム合金であり、特許文献1にも説明されているように、所要の高強度やその他の性能(伸びや靱性等)を確保するためには、固溶限以上の温度に加熱する溶体化処理によってAl素地中に合金成分(MgやSiの金属間化合物Mg2Si )を固溶させてから急冷することにより“Al素地中に合金成分が十分に固溶している過飽和固溶体”を常温にまで持ち来たすという“高温度での熱処理”を必要とするものである。
即ち、上記のアルミニウム合金では鋳造・凝固過程におけるAl素地中への合金成分の固溶が少なくて非平衡な状態で凝固しがちであり、そのため大きな金属間化合物等が混在する組織的偏析を持った鋳造物ができてしまって、鋳造のままでは引張り強度だけでなく伸びや靱性等の性能も大きく劣化した状態となっている。従って、高温度での熱処理(溶体化処理)により“析出している金属間化合物”を分解してAl素地中に合金成分を多く固溶させ、これにより十分な析出硬化がなされるようにして強度向上を図る必要があった。
即ち、上記のアルミニウム合金では鋳造・凝固過程におけるAl素地中への合金成分の固溶が少なくて非平衡な状態で凝固しがちであり、そのため大きな金属間化合物等が混在する組織的偏析を持った鋳造物ができてしまって、鋳造のままでは引張り強度だけでなく伸びや靱性等の性能も大きく劣化した状態となっている。従って、高温度での熱処理(溶体化処理)により“析出している金属間化合物”を分解してAl素地中に合金成分を多く固溶させ、これにより十分な析出硬化がなされるようにして強度向上を図る必要があった。
なお、溶体化処理に続いて焼入れ処理(急冷処理)が施された上記合金は、常温に放置して自然時効によりAl素地中にMg2Si を均一に析出させるか、100〜200℃の適当な温度で適当な時間焼もどすことによりAl素地中にMg2Si を均一に析出させる人工時効を施して所要の高い強度,伸び,靱性等が付与される。
しかし、上記の熱処理を行うことは「アルミニウム合金の軟化を来たす溶融点に近い温度で長時間保持した後、焼入れ処理し、更に長時間の時効処理を行う」ということを意味するため、“加熱による鋳物製品の変形”や“処理に長時間を要する”といった問題点が指摘される上、処理コストの点からもその改善が強く求められていた。
本発明が目的としたのは、従来の鋳造用高強度アルミニウム合金に指摘される前記問題を解決し、高温度での熱処理(溶体化処理−焼入れ処理)を施すことなく鋳造のままでも高い強度を確保することができる材料特性に優れたアルミニウム合金を提供することである。
本発明者は、上記目的を達成すべく、まず「Al−Si−Mg系の鋳造用アルミニウム合金が高温度での熱処理(溶体化処理−焼入れ処理)を必要とする理由は、凝固組織が合金成分の固溶が少ない“大きな金属間化合物等が混在する組織的偏析を持った均質性に欠ける組織”になるためであり、鋳造のままでも高強度,高品質を具備するアルミニウム合金部材が実現されるためには、Al素地中に合金成分を多く固溶した微細で均質な凝固組織を有する鋳造部材を安定製造できる手立てを確立する必要がある」との観点に立って検討を重ねた
そして、近年、結晶の微細化効果に優れていて高品質の鋳物製品を効率的に生産できる技術であるとして注目されるようになってきた“セミソリッド鋳造法”に着目し、この手段によって熱処理を要しない高強度アルミニウム合金鋳造品の製造を試みた。
因みに、上記セミソリッド鋳造法とは、例えば特開平10−60569号公報にも説明されている通り、固相と液相が共存する状態(半溶融状態又は半凝固状態)のアルミニウム合金材料を金型内に充填して冷却することによって所要の形状に凝固させる鋳造法である。
因みに、上記セミソリッド鋳造法とは、例えば特開平10−60569号公報にも説明されている通り、固相と液相が共存する状態(半溶融状態又は半凝固状態)のアルミニウム合金材料を金型内に充填して冷却することによって所要の形状に凝固させる鋳造法である。
上述のように、セミソリッド鋳造法では固相と液相とを共存させた状態の材料を金型で冷却する手法が採られるので完全な溶湯から鋳型に注湯して冷却・凝固させる一般の鋳造法と比べて高い冷却速度が得られると考えられ、そのため鋳造・凝固過程で合金成分(金属間化合物)等が非平衡な状態で析出・凝固して大きな金属間化合物等の組織的偏析を生じるといった弊害が防止され、Al素地中に合金元素が多く固溶されて鋳造のままであっても十分な析出硬化により高い強度やその他の性能が確保されたアルミニウム合金鋳物が得られるのではないかと考えられた。
しかしながら、前記特開平10−60569号公報の実施例欄にも示されていることであるが、このセミソリッド鋳造法によっても得られるアルミニウム合金鋳物は鋳造のままでは引張強さは精々で220MPa程度にしかならず、鋳造のままやT5処理(製造後焼入れせずにすぐ焼もどし時効する処理)のみで引張強さ250MPa以上,伸び5%以上が達成されるアルミニウム合金鋳造品の実現は叶わなかった。
そこで、本発明者は、これまでに報告例の無い“合金組成の工夫”という観点をも採り入れて“熱処理を要しない高強度アルミニウム合金鋳造品”を実現することの可能性を研究した結果、次の知見を得ることができた。
即ち、良好な成形性及び強度が得られるSi含有量4〜8質量%(好ましくは5.6 〜8.0 質量%)のAl−Si合金をベ−スとすると共に、これに時効硬化特性を付与するため適量のMgを上限が0.8 質量%の範囲で含有させ、かつ析出硬化特性の向上に著効があって特にセミソリッド鋳造法を適用した場合に比較的多量を固溶させることが可能であることが究明されたCuを上限2.5 質量%の範囲、好適には2.0 質量%に満たない範囲で比較的多めに含有させて成るアルミニウム合金を用い、これをセミソリッド鋳造法によって鋳造品とした場合には、鋳造のままやT5処理(製造後焼入れせずにすぐ焼もどし時効する処理)のみで引張強さ250MPa以上,伸び5%以上を示す特性が安定して具備されるようになるということを知るに至った。
また、この鋳造用アルミニウム合金に適量のSrやTiを含有させると、その特性の更なる改善に結びつくことも見出した。
即ち、良好な成形性及び強度が得られるSi含有量4〜8質量%(好ましくは5.6 〜8.0 質量%)のAl−Si合金をベ−スとすると共に、これに時効硬化特性を付与するため適量のMgを上限が0.8 質量%の範囲で含有させ、かつ析出硬化特性の向上に著効があって特にセミソリッド鋳造法を適用した場合に比較的多量を固溶させることが可能であることが究明されたCuを上限2.5 質量%の範囲、好適には2.0 質量%に満たない範囲で比較的多めに含有させて成るアルミニウム合金を用い、これをセミソリッド鋳造法によって鋳造品とした場合には、鋳造のままやT5処理(製造後焼入れせずにすぐ焼もどし時効する処理)のみで引張強さ250MPa以上,伸び5%以上を示す特性が安定して具備されるようになるということを知るに至った。
また、この鋳造用アルミニウム合金に適量のSrやTiを含有させると、その特性の更なる改善に結びつくことも見出した。
本発明は上記知見事項等に基づいてなされたものであり、アルミニウム合金を次の 1)項乃至 2)項に示す構成とした点に特徴を有するものである。
1)質量%で、
Si:4〜8%,
Mg:0.3 〜1.0 %,
Cu:0.5 〜2.5 %
を含み、残部がAl及び不可避的不純物から成る、セミソリッド鋳造用合金。
2)質量%で、
Si:4〜8%,
Mg:0.3 〜1.0 %,
Cu:0.5 〜2.5 %
を含むと共に、更に
Sr:0.003 〜0.02%,
Ti:0.2 %以下
の1種又は2種をも含み、残部がAl及び不可避的不純物から成る、セミソリッド鋳 造用合金。
1)質量%で、
Si:4〜8%,
Mg:0.3 〜1.0 %,
Cu:0.5 〜2.5 %
を含み、残部がAl及び不可避的不純物から成る、セミソリッド鋳造用合金。
2)質量%で、
Si:4〜8%,
Mg:0.3 〜1.0 %,
Cu:0.5 〜2.5 %
を含むと共に、更に
Sr:0.003 〜0.02%,
Ti:0.2 %以下
の1種又は2種をも含み、残部がAl及び不可避的不純物から成る、セミソリッド鋳 造用合金。
従来は、鋳造のままやT5処理(製造後焼入れせずにすぐ焼もどし時効する処理)のみで引張強さ250MPa以上,伸び5%以上を示すアルミニウム合金鋳造品を得ることは困難であったが、Al中への合金成分の固溶量が大きくなるとアルミニウム鋳造品の強度はこの固溶の割合に比例して大きくなる(前記の固溶量を増すために一般に熱処理が利用される)という現象等を踏まえて“セミソリッド鋳造法の適用”と“合金組成の工夫”を目論んだ本発明によれば、T6処理(焼入れ後焼もどし時効)のような高温度での熱処理を施すことなく鋳造のままであっても高い強度(引張強さ250MPa以上)や良好な伸び(5%以上)が確保されたアルミニウム合金鋳造品が得られる鋳造性,材料特性に優れたアルミニウム合金を提供することができる。
即ち、本発明に係る鋳造用アルミニウム合金は大きな冷却速度で冷却がなされて均一微細な組織を得ることができるセミソリッド鋳造法により鋳造を行うためのものであり、セミソリッド状態(半溶融状態又は半凝固状態)からの急冷によって共晶部分の組織を均一微細化すると共に、セミソリッド状態より急冷凝固させることによってAl中により多くの合金成分が固溶した状態の鋳造品が得られるように図ったものであるので、高温度での熱処理(溶体化処理−焼入れ処理)を施さなくても高い強度を確保することができる。
また、本発明に係る鋳造用アルミニウム合金は、有害な大きい金属間化合物が生成しない範囲に合金成分を規制して強度等の材料特性の安定確保を可能としたものでもある。
そのため、本発明に係る鋳造用アルミニウム合金によると、高温度での熱処理(溶体化処理−焼入れ処理)による形状精度の悪化を懸念することなく所要強度の成形品を効率良く得ることができるようになる。
その上、セミソリッド状態より急冷凝固させてAl中により多くの合金成分を固溶させた状態の鋳造品は、そのままでも高温強度に優れるので、これを高温熱処理(溶体化処理)に供したとしても従来鋳造材のように形状精度の悪化が目立つことはない。そのため、材料特性の更なる改善を目指して熱処理を施す必要が生じたとしても製品品質に格別な支障を来たすことはない。
また、本発明に係る鋳造用アルミニウム合金は、有害な大きい金属間化合物が生成しない範囲に合金成分を規制して強度等の材料特性の安定確保を可能としたものでもある。
そのため、本発明に係る鋳造用アルミニウム合金によると、高温度での熱処理(溶体化処理−焼入れ処理)による形状精度の悪化を懸念することなく所要強度の成形品を効率良く得ることができるようになる。
その上、セミソリッド状態より急冷凝固させてAl中により多くの合金成分を固溶させた状態の鋳造品は、そのままでも高温強度に優れるので、これを高温熱処理(溶体化処理)に供したとしても従来鋳造材のように形状精度の悪化が目立つことはない。そのため、材料特性の更なる改善を目指して熱処理を施す必要が生じたとしても製品品質に格別な支障を来たすことはない。
なお、図1は、従来の鋳造用アルミニウム合金(JISのAC4CH相当合金)と本発明合金(7%Si−1%Cu−0.5 %Mg−Al、以降の成分割合を表す%は質量%とする)につき、これらをセミソリッド鋳造法で鋳造した後に200℃で保持した際の「保持時間と硬度との関係」を調査した結果を示すグラフである。
この図1からも、本発明に係る合金は、鋳造のままや時効のみでの強度特性に優れており、従来の鋳造用アルミニウム合金ではセミソリッド鋳造法を施したとしても本発明合金の強度特性(強度,析出硬化特性)に到達し得ないことが分かる。
この図1からも、本発明に係る合金は、鋳造のままや時効のみでの強度特性に優れており、従来の鋳造用アルミニウム合金ではセミソリッド鋳造法を施したとしても本発明合金の強度特性(強度,析出硬化特性)に到達し得ないことが分かる。
まず、本発明に係るセミソリッド鋳造用アルミニウム合金において合金成分の含有量範囲を前記の如くに限定した理由を説明する。
Siは、合金をセミソリッド状態(半溶融状態又は半凝固状態)としたときの固・液共存範囲や、合金の強度に影響する成分である。セミソリッド状態の合金の固・液共存範囲はセミソリッド鋳造法での鋳造性(成形性)を左右し、固・液共存範囲が広いほど成形性は良好となるが、本発明に係るアルミニウム合金ではSi含有量が6%のときに固・液共存範囲が最も広く、4〜8%の含有量範囲内であれば鋳造性に不都合を生じることはない。また、Si含有量が4%を下回ったり8%を上回ったりすると目的とする所要の強度(鋳造のままでの引張強さ250MPa以上)を安定して確保することが困難となる。従って、Si含有量は4〜8%と定めたが、好ましい含有量範囲は5.6 〜8.0 %である。
Siは、合金をセミソリッド状態(半溶融状態又は半凝固状態)としたときの固・液共存範囲や、合金の強度に影響する成分である。セミソリッド状態の合金の固・液共存範囲はセミソリッド鋳造法での鋳造性(成形性)を左右し、固・液共存範囲が広いほど成形性は良好となるが、本発明に係るアルミニウム合金ではSi含有量が6%のときに固・液共存範囲が最も広く、4〜8%の含有量範囲内であれば鋳造性に不都合を生じることはない。また、Si含有量が4%を下回ったり8%を上回ったりすると目的とする所要の強度(鋳造のままでの引張強さ250MPa以上)を安定して確保することが困難となる。従って、Si含有量は4〜8%と定めたが、好ましい含有量範囲は5.6 〜8.0 %である。
Mgは、合金の時効特性(析出硬化特性)に影響する成分であり、その含有量が0.3 %未満であると時効硬化性(析出硬化性)が低下し、また 1.0%を超えると過剰なMgによって強度の低下を招き、何れにしても所要の強度を安定して確保することが困難になる。従って、Mg含有量は0.3 〜1.0 %と定めたが、好ましい含有量範囲は0.4 〜0.8 %である。
Cuは、合金のAl素地の強度を上げると共に時効特性(析出硬化特性)を向上させる作用を有する成分であるが、その含有量が0.5 %未満では前記作用による所要の効果が得られず、一方 2.5%を超えて含有させると鋳放し(鋳造のまま)や時効処理(析出硬化処理)のみの状態で所要強度が確保されるのを阻害する粗大な金属間化合物が生成するようになる。従って、Cu含有量は0.5 〜2.5 %と定めたが、好ましい含有量範囲は0.5 %以上2.0 %未満である。
Srは、共晶Si粒子の微細化と形状改良作用を有するので必要に応じて含有せしめられる成分であるが、その含有量が0.003 %を下回ると前記作用による所要の効果を確保することが困難となり、一方、0.02%を超えて過剰に含有されるとSr化合物が晶出して合金の強度に悪影響を及ぼすようになる。従って、Srを含有させる場合にはその含有量を0.003 〜0.02%の範囲に規制することとした。
Tiも、合金の共晶Si粒子の微細化に有用であるため必要に応じて含有せしめられる成分であるが、その含有量が0.2 %を超えると鋳造品の機械的特性を低下する弊害が目立つようになる。従って、Tiを含有させる場合にはその含有量を0.2 %以下に規制しなければならないが、好ましい含有量範囲は0.01〜0.15%である。
なお、本発明に係るアルミニウム合金はセミソリッド鋳造用に供するためのものであるが、適用するセミソリッド鋳造法には格別な制限はなく、固相と液相が共存する状態(半溶融状態又は半凝固状態)のアルミニウム合金素材を金型内に充填して冷却することにより所要の形状に凝固させる鋳造法であれば何れが採用されても構わない。
例えば、固相と液相が共存する状態の合金素材を得る手段として、合金溶湯を機械的や電磁的に攪拌して等軸晶で粒状化した初晶を発生させる手法や、樹脂状晶を分断しながら合金溶湯を凝固させたりして内部歪を発生させた後に再加熱することにより粒状固相が発生した半溶融状態素材とする手法、あるいは特開2007−181874号公報に記載されているような低い温度に保たれた円筒状ステンレス鋼容器に低温のアルミニウム合金溶湯を注ぎ込んで等軸晶で粒状化した初晶を発生させる手法等の何れの手段を採用したセミソリッド鋳造法が適用されても良い。
勿論、金型内に充填したセミソリッド状態の素材をそのまま冷却する形態のセミソリッド鋳造法であっても、金型内に充填した素材を加圧しながら冷却する形態のセミソリッド鋳造法であっても差し支えはない。
例えば、固相と液相が共存する状態の合金素材を得る手段として、合金溶湯を機械的や電磁的に攪拌して等軸晶で粒状化した初晶を発生させる手法や、樹脂状晶を分断しながら合金溶湯を凝固させたりして内部歪を発生させた後に再加熱することにより粒状固相が発生した半溶融状態素材とする手法、あるいは特開2007−181874号公報に記載されているような低い温度に保たれた円筒状ステンレス鋼容器に低温のアルミニウム合金溶湯を注ぎ込んで等軸晶で粒状化した初晶を発生させる手法等の何れの手段を採用したセミソリッド鋳造法が適用されても良い。
勿論、金型内に充填したセミソリッド状態の素材をそのまま冷却する形態のセミソリッド鋳造法であっても、金型内に充填した素材を加圧しながら冷却する形態のセミソリッド鋳造法であっても差し支えはない。
そして、本発明に係るアルミニウム合金はセミソリッド鋳造のまま(鋳放しのまま)やT5処理のみで優れた材料特性(強度特性等)を発揮するものであるが、セミソリッド鋳造後にT6処理等の高温熱処理を施して更なる材料特性の改善を図っても構わない。この場合、前述したように、セミソリッド鋳造後の鋳造品はセミソリッド状から急冷凝固されてAl中により多くの合金成分が固溶した状態となっており、そのため良好な高温強度を示すので、これに高温の熱処理を施しても形状精度の悪化を懸念することはない。
次に、本発明を実施例に基づいて説明する。
表1に示した化学組成を有するアルミニウム合金A〜Jの溶湯(630℃)を準備し、これらのそれぞれを300℃に保持した円筒状のステンレス鋼容器(内径が100mmで肉厚が10mm)に注湯して等軸晶で粒状の初晶が発生した液相率50%のセミソリッド状材料を得た後、直ちに金型に充填して加圧冷却(圧力30MPa)し、厚さ20mm,幅120mmで長さ120mmの板柱鋳造品を作製した。
このようにして得られた各鋳造品から引張り試験片を採取し、鋳造のまま(鋳放し)の状態とT5処理(200℃で4時間保持の焼もどし時効処理)を施した状態とにおける引張強さ及び伸びを測定した。
これらの結果を表2に示す。
これらの結果を表2に示す。
表2に示す結果からも、本発明に係るアルミニウム合金は、セミソリッド鋳造を適用することによって鋳造のままでも引張強さ250MPa以上の強度を示すようになると共に良好な伸びを具備するということを確認することができる。
また、セミソリッド鋳造した本発明合金はT5処理を施すことも有効であり、T5処理によって強度の著しい改善がなされることも分かる。
また、セミソリッド鋳造した本発明合金はT5処理を施すことも有効であり、T5処理によって強度の著しい改善がなされることも分かる。
因みに、前記表1のA合金を用いたセミソリッド鋳造品にT6処理(溶体化−焼入れ後に200℃で4時間保持の焼もどし時効処理)を施したものについて強度及び伸びを調査したところ、引張強さ345MPa,降伏強度287MPa,伸び12.1%と、T5処理材よりも更に特性が改善されることも確認できた。
以上に説明した通り、本発明によれば、高温度での熱処理を施すことなく高強度を示すアルミニウム合金鋳造品を省エネルギ−下で効率良く安定提供することができ、自動車等の車両部材や各種機器類の更なる軽量化に大きく寄与できるなど、産業上の利用可能性は極めて高い。
Claims (2)
- 質量%で、
Si:4〜8%,
Mg:0.3 〜1.0 %,
Cu:0.5 〜2.5 %
を含み、残部がAl及び不可避的不純物から成る、セミソリッド鋳造用合金。 - 質量%で、
Si:4〜8%,
Mg:0.3 〜1.0 %,
Cu:0.5 〜2.5 %
を含むと共に、更に
Sr:0.003 〜0.02%,
Ti:0.2 %以下
の1種又は2種をも含み、残部がAl及び不可避的不純物から成る、セミソリッド鋳造用合金。
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