JP5236940B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents

非水電解質二次電池 Download PDF

Info

Publication number
JP5236940B2
JP5236940B2 JP2007501051A JP2007501051A JP5236940B2 JP 5236940 B2 JP5236940 B2 JP 5236940B2 JP 2007501051 A JP2007501051 A JP 2007501051A JP 2007501051 A JP2007501051 A JP 2007501051A JP 5236940 B2 JP5236940 B2 JP 5236940B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
positive electrode
heat
insulating layer
general formula
resistant insulating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007501051A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2007072596A1 (ja
Inventor
肇 西野
真治 笠松
秀治 武澤
一広 岡村
幹也 嶋田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Corp
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Panasonic Corp
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority claimed from PCT/JP2005/023373 external-priority patent/WO2006068143A1/ja
Application filed by Panasonic Corp, Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Panasonic Corp
Priority to JP2007501051A priority Critical patent/JP5236940B2/ja
Priority claimed from PCT/JP2006/312575 external-priority patent/WO2007072596A1/ja
Publication of JPWO2007072596A1 publication Critical patent/JPWO2007072596A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5236940B2 publication Critical patent/JP5236940B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P70/00Climate change mitigation technologies in the production process for final industrial or consumer products
    • Y02P70/50Manufacturing or production processes characterised by the final manufactured product

Landscapes

  • Secondary Cells (AREA)
  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)
  • Cell Separators (AREA)

Description

本発明は、非水電解質二次電池に関し、特にその安全性の改善に関する。
近年、電子機器のポータブル化およびコードレス化が急速に進んでいる。これに伴い、電子機器の駆動用電源として、高電圧および高エネルギー密度を有する非水電解質二次電池の実用化が進んでいる。
非水電解質二次電池の正極は、一般に酸化還元電位の高い複合リチウム酸化物を含む。複合リチウム酸化物には、例えばコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等が用いられる。一方、非水電解質二次電池の負極は、一般に炭素材料を含む。また、非水電解質二次電池は、リチウム塩を溶解させた非水溶媒からなる電解質を含む。リチウム塩には、例えばLiClO4、LiPF6等が用いられる。正極と負極との間にはセパレータが介在している。セパレータには、例えばポリオレフィン系材料からなる微多孔フィルムが用いられている。
何らかの要因により、電池内部で比較的低い抵抗の短絡が発生した場合、短絡点には大きな電流が集中して流れる。そのため、電池が発熱して高温に至ることがある。このような現象が起こらないように、電池には様々な安全対策が講じられている。
製造工程の側面では、金属粉の管理や、製造雰囲気中の粉塵の管理を行い、電池内部への異物の混入を防止している。また、抵抗の低い集電体の露出部分を、例えば絶縁テープで保護することにより、内部短絡を極力抑制している。
シャットダウン機能を有するセパレータも用いられている。万一、電池内部で比較的低い抵抗の短絡が発生した場合、シャットダウン機能を有するセパレータの細孔は、約135℃で閉塞し、イオン電流を遮断する。よって、短絡電流はカットされ、発熱が停止する。しかし、電池の表面温度は約120℃程度に上昇する。
内部短絡を防止するために、電極上に、無機微粒子および樹脂結着剤からなり、厚み0.1〜200μmである層を形成することも提案されている。電池の内部短絡は、電池の製造工程中に、電極から部分的に脱落する材料に起因する。この提案は、このような内部短絡を抑制し、生産歩留まりを向上させることを目的とする(特許文献1参照)。
セパレータ上に、耐熱性樹脂(例えばアラミド)を付与することも提案されている。この提案も、電池の内部短絡を防止するための安全対策を意図したものである(特許文献2参照)。
特開平7−220759号公報 特開平9−208736号公報
従来の提案によれば、局所的な内部短絡が発生した場合には、ある程度、発熱を抑制することが可能である。しかし、例えば釘刺し試験を行う場合には、同時に多数の短絡部が発生する。釘刺し試験は、電池が多数の内部短絡を伴って破損した際の安全性を評価する試験である。このような極端な短絡状態では、必ずしも電池の発熱を抑制することができず、電池が高温に至ることがある。
例えば、正極がコバルト酸リチウムを含み、負極がグラファイトを含み、セパレータがポリエチレン製微多孔フィルムである一般的なリチウムイオン電池の釘刺し試験を行うと、セパレータのシャットダウン機能が発現するまで電池温度は上昇し、電池の表面温度は120℃付近になる。この温度上昇は、短絡電流により電池内部で発生したジュール熱による。
セパレータのシャットダウン機能により、短絡電流がカットされるため、電池温度がそれ以上に達するほどの発熱は抑制される。蓄電池工業会で定められている釘刺し試験および圧壊試験における安全性評価の基準によれば、発煙、発火および破裂のないことが要求される。一方、電池温度に関する基準は特に定められていない。そのため、電池の表面温度が120℃程度となっても、シャットダウン機能により発熱が抑制されれば、安全性の基準を満たすことになる。
しかし、安全性の基準を満たす場合であっても、電池の表面温度が120℃付近にまで上昇すると、その電池を内蔵した電子機器の温度も上昇する。よって、電子機器の筐体の変形等が起こり、電子機器の安全性が低減する可能性がある。よって、電池の安全性もしくは信頼性を更に高めることが望まれている。例えば内部短絡が発生した場合でも、電池表面の最高到達温度を80℃以下に抑制することが熱望されている。
特許文献1の提案(電極上に、無機微粒子および樹脂結着剤からなり、厚み0.1〜200μmである層を形成する提案)では、釘刺し試験においては、電池温度が80℃を超える高温に達する場合がある。
特許文献2の提案(セパレータ上に、耐熱性樹脂を付与する提案)でも、釘刺し試験においては、電池表面温度が80℃を超える高温に達する場合がある。
よって、従来の提案では、釘刺し試験のように、同時に多数の短絡点が発生する場合には、必ずしも電池表面温度を80℃以下に抑制することができない。釘刺し試験において、電池表面高温が80℃を超える理由として以下が考えられる。
単発的な内部短絡であれば、無機微粒子および樹脂結着剤からなる層や耐熱性樹脂の存在により、短絡点の拡大は防がれる。短絡点は自己の発熱によって瞬時に焼失するため、短絡状態は0.1〜0.5秒間で終了し、その後、電気的な絶縁が回復する。短絡電流が遮断されると、発生した熱は電池全体へ拡散する。よって、電池温度がそれほど高温に達することはない。短絡点以外の低温部位は、比較的低温であるため、熱の拡散は速やかに起こる。
一方、釘刺し試験の場合、電池内に同時に多数の短絡点が発生する。このような過酷な状況では、内部短絡による発熱だけでなく、正極活物質の熱分解反応による発熱が連続的に発生すると考えられる。よって、熱を拡散する放熱速度が、発熱速度に追いつかず、正極活物質の熱分解反応が連鎖的に拡大すると考えられる。これにより、短絡点付近では、正極活物質の脱落や焼失が起こる。よって、正極集電体(例えばアルミニウム箔)が露出し、新たな短絡点が生成される。その結果、内部短絡状態が持続し、電池表面温度はシャットダウン機能が作動する120℃付近まで上昇し続けることになる。なお、単発的な内部短絡であれば、正極活物質の熱分解反応が進行することはない。正極活物質の脱落や焼失による短絡点の増加も起こらないと考えられる。
本発明は、上記状況の改善を図るものであり、高エネルギー密度を維持しながら、従来よりも安全性を高めた非水電解質二次電池を提供するものである。
本発明は、正極活物質を含む正極合剤およびこれを担持する正極集電体を含む正極、リチウムを吸蔵および放出可能な材料を含む負極、正極と負極との間に介在するポリオレフィン樹脂を含むセパレータ、非水電解質、ならびに、正極と負極との間に介在する耐熱性絶縁層を具備する非水電解質二次電池であって、正極と負極とが、これらの間に介在するセパレータおよび耐熱性絶縁層とともに捲回されており、正極合剤の200℃における推定発熱速度は、50W/kg以下である、非水電解質二次電池に関する。
耐熱性絶縁層は、耐熱性樹脂を含む。耐熱性絶縁層の厚みは、例えば1μm以上、15μm以下、もしくは、1μm以上、5μm以下である。
推定発熱速度は、(i)加速速度熱量計もしくは暴走反応測定装置(ARC)により、絶対温度Tと、正極合剤の発熱速度Vとの関係を求め、(ii)アレニウスの定理に基づいて、絶対温度Tの逆数(X座標)と、発熱速度Vの対数(Y座標)との関係をプロットし、(iii)T<200℃(473K)の発熱領域に存在するプロットに適合する近似直線を求め、(iv)得られた近似直線を、T=200℃(473K)の温度軸に外挿することにより求められる。
ここで、発熱領域とは、上記アレニウスの定理に基づくプロットにおいて、負の傾きを有する近似直線の傾きの絶対値が最も大きくなる領域を指す。すなわち、近似直線は、負の傾きの絶対値が最大となるように描く。また、外挿(Extrapolation)は、既知の数値データを基にして、そのデータの範囲外において予想される数値を求める方法であり、様々な分野で用いられている。
正極活物質は、下記の一般式(1)で表される複合リチウム酸化物、下記の一般式(2)で表される複合リチウム酸化物、一般式(1)で表される複合リチウム酸化物と一般式(2)で表される複合リチウム酸化物との混合物、または一般式(1)もしくは一般式(2)で表される複合リチウム酸化物とLiCoO 2 の混合物を含む
(i)一般式(1):Lia1b1Mec2
元素Mは、Al、Mn、Sn、In、Fe、Cu、Mg、Ti、Zn、ZrおよびMoよりなる群から選択される少なくとも1種であり、元素Meは、NiおよびCoよりなる群から選択される少なくとも1種であり、一般式(1)は、0.9<a1<1.2、0.02≦b1≦0.5、0.5≦c≦0.98、および0.95≦b1+c≦1.05を満たす。
(ii)一般式(2):Lia2 b2 NidCoe2
元素Mは、Al、Mn、Sn、In、Fe、Cu、Mg、Ti、Zn、ZrおよびMoよりなる群から選択される少なくとも1種であり、一般式(2)は、0.9<a<1.2、0.02≦b≦0.5、0.1≦d≦0.5、0.1≦e≦0.5、および0.95≦b+d+e≦1.05を満たす。一般式(2)は、0.15≦b≦0.4、0.3≦d≦0.5および0.15≦e≦0.4を満たすことが特に好ましい。
一般式(1)および(2)で表される複合リチウム酸化物において、元素Mは、複合リチウム酸化物の内部よりも表層部に多く分布することが望ましい。
複合リチウム酸化物は、一般式(3):X−Si−Y3で表されるSi化合物で処理されていることが望ましい。ここで、Xは、複合リチウム酸化物と反応する官能基を含み、Yは、C、H、O、FまたはSiを含む官能基を含む。
本発明によれば、同時に多数の短絡点が生じる過酷な状況においても、内部短絡による発熱と連鎖的な発熱反応とが効果的に抑制される。よって、短絡の持続が回避されるため、電池の最高到達温度を安定して80℃以下に抑制することが可能となる。本発明によれば、高エネルギー密度を維持しながら、従来よりも安全性を高めた非水電解質二次電池を提供できる。
本発明の非水電解質二次電池は、複合リチウム酸化物を含む正極合剤およびこれを担持する正極集電体を含む正極、リチウムを吸蔵および放出可能な材料を含む負極、ポリオレフィン樹脂を含むセパレータ、非水電解質、ならびに、正極と負極との間に介在する耐熱性絶縁層を具備する。
耐熱性絶縁層は、例えば、正極および負極のどちらか一方において、他方の電極と対向する面に形成すればよいが、耐熱性絶縁層の配置はこれに限定されない。また、耐熱性絶縁層は、正極の少なくとも一方の面だけに形成してもよく、負極の少なくとも一方の面だけに形成してもよく、セパレータの少なくとも一方の面だけに形成してもよい。また、耐熱性絶縁層は、正極の少なくとも一方の面と負極の少なくとも一方の面だけに形成してもよく、負極の少なくとも一方の面とセパレータの少なくとも一方の面だけに形成してもよく、セパレータの少なくとも一方の面と正極の少なくとも一方の面だけに形成してもよい。また、耐熱性絶縁層は、正極の少なくとも一方の面と負極の少なくとも一方の面とセパレータの少なくとも一方の面に形成してもよい。さらに、耐熱性絶縁層は、正極からも、負極からも、セパレータからも独立したシート状であってもよい。ただし、耐熱性絶縁層は、正極の少なくとも一方の面、負極の少なくとも一方の面、または、セパレータの少なくとも一方の面に、接着されていることが望ましい。
本発明は、正極合剤の200℃における推定発熱速度が50W/kg以下に制御されている点に一つの特徴を有する。ここで、推定発熱速度は、例えば(i)加速速度熱量計もしくは暴走反応測定装置(Accelerated rate calorimeter:ARC)により、絶対温度Tと正極合剤の発熱速度Vとの関係を求め、(ii)アレニウスの定理に基づいて、絶対温度Tの逆数(X座標)および発熱速度Vの対数(Y座標)との関係をプロットし、(iii)T<200℃(473K)の発熱領域に存在するプロットに適合する近似直線を求め、(iv)得られた近似直線をT=200℃(473K)の温度軸に外挿することにより、求められる。
上記外挿で求められる正極合剤の200℃における推定発熱速度が50W/kg以下である場合、特に同時多発的に短絡点が生じる過酷な状況において、耐熱性絶縁層による安全性への寄与が顕著に高められる。本発明は、このような知見に基づいており、従来に比べて極めて高度な安全性を実現している。
例えば以下のような正極材料を用いることにより、正極合剤の200℃における推定発熱速度を50W/kg以下に抑制することができる。
第1に、一般式(1):Lia1 b1 Mec2で表される組成を有し、元素Mは、Al、Mn、Sn、In、Fe、Cu、Mg、Ti、Zn、ZrおよびMoよりなる群から選択される少なくとも1種であり、元素Meは、NiおよびCoよりなる群から選択される少なくとも1種であり、一般式(1)は、0.9<a<1.2、0.02≦b≦0.5、0.5≦c≦0.98、および0.95≦b+c≦1.05を満たす複合リチウム酸化物を、推定発熱速度を50W/kg以下に抑制するのに有効な正極材料として挙げることができる。
推定発熱速度を小さくするという観点から、元素Mのなかでも特に、Mn、AlおよびMgが好ましく、Mnが最も好ましい。なお、Al、Mn、Sn、In、Fe、Cu、Mg、Ti、Zn、ZrおよびMoは、いずれも推定発熱速度を低下させる効果がある。
ここで、a値は、初期値であり、電池の充放電により増減する。初期値は、実質上、放電状態の電池に含まれる複合リチウム酸化物のa値に一致する。合成直後の複合リチウム酸化物の標準的なa値は1である。
値が0.02未満では、元素Mの効果が確認できず、0.5を超えると、容量低下が大きくなる。
c値が0.5未満では、一定以上の容量を確保することが困難であり、0.98を超えると、推定発熱速度を低下させる効果が得られない。
一般式(1)は、0.95≦b+c≦1.05を満たす。合成直後の初期状態(充放電の履歴を有さない状態)において、b+cの標準値は1であるが、b+cは厳密に1である必要はない。0.95≦b+c≦1.05の範囲では、実質上b+c=1と見なすことができる。
第2に、一般式(2):Lia2 b2 NidCoe2で表される組成を有し、元素Mは、Al、Mn、Sn、In、Fe、Cu、Mg、Ti、Zn、ZrおよびMoよりなる群から選択される少なくとも1種であり、一般式(2)は、0.9<a<1.2、0.02≦b≦0.5、0.1≦d≦0.5、0.1≦e≦0.5、および0.95≦b+d+e≦1.05を満たす複合リチウム酸化物を、推定発熱速度を50W/kg以下に抑制するのに有効な正極材料として挙げることができる。一般式(2)は、0.15≦b≦0.4、0.3≦d≦0.5および0.15≦e≦0.4を満たすことが特に好ましい。
一般式(2)で、a値は、初期値であり、電池の充放電により増減する。また、b値が0.02未満では、元素Mの効果が確認できず、0.5を超えると、容量低下が大きくなる。
d値が0.1未満では、Niの添加効果(例えば理論容量を向上させる効果)が低く、0.5を超えると、電圧が低くなる上に、寿命特性も低下する。
e値が0.1未満では、Coの添加効果(例えば電圧を向上させる効果)が低く、0.5を超えると、正極の利用率が低下する。
一般式(2)は、0.95≦b+d+e≦1.05を満たす。ただし、合成直後の初期状態(充放電の履歴を有さない状態)において、b+d+eの標準値は1であるが、b+d+eは厳密に1である必要はない。0.95≦b+d+e≦1.05の範囲では、実質上b+d+e=1と見なすことができる。
一般式(2)で表され、200℃における推定発熱速度を50W/kg以下に制御する正極材料の具体例として、例えばLiMnb2 NidCoe2(0.15≦b≦0.35、0.3≦d≦0.5および0.25≦e≦0.35)が挙げられる。
第3に、任意の組成を有し、元素Mを含み、元素Mは、Al、Mn、Sn、In、Fe、Cu、Mg、Ti、Zn、ZrおよびMoよりなる群から選択される少なくとも1種であり、元素Mは、内部よりも表層部に多く分布する複合リチウム酸化物を、推定発熱速度を50W/kg以下に抑制するのに有効な正極材料として挙げることができる。
このような正極材料は、任意の組成を有する複合リチウム酸化物(例えば一般式(1)または(2)で表される複合リチウム酸化物)の表面に、元素Mを含む化合物(例えば、硝酸塩、硫酸塩など)を付与し、元素Mを複合リチウム酸化物内に拡散させることにより得ることができる。例えば、複合リチウム酸化物と少量の元素Mを含む化合物を混合し、適温で焼成すれば、元素Mが複合リチウム酸化物の表面から内部に拡散する。その結果、元素Mが内部よりも表層部に多く分布する複合リチウム酸化物を得ることができる。あるいは、元素Mを含む化合物を溶解もしくは分散させた液と、複合リチウム酸化物とを混合し、その後、液状成分を除去することで、元素Mを担持した複合リチウム酸化物を得ることができる。この複合リチウム酸化物を適温(例えば300〜700℃)で焼成すれば、元素Mが複合リチウム酸化物の表面から内部に拡散する。
元素Mを含む化合物は、200℃における推定発熱速度を抑制する効果が大きい。ただし、複合リチウム酸化物に添加する元素Mを含む化合物の量が多くなると、正極の利用率が低下し、電池のエネルギー密度が低下する。また、正極の発熱反応は、活物質粒子の表面で起こる。よって、元素Mを活物質粒子の表層部に多く存在させることで、正極の利用率を大きく低下させずに、効率よく発熱を抑制できる。すなわち、元素Mを活物質粒子の表層部に集中分布させることで、少量の元素Mにより、推定発熱速度を抑制できる。
複合リチウム酸化物1モルあたり、元素Mが0.0001〜0.05モルとなる量の元素Mを含む化合物を用いることが好ましい。
第4に、一般式(3):X−Si−Y3で表されるSi化合物で処理されている複合リチウム酸化物を、推定発熱速度を50W/kg以下に抑制するのに有効な正極材料として挙げることができる。ここで、Xは、複合リチウム酸化物と反応する官能基を含み、Yは、C、H、O、FまたはSiを含む官能基を含む。このようなSi化合物で複合リチウム酸化物の表面を改質することにより、活物質粒子の表面で起こる発熱反応が抑制され、推定発熱速度が抑制される。また、Si化合物で複合リチウム酸化物を処理しても、正極の利用率は大きく低下しない。
例えば、複合リチウム酸化物を、X−Si−Y3で表されるシランカップリング剤で処理することが望ましい。複合リチウム酸化物を、X−Si−Y3で表されるシランカップリング剤で処理する方法は、特に限定されない。例えば、シランカップリング剤を水と混合し、得られた混合液を複合リチウム酸化物と混合し、その後、乾燥させる。ここで、シランカップリング剤と水との混合液において、シランカップリング剤の濃度は、0.01重量%〜5重量%程度が好ましく、0.1重量%〜3重量%程度が更に好ましい。また、シランカップリング剤の量は、複合リチウム酸化物100重量部あたり、0.001〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.1重量部が更に好ましい。
シランカップリング剤には、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(2- メトキシエトキシ)シラン、γ- メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ- メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ- アミノプロピルトリエトキシシラン、γ- アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β- (アミノエチル)- γ- アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β- (アミノエチル)- γ- アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ- ウレイドプロピルトリメトキシシラン、β- (3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β- (3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ- メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ- メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ- クロルプロピルトリメトキシシラン、γ- クロルプロピルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどを用いることができる。これらのうちでは、特に、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2- メトキシエトキシ)シラン、γ- メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ- メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ- アミノプロピルトリエトキシシラン、γ- アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)- γ- アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β- (アミノエチル)- γ- アミノプロピルトリエトキシシラン、γ- ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ- ウレイドプロピルトリメトキシシラン、β- (3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β- (3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ- グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
耐熱性絶縁層は、例えば、無機酸化物フィラーおよび樹脂成分を含む。無機酸化物フィラーは、耐熱性が高い。よって、電池が比較的高温に至った場合でも、耐熱性絶縁層は、機械的強度を高く維持することができる。耐熱性絶縁層には、様々な樹脂成分を用いることができるが、耐熱性の高い樹脂成分を用いることにより、特に優れた耐熱性絶縁層が得られる。
耐熱性絶縁層は、例えば、無機酸化物フィラーおよび結着剤(樹脂成分)を含む場合と、耐熱性樹脂(樹脂成分)からなる場合があるが、特に限定されない。無機酸化物フィラーおよび結着剤を含む耐熱性絶縁層は、機械強度が比較的高いので、耐久性が高い。ここで、無機酸化物フィラーおよび結着剤を含む耐熱性絶縁層は、無機酸化物フィラーを主成分とする。例えば耐熱性絶縁層の80重量%以上、好ましくは90重量%以上が無機酸化物フィラーである。耐熱性樹脂からなる耐熱性絶縁層は、例えば20重量%を超える耐熱性樹脂を含む。
耐熱性樹脂からなる耐熱性絶縁層は、無機酸化物フィラーを主成分として含む耐熱性絶縁層に比べ、柔軟性が高い。これは無機酸化物フィラーよりも耐熱性樹脂の方が柔軟なためである。よって、耐熱性樹脂からなる耐熱性絶縁層は、充放電に伴う極板の膨張および収縮に追従しやすく、高い耐熱性を保持できる。よって、釘刺し安全性も高くなる。
耐熱性樹脂からなる耐熱性絶縁層は、例えば80重量%未満の無機酸化物フィラーを含むことができる。無機酸化物フィラーを含ませることにより、柔軟性と耐久性とのバランスに優れた耐熱性絶縁層が得られる。耐熱性樹脂は耐熱性絶縁層の柔軟性に寄与し、機械的強度の高い無機酸化物フィラーは耐久性に寄与する。耐熱性絶縁層に無機酸化物フィラーを含ませることにより、電池の高出力特性が向上する。詳細は不明であるが、これは、柔軟性と耐久性との相乗効果により、耐熱性絶縁層の空隙構造が適正化されるためと考えられる。良好な高出力特性を確保する観点から、耐熱性樹脂からなる耐熱性絶縁層は、25重量%〜75重量%の絶縁性フィラーを含むことが望ましい。
耐熱性絶縁層の樹脂成分(結着剤もしくは耐熱性樹脂)は、250℃以上の熱分解開始温度を有することが望ましい。樹脂成分は、高温で大きく変形しないことが望ましい。よって、樹脂成分は、非晶質もしくは非結晶性であることが望ましい。樹脂成分の熱変形開始温度もしくはガラス転移温度(Tg)は250℃以上であることが望ましい。
樹脂成分の熱分解開始温度や熱変形開始温度やガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC:differential scanning calorimetry)や、熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:thermogravimetry-differential thermal analysis)により測定することができる。例えば、TG−DTA測定における重量変化の始点は、熱分解開始温度に相当し、DSC測定における吸熱方向への変曲点は、熱変形温度やガラス転移温度に相当する。
耐熱性絶縁層を構成する結着剤の具体例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂、アクリロニトリル単位を含むゴム性状高分子(変性アクリロニトリルゴム)を好ましく用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも適度な耐熱性、弾力性および結着性を有することから、アクリロニトリル単位を含むゴム性状高分子が最も適している。
耐熱性絶縁層を構成する耐熱性樹脂の具体例としては、例えば、芳香族ポリアミド(アラミド)等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などを好ましく用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機酸化物フィラーおよび結着剤を含む耐熱性絶縁層は、負極の少なくとも一方の面に形成もしくは接着されていることが好ましく、負極の両面に形成もしくは接着されていることが更に好ましい。耐熱性樹脂からなる耐熱性絶縁層は、セパレータの少なくとも一方の面に形成もしくは接着されていることが好ましく、耐熱性絶縁層は比較的脆いため、セパレータの一方の面だけに形成もしくは接着されていることが更に好ましい。耐熱性樹脂からなる耐熱性絶縁層が、セパレータの一方の面だけに形成されている場合、セパレータの厚みAと、耐熱性絶縁層の厚みBとの比率:A/Bは、耐熱性絶縁層の破損を防ぐ観点から、例えば3≦A/B≦12、もしくは、4≦A/B≦6である。
無機酸化物フィラーには、例えばアルミナ(Al23)、チタニア(TiO2)、シリカ(SiO2)、ジルコニア、マグネシア等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、安定性、コスト、取り扱いの容易さの観点から、特にアルミナ(なかでもα−アルミナ)やマグネシアが好ましい。
無機酸化物フィラーのメディアン径(D50:平均粒径)は、特に限定されないが、一般に0.1〜5μmの範囲であり、0.2〜1.5μmであることが望ましい。
無機酸化物フィラーおよび結着剤を含む耐熱性絶縁層に占める無機酸化物フィラーの含有率は、50重量%以上99重量%以下であることが好ましく、90重量%以上99重量%以下であることが更に好ましい。無機酸化物フィラーの含有率が50重量%を下回ると、樹脂成分が過多となる。よって、フィラー粒子による細孔構造の制御が困難になることがある。一方、無機酸化物フィラーの含有率が99重量%を上回ると、樹脂成分が過少となる。よって、耐熱性絶縁層の強度や、電極表面もしくはセパレータ表面に対する密着性が低下する場合がある。
耐熱性絶縁層の厚みは、特に限定されない。耐熱性絶縁層による短絡抑制機能もしくは短絡点の絶縁化を十分に確保し、かつ設計容量を維持する観点から、耐熱性絶縁層の厚みは、例えば1μm以上、15μm以下である。無機酸化物フィラーおよび結着剤を含む耐熱性絶縁層の厚みは、例えば3〜15μm、もしくは、3〜8μmである。耐熱性樹脂からなる耐熱性絶縁層の厚みは、例えば1.5〜7μm、もしくは、1.7〜6.7μmである。耐熱性絶縁層の厚みが大きすぎると、耐熱性絶縁層は脆いため、電極を捲回する際に破損する場合がある。一方、厚みが小さすぎると、耐熱性絶縁層の強度が小さくなり、破損する場合がある。
本発明には、様々な従来のセパレータを用いることができる。例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂からなる単層構造のセパレータや、ポリオレフィン樹脂からなる多層構造のセパレータを用いることができる。セパレータの厚みは、特に限定されないが、15〜25μm程度が望ましい。
正極合剤は、複合リチウム酸化物からなる活物質を必須成分として含み、結着剤、導電材などを任意成分として含む。正極の結着剤には、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性アクリロニトリルゴム粒子、PVDF等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。PTFEや変性アクリロニトリルゴム粒子は、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキシド、変性アクリロニトリルゴム等と組み合わせて用いることが好ましい。これらは、正極合剤と液状成分を含むペーストの増粘剤となる。正極の導電材には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、各種黒鉛等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。正極合剤に含まれる結着剤および導電材の量は、活物質100重量部あたり、それぞれ0.1〜5重量部および1〜10重量部が好適である。
炭素材料もしくは合金材料を含む負極には、従来の負極で用いられている様々な材料を用いることができる。炭素材料には、例えば各種天然黒鉛、各種人造黒鉛を用いることができる。合金材料には、例えばケイ素合金、錫合金等を用いることができる。炭素材料と合金材料とを複合して用いることもできる。負極にも、結着剤や導電材を含ませることができる。負極の結着剤や導電材にも、正極の結着剤や導電材として挙げた上記の材料を用いることができる。
非水電解質には、リチウム塩を溶質として溶解した非水溶媒が好ましく用いられる。リチウム塩および非水溶媒ともに特に限定されないが、リチウム塩には、例えばLiPF6、LiBF4等を用いることが好ましい。非水溶媒には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等を用いることが好ましい。非水溶媒は、1種を単独で用いるよりも、2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。また、非水電解質には、添加剤として、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、シクロヘキシルベンゼン等を添加することが望ましい。
以下、本発明を各種実験および実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実験1]
短絡点近傍温度の測定
円筒形18650(直径18mm、高さ65mm)の非水電解質二次電池を10セル作製した。ここで、正極活物質には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)を用いた。また、負極表面に、無機酸化物フィラーおよび樹脂成分からなる耐熱性絶縁層を形成した。これらのセルを用いて、釘刺し試験を行い、釘刺し直後の0.5秒間に、短絡点近傍の温度が何℃まで上昇するかを調べた。
ここでは、電池表面に熱電対を取り付け、熱電対近傍に釘を刺して、電池表面温度を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0005236940
上記の円筒形18650の非水電解質二次電池は、以下の要領で作製した。
(i)正極の作製
コバルト酸リチウム3kgと、結着剤としての呉羽化学(株)製のPVDF#1320(PVDFを12重量%含むN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液)1kgと、アセチレンブラック90gと、適量のNMPとを、双腕式練合機で攪拌し、正極合剤ペーストを調製した。このペーストを15μm厚のアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥後、圧延して、正極合剤層を形成した。この際、アルミニウム箔および正極合剤層からなる極板の厚みを160μmに制御した。得られた極板を、直径18mm、高さ65mmサイズの円筒形の電池ケースに挿入可能な幅と長さに裁断し、正極を得た。
(ii)負極の作製
人造黒鉛3kgと、日本ゼオン(株)製のBM−400B(スチレン−ブタジエン共重合体を40重量%含む水性分散液)75gと、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)30gと、適量の水とを、双腕式練合機で攪拌し、負極合剤ペーストを調製した。このペーストを10μm厚の銅箔の両面に塗布し、乾燥後、圧延して、負極合剤層を形成した。この際、銅箔および負極合剤層からなる極板の厚みを180μmに制御した。得られた極板を、前記電池ケースに挿入可能な幅と長さに裁断し、負極を得た。
(iii)非水電解質の調製
エチレンカーボネートと、メチルエチルカーボネートとを、体積比1:3で含む混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1mol/Lの濃度で溶解し、非水電解質を調製した。
(iv)耐熱性絶縁層の原料ペーストの調製
無機酸化物フィラーであるメディアン径0.3μmのアルミナを950gと、樹脂成分である日本ゼオン(株)製のBM−720H(アクリロニトリル単位を含むゴム性状高分子を8重量%含むNMP溶液)625gと、適量のNMPとを、双腕式練合機で攪拌し、耐熱性絶縁層の原料ペーストを調製した。
(v)電池の組立
耐熱性絶縁層の原料ペーストを負極の両面に塗布し、塗膜を乾燥させて、各面に厚みが0.5μmの耐熱性絶縁層を形成した。
正極と、厚み0.5μmの耐熱性絶縁層を形成した負極とを、厚み20μmのポリエチレン樹脂の単層からなるセパレータを介して捲回して、極板群を構成した。この極板群を電池ケース内に挿入し、非水電解質を5.5g電池ケース内に注液し、ケースの開口部を封口した。こうして、円筒形の非水電解質二次電池(公称容量2000mAh)を完成させた。
釘刺し試験は、以下の条件で行った。
まず、各電池(円筒形電池1〜10)に対し、以下の充電を行った。
定電流充電:1400mA(終止電圧4.25V)
定電圧充電:4.25V(終止電流100mA)
充電後の電池に対して、その側面から、2.7mm径の鉄製丸釘を、20℃環境下で、5mm/秒の速度で貫通させ、貫通後0.5秒間の短絡点近傍(すなわち釘刺し点近傍)の電池温度を観測した。
表1の結果より、短絡点近傍の温度は0.5秒間で、最低でも200℃まで上昇していることがわかった。充電状態のコバルト酸リチウムは、200℃付近になると熱分解を起こすことが一般的に知られている。このことから、釘刺し試験のように同時多発的に短絡点が生じる状況では、短絡点近傍で電流によるジュール発熱が継続的に起こり、正極活物質の分解反応熱が発生したと予想される。このことは、無機酸化物フィラーと樹脂成分からなる耐熱性絶縁層を具備する従来の電池では、同時多発的に内部短絡が発生する状況では、安全性を確実に確保できないことを示唆している。
以上の結果より、同時多発的に内部短絡が発生する状況においても安全性を確実に確保するためには、正極材料の熱安定性を制御することが非常に重要であることが理解できる。より具体的には、耐熱性絶縁層による短絡防止を講じるだけではなく、正極活物質の熱分解反応を抑制することが重要となる。正極活物質は、短絡点近傍が200℃以上の高温に達した場合でも分解しにくい材料であることが要望される。
[実験2]
正極活物質の検討
耐熱性絶縁層と正極活物質の熱安定性が非常に重要な要件であることから、次に正極合剤の熱安定性の検討を行った。ここでは、表2に示す正極材料1〜3を含む正極合剤の200℃における推定発熱速度を測定した。
Figure 0005236940
表2に示した材料を正極活物質として用い、実験1と同様にして、円筒形18650の非水電解質二次電池を作製し、得られた電池を以下の条件で充電した。以下、正極材料1〜3を用いて作製した電池を、それぞれ電池1A〜3Aと称する。
定電流充電:1400mA(終止電圧4.25V)
定電圧充電:4.25V(終止電流100mA)
ただし、電池電圧4.25Vのとき、金属Liに対する正極電位は4.35Vに相当する。
充電状態の電池1A〜3Aを、露点−40℃以下の雰囲気で分解し、正極を取り出した。その正極を3×6cmの試料に切り出した。次いで、正極の試料を、内面にNiメッキを施した鉄製円筒ケース(直径8mm、高さ65mm)に封入し、ケースの開口部を封口した。
次に、円筒ケース内に密封された正極の試料を用い、加速速度熱量計もしくは暴走反応測定装置(Accelerated rate calorimeter:ARC)を用いて、表3に示す条件で、絶対温度Tと正極合剤の発熱速度Vとの関係に関するデータを求めた。
Figure 0005236940
ARCでは、試料が断熱環境に置かれるため、試料の温度上昇速度は、そのまま試料の発熱速度を反映する。発熱反応が検知感度以上の発熱速度を有するまで、段階的に強制的な昇温を繰り返し、検知感度以上の発熱速度を検知すると、断熱環境で、試料の発熱速度の測定が行われる。
表3中の用語の意味を、概念図2を参照しながら以下に記す。
昇温ステップ:試料の自発的な発熱が検知されない領域において、段階的に強制的に上昇させる環境温度の温度幅(図2の「1」)である。
発熱検知感度:試料の自己発熱を検知する感度(図2の「2」)である。感度は材料に基づいて任意に設定される。検知時間(Δt)内における試料の自発的な発熱による温度上昇幅をΔTとした場合、感度はΔT/Δtで表される。
昇温後安定時間:所定の昇温ステップに基づいて、強制的に環境温度を昇温させた後、試料温度と炉内環境温度とが安定するまで放置する時間(図2の「3」)である。この時間は任意に設定される。
発熱認識温度幅:試料の自己発熱を認識する温度幅(図2の「4」)である。発熱認識温度幅が0.2℃で、発熱検知感度が0.04℃/分である場合、0.04℃/分以上の昇温が5分間(0.2/0.04)継続した場合に発熱有りと認識される。
従来、正極活物質の熱安定性の評価には、示差走査熱量測定(DSC:differential scanning calorimetry)や熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:thermogravimetry-differential thermal analysis)等の熱分析装置が利用されている。しかし、DSCやTG−DTAによる熱安定性の評価には、以下の問題点がある。まず、DSCやTG−DTA等による測定では、発熱速度や発熱ピークが測定条件(昇温速度やサンプル量)によって変化する。よって、発熱速度を正確に求めるには適さない。次に、内部短絡等では、短絡点近傍が瞬時に200℃以上まで上昇する。よって、200℃未満で起こる発熱も同時に発生する。しかし、DSCやTG−DTA等では温度域の異なる発熱の速度を予測することができない。反面、ARCは断熱測定のため、サンプルの温度上昇速度は、そのままサンプルの発熱速度を表す。このため、ARCは、熱分析手法と異なり、発熱反応の反応速度を測定するのに非常に有効である。そこで、本発明では、内部短絡時における正極合剤の熱安定性の評価においてARCを用いた。
ARCにより得られたデータは、図1に示すように、アレニウスの定理に基づいてプロットした。すなわち、絶対温度Tの逆数(X座標)と、発熱速度Vの対数(Y座標)との関係をプロットした。こうして得られた化学反応の発熱速度を示すプロットの集合は、直線で近似することができる。よって、近似直線を所定の温度軸に外挿することによって、実際に発熱が観測された温度領域とは異なる温度領域における発熱速度を推定することが可能となる。ここでは、図1に示すように、T<200℃(473K)の発熱領域に存在するプロットに適合した近似直線を求め、その近似直線をT=200℃(473K)の温度軸に外挿して、推定発熱速度を求めた。得られた推定発熱速度の結果を表4に示す。
Figure 0005236940
次に、電池1A〜3Aの釘刺し試験を、実験1と同じ条件で行ったところ、正極材料1(LiMn1/3Ni1/3Co1/32)を用いた電池1Aの場合だけ、釘刺し直後の短絡点近傍の温度が200℃に達しなかった。また、試験後の電池電圧は、試験前に比べて、ほとんど降下しておらず、試験終了まで電池表面(短絡点から離れた位置)の最高温度も80℃に達しなかった。このことから、内部短絡発生後、短絡点の絶縁化が有効に働き、ジュール発熱の発生を最小限に抑制できたと考えられる。
以上の結果より、正極材料の熱安定性が所定値、すなわちARC測定から導かれた200℃における推定発熱速度が10W/kgである場合には、同時多発的に内部短絡が発生する状況においても、安全性を確保できたものと考えることができる。この結果は、耐熱性絶縁層の作用と正極材料の熱安定性との相乗効果によるものであり、このような相乗効果が、従来にない高い安全性を有する電池の実現を可能にしたものと考えられる。このことは、従来は同時多発的に短絡点が生じる状況では電池温度を80℃未満に抑制することが不可能であったが、本発明によれば、それが可能となることを意味する。
次に、実施例について説明する。
《電池X1〜X18および電池Y1〜Y12》
表2に示した正極材料1〜3およびそれらを混合した以下の正極材料A〜Eを用いた。耐熱性絶縁層の接着面を表5記載のように設定した。さらに耐熱性絶縁層の乾燥後の接着面一つあたりの厚みを表5記載のように設定した。それ以外は、実験1と同様にして、円筒形18650の非水電解質二次電池を作製した。
正極材料A:正極材料1が90重量%、正極材料2が10重量%の混合物
正極材料B:正極材料1が80重量%、正極材料2が20重量%の混合物
正極材料C:正極材料1が70重量%、正極材料2が30重量%の混合物
正極材料D:正極材料1が60重量%、正極材料2が40重量%の混合物
正極材料E:正極材料1が50重量%、正極材料2が50重量%の混合物
ただし、電池X7〜X12、X16〜X18、電池Y3、Y4、Y8、Y11、Y12においては、セパレータの片面だけに、特許文献2の実施例で開示されているアラミド樹脂と無機酸化物フィラーからなる厚み0.5〜5μmの膜を耐熱性絶縁層として形成した。具体的には、以下の要領で耐熱性絶縁層を形成した。
攪拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有するセパラブルフラスコを十分に乾燥した。乾燥したセパラブルフラスコ内に、NMP4200gと、200℃で2時間乾燥させた塩化カルシウム270gを添加し、100℃に昇温した。塩化カルシウムが完全に溶解した後に、フラスコ内を20±2℃に戻し、パラフェニレンジアミン(PPD)130gを添加し、完全に溶解させた。この溶液を20±2℃に保ったまま、テレフタル酸クロライド(TPC)を5分毎に24gずつ、10回(計240g)分割投入した。その後、この溶液を1時間熟成させ、減圧下で30分間攪拌し、脱気し、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA:熱分解開始温度400℃以上、非晶質)の重合液を得た。
この重合液に、5.8重量%の塩化カルシウムを溶かしたNMP溶液を徐々に添加し、最終的にPPTAが2.8重量%となるようにした。ここに平均粒径0.5μmのアルミナ粒子を添加し、PPTA溶液:アルミナが重量比で97:3のペーストを得た。このペーストをバーコータでセパレータの片面に塗布し、80℃の熱風で乾燥させた。その後、イオン交換水を用いてセパレータを洗浄し、塩化カルシウム除去し、PPTAからなる耐熱性絶縁層を有するセパレータを得た。極板群においては、耐熱性絶縁層が正極側になるようにセパレータを配置した。
電池Y5、6においては、正極、負極およびセパレータのいずれにも耐熱性絶縁層を形成しなかった。
実験2と同様の条件で、正極合剤の200℃における推定発熱速度を求めた。結果を表5に示す。
実験1と同様の条件で、電池の釘刺し試験を行い、短絡点から離れた電池表面の最高到達温度を調べた。電池X1〜X18および電池Y1〜Y12の電池は、それぞれ10個ずつ作製し、釘刺し試験は10個の電池で行った。各電池について、10個の電池のうち、80℃に達しなかった電池の最高到達温度の平均値と、80℃に達した電池の個数を求めた。10個すべてが80℃以上の最高到達温度を示したものについては、表5に「80℃以上」と示した。結果を表5に示す。
Figure 0005236940
正極材料1:LiMn1/3Ni1/3Co1/32
正極材料2:LiAl0.05Ni0.8Co0.152
正極材料3:LiCoO2
正極材料A:正極材料1/正極材料2=90/10(wt%)
正極材料B:正極材料1/正極材料2=80/20(wt%)
正極材料C:正極材料1/正極材料2=70/30(wt%)
正極材料D:正極材料1/正極材料2=60/40(wt%)
正極材料E:正極材料1/正極材料2=50/50(wt%)
以下、評価結果について説明する。
電池Y5、Y6より、コバルト酸リチウムに比べて比較的熱安定性の高い正極活物質を用いたとしても、同時多発的な内部短絡が発生すると、耐熱性絶縁層が存在しない場合には、電池表面の最高到達温度を常に80℃未満に抑えられないことが理解できる。
電池Y7〜Y12に示されるように、耐熱性絶縁層を有する電池であっても、上記方法で求めた200℃における推定発熱速度が50W/kgを超える正極活物質を用いた場合には、発熱反応の連鎖を抑制することができず、電池表面の最高到達温度を常に80℃未満に抑えられないことが理解できる。
電池X13〜18および電池Y9〜12の対比から、耐熱性絶縁層の作用を最大限に有効活用できる安全領域は、正極活物質の200℃における推定発熱速度が50W/kg以下の領域であることがわかる。この領域を外れると、電池の最高到達温度の上昇が顕著となることが理解できる。正極活物質の200℃における推定発熱速度が50W/kg以下の領域では、発熱反応の連鎖が効果的に抑制され、短絡点で発生した発熱が効率良く拡散するものと考えられる。
電池X1〜6より、耐熱性絶縁層の厚みは、一定以上の厚みがあれば、同時多発的に短絡が生じる場合の電池の最高到達温度を抑制する効果に、それほど大きく影響しないことがわかる。耐熱性絶縁層の厚みが大きい方が、最高到達温度は低くなっているが、あまり厚くなると電池のエネルギー密度を高く維持することが困難になるとともに、捲回の際に破損しやすくなる。耐熱性絶縁層は、脆いので、過剰に厚いと、捲回の際に、部分的に電極表面やセパレータ表面から脱落する。このことは、比較例2において、80℃以上に達した電池の数が特異的に多くなったことから確認できる。よって、熱安定性の高い正極活物質を用いた場合でも、釘刺し試験において、高度な安全性を維持できなくなる。耐熱性絶縁層の厚みは、例えば1〜15μm程度の範囲、もしくは、3〜10μmであればよい。耐熱性絶縁層をセパレータの表面に形成した電池X7〜12においても、同様の結果が得られている。アラミド樹脂を含む耐熱性絶縁層の厚みは、例えば1.7〜6.7μmであればよい。
耐熱性絶縁層が1μm未満の厚みになると、耐熱性絶縁層それ自身の機械的強度が低下する。よって、短絡に伴う衝撃により、耐熱性絶縁層が破壊されやすくなる。このことは、電池Y1において、80℃以上に達した電池の数が特異的に多くなったことから確認できる。よって、耐熱性絶縁層が1μm未満の厚みになると、絶縁化機能は、ある程度低下すると考えられる。
《電池X19A〜X30Aおよび電池Y13A》
表6−1に示した正極材料4〜13、および、正極材料1と3とを混合した以下の正極材料F〜Hを用いた。耐熱性絶縁層の接着面を表6−1記載のように設定した。耐熱性絶縁層の乾燥後の接着面一つあたりの厚みを表6−1記載のように設定した。それ以外は、実験1と同様にして、円筒形18650の非水電解質二次電池を作製した。
《電池X19B〜X30Bおよび電池Y13B》
表6−2に示した正極材料4〜13、および、正極材料1と3とを混合した以下の正極材料F〜Hを用いた。耐熱性絶縁層の接着面を表6−2記載のように設定した。耐熱性絶縁層の乾燥後の厚みを表6−2記載のように設定した。ただし、電池X9と同様に、セパレータの片面だけに、特許文献2の実施例で開示されているアラミド樹脂と無機酸化物フィラーからなる厚み5μmの膜を耐熱性絶縁層として形成した。それ以外は、実験1と同様にして、円筒形18650の非水電解質二次電池を作製した。
正極材料4〜13には、表7記載の組成(LiMbNidCoe2)の複合リチウム酸化物を用いた。
正極材料F:正極材料1が90重量%、正極材料3が10重量%の混合物
正極材料G:正極材料1が80重量%、正極材料3が20重量%の混合物
正極材料H:正極材料1が70重量%、正極材料3が30重量%の混合物
Figure 0005236940
Figure 0005236940
Figure 0005236940
実験2と同様の条件で、正極合剤の200℃における推定発熱速度を求めた。結果を表6−1および表6−2に示す。
実験1と同様の条件で、電池の釘刺し試験を行い、電池表面の最高到達温度を調べた。電池X19A〜X30A、X19B〜X30Bおよび電池Y13A、Y13Bの電池は、それぞれ10個ずつ作製し、釘刺し試験は10個の電池で行った。各電池について、10個の電池表面の最高到達温度の平均値を求めた。その結果を表6−1および表6−2に示す。10個全ての電池の最高到達温度は、80℃未満であった。
以下、評価結果について説明する。
電池X21Aと電池X22A〜X30Aとの対比、および、電池X21Bと電池X22B〜X30Bとの対比から、Al、Sn、In、Fe、Cu、Mg、Ti、ZnおよびMoには、推定発熱速度を低下させる効果があることが理解できる。なお、表7記載の複合リチウム酸化物のように、元素MとしてMnと他の元素M1とを併用する場合、Mnと元素M1とのモル比は、99:1〜50:50、さらには97:3〜90:10とすることが好ましい。
活物質にコバルト酸リチウム(正極材料3)を添加することにより、正極の高密度化が可能となるので、電池高容量化の観点からは好ましい。しかし、その割合が30%の正極材料Hでは、釘刺し安全性が低下している。よって、コバルト酸リチウムを併用する場合、その量は、活物質全体の20重量%以下とするのが好ましい。
《電池X31A〜X41A》
表8−1に示した正極材料14〜24(組成LiCo0.980.022の複合リチウム酸化物)を用いた。電池X9と同様に、アラミド樹脂と無機酸化物フィラーからなる耐熱性絶縁層を、セパレータ表面に、乾燥後の厚みが5μmになるように形成した。それ以外は、実験1と同様にして、円筒形18650の非水電解質二次電池を作製した。実験2と同様の条件で、正極合剤の200℃における推定発熱速度を求めた。各電池について、釘刺し試験を行い10個の電池表面の最高到達温度の平均値を求めた。結果を表8−1に示す。10個全ての電池の最高到達温度は、80℃未満であった。
《電池X31B〜X41B》
表8−2に示した正極材料14〜24(組成LiCo0.980.022の複合リチウム酸化物)を用いた。電池X4と同様に、無機酸化物フィラーとBM−720Hを含む耐熱性絶縁層を、負極の両面に、乾燥後の厚みが5μmになるように形成した。それ以外は、実験1と同様にして、円筒形18650の非水電解質二次電池を作製した。実験2と同様の条件で、正極合剤の200℃における推定発熱速度を求めた。各電池について、釘刺し試験を行い10個の電池表面の最高到達温度の平均値を求めた。結果を表8−2に示す。10個全ての電池の最高到達温度は、80℃未満であった。
Figure 0005236940
Figure 0005236940
Mn、Al、Sn、In、Fe、Cu、Mg、Ti、Zn、ZrおよびMoには、推定発熱速度を低下させる効果が認められた。正極材料3をベースとした組成においても、元素Mを添加することにより、200℃における推定発熱速度を50W/kg以下に抑制することができた。また、元素Mと耐熱性絶縁層との相乗効果により、釘刺し安全性が飛躍的に向上した。
《電池X42A〜X52A》
表9−1に示した正極材料25〜35を用いた。電池X9と同様に、アラミド樹脂と無機酸化物フィラーからなる耐熱性絶縁層を、セパレータ表面に、乾燥後の厚みが5μmになるように形成した。それ以外は、実験1と同様にして、円筒形18650の非水電解質二次電池を作製した。実験2と同様の条件で、正極合剤の200℃における推定発熱速度を求めた。各電池について、釘刺し試験を行い、10個の電池表面の最高到達温度の平均値を求めた。結果を表9−1に示す。10個全ての電池の最高到達温度は、80℃未満であった。
《電池X42B〜X52B》
表9−2に示した正極材料25〜35を用いた。電池X4と同様に、無機酸化物フィラーとBM−720Hを含む耐熱性絶縁層を、負極の両面に、乾燥後の厚みが5μmになるように形成した。それ以外は、実験1と同様にして、円筒形18650の非水電解質二次電池を作製した。実験2と同様の条件で、正極合剤の200℃における推定発熱速度を求めた。各電池について、釘刺し試験を行い、10個の電池表面の最高到達温度の平均値を求めた。結果を表9−2に示す。10個全ての電池の最高到達温度は、80℃未満であった。
正極材料25〜34は、正極材料2(LiAl0.05Ni0.8Co0.152)と、表9に示す元素Mの酸化物とを混合し、1000℃で、空気雰囲気中で焼成して調製した。元素Mの酸化物の量は、1molの正極材料2に対し、0.01molとした。その結果、添加した酸化物から正極材料2に元素Mが拡散し、内部よりも表層部に元素Mが多く分布する複合リチウム酸化物からなる正極材料25〜34が得られた。
正極材料35は、正極材料2を、シランカップリング剤であるビニルトリメトキシシランで処理して調製した。ここでは、シランカップリング剤と水との混合液(シランカップリング剤の濃度0.1重量%)に、正極材料を含浸させた後、乾燥させた。
Figure 0005236940
Figure 0005236940
表9−1および表9−2の結果でも、表8−1および表8−2と同様に、元素Mには、推定発熱速度を低下させる効果が認められた。元素Mが活物質の表層部に高濃度に分布しているため、推定発熱速度を抑制する効果は顕著であった。また、元素Mと耐熱性絶縁層との相乗効果により、釘刺し安全性が飛躍的に向上した。また、シランカップリング剤による処理でも、元素Mの添加と同様の効果が得られた。
《電池X53A〜X55A》
正極材料1と正極材料24とを混合した以下の正極材料36〜38を用いた。電池X9と同様に、アラミド樹脂と無機酸化物フィラーからなる耐熱性絶縁層を、セパレータ表面に、乾燥後の厚みが5μmになるように形成した。それ以外は、実験1と同様にして、円筒形18650の非水電解質二次電池を作製した。実験2と同様の条件で、正極合剤の200℃における推定発熱速度を求めた。各例について、釘刺し試験を行い、10個の電池表面の最高到達温度の平均値を求めた。結果を表10−1に示す。10個全ての電池の最高到達温度は、80℃未満であった。
《電池X53B〜X55B》
正極材料1と正極材料24とを混合した以下の正極材料36〜38を用いた。電池X4と同様に、無機酸化物フィラーとBM−720Hを含む耐熱性絶縁層を、負極の両面に、乾燥後の厚みが5μmになるように形成した。それ以外は、実験1と同様にして、円筒形18650の非水電解質二次電池を作製した。実験2と同様の条件で、正極合剤の200℃における推定発熱速度を求めた。各電池について、釘刺し試験を行い、10個の電池表面の最高到達温度の平均値を求めた。結果を表10−2に示す。10個全ての電池の最高到達温度は、80℃未満であった。
正極材料36:正極材料1が10重量%、正極材料24が90重量%の混合物
正極材料37:正極材料1が50重量%、正極材料24が50重量%の混合物
正極材料38:正極材料1が90重量%、正極材料24が10重量%の混合物
Figure 0005236940
Figure 0005236940
表10−1および表10−2より、推定発熱速度が50W/kg以下に抑制された正極材料同士を混合した場合でも、釘刺し安全性が顕著に向上することがわかった。
《電池X56、57および59》
耐熱性絶縁層の接着面を表11記載のように設定した。セパレータに耐熱性絶縁層を形成した場合には、表11記載のように耐熱性絶縁層を正極側または負極側だけに配置した。それ以外は、実験1と同様にして、円筒形18650の非水電解質二次電池を作製した。
《電池X58》
アラミド樹脂の代わりにポリアミドイミド樹脂(熱分解開始温度400℃以上、非晶質、ガラス転移点250℃)を用いたこと以外、電池X9と同様に電池を作製した。
《電池X60》
耐熱性絶縁層を負極側に配置したこと以外、電池X9と同様に電池を作製した。
《電池X61》
耐熱性絶縁層を負極側に配置したこと以外、電池X58と同様に電池を作製した。
《電池X62》
耐熱性絶縁層の原料ペーストを、フッ素樹脂シート上に塗布し、乾燥後、剥離して、正極からも負極からもセパレータからも独立した、厚み5μmの耐熱性絶縁層からなるシートを作製した。耐熱性絶縁層からなるシートを、正極とセパレータとの間に挿入したこと以外、電池Y6と同様に電池を作製した。
《電池X63》
電池X62に準じて、電池X9と同様の組成のポリアミド樹脂を含む耐熱性絶縁層からなるシートを作製し、電池X62と同様に電池を作製した。
《電池X64》
電池X62に準じて、電池X58と同様の組成のポリアミドイミド(PAI)樹脂を含む耐熱性絶縁層からなるシートを作製し、電池X62と同様に電池を作製した。
《電池X65》
耐熱性絶縁層の無機酸化物フィラーとして、メディアン径0.3μmのアルミナの代わりに、メディアン径0.3μmのマグネシア(酸化マグネシウム)を用いたこと以外、電池X4と同様に電池を作製した。
《電池X66》
耐熱性絶縁層の無機酸化物フィラーとして、メディアン径0.3μmのアルミナの代わりに、メディアン径0.3μmのマグネシア(酸化マグネシウム)を用いたこと以外、電池X56と同様に電池を作製した。
電池X56〜X66に関し、実験1と同様の条件で、釘刺し試験を行い、10個の電池表面の最高到達温度の平均値を求めた。結果を表11に示す。
Figure 0005236940
以下評価結果について説明する。
表11が示すように、耐熱性絶縁層がどのような材質であっても、釘刺し試験における安全性は向上した。これにより、耐熱性および絶縁性を有する材質であれば、同様の効果が得られることが確認できた。また、耐熱性絶縁層は、セパレータまたは負極の表面に形成した方が、効果が大きいことがわかった。さらに、アルミナの代わりにマグネシアを用いても、同様の結果が得られることがわかった。
上記実施例では、円筒形の非水電解質二次電池を作製したが、本発明の電池の形状は円筒形に限定されるものではない。また、負極材料には炭素材料を用い、充電電圧4.25Vにおける結果を示したが、Si合金やSn合金を用いた場合にも、同様に安全性向上の効果が得られる。また、より高電圧領域(4.2〜4.6V)まで充電される電池においても、推定発熱速度が50W/kg以下である正極合剤と、耐熱性絶縁層とを併用することにより、同様に安全性向上の効果が得られる。
本発明は、特に、高いエネルギー密度と優れた安全性との両立が求められる非水電解質二次電池に適しており、例えば携帯情報端末および携帯電子機器のようなポータブル機器の電源としての利用可能性が高い。ただし、本発明のリチウム二次電池は、例えば家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の電源にも用いることができ、用途は特に限定されない。本発明のリチウム二次電池の形状は、特に限定されないが、例えば円筒型や角型が好適である。本発明のリチウム二次電池は、多機能化ポータブル機器(PDA)、電動工具、パーソナルコンピュータ(PC)、電動玩具、電動ロボット等の電源、大型バックアップ電源、非常用バックアップ電源(USP)、自然エネルギー発電の平準化電源、回生エネルギー利用システム等に特に好適である。
ARCにより求められた絶対温度Tと各種正極材料の発熱速度Vとの関係を示すアレニウスプロットの一例である。 ARCの測定原理の説明図である。

Claims (10)

  1. (a)正極活物質を含む正極合剤およびこれを担持する正極集電体を含む正極、(b)リチウムを吸蔵および放出可能な材料を含む負極、
    (c)前記正極と前記負極との間に介在するポリオレフィン樹脂を含むセパレータ、
    (d)非水電解質、および
    (e)前記セパレータの少なくとも一方の面に形成された耐熱性絶縁層を具備する非水電解質二次電池であって、
    前記正極と前記負極とが、これらの間に介在する前記セパレータおよび前記耐熱性絶縁層とともに捲回されており、
    前記耐熱性絶縁層は、耐熱性樹脂を含み、
    前記正極合剤の200℃における推定発熱速度は、50W/kg以下であり、
    前記推定発熱速度は、
    (i)加速速度熱量計もしくは暴走反応測定装置(ARC)により、絶対温度Tと、正極合剤の発熱速度Vとの関係を求め、
    (ii)アレニウスの定理に基づいて、X座標である絶対温度Tの逆数と、Y座標である発熱速度Vの対数との関係をプロットし、
    (iii)T<200℃(473K)の発熱領域に存在するプロットに適合する近似直線を求め、
    (iv)得られた近似直線を、T=200℃(473K)の温度軸に外挿する、
    ことにより求められ、
    前記正極活物質が、一般式(1):Lia1b1Mec2で表される複合リチウム酸化物、一般式(2):Lia2b2NidCoe2で表される複合リチウム酸化物、前記一般式(1)で表される複合リチウム酸化物と前記一般式(2)で表される複合リチウム酸化物との混合物、または前記一般式(1)もしくは一般式(2)で表される複合リチウム酸化物とLiCoO 2 の混合物を含み、
    前記一般式(1)および(2)において、
    元素Mは、Al、Mn、Sn、In、Fe、Cu、Mg、Ti、Zn、ZrおよびMoよりなる群から選択される少なくとも1種であり、
    前記一般式(1)において、
    元素Meは、NiおよびCoよりなる群から選択される少なくとも1種であり、
    0.9<a1<1.2、
    0.02≦b1≦0.5、
    0.5≦c≦0.98、および
    0.95≦b1+c≦1.05であり
    前記一般式(2)において、
    0.9<a2<1.2、
    0.02≦b2≦0.5、
    0.1≦d≦0.5、
    0.1≦e≦0.5、および
    0.95≦b2+d+e≦1.05である、非水電解質二次電池。
  2. 前記耐熱性絶縁層の厚みが、1μm以上、15μm以下である、請求項1記載の非水電解質二次電池。
  3. 前記耐熱性絶縁層の厚みが、1μm以上、5μm以下である、請求項1記載の非水電解質二次電池。
  4. 前記一般式(2)が、0.15≦b2≦0.4、0.3≦d≦0.5および0.15≦e≦0.4を満たす、請求項1記載の非水電解質二次電池。
  5. 前記一般式(1)で表される複合リチウム酸化物において、元素Mは、前記複合リチウム酸化物の内部よりも表層部に多く分布する、請求項1記載の非水電解質二次電池。
  6. 前記一般式(2)で表される複合リチウム酸化物において、元素Mは、前記複合リチウム酸化物の内部よりも表層部に多く分布する、請求項1記載の非水電解質二次電池。
  7. 前記一般式(1)で表される複合リチウム酸化物は、一般式(3):X−Si−Y3で表されるSi化合物で処理されており、Xは、前記複合リチウム酸化物と反応する官能基を含み、Yは、C、H、O、FまたはSiを含む官能基を含む、請求項1記載の非水電解質二次電池。
  8. 前記一般式(2)で表される複合リチウム酸化物は、一般式(3):X−Si−Y3で表されるSi化合物で処理されており、Xは、前記複合リチウム酸化物と反応する官能基を含み、Yは、C、H、O、FまたはSiを含む官能基を含む、請求項1記載の非水電解質二次電池。
  9. 前記セパレータの厚みAと、前記耐熱性絶縁層の厚みBとの比率:A/Bが、3≦A/B≦12である、請求項1記載の非水電解質二次電池。
  10. 前記耐熱性絶縁層の厚みが、1.7μm以上、6.7μm以下である、請求項1記載の非水電解質二次電池。
JP2007501051A 2005-12-20 2006-06-23 非水電解質二次電池 Active JP5236940B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007501051A JP5236940B2 (ja) 2005-12-20 2006-06-23 非水電解質二次電池

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2005/023373 WO2006068143A1 (ja) 2004-12-24 2005-12-20 非水電解質二次電池
JPPCT/JP2005/023373 2005-12-20
JP2007501051A JP5236940B2 (ja) 2005-12-20 2006-06-23 非水電解質二次電池
PCT/JP2006/312575 WO2007072596A1 (ja) 2005-12-20 2006-06-23 非水電解質二次電池

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2007072596A1 JPWO2007072596A1 (ja) 2009-05-28
JP5236940B2 true JP5236940B2 (ja) 2013-07-17

Family

ID=49041954

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007501051A Active JP5236940B2 (ja) 2005-12-20 2006-06-23 非水電解質二次電池

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5236940B2 (ja)

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08138670A (ja) * 1994-11-11 1996-05-31 Toshiba Corp 非水溶媒二次電池
JPH10294100A (ja) * 1997-04-21 1998-11-04 Fuji Photo Film Co Ltd リチウムイオン非水電解質二次電池
JP2001266949A (ja) * 2000-03-17 2001-09-28 Sumitomo Chem Co Ltd リチウムイオン二次電池
JP2002151044A (ja) * 2000-08-30 2002-05-24 Sumitomo Chem Co Ltd 非水電解液二次電池用セパレータおよび非水電解液二次電池
JP2002319405A (ja) * 2001-04-23 2002-10-31 Toyota Motor Corp リチウム二次電池
JP2003036838A (ja) * 2001-07-24 2003-02-07 Japan Storage Battery Co Ltd 非水電解質二次電池
JP2003077460A (ja) * 2001-09-05 2003-03-14 Toshiba Corp 非水電解質二次電池
JP2005339938A (ja) * 2004-05-26 2005-12-08 Matsushita Electric Ind Co Ltd リチウムイオン二次電池用電極の製造方法

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08138670A (ja) * 1994-11-11 1996-05-31 Toshiba Corp 非水溶媒二次電池
JPH10294100A (ja) * 1997-04-21 1998-11-04 Fuji Photo Film Co Ltd リチウムイオン非水電解質二次電池
JP2001266949A (ja) * 2000-03-17 2001-09-28 Sumitomo Chem Co Ltd リチウムイオン二次電池
JP2002151044A (ja) * 2000-08-30 2002-05-24 Sumitomo Chem Co Ltd 非水電解液二次電池用セパレータおよび非水電解液二次電池
JP2002319405A (ja) * 2001-04-23 2002-10-31 Toyota Motor Corp リチウム二次電池
JP2003036838A (ja) * 2001-07-24 2003-02-07 Japan Storage Battery Co Ltd 非水電解質二次電池
JP2003077460A (ja) * 2001-09-05 2003-03-14 Toshiba Corp 非水電解質二次電池
JP2005339938A (ja) * 2004-05-26 2005-12-08 Matsushita Electric Ind Co Ltd リチウムイオン二次電池用電極の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2007072596A1 (ja) 2009-05-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100874560B1 (ko) 비수전해질 2차전지
US8951674B2 (en) Non-aqueous electrolyte secondary battery
JP5093997B2 (ja) 非水電解質二次電池及びその製造方法
JP4999292B2 (ja) 非水電解質電池
KR20150036659A (ko) 집전체, 전극, 이차전지 및 커패시터
WO2006134684A1 (ja) リチウム二次電池
WO2005117169A1 (ja) 捲回型非水系二次電池およびそれに用いる電極板
JP2008269928A (ja) 非水電解質二次電池
JP4693373B2 (ja) 非水電解質電池
WO2020098768A1 (zh) 一种电池
US8187748B2 (en) Non-aqueous electrolyte secondary battery
JP4042413B2 (ja) 電池
JP2011181386A (ja) 非水電解質二次電池
JP6863351B2 (ja) 非水電解質二次電池
JP2005222780A (ja) リチウムイオン二次電池
JP6981348B2 (ja) 正極、非水電解質二次電池、および正極の製造方法
JP6852706B2 (ja) 非水電解質二次電池
JP2014209414A (ja) リチウムイオン二次電池
TW201205920A (en) Lithium-ion secondary battery
JP5236940B2 (ja) 非水電解質二次電池
JP5236880B2 (ja) 非水電解質二次電池
JP2010033869A (ja) 非水系二次電池用電極板およびこれを用いた非水系二次電池
JP6729642B2 (ja) 非水電解質二次電池
JP2007012496A (ja) 非水電解質二次電池
WO2023097672A1 (zh) 电化学装置和电子装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090602

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120202

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120402

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130117

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130130

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130228

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130328

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5236940

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160405

Year of fee payment: 3