JP5235208B2 - ワイヤグリッド偏光板 - Google Patents

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Description

本発明は、格子状凸部を有するワイヤグリッド偏光板に関する。
近年のフォトリソグラフィー技術の発達により、光の波長レベルのピッチを有する微細構造パターンを形成することができるようになってきた。このように非常に狭いピッチのパターンを有する部材や製品は、半導体分野だけでなく、光学分野において利用範囲が広く有用である。
例えば、基板上に金属などの導電体線が特定のピッチで格子状に配列したワイヤグリッドは、そのピッチが入射光(例えば、可視光の波長400nmから800nm)に比べてかなり小さい場合(例えば、2分の1以下)であれば、導電体線に対して平行に振動する電場ベクトル成分をほとんど反射し、垂直な電場ベクトル成分をほとんど透過させるため、単一偏光を作り出すワイヤグリッド偏光板として使用できる。このようなワイヤグリッド偏光板は、透過しない光を反射して再利用することができるので、光の有効利用の観点からも望ましいものである。
従来、このようなワイヤグリッド偏光板は、例えば、特許文献1に開示されているように、凹凸格子を有する基材に対して斜め蒸着法を用いて金属を被着することにより製造していた。
特開2006−201782号公報
ワイヤグリッド偏光板として用いるためには、金属ワイヤ部分を高く形成する、すなわちアスペクト比を大きくする必要がある。しかしながら、上記のような既存の斜め積層法では、金属ワイヤ部分を高くするように蒸着を行うと、蒸着の際に凹凸格子の凸部壁面にも金属が多量に被着されてしまう。特に、凹凸格子が微細になるとこの傾向が顕著となる。このように凸部壁面に多量に金属が被着されたワイヤグリッド偏光板は高い光学性能を発揮させることができない。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、凹凸格子の凸部壁面に金属が被着することが抑制され、微細凹凸格子を有するワイヤグリッド偏光板を提供することを目的とする。
本発明のワイヤグリッド偏光板は、表面に格子状凸部を有する基材上の前記格子状凸部に対して、前記格子状凸部の長手方向と垂直に交わる平面内であって基材の垂線と金属を被着する方向とのなす角をθとし、被着開始時の前記なす角をθとし、被着終了時の前記なす角をθとしたときに、θsからθdとの間の角度範囲における2つ以上の角度であって大きい方の角度から順次金属を被着するワイヤグリッド偏光板の製造方法により得られたワイヤグリッド偏光板であって、
前記格子状凸部の側壁領域において、前記金属ワイヤの下部に前記金属が被着されない領域を有し、前記格子状凸部の断面視において、前記格子状凸部の頂部上に被着した金属の面積をA1とし、前記格子状凸部の頂部より下に被着した金属の面積をA2としたときに下記式(2)を満足することを特徴とする。
A1/(A1+A2)≧1/2 式(2)
本発明のワイヤグリッド偏光板においては、前記金属が凸部の一方の側面に偏って選択積層したことが好ましい。
本発明のワイヤグリッド偏光板においては、前記格子状凸部のピッチが150nm以下であることが好ましい。
本発明のワイヤグリッド偏光板においては、前記格子状凸部の高さが前記ピッチの0.5〜2.0倍であることが好ましい。
本発明のワイヤグリッド偏光板においては、前記格子状凸部の幅が格子状凸部間の35%〜60%であることが好ましい。
本発明のワイヤグリッド偏光板においては、前記基材の断面形状が正弦波状であることが好ましい。
本発明のワイヤグリッド偏光板においては、前記格子状凸部に設けられた誘電体層を備えたことが好ましい。
本発明によれば、表面に格子状凸部を有する基材上の前記格子状凸部に対して、前記格子状凸部の長手方向と垂直に交わる平面内であって基材の垂線と金属を被着する方向とのなす角をθとし、被着開始時の前記なす角をθとし、被着終了時の前記なす角をθとしたときに、θsからθdとの間の角度範囲における2つ以上の角度であって大きい方の角度から順次金属を被着するワイヤグリッド偏光板の製造方法により得られたワイヤグリッド偏光板であって、前記格子状凸部の側壁領域において、前記金属ワイヤの下部に前記金属が被着されない領域を有するので、凹凸格子の凸部壁面に金属が被着することが抑制され、微細凹凸格子を有するワイヤグリッド偏光板を提供することができる。
本発明の実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板の製造方法により得られたワイヤグリッド偏光板の一部を示す概略断面図である。 本発明の実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板の製造方法の原理を説明するための図である。
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
本発明のワイヤグリッド偏光板の製造方法においては、基材の表面に格子状凸部に対して、前記格子状凸部の長手方向と金属を被着する方向とのなす角をθとし、被着開始時の前記なす角をθとし、被着終了時の前記なす角をθとしたときに、θsからθdとの間の角度範囲における2つ以上の角度であって大きい方の角度から順次金属を被着し、小さい方の角度からの蒸着量が大きい方からの蒸着量よりも多いことにより格子状凸部上に金属ワイヤを形成する。
図1は、本発明の実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板の製造方法で得られるワイヤグリッド偏光板の一部を示す概略断面図である。このワイヤグリッド偏光板は、表面に格子状凸部1aを有する基材1と、基材1上に設けられた誘電体層2と、誘電体層2上に立設された金属ワイヤ3とから主に構成されている。なお、誘電体層2は必ずしも設けなくても良い。
基材1に用いる素材は、可視光領域で実質的に透明な樹脂であればよく、加工性の優れた樹脂が好ましい。例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂や、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系などの紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。また、基材1として、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂と、ガラスなどの無機基板、上記熱可塑性樹脂、トリアセテート樹脂とを組み合わせた複合基材を用いても良い。
基材1の格子状凸部1aのピッチPは、可視光領域の広帯域にわたる偏光特性を考慮すると、150nm以下であり、好ましくは80nmから120nmである。ピッチが小さくなるほど偏光特性が良くなるが、可視光に対しては80nmから120nmのピッチで十分な偏光特性が得られる。400nm近傍の短波長光の偏光特性を重視しない場合は、ピッチを150nm程度まで大きくしても良い。
格子状凸部1aのピッチPは、熱可塑性樹脂を基材1に用いた場合、基材1に格子状凸部形状を付与した後に施す延伸加工の条件を調整することにより制御することができる。なお、本発明において、基材1の格子状凸部1aのピッチPと、誘電体層2のピッチと、金属ワイヤ3のピッチとは、本発明のワイヤグリッドのピッチとほぼ等しく、同じピッチPをとることができる。
基材1の格子状凸部1aの高さHは、良好な光学特性を得たり、基材1と誘電体層2との間の密着性を高め、誘電体層2を格子状凸部1a上に選択的に積層することを考慮すると、格子状凸部1aのピッチPの0.5倍から2.0倍、特に、1.0倍から2.0倍であることが好ましい。
基材1の格子状凸部1aの幅Wは、偏光度、透過率などを考慮すると、格子状凸部間の35%〜60%であることが好ましい。
基材1の格子状凸部1aの断面形状に制限はない。これらの断面形状は、例えば、台形、矩形、方形、プリズム状や、半円状などの正弦波状を挙げることができる。ここで、正弦波状とは凹部と凸部の繰り返しからなる曲線部をもつことを意味する。なお、曲線部は湾曲した曲線であればよく、例えば、凸部にくびれがある形状も正弦波状に含める。また、基材1の格子状凸部1a及びその側面の少なくとも一部を誘電体が覆いやすくする観点から、前記形状の端部又は頂点、谷は緩やかな曲率をもって湾曲していることが好ましい。また、基材1と誘電体層2との密着強度を高くする観点から、これらの断面形状は正弦波状であることがより好ましい。
本発明の方法においては、下記式(1)で規定されるKの範囲での金属の被着をすることが好ましい。
K=tanθ/((P−W)/H) (0.1≦K≦3) 式(1)
ここで、Pは格子状凸部間のピッチであり、Wは格子状凸部の半値幅であり、Hは格子状凸部の高さである。
基材1に格子状凸部を設ける方法としては、例えば、表面に100nm〜100μmピッチの凹凸格子を有する被延伸部材を、前記凹凸格子の長手方向(格子状凸部の格子と平行な方向)と略直交する方向の前記被延伸部材の幅を自由にした状態で前記長手方向と略平行な方向に自由端一軸延伸加工する方法が挙げられる。この結果、前記被延伸部材の凹凸格子の凸部のピッチが縮小され、ピッチが約120nm以下の格子状凸部を有する基材(延伸済み部材)が得られる。格子状凸部のピッチは、100nm〜100μmの範囲に設定するが、要求する格子状凸部のピッチや延伸倍率に応じて適宜変更することができる。
また、表面に100nm〜100μmピッチの凹凸格子を有する被延伸部材を得るには、レーザ光を用いた干渉露光法や切削法などで形成した、100nm〜100μmピッチの凹凸格子を有する型を用いて、被延伸部材にその凹凸格子形状を熱プレスなどの方法で転写すれば良い。なお、干渉露光法とは、特定の波長のレーザ光を角度θ’の2つの方向から照射して形成される干渉縞を利用した露光法であり、角度θ’を変化させることで使用するレーザの波長で制限される範囲内で色々なピッチを有する凹凸格子の構造を得ることができる。干渉露光に使用できるレーザとしては、TEM00モードのレーザに限定され、TEM00モードのレーザ発振できる紫外光レーザとしては、アルゴンレーザ(波長364nm,351nm,333nm)や、YAGレーザの4倍波(波長266nm)などが挙げられる。
あるいは、基材1に格子状凸部を設ける方法としては、表面にピッチが120nm以下の格子状凸部を有する型を用いて、基材の表面に格子状凸部を転写して成型する方法が挙げられる。ここで、表面にピッチが120nm以下の格子状凸部を有する型は、前記方法により得た、ピッチが120nm以下の格子状凸部を有する基材を、順に導電化処理、メッキ処理、基材の除去処理を施すことで作製することができる。
誘電体層2を構成する誘電体は、可視光領域で実質的に透明な誘電体であれば良い。基材1を構成する材料及び金属ワイヤ3を構成する金属との間の密着性が強い誘電体材料を好適に用いることができる。例えば、珪素(Si)の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はその複合物や、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バリウム(Ba)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、銅(Cu)などの金属の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はそれらの複合物(誘電体単体に他の元素、単体又は化合物が混ざった誘電体)を用いることができる。
誘電体層2を、格子状凸部1aを有する基材1の格子状凸部を含んだ領域上に形成する方法としては、誘電体層2を構成する材料により適宜選択する。例えば、スパッタリング法、真空蒸着法などの物理的蒸着法を好適に用いることができる。密着強度の観点からスパッタリング法が好ましい。
金属ワイヤ3を構成する金属としては、可視光領域で光の反射率が高く、誘電体層2を構成する材料との間の密着性のよいものであることが好ましい。例えば、アルミニウム(Al)、銀又はそれらの合金で構成されていることが好ましい。コストの観点から、Al又はその合金で構成されていることがさらに好ましい。
金属ワイヤ3を形成するために金属を基材1又は誘電体層2上に被着する方法としては、基材1又は誘電体層2を構成する材料と金属ワイヤ3とを構成する金属との間で十分な密着性が得られる方法であれば特に限定されない。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的蒸着法を好適に用いることができる。中でも、金属を誘電体層2の凸部に選択的に、又は誘電体層2の凸部の一方の側面に偏って選択積層できるような方法が好ましい。そのような方法として、例えば、真空蒸着法が挙げられる。
本発明においては、金属ワイヤ3を形成する際に、格子状凸部1aの長手方向と垂直に交わる平面内であって基材の垂線と金属を被着する方向とのなす角をθとし、被着開始時の前記なす角をθとし、被着終了時の前記なす角をθとしたときに、θsからθdとの間の角度範囲における2つ以上の角度であって大きい方の角度から順次金属を被着し、小さい方の角度からの蒸着量が大きい方からの蒸着量よりも多いことが好ましい。
すなわち、本発明においては、図2に示すように、格子状凸部1aの長手方向と垂直に交わる平面内であって基材面に対する垂線と金属を被着する方向とのなす角θが相対的に大きい方向(θs)を被着開始方向とし、なす角θが相対的に小さい方向(θd)を被着終了方向として金属の被着を行う。このように、まず、なす角θが大きい方向(θs)から被着を行うと、格子状凸部1a上の誘電体層2に対してθsの角度で金属3aが被着される。この金属3aが被着された状態で被着方向を、なす角θが小さい方向(θd)に変えると、その被着方向において、金属3aの下部、すなわち格子状凸部1aの側壁に対応する領域に影部4が設けられる。このため、なす角θが小さい方向(θd)から金属が被着されても、金属3aが存在することにより、金属3a上に金属が被着されて格子状凸部1aの側壁に対応する領域には金属が被着されない。また、このように被着方向を変えることにより、初期に被着した金属3a上に金属が被着されていくので、結果として金属ワイヤ3の高さを効率よく高くすることができる。このため、アスペクト比の大きい金属ワイヤ3を形成することが可能となる。
被着開始方向の角度は、格子状凸部に対して長手方向に直交する方向に成長する金属の量が多くならないことを考慮して、なす角θが70°以下であることが好ましい。また、被着終了方向の角度は、長手方向に沿う方向、すなわちなす角θが約0°であることが好ましい。
本発明に係る方法において上記被着を行う場合、θsからθdとの間の角度範囲における2つ以上の角度であって大きい方の角度から順次金属を被着するのであれば、連続的になす角θが減少するように被着方向を変更しても良く、θsからθdとの間の角度範囲において、なす角θの大きい方の角度から複数回にわたって順次被着方向を変更しても良い。すなわち、初期の被着方向のなす角θが相対的に大きく、図2に示す金属3aが形成されれば、その後の被着方向のなす角θは初期の被着方向のなす角θよりも小さければ良い。このように制御することにより、格子状凸部1aの側壁領域に金属が被着されることを抑制できる。なお、θsからθdとの間の角度範囲において、なす角θの大きい方の角度から複数回にわたって順次被着する場合において、角度のピッチについては特に制限はない。
本発明の方法においては、必要に応じて、例えば酸又はアルカリのエッチャントを用いて湿式エッチングを行って、格子状凸部間の凹部領域に付着した金属を除去したり、金属ワイヤの凸部同士の接触を解消したり、金属ワイヤの断面形状を前記適正範囲に修正するようにしても良い。
上記の方法により得られたワイヤグリッド偏光板においては、格子状凸部の断面視において、すなわち図1において、格子状凸部1aの頂部(ここでは、誘電体層2の頂部)上に被着した金属の面積をA1とし、格子状凸部1aの頂部より下に被着した金属の面積をA2としたときに下記式(2)を満足することが好ましい。
A1/(A1+A2)≧1/2 式(2)
このような関係を満足することにより、微細凹凸格子の凹部に存在する金属が少なく、光学的特性に優れたワイヤグリッド偏光板を得ることができる。
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
(格子状凸部を有する基材の作製)
・凹凸格子形状が転写されたCOP板の作製
ピッチが230nmで、凹凸格子の高さが230nmである凹凸格子を表面に有するニッケルスタンパを準備した。この凹凸格子は、レーザ干渉露光法を用いたパターニングにより作製されたものであり、その断面形状は正弦波状で、上面からの形状は縞状格子形状であった。また、その平面寸法は縦横ともに500mmであった。このニッケルスタンパを用いて、熱プレス法により厚さ0.5mm、縦横がそれぞれ520mmのシクロオレフィン樹脂(以下、COPと略す)板の表面に凹凸格子形状を転写し、凹凸格子形状を転写したCOP板を作製した。
・延伸によるピッチの縮小
次いで、この凹凸格子形状が転写されたCOP板を520mm×460mmの長方形に切り出し、被延伸部材としての延伸用COP板とした。このとき、520mm×460mmの長手方向(520mm)と凹凸格子の長手方向とが互いに略平行になるように切り出した。
次いで、この延伸用COP板の表面に、スプレーによりシリコーンオイルを塗布し、約80℃の循環式空気オーブン中に30分放置した。次いで、延伸用COP板の長手方向の両端10mmを延伸機のチャックで固定し、その状態で113±1℃に温度調節された循環式空気オーブン中に延伸用COP板を10分間放置した。その後、250mm/分の速度でチャック間の距離が5倍延伸したところで延伸を終え、20秒後に延伸したCOP板(延伸済みCOP板)を室温雰囲気下に取り出し、チャック間の距離を維持したまま冷却した。この延伸済みCOP板の中央部分約40%は、ほぼ均一にくびれており、最も幅が縮小されている部分は200mmになっていた。
この延伸済みCOP板の表面と断面を、電界放出型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)にて観察したところ、微細凹凸格子のピッチと高さがそれぞれ、100nm/95nm(ピッチ/高さ)であり、その断面形状が正弦波状で、上面からの形状が縞状格子状となっており、実質的に延伸前の凹凸格子形状と相似で縮小されていたことが分かった。
・ニッケルスタンパ作製
得られた、100nmピッチの延伸済みCOP板表面に、それぞれ導電化処理として金をスパッタリングにより30nm被覆した後、それぞれニッケルを電気メッキし、厚さ0.3mm、縦300mm、横180mmの微細凹凸格子を表面に有するニッケルスタンパを作製した。
・紫外線硬化性樹脂を用いた格子状凸部転写フィルムの作製
厚み0.1mmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(以下、PETフィルム)に紫外線硬化性樹脂(スリーボンド社製TB3078D、屈折率1.41)を約0.03mm塗布し、塗布面を下にして上記100nmピッチの微細凹凸格子を表面に有するニッケルスタンパ上に、それぞれ端部からニッケルスタンパとPETフィルムとの間に空気が入らないように載せ、PETフィルム側から中心波長365nmの紫外線ランプを用いて紫外線を1000mJ/cm2照射し、ニッケルスタンパの微細凹凸格子を転写した。続いて、ニッケルスタンパからPETフィルムを剥離した後、更に窒素雰囲気下でPETフィルムに紫外線を500mJ/cm2照射し、紫外線硬化性樹脂の未硬化成分を硬化させて、縦300mm、横180mmの格子状凸部転写フィルムを作製した。得られた格子状凸部転写フィルムをFE−SEMにより観察し、その断面形状が正弦波状で、上面からの形状が縞状格子状となっていることを確認した。
(ワイヤグリッド偏光板の作製:実施例1〜実施例3)
・スパッタリング法を用いた誘電体層の形成
上記のように紫外線硬化性樹脂を用いて作製した格子状凸部転写フィルムに、スパッタリング法を用い誘電体を被覆した。本実施例では、誘電体として窒化珪素を用いた場合について説明する。Arガス圧力0.67Pa、スパッタリングパワー4W/cm、被覆速度0.22nm/sにて誘電体の被覆を行った。層厚み比較用サンプルとして表面が平滑なガラス基板を格子状凸部転写フィルムと同時に装置に挿入し、平滑ガラス基板への誘電体積層厚みが20nmとなるように成膜を行った。
・真空蒸着法を用いた金属の蒸着
格子状凸部転写フィルムに誘電体を積層した後、被着方法として電子ビーム真空蒸着法(EB蒸着法)を用いて金属の積層を行った。本実施例では、金属としてアルミニウム(Al)を用いた場合について説明する。真空度2.5×10−3Pa、蒸着速度4nm/s、常温下においてアルミニウムの蒸着を行った。層厚み比較用サンプルとして表面が平滑なガラス基板を誘電体積層格子状凸部転写フィルムと同時に装置に挿入し、平滑基板へのアルミニウム蒸着厚みが200nmとなるように蒸着を行った。
このアルミニウム蒸着において、被蒸着対象に対して所定の角度を持って蒸着を行う斜め蒸着法を用い、蒸着開始角度(θs)から蒸着終了角度(θd)の角度範囲でなす角θが減少するように蒸着方向を変化させて行った。具体的には、実施例1では、蒸着開始角度(θs)を50°とし、蒸着終了角度(θd)を10°とし、20°ずつ変化させて行った。すなわち、実施例1では、蒸着角度を50°、30°、10°と順次変化させて蒸着を行った。同様に、実施例2では、蒸着角度を30°、20°、10°と順次変化させて蒸着を行った。同様に、実施例3では、70°、40°、10°と順次変化させて蒸着を行った。なお、蒸着開始角度から蒸着終了角度に至るまで30秒の時間をかけて変化させ、最終的に金属ワイヤの厚みが120nmになるようにした。また、比較のために、蒸着角度を変えずに20°で固定した斜め蒸着法により厚さ120nmで金属ワイヤを形成した。これらの蒸着角度について下記表1に示す。
・エッチングによる不要金属の除去
格子状凸部転写フィルムに誘電体及びAlを積層した後、フィルムを室温下の0.1重量%水酸化ナトリウム水溶液中で、処理時間を30秒〜90秒の間において10秒間隔で変えながら洗浄(エッチング)し、すぐに水洗してエッチングを停止させた。フィルムを乾燥させてワイヤグリッド偏光板を得た。
(蒸着金属面積比の測定)
得られた実施例1〜実施例3、比較例のワイヤグリッド偏光板について、FE−SEMにより観察し、格子状凸部1aの頂部(ここでは、誘電体層2の頂部)上に被着した金属の面積A1と、格子状凸部1aの頂部より下に被着した金属の面積A2とを測定し、A1/(A1+A2)の値を求めた。その結果を下記表1に併記する。
(分光光度計による光学特性評価)
得られた実施例1〜3、比較例のワイヤグリッド偏光板について、分光光度計を用い光線透過率を測定した。ここでは、直線偏光に対する平行ニコル、直交ニコル状態での透過光強度を測定し、光線透過率は下記式より算出した。その結果を下記表1に併記する。なお、測定波長域は可視光として400nm〜800nmとした。
光線透過率=[(Imax+Imin)/2] ×100 %
ここで、Imaxは平行ニコル時の透過光強度であり、Iminは直交ニコル時の透過光強度である。
Figure 0005235208
表1から分かるように、本発明に係る方法で得られたワイヤグリッド偏光板(実施例1〜実施例3)は、蒸着の際の蒸着角度をなす角θが減少するように変化させているので、A1/(A1+A2)の値も1/2以上であり、格子状凸部の側壁への被着を抑制しながら金属ワイヤを上方に成長させることができた。また、格子状凸部の側壁への被着が抑制されているので、光学的特性も良好であった。一方、蒸着の際に蒸着角度を変えずに行って得られたワイヤグリッド偏光板(比較例)は、A1/(A1+A2)の値が1/2未満であり、格子状凸部の側壁への被着が多く、光学的特性に劣っていた。
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態における寸法、材質などは例示的なものであり、適宜変更して実施することが可能である。また、上記実施の形態における偏光板については、板状の部材である必要はなく、必要に応じてシート状、フィルム状であっても良い。その他、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
1 基材
1a 格子状凸部
2 誘電体層
3 金属ワイヤ
4 影部

Claims (7)

  1. 表面に格子状凸部を有する基材上の前記格子状凸部に対して、前記格子状凸部の長手方向と垂直に交わる平面内であって基材の垂線と金属を被着する方向とのなす角をθとし、被着開始時の前記なす角をθとし、被着終了時の前記なす角をθとしたときに、θsからθdとの間の角度範囲における2つ以上の角度であって大きい方の角度から順次金属を被着するワイヤグリッド偏光板の製造方法により得られたワイヤグリッド偏光板であって、
    前記格子状凸部の側壁領域において、前記金属ワイヤの下部に前記金属が被着されない領域を有し、前記格子状凸部の断面視において、前記格子状凸部の頂部上に被着した金属の面積をA1とし、前記格子状凸部の頂部より下に被着した金属の面積をA2としたときに下記式(2)を満足することを特徴とするワイヤグリッド偏光板。
    A1/(A1+A2)≧1/2 式(2)
  2. 前記金属が凸部の一方の側面に偏って選択積層したことを特徴とする請求項1記載のワイヤグリッド偏光板。
  3. 前記格子状凸部のピッチが150nm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のワイヤグリッド偏光板。
  4. 前記格子状凸部の高さが前記ピッチの0.5〜2.0倍であることを特徴とする請求項3記載のワイヤグリッド偏光板。
  5. 前記格子状凸部の幅が格子状凸部間の35%〜60%であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のワイヤグリッド偏光板。
  6. 前記基材の断面形状が正弦波状であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のワイヤグリッド偏光板。
  7. 前記格子状凸部に設けられた誘電体層を備えたことを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のワイヤグリッド偏光板。
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