JP5233704B2 - ブロック共重合体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
一方、ラジカル重合の中でも、光によって重合が開始される光ラジカル重合は、熱によって重合が開始されるラジカル重合と比べて、クリーンかつ省エネルギー的であり、環境保全の見地から好ましいというだけでなく、熱を加えることのできない製造過程にも適用可能である点、また、微少な部分にも適用可能である点で優れている。このような利点を活かして、光ラジカル重合は、各種コーティング、印刷、フォトグラフィー、などの分野に応用されている。
しかしながら、従来の光リビングラジカル重合は、分子量を制御することが困難であり、得られるブロック共重合体の分子量分布が、通常のラジカル重合で得られる高分子の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量=2.0〜3.3)と同等であるという問題点がある。
また、高分子反応や重合の変換法を用いずに、1ポットで異種重合間ブロック共重合体を製造することができるブロック共重合体の製造方法を提供することを目的とする。
<1> 第1の単量体の繰り返し単位と、第2の単量体の繰り返し単位とを有するブロック共重合体の製造方法であって、前記第1の単量体の繰り返し単位の末端に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルを有する化合物の存在下で、前記第2の単量体を光リビングラジカル重合して、ブロック共重合体を製造することを特徴とするブロック共重合体の製造方法である。
<2> 光リビングラジカル重合が、ラジカル重合開始剤により開始され、かつ、光酸発生剤の存在下で行われる前記<1>に記載のブロック共重合体の製造方法である。
<3> 第2の単量体の繰り返し単位が、下記一般式(2)で表される前記<2>に記載のブロック共重合体の製造方法である。
<4> 前記<1>から<3>のいずれかに記載のブロック共重合体の製造方法により製造されたことを特徴とするブロック共重合体である。
本発明のブロック共重合体の製造方法は、少なくとも光リビングラジカル重合工程を含み、さらに必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。
前記光リビングラジカル重合工程は、第1の単量体の繰り返し単位の末端に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルを有する化合物の存在下で、第2の単量体を光リビングラジカル重合する工程である。
前記化合物は、第1の単量体の繰り返し単位の末端に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)を有する高分子メディエーター(下記一般式(1)で表される化合物)である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、前記末端とは、片末端及び両末端のいずれであってもよい。
前記化合物の数平均分子量(Mn)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、500〜30,000が好ましく、1,000〜5,000がより好ましい。
前記第2の単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸エステル誘導体が挙げられる。
前記メタクリル酸エステル誘導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸アルキル、メタクリル酸パーフルオロアルキル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、などが挙げられる。これらのメタクリル酸エステル誘導体を2種以上併用してもよい。
前記光リビングラジカル重合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ラジカル重合開始剤により開始され、かつ、光酸発生剤の存在下で行われることが好ましい。
前記光リビングラジカル重合に用いる光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高圧水銀ランプが好ましく、400W以上の出力を有する超高圧水銀ランプがより好ましい。
前記ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アゾ開始剤、などが挙げられる。
前記アゾ開始剤の10時間半減期温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20℃〜80℃が好ましく、25℃〜70℃がより好ましい。
前記ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、などが挙げられる。
前記ラジカル重合開始剤のモル比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第2の単量体総量1モルに対して、0.001モル〜0.01モルが好ましく、0.0015モル〜0.005モルがより好ましい。
前記光酸発生剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(3)で表されるヨードニウム塩、などが挙げられる。中でも、芳香族にアルキル基が導入されたヨードニウム塩が、種々の化合物への溶解性が高い点で、好ましい。
前記一般式(3)において、メチレン基の炭素数を表すnは、整数である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜20が好ましく、10〜14がより好ましい。
本発明のブロック共重合体は、本発明のブロック共重合体の製造方法により製造されたものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(4)で表されることが好ましい。
前記ブロック共重合体は、高分子メディエーター(TEMPOを末端に有する化合物)がセグメントの一部を形成し、高分子メディエーター(TEMPOを末端に有する化合物)における高分子(第1の単量体の繰り返し単位)と、第2の単量体の光ラジカルリビング重合により生成した高分子(第2の単量体の繰り返し単位)とが、TEMPOを介して結合している。
前記ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1.4〜1.9である。
ただし、分子量が10,000以上の高分子メディエーター(TEMPOを末端に有する化合物)を用いた場合、高分子メディエーター(TEMPOを末端に有する化合物)の主鎖である高分子(第1の単量体の繰り返し単位)と、第2の単量体の光ラジカルリビング重合により生成した高分子(第2の単量体の繰り返し単位)との相溶性が低く、重合系が重合工程で白濁するため、前記ブロック共重合体の分子量分布は、2.0〜4.0となる。
市販のメタクリル酸メチル単量体を、5重量%の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄後、水素化カルシウム存在下で減圧蒸留することによってラジカル重合禁止剤を除去した。
この精製したメタクリル酸メチル単量体1mLに、ラジカル重合開始剤としての2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)7mg、光酸発生剤としてのビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートの50重量%プロピレンカーボネート溶液19mg、及び高分子メディエーターとしての片末端−TEMPO化ポリテトラヒドロフラン24mgを溶解させた。
ここで、ビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートのアルキル基CnH2n+1の炭素数nは、10〜14であった。また、片末端−TEMPO化ポリテトラヒドロフランの数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、標準ポリメタクリル酸メチル換算で、それぞれ、Mn=1,720及びMw/Mn=1.91であった。 上記混合物を脱気封管し、室温で、500Wの超高圧水銀ランプ(ワコム製)により7.0Aの出力の元で、6時間光照射を行った。その後、開封し、塩化メチレン10mLを加え、固化した生成物を完全に溶解させた。この塩化メチレン溶液をヘキサン500mLに滴下し、生成したブロック共重合体を単離した。塩化メチレン溶液からヘキサンへの再沈澱をくり返すことにより、ブロック共重合体を精製した。得られたブロック共重合体を減圧乾燥し、その後、ベンゼンを用いて凍結乾燥を行うことにより、最終的に472mgのポリメタクリル酸メチル−block−ポリテトラヒドロフランのジブロック共重合体を得た。得られたジブロック共重合体の数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、標準ポリメタクリル酸メチル換算で、それぞれ、Mn=21,800及びMw/Mn=1.85であった。得られたジブロック共重合体について1H−NMR測定を300 FT−NMR装置(Varian 製)を用いて行った。得られた1H−NMRスペクトルを図1A及び図1Bに示す。図1A及び図1Bにおけるスペクトルのピークに付された文字と、図1Cにおける構造式に付された文字とは、それぞれ対応している。
<片末端−TEMPO化ポリテトラヒドロフランの合成方法>
4−ヒドロキシ−TEMPOの1.69gを11mLのTHFに溶解した溶液に、水素化ナトリウム352mgを室温で添加し、その混合物を室温で2時間撹拌し、4−ナトリウムオキシ−TEMPOの懸濁液を調製した。ナトリウムから蒸留したTHF100mLに、トリフルオロメタンスルホン酸メチル0.37mLを室温で加え室温で7分間撹拌後、この溶液に、4−ナトリウムオキシ−TEMPOの懸濁液を0℃で加えた。この混合物を0℃で5分間撹拌し、さらに、室温で55分間撹拌した。その後、この混合物に水1mLを加えた。未反応のTHFをエバポレーターで除去し、残留物をヘキサン500mLに溶解させた。このヘキサン溶液を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この硫酸マグネシウムをろ別後、エバポレーターでヘキサンを除去し、生成物を50℃で数時間真空乾燥させ、片末端−TEMPO化ポリテトラヒドロフラン1.53gを得た。
(実施例2)
ここで、ビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートのアルキル基CnH2n+1の炭素数nは、10〜14であった。また、片末端−TEMPO化ポリテトラヒドロフランの数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、標準ポリメタクリル酸メチル換算で、それぞれ、Mn=12,700及びMw/Mn=1.25であった。
上記混合物を脱気封管し、実施例1と同様の方法により光照射を6時間行った。その後開封し、塩化メチレン10mLを加え、固化した生成物を完全に溶解させた。この塩化メチレン溶液をヘキサン500mLに滴下し、生成したブロック共重合体を単離した。塩化メチレン溶液からヘキサンへの再沈澱をくり返すことによりブロック共重合体を精製した後、減圧乾燥し、続いて凍結乾燥を行うことにより、最終的に663mgのポリメタクリル酸メチル−block−ポリテトラヒドロフランのジブロック共重合体を得た。このジブロック共重合体の数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、標準ポリメタクリル酸メチル換算で、それぞれ、Mn=32,300及びMw/Mn=3.64であった。
<片末端−TEMPO化ポリテトラヒドロフランの合成方法>
4−ヒドロキシ−TEMPOの1.69gを11mLのTHFに溶解した溶液に、水素化ナトリウム352mgを室温で添加し、その混合物を室温で2時間撹拌し、4−ナトリウムオキシ−TEMPOの懸濁液を調製した。ナトリウムから蒸留したTHF100mLに、トリフルオロメタンスルホン酸メチル0.37mLを室温で加え室温で30分間撹拌後、この溶液に、4−ナトリウムオキシ−TEMPOの懸濁液を0℃で加えた。この混合物を0℃で5分間撹拌し、さらに、室温で55分間撹拌した。その後、この混合物に水1mLを加えた。未反応のTHFをエバポレーターで除去し、残留物をヘキサン500mLに溶解させた。このヘキサン溶液を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この硫酸マグネシウムをろ別後、エバポレーターでヘキサンを除去し、生成物を50℃で数時間真空乾燥させ、片末端−TEMPO化ポリテトラヒドロフラン20.6gを得た。
ブロック共重合体の分子量測定は、GPC(gel permeation chromatography)によって以下の条件で測定した。
・装置:GPC−8020(東ソー製)
・カラム:TSK G2000HXL、G4000HXL及びG6000HXL(東ソー製)
・温度:40℃
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・流速:1.0mL/分
・試料:濃度0.5%の試料を1mL注入
以上の条件で測定したブロック共重合体の分子量分布から、単分散ポリメタクリル酸メチル標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して、ブロック共重合体の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mwとして算出した。
Claims (3)
- 第1の単量体の繰り返し単位と、第2の単量体の繰り返し単位とを有するブロック共重合体の製造方法であって、
前記第1の単量体の繰り返し単位の末端に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルを有する化合物の存在下で、前記第2の単量体を光リビングラジカル重合して、ブロック共重合体を製造することを特徴とするブロック共重合体の製造方法。 - 光リビングラジカル重合が、ラジカル重合開始剤により開始され、かつ、光酸発生剤の存在下で行われる請求項1に記載のブロック共重合体の製造方法。
- 第2の単量体の繰り返し単位が、下記一般式(2)で表される請求項2に記載のブロック共重合体の製造方法。
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