JP5327800B2 - カルボキシル基を末端基とするポリオキシアルキレン誘導体の製造 - Google Patents

カルボキシル基を末端基とするポリオキシアルキレン誘導体の製造 Download PDF

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本発明はカルボキシル基を末端基とするポリマーの製造に関する。具体的には、カルボキシル基を末端基とするポリオキシアルキレン誘導体の製造、ならびに該製造に都合よく使用できる重合開始剤組成物およびその調製方法に関する。
近年、医学、薬学の分野への応用を目差して様々な高機能性ポリマー材料に対する要求が多様化されてきている。中でも、ポリオキシアルキレン(以下、POAと略記する場合あり)、特に、ポリ(エチレングリコール)(以下、PEGと略記する場合あり)は、非イオン性、両親媒性、低毒性、生体親和性等に優れ、医療用機材表面の処理、医薬のキャリヤーとしてドラッグデリバリーシステム(DDS)等の分野で広範な用途開発が行われている。
このような広範な用途開発に適合させるために、PEGの両末端に異なる反応性基(または官能基)を有する、高品質で安価なヘテロテレケリック(またはヘテロ二官能性)PEGの提供が望まれている。一般的に、PEGはエチレンオキシドのアニオン開環重合により合成できる。したがって、官能基の導入は、特殊の開始剤もしくは重合停止剤を使用するか、または重合後のPEG鎖の修飾により行うことができる。例えば、かようなアニオン重合では、上記停止剤を用いて重合停止末端(ω−末端という)に各種官能基、または異なるポリマー鎖を比較的容易に導入できるが、重合開始末端(α−末端という)に官能基を導入する方法は必ずしも容易でない。
官能基のなかでも、カルボキシル基は、水中で安定であり、さらなる様々な機能化も期待され、また、生体材料のタンパク質中のアミノ基とアミド結合を形成してタンパク質とPEGのコンジュゲートを提供できることを考慮すると、カルボキシル基を末端基とすることは有用である。ところで、本発明者等が知る限りでは、カルボキシル基をα−末端に導入する方法として実用化されていると思われるものは、ヒドロキシカルボン酸のカルボキシエステル(すなわち、カルボキシル基が保護されている)を開始剤とし、重合後にエステルを加水分解することによりα−末端にカルボキシル基を有し、ω−末端にヒドロキシを有するヘテロテレケリックPEGの製造方法である(特許文献1)。この方法により目的のポリマーを得るには、少なくとも開始剤ヒドロキシカルボン酸のエステル化、重合後のエステル加水分解処理を必要とする。
他方、ヒドロキシカルボン酸をエステル化することなく、ジカリウム塩とした後、エチレンオキシドをアニオン重合させる方法も知られている(非特許文献1)。この方法では、開始剤としてカリウム ミラー(potassium mirror)を用いて2−ヒドロキシピバリン酸のジカリウム塩(またはジアニオン性開始剤)とした後、エチレンオキシドをアニオン重合することによりヒドロキ及びカルボキシを両末端に有するポリ(オキシエチレン)が得られると記載されている。しかし、得られたポリマーの分子量の制御をすることに成功しているとは言えず、高分子量のポリマーも得られていない。このような原因としては、上記ジアニオン性開始剤が反応溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)に対して溶解性が低く、凝集し沈殿を生成し易いためである。したがって、特定のクラウンエーテルを反応系に加えて反応性の改善を図っている。また、ヒドロキシカルボン酸をTHF中、カリウムナフタレンでメタル化し、次いでエチレンオキシドの重合を行いα−カルボキシ−ω−ヒドロキシPEGを合成する試みも報告されている(非特許文献2)。しかし、この方法では、12−ヒドロキシドデカン酸を除き、低分子量のグリコール酸ナトリウム塩、3−ヒドロキシ酪酸ナトリウム塩等を開始剤として用いた場合には、エチ
レンオキシドモノマーが極めて低い転化率でポリマー鎖を形成しているに過ぎない。
特許第3465307号公報
K.B.Wagener et al.,Macromolecules 1992,25,5585−5590 F.Zeng et al.,Macromolecules 2006,39,6391−6398
しかし、ヒドロキシカルボン酸をエステル化することなく、単にメタル化するだけで、得られるポリマーの分子量が十分に制御され、かつ、高いポリマー鎖への転化率でアルキレンオキシドが重合できる方法に対するニーズは依然として存在する。したがって、本発明の目的は、上記ニーズに答える手段を提供することにある。
本発明者等は、ヒドロキシカルボン酸として、カルボキシル基に隣接する炭素原子上に水素原子を有さず、かつ、ヒドロキシカルボン酸のメタル化後の塩が反応媒体中で微分散した状態でエチレンオキシドのアニオン重合を行うと、カルボキシル基をα−末端基とするポリエチレングリコールが制御された分子量を有するものとして、かつ、高収率で得られることを見出した。また、エチレンオキシドに代え、他のアルキレンオキシドのアニオン開環集合も同様に進行できることも見出した。
したがって、本発明によれば、カルボキシル基をα−末端基とするポリマーのアニオン重合用開始剤組成物であって、
(a)一般式I:
HOOC−R−OH (I)
式中、
Rは、基−C(R)(R)(CH−、または
基−R−(CH
で表され、R及びRは独立して、直鎖もしくは分岐のC1−6アルキル、アリール、アリール−C1−4アルキル基を表し、Rは置換されていてもよいフェニレン基を表し、mは0〜12の整数であり、そしてnは1〜12の整数である、
で表されるヒドロキシカルボン酸、
(b)反応媒体、および
(c)アルカリ金属−ナフタレン
を含み、アルカリ金属化されたヒドロキシカルボン酸が反応媒体中で微分散した状態にある、上記組成物、が提供される。
前記組成物は、アルカリ金属−ナフタレンが溶解された反応媒体の攪拌下にある溶液に、ヒドロキシカルボン酸が溶解された反応媒体の溶液の液滴を分離した状態で添加することにより、首尾よく調製することができる。この逆、すなわち、ヒドロキシカルボン酸が溶解された反応媒体の溶液にアルカリ金属−ナフタレンが溶解された反応媒体の溶液を添加する場合には、生成したヒドロキシカルボン酸の塩が凝集し沈殿を形成するため、該塩が微分散した状態にある組成物を実質的には提供できない。
従って、別の態様として、本発明によれば、アルカリ金属−ナフタレンが溶解された反応媒体の攪拌下にある溶液に、ヒドロキシカルボン酸が溶解された反応媒体の溶液の液滴を個別に添加して、アルカリ金属化されたヒドロキシカルボン酸が反応媒体中で微分散した状態にある組成物の調製方法が提供される。
また、別の態様として、本発明によれば、アルカリ金属−ナフタレンが溶解された反応媒体の攪拌下にある溶液に、ヒドロキシカルボン酸が溶解された反応媒体の溶液の液滴を個別に添加してヒドロキシカルボン酸をアルカリ金属化する工程、こうして調製された反応液にエチレンオキシドを加えその重合を行う工程、及び重合反応混合物に重合停止剤を加える工程を含んでなるカルボキシをα−末端基とするポリ(エチレングリコール)の製造方法,が提供される。
本発明の実施例1で得られたポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーのチャートである。 本発明の実施例1で得られたポリマーのH−NMRスペクトラムである。 本発明の実施例2で得られたポリマーのH−NMRスペクトラムである。
<発明の詳細な記述>
以下、本発明を詳細に説明する。
(a)成分としての、ヒドロキシカルボン酸におけるR及びRについて定義する、直鎖もしくは分岐のC1−6アルキルとしては、限定されるものでないが、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルを挙げることができる。R及びRは、このような基の中から選ばれる同一または異なる基であることができるが、少なくとも一方がメチルであることが好ましく、両者がメチルであることがより好ましい。また、アリール及びアリール−C1−4アルキルにいう、アリールとしては、特に限定されるものでもないが、用途や特性などから嵩高くならないフェニルが好ましい。Rは、特に限定されるものではないが、置換されていてもよいフェニル基で、嵩高くなりすぎない未置換フェニル基であることが好ましい。フェニル基が置換されている場合の置換基としては、メチル、エチル、ハロゲン(特に、フッ素、塩素)、シアノ、ニトロを挙げることができる。mは0〜12であり、nは1〜12の整数であることができるが、用途や溶解性の観点などから、好ましくはm及びnは、1〜8、より好ましくは1〜6であることができる。このようなヒドロキシカルボン酸の具体的なものとしては、限定されるものでないが、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオン酸(ヒドロキシピバリン酸)、4−ヒドキシメチル安息香酸、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸等を例示できる。
(b)成分としての、反応媒体としては、非プロトン性の溶媒であり、ヒドロキシカルボン酸及び後述するアルカリ金属−ナフタレンを溶解し、本願発明の目的に悪影響を及ぼさない有機溶媒であれば如何なる溶媒であってもよいが、好ましくは,非プロトン性極性溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、グライムを挙げることができる。
(c)成分としての、アルカリ金属−ナフタレンのアルカリ金属は、ナトリウム、カリウムを好ましいものとして挙げることができる。
本発明の組成物は、上記(a)、(b)及び(c)成分を含んでなり、(a)成分は(c)成分と反応媒体中で接触することによりアルカリ金属化され金属アルコラートの他にカルボン酸塩も形成するが、こうして形成されるアルカリ金属化されたヒドロキシカルボン酸が反応媒体中で微分散した状態で含まれていることが本発明の特徴の一つである。微分散した状態というのは、前記金属化されたヒドロキシカルボン酸が反応媒体中で沈殿を生じる程度までは凝集しておらず、均質に分散している状態をいう。このような状態は、沈殿が生じているか否かを目視することにより確認することができる。目視にて、わずかに濁っていることが確認できるが、半透明で微分散しており、すぐに沈殿しない状態が好ましい。分散物のサイズとしては、数十ナノメートルから数マイクロメートル程度が好ましい。以下このような状態は、少なくとも後に、アニオン重合せしめるモノマーが該組成物に添加される時まで維持される必要がある。このような状態を容易に維持できるものとするには、(b)成分である反応媒体中の(c)成分濃度を0.01〜0.40モル濃度(mol/L)、好ましくは0.05〜0.30モル濃度(mol/L)とするのがよい。一方、(a)成分は、前記(c)成分のアルカリ金属に対して化学当量以下となるように含められる。化学当量より多い場合は、残存するアルカリ金属ナフタレンからモノマーが重合してしまう場合があり、副生成物を形成する可能性がある。
上記のような状態が維持されておれば、該組成物をアニオン重合開始剤として、例えば、エチレンオキシドを重合せしめれば、モノマーが高い、例えば、65%以上、好ましくは70%以上の収率で、所期の分子量及び分子量分布(例えば、数平均分子量3,000以上、重量平均分子量/数平均分子量=1.20〜1.01)を有する目的のポリマーに転換される。したがって、上記のような状態が維持されているか否かは、前記組成物が成功裏にある一定のモノマーを、カルボキシル基をα−末端基とする所期のポリマーに転化できるか否かを検討することによっても確認することができる。このようなモノマーとしては、エチレンオキシドをはじめとし、エチレンオキシドと同様にアニンオン重合、特に、アニオン開環リビング重合できるモノマーを挙げることができる。限定されるものでないが、このようなモノマーとしてプロピレンオキシドを例示することができる。
上記のような状態が維持された組成物は、アルカリ金属−ナフタレンが溶解された反応媒体の(必要により、攪拌下にある)溶液に、ヒドロキシカルボン酸が溶解された反応媒体の溶液の液滴を分離した状態で添加することにより、首尾よく調製することができる。通常、アニオン重合開始剤組成物または溶液を調製するときには、開始剤とアルカリ金属含有化合物を同時に反応媒体に溶解するか、また、非特許文献1及び2のように、開始剤を溶解した溶液にアルカリ金属それ自体またはアルカリ金属化合物を溶解した溶液が添加されているが、このような本発明の添加方法と逆の、すなわち、ヒドロキシカルボン酸が溶解された反応媒体の溶液にアルカリ金属−ナフタレンが溶解された反応媒体の溶液を添加する場合には、生成したヒドロキシカルボン酸の塩が凝集し沈殿を形成するため、本発明にいう該塩が微分散した状態にある組成物を実質的には提供できず、所期のポリマーを提供するための重合開始剤組成物として実質的に機能しない。
従って、別の態様として、本発明によれば、アルカリ金属−ナフタレンが溶解された反応媒体の(必要により、攪拌下にある)溶液に、ヒドロキシカルボン酸が溶解された反応媒体の溶液の液滴を個別に添加して、アルカリ金属化されたヒドロキシカルボン酸が反応媒体中で微分散した状態にある組成物の調製方法が提供される。ここで、溶液の液滴を個別に添加するとは、通常、滴下型の原料供給器(実験室的には滴下漏斗を想起されたい)を用いて、添加する液滴が相互に分離した状態で添加されることを意味する。液滴のサイズは、原料供給器のサイズや溶液の濃度によって最適値が変動するので限定できないが、等圧滴下漏斗を使用した場合、液滴を0.05mL程度となるようにするのが好ましい。
また、このような液滴が添加されるべき溶液である、アルカリ金属−ナフタレンが溶解された反応媒体は、必要があれば、磁気攪拌機などの攪拌装置を用いて連続的にまたは断続的に攪拌されているのが好ましい。このような操作は、室温下、必要により、印圧または加圧下で行うことができる。こうして、ヒドロキシカルボン酸はアルカリ金属−ナフタレンにより金属化され、通常、反応媒体に不溶性の塩を形成するが、上記の「溶液の液滴を個別に添加」すると形成した塩が制御不能に凝集することなく、反応媒体中に均質に分
散した状態を数時間は維持できる。
こうして調製した組成物は、含まれるアルカリ金属化されたヒドロキシカルボン酸がアニオン重合、特に、アニオン開環重合の開始剤としての活性を有しており、各種モノマーの重合開始剤として使用できる。
従って、また、別の態様として、本発明によれば、アルカリ金属−ナフタレンが溶解された反応媒体の(必要があれば、攪拌下にある)溶液に、ヒドロキシカルボン酸が溶解された反応媒体の溶液の液滴を個別に添加してヒドロキシカルボン酸をアルカリ金属化する工程、こうして調製されたアルカリ金属化反応液にアニオンリビング重合し得るモノマー、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ラクチド、メタクリル酸化合物(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリル酸やジエチルアミノエチルメタクリル酸など)を加えその重合を行う工程、及び重合反応混合物に重合停止剤を加える工程を含んでなるカルボキシル基をα−末端基とするポリ(エチレングリコール)の製造方法、が提供される。このような製造方法では、重合中のω−末端はリビングアニオンとして成長し得るので、さらなる異なるモノマーの重合開始剤として、異なるモノマーに由来するポリマーブロックを形成でき、また、各種求電子置換反応様式でアニオン重合反応を停止し得る各種重合停止剤を用い、該重合停止剤に対応する各種基を末端(ω−末端)基とするポリマーを提供できる。このような基としては、ヒドロキシル、メタクリロイル、メタンスルホニル、トルエンスルホニル、カルボキシル、ビニルベンジルを挙げることができる。これらの基に対応する重合停止剤としては、限定されるものでないが、無水メタクリル酸、メタンスルホニルクロリド、トルエンスルホニルクロリド、無水コハク酸、ビニルベンジルクロリドを挙げることができる。この重合反応は、通常の、アニオンリビング重合反応に用いられている条件下で行うことができる。このような条件としては、限定されるものでないが、反応温度としては、−100〜100℃、好ましくは、−80〜50℃、反応時間は、10分〜48時間、必要により、攪拌下、加圧下等を挙げることができる。
以下、さらなる具体例を挙げて本発明を詳述するが、これらの具体例は、本願発明の理解をより容易にする目的で提供する。
ヒドロキシピバリン酸を用いたカルボキシル基と水酸基を有するポリマーの合成例
アルゴン置換したフラスコに、乾燥したヒドキシピバリン酸1mmolを入れ、テトラヒドロフラン(THF)10mlを加えて溶解した。等圧滴下漏斗を備えた別のフラスコをアルゴン置換し、下部フラスコ内にテトラヒドロフラン5mlとカリウムナフタレンTHF溶液を加え、この溶液に上部の等圧滴下漏斗に上記で準備したヒドキシピバリン酸THF溶液を添加した。この添加は、攪拌下にある下部フラスコ内の溶液に20分程度かけてゆっくりと前記滴下漏斗中の溶液を滴下し、室温下で2時間メタル化反応を行った。メタル化反応の後、エチレンオキシド(EO)を80mmol加え、室温下で2日間重合を行った。
二日後のサンプルは粘度が増加していた。停止反応として、過剰量の塩酸(1mol/l,8ml)を加えて攪拌した後、クロロホルムを加え、飽和食塩水で2回洗浄した。クロロホルム層を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過を行い、約20倍量のジエチルエーテルを用いて沈殿させた。その後吸引濾過を行い、目的のポリマーを回収した(収量2.65g、収率75%)。
得られたポリマーの分子量・分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。その結果、図1に示されるように、数平均分子量が3490、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.15である、単峰性のピークを示すポリマー
が得られた。これらデータは、仕込み比から計算した分子量(3600)とほぼ一致していた。また、H−NMRの測定は、得られたポリマーを水に溶解した後、pH2に調整したものを凍結乾燥して行った。NMRによる測定結果を図2に示す。ポリエチレングリコール(PEG)主鎖及び末端のカルボキシル基と水酸基のピークが確認され、両末端の積分比から計算したカルボキシル基導入率は99%である。また、NMRの積分比から計算した分子量とGPC測定結果はほぼ一致していた。以上の結果より、開始(α)末端にカルボキシル基、停止(ω)末端に水酸基を有するヘテロ二官能性PEGの合成が定量的に得られたことが分かる。
ヒドロキシピバリン酸を用いたカルボキシル基とメタクリロイル基を有するポリマーの合成例
アルゴン置換したフラスコに、乾燥したヒドキシピバリン酸1mmolを入れ、テトラヒドロフラン(THF)10mlを加えて溶解した。等圧滴下漏斗を備えた別のフラスコをアルゴン置換し、下部フラスコ内にテトラヒドロフラン5mlとカリウムナフタレンTHF溶液を加え、上部の等圧滴下漏斗に上記で準備したヒドキシピバリン酸THF溶液を添加した。この添加では、攪拌下にある下部のフラスコ内の溶液に上部滴下漏斗から内部溶液を20分程度かけてゆっくり滴下し、メタル化反応を行った。室温下で2時間反応の後、エチレンオキシド(EO)80mmolをメタル化反応液に加え、室温下で2日間重合を行った。
二日後のサンプルは粘度が増加していた。停止反応として、過剰量の無水メタクリル酸(10mmol)を加えて、室温下で2日間攪拌した。その後、−20℃に冷却した20倍量の2−プロパノールに滴下し沈殿させた。遠心分離により回収後、ベンゼンによる凍結乾燥を行い、目的のポリマーを回収した(収量2.70g、収率73%)。
得られたポリマーの分子量・分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。その結果、数平均分子量が4050、分子量分布の尺度である(重量平均分子量/数平均分子量)が1.17であり、単峰性のピークを示すポリマーが得られたことが確認できた。これらは、仕込み比から計算した分子量(3600)とほぼ一致していた。また、H−NMRによる測定結果(図3)では、ポリエチレングリコール(PEG)主鎖及び末端のメタクリロイル基のピークが定量的に確認された。水の混入などに由来する停止末端の水酸基のピークは確認されなかった。このNMRでは、重合性メタクリロイル基の副反応を抑制するため、pH調整を行わず測定しているため、カルボキシル基のピークは検出できない。以上の結果より、開始(α)末端にカルボキシル基、停止(ω)末端に重合性のメタクリロイル基を有するヘテロ二官能性PEGの合成が定量的に得られたことが分かった。停止剤の選択により、停止(ω)末端に様々な官能基を導入することが可能である。
<比較例1> グリコール酸を用いたカルボキシル基と水酸基を有するポリマーの合成例
アルゴン置換したフラスコに、乾燥したグリコール酸1mmolを入れ、テトラヒドロフラン(THF)10mlを加えて溶解した。等圧滴下漏斗を備えた別のフラスコをアルゴン置換し、下部フラスコ内にテトラヒドロフラン5mlとカリウムナフタレンTHF溶液を加え、上部の等圧滴下漏斗に上記で準備したヒドキシピバリン酸THF溶液を添加した。この添加では、攪拌下にある下部のフラスコ内の溶液に上部滴下漏斗から内部溶液を20分程度かけてゆっくり滴下した。こうして室温下で2時間メタル化反応を行った。反応の後、エチレンオキシド(EO)を80mmol加え、室温下で2日間重合を行った。
二日後のサンプルは粘度が増加していた。停止反応として、過剰量の塩酸(1mol/l,8ml)を加えて攪拌の後、クロロホルムを加え、飽和食塩水で2回洗浄した。クロ
ロホルム層を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過を行い、約20倍量のジエチルエーテルを用いて沈殿させた。その後吸引ろ過を行い、目的のポリマーを回収した(収量2.48g、収率71%)。
得られたポリマーの分子量・分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。その結果、多峰性のピークを示し、分子量の大きいピークの数平均分子量は5630、で、仕込み比から計算した分子量(3600)と一致していなかった。また、H−NMRの測定は、得られたポリマーを水に溶解した後、pH2に調整したものを凍結乾燥して行った。NMRでは、ポリエチレングリコール(PEG)主鎖及び末端の水酸基のピークが確認されるものの、開始末端カルボキシル基のピークは全く確認できなかった。また、ナフタレンに由来するピークが強く確認されていた。これは、残存していたカリウムナフタレンにより重合が開始されたためと考えられる。これらのことから、グリコール酸からのエチレンオキシドの重合においては、メタル化が定量的に行われないか、副反応を生じたかにより、目的とするカルボキシル基と水酸基を有するポリエチレングリコールの合成は困難であることが明らかとなった。
本発明は、カルボキシをα−末端基とし、多種多様な基をω−末端基とする多機能性ポリマーを製造するのに役立つ技術手段が提供でき、医用産業分野で利用できる。

Claims (3)

  1. カルボキシル基をα−末端基とするポリマーのアニオン重合用開始剤組成物であって、(a)一般式I:
    HOOC−R−OH (I)
    式中、
    Rは、基−C(R)(R)(CH−、または
    基−R−(CH
    で表され、R及びRは独立して、直鎖もしくは分岐のC1−6アルキル、アリール、またはアリール−C1−4アルキル基を表し、Rは置換されていてもよいフェニレン基を表し、mは0〜12の整数であり、そしてnは1〜12である、
    で表されるヒドロキシカルボン酸、
    (b)反応媒体、および
    (c)アルカリ金属−ナフタレン
    を含み、アルカリ金属化されたヒドロキシカルボン酸が反応媒体中で微分散した状態にある、上記組成物。
  2. (A)一般式I:
    HOOC−R−OH (I)
    式中、
    Rは、基−C(R)(R)(CH−、または
    基−R−(CH
    で表され、R、R、R、m及びnは請求項1の一般式Iについて定義したとおりである、
    で表されるヒドロキシカルボン酸を反応媒体中に溶解した溶液を調製する工程、
    (B)アルカリ金属−ナフタレンを反応媒体に溶解した溶液を調製する工程、
    (C)上記(A)工程で調製した溶液の液滴を個別に上記(B)工程で調製した溶液へ添加する工程
    を含んでなる、請求項1記載の組成物の調製方法。
  3. (i)一般式I:
    HOOC−R−OH (I)
    式中、
    Rは、基−C(R)(R)(CH−、または
    基−R−(CH
    で表され、R、R、R、m及びnは請求項1の一般式Iについて定義したとおりである、
    で表されるヒドロキシカルボン酸を反応媒体中に溶解した溶液を調製する工程、
    (ii)アルカリ金属−ナフタレンを反応媒体に溶解した溶液を調製する工程、
    (iii)上記(i)工程で調製した溶液の液滴を個別に上記(ii)工程で調製した溶液へ添加し、ヒドロキシカルボン酸をメタル化する工程、
    (iv)(iii)メタル化反応液にアニオンリビング重合し得るモノマーを加えて重合反応を行う工程、および
    (v)重合停止剤を(iv)の重合反応液に加える工程、
    を含んでなる、カルボキシを末端基とし、重合停止反応に由来する基を他の末端基とするポリマーの製造方法。
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