JP3463424B2 - ポリ酸性アミノ酸エステルの製造方法 - Google Patents

ポリ酸性アミノ酸エステルの製造方法

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【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、有機溶媒中で重合
開始剤を用いて、炭素数2以上の脂肪族エステル基を持
つ酸性アミノ酸エステル−N−炭酸無水物(以下“アミ
ノ酸−NCA”と略す)を均一溶液重合するにあたり、
溶媒として酢酸エステルと芳香族炭化水素との混合溶媒
を用いるポリ酸性アミノ酸エステル(以下“ポリアミノ
酸”と略すことがある)の製造方法に関する。 【0002】ポリアミノ酸は固体であるが、微生物によ
って分解される性質を有すると共に、酸素および水に対
する透過性を有する点で優れた特性を有するものであ
り、自然環境の保全の点で好適な高分子物質である。現
在ポリアミノ酸は合成皮革繊維などの用途に広く用いら
れている。自然環境保全の観点からポリアミノ酸は繊
維、化粧品、医療、農薬などの用途において、今後さら
に発展が期待されるポリマーである。 【0003】 【従来の技術】ポリアミノ酸を得る方法としては、アミ
ノ酸−NCAを無水のハロゲン化炭化水素溶媒に溶解
し、アミン化合物に代表されるような重合開始剤を用い
て均一溶液重合する方法が用いられている。従来、ハロ
ゲン化炭化水素溶媒以外の溶媒を用いて高分子量のポリ
酸性アミノ酸エステルが得られるという報告はない。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】従来のアミノ酸−NC
Aの均一溶液重合では、一般にハロゲン化炭化水素が溶
媒として用いられている。フロンによるオゾン層破壊に
象徴されるように、現在ハロゲン化物は自然破壊の点か
ら、工業用の溶媒として使用することは好ましくない。
この点から、高分子量のポリアミノ酸を得るための新た
な重合溶媒の提案が切望されている。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するため鋭意研究の結果、到達されたものである。す
なわち、本発明は炭素数2〜20の脂肪族エステル基を
有する酸性アミノ酸−NCAを芳香族炭化水素と酢酸エ
ステルとの混合溶媒中(以下、単に「混合溶媒」とい
う)で溶液重合することを特徴とするポリ酸性アミノ酸
エステルの製造方法である。以下、本発明を詳細に説明
する。 【0006】本発明で用いられる脂肪族エステル基、す
なわち−COORで表される基を持つ酸性アミノ酸−N
CAとしては、グルタミン酸−γ−エステル−NCA、
アスパラギン酸−β−エステル−NCA(ここでエステ
ル基としては、前記−COORで表される基中のRがエ
チル基、ブチル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ス
テアリルなどの炭素数が2〜20、好ましくは2〜16
の脂肪族炭化水素基のような基である)が挙げられる。
これらのアミノ酸−NCAは光学活性体、またはラセミ
体あるいはそれらの混合物であっても良いし、必要に応
じて2種以上を混合して用いて共重合体とすることもで
きる。 【0007】本発明で使用できる芳香族炭化水素として
は例えばベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンな
どの炭素数6〜16、好ましくは6〜12のベンゼンま
たは低級アルキル置換ベンゼンが挙げられる。酢酸エス
テルとしてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル
基、ヘキシル基、オクチル基などの炭素数1から20の
炭化水素の酢酸エステルが挙げられる。芳香族炭化水素
と酢酸エステルとの混合の比率は、容量比で9:1〜
1:9の範囲であり、好ましくは、7:3〜3:7の範
囲である。 【0008】重合開始剤としては、アミノ酸のNCAの
重合に使用される公知の化合物であれば特に限定される
ものではないが、アミン化合物または金属アルコラート
が好ましい。例えば、アミン化合物の例としてメチルア
ミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミ
ンなどの1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミ
ン、ジブチルアミンなどの2級アミン;トリメチルアミ
ン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの3級ア
ミン;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエ
タノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンな
どのアルコールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチ
レンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジア
ミン、トリエチレンジアミンなどのポリアミンが挙げら
れ、また金属アルコラートの例としてはメチルアルコー
ル、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルア
ルコール、ヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルア
ルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール、好ま
しくは炭素数4以上のアルコールのリチウム、ナトリウ
ム、カリウムなどの金属アルコラートが挙げられる。 【0009】混合溶媒に対するアミノ酸−NCAの量比
は1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%が有利で
ある。重合開始剤の使用量はアミノ酸−NCA1モルに
対し、1/2〜1/5000モル、好ましくは1/5〜
1/1000モルが望ましい。重合温度は−30〜10
0℃好ましくは0〜90℃であり、使用するアミノ酸−
NCAの種類、溶媒、開始剤の種類、目的とするポリア
ミノ酸の分子量によって異なり、各々の場合によって最
適な条件を簡単な実験により決定することが望ましい。
重合の圧力は特に限定されるものではない。重合は反応
器内を機械的に撹拌しながら実施することが好ましい。
本発明によれば、得られるポリアミノ酸の[η]はジク
ロロ酢酸中で1以上である。 【0010】また、本発明により得られたポリアミノ酸
は、従来の再乳化法などによって粉末化することもでき
る。本発明により得られるポリアミノ酸は、人工皮革、
繊維、人工皮膚などに使用することができる。以下に実
施例によって本発明を更に詳細に説明する。実施例中の
極限粘度はジクロロ酢酸中、30℃で測定した値を示
す。 【0011】 【実施例】 実施例1 トルエン7mlと酢酸エチル3mlの混合溶媒にγ−エ
チル−L−グルタメート−N−炭酸無水物(以後ELG
−NCAと略記する)1g、トリエチルアミン0.1m
molを加え、攪拌しながら室温で5時間重合した。重
合終了後、重合体をメタノールで凝固させ濾過、乾燥
し、ポリ−γ−エチル−L−グルタメート(以後PEL
Gと略す)を得た。ポリマーの収率は90%であった。
ジクロル酢酸中で測定したポリマーの極限粘度は1.3
0であった。 【0012】実施例2 トルエン5mlと酢酸エチル5mlの混合溶媒に変えた
ほかは実施例1と同様の操作を行った。得られたPEL
Gの収率は95%であった。ジクロル酢酸中で測定した
ポリマーの極限粘度は1.05であった。 【0013】実施例3 ELG−NCAをγ−オクチル−L−グルタメート−N
CAに変えたほかは実施例1と同様の操作を行った。得
られたポリ−γ−オクチル−L−グルタメートの収率は
88%であった。 【0014】実施例4 ELG−NCAをγ−エチル−L−アスパレート−NC
Aに変えたほかは実施例1と同様の操作を行った。得ら
れたポリ−γ−エチル−L−アスパレートの収率は85
%であった。 【0015】比較例1 酢酸エチル10mlにELG−NCA 0.5g、トリ
エチルアミン 0.1mmolを加え、攪拌しながら室
温で5時間重合した。重合が進行するに伴い、ポリマー
が一部析出し、糸が不均一となった。重合終了後、重合
溶液を100mlのメタノール中に注ぎ、沈殿した重合
体を濾過、乾燥してPELGを得た。ポリマーの収率は
98%であった。ジクロル酢酸中で測定したポリマーの
極限粘度は1.00であった。実施例と比較し、本比較
例ではポリマーの大部分が溶解しているが、一部が粉末
状に析出するのみできれいな粉末ポリマーが得られなか
った。 【0016】比較例2 トルエン10mlにELG−NCA 0.5g、トリエ
チルアミン 0.1mmolを加え、攪拌しながら室温
で5時間重合した。ELG−NCAは、トルエンに溶解
しないが、重合が進行するに伴いポリマーは溶解し均一
な溶液となった。重合終了後、重合溶液を100mlの
メタノール中に注ぎ、沈殿した重合体を濾過、乾燥して
PELGを得た。ポリマーの収率は、92%であった。
ジクロル酢酸中で測定したポリマーの極限粘度は、0.
50であった。実施例1と比較して分子量が低下した。 【0017】比較例3 ジクロロメタン10mlにELG−NCA 1g、トリ
エチルアミン 0.1mmolを加え、攪拌しながら室
温で5時間重合した。重合終了後、重合体をメタノール
で凝固させ濾過、乾燥し、PELGを得た。ポリマーの
収率は95%であった。ジクロル酢酸中で測定したポリ
マーの極限粘度は1.40であった。 【0018】 【発明の効果】本発明によれば環境保全が懸念されてい
るハロゲン化炭化水素溶媒を用いることなく、芳香族炭
化水素と酢酸エステルの混合溶媒中で高分子量のポリ酸
性アミノ酸エステルが効率よく得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 牧野 健哉 東京都中央区築地二丁目11番24号 日本 合成ゴム株式会社内 (72)発明者 林 壽郎 京都府京都市北区小山下内河原町60番 (56)参考文献 特開 昭64−56734(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 69/00 - 69/50

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 炭素数2〜20の脂肪族エステル基を有
    する酸性アミノ酸エステル−N−炭酸無水物を芳香族炭
    化水素と酢酸エステルとの混合溶媒中で溶液重合するこ
    とを特徴とするポリ酸性アミノ酸エステルの製造方法。
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