JP3550869B2 - ポリ−α−アミノ酸のエマルジョンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、α−アミノ酸−N−炭酸無水物を水中で重合するポリ−α−アミノ酸のエマルジョンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、ポリマー粒子が水系媒体中に分散されてなるエマルジョンとしては、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体などのポリマー粒子によるものが知られており、これらは乳化重合法により直接的に製造することが可能である。そして、これらのエマルジョンは、接着剤、紙コーティング材などの各種の用途に用いられている。
【0003】
一方、ポリ−α−アミノ酸は、固体の重合体でありながら微生物によって分解される性質を有すると共に、酸素および水を透過する性質を有し、かつ耐摩耗性を有する点で優れた特性を有するものであり、自然環境の保全の点で好適な高分子量体である。従って、このポリ−α−アミノ酸よりなるポリマー粒子またはこのポリマー粒子のエマルジョンは、上記の特性を考慮するとき、紙、樹脂、ゴム、繊維などのコーティング材;化粧品配合用粒子、診断薬用粒子、クロマトグラフ用充填材などの用途に有用である。
また、ポリ−α−アミノ酸よりなるポリマー粒子を多孔質のものとして得ることができれば、その孔内に例えば医薬、農薬、肥料、香料、紫外線吸収剤などの有効成分を内蔵または保持させることができるため、これらの分野における新しい素材として有用である。
【0004】
従来、ポリ−α−アミノ酸の製造方法としては、α−アミノ酸−N−炭酸無水物(以下、「アミノ酸−NCA」ともいう。)を、水を含有しない有機溶剤に溶解し、この状態で、アミン化合物に代表される重合開始剤を用いた均一溶液重合によって重合する方法が知られており、また、アミノ酸−NCAを溶解させた疎水性有機溶剤相と、重合開始剤を溶解させた水相とを接触させることにより、その界面においてアミノ酸−NCAを重合する方法が知られている(特開昭49−57096号公報)。
【0005】
一方、現在において、ポリ−α−アミノ酸よりなるポリマー粒子が水系媒体中に分散されてなるエマルジョンを製造する方法としては、固体のポリ−α−アミノ酸を有機溶剤に溶解する手段あるいはアミノ酸−NCAを有機溶剤中で均一重合する手段などによってポリマー溶液を調製し、このポリマー溶液に水と乳化剤とを加えて乳化し、その上で有機溶剤を除去する方法が、特公平5−13168号公報によって知られている(この方法を「再乳化法」という。)。
しかしながら、この再乳化法においては、(1)ポリマー溶液の調製、(2)水系媒体へのポリマー溶液の乳化および(3)有機溶剤の除去、という合計3段階にわたる工程を経なければ、目的とするポリ−α−アミノ酸のエマルジョンを製造することができない。
【0006】
また、ポリ−α−アミノ酸よりなるポリマー粒子を製造する方法としては、用いるアミノ酸−NCAを溶解するがその重合体であるポリ−α−アミノ酸を溶解しない有機溶剤中で、アミノ酸−NCAを重合する方法(この方法を「析出重合法」という。例えば特開昭51−87597号公報参照。)、用いるアミノ酸−NCAを溶解するがその重合体であるポリ−α−アミノ酸を溶解しない有機溶剤にアミノ酸−NCAを溶解させ、この溶液を、これに相溶しない他の有機溶剤中に分散させ、この状態で、当該アミノ酸−NCAを重合する方法(この方法を不均一重合法という。例えば特開平4−41526号公報参照。)などが知られている。
【0007】
しかしながら、上記の析出重合法においては、ポリマー粒子の粒子径の制御が困難であり、粒子径の揃ったポリマー粒子が得られない、という問題がある。また、不均一重合法においては、それぞれ特定の条件を満足する2種類の有機溶剤として、用いるアミノ酸−NCAの種類に応じて最適の有機溶剤をその都度選択することが必要となるため、その作業が煩雑であり、しかも、用いるアミノ酸−NCAの種類によっては、適当な有機溶剤を選択することができず、適用範囲が狭い、という問題がある。
また、いずれの方法においても、重合溶媒として有機溶剤が用いられるが、その理由は、モノマーであるアミノ酸−NCAが、非常に加水分解しやすいものであって水中または活性水素を有する化合物が多量に存在する条件下ではすみやかに分解するため、アミノ酸−NCAの重合それ自体は可能であっても、高い重合度が得られるまでには重合反応が進行せず、その結果、分子量が十分に大きいポリ−α−アミノ酸のポリマー粒子を生成させることが困難だからである。
【0008】
従来、重合溶媒を使用せずにポリ−α−アミノ酸よりなるポリマー粒子を製造する方法として、アミノ酸−NCAを固相のまま重合する方法が知られているが(この方法を固相重合法という。例えば、特開平3−95223号公報)、この固相重合法においては、重合開始剤が固相に均一に供給されず、生成するポリマー粒子の分子量の制御が困難であり、また、粒子径の揃ったポリマー粒子が得られない、という問題がある。
【0009】
また、上記の析出重合法、不均一重合法および固相重合法のいずれの方法においても、多孔質のポリ−α−アミノ酸よりなるポリマー粒子を製造することは困難である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、基本的に有機溶剤の使用を必要とせずに、ポリ−α−アミノ酸よりなるポリマー粒子が水中に分散されてなるエマルジョンを、直接的に、かつ工業的に有利に製造することのできる方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、粒子径分布が狭く、多孔質のポリ−α−アミノ酸よりなるポリマー粒子によるエマルジョンを工業的に有利に製造することのできる方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリ−α−アミノ酸のエマルジョンの製造方法は、重合開始剤および乳化剤を含有する水中で、α−アミノ酸−N−炭酸無水物を重合することを特徴とする。
【0012】
本発明においては、上記の方法によりポリ−α−アミノ酸のエマルジョンを製造し、このエマルジョンにおけるポリマー粒子を水から分離することにより、ポリ−α−アミノ酸のポリマー粒子が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明においては、アミノ酸−NCAを原料モノマーとして用い、必要な重合開始剤および乳化剤が存在する水中において当該アミノ酸−NCAを重合し、もってポリ−α−アミノ酸のポリマー粒子によるエマルジョンを製造する。
【0014】
本発明において、モノマーとして用いられるアミノ酸−NCAは、常温で固体状のものであれば、いずれのα−アミノ酸から導かれるものであってもよい。ただし、側鎖にカルボキシル基、水酸基、チオール基、アミノ基、グアニジル基などの官能基を有するα−アミノ酸を原料としてアミノ酸−NCAを製造する場合には、これらの官能基を適当な保護基を用いて保護した後にアミノ酸−NCAに導く必要がある場合がある。
【0015】
α−アミノ酸の具体例としては、(イ)グリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、プロリンなどの中性アミノ酸類、(ロ)グルタミン酸−γ−エステル、アスパラギン酸−β−エステルなどの酸性アミノ酸−ω−エステル類(ここでエステルとは、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステルなどを示す。)、(ハ)N−カルボベンゾキシリシン、N−カルボベンゾキシオルニチン、N−アセチルリシンなどのN−アシル塩基性アミノ酸類、(ニ)セリン、トレオニン、システィン、チロシンなどの水酸基含有α−アミノ酸のエステル類(ここでエステルとは、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステルなどを示す。)が挙げられる。
アミノ酸のうち、カルボキシ基が炭素数4以上のアルコール、置換または非置換のフェノール化合物と結合してなるエステルであるものが好ましく、例えば、水酸基含有アミノ酸エステル、酸性アミノ酸−ω−エステル類、N−アシル塩基性アミノ酸類が重合活性の点から好ましい。具体的には、グルタミン酸、アスパラギン酸、トレオニン、セリン、チロシンなどのベンジルエステル、N−カルボベンゾキシリシンが、得られるポリ−α−アミノ酸が高分子量のものとなるので好ましい。
【0016】
これらのα−アミノ酸より得られるアミノ酸−NCAは、光学活性体またはラセミ体あるいはこれらの混合物であってもよく、また、必要に応じて2種類以上組み合わせて用いることができる。また、アミノ酸−NCAは、水に添加する前に粉砕しておくこともできる。
【0017】
また、アミノ酸−NCAと重合反応媒体である水との使用割合は、アミノ酸−NCA:水の重量比で1:0.5〜1:100、好ましくは1:1〜1:50である。
【0018】
本発明において、重合開始剤は、アミノ酸−NCAの重合反応を生起させることのできる化合物であれば特に限定されるものではない。その具体例としては、(イ)メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミンなどの1級アミン類、(ロ)ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミンなどの2級アミン類、(ハ)トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミンなどの3級アミン類、(ニ)エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンなどのアルコールアミン類、(ホ)エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、トリエチレンジアミンなどのポリアミン類、その他が挙げられる。
これらの重合開始剤のうち、3級アミン類が、重合速度が大きく、得られるポリ−α−アミノ酸が高分子量のものとなるため、好ましい。
これらの重合開始剤は、単独で若しくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
重合開始剤の使用割合は、モノマーであるアミノ酸−NCAの1モルに対し、1/2〜1/5000モル、好ましくは1/5〜1/1000モルである。この範囲において重合開始剤の使用量を調節することにより、目的とする大きさの分子量を有するポリマー粒子を得ることができる。
【0020】
本発明において、乳化剤としては、用いられるアミノ酸−NCAの重合反応を阻害しないものであれば特に限定されるものではないが、特にノニオン系乳化剤が好ましい。ノニオン系乳化剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットなどが挙げられる。
これらの乳化剤は、単独で若しくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
これらのノニオン系乳化剤のうち、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルが、平均粒径が均一な粒子が得られるため好ましい。
さらに、これらのノニオン系乳化剤のうち、親水性−疎水性バランス(HLB)が5以上のものが、得られるポリ−α−アミノ酸が高分子量のものとなるので好ましく、親水性−疎水性バランスが7〜18のものがさらに好ましい。
乳化剤の種類や使用割合を変えることによって、目的とする大きさの平均粒径や粒径分布を有するポリ−α−アミノ酸のポリマー粒子を製造することができる。
【0021】
乳化剤の使用割合は、用いられるアミノ酸−NCAの1重量部に対して0.005〜100重量部であり、好ましくは0.01〜50重量部である。この乳化剤の使用割合が0.05重量部未満である場合には、生成するポリマー粒子の分子量が十分に大きなものとならないおそれがある。
【0022】
本発明においては、アミノ酸−NCAが乳化剤により安定的に分散する状態が得られる限り、重合開始剤、乳化剤およびアミノ酸−NCAの添加順序が限定されるものではない。すなわち、本発明においては、アミノ酸−NCAが加水分解する前にアミノ酸−NCAを乳化状態とすることが必要である。
【0023】
具体的には、重合開始剤および乳化剤が含有された水中に、上記のアミノ酸−NCAを添加して重合することが好ましい。このとき、水を反応器中で攪拌することが好ましく、そのために機械的に攪拌する手段、または超音波照射による手段を利用することができ、それらを併用してもよい。
このような方法によれば、モノマーであるアミノ酸−NCAが添加される水よりなる重合反応媒体においては、当該アミノ酸−NCAがそのまま直ちに重合するために必要な条件が整った状態とされているため、アミノ酸−NCAが添加されると同時にその表面から重合反応が生成するが、この重合反応は加水分解反応に対して優先的に行なわれるために加水分解反応によって重合反応が阻害されることがなく、実際上、有用なポリ−α−アミノ酸よりなるポリマー粒子が生成され、その結果、当該重合反応系はそのままポリ−α−アミノ酸のポリマー粒子によるエマルジョンとなる。
【0024】
アミノ酸−NCAの重合反応は、アミノ酸−NCAが水中の重合開始剤と接触することにより、自発的に生ずる。重合温度は、アミノ酸−NCAの種類、重合開始剤の種類によっても異なるが、通常、0〜100℃、好ましくは5〜90℃である。この重合温度を調節することによって、目的とする大きさの分子量を有するポリ−α−アミノ酸のポリマー粒子を製造することができる。なお、重合圧力は特に限定されるものではない。
重合反応中は、系を攪拌して乳化状態を保つ必要がある。この攪拌は、例えば反応器中で機械的に攪拌する手段によって行うことが好ましく、その回転数は、通常、20〜3000r.p.m.である。
【0025】
本発明の方法によればポリ−α−アミノ酸よりなるポリマー粒子のエマルジョンが得られるが、当該ポリマー粒子は、エマルジョンの状態のままで使用することもできるし、また水から分離して使用することもできる。
当該エマルジョンにおけるポリマー粒子を水から分離する手段としては、スプレードライヤーなどを用いて一挙に水を蒸発させる手段、エマルジョンを遠心分離処理することによりポリマー粒子を沈降させて分離し、得られる固形物を乾燥させる手段、当該エマルジョンを水分離膜を用いて濃縮した後に固形物を乾燥する手段、当該エマルジョンを凍結乾燥する手段などが挙げられる。
また、必要に応じて、ポリマー粒子を水などにより洗浄して乳化剤を除去することも可能である。
【0026】
このようにして製造されるエマルジョンにおけるポリ−α−アミノ酸のポリマー粒子の平均粒子径は、一般的には0.01〜100μm、好ましくは0.05〜50μmの範囲にあり、ポリマー粒子の平均粒子径の変動係数(以下、「CV値」という。)が1〜80%、好ましくは1〜50%であり、しかも、ポリマー粒子を構成するポリ−α−アミノ酸の分子量が、通常、10000〜200000と大きいものであり、その極限粘度はおよそ0.2〜2dl/gである。
【0027】
また、このようにして得られるポリ−α−アミノ酸のポリマー粒子は、基本的に多孔質のものであって、その嵩比重が0.35g/ml以下、好ましくは0.3〜0.05g/mlである。
【0028】
従って、本発明により得られるポリ−α−アミノ酸のエマルジョンおよびポリマー粒子は、例えば紙、樹脂、ゴム、繊維などのコーティング材、化粧品配合用粒子、診断薬用粒子、クロマトグラフ用充填材、医薬、農薬、肥料などのカプセル化材、その他の用途において、新しい素材として有用である。
【0029】
本発明によって得られるポリ−α−アミノ酸の粒子は、次のような方法により変性することもできる。例えば、モノマーのアミノ酸−NCAとして、グルタミン酸エステル、アスパラギン酸エステルなどの酸性アミノ酸エステルのN−炭酸無水物、またはN−カルボベンゾキシリシン、N−カルボベンゾキシオルニチンなどの塩基性アミノ酸のN−炭酸無水物を用いた場合に得られる粒子、あるいはポリマー粒子が、それらのN−炭酸無水物と中性アミノ酸のN−炭酸無水物との共重合により得られる共重合体よりなる粒子である場合には、これらの粒子表面を加水分解処理してアミノ基またはカルボキシル基を生成させることにより、粒子表面の親水化を行うことができる。また、ポリ−α−アミノ酸粒子をエタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミンなどのアルコールアミン類と反応させることにより、粒子表面の親水化を行うことができる。さらに、ポリ−α−アミノ酸粒子をエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなどのジアミン類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、またはマロン酸、コハク酸、アジピン酸などのジカルボン酸類と反応させることにより、ポリマー粒子の架橋を行うことができる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもではない。
以下の実施例におけるポリマー粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡により観察して測定したものであり、ポリマー粒子のCV値は、下記数1で表される式から算出した値を示す。また、ポリマーの極限粘度は、ジクロロ酢酸中において温度30℃で測定した値を示し、ポリマーの分子量は、下記数2で表される式であって、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタメートについては式(1)、ポリ−γ−エチル−L−グルタメートについては式(2)により算出した値を示す。さらに、ポリマー粒子の嵩比重は、JIS R6126に従い、一定の容積の容器内にポリマー粒子を一定の高さから落下させて充填した後、この充填されたポリマー粒子の重量を測定して算出した値を示す。
【0031】
【数1】
【0032】
【数2】
【0033】
〔実施例1〕
水10gに、重合開始剤としてトリエチルアミン0.144ミリモルと、乳化剤としてポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート「Tween 20」(花王株式会社製)0.1gとを加えて攪拌した。
この水中にγ−ベンジル−L−グルタメート−N−炭酸無水物(以下、「BLG−NCA」という。)の粉末0.5g(1.9ミリモル)を加え、攪拌を続けながら、室温で5時間BLG−NCAを重合することにより、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタメート(以下、「PBLG」という。)のポリマー粒子によるエマルジョンを得た。
以上において、BLG−NCAの1モルに対する重合開始剤の割合は0.076モルであた。
得られたエマルジョンを1/2量ずつ2つに分け、一方のエマルジョンをメチルアルコール中に注ぐことにより、生成したPBLGを凝固させ、乾燥した。
得られたPBLGの収率は92%であり、その極限粘度は0.35dl/g、分子量は51000であった。
また、他方のエマルジョンをそのまま凍結乾燥することにより、PBLGのポリマー粒子を得た。このポリマー粒子の平均粒子径は24μm、CV値は23%であった。また、このポリマー粒子は多孔質のものであり、嵩比重は0.14g/mlであった。
【0034】
〔実施例2〕
乳化剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン123P」(花王株式会社製)0.1gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、PBLGのポリマー粒子によるエマルジョンを得た。
得られたエマルジョンを1/2量ずつ2つに分け、一方のエマルジョンをメチルアルコール中に注ぐことにより、生成したPBLGを凝固させ、乾燥した。得られたPBLGの収率は92%であり、その極限粘度は0.43dl/g、分子量は65000であった。
また、他方のエマルジョンをそのまま凍結乾燥することにより、PBLGのポリマー粒子を得た。このポリマー粒子の平均粒子径は38μm、CV値は27%であった。また、このポリマー粒子は多孔質のものであり、嵩比重は0.16g/mlであった。
【0035】
〔実施例3〕
乳化剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマノーン3199」(花王株式会社製)0.1gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、PBLGのポリマー粒子によるエマルジョンを得た。
得られたエマルジョンを1/2量ずつ2つに分け、一方のエマルジョンをメチルアルコール中に注ぐことにより、生成したPBLGを凝固させ、乾燥した。得られたPBLGの収率は94%であり、その極限粘度は0.32dl/g、分子量は46000であった。
また、他方のエマルジョンをそのまま凍結乾燥することにより、PBLGのポリマー粒子を得た。このポリマー粒子の平均粒子径は3μm、CV値は11%であった。また、このポリマー粒子は多孔質のものであり、嵩比重は0.15g/mlであった。
【0036】
〔実施例4〕
乳化剤として、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット「レオドール440」(花王株式会社製)0.1gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、PBLGのポリマー粒子によるエマルジョンを得た。
得られたエマルジョンを1/2量ずつ2つに分け、一方のエマルジョンをメチルアルコール中に注ぐことにより、生成したPBLGを凝固させ、乾燥した。得られたPBLGの収率は97%であり、その極限粘度は0.30dl/g、分子量は43000であった。
また、他方のエマルジョンをそのまま凍結乾燥することにより、PBLGのポリマー粒子を得た。このポリマー粒子の平均粒子径は12μm、CV値は16%であった。また、このポリマー粒子は多孔質のものであり、嵩比重は0.18g/mlであった。
【0037】
〔実施例5〕
BLG−NCAの代わりにγ−エチル−L−グルタメート−N−炭酸無水物1.0g(5.0ミリモル)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、ポリ−γ−エチル−L−グルタメート(以下、「PELG」という。)のポリマー粒子によるエマルジョンを得た。
ここに、γ−エチル−L−グルタメート−N−炭酸無水物の1モルに対する重合開始剤の割合は0.029モルである。
得られたエマルジョンを1/2量ずつ2つに分け、一方のエマルジョンをメチルアルコール中に注ぐことにより、生成したPELGを凝固させ、乾燥した。得られたPELGの収率は74%であり、その極限粘度は0.46dl/g、分子量は21000であった。
また、他方のエマルジョンをそのまま凍結乾燥することにより、PELGのポリマー粒子を得た。このポリマー粒子の平均粒子径は9μm、CV値は17%であった。また、このポリマー粒子は多孔質のものであり、嵩比重は0.19g/mlであった。
【0038】
〔実施例6〕
BLG−NCAの代わりにN−ε−カルボベンゾキシ−L−リジン−N−炭酸無水物1.0g(3.26ミリモル)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、ポリ−N−ε−カルボベンゾキシ−L−リジン(以下、「PCBL」という。)のポリマー粒子によるエマルジョンを得た。
ここに、N−ε−カルボベンゾキシ−L−リジン−N−炭酸無水物の1モルに対する重合開始剤の割合は0.044モルである。
得られたエマルジョンを1/2量ずつ2つに分け、一方のエマルジョンをメチルアルコール中に注ぐことにより、生成したPCBLを凝固させ、乾燥した。得られたPCBLの収率は96%であり、その極限粘度は0.38dl/gであった。
また、他方のエマルジョンをそのまま凍結乾燥することにより、PCBLのポリマー粒子を得た。このポリマー粒子の平均粒子径は14μm、CV値は25%であった。また、このポリマー粒子は多孔質のものであり、嵩比重は0.16g/mlであった。
【0039】
〔比較例1〕
水20gに、重合開始剤としてトリエチルアミン0.072ミリモルを加えて攪拌した。これに、乳化剤を加えないままにBLG−NCA0.5gを添加し、実施例1と同様にして重合した。
重合反応の終了後、重合反応系の全部をメチルアルコール中に注ぎ、沈澱物を濾別して乾燥した。
得られたPBLGの収率は48%であり、その極限粘度は0.13dl/g、分子量は17000であった。
この例では、重合反応媒体中に乳化剤が存在しないためにBLG−NCAの加水分解反応が起こり、PBLGの収率および分子量が共に大きく低下していることが理解される。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、重合開始剤および乳化剤が含有された水中において、アミノ酸−NCAを重合するため、基本的に有機溶剤の使用を必要とせずに、ポリ−α−アミノ酸よりなるポリマー粒子が水中に分散されてなるエマルジョンを、直接的に、かつ実質的に1段階の処理によってきわめて容易に製造することができる。
また、このエマルジョンにおけるポリマー粒子を水から分離することにより、粒子径分布が狭く、多孔質のポリ−α−アミノ酸よりなるポリマー粒子を製造することができる。
Claims (1)
- 重合開始剤および乳化剤を含有する水中で、α−アミノ酸−N−炭酸無水物を重合することを特徴とするポリ−α−アミノ酸のエマルジョンの製造方法。
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JPH09183842A (ja) | 1997-07-15 |
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