まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を示す全体システム図である。
実施例1におけるFRハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEngと、フライホイールFWと、第1クラッチCL1(摩擦クラッチ)と、モータージェネレータMG(モーター)と、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RLと、右後輪RRと、を有する。なお、FLは左前輪、FRは右前輪である。
前記エンジンEngは、希薄燃焼機能を持つガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ1からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御が行われる。なお、エンジン出力軸には、フライホイールFWが設けられている。
前記第1クラッチCL1は、エンジンEngとモータージェネレータMGの間に介装された摩擦クラッチであり、第1クラッチコントローラ5からの第1クラッチ制御指令に基づいて、第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された第1クラッチ制御油圧により、スリップ締結状態を含み締結/開放が制御される。この第1クラッチCL1としては、例えば、ピストン14aを有する油圧アクチュエータ14により締結/開放が制御されるノーマルクローズの乾式単板クラッチが用いられる。
前記モータージェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータージェネレータであり、モーターコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータージェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この動作状態を「力行」と呼ぶ)、ロータがエンジンEngや駆動輪から回転エネルギを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリ4を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。なお、このモータージェネレータMGのロータは、ダンパーを介して自動変速機ATの入力軸に連結されている。
前記第2クラッチCL2は、モータージェネレータMGと左右後輪RL,RRの間に介装されたクラッチであり、ATコントローラ7からの第2クラッチ制御指令に基づいて、第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、スリップ締結とスリップ開放を含み締結/開放が制御される。なお、第1クラッチ油圧ユニット6と第2クラッチ油圧ユニット8は、自動変速機ATに付設されるAT油圧コントロールバルブユニットCVUに内蔵している。この第2クラッチCL2としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキが用いられる。
前記自動変速機ATは、例えば、前進7速/後退1速等の有段階の変速段を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える有段変速機であり、前記第2クラッチCL2は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、トルク伝達経路に配置される最適なクラッチやブレーキを選択している。そして、前記自動変速機ATの出力軸は、プロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。
このハイブリッド駆動系は、第1クラッチCL1の締結/開放状態に応じて、電気自動車走行モード(以下、「EVモード」という。)とハイブリッド車走行モード(以下、「HEVモード」という。)の2つの走行モードを有する。「EVモード」は、第1クラッチCL1を開放状態とし、モータージェネレータMGの動力のみで走行するモードである。「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態とし、エンジンEngとモータージェネレータMGの動力で走行するモードである。
次に、ハイブリッド車両の制御系を説明する。
実施例1におけるFRハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モーターコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。なお、エンジンコントローラ1と、モーターコントローラ2と、第1クラッチコントローラ5と、ATコントローラ7と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線11を介して接続されている。
前記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する。
前記モーターコントローラ2は、モータージェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報と、統合コントローラ10からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モータージェネレータMGのモーター動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモーターコントローラ2では、バッテリ4の充電状態をあらわすバッテリSOCを監視していて、このバッテリSOC情報は、モータージェネレータMGの制御情報に用いられると共に、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
前記第1クラッチコントローラ5は、油圧アクチュエータ14のピストン14aのストローク位置を検出する第1ピストンストロークセンサ15(アクチュエータストローク検出手段)からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの目標CL1トルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、第1クラッチCL1の締結/開放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVU内の第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。
前記ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と、車速センサ17と、他のセンサ・スイッチ類18からの情報を入力する。そして、Dレンジを選択しての走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点がシフトマップ上で存在する位置により最適な変速段を検索し、検索された変速段を得る制御指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVUに出力する。なお、シフトマップとは、アクセル開度と車速に応じてアップシフト線とダウンシフト線を書き込んだマップをいう。
上記自動変速制御に加えて、統合コントローラ10から目標CL2トルク指令を入力した場合、第2クラッチCL2の締結/開放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVU内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する第2クラッチ制御を行う。
前記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19と、ブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの回生協調制御指令と、他の必要情報を入力する。そして、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモーター制動力)で補うように、回生協調ブレーキ制御を行う。
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モーター回転数Nmを検出するモーター回転数センサ21と、第2クラッチ出力回転数N2outを検出する第2クラッチ出力回転数センサ22等からの情報およびCAN通信線11を介して情報を入力する。そして、エンジンコントローラ1へ目標エンジントルク指令、モーターコントローラ2へ目標MGトルク指令および目標MG回転数指令、第1クラッチコントローラ5へ目標CL1トルク指令、ATコントローラ7へ目標CL2トルク指令および目標変速段指令、ブレーキコントローラ9へ回生協調制御指令を出力する。
図2は、実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の統合コントローラ10にて実行される演算処理を示す制御ブロック図である。図3は、FRハイブリッド車両の統合コントローラ10でのモード選択処理を行う際に用いられるEV-HEV選択マップを示す図である。以下、図2及び図3に基づき、実施例1の統合コントローラ10にて実行される演算処理を説明する。
前記統合コントローラ10は、図2に示すように、目標駆動力演算部100と、モード選択部200と、目標充放電演算部300と、動作点指令部400とを有する。
前記目標駆動力演算部100では、目標駆動力マップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPとから、目標駆動力tFoOを演算する。
前記モード選択部200では、図3に示すEV-HEV選択マップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPとから、「EVモード」または「HEVモード」を目標走行モードとして選択する。但し、バッテリSOCが所定値以下であれば、強制的に「HEVモード」を目標走行モードとする。
前記目標充放電演算部300では、目標充放電量マップを用いて、バッテリSOCから目標充放電電力tPを演算する。
前記動作点指令部400では、アクセル開度APOと、目標駆動力tFoOと、目標走行モードと、車速VSPと、目標充放電電力tP等の入力情報に基づき、動作点到達目標として、目標エンジントルクと目標MGトルクと目標MG回転数と目標CL1トルクと目標CL2トルクと目標変速段を演算する。そして、目標エンジントルク指令と目標MGトルク指令と目標MG回転数指令と目標CL1トルク指令と目標CL2トルク指令と目標変速段指令を、CAN通信線11を介して各コントローラ1,2,5,7に出力する。
図4は、実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の第1クラッチCL1の完全開放モード・半クラッチモード・完全締結モードの各状態でのクラッチ概要とモード管理のためのピストンストロークに対する油圧・トルク特性を示す図である。
まず、第1クラッチCL1は、図4に示すように、フライホイール40と、プレッシャープレート41と、クラッチディスク42と、クラッチフェーシング43,44と、クラッチカバー45と、ダイヤフラムスプリング46と、スプリング支持部47と、レリーズプレート48と、ピストン14aを有する油圧アクチュエータ14と、を有して構成されている。
完全開放モード状態(=「EVモード」状態)での第1クラッチCL1は、図4の左部に示すように、プレッシャープレート41に対するダイヤフラムスプリング46からのばね力の作用が解除され、クラッチ開放状態となる。そして、モード管理のためのピストンストロークに対する油圧・トルク特性は、ピストンストロークが最大位置となり、このとき油圧は最大で、トルク(クラッチ容量)はゼロとなる。
半クラッチモード状態(=「EVモード」からのエンジン始動状態)での第1クラッチCL1は、図4の中央部に示すように、プレッシャープレート41に対するダイヤフラムスプリング46からのばね力の一部が解除され、クラッチ半締結状態となる。そして、モード管理のためのピストンストロークに対する油圧・トルク特性は、ピストンストロークが中間位置となり、このとき油圧は最大油圧より低圧で、トルク(クラッチ容量)はクラッチ滑りが出るレベルとなる。
完全締結モード状態(=「HEVモード」状態)での第1クラッチCL1は、図4の右部に示すように、プレッシャープレート41に対してダイヤフラムスプリング46からのばね力が作用し、クラッチ締結状態となる。そして、モード管理のためのピストンストロークに対する油圧・トルク特性は、ピストンストロークが最小位置となり、このとき油圧は最小で、トルク(クラッチ容量)は最大となる。
図5は、実施例1の実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の第1クラッチコントローラ5を示す制御ブロック図である。
前記第1クラッチコントローラ5(クラッチ制御手段)は、図4に示すように、ストローク補正ブロック51と、HCM RAM52と、を備えている。
前記ストローク補正ブロック51は、0タッチ点初期学習部51aと、0タッチ点常時補正部51bと、摩耗量補正部51cと、を備えている。
前記0タッチ点初期学習部51aは、CL1ストロークセンサ電圧の100ms移動平均vCL1MCST_100と、ATF油温ATFTMPと、CL1制御モードCL1MODEと、初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKを入力し、図6に示すフローチャートにしたがって0タッチ点初期学習処理を行う。そして、0タッチ点初期学習処理後、HCM RAM52の初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKを初期値0から1に書き換えると共に、初期0タッチ点0touch_ini(ストロークセンサ電圧)をHCM RAM52に格納する。
前記0タッチ点常時補正部51bは、CL1ストロークセンサ電圧の100ms移動平均vCL1MCST_100と、ATF油温ATFTMPと、CL1制御モードCL1MODEを入力し、図7に示すフローチャートにしたがって常時補正処理を行う。そして、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentを出力する。
前記摩耗量補正部51cは、CL1ストロークセンサ電圧の100ms移動平均vCL1MCST_100と、ATF油温ATFTMPと、CL1制御モードCL1MODEと、摩耗0タッチ点0touch_wearと、初期0タッチ点0touch_iniを入力し、図8に示すフローチャートにしたがって0タッチ点仮置き値0touch_wear_current_tmpと、摩耗補正条件が成立したときの0タッチ点0touch_wear_currentを用いて摩耗量補正処理を行う。そして、摩耗量補正処理によって取得したクラッチフェーシング摩耗量wearを出力すると共に、摩耗0タッチ点0touch_wearをHCM RAM52に格納する。
前記HCM RAM52(書き換え可能なメモリ)には、初期0タッチ点0touch_ini(ストロークセンサ電圧)と、摩耗0タッチ点0touch_wear(ストロークセンサ電圧)と、初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKが格納されている。
図6は、実施例1の第1クラッチコントローラ5のストローク補正ブロック51の0タッチ点初期学習部51aにて実行される0タッチ点初期学習処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップについて説明する。
ステップS601では、CL1ストロークセンサ電圧の100ms移動平均vCL1MCST_100を算出し、ステップS602へ進む。
ステップS602では、ステップS601でのvCL1MCST_100の算出に続き、初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKが立っていないか否かを判断し、Yes(f0touch_ini_OK=0)の場合はステップS603へ進み、No(f0touch_ini_OK=1)の場合は終了へ進む。
ステップS603では、ステップS602でのf0touch_ini_OK=0であるとの判断に続き、ATF油温ATFTMPが、40℃<ATFTMP<60℃(ヒス広がる側に2℃)であるか否かを判断し、Yes(40℃<ATFTMP<60℃)の場合はステップS604へ進み、No(ATFTMP≦40℃、ATFTMP≧60℃)の場合はステップS601へ戻る。ここで、40℃は学習温度下限、60℃は学習温度上限、2℃は学習温度ヒステリシスである。
ステップS604では、ステップS603での40℃<ATFTMP<60℃であるとの判断に続き、CL1制御モードCL1MODEが、CL1MODE=3、かつ、CL1MODE=2→3のエッジ検出後、2sec経過しているか否かを判断し、Yes(CL1制御モード条件成立)の場合はステップS605へ進み、No(CL1制御モード条件不成立)の場合はステップS601へ戻る。
ここで、CL1MODE=1は第1クラッチCL1の開放状態をあらわし、CL1MODE=2は第1クラッチCL1の半締結状態をあらわし、CL1MODE=3は第1クラッチCL1の締結状態をあらわす。
ステップS605では、ステップS604でのCL1制御モード条件成立との判断に続き、ステップS601で算出したCL1ストロークセンサ電圧の100ms移動平均vCL1MCST_100を、初期0タッチ点0touch_iniとし、HCM RAM52に格納してステップS606へ進む。この初期0タッチ点0touch_iniは、一度格納したら上書きしない。
ステップS606では、ステップS605での初期0タッチ点0touch_iniのメモリ格納に続き、ステップS601で算出したCL1ストロークセンサ電圧の100ms移動平均vCL1MCST_100を、摩耗0タッチ点0touch_wearとし、HCM RAM52に格納してステップS607へ進む。この摩耗0タッチ点0touch_wearは、IGN OFF時、その時の0タッチ点0touch_wear_currentに書き換える。
ステップS607では、ステップS606での摩耗0タッチ点0touch_wearのメモリ格納に続き、初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKを立て、HCM RAM52に格納して終了へ進む。
図7は、実施例1の第1クラッチコントローラ5のストローク補正ブロック51の0タッチ点常時補正部51bにて実行される常時補正処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップについて説明する。
ステップS701では、イグニッションスイッチをONにした後の経過時間をあらわすイグニッションカウント値cnt_IGNのカウントを開始し、S702へ進む。
ステップS702では、ステップS701でのcnt_IGN開始に続き、CL1ストロークセンサ電圧の100ms移動平均vCL1MCST_100を算出し、ステップS703へ進む。
ステップS703では、ステップS702でのvCL1MCST_100の算出に続き、初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKが立っているか否かを判断し、Yes(f0touch_ini_OK=1)の場合はステップS704へ進み、No(f0touch_ini_OK=0)の場合はステップS705へ進む。
ステップS704では、ステップS703でのf0touch_ini_OK=1であるとの判断に続き、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentを、摩耗0タッチ点0touch_wearとし、ステップS709へ進む。
ステップS705では、ステップS703でのf0touch_ini_OK=0であるとの判断に続き、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentを、初期値とし、ステップS706へ進む。
ステップS706では、ステップS705での0touch_current=初期値に続き、イグニッションカウント値cnt_IGNが、cnt_IGN=100msであるか否かを判断し、Yes(cnt_IGN=100)の場合はステップS707へ進み、No(cnt_IGN<100)の場合はステップS708へ進む。
ステップS707では、ステップS706でのcnt_IGN=100であるとの判断に続き、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentを、ステップS702にて算出したCL1ストロークセンサ電圧の100ms移動平均vCL1MCST_100とし、ステップS709へ進む。
ステップS708では、ステップS706でのcnt_IGN<100であるとの判断に続き、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentとして前回値を保持し、ステップS709へ進む。
ステップS709では、ステップS704,S707,S708の何れかのステップによる0タッチ点0touch_currentの設定に続き、CL1制御モードCL1MODEが、CL1MODE=3であるか否かを判断し、Yes(CL1MODE=3)の場合はステップS710へ進み、No(CL1MODE≠3)の場合はステップS712へ進む。
ステップS710では、ステップS709でのCL1MODE=3であるとの判断に続き、CL1MODE=3になってから2sec以上経過しているか否かを判断し、Yes(時間条件成立)の場合はステップS711へ進み、No(時間条件不成立)の場合はステップS712へ進む。
ステップS711では、ステップS710での時間条件成立との判断に続き、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentを、ステップS702にて算出したCL1ストロークセンサ電圧の100ms移動平均vCL1MCST_100とし、終了へ進む。
ステップS712では、ステップS709でのCL1MODE≠3との判断、あるいは、ステップS710での時間条件不成立との判断に続き、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentとして前回値を保持し、終了へ進む。
図8は、実施例1の第1クラッチコントローラ5のストローク補正ブロック51の摩耗量補正部51cにて実行される摩耗量補正処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップについて説明する。
ステップS801では、初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKが立っているか否かを判断し、Yes(f0touch_ini_OK=1)の場合はステップS803へ進み、No(f0touch_ini_OK=0)の場合はステップS802へ進む。
ステップS802では、ステップS801でのf0touch_ini_OK=0であるとの判断に続き、クラッチフェーシング摩耗量wearを、wear=0とし、終了へ進む。
ステップS803では、ステップS801でのf0touch_ini_OK=1であるとの判断に続き、摩耗量学習フラグf_wear_firstが立っているか否かを判断し、Yes(f_wear_first=1)の場合はステップS805へ進み、No(f_wear_first=0)の場合はステップS804へ進む。
ここで、摩耗量学習フラグf_wear_firstは、IGN ON後、一度でも摩耗量を学習したら立つフラグであり、IGN OFF毎にリセットされる。
ステップS804では、ステップS803でのf_wear_first=0であるとの判断に続き、摩耗補正条件が成立したときの0タッチ点0touch_wear_currentを、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentとし、ステップS805へ進む。
ステップS805では、ステップS803でのf_wear_first=1であるとの判断、あるいは、ステップS804での0touch_wear_currentの設定に続き、ATF油温ATFTMPが、40℃<ATFTMP<60℃(ヒス広がる側に2℃)であるか否かを判断し、Yes(40℃<ATFTMP<60℃)の場合はステップS806へ進み、No(ATFTMP≦40℃、ATFTMP≧60℃)の場合はステップS808へ進む。
ステップS806では、ステップS805での40℃<ATFTMP<60℃であるとの判断に続き、CL1制御モードCL1MODEが、CL1MODE=3、かつ、CL1MODE=3となってから2sec以上経過しているか否かを判断し、Yes(CL1制御モード条件成立)の場合はステップS807へ進み、No(CL1制御モード条件不成立)の場合はステップS808へ進む。
ステップS807では、ステップS806でのCL1制御モード条件成立との判断に続き、誤学習を防ぐために用いられる0タッチ点仮置き値0touch_wear_current_tmpを、CL1ストロークセンサ電圧の100ms移動平均vCL1MCST_100とし、ステップS809へ進む。
ステップS808では、ステップS805でのATF油温条件不成立との判断、あるいは、ステップS806でのCL1制御モード条件の不成立判断に続き、摩耗補正条件が成立したときの0タッチ点0touch_wear_currentとして前回値を保持し、ステップS813へ進む。
ステップS809では、ステップS807での0touch_wear_current_tmpの設定に続き、0タッチ点仮置き値0touch_wear_current_tmpが、摩耗0タッチ点0touch_wear以下であるか否かを判断し、Yes(0touch_wear_current_tmp≦0touch_wear)の場合はステップS810へ進み、No(0touch_wear_current_tmp>0touch_wear)の場合はステップS812へ進む。
ステップS810では、ステップS809での0touch_wear_current_tmp≦0touch_wearであるとの判断に続き、摩耗補正条件が成立したときの0タッチ点0touch_wear_currentを、0タッチ点仮置き値0touch_wear_current_tmpとし、ステップS811へ進む。
ステップS811では、ステップS810での摩耗補正条件が成立したときの0タッチ点0touch_wear_currentの設定に続き、摩耗量学習フラグf_wear_firstを立て、ステップS813へ進む。
ステップS812では、ステップS809での0touch_wear_current_tmp>0touch_wearであるとの判断に続き、摩耗補正条件が成立したときの0タッチ点0touch_wear_currentとして前回値を保持し、ステップS813へ進む。
ステップS813では、ステップS811あるいはステップS812あるいはステップS808に続き、クラッチフェーシング摩耗量wearを、wear=0touch_ini−0touch_wear_currentの式により算出し、終了へ進む。
すなわち、クラッチフェーシング摩耗量wearは、初期0タッチ点0touch_iniと、摩耗補正条件が成立したときの0タッチ点0touch_wear_currentの差により求められる。
次に、作用を説明する。
実施例1のFRハイブリッド車両の制御装置における作用を、「クラッチフェーシングの摩耗補正の考え方」、「第1クラッチ完全締結時の0タッチ点補正作用」、「クラッチフェーシング摩耗量補正作用」に分けて説明する。
[クラッチフェーシングの摩耗補正の考え方]
図9は、実施例1のFRハイブリッド車両の制御装置において第1クラッチCL1のピストンストロークに対するレリーズ力特性と摩耗前のトルク−ストローク特性と摩耗後のトルク−ストローク特性の一例を示す特性図である。以下、図9に基づいて、クラッチフェーシングの摩耗補正の考え方を説明する。
実施例1に示すFRハイブリッド車両の第1クラッチ制御では、第1クラッチCL1の状態をモードで管理している。そして、第1クラッチCL1が完全締結モードのとき、ストロークセンサ出力電圧を常に計測し、その値を0タッチ点とし(1演算周期で更新)、実ストロークを計算する。また、第1クラッチCL1が完全締結モード以外のときは、完全締結モード時の最終0タッチ点を使用して実ストロークを計算する。
ここで、実ストロークの計算式としては、
実ストローク[mm]=(ストロークセンサ出力電圧[V]−0タッチ点[V])×ゲイン[mm/V]
が用いられる。但し、ゲインは、ストロークセンサに固有の値である。
そこで、第1クラッチCL1が摩耗の無い新品の状態で、かつ、ストロークセンサ温度が温度ドリフトの影響がない領域に入っている時の0タッチ点を、「初期0タッチ点」として記憶しておく。この「初期0タッチ点」は、図9に示す摩耗量0[mm]のときの完全締結位置に対応する点である。
また、ホール素子を用いたストロークセンサには、温度ドリフトが存在するため、ストロークセンサ温度が異なると、実際のストロークとセンサ出力との間にずれが生じ、指令トルクに対して実伝達トルクがずれる。このため、ストロークセンサ温度が温度ドリフトの影響がない領域に入っているという条件が必要となる。
次に、第1クラッチCL1が完全締結モードで、かつ、ストロークセンサ温度が温度ドリフトの影響がない領域に入っている時の0タッチ点を、摩耗量算出用として別途記憶しておく。これを「摩耗0タッチ点」とする。この「摩耗0タッチ点」は、図9に示す摩耗量a[mm]のときの完全締結位置に対応する点であり、リアルタイム補正で計測される。
したがって、「摩耗0タッチ点」が検出されたとき、「初期0タッチ点」−「摩耗0タッチ点」により、その時のクラッチフェーシング摩耗量を算出することができる。
クラッチフェーシング摩耗量の計算式は、
摩耗量[mm]=(初期0タッチ点−摩耗0タッチ点)×ゲイン[mm/V]
が用いられる。但し、ゲインは、ストロークセンサに固有の値である。
第1クラッチCL1の制御においては、予めそのクラッチの経時変化特性(図9に示す第1クラッチCL1のピストンストロークに対するレリーズ力特性参照)を入れておき、クラッチフェーシング摩耗量(図9に示す摩耗量a)から、ダイヤフラムスプリング46の姿勢変化(=レリーズ力変化)を推定し、ダイヤフラムスプリング46の姿勢変化(=レリーズ力変化)から伝達トルク変動量を推定する。
そして、第1クラッチCL1の制御に予め入っている摩耗量0[mm]のときのトルク−ストローク特性と、摩耗量a[mm]のときのトルク−ストローク特性は、図9に示すように、異なった特性を示し、摩耗量0[mm]のときのトルク−ストローク特性を、摩耗量a[mm]のときに用いて第1クラッチCL1のストローク制御を行うと、所望の伝達トルクが得られないというように、クラッチ伝達トルクの制御精度が低下する。
つまり、「0トルク点」については、図9の摩耗量0[mm]のときのトルク−ストローク特性による「初期0タッチ点」から「0トルク点」までのストローク量よりも、図9の摩耗量a[mm]のときのトルク−ストローク特性による「摩耗0タッチ点」から「0トルク点」までのストローク量が増大する。このため、摩耗量a[mm]のときには、摩耗量a×ゲイン分だけ「0トルク点」を補正する必要がある。
また、「最大伝達トルク」については、摩耗量0[mm]のときの「0トルク点」でのレリーズ力より、摩耗量a[mm]のときの「0トルク点」でのレリーズ力が増大する。このため、摩耗量a[mm]のときには、レリーズ力変化量×ゲイン分だけ「最大伝達トルク」を補正する必要がある。
上記のように、「初期0タッチ点」と「摩耗0タッチ点」の差に基づいて、その時のクラッチフェーシング43,44の摩耗量情報を取得し、この摩耗量情報に基づいて「0トルク点」と「最大伝達トルク」の変動量を推定し、推定した変動量×ゲイン分だけ補正することで、クラッチフェーシング摩耗度合いにかかわらず、摩耗影響を排除して高いクラッチ伝達トルクの制御精度を確保するようにしている。
[第1クラッチ完全締結時の0タッチ点補正作用]
図10は、実施例1のFRハイブリッド車両での走行中におけるf0touch_ini_OK(初期0タッチ点フラグ)・IGNON_flg(イグニッションオンフラグ)・CL1MODE(CL1制御モード)・vCL1MCST_100(100ms移動平均)・0touch_current(常時補正処理によって取得した0タッチ点)の各特性の一例を示す完全締結時0タッチ点補正のタイムチャートである。以下、図7、図8、図10に基づいて、第1クラッチ完全締結時の0タッチ点補正作用を説明する。
「初期0タッチ点」の設定は、初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKが立っていない条件と、ATF油温条件と、CL1制御モード条件が共に成立すると、図6のフローチャートにおいて、ステップS601→ステップS602→ステップS603→ステップS604→ステップS605→ステップS606→ステップS607へと進む。すなわち、ステップS605では、ステップS601で算出したCL1ストロークセンサ電圧の100ms移動平均vCL1MCST_100が、初期0タッチ点0touch_iniとされ、HCM RAM52に格納される。次のステップS606では、ステップS601で算出したCL1ストロークセンサ電圧の100ms移動平均vCL1MCST_100が、摩耗0タッチ点0touch_wearの最初の格納値とされ、HCM RAM52に格納される。次のステップS607では、初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKが立てられ、HCM RAM52に格納される。
そして、次の演算処理では、初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKが立てられているため、図6のフローチャートにおいて、ステップS601→ステップS602→終了へと進み、HCM RAM52に格納された初期0タッチ点0touch_iniに関しては、一度格納されたら上書きされることはない。
次に、「摩耗0タッチ点」の設定は、初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKが立っている条件が成立すると、図7のフローチャートにおいて、ステップS701→ステップS702→ステップS703→ステップS704へと進む。すなわち、ステップS704では、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentが、摩耗0タッチ点0touch_wearとされる。一方、初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKが立っていないときで、イグニッションカウント値cnt_IGNが100msに達しないと、図7のフローチャートにおいて、ステップS701→ステップS702→ステップS703→ステップS705→ステップS706→ステップS708へと進む。すなわち、ステップS705では、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentが初期値とされ、ステップS708では、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentとして前回値が保持される。また、初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKが立っていないときで、イグニッションカウント値cnt_IGNが100msに達すると、図7のフローチャートにおいて、ステップS701→ステップS702→ステップS703→ステップS705→ステップS706→ステップS707へと進む。すなわち、ステップS707では、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentが、ステップS702にて算出したCL1ストロークセンサ電圧の100ms移動平均vCL1MCST_100とされる。
そして、CL1制御モード条件が不成立であると、図7のフローチャートにおいて、ステップS709→(ステップS710→)ステップS712へと進む。すなわち、ステップS712では、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentとして前回値が保持される。一方、CL1制御モード条件が成立であると、図7のフローチャートにおいて、ステップS709→ステップS710→ステップS711へと進む。すなわち、ステップS711では、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentが、ステップS702にて算出されたCL1ストロークセンサ電圧の100ms移動平均vCL1MCST_100とされる。
以下、図10のタイムチャートにより常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentの学習作用を説明する。
イグニッションオンの時点t1から100msec経過した時刻t2までの間は、0タッチ点0touch_currentが初期値とされる。そして、時刻t2では、0タッチ点0touch_currentがCL1ストロークセンサ電圧の100ms移動平均vCL1MCST_100とされ、イグニッションオン後、最初に0touch_current学習が行われるまで、前回値が保持される。
そして、CL1制御モードCL1MODEが、CL1MODE=3となる時刻t3から2sec経過した時刻t4になると、イグニッションオン後、最初に0touch_current学習が開始される。
なお、初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKが立っている場合には、イグニッションオン後、最初に0touch_current学習が開始されるまでの間(時刻t1〜時刻t4)は、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentが、摩耗0タッチ点0touch_wearとされる。
そして、時刻t4から時刻t5での0touch_current学習では、0タッチ点0touch_currentが、時刻t4から時刻t5までのCL1ストロークセンサ電圧の100ms移動平均vCL1MCST_100とされる。この0touch_current学習後、次に0touch_current学習が行われるまで、前回値が保持される。
そして、CL1制御モードCL1MODEが、CL1MODE=3となる時刻t6から2sec経過した時刻t7になると、イグニッションオン後、2回目の0touch_current学習が開始されることになる。
[クラッチフェーシング摩耗量補正作用]
図11は、実施例1のFRハイブリッド車両での走行中におけるf0touch_ini_OK(初期0タッチ点フラグ)・f_wear_first(摩耗量学習フラグ)・vCL1MCST_100(100ms移動平均)・0touch_wear(摩耗0タッチ点)・wear(クラッチフェーシング摩耗量)の各特性の一例を示す摩耗量補正のタイムチャートである。以下、図8及び図11に基づいて、クラッチフェーシング摩耗量補正作用を説明する。
初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKが立っていないと、図8のフローチャートにおいて、ステップS801→ステップS802→終了へと進み、ステップS802では、クラッチフェーシング摩耗量wearが、wear=0とされる。
初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKが立っていて、かつ、摩耗量学習フラグf_wear_firstが立っていないと、図8のフローチャートにおいて、ステップS801→ステップS803→ステップS804へと進み、ステップS804では、摩耗補正条件が成立したときの0タッチ点0touch_wear_currentが、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentとされる。
そして、ATF油温条件とCL1制御モード条件が成立しないと、図8のフローチャートにおいて、ステップS801→ステップS803→(ステップS804)→ステップS805→(ステップS806)→ステップS808へと進む。すなわち、ステップS808では、摩耗補正条件が成立したときの0タッチ点0touch_wear_currentとして前回値が保持される。
一方、ATF油温条件とCL1制御モード条件が共に成立すると、図8のフローチャートにおいて、ステップS801→ステップS803→(ステップS804)→ステップS805→ステップS806→ステップS807へと進む。すなわち、ステップS807では、誤学習を防ぐために用いられる0タッチ点仮置き値0touch_wear_current_tmpが、CL1ストロークセンサ電圧の100ms移動平均vCL1MCST_100とされる。
そして、0タッチ点仮置き値0touch_wear_current_tmpが、摩耗0タッチ点0touch_wear以下である場合は、ステップS807から、ステップS809→ステップS810→ステップS811→ステップS813→終了へと進む。すなわち、ステップS810では、摩耗補正条件が成立したときの0タッチ点0touch_wear_currentが、0タッチ点仮置き値0touch_wear_current_tmpとされる。次のステップS811では、摩耗量学習フラグf_wear_firstが立てられる。次のステップS813では、クラッチフェーシング摩耗量wearが、wear=0touch_ini−0touch_wear_currentの式により算出される。
ステップS812では、ステップS809での0touch_wear_current_tmp>0touch_wearであるとの判断に続き、摩耗補正条件が成立したときの0タッチ点0touch_wear_currentとして前回値を保持し、ステップS813へ進む。
一方、0タッチ点仮置き値0touch_wear_current_tmpが、摩耗0タッチ点0touch_wearを超えている場合は、ステップS807から、ステップS809→ステップS812→ステップS813→終了へと進む。すなわち、ステップS812では、摩耗補正条件が成立したときの0タッチ点0touch_wear_currentとして前回値が保持される。次のステップS813では、クラッチフェーシング摩耗量wearが、wear=0touch_ini−0touch_wear_currentの式により算出される。
以下、図11のタイムチャートにより常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentの学習作用と摩耗量補正作用を説明する。
まず、時刻t1までは初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKが立っていないため、クラッチフェーシング摩耗量wearが、wear=0とされる。
そして、初期0タッチ点フラグf0touch_ini_OKが立った時刻t1から摩耗量学習フラグf_wear_firstが立つ時刻t2までは、摩耗0タッチ点0touch_wearとして前回値が保持され、クラッチフェーシング摩耗量wearが、wear=0touch_ini−0touch_wearの式により演算される。
そして、摩耗量学習フラグf_wear_firstが立っている間は、時刻t2と時刻t4と時刻t6において、それぞれ摩耗0タッチ点0touch_wearが学習補正される。なお、時刻t2〜時刻t3、時刻t4〜時刻t5、時刻t6〜時刻t7は、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentの学習値が出力される。また、この間におけるクラッチフェーシング摩耗量wearは、wear=0touch_ini−0touch_wear_currentの式により演算される。
そして、時刻t8において、イグニッションオフ後、再度、イグニッションオンの操作がなされると、摩耗量学習フラグf_wear_firstがリセットされ、摩耗量学習フラグf_wear_firstが再び立てられる時刻t9までは、クラッチフェーシング摩耗量wearは、前回値が保持されたままとされる。
そして、時刻t9から時刻t10までの間は、常時補正処理によって取得した0タッチ点0touch_currentの学習値が出力されるが、時刻t9において、0touch_wear_current_tmp>0touch_wearであるため、時刻t9では、クラッチフェーシング摩耗量wearの学習補正による書き換えが行われることなく、前回値が保持されたままとなる。
次に、効果を説明する。
実施例1のFRハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) エンジンEngとモーター(モータージェネレータMG)の間に摩擦クラッチ(第1クラッチCL1)を介装し、走行モードとして、前記摩擦クラッチ(第1クラッチCL1)を開放した電気自動車走行モード(「EVモード」)と前記摩擦クラッチ(第1クラッチCL1)を締結したハイブリッド車走行モード(「HEVモード」)を有する駆動系と、前記摩擦クラッチ(第1クラッチCL1)を制御指令による動作で締結/開放するクラッチアクチュエータ(油圧アクチュエータ14)と、前記クラッチアクチュエータ(油圧アクチュエータ14)の動作量であるストローク値に基づいて、クラッチ締結/開放を制御するクラッチ制御手段(第1クラッチコントローラ5)と、を備えたハイブリッド車両(FRハイブリッド車両)の制御装置において、前記クラッチアクチュエータ(油圧アクチュエータ14)のストローク値を検出するアクチュエータストローク検出手段(ピストンストロークセンサ15)を設け、前記クラッチ制御手段(第1クラッチコントローラ5)は、クラッチ完全締結時のストローク値を、クラッチ締結/開放制御の基準点とし、クラッチ完全締結時、前記アクチュエータストローク検出手段(ピストンストロークセンサ15)によりリアルタイムで基準点を計測し、計測結果に基づき制御上の基準点を補正する。このため、摩擦調整機構を用いることなく、摩擦クラッチ(第1クラッチCL1)の摩耗進行に対しリアルタイムで摩耗補正を行うことにより、摩擦クラッチ(第1クラッチCL1)の締結/開放の制御精度を向上させることができる。
(2) 前記クラッチ制御手段(第1クラッチコントローラ5)は、前記摩擦クラッチ(第1クラッチCL1)のクラッチフェーシング摩耗前で、かつ、クラッチ完全締結モードで計測した基準点を初期0タッチ点0touch_iniとして記憶し、クラッチ完全締結モードでリアルタイムに計測した基準点を摩耗0タッチ点0touch_wearとして取得し、初期0タッチ点0touch_iniと摩耗0タッチ点0touch_wearの差に基づいてクラッチフェーシング摩耗量wearを算出する。このため、摩擦クラッチ(第1クラッチCL1)の経時劣化によるクラッチフェーシング摩耗量wearの程度に応じたクラッチ特性の変化を把握することができる。
(3) 前記クラッチ制御手段(第1クラッチコントローラ5)は、前記摩擦クラッチ(第1クラッチCL1)の制御に使用されるトルク−ストローク特性を、算出したクラッチフェーシング摩耗量wearにより補正する。このため、摩擦クラッチ(第1クラッチCL1)の締結/開放制御において、ストローク値に対応するクラッチ伝達トルクの制御精度の向上を図ることができる。
(4) 前記クラッチ制御手段(第1クラッチコントローラ5)は、算出したクラッチフェーシング摩耗量wearにより、0トルク点変動量と最大伝達トルク変動量を推定し、前記摩擦クラッチ(第1クラッチCL1)の制御に使用されるトルク−ストローク特性の0トルク点と最大伝達トルクを、推定した変動量の分だけ補正する。このため、摩擦クラッチ(第1クラッチCL1)が完全締結モード状態ばかりでなく、完全締結モード以外のモード状態を含め、クラッチ締結/開放制御に使用されるトルク−ストローク特性を、クラッチフェーシング摩耗量wearに応じて精度良く補正することができる。
(5) 前記クラッチアクチュエータは、ピストン14aを有する油圧アクチュエータ14であり、前記アクチュエータストローク検出手段は、温度ドリフトが存在するピストンストロークセンサ15であり、前記クラッチ制御手段(第1クラッチコントローラ5)は、温度ドリフトの影響がない温度領域にあるとき、前記ピストンストロークセンサ15により基準点のストローク値を計測する。このため、温度ドリフトが存在するピストンストロークセンサ15を用いながらも、温度ドリフトの影響を受けない精度の良い基準点のストローク値情報を取得することができる。
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、摩擦クラッチとして、ノーマルクローズの乾式単板クラッチによる第1クラッチCL1の例を示した。しかし、摩擦クラッチとしては、例えば、ノーマルオープンの湿式多板クラッチであっても良い。
実施例1では、クラッチフェーシング摩耗量wearにより、0トルク点変動量と最大伝達トルク変動量を推定し、第1クラッチCL1の制御に使用されるトルク−ストローク特性の0トルク点と最大伝達トルクを、推定した変動量の分だけ補正する例を示した。しかし、クラッチフェーシング摩耗量wearを算出することなく、第1クラッチCL1の完全締結モードの時の基準点である0タッチ点のみを補正するような例としても良い。