JP2014213815A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】目標クラッチトルク演算部は、エンジン始動処理の実行時に、第2クラッチの締結状態に基づいて余裕代トルクTyoを変更する余裕代トルク設定処理を実行し、かつ、余裕代トルクTyoを、第2クラッチの非スリップ時には、両クラッチのばらつきトルクTba1、Tba2を合算した値とし、第2クラッチの補正未完了スリップ時には、第1クラッチのばらつきトルクTba1に目標駆動トルクtFo0とモータの駆動トルクとの偏差に応じたトルク加算値αを加算した値とし、第2クラッチの補正完了スリップ時には、第1クラッチのばらつきトルクTba1に設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置とした。
【選択図】図11
Description
エンジン始動処理時に、モータ上限トルクと、各クラッチのトルク容量の合力と、の間に、ばらつきトルクに基づいて設定された余裕代トルクを確保し、トルク容量の合力がモータ上限トルクを超えないようにする始動時トルク処理を実行するトルク容量制御部が、エンジン始動処理の実行時に、第2クラッチの締結状態に基づいて、余裕代トルクを変更する余裕代トルク設定処理を実行し、
かつ、この余裕代トルク設定処理では、前記第2クラッチの非スリップ時には、前記余裕代トルクを、両クラッチのばらつきトルクを合算した値とし、前記第2クラッチがスリップ状態で補正未完了の補正未完了スリップ時には、余裕代トルクを、第1クラッチのばらつきトルクに、目標駆動トルクとモータの駆動トルクとの偏差に応じたトルク加算値を加算した値とし、前記第2クラッチがスリップ状態で補正完了の補正完了スリップ時には、余裕代トルクを、第1クラッチのばらつきトルクに設定するようにしたことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置とした。
これにより、余裕代トルクを、常に、両クラッチのばらつき分のトルクを合算した値とした従来技術よりも、小さく抑えることが可能となる。
したがって、モータ上限トルクから余裕代トルクを差し引いて得られるモータ出力可能最大値を、従来よりも大きく確保可能となり、その分、加速上昇あるいはクランキング時間の短縮を図ることが可能となる。
実施の形態1におけるハイブリッド車両の制御装置の構成を、「パワートレーン系構成」、「制御システム構成」、「統合コントローラの構成」、「統合制御演算処理構成」、に分けて説明する。
図1は、実施の形態1の制御装置が適用されたハイブリッド車両のパワートレーン系を示す。以下、図1に基づき、パワートレーン系構成を説明する。
実施の形態1のハイブリッド車両のパワートレーン系は、図1に示すように、エンジン1と、モータジェネレータ2(モータ)と、自動変速機3と、第1クラッチ4と、第2クラッチ5と、ディファレンシャルギア6と、タイヤ7(駆動輪)と、を備えている。
モータジェネレータ2は、その出力軸と自動変速機3の入力軸とが連結される。
自動変速機3は、複数段の変速段を有する変速機であり、その出力軸にディファレンシャルギア6を介してタイヤ7、7が連結される。この自動変速機3は、車速VSPとアクセル開度APOに応じて変速段を自動選択する自動変速、または、ドライバーの選択する変速段を選択するマニュアル変速を行う。
図2は、実施の形態1の制御装置が適用されたハイブリッド車両の制御システムを示す。以下、図2に基づいて、制御システム構成を説明する。
実施の形態1の制御システムは、図2に示すように、統合コントローラ20と、エンジンコントローラ21と、モータコントローラ22と、インバータ8と、バッテリ9と、第1ソレノイドバルブ14と、第2ソレノイドバルブ15と、アクセル開度センサ17と、CL1ストロークセンサ23(図1参照)と、SOCセンサ16と、変速モード選択スイッチ24と、を備えている。
図3は、実施の形態1の統合コントローラ20を示す演算ブロック図である。以下、図3〜図5に基づいて、統合コントローラ20の構成を説明する。なお、以下に説明する制御は、たとえば、10msecごとに繰り返し実行される。
図6は、実施の形態1の統合コントローラ20にて実行される統合制御演算処理の流れを示す。以下、図6に基づいて、統合制御演算処理構成を説明する。なお、この統合制御演算処理は、たとえば、10msecごとに繰り返し実行される。
すなわち、ステップS04では、目標走行モード演算部202(図3参照)により目標駆動トルク、バッテリ9のSOC、アクセル開度APO、車速VSP、車両の勾配等から図5の走行モードマップを参照し、EV走行モード、HEV走行モード又はWSC走行モードのいずれかを選択する。
また、このモード選択により、「EVモード」から「HEVモード」または「WSCモード」へのモード遷移を選択した場合にエンジン始動を実施する。
なお、このエンジン始動時の目標モータトルクtTmは、例えば、バッテリSOCからモータジェネレータ2の出力可能最大トルクを推定し、このモータ出力可能最大トルクから、予め任意に設定しておいた車輪駆動用最大トルクを差し引いて求めることができる。
ここで、目標クラッチトルク演算部205における目標第2クラッチトルク容量tTcl2のフィードバック補正について説明する。
このフィードバック補正は、例えば、特開2007−331534号公報などにより公知の補正を用いるものであり、その補正の手法自体は、本願の特徴ではないため、簡単に説明する。
フィードフォワード(位相)補償演算部31では、フィードフォワード(位相)補償器を用いて、基本第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTcl2baseに位相補償を施し、フィードフォワード制御用の第2クラッチ伝達トルク容量目標値Tcl2ffを演算する。
さらに、車輪駆動トルク目標値tTdと、車両慣性モーメントJoと、変速比Gmと、最終減速比Gfとに基づき、第2クラッチ5のクラッチ出力側回転数目標値tNcl2oを下記式(1)により求める。
tNcl2o={(Gm・Gf)2 /Jo}×(1/s)×tTd ・・・(1)
第2クラッチ出力側回転数規範値演算部33は、第2クラッチ5の規範モデルGcl2ref(s)にクラッチ出力側回転数目標値tNcl2oを通して、この規範モデルに一致させるための第2クラッチ出力側回転数規範値Ncl2orefを演算する。
Ncl2oref=Gc2ref(s)×tNcl2o
={1/(τcl2ref・s+1)}×tNcl2o ・・・(2)
なお、τcl2refは第2クラッチ制御用規範応答時定数である。
Tcl2FB={Kcl2p+(Kcl2i/s)}・Ncl2oerr ・・・(3)
なお、Kcl2pは比例制御ゲイン、Kcl2iは積分制御ゲインである。
また、このフィードバック制御に基づいて、上記第2クラッチ出力側回転数偏差Ncl2oerrが相対的に大きく補正が完了していない場合は、目標駆動トルクtFo0と目標モータトルクtTmとの偏差も大きい。一方、補正が完了して上記第2クラッチ出力側回転数偏差Ncl2oerrが小さくなると、目標駆動トルクtFo0と目標モータトルクtTmとの偏差も小さくなる。
次に、目標クラッチトルク容量制御部212にてエンジン始動時の目標両クラッチトルク容量tTcl1、tTcl2を演算するのに伴い、その合算値が、モータ上限トルクを超えないように設定する始動時トルク処理について説明する。
すなわち、本実施の形態1では、モータ上限トルクから、両クラッチ4,5のばらつきトルクTba1、Tba2に基づく余裕代トルクTyoを差し引いた値を、目標両クラッチトルク容量tTcl1、tTcl2として使用可能な使用可能モータトルクとしている。
さらに、本実施の形態1では、余裕代トルクTyoを、第2クラッチ5のフィードバック補正の進行状況に応じて、可変としている。以下に、その余裕代トルクTyoを可変とするための処理を、図9の目標第2クラッチトルク容量tTcl2を決定する演算処理の流れを示すフローチャートに基づいて説明する。
すなわち、第2クラッチ5では、出力側はEV走行中の回転数を維持しつつ、クランキング相当分だけ、第2クラッチ5をスリップさせる。このため、入力回転数は、図10に示すように、エンジン始動時には、EV走行中の回転数に対して第2クラッチ5のスリップ量の分だけ増加する。
また、入力回転数としては、EV時の回転数にスリップ回転数を加えた目標モータ回転数tNmを用いる。ただし、CL1アウトプット回転センサ11が検出する第2クラッチ5の入力回転数(実モータ回転数rNm)が目標モータ回転数tNmよりも大きくなった場合は、実モータ回転数rNmを用いる。
この余裕代トルクTyoは、第2クラッチ5の締結状態に応じて可変としている。すなわち、余裕代トルクTyoを、非スリップ時、補正未完了スリップ時、補正完了スリップ時で、それぞれ異なる設定を行なう。
また、補正未完了スリップ時は、第2クラッチトルク容量補正演算部35によるフィードバック補正が完了していない状態である。この場合、余裕代トルクTyoとして、第1クラッチ4のばらつきトルクTba1に、トルク加算値Tαを加算する。このトルク加算値Tαは、目標駆動トルクtFo0とモータ駆動トルクTmとの偏差に応じ、偏差が大きいほど大きな値とするとともに、第2クラッチ5のばらつきトルクTba2よりも小さな値に設定する。これにより、余裕代トルクTyoを小さくできる。
そして、補正完了スリップ時には、上記フィードバック補正が完了した場合である。この場合、余裕代トルクTyoとして、第1クラッチ4のばらつきトルクTba1のみを用いる。
なお、目標第2クラッチトルク上限値tTcl2maxは、図11に示すように、モータ上限トルクから、目標第1クラッチトルク容量tTcl1と余裕代トルクTyoとを差し引いた値とする。
モータ上限トルクは、モータジェネレータ出力可能最大トルクとモータトルク許容上限値との小さい方を選択(セレクトロー)して設定する。ここで、モータジェネレータ出力可能最大トルクは、理論上あらかじめ設定されたモータジェネレータトルクマップに基づいてモータ回転数Nmに応じて設定される(モータ回転数Nmが上昇するにつれてモータ駆動トルクTmは低下する)。モータトルク許容上限値は、バッテリSOCやモータジェネレータ2の制御系も含む発熱などによって制限される上限値である。
目標第2クラッチトルク容量tTcl2および目標第1クラッチトルク容量tTcl1は、上述のように、図11の余裕代トルク特性図に示すように決定することができる。すなわち、目標第2クラッチトルク容量tTcl2は、上述の始動時トルク処理における余裕代トルク設定処理により決定した目標第2クラッチトルク上限値tTcl2maxを超えない範囲で決定している。また、目標第1クラッチトルク容量tTcl1は、例えば、所定時間内にエンジンの始動が完了するために最低限必要なトルクに設定している。
トルク配分部101には、上述のようにして決定された目標第1クラッチトルク容量tTcl1、目標第2クラッチトルク容量tTcl2の配分を、エンジン回転数Neに基づいて変更する、F/F補正を行う。
図示のモータ使用可能トルクは、前述のように、モータ上限トルクから余裕代トルクTyoを差し引いた値である。
このモータ使用可能トルクにおいて、まず、エンジン始動に必要なトルクであるクランキング初期トルクTestart1、クランキング可能トルクTestart2を確保し、その残りを目標第2クラッチトルク配分量とする。
一方、クランキング可能トルクTestart2は、エンジン1が回転を始めて以降にクランキングに必要なトルクに設定されている。
Ncl2iref=(1/Jcl2is)×(Tm_FB_ON−Tcl1ES−Tcl2ES) (4)
ただし、Jcl2iは、モータ(入力軸)周りの慣性モーメントである。
そして、入力軸回転数(計測値)Ncl2iと入力軸回転数規範値Ncl2irefとの偏差Ncl2ierrに対し、下記式(5)に示す特性のフィルタ処理を施し、クラッチトルク容量補正値の総和であるクラッチトルク容量合算補正値TclESHを演算する。
TclESH={Jcl2is/(τh・s+1)}×(Ncl2oref−Ncl2i) (5)
ただし、τhはクラッチトルク容量補正値演算用フィルタ時定数である。
Tcl1ESB=KDIST_FB×TclESH (6)
Tcl2ESB=(1−KDIST_FB)×TclESH (7)
ここで、上式におけるKDIST_FBはクラッチトルク容量補正値の配分比を決める定数であり、クラッチトルク容量補正値の符号やアクセル開度速度ΔApoにより決定する。実際には例えば図15に示すマップに基づき決定する。
ここで、上下限制限処理部104における上下限制限処理について説明する。
1)最終目標第1クラッチトルク容量Tcl1ES
1−1)Tcl1ESB−TclESH<TESである場合、
Tcl1ES=TES (8)
1−2)それ以外
Tcl1ES=Tcl1ESB−Tcl1ESH (9)
なお、TESは、所定時間内にエンジンの始動が完了するために最低限必要なトルク、すなわち、エンジン始動下限トルクTESminであり、予め実験などにより求めた値を設定する。このエンジン始動下限トルクTESminを設定する部分が、エンジン始動可能下限トルク演算部に相当する。
2)最終目標第2クラッチトルク容量Tcl2ES
2−1)Tcl2ESB−TclESH>tFo0である場合、
Tcl2ES=tFo0 (10)
2−2)それ以外
Tcl2ES=Tcl2ESB−Tcl2ESH (11)
次に、上下限制限処理部104における再配分処理について説明する。
1)最終目標第1クラッチトルク容量Tcl1ESが下限制限された場合
制限量「TES−(Tcl1ESB−Tcl1ESH)」を上下限制限後の最終目標第2クラッチトルク容量Tcl2ESから減算し、これを最終目標第2クラッチトルク容量Tcl2ESとする。
2)最終目標第2クラッチトルク容量Tcl2ESが上限制限された場合
制限量「tFo0−(Tcl2ESB−Tcl2ESH)」を上下限制限後の最終第1クラッチトルク容量指令値Tcl1ESに加算し、これを最終第1クラッチトルク容量指令値Tcl1ESとする。
次に、実施の形態1の作用を説明する。
(比較例)
本実施の形態1の作用を説明するのにあたり、まず、実施の形態のように、図7のフローチャートに示す余裕代トルクTyoの設定処理を実施しない比較例の動作例を図16により説明する。
この説明にあたり、図13に示す構成によりトルク配分処理を実行しない場合と、実行した場合とに分けて説明する。
まず、トルク配分処理を実行しない場合を図16に基づいて説明する。
この動作例では、エンジン始動開始時点の前から、エンジン始動によるショック軽減のために、第2クラッチ5をスリップさせている。
したがって、このスリップに伴う図7の演算ブロック図に示す構成によるフィードバック補正に基づいて、第2クラッチ出力側回転数規範値Ncl2orefと、第2クラッチ出力側回転数検出値Ncl2oとの偏差(クラッチ出力側回転数偏差)Ncl2oerrが0となるように制御される。
したがって、余裕代トルクTyoとして、図11、図12において(3)として示す補正完了時に用いる第1クラッチ4のばらつきトルクTba1のみが用いられる。
よって、モータ駆動トルクTmは、図16において二点鎖線により示すように、モータ上限トルクに近づき、その結果、車両前後加速度(前後G)の低下も、二点鎖線により示すように、比較例よりも抑えることが可能となる。
次に、図13の演算ブロック図に示す構成により、使用可能モータトルクの範囲内で、各クラッチ容量Tcl1,Tcl2の配分を行った場合について説明する。
したがって、最終目標第1クラッチトルク容量Tcl1ESは、配分を行わない場合の二点鎖線で示すものに対して、同図の実線により示すように、低下される。なお、この場合、下限制限される。
また、モータ駆動トルクTmは、モータ上限トルクの近傍まで使い切っているが、最終目標第1クラッチトルク容量Tcl1ESを低下させているため、スリップ状態を維持することができる。
以上のように、モータ駆動トルクTmを使い切って良好な加速を得ることができる。
実施の形態1のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
a)実施の形態1のハイブリッド車両の制御装置は、
駆動源としてのエンジン1およびモータジェネレータ2と、エンジン1とモータジェネレータ2との間に伝達トルクを変更可能に設けられた第1クラッチ4と、モータジェネレータ2と駆動輪との間に伝達トルクを変更可能に設けられた第2クラッチ5とを備え、モータジェネレータ2のみの駆動力を前記駆動輪に伝達するEVモードと、エンジン1およびモータジェネレータ2の駆動力を駆動輪としてのタイヤ7に伝達するHEVモードとを形成可能なハイブリッド駆動系と、
運転者の操作および車両状態に基づいて車両の目標駆動トルクtFo0を演算する目標駆動トルク演算部201と、
EVモードでの走行中に、エンジン始動判断がなされると、第1クラッチ4を締結させるとともに第2クラッチ5をスリップさせるクラッチトルク容量制御と、モータ2の駆動力を、エンジン1をクランキングさせるクランキングトルクおよび目標駆動トルクtFo0に応じて制御するモータトルク制御と、を実行して走行しながらエンジン1を始動させるエンジン始動処理を実行する制御手段としての統合コントローラ20と、
統合コントローラ20に含まれ、第1クラッチ4および第2クラッチ5の目標トルク容量を演算し、かつ、エンジン始動処理時に、モータジェネレータ2の出力可能なモータ上限トルクと、各クラッチ4,5のトルク容量の合力と、の間に、両クラッチ4,5のトルク容量のばらつき分であるばらつきトルクに基づいて設定された余裕代トルクTyoを確保し、前記トルク容量の合力が前記モータ上限トルクを超えないようにする始動時トルク処理(図9の処理)を実行するトルク容量制御部としての目標クラッチトルク演算部205と、
このトルク容量制御部としての目標クラッチトルク演算部205に含まれ、第2クラッチ5のスリップ時に、第2クラッチ出力回転数に基づいて第2クラッチ5の目標トルク容量をフィードバック補正する第2クラッチトルク容量補正値演算部35と、
を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
目標駆動トルクtFo0とモータ2の駆動トルクとに基づいて、両者の偏差があらかじめ設定された完了判定閾値未満となった場合に、目標第2クラッチトルク容量補正部35によるフィードバック補正が完了状態であるか否かを判定する補正完了判定手段(S102の処理に含まれる)を備え、
トルク容量制御部としての目標クラッチトルク演算部205は、エンジン始動処理の実行時に、第2クラッチ5の締結状態に基づいて、余裕代トルクTyoを変更する余裕代トルク設定処理を実行し、
かつ、この余裕代トルク設定処理では、第2クラッチ5の非スリップ時には、余裕代トルクTyoを、第1クラッチ4および第2クラッチ5のばらつきトルクTba1、Tba2を合算した値とし、第2クラッチ5がスリップ状態であり、かつ、補正完了判定手段が補正未完了と判定した補正未完了スリップ時には、余裕代トルクTyoを、第1クラッチ4のばらつきトルクTba1に、目標駆動トルクtFo0とモータ2の駆動トルクとの偏差に応じたトルク加算値αを加算した値とし、第2クラッチ5がスリップ状態であり、かつ、補正完了判定手段が補正完了と判定した補正完了スリップ時には、余裕代トルクTyoを、第1クラッチ4のばらつきトルクTba1に設定することを特徴とする。
このように、エンジン始動時のモータ上限トルクに対する余裕代トルクTyoを、第2クラッチ5の締結状態に応じ、非スリップ時と、補正未完スリップ時と、補正完了スリップ時と、で可変とした。さらに、非スリップ時の余裕代トルクTyoを、両クラッチ4,5のばらつきトルクTba1、Tba2を合算した値とした。これに対し、補正未完スリップ時には、余裕代トルクTyoを、第1クラッチ4のばらつきトルクTba1に、目標駆動トルクtFo0とモータ2の駆動トルクとの偏差に応じたトルク加算値αを加算し、補正完了スリップ時には、余裕代トルクTyoを、第1クラッチ4のばらつきトルクTba1とした。
これにより、余裕代トルクTyoを、常に、両クラッチ4,5のばらつき分のトルクを合算した値とした従来技術よりも、小さく抑えることが可能となる。
したがって、モータ上限トルクから余裕代トルクTyoを差し引いて得られるモータ出力可能最大値(モータ使用可能トルク)を、従来よりも大きく確保可能となり、その分、加速上昇あるいはクランキング時間の短縮を図ることが可能となる。
モータ上限トルクを演算するモータ上限トルク演算部(図9のS101の処理を行なう部分)は、目標モータ回転数tNmに、第2クラッチ5のスリップ回転数を加えた値と、モータジェネレータ2の回転数を検出する回転数検出手段としてのCL1アウトプット回転センサ11が検出する実モータ回転数rNmとの大きいほうの値に基づいてモータ上限トルクを演算することを特徴とする。
目標モータ回転数tNmと実モータ回転数rNmとの大きいほうの値を入力回転数としてモータ上限トルクを演算するため、エンジン始動中の回転上昇に伴うパワー制限によるモータトルク低下に対応して、モータ上限トルクを適正に設定することができる。よって、両クラッチトルクがモータ上限トルクを超えることによる運転性悪化を防止できる。
トルク容量制御部としての目標クラッチトルク演算部205は、目標第2クラッチトルク容量tTcl2の上限である目標第2クラッチトルク上限値tTcl2maxを設定する上限制限部(ステップS103の処理を実行する部分)を備え、
この上限制限部は、モータ上限トルクから、余裕代トルクTyoと目標第1クラッチトルク容量tTcl1とを差し引いた値を、目標第2クラッチトルク上限値tTcl2maxとすることを特徴とする。
したがって、エンジン始動時のスリップ制御でモータトルクの飽和により第2クラッチ5が締結される不具合の発生を抑制でき、これにより、良好な運転性を確保できる。
制御手段としての統合コントローラ20は、両クラッチ4,5の目標トルク容量の合算値と、回転数制御用モータトルク指令値Tm_FB_ONと、実モータ回転数rTm(入力軸回転数Ncl2i)と、を入力し、回転数制御用モータトルク指令値Tm_FB_ONと各目標トルク容量に基づいて求めたモータ回転数規範値Ncl2iと、実モータ回転数rTm(入力軸回転数Ncl2i)との差分が小さくなるようにフィードバック補正を行うクラッチトルク補正値演算部102を備えていることを特徴とする。
クラッチトルク補正値演算部102にてリアルタイムの補正を行うのにあたり、上記a)のように、第2クラッチ5の補正状態に応じて余裕代トルクTyoを設定し、各クラッチ4,5に対する制御量を設定するため、この補正の負担を軽減できる。
モータ使用可能トルクの範囲内で、目標第1クラッチトルクtTcl1、目標第2クラッチトルクtTcl2の配分を運転状況に応じて可変とした。
したがって、第1クラッチ4に優先的に配分した場合は、始動時間の短縮を図ることが可能である。一方、第2クラッチ5に優先的に配分した場合は、加速性能を向上できる。
2 モータジェネレータ
4 第1クラッチ
5 第2クラッチ
20 統合コントローラ(制御手段:)
35 第2クラッチトルク容量補正演算部
201 目標駆動トルク演算部(目標駆動演算手段)
205 目標クラッチトルク演算部(トルク容量制御部)
Tyo 余裕代トルク
Claims (4)
- 駆動源としてのエンジンおよびモータと、前記エンジンと前記モータとの間に伝達トルクを変更可能に設けられた第1クラッチと、前記モータと駆動輪との間に伝達トルクを変更可能に設けられた第2クラッチとを備え、前記モータのみの駆動力を前記駆動輪に伝達するEVモードと、前記エンジンおよび前記モータの駆動力を前記駆動輪に伝達するHEVモードとを形成可能なハイブリッド駆動系と、
運転者の操作および車両状態に基づいて車両の目標駆動トルクを演算する目標駆動トルク演算手段と、
前記EVモードでの走行中に、エンジン始動判断がなされると、前記第1クラッチを締結させるとともに前記第2クラッチをスリップさせるクラッチトルク容量制御と、前記モータの駆動力を、前記エンジンをクランキングさせるクランキングトルクおよび前記目標駆動トルクに応じて制御するモータトルク制御と、を実行して走行しながら前記エンジンを始動させるエンジン始動処理を実行する制御手段と、
この制御手段に含まれ、前記第1クラッチおよび前記第2クラッチの目標トルク容量を演算し、かつ、前記エンジン始動処理時に、前記モータの出力可能なモータ上限トルクと、各クラッチのトルク容量の合力と、の間に、両クラッチのトルク容量のばらつき分であるばらつきトルクに基づいて設定された余裕代トルクを確保し、前記トルク容量の合力が前記モータ上限トルクを超えないようにする始動時トルク処理を実行するトルク容量制御部と、
このトルク容量制御部に含まれ、前記第2クラッチのスリップ時に、第2クラッチ出力回転数に基づいて前記第2クラッチの目標トルク容量をフィードバック補正する目標第2クラッチトルク容量補正部と、
を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
前記目標駆動トルクと前記モータの駆動トルクとに基づいて、両者の偏差があらかじめ設定された完了判定閾値未満となった場合に、前記目標第2クラッチトルク容量補正部による前記フィードバック補正が完了状態であるか否かを判定する補正完了判定手段を備え、
前記トルク容量制御部は、前記始動時トルク処理の実行時に、前記第2クラッチの締結状態に基づいて、前記余裕代トルクを変更する余裕代トルク設定処理を実行し、
かつ、この余裕代トルク設定処理では、前記第2クラッチの非スリップ時には、前記余裕代トルクを、前記第1クラッチおよび前記第2クラッチのばらつきトルクを合算した値とし、前記第2クラッチがスリップ状態であり、かつ、前記補正完了判定手段が補正未完了と判定した補正未完了スリップ時には、前記余裕代トルクを、前記第1クラッチのばらつきトルクに、前記目標駆動トルクと前記モータの駆動トルクとの偏差に応じたトルク加算値を加算した値とし、前記第2クラッチがスリップ状態であり、かつ、前記補正完了判定手段が補正完了と判定した補正完了スリップ時には、前記余裕代トルクを、前記第1クラッチのばらつきトルクに設定する
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記モータ上限トルクを演算するモータ上限トルク演算部は、前記EVモード走行中の回転数に前記第2クラッチのスリップ回転数を加えた目標モータ回転数と、前記モータの回転数を検出する回転数検出手段が検出する実モータ回転数との大きいほうの値に基づいて前記モータ上限トルクを演算することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記トルク容量制御部は、前記目標第2クラッチトルクの上限を設定する上限制限部を備え、
この上限制限部は、前記モータ上限トルクから、前記余裕代トルクと前記第1クラッチの目標トルク容量とを差し引いた値を、前記第2クラッチの目標トルク容量の上限とすることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記制御手段は、両クラッチの目標トルク容量の合算値と、回転数制御用のモータトルク指令値と、実モータ回転数と、を入力し、前記モータトルク指令値と各目標トルク容量に基づいて求めたモータ回転数規範値と、実モータ回転数との差分が小さくなるようにフィードバック補正を行うクラッチトルク補正値演算部を備えていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
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