JP5772921B2 - 車両の変速制御装置および変速制御方法 - Google Patents

車両の変速制御装置および変速制御方法 Download PDF

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本発明は、モータの回転力によってポンプの油圧を発生し、その油圧によって変速機の変速比を変えるようにした車両の変速制御装置および変速制御方法に関する。
従来のハイブリッド車は、エンジンとモータおよびモータと変速機との間にそれぞれクラッチを設けた構造となっている。そして、これらのクラッチの締結状態を適宜制御することでEV走行(モータ走行)とHEV走行(ハイブリッド(モータ+エンジン)走行)の切替および制動回生などの制御を行っている。
また、車速が減少した場合や停止する場合には、スムーズな加速や再発進を可能とするために、その減速中に予め変速機の変速比を現在の変速比よりもロー(Low)側に変速するように制御している。例えば、以下の特許文献1では、車速が閾値よりも小さくなったり、変速比が充分加速できる減速比より小さいときには、変速機(CVT)の変速比が減速比として大きくなるようにCVTのインプットシャフトの目標回転数を設定する。そしてCVTを油圧制御する際の油圧を発生させる電動オイルポンプを駆動することでCVTの変速制御を行っている。
特開2006−70265号公報
ところで、このようなハイブリッド車の変速機は、その入力軸に連結する駆動用モータの回転力で動作する油圧ポンプからの油圧によって変速動作を行う。
そのため、車両の速度低下により変速機の入力軸の回転数が減少してモータの回転力が減少すると、それに伴って前記油圧ポンプの油圧も減少する。
すると、変速機を動作するために必要な油圧が充分に確保できなくなってその変速機を再発進に必要な変速比(Low側)まで変更できず、スムーズな加速や再発進ができないといった不都合がある。
そこで、本発明は、このような課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、車両の速度が低下しても確実に変速機を再発進に必要な変速比(Low側)に変更できる新規な車両の変速制御装置および変速制御方法を提供するものである。
前記目的を達成するために本発明は、駆動力を発生するモータと、そのモータと駆動輪との間に位置する変速機と、これらを接続する滑り締結状態及び締結状態が可能なクラッチを制御するクラッチ制御手段と、前記変速機を制御する変速機制御手段とを有し、車両が減速すると前記モータの回転数も低下するようになっている車両の変速制御装置に関する。
クラッチ制御手段は、前記クラッチを締結したモータ走行中に車両が減速することにより前記モータの回転数が低下して前記変速機を所定の変速比に移行するための所定の油圧が得られるかどうかを判定する。そして、所定の油圧が得られなくなると判定したときは、前記モータが前記所定の油圧を発生できる回転数以上の回転数を維持するように前記クラッチを締結状態から滑り締結状態に移行する。
一方、変速機制御手段は、このようにクラッチが滑り締結状態に移行したときに前記の所定の油圧によって前記変速機の変速比を現在よりも低い変速比へ変更する。
本発明によれば、車両の速度が低下しても、モータの回転数を所定の回転数に維持することができる。これによって、変速機の変速比を変えるための油圧を充分に確保できるため、変速機を再発進に必要な変速比(Low側)に確実に変更できる。
本発明に係るハイブリッド車100およびこれに適用する変速制御装置(駆動制御装置)の実施の一形態を示す全体構成図である。 本発明に係る変速制御処理を示すブロック図である。 本発明に係る変速制御方法の流れの一例を示すフローチャート図である。
以下、本発明の制動力制御装置の実施の一形態を添付図面を参照しながら説明する。
(構成)
図1は、本発明の変速制御装置を備えたハイブリッド車両100を示す全体構成図である。
図示するように、このハイブリッド車両100は、エンジン1と、モータ2と、無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)3と、第1クラッチ4と、第2クラッチ5とを有する。さらに、このハイブリッド車両100は、ハイブリッドコントローラ6と、ブレーキ踏力センサ7と、車速センサ8と、油圧ポンプ9と、駆動輪(タイヤ)10,10とを有する。
エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関からなる。そして、このエンジン1は、ハイブリッドコントローラ6からの制御指令に基づいてドライバーのトルク要求(具体的にはアクセル開度)に応じて車両駆動のためのトルクを発生する。
モータ2は、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルを巻き付けた同期型モータジェネレータなどからなる。このモータ2は、同じくハイブリッドコントローラ6からの制御指令に基づいてインバータ(図示せず)により作り出された三相交流を印加することにより、ドライバーのトルク要求(具体的にはアクセル開度)に応じたトルクを出力する。そして、このモータ2は、トルク要求が低い場合は単独で駆動トルクを発生(EV走行)し、トルク要求が高い場合には、エンジン1の駆動トルクをアシスト(HEV(ハイブリッド)走行)する。なお、このモータ2は、制動時にロータが外力により回転しているときには、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能して図示しないバッテリを充電する(回生制動)。
また、このモータ2は、無段変速機(CVT)3の変速比を制御するための油圧ポンプ9の駆動源としても機能する。
この油圧ポンプ9は、ハイブリッドコントローラ6からの制御指令に基づいて動作し、モータ2の回転力(駆動力)によって発生する油圧を調整することによって無段変速機(CVT)3の変速比を制御する。また、この油圧ポンプ9は、ハイブリッドコントローラ6からの制御指令に基づいて同じくモータ2の回転力(駆動力)によって発生する油圧を調整することによって第1クラッチ4および第2クラッチ5を制御する。
無段変速機(以下、適宜「CVT」と称す)3は、ハイブリッドコントローラ6からの制御指令に基づいて動作し、エンジン1およびモータ2のトルクを駆動輪10,10へと適切に伝達するようその変速比(プライマリとセカンダリ)を設定する。実際のトルク伝達は、第2クラッチ5介して接続した入力軸(プライマリ軸)3aから出力軸(セカンダリ軸)3bへとトルクを伝え、図示しないディファレンシャルギアを介して駆動輪10,10に伝達する。
第1クラッチ4は、エンジン1とモータ2との間に介装した油圧式単板クラッチなどからなる。この第1クラッチ4は、ハイブリッドコントローラ6からの制御指令に基づいて動作し、エンジン1とモータ2との間のトルク伝達を制御する。そして、例えばEV走行時にはその締結を解除し、HEV走行時およびエンジン1のトルクのみでの走行時には締結状態となり、エンジン始動時には滑り締結(スリップ)状態となる。
第2クラッチ5は、ハイブリッドコントローラ6からの制御指令に基づいて動作し、モータ2とCVT3との間のトルク伝達を制御する。そして、後に詳述するように通常走行(EV走行またはHEV走行)しているときや回生制動中には(一部の場合を除いて)締結状態となるが、充電中や減速中には開放状態(非締結)または滑り締結(スリップ)状態となる。
駆動輪(タイヤ)10,10は、CVT3の入力軸3aから駆動力を得てエンジン1およびモータ2のトルクをCVT3を介して路面へと伝達する機能を有する。また、減速時および回生制動時には運動エネルギー(慣性力)をCVT3を介してモータ2へと伝達する機能を有する。
ブレーキ踏力センサ7は、ドライバー操作によるブレーキ踏力を検出するものであり、検出した情報をハイブリッドコントローラ6に伝える機能を有する。
一方、車速センサ8は、図示しない前輪の回転数などに基づいて車両の速度を検出するものであり、検出した情報をハイブリッドコントローラ6に伝える機能を有する。
そして、ハイブリッドコントローラ6は、これらブレーキ踏力センサ7および車速センサ8の情報に基づいてCVT3の変速比の制御および第2クラッチ5のトルク容量などを制御する。
(作用)
次に、このような構成をしたハイブリッド車両100の変速制御装置による制御方法を図2の制御ブロック図および図3のフローチャート図を参照しながら説明する。
(ステップS1)
先ず、ハイブリッドコントローラ6は、最初のステップS1において、ブレーキ踏力センサ7からの実ブレーキ踏力に関する入力信号に基づいてEV走行中にブレーキが踏まれたか否かを判定する。この結果、ブレーキが踏まれていないと判定したとき(No)はそのままブレーキが踏まれるまで待機する。反対にブレーキが踏まれたと判定したとき(Yes)は、次のステップS3に移行する。
(ステップS3)
ステップS3では、この実ブレーキ踏力値とそのときに車速センサ8で検出した実車速値に基づいて目標減速度を得てから次のステップS5に移行する。なお、この目標減速値は車速とブレーキ踏力に対して予め規定しておく。
(ステップS5)
ステップS5では、その時刻におけるモータ2の回転数とCVT3の変速比と目標(指令)減速度とから、車速とモータ回転数とポンプ発生油圧とCVT3の変速速度とCVT3の変速比の時間的推移を計算し予測(各特性データから計算)してから次のステップS7に移行する。
(ステップS7)
ステップS7では、予測したこれらのパラメータの時間的推移において車速0(零)になる(停止する)時刻におけるCVT3の変速比が、再発進に必要な変速比までロー(Low)変速できるかを判定する(Low戻し可否判定)。この結果、再発進に必要な変速比までロー変速できると判定したとき(Yes)は、そのまま処理を終了する。反対に、再発進に必要な変速比までロー変速できないと判定したとき(No)は、そのまま次のステップS9に移行する。
(ステップS9)
ステップS9では、減速しながらCVT3の変速に用いる油圧を確保するために、モータ2が前記ステップS5で予測したモータ回転数の時間的推移より高回転で推移するように規定してから最後のステップS11に移行する。このとき、CVT3の入力軸3a回転数はモータ回転数と等しくなければならないという制約条件を除外して規定する。
(ステップS11)
ステップS11では、前記ステップS7におけるLow戻し可否判定と同様の計算方法で車速0になる(停止する)時刻におけるCVT3の変速比が再発進に必要な変速比までLow変速できるようなモータ回転数の時間的推移を規定する。併せてCVT3の入力軸3a回転数の時間的推移も規定する。これら2つから第2クラッチ5の差回転の時間的推移を計算する。走行中にブレーキが踏まれ、Low戻し可否判定で不可となった場合は、この第2クラッチ5の差回転の時間的推移の通りに差回転を発生させられるよう、第2クラッチ5の油圧をフォードバック制御して滑らせる。また、モータ2は規定した通りの時間的推移するよう、回転数フィードバック制御する。
これにより、急減速時および急停止時にCVT3の変速比を再加速または再発進にひつようなところまでLow側に変更し終えるまで変速のための油圧ポンプ9の油圧を確保することができ、次回発進時の確実性と加速性能が向上する。
また、CVT3の変速比がLow側寄りであるほど、CVT入力限界トルクには余裕が出るという特性があるので本実施の形態のような変速制御を適用することにより、第2クラッチ5にかかる発進時負担を軽減できるため、第2クラッチ5の保護につながる。
また、車両停止前までにその変速比を確実にLow戻しすることにより、停車中に車軸に回転を与えずにLow戻しを行う目的でCVT3より車軸側にクラッチを設置する必要がなくなり、コスト低減も可能となる。
また、次回の発進時初期や加速時初期に充分なトルクを駆動輪10,10に伝達できるので発進や加速の応答性が向上する。
なお、本実施の形態では、エンジン1とモータ2とによって駆動するハイブリッド車を例に説明したが、本発明はこのようなハイブリッド車に限定されるものではない。すなわち、駆動源としてのモータ2の他に、そのモータ2によって駆動される油圧ポンプ9と、その油圧ポンプ9によって変速制御されるCVT3と、このCVT3に対してモータ2の駆動力を伝達するためのクラッチ(第2クラッチ5)を有する構成であれば、例えば燃料電池車やモータ自動車などの他の車両に対してもそのまま適用することが可能である。
また、CVT3の入力軸3aの回転数をモータ2のアシストで引き上げて変速速度を速める場合、モータ2とのアシストに対してCVT3の変速速度が追いつかないと車両が加速してしまうことになる。しかし、本実施の形態に係る変速制御によれば、このような場合にも第2クラッチ5のトルク伝達容量を下げて第2クラッチ5を滑らせて加速を抑えつつ必要な油圧が得られるため、確実にその変速比をLow側に変更することができる。これによって、減速中の加減速度変化による違和感を防止できるので運転性が向上する。
また、前記課題を解決するための手段に開示した本発明の変速制御装置を構成する「クラッチ制御手段」は、本実施の形態におけるハイブリッドコントローラ6や油圧ポンプ9、モータ2などに対応する。また、同じく「変速機制御手段」は、本実施の形態におけるハイブリッドコントローラ6や油圧ポンプ9、モータ2などに対応する。また、「クラッチ」は、本実施の形態における第2クラッチ5に対応する。
(効果)
次に、本実施の形態の効果を説明する。
本実施の形態による変速制御装置および変速制御方法によれば、以下のような効果を発揮する。
(1)モータ走行中に車両が減速することによりモータ2の回転数が低下してCVT3を所定の変速比に移行するための所定の油圧が得られなくなると判定したときは、第2クラッチ5を締結状態から滑り締結状態にする。そして、この滑り締結状態のときに前記所定の油圧によってCVT3の変速比を現在よりも低い変速比へ変更する。
これによって、車両の速度が低下しても、モータ2の回転数を所定の回転数に維持することができる。この結果、CVT3の変速比を制御するための油圧を充分に確保できるため、CVT3を再発進に必要な変速比(Low側)に確実に変更できる。
(2)また、第2クラッチ5が滑り締結状態のときにCVT3の変速比を所定の変速比へ変更するためにモータ2の回転数を上昇したときは、CVT3が所定の変速比へ変速し終えるまでは第2クラッチ5が滑り締結状態を継続する。
これによって、車速に対してモータ2の回転数が高くなっても第2クラッチ5が回転差を吸収してくれるので車両の減速度が変化するのを抑制できる。この結果、運転者に与える違和感を軽減することができる。
100 ハイブリッド車両
1 エンジン
2 モータ
3 変速機(CVT)
3a 入力軸(プライマリプーリ)
3b 出力軸(セカンダリプーリ)
4 第1クラッチ
5 第2クラッチ(クラッチ)
6 ハイブリッドコントローラ(クラッチ制御手段、変速制御手段)
7 ブレーキ踏力センサ
8 車速センサ
9 油圧ポンプ
10 駆動輪(タイヤ)

Claims (2)

  1. 駆動力を発生するモータと、当該モータと駆動輪との間に位置する変速機と、前記モータと変速機を接続する滑り締結状態及び締結状態が可能なクラッチを制御するクラッチ制御手段と、前記モータの回転力で発生する油圧によって前記変速機の変速比を制御する変速機制御手段とを有し、車両が減速すると前記モータの回転数も低下するようになっている車両の変速制御装置であって、
    前記クラッチ制御手段は、前記クラッチを締結したモータ駆動中に車両が減速することにより前記モータの回転数が低下して前記変速機を所定の変速比に移行するための所定の油圧が得られなくなると判定したときは、前記クラッチを締結状態から滑り締結状態に移行し、
    前記変速機制御手段は、前記クラッチが滑り締結状態に移行したときに前記所定の油圧によって前記変速機の変速比を現在よりも低い変速比へ変更することを特徴とする車両の変速制御装置。
  2. モータと変速機とを滑り締結状態及び締結状態が可能なクラッチで接続し、前記クラッチを制御すると共に前記モータの回転力で発生する油圧によって前記変速機を変速制御し、車両が減速すると前記モータの回転数も低下するようになっている車両の変速制御方法であって、
    前記クラッチを締結したモータ駆動中に車両が減速することにより前記モータの回転数が低下して前記変速機を所定の変速比に移行するための所定の油圧が得られなくなると判定したときは、前記クラッチを締結状態から滑り締結状態に移行し、この滑り締結状態のときに前記所定の油圧によって前記変速機の変速比を現在よりも低い変速比へ変更することを特徴とする車両の変速制御方法。
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