JP5225536B2 - フレネルレンズ、スクリーン、画像表示装置 - Google Patents
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Description
この発明は、光の入出射点間距離をほとんど要することなく、凸レンズと同等の働きをするフレネルレンズに係るものである。また、この発明は、このフレネルレンズを適用した背面投影型のスクリーンと、このスクリーンを適用した画像表示装置とに関するものである。
【背景技術】
図1において、101は斜めから見たフレネルレンズ、102はフレネルレンズ101の断面形状、103はフレネルレンズ101の光軸、104はフレネルレンズ101のピッチ毎に成形されたプリズム部である。
フレネルレンズ101は、光軸103を中心として回転成形された金型(レンズ成形型)に合成樹脂を流し込み、合成樹脂が硬化した後に金型(レンズ成形型)を取り外すと完成する。完成したフレネルレンズ101の一面には、光軸103を中心として同心円状の輪帯が複数成形されている。断面形状102を見ると分かるように、この同心円状の輪帯は複数のプリズム部104である。
フレネルレンズ101は全体で1枚の凸レンズとして働き、プリズム部104を薄く構成することができるので、フレネルレンズ101の入出射光の入射点と出射点との距離をほとんど要することなく、光線の方向を変化させることができる。
ところで、画像表示装置では、スクリーンのフレネルレンズ101に対してできるだけ斜めに画像光を投影することがしばしば行われる。これは画像表示装置の奥行きを短くするためであり、このことによって画像表示装置を薄型化することができる。
図2において、111は光を発する発光体(照明光源手段)、112は発光体111を焦点に備える放物面鏡(照明光源手段)、113は放物面鏡112が反射した光を集光する集光レンズ(集光光学手段)、114は液晶などのライトバルブ(光変調手段)である。ライトバルブ114は、集光レンズ113が集光した光を表示内容にしたがって空間的に強度変調する。
115はライトバルブ114が強度変調した光を結像させる投影光学レンズ(投影光学手段)、116は投影光学レンズ115が結像した光を背面から受光して画像を表示する背面投影型のスクリーンである。スクリーン116は、広がった光線をほぼ平行光にした上で結像させて画像を表示し、広い範囲に光を拡散して視野範囲を広げる働きをする。
フレネルレンズ117は、投影光学レンズ115からの光を入射面117Aで受光し、各ピッチ毎のプリズム部117Bを介して所定の出射角で光線を出射する。つまり、フレネルレンズ117は、投影光学レンズ115で広がった光をほぼ平行化するために用いている。レンチキュラー118は、フレネルレンズ117からの出射光を結像させた上で拡散する。
119は光軸である。光軸119は、放物面鏡112,集光レンズ113,ライトバルブ114,投影光学レンズ115,フレネルレンズ117およびレンチキュラー118によって共有されており、フレネルレンズ117の入射面117Aと直交している。
放物面鏡112の焦点に設置された発光体111はほとんど点光源とみなすことができるので、発光体111が発した光は放物面鏡112に反射されて概ね平行光として集光レンズ113へ向う。集光レンズ113がライトバルブ114へ平行光を集光すると、ライトバルブ114は表示内容にしたがって光を空間的に強度変調する。
強度変調された光は、投影光学レンズ115によってスクリーン116へ広角に背面投影されて結像される。投影光に含まれる各光線と光軸119とのなす角は投影角である。図2に示すように、フレネルレンズ117の各ピッチに対する投影角はそれぞれ異なっているが、投影光学レンズ115やスクリーン116の大きさから見るとピッチ長は微小な長さなので、同一ピッチへ入射する複数の光線は概ね平行光と見なすことができる。
この最大入射角、つまり投影光学レンズ115の最大投影角と、投影光学レンズ115からスクリーン116までの投影距離とによってスクリーン116の大きさが決まる。逆に、スクリーン116の大きさが規定されている場合には、最大投影角を大きくするほど投影距離を短くすることができる。したがって、光軸119方向の距離を短くした光学系システムを構成することができ、画像表示装置を薄型化できる。
レンチキュラー118はフレネルレンズ117の各プリズム部117Bから光を受光し、投影光学レンズ115によってライトバルブ114上の表示内容を結像させた上で、利用者の方向(図2のスクリーン116の右方)へ光を拡散する。画像表示装置の利用者は結像点からの拡散光を画像として視認する。レンチキュラー118によって光が拡散されているので、ある程度の視野範囲で必要な明るさを持った画像を利用者は視認できる。
スクリーン116の大きさが仕様などから決まっている場合、投影光学レンズ115や他の光学的構成によって大きな最大投影角を実現しても、最大投影角の光線をフレネルレンズ117が受光できなければ、投影距離を短くすることができない。結論として、フレネルレンズ117の設計では、できるだけ大きな入射角の入射光を高透過率で出射できるようにすることがポイントの一つである。
図3A,図3Bは従来のフレネルレンズの複数ピッチにおける断面形状を拡大した図であり、図3Aは入射角の小さい場合、図3Bは入射角の大きな場合を表している。矢印は光線を表している。
図3A,図3Bにおいて、121はフレネルレンズ、121Aはフレネルレンズ121のピッチ毎に成形された屈折型プリズム部である。
121Bは屈折型プリズム部121Aの入射面であり、平面形状に成形されてフレネルレンズ121の不図示の光軸と直交している。121Cは屈折型プリズム部121Aの出射面、121Zは入射面121Bおよび出射面121Cとともに屈折型プリズム部121Aを成形する無効面である。ここでは光の入出射に無効面121Zは関係しない。
また、liは入射面121Bへの入射光線、lrは入射面121Bでの反射光線、ltは入射面121Bで屈折して屈折型プリズム部121A内部を透過する透過光線、loは出射面121Cで屈折して空気中へ出射する出射光線である。m12、m13はそれぞれ入射面121B,出射面121Cの法線である。
図3Aにおいて、屈折率1の空気中から屈折率n(n>1)のフレネルレンズ121へ法線m12と実入射角aをなして入射光線liが到達すると、入射光線liは屈折角χの透過光線ltおよび反射角aの反射光線lrに入射面121Bで分離する。反射光線lrはフレネルレンズ121の損失になる。
入射面121Bで屈折して屈折型プリズム部121Aを透過する透過光線ltは、法線m13と角度ψをなして出射面121Cへ到達する。透過光線ltの一部は反射光線(不図示)となり、残りは出射面121Cから出射角fの出射光線loとして出射する。
入射角が小さくなると入射面の透過率は増加して反射率が減少し、逆に入射角が大きくなると入射面の透過率は減少して反射率が増加することが光学理論から良く知られている。したがって、図3Bのように入射角aが大きくなると、透過光線ltの割合が減少するとともに反射光線lrの割合が増加し、フレネルレンズ121の透過率は減少してしまう。
屈折型プリズム部を備えたフレネルレンズには、次に示すように、図3A,図3Bの屈折型プリズム部121Aの入射側と出射側とを入れ替えた構成もある。
図4A,図4Bにおいて、131はフレネルレンズ、131Aはフレネルレンズ131のピッチ毎に成形された屈折型プリズム部である。
131Bは屈折型プリズム部131Aの入射面、131Cは屈折型プリズム部131Aの出射面、131Zは入射面131Bおよび出射面131Cとともに屈折型プリズム部131Aを成形する無効面である。出射面131Cは平面形状に成形されてフレネルレンズ131の不図示の光軸と直交している。無効面131Zは光を受光するが出射面131Cからの光の出射に関係しない。
図4Aにおいて、屈折率1の空気中から屈折率n(n>1)のフレネルレンズ131へ法線m14と入射角aをなして入射光線liが到達すると、入射光線liは法線m15と実入射角bをなして入射面131Bへ入射し、屈折角χの透過光線ltおよび反射角bの反射光線lrに分離する。反射光線lrはフレネルレンズ131の損失になる。
入射面131Bで屈折して屈折型プリズム部131Aを透過する透過光線ltは、法線m14と角度ψをなして出射面131Cへ到達する。透過光線ltの一部は反射光線(不図示)となり、残りは出射面131Cから出射角fの出射光線loとして出射する。
また、無効面131Zで受光された無効光線leは、出射角fと異なる角度で出射面131Cから出射するため、フレネルレンズ131の損失になる。
しかしながら、フレネルレンズ121と同様の理由により、図4Bのように、入射角aが大きくなると入射面131Bにおける反射光線lrの割合が増加してしまい、同時に、無効面131Zで受光される無効光線の領域(図4A,図4Bの斜線部分)が大きくなってしまう。結果として、損失が大きくなって、フレネルレンズ131の透過率は減少してしまうことになる。
したがって、フレネルレンズ121と同様に、フレネルレンズ131の透過率には入射角依存性があり、入射角が大きくなるほど透過率が減少してしまう。
屈折型プリズム部を備えたフレネルレンズの以上の短所を解消し、大きな入射角に対して高透過率を実現した従来のフレネルレンズについて次に説明する。
図5A,図5Bにおいて、141はフレネルレンズ、141Aはフレネルレンズ141のピッチ毎に成形された全反射型プリズム部である。
141Bは全反射型プリズム部141Aの入射面、141Cは全反射型プリズム部141Aの全反射面、141Dは入射面141Bおよび全反射面141Cとともに全反射型プリズム部141Aを成形する出射面である。出射面141Dは平面形状に成形されてフレネルレンズ141の不図示の光軸と直交している。全反射面141Cでは、高屈折率媒質から低屈折率媒質へ入射する光が臨界角より大きな入射角で全反射する現象を利用している。
また、liは入射面141Bへの入射光線、lt1は入射面141Bで屈折して全反射面141Cへ透過する透過光線、lt2は全反射面141Cで全反射して出射面141Cへ透過する透過光線、loは出射面141Dで屈折して空気中へ出射する出射光線、leは入射面141Bで受光される無効光線である。m16,m17,m18はそれぞれ出射面141D,入射面141B,全反射面141Cの法線である。
図5Aにおいて、屈折率1の空気中から屈折率n(n>1)のフレネルレンズ141へ法線m16と入射角aをなして入射光線liが到達すると、入射光線liは法線m17と実入射角bをなして入射面141Bへ入射し、屈折角χの透過光線lt1および反射光線(不図示)に分離する。入射面141Bの反射光線はフレネルレンズ141の損失になる。
入射面141Bで屈折して全反射型プリズム部141Aを透過する透過光線lt1は、法線m18とのなす角が臨界角より大きな角度で全反射面141Cへ到達し、全反射面141Cで全反射して透過光線lt2になる。全反射の現象を利用して光路を折り曲げているので全反射面141Cから出射する光線は存在せず、全反射面141Cにおける損失はほとんどない。
屈折型プリズム部121A,131Aをそれぞれ備えたフレネルレンズ121,131は屈折現象によって光路を折り曲げるので、光路を大きく折り曲げるためには大きな実入射角a,bで入射光線liを受光する必要がある。このため、入射面121B,131Bにおける反射光線lrの割合が増加して、透過率減少の要因になっている。
これに対して、全反射型プリズム部141Aを備えたフレネルレンズ141は、光路の折曲を全反射現象によって行っているので屈折現象による光路折曲の度合いを少なくすることができる。したがって、入射面141Bに対して小さな実入射角bで入射光線liを入射することができ、反射率の増加を抑制して高透過率を達成している。
しかしながら、フレネルレンズ141は、図5Bのように入射角aが小さくなると、入射面141Bで受光された入射光線liが減少して全反射面141Cで全反射される透過光線lt2の割合が減少し、無効光線le(図5Bの斜線部分)が発生する。
無効光線leは全反射型プリズム部141A内部を透過しても全反射面141Cで全反射されない光線なので、フレネルレンズ141の損失になる。つまり、フレネルレンズ141の透過率にも入射角依存性があり、大きな入射角aに対応することは可能であるが、小さな入射角aの場合に透過率が減少してしまう。
つまり、最大投影角以上に斜めに投影された画像光の一部については、従来のフレネルレンズでは所望の方向に偏向することができず、透過率が低かった。
ここで、従来のフレネルレンズについてもう一度簡単に説明する。
図6において、100は屈折型プリズム部を各ピッチに備えた従来のフレネルレンズ、100aはフレネルレンズ100の入光側にある入射面、100bはフレネルレンズ100の入光側にある無効面、100cはフレネルレンズ100の出光側にある出射面、R1inは入射面100aへ入射する光束、R2inは無効面100bへ入射する光束である。
図6のフレネルレンズ100は、入射面100aへ入射する斜めからの光束R1inを偏向して、出射面100cから光束R1outとして出射する微少な屈折型プリズム部を単位プリズム部として備えている。
しかし、入射面100a以外の無効面100bへ入射する光束R2inは、所望の方向に出射されずに迷光となってしまい、この光束R2inを有効に利用することができず、透過率が低かった。
例えば特開昭61−52601号公報には、屈折型プリズム部と全反射型プリズム部とを交互に配置したフレネルレンズが提案されている。また、特開昭62−19837号公報には、1つの単位プリズム部の中に屈折を利用する部分と全反射を利用する部分とを設けたフレネルレンズが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
特開昭61−52601号公報
【特許文献2】
特開昭62−19837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
また、従来のフレネルレンズは、背面投影型のスクリーンに適用した場合に、スクリーン画像の明るさにムラが生じてしまうという課題があった。
つまり、屈折型プリズム部を備えたフレネルレンズをスクリーンに適用すると、大きな投影角に対応できないため、スクリーンの周辺部の明るさが低下してしまい、また画像表示装置の薄型化を制約してしまう。
また、全反射型プリズム部を備えたフレネルレンズをスクリーンに適用すると、小さな投影角に対応できないため、スクリーン画像の光軸近傍の明るさが低下してしまう。
またこの発明は、画像の明るさのムラを抑制し、小さな投影角から大きな投影角まで対応することができるスクリーンと、このスクリーンを適用した画像表示装置とを構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【発明の効果】
また、この発明によれば、画像の明るさのムラを抑制し、小さな投影角から大きな投影角まで対応することができるスクリーンを構成することが出来るという効果が得られる。
また、この発明によれば、画像の明るさを向上した画像形成装置を構成することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図2】 図2は従来のフレネルレンズをスクリーンに適用した画像表示装置の構成を示す図である。
【図3】 図3A,図3Bは従来のフレネルレンズの複数ピッチにおける断面形状を拡大した図である。
【図4】 図4A,図4Bは従来のフレネルレンズの複数ピッチにおける断面形状を拡大した図である。
【図5】 図5A,図5Bは従来のフレネルレンズの複数ピッチにおける断面形状を拡大した図である。
【図6】 図6は従来のフレネルレンズへ画像光が斜めに投影された場合を示す図である。
【図7】 図7はこの発明の実施の形態1によるフレネルレンズの1ピッチにおける断面形状を拡大した図である。
【図8】 図8は屈折型プリズム部、全反射型プリズム部およびハイブリッド型プリズム部の入射角に対する透過率の変化の様子を示す図である。
【図9】 図9は実施の形態1で示したフレネルレンズの無効光線を説明するための図である。
【図10】 図10はこの発明の実施の形態2によるフレネルレンズの1ピッチにおける断面形状を拡大した図である。
【図11】 図11は実施の形態1で示したハイブリッド型プリズム部の透過率と、従来の技術で示した屈折型プリズム部の透過率とを比較する図である。
【図12】 図12はこの発明の実施の形態3によるフレネルレンズの複数ピッチにおける断面形状を拡大した図である。
【図13】 図13はこの発明の実施の形態3によるフレネルレンズの複数ピッチにおける断面形状を拡大した図である。
【図14】 図14はこの発明の実施の形態3によるフレネルレンズの複数ピッチにおける断面形状を拡大した図である。
【図15】 図15は先端刃角βをそれぞれ45°,40°,35°とした場合のハイブリッド型プリズム部の透過率を示す図である。
【図16】 図16は出射角fをそれぞれ0°,3°,5°とした場合のハイブリッド型プリズム部の透過率を示す図である。
【図17】 図17A,図17Bはフレネルレンズをスクリーンに適用した画像表示装置の構成を示す図である。
【図18】 図18A〜図18Cは出射光線の出射角を最適化する手法を説明するための図である。
【図19】 図19は出射光線の出射角を最適化する手法を説明するための図である。
【図20】 図20はこの発明の実施の形態5による背面投影型の画像表示装置の全体構成を示す図である。
【図21】 図20の画像表示装置を側面から見た場合の図である。
【図22】 図22はフレネルレンズ51の断面形状を示した図である。
【図23】 図23A〜図23Cは全反射型プリズム部U1と屈折型プリズム部U2とを説明するための図である。
【図24】 図24A〜図24Cはフレネルレンズ51を製造する際に用いるレンズ成形型の特徴をそれぞれ説明するための図である。
【図25】 図25A〜図25Cはフレネルレンズ51を製造する際に用いるレンズ成形型の特徴をそれぞれ説明するための図である。
【図26】 図26はこの発明の実施の形態5によるレンズ成形型製造方法を示すフローチャートである。
【図27】 図27A〜図27DはバイトBによるレンズ成形型Cの切削の進行状況を示す図である。
【図28】 図28A〜図28DはバイトBによるレンズ成形型Cの切削の進行状況を示す図である。
【図29】 図29はフレネルレンズ51におけるフレネル中心からの半径と全反射型プリズム部U1および屈折型プリズム部U2の占める割合を示す図である。
【図30】 図30は従来技術によるフレネルレンズ110の構成を示す図である。
【図31】 図31は図30のフレネルレンズ110における全反射型プリズム部のレンズ比率を線図L5で示した図である。
【図32】 図32はこの実施の形態5のフレネルレンズ51および従来技術によるフレネルレンズ110の透過率をそれぞれ示す図である。
【図33】 図33A〜図33Fはレンズ成形型の製造工程で発生する歪を説明するための図である。
【図34】 図34はこの発明の実施の形態6によるレンズ成形型製造方法を示すフローチャートである。
【図35】 図35A〜図35Fは図34のレンズ成形型製造方法にしたがって切削されていくレンズ成形型の状態を示す図である。
【図36】 図36A,図36Bはダミープリズム部を備えていないフレネルレンズの構成および動作を説明するための図である。
【図37】 図37A,図37Bはダミープリズム部を備えたフレネルレンズの構成および動作を説明するための図である。
【図38】 図38A,図38Bは図36Aのフレネルレンズと図37Aのフレネルレンズとの違いを説明するための図である。
【図39】 図39はこの発明の実施の形態7によるフレネルレンズの断面形状を示す図である。
【図40】 図40はこの発明の実施の形態7によるフレネルレンズの断面形状を示す図である。
【図41】 図41A,図41Bは迷光吸収板における光透過層と光吸収層との積層構造の例を示す図である。
【図42】 図42はこの発明の実施の形態7によるフレネルレンズの断面形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
実施の形態1.
図7はこの発明の実施の形態1によるフレネルレンズの1ピッチにおける断面形状を拡大した図である。矢印は光線を表している。ここで、断面形状とは、フレネルレンズの光軸を含む面によってフレネルレンズを切断した場合のプリズム部の切断面の形状を意味している。
屈折型プリズム部3Aにおいて、3Bは屈折型プリズム部3Aの入射面(第1入射面)、3Zは入射面3Bおよび出射面5とともに屈折型プリズム部3Aを成形する無効面である。無効面3Zは光を受光するが出射面5からの光の出射に関係しない。
全反射型プリズム部4Aにおいて、4Bは全反射型プリズム部4Aの入射面(第2入射面)、4Cは入射面4Bおよび出射面5とともに全反射型プリズム部4Aを成形する全反射面である。全反射面4Cでは、高屈折率媒質から低屈折率媒質へ入射する光が臨界角より大きな入射角で全反射する現象を利用している。また、入射面4Bによって遮られて空気中からの光は全反射面4Cへ入射しない。
li2は空気中から入射面4Bへ入射する入射光線(第2入射光線)、lt2は入射光線li2の入射面4Bでの屈折(第3屈折現象)によって全反射面4Cへ透過する透過光線(第2透過光線)、lt3は透過光線lt2の全反射面4Cでの全反射(全反射現象)によって出射面5へ透過する透過光線(第3透過光線)、lo2は透過光線lt3の出射面5での屈折(第4屈折現象)によって空気中へ出射する出射光線(第2出射光線)である。
また、m1は入射面3Bの法線、m2は入射面4Bの法線、m3は全反射面4Cの法線、m4は出射面5の法線である。
図7において、屈折率1の空気中から屈折率n(n>1)のフレネルレンズ1へ入射光線li1,li2が入射角aでそれぞれ到達すると、入射光線li1は屈折型プリズム部3Aの入射面3Bによって、入射光線li2は全反射型プリズム部4Aの入射面4Bによってそれぞれ受光される。
まず、入射面3Bで受光された入射光線li1について考える。
入射光線li1は法線m1と実入射角b1をなして入射面3Bへ入射し、法線m1と屈折角χ1をなす透過光線lt1および反射光線(不図示)に分離する。入射面3Bの反射光線はフレネルレンズ1の損失になる。
入射面3Bで屈折して屈折型プリズム部3Aを透過する透過光線lt1は、法線m4と角度ψをなして出射面5へ到達する。透過光線lt1の一部は反射光線(不図示)となり、残りは出射面5から出射角fの出射光線lo1として出射する。
入射面4Bで屈折して全反射型プリズム部4Aを透過する透過光線lt2は、法線m3とのなす角が臨界角より大きな角度90°−dで全反射面4Cへ到達し、全反射面4Cで全反射して透過光線lt3になる。このときに、透過光線lt3と透過光線lt1とが平行の関係になるように全反射面4Cは設計されている。全反射の現象を利用して光路を折り曲げているので全反射面4Cから出射する光線は存在せず、全反射面4Cにおける損失はほとんどない。
全反射面4Cで全反射された透過光線lt3は法線m4と角度ψをなして入射面5へ到達する。透過光線lt3の一部は反射光線(不図示)となり、残りは出射面5から出射角fの出射光線lo2として出射する。透過光線lt1,lt3が平行なので、出射光線lo1,lo2も平行に出射される。
この実施の形態1の効果を具体的に理解するために、図7を基にして透過率の解析を行う。
屈折型プリズム部3Aの透過率TX,全反射型プリズム部4Aの透過率TYを求めると、それぞれ(1),(2)式のようになる。
TX=[tan(α−d)/{tan(α−d)−tan(α+β)}]×{1−tan(γ)×tan(a)}×[1−{(n−1)/(n+1)}2]×[1−0.5×(PX2+QX2)] (1)
ただし、
PX=tan[a+γ−sin−1{(1/n)×sin(a+γ)}]÷tan[a+γ+sin−1{(1/n)×sin(a+γ)}]
QX=sin[a+γ−sin−1{(1/n)×sin(a+γ)}]÷sin[a+γ+sin−1{(1/n)×sin(a+γ)}]
である。
<全反射型プリズム部4Aの透過率TY>
TY=[tan(α)/{tan(α)−tan(α+β)}−tan(α−d)/{tan(α−d)−tan(α+β)}]×{1−tan(α+β)×tan(a)}×[1−{(n−1)/(n+1)}2]×[1−0.5×(PY2+QY2)] (2)
ただし、
PY=tan[b−sin−1{(1/n)×sin(b)}]÷tan[b+sin−1{(1/n)×sin(b)}]
QY=sin[b−sin−1{(1/n)×sin(b)}]÷sin[b+sin−1{(1/n)×sin(b)}]
である。
ハイブリッド型プリズム部2の透過率Tallは、透過率TXと透過率TYとの和として求められ、(3)式のようになる。
Tall=TX+TY (3)
(1)〜(3)式を基にして、入射角aに対する各透過率TX,TY,Tallの変化の様子を図8に示す。計算条件は、出射角f=0°,先端刃角β=45°,屈折率n=1.5としている。
図8において、入射角aがおおよそ40°以上の領域では、全反射型プリズム部4Aの透過率TYは90%以上の高い値を示している。また、入射角aが40°から小さくなっていくと透過率TYは急激に減少し、全反射型プリズム部4Aの入射角依存性を示していることが理解できる。
このような2つの相異なる入射角依存性を有する屈折型プリズム部3A,全反射型プリズム部4Aからハイブリッド型プリズム部2が構成されているので、図8の透過率Tallが示すように、入射角40°以上の領域では90%以上の値を示し、入射角40°以下の領域においても、全反射型プリズム部4Aの透過率の減少を屈折型プリズム部3Aが補償するので、入射角0°〜90°の全領域にわたって、少なくとも60%程度の全反射率Tallを実現できている。
実施の形態1で示したフレネルレンズ1では、無効面3Zで受光される無効光線が存在する。無効光線は出射面5から出射角fで出射されないため、フレネルレンズ1の損失となってしまう。この実施の形態2では、この無効光線を減少させる手法について説明する。
図9は実施の形態1で示したフレネルレンズ1の無効光線を説明するための図である。矢印は光線を表している。図7と同一または相当する構成については同一の符号を付してある。
図9において、lieは無効面3Zや隣接ピッチの無効面3Z−1によって受光される無効光線、斜線を施した領域E1は無効光線lieの光束が通過する無効領域、lteは無効面3Zで屈折してフレネルレンズ1を透過する無効光線lieの透過光線、loeは出射面5で屈折して出射角f1(≠f)で空気中へ出射する透過光線lteの出射光線である。
図9を見ると分かるように、無効光線lieは無効面3Zで屈折して透過光線lteになり、出射面5で屈折して出射角f1の出射光線loeになる。つまり、無効領域E1を通過して無効面3Zで受光される無効光線lieは、出射角fで出射されないため、フレネルレンズ1の損失になってしまう。
図10はこの発明の実施の形態2によるフレネルレンズの1ピッチにおける断面形状を拡大した図である。矢印は光線を表している。図7、図9と同一または相当する構成については同一の符号を付してある。
図10において、6はこの実施の形態2のフレネルレンズ、7はフレネルレンズ6のハイブリッド型プリズム部であり、実施の形態1のハイブリッド型プリズム部2と同様に、屈折型プリズム部3Aを備えている。
入射面8Bは、無効光線lieの方向から見て隣接ピッチの無効面3Z−1の一部を遮るような断面形状に成形されている。したがって、図9の無効領域E1を通過する無効光線lieのうち有効領域E3を通過する光線は無効面3Z−1で受光されずに、入射面8Bによって入射光線li2として受光される。この結果、無効領域E1が無効領域E2に減少していることが図10から理解できる。
隣接ピッチの無効面3Z−1へ向う無効光線lieを遮るために入射面8Bの断面形状を曲線状にしているので、入射面8Bにおける屈折角は入射光線li2の光路毎にそれぞれ異なる。そこで、全反射面8Cは、この異なる屈折角の透過光線lt2を全て全反射して透過光線lt3とし、かつ屈折型プリズム部3Aの入射面3Bで屈折した透過光線lt1と透過光線lt3とを平行にするような曲線状の断面形状(第2入射面補償形状)に成形されている。
屈折型プリズム部3Aを通過する光線については実施の形態1と同様の動作なので説明を省略する。
入射面8Bで屈折した透過光線lt2は、全反射面8Cで全反射されて透過光線lt3として出射面9へ向う。全反射面8Cの形状は、透過光線lt2を全反射した透過光線lt3が入射面3Bからの透過光線lt1と平行になるように設計してあるので、透過光線lt1と同様に、透過光線lt3は出射面9で屈折して出射角fの出射光線lo2として出射する。
このように、全反射型プリズム部8A側の隣接ピッチの無効面3Z−1で受光されるはずの無効光線lieの一部(有効領域E3)を、入射面8Bによって入射光線li2として受光しているので、無効領域E1を無効領域E2に減少させ、ハイブリッド型プリズム部7の受光効率を増加できる。
ハイブリッド型プリズム部7の無効面3Zは、屈折型プリズム部3A側の隣接ピッチの入射面8B−2によって無効光線の方向から見て遮られている。不図示の他のピッチにおいても同様であり、無効領域E1が全体的に減少してフレネルレンズ6全体の受光効率を向上させることができる。
なお、フレネルレンズ6は硬化した合成樹脂から金型(レンズ成形型)を抜き取って完成するので、全反射型プリズム部8Aの断面形状は金型の抜取ができるようにする。
また、この実施の形態2は、ハイブリッド型プリズム部を備えたフレネルレンズに限定されるものではなく、従来の全反射型プリズム部を備えたフレネルレンズに適用することも可能である。
実施の形態1では、屈折型プリズム部3Aと全反射型プリズム部4Aとを備えたハイブリッド型プリズム部2をフレネルレンズ1に成形し、図8の透過率を実現したが、高入射角領域と比較すると小入射角領域での特性は若干低いものであった。この実施の形態3では、小入射角領域の透過率を改善する手法について説明する。
図11は実施の形態1で示したハイブリッド型プリズム部2の透過率と、従来の技術で示した屈折型プリズム部131Aの透過率とを比較する図である。
図8と同様に、図11の横軸、縦軸はそれぞれ入射角a[単位:度]、透過率[単位:百分率]である。ハイブリッド型プリズム部2の透過率は実線で、屈折型プリズム部131Aの透過率は1点破線でそれぞれ表している。
図4で説明したフレネルレンズ131は、小入射角領域において良好な透過率を有しているので、図11からも分かるように、ハイブリッド型プリズム部2の透過率と比較して、屈折型プリズム部131Aの透過率は特性変化角a0より低い入射角領域で高い透過率を示している。特性変化角a0はハイブリッド型プリズム部、屈折型プリズム部双方の透過率が一致した点での入射角である。
そこで、この実施の形態3では、ハイブリッド型プリズム部2を備えたフレネルレンズ1に屈折型プリズム部131Aを以下に示すように適用して、小入射角領域での透過率を改善する。
図12において、10は実施の形態3のフレネルレンズ、11A,11Bは実施の形態1で示したフレネルレンズ1のハイブリッド型プリズム部、12A,12Bは従来の技術で示したフレネルレンズ131の屈折型プリズム部、13はフレネルレンズ10の平面形状の出射面、m5は出射面13の法線である。
li3〜li6はそれぞれ各プリズム部11A,11B,12A,12Bへの入射光線であり、法線m5と入射角a1〜a4をそれぞれなしている。
特性変化角a0も含めた各入射角の大小関係は、a1>a2≧a0>a3>a4(またはa1>a2>a0≧a3>a4)である。したがって、プリズム部11Aの上方向(図12の上方)にフレネルレンズ10の最端部があり、プリズム部12Bの下方向(図12の下方)にフレネルレンズ10の光軸が存在する。
つまり、図12のフレネルレンズ10では、入射角a≧a0(またはa>a0)となるピッチにはハイブリッド型プリズム部11A,11Bを適用し、a0>入射角a(またはa0≧a)となるピッチには屈折型プリズム部12A,12Bを適用している。
特性変化角a0をプリズム部の断面形状の変化点として、特性変化角a0よりも小さな(または以下の)小入射角領域の各ピッチでは屈折型プリズム部11A,11Bを、特性変化角a0よりも大きな(または以上の)大入射角領域の各ピッチではハイブリッド型プリズム部12A,12Bを備えるようにしているので、フレネルレンズ10の透過率は特性変化角a0よりも低い入射角領域で図11のフレネルレンズ131の特性に、特性変化角a0よりも低い入射角領域で図11のフレネルレンズ1の特性になり、実施の形態1のフレネルレンズ1よりも小入射角領域の透過率を高くすることができる。
また、特性変化角a0近傍の透過率変化を滑らかにするために、次のようにしても良い。
図13において、14は実施の形態3のフレネルレンズ、15C〜15Hはそれぞれ実施の形態1で示したフレネルレンズ1のハイブリッド型プリズム部、16C〜16Fは従来の技術で示したフレネルレンズ131の屈折型プリズム部、17はフレネルレンズ14の平面形状の出射面、m6は出射面17の法線である。
li7〜li16はそれぞれ各プリズム部15C,15D,15E,16C,15F,15G,16D,15H,16E,16Fへの入射光線であり、法線m6と入射角a5〜a14をそれぞれなしている。
各入射角の大小関係は、a5>a6>…>a13>a14である。したがって、ハイブリッド型プリズム部15Cの上方向(図13の上方)にフレネルレンズ14の最端部があり、屈折型プリズム部16Fの下方向(図13の下方)にフレネルレンズ14の光軸が存在する。
フレネルレンズ14の最端部からハイブリッド型プリズム部15Cまでの各ピッチにはハイブリッド型プリズム部がそれぞれ成形されており、屈折型プリズム部16Fからフレネルレンズ14の光軸までの各ピッチには屈折型プリズム部がそれぞれ成形されている。
例えば入射角a10と入射角a11との間に特性変化角a0があるものとする。このとき、図13のように、プリズム部15C〜15Eおよびプリズム部16Cまでは3:1の混在比率、プリズム部15F〜15Gおよびプリズム部16Dまでは2:1の混在比率、プリズム部15Hおよびプリズム部16Eまでは1:1の混在比率で特性変化角a0近傍の入射角のプリズム部を成形している。
もちろん、各入射角の大小関係に対する特性変化角a0の割当や、特性変化領域のピッチ数、混在比率などはフレネルレンズ14の仕様に応じて定めるようにすれば良い。
さらに、特性変化角a0近傍の透過率変化を次のようにして滑らかにすることもできる。
図14において、18は実施の形態3のフレネルレンズ、19Aはフレネルレンズ18のハイブリッド型プリズム部、19B〜19Dはフレネルレンズ18のハイブリッド型プリズム部(媒介プリズム部)、19Eは屈折型プリズム部、19A−1〜19D−1はハイブリッド型プリズム部19A〜19Dを構成する全反射型プリズム部の入射面、19A−2〜19D−2はハイブリッド型プリズム部19A〜19Dを構成する屈折型プリズム部の入射面、19E−2は屈折型プリズム部19Eの入射面、20はフレネルレンズ18の平面形状の出射面、m7は出射面20の法線である。
li17〜li21はそれぞれ各ハイブリッド型プリズム部19A〜19D,屈折型プリズム部19Eへの入射光線であり、法線m7と入射角a15〜a19をそれぞれなしている。
21B〜21Dは入射角a16〜a18にそれぞれ対応した実施の形態1のハイブリッド型プリズム部であり、全反射面21B−1〜21D−1,入射面21B−2〜21D−2をそれぞれ備えている。この実施の形態3のハイブリッドプリズム部19B〜19Dと対照するために、1点破線で図示している。
各入射角の大小関係は、a15>a16>a17>a18>a19である。したがって、ハイブリッド型プリズム部19Aの上方向(図14の上方)にフレネルレンズ18の最端部があり、屈折型プリズム部19Eの下方向(図14の下方)にフレネルレンズ18の光軸が存在する。
フレネルレンズ18の最端部からハイブリッド型プリズム部19Aまでの各ピッチには実施の形態1のハイブリッド型プリズム部がそれぞれ成形されており、屈折型プリズム部19Eからフレネルレンズ18の光軸までの各ピッチには従来の屈折型プリズム部がそれぞれ成形されている。
つまり、図14において、面積の大小関係は、入射面19B−1>入射面19C−1>入射面19D−1,入射面19B−2<入射面19C−2<入射面19D−2となっており、a16〜a18と入射角が減少するにしたがって、全反射型プリズム部の入射面面積は入射面19B−1,入射面19C−1,入射面19D−1と微減し、屈折型プリズム部の入射面面積は入射面19B−2,入射面19C−2,入射面19D−2と微増している。
つまり、特性変化角a0がa16からa18の間とすれば(a16〜a18に相当する3ピッチが特性変化領域のピッチ)、入射角がa16からa18へと減少するのに従い、入射面19B−1〜19D−1の面積を微減し、入射面19B−2〜19D−2の面積を微増させるようにしている。
この際に、入射光線li18〜li20に対する入射面19B−1〜19D−1および入射面19B−2〜19D−2の所定の角度は、フレネルレンズ18の仕様に応じて定めるようにすれば良い。
また、例えば、入射面19B−1〜19D−1はハイブリッド型プリズム部21B〜21Dの入射面21B−2〜21B−Dとそれぞれ平行にして微減させ(図14の白ヌキ矢印)、入射面19B−2〜19D−2はハイブリッド型プリズム部21B〜21Dの屈折型プリズム部の入射面をそのまま用いて面積を微増させるようにしても良い。
なお、ここでは、3個のハイブリッド型プリズム部19B〜19Dを媒介プリズム部として用いて説明したが、媒介プリズム部の個数(つまり特性変化領域のピッチ数)は特に限定されない。
さらに、入射面19B−1〜19D−1,入射面19B−2〜19D−2の面積微増量・面積微減量は特に限定されることなく、特性が良くなるように定めれば良い。
また、この実施の形態3によれば、特性変化角a0近傍の特性変化領域の各ピッチにおいて、ハイブリッド型プリズム部15C〜15Hに対する屈折型プリズム部16C〜16Fの混在比率を入射角の減少に応じて増加するようにしたので、小入射角領域における透過率を改善し、特性変化角a0近傍の透過率変化を滑らかにすることができるという効果が得られる。
さらに、この実施の形態3によれば、特性変化角a0近傍の特性変化領域の各ピッチにおいて、入射角の減少とともに、入射面19B−1〜19D−1の面積を微減させ、入射面19B−2〜19D−2の面積を微増させたハイブリッド型プリズム部19B〜19Dを備えるようにしたので、小入射角領域における透過率を改善し、特性変化角a0近傍の透過率変化を滑らかにすることができるという効果が得られる。
なお、この実施の形態3を実施の形態2に適用するようにしても良い。
この実施の形態4では、実施の形態1で述べたハイブリッド型プリズム部2の先端刃角βおよび出射角fの最適値について述べる。
まず、入射面4Bと全反射面4Cとのなす先端刃角βの最適値について述べる。
図15は先端刃角βをそれぞれ45°(実線)、40°(二点破線)、35°(破線)とした場合のハイブリッド型プリズム部2の透過率Tallを示す図である。
β=45°(図8の場合)と比較すると、a=約40°以上の大入射角領域では、β=40°,35°いずれの場合も透過率は同等(90%以上)の特性を示している。
しかし、β=45°の場合にはa=約40°以下で透過率が減少してくる。一方、β=45°の場合と比較して、β=40°の透過率Tallはa=約35°の小入射角領域まで90%以上の高透過率を示していることが図15から分かる。さらに、β=35°の場合にはこの傾向がさらに顕著になり、高透過率領域はa=約30°まで広がっている。
つまり、a=約40°以下の小入射角領域では、先端刃角βの値をできる限り小さな角度にすることによって、透過率Tallの入射角依存性を軽減して、広範囲の入射角に対して高透過率を実現することができる。
つまり、入射角a=約15°において、40°のときの先端刃角βの透過率と、45°の先端刃角βの透過率とが等しくなり、入射角a=約15°以上と入射角a=約15°以下の領域で両者の透過率の高低関係が逆転しているので、a=15°〜90°の領域ではβ=40°,a=0°〜15°の領域ではβ=45°とすることによって、a=15°〜90°でβ=40°の特性(図15の2点破線)と、a=0°〜15°でβ=45°の特性(図15の実線)とを組み合わせた透過率を実現することができる。
また、実施の形態3で述べた手法を用いて透過率の低下を補償するようにしても良い。この場合には、屈折型プリズム部の特性(図15の1点破線)と例えばβ=40°のハイブリッド型プリズム部の特性とを組み合わせた透過率になる。
換言すると、ハイブリッド型プリズム部2の先端刃角βをフレネルレンズ1の製造性を損なわない範囲でできるだけ鋭角(最鋭角度)に設定にすることによって、透過率をさらに改善することができるという効果が得られる。また、最鋭角度の先端刃角βの透過率よりも最鋭角度以外の先端刃角βの透過率の方が大きくなる入射角領域では、最鋭角度よりも先端刃角βを大きくすることにより、入射角全領域にわたって高透過率を実現できるという効果が得られる。
図16は出射角fをそれぞれ0°(実線)、3°(二点破線)、5°(破線)とした場合のハイブリッド型プリズム部2の透過率Tallを示す図である。
図16から、a=約40°以上の大入射角領域では、f=0°,3°,5°いずれの場合も透過率は同等(90%以上)の特性を示している。また、a=約40°以下の小入射角領域では、f=0°よりもf=3°の場合に、さらにf=3°よりもf=5°の場合に透過率Tallが改善されている。
したがって、出射角fに関しては、a=約40°以下の小入射角領域で出射角fを大きくすることによって透過率Tallを改善することができる。
小入射角領域で出射角fを大きくすると、次に示すような効果も得られる。
図17Aにおいて、31は光を発する発光体(照明光源手段)、32は発光体31を焦点に備える放物面鏡(照明光源手段)、33は放物面鏡32が反射した光を集光する集光レンズ(集光光学手段)、34は液晶などのライトバルブ(光変調手段)である。ライトバルブ34は、集光レンズ33が集光した光を空間的に強度変調する。
35はライトバルブ34が強度変調した光を結像させる投影光学レンズ(投影光学手段)、36は投影光学レンズ35が結像した光を背面から受光して画像を表示する背面投影型のスクリーンである。スクリーン36は、広がった光線をほぼ平行光にした上で結像させて画像を表示し、広い範囲に光を拡散して視野範囲を広げる働きをする。
スクリーン36において、37が各実施の形態で示したフレネルレンズであり、38はレンチキュラーである。
39,40はそれぞれ光軸である。光軸39は、放物面鏡32,集光レンズ33,ライトバルブ34によって共有されている。光軸40は、投影光学レンズ35,フレネルレンズ37およびレンチキュラー38によって共有されており、フレネルレンズ37の出射面と直交している。
光軸39と光軸40とは互いに交わらず、ライトバルブ34に依存した最適設定角をなす独立の関係にある。つまり、光軸39を共有する放物面鏡32,集光レンズ33,ライトバルブ34は光軸40に対して偏芯配置されている。
図17Bにおいて、41は画像表示装置本体、42はフレネルレンズ37に設けられたハイブリッド型プリズム部の輪帯であり、スクリーン36に対する輪帯42の関係を表現するために図示してある。43は画像表示装置41のハカマ部であり、放物面鏡32,集光レンズ33,ライトバルブ34などが収納されている。
偏芯配置されたライトバルブ34からスクリーン36へ光を投影する以外は図2の画像表示装置と同様の動作であり、フレネルレンズ37の動作も前述しているため、説明を省略する。
このように構成された画像表示装置を偶数台だけ用意し、次の図18に示すようにマルチ構成で利用されることが良くある。
図18A〜図18Cは出射光線の出射角を最適化する手法を説明するための図であり、2台の画像表示装置をマルチ構成している。図18Aは出射角を最適化したフレネルレンズの断面図、図18Bは図18Aのフレネルレンズを備えたスクリーンの正面図、図18Cは図18Bの画像表示装置をマルチ構成した場合の利用者との関係を示す図である。
図18A〜図18Cで示した画像表示装置は、一方の画像表示装置41Aの天地を逆転してハカマ部43Aを上側にし、ハカマ部43Bを下側にした画像表示装置41Bのスクリーン36B上部と画像表示装置41Aのスクリーン36A上部とを合わせたマルチ構成になっている。このようにして、1つの画像を分割して画像表示装置41A,41Bにそれぞれ与え、2つのスクリーン36A,36Bによって1つの一体画像として表示するので、より大きな画像を表示できるようになっている。
44は画像表示装置41A,41Bの利用者、45は利用者44の視野角である。また、lo3A〜lo7A,lo3B〜lo7Bはそれぞれフレネルレンズ37A,37Bの各ピッチから出射される出射光線である。光軸40Aに近い順に出射光線lo3A〜lo7Aとなっており、光軸40Bに近い順に出射光線lo3B〜lo7Bとなっている。光軸40A,40Bに近い出射光線、つまり輪帯42A,42Bの内側(光軸40A,40B側)の出射光線ほど大きな出射角になるように設定されている。
図18Cに示すように、マルチ構成した2台の画像表示装置41A,41Bの一体画像を利用者44は視野角45で視認する。この際に、通常のフレネルレンズを用いた画像表示装置であれば、フレネルレンズの出射光線は全て光軸に対して平行一様になる。一方、レンチキュラー38A,38Bは視野特性を有しており、各出射光線の主光線方向が最も明るく、主光線に対して斜めから見るほどに暗くなる。したがって、視野角が大きくなるハカマ部43A,43B近傍では、スクリーンに対して法線方向に出射する主光線を視野角に応じて斜め方向から見るので、明るさが減少してしまうのが普通である。
また、図19に示すように、4台の画像表示装置41A,41B,41C,41Dを組み合わせてマルチ構成の画像表示装置として用いる場合、各画像表示装置41A,41B,41C,41Dが輪帯42A,42B,42C,42Dより内側(光軸40A,40B,40C,40D側)では出射角fを大きく設定する。つまり図18A〜図18Cと同様に、利用者44Aの方向に各出射光の主光線を向けるとともに、輪帯42A,42B,42C,42Dの外側(スクリーン36A,36B,36C,36Dを構成するフレネルレンズのレンズ外周側)では、光軸40A,40B,40C,40Dに対して平行になるように出射光線を設定する。図18A〜図18Cの場合と同様に、輪帯42A,42B,42C,42Dはそれぞれ、スクリーン36A,36B,36C,36Dを構成するフレネルレンズの矩形形状の4辺で、光軸40A,40B,40C,40Dに最も近い1辺とのみ交差する輪帯(境界輪帯)であり、スクリーンの視野特性や透過率などから定めることができる。
なお、図17A,図17B,図18A〜図18C,図19によっても明らかなように、以上の各実施の形態で説明したフレネルレンズと、光を結像して拡散するレンチキュラーなどの光結像拡散手段とを用いてスクリーンを構成するようにしても良く、広い画角の投影光を入射角にあまり依存することなく高透過率で受光することができるので、あらかじめ定められた奥行仕様の下でより大画面の画像を高輝度で表示できるスクリーンを構成することができるという効果が得られる。
また、以上の各実施の形態で説明したフレネルレンズをスクリーンに適用する場合には、フレネルレンズの出射面にレンチキュラーを一体成形しても良い。このようにすることで、部品点数を減らしたスクリーンを構成することができるという効果が得られる。
図20はこの発明の実施の形態5による背面投影型の画像表示装置の全体構成を示す図である。
図20の画像表示装置は、フレネルレンズ51と拡散板52とを有するスクリーン53および画像光源54を備え、画像光源54から投影された画像光をスクリーン53に表示する装置である。スクリーン53は、アスペクト比が4:3であり、サイズが50インチのスクリーンである。
スクリーン53は、画像光源54との水平方向の距離が450mm,スクリーン53の下端と画像光源54との垂直方向の距離が200mmとなるように配置されている。
拡散板52は、レンチキュラーレンズ等を有し、画像光を所定の範囲に拡散する役割を果たす光拡散手段である。
フレネルレンズ51は、微少な単位プリズム部を並べて配置したレンズであり、同心円状に単位プリズム部を配置したサーキュラータイプのフレネルレンズである。フレネルレンズ51の同心円の中心から延ばした垂線上に画像光源54が配置されており、フレネルレンズ51として使用するのはフレネルレンズ51の中心から外れた部分である(図20参照)。
フレネル中心側からフレネル周縁側に向って、フレネルレンズ51はその断面形状によって領域A1,A2,A3の3つの領域に分けることができる。
まず基本的な形態として、領域A2について説明する。
領域A2における単位プリズム部(ハイブリッド型プリズム部)は、入射面(第2入射面)51Aおよび全反射面51Bを有し、頂角が40°の全反射型プリズム部U1と、入射面(第1入射面)51Cおよび無効面51Dを有する屈折型プリズム部U2とを備えている。この単位プリズム部とは、隣接する単位プリズム部の無効面51Dと全反射面51Bとの交線である谷線Tから隣の谷線Tまでの間を指しており、単位プリズム部のピッチP=0.1mmとなっている。なお、このピッチP=0.1mmは、他の領域A2,A3の単位プリズム部も同じ値となっている。
図23Aは、屈折型プリズム部U2と同等な形状の単位プリズム部のみが形成されたフレネルレンズ(屈折型プリズム部を備えた従来のフレネルレンズ)を示している。既に説明したように、入射面51Cに投影される光束R1inは、入射面51Cによって屈折して所望の方向に出光する。しかし、無効面51Dに投影される光束R2inは、無効面51Dによって反射または屈折して、迷光となってしまう。
図23Bは、全反射型プリズム部U1と同等な形状の単位プリズム部のみが形成されたフレネルレンズ(全反射型プリズム部を備えた従来のフレネルレンズ)を示している。既に説明したように、入射面51Aに投影される光束のうちで光束R3inは、全反射面51Bによって全反射して所望の方向に出光する。しかし、残りの光束R4inは、全反射面51Bに到達することができず、迷光となってしまう。
図23Cは、この実施の形態5におけるフレネルレンズ51を示している。フレネルレンズ51では、全反射型プリズム部U1および屈折型プリズム部U2のみで形成された図23Aおよび図23Bに示したフレネルレンズが所望の方向(この実施の形態5の場合、フレネルレンズ51に略垂直な方向)へ出光できない光束の一部を、所望の方向に出光できるように、全反射型プリズム部U1および屈折型プリズム部U2を組合わせた形状を単位プリズム部としている。
この配置は、別の見方をすると、屈折型プリズム部U2において無効面51Dに投影される光束R2inの光路上に、フレネル中心側の隣接ピッチの全反射型プリズム部U1が配置されているとも見ることができる。したがって、フレネルレンズ51は、光束R2inの一部を全反射して所望の方向に偏向して出光するようになっている。すなわち、全反射型プリズム部U1および屈折型プリズム部U2各々の短所を補うことができるような位置にそれぞれが配置されている。
また、図22の領域A2の1ピッチにおいて、入射面51Cを延長した面が周辺側の谷線Tを通り、入射面51Aを延長した面がフレネル中心側の谷線Tを通るように、全反射型プリズム部U1および屈折型プリズム部U2が配置されている。このように配置されている理由は、フレネルレンズ51の製造方法に起因している。次にフレネルレンズ51の製造方法に付いて説明する。
フレネルレンズ51は樹脂成形によって製造される。したがって、その反転形状を形成したレンズ成形型を製造する必要がある。
図24A〜図24C,図25A〜図25Cにおいて、符号Cはレンズ成形型、符号Bは例えばダイヤモンドバイトなどのレンズ成形型Cを切削するためのバイトである。
レンズ成形型Cは、バイトBによって切削加工を行って作製するが、画像光が通過する面(入射面51A,全反射面51B,入射面51C)に対応するレンズ成形型の面は、切削時の筋やムラ等が生じないように、バイトB(またはチップ)の先端(コーナ)ではなく、切り刃(斜面部分)で切削する必要がある。また、フレネルレンズのピッチは0.1mm前後(フレネルレンズ51では0.1mm)であるのに対して、バイトBのチップは2〜3mmもの大きさがある。
切削条件(A)
入射面51Cを延長した面は、谷線Tを通る(図25B)または谷線Tよりも出光側を通る(図25C)。
切削条件(B)
入射面51Aを延長した面は、谷線Tを通る(図24B)または谷線Tよりも出光側を通る(図24C)。
この実施の形態5におけるフレネルレンズ51は、頂角が40°のバイトB(チップ)を使用して、全反射型プリズム部U1および屈折型プリズム部U2に対応する部分の切削を行っている。
図26はこの発明の実施の形態5によるレンズ成形型製造方法を示すフローチャートである。また図27A〜図27Dおよび図28A〜図28DはバイトBによるレンズ成形型Cの切削の進行状況を示す図であり、図27A〜図27Dは屈折型プリズム部U2を主単位プリズム部とみなした場合、図28A〜図28Dは全反射型プリズム部U1を主単位プリズム部とみなした場合である。
図26において、ステップST1(切削開始ピッチ番号設定ステップ)でピッチ番号n=1が設定される。ステップST1からステップST2(主単位プリズム部切削ステップ)へ移行すると、まず第1ピッチ(切削対象ピッチ)P1における主単位プリズム部の切削作業がバイトBによって行なわれる。このときの作業状況は、図27Aまたは図28Aで示されるようになっており、レンズ成形型Cに対してバイトBが主単位プリズム部の切削を行なう。
例えば図27Bに示すように、主単位プリズム部として屈折型プリズム部が切削された第1ピッチP1に対して全反射型プリズム部を切削する際には、切削条件(B)にしたがって、第1ピッチP1のフレネル中心側にある谷線T1を全反射面51Aの延長面SA1が通過するか、またはフレネル中心側の谷線T1よりも入射面51Aの延長面SA1が出射側になるように切削される。
同様に、図28Bの場合、主単位プリズム部として全反射型プリズム部が切削された第1ピッチP1に対して屈折型プリズム部を切削する際には、切削条件(A)にしたがって、第1ピッチP1のフレネル周縁側にある谷線T0を入射面51Cの延長面SC1が通過するか、またはフレネル周縁側の谷線T0よりも入射面51Cの延長面SC1が出射側になるように切削される。
続いてステップST3では、第2ピッチ(切削対象ピッチ)P2における副単位プリズム部の切削作業(図27D,図28D)が行なわれる。もちろん、第1ピッチP1の場合と同様に、切削条件(A)または切削条件(B)を満たすように、第2ピッチP2に対する切削作業がステップST3で行なわれる。
図28Bの場合もやはり同様に、主単位プリズム部として全反射型プリズム部が切削された第2ピッチP2に対して屈折型プリズム部を切削する際には、切削条件(A)にしたがって、第2ピッチP2のフレネル周縁側にある谷線T1を入射面51Cの延長面SC2が通過するか、またはフレネル周縁側の谷線T1よりも入射面51Cの延長面SC2が出射側になるように切削される。
このようにして製造したレンズ成形型Cに樹脂を流し込んで硬化させ、硬化した樹脂からレンズ成形型Cを取り外すとフレネルレンズ51が完成する。このフレネルレンズ51は、50インチという大型のレンズシートであり、さらに斜め方向から画像光が投影されるので、入射位置によって画像光の入射角度の差が大きくなる。全反射型プリズム部U1は、入射角が大きい場合に所望の方向に出光する光束が多くなり、逆に屈折型プリズム部U2は、入射角が小さい場合に所望の方向に出光する光束が多くなる。したがって、入射角が大きい入射位置には全反射型プリズム部U1が、入射角が小さい入射位置には屈折型プリズム部U2がそれぞれ適している。
一方、画像光源54から遠い側になる領域A3(フレネル周辺側)では、全反射型プリズム部U1を主単位プリズム部、屈折型プリズム部U2を副単位プリズム部として、全反射型プリズム部U1の占める割合よりも、屈折型プリズム部U2の占める割合を少なくしている。
ここで、全反射型プリズム部U1および屈折型プリズム部U2が占める割合を変化させるには、レンズ成形型Cを切削するバイトBの切り込み深さを位置により変化させて、全反射型プリズム部U1および屈折型プリズム部U2の高さが変わるようにして行った。
図29では線図L1と線図L2とが半径250mmの位置で交差しており、この半径250mmを境界として、半径250mm以下の領域では全反射型プリズム部U1より屈折型プリズム部U2の効果が高く(L1<L2)、半径250mm以上の領域では、逆に全反射型プリズム部U1の効果が高いことが解る。フレネルレンズ51では、この半径250mmを目安として、全反射型プリズム部U1および屈折型プリズム部U2の占める割合を変化させている。
図29を見ると分かるように、全反射型プリズム部U1は、半径200mm以下の部分には存在せず、半径200mmから占める割合が増えはじめ、半径250mmにおいてレンズ比率が1(領域A2における割合と同じ)にまで達して、半径250mm以上においては、レンズ比率1を維持したままである。
フレネルレンズ51は、このように全反射型プリズム部U1および屈折型プリズム部U2が占める割合を変化しているので、半径250mmまでが領域A1の形状となり、半径250〜300mmが領域A2の形状、半径300mm以上が領域A3の形状となっている。
なお、屈折型プリズム部U2を半径250mm以上で徐々にレンズ比率が小さくなるようにして、領域A2を省いても良いが、この実施の形態5では、変化を滑らかにして、表示される画像の輝度差を少なくするために、領域A2を設けている。
この実施の形態5によるフレネルレンズ51を作製して、従来のものに比べて透過率が向上していることを確認した。
ここで、特開昭61−52601号公報に記載されている手法に従って、図6の従来技術によるフレネルレンズ110と、この実施の形態5のフレネルレンズ51とが比較できるように、形状以外の仕様を同様にして両者を作製した。
図30は従来技術によるフレネルレンズ110の構成を示す図である。全反射型プリズム部および屈折型プリズム部の基本形状をフレネルレンズ51と同形状とし、ピッチPも0.1mmとして同じにした。
図32はこの実施の形態5のフレネルレンズ51および従来技術によるフレネルレンズ110の透過率をそれぞれ示す図である。図32では、フレネルレンズ51の透過率を線図L6で示し、フレネルレンズ110の透過率を線図L7で示した。なお、図29および図31と同様に、線図L1,L2も併せて示した。線図L6は、L1,L2およびL7のいずれと比較しても、ほぼ全ての領域で透過率が高くなっており、この実施の形態5によるフレネルレンズ51の透過率が高いことが確認できた。
また、この実施の形態5によれば、1つのバイトBを使用してレンズ成形型Cの切削を行うことができるので、フレネルレンズの製造も簡単にすることができる。
したがって、このフレネルレンズ51を使用するスクリーン53も全体の透過率が高くなり、背面投影型プロジェクション表示装置の表示をより明るくすることができると共に、低価格にすることができる。
以上の説明に限定されることなく、この実施の形態5は種々の変形や変更が可能である。
以上の説明では、フレネルレンズ51は3種類の領域A1,A2,A3を備えている例を示したが、この実施の形態5はこれに限らず、これらの組み合わせを適宜変更しても良い。例えば、領域A1および領域A2のみでも良いし、領域A1,A2,A3のいずれか1つの領域であっても良い。
以上の説明では、フレネルレンズ51の出光側の面は平坦である例を示したが、この実施の形態5はこれに限らず、他のフレネルレンズ形状を追加しても良いし、微細凹凸などの拡散手段を設けても良い。
以上の説明では、画像光源54が画像光を直接フレネルレンズ51に投影する例を示したが、この実施の形態5はこれに限らず、例えば、画像光源54からの画像光を反射や屈折等させて光路を変更してから、フレネルレンズ51に投影するミラーやプリズム等の光学手段を設けても良い。
実施の形態5で示したレンズ成形型製造方法によってレンズ成形型を製造すると、金属の展性によってレンズ成形型に歪が発生してしまう。当然、レンズ成形型の歪はフレネルレンズの光学面の歪になり、その光学性能を劣化させる要因につながる。
この実施の形態6では、レンズ成形型の歪の発生についてまず説明し、この歪の発生を回避してフレネルレンズの光学性能を保証できるレンズ成形型製造方法について述べる。また、実施の形態3で説明した特性変化角近傍の媒介プリズム部(または実施の形態5で説明したレンズ比率を変化させる手法)を用いたフレネルレンズにおいて、レンズ成形型の歪が影響しても良好な光学性能を実現できるレンズ成形型製造方法についても言及する。
まず始めに、第1ピッチP1の全反射型プリズム部成形型をレンズ成形型Cに対してバイトBで切削し(図33A)、続いて、第1ピッチP1の屈折型プリズム部をレンズ成形型CにバイトBで切削する(図33B)。これによって、第1ピッチP1におけるハイブリッド型プリズム部成形型の切削が完了する。このときの切削条件は実施の形態5で述べた通りである。
次に第2ピッチP2の切削作業へと移行する。第2ピッチP2の全反射型プリズム部成形型をレンズ成形型Cに切削した状態は図33Cのようになり、このとき、第1ピッチP1の全反射型プリズム部成形型の全反射面と、第2ピッチP2の全反射型プリズム部成形型の入射面との間に鋭利な谷線T1の先端部が生じる。
つまり、谷線T1先端部の幅はその頂点ほど狭くなっているため、これに応じてその強度も弱くなっている。したがって、図33Eに示すように鋭利な谷線T1先端部に対してバイトBを押し当てると、第2ピッチP2から第1ピッチP1の方向へ生じる押当力が谷線T1先端部の頂点に近い部分ほどより大きく働くようになり、金属の展性によって、図33Eの点線円NG内でレンズ成形型Cの歪が発生することになる。
図33Fでは、谷線T1先端部の頂点ほどバイトBによって第2ピッチP2から第1ピッチP1の方向へ押込まれており、第1ピッチP1の全反射面の切削形状に歪が生じている。例えば、設計通りの全反射面の切削形状を2点破線Realで示すと、レンズ成形型Cの歪は1点破線の曲線(曲面)Errで表される。
以下、不図示の第3ピッチP3以降においても同様の切削作業が繰り返されるため、第n+1ピッチPn+1(nは自然数)の屈折型プリズム部を切削する際に、切削済の第nピッチPnと切削中の第n+1ピッチPn+1との間の谷線Tnの先端部に歪が発生してしまう。このように製造されたレンズ成形型Cによるフレネルレンズは、歪が生じた分だけ全反射面の形状が変形してその光学性能が劣化し、例えば光損失の増加や、歪の度合いが各ピッチでランダムに発生した場合には、出射光強度の不自然な不連続性につながってしまうことになる。
図34はこの発明の実施の形態6によるレンズ成形型製造方法を示すフローチャートであり、実施の形態5の図26と同一符号は相当するステップを表している。また、図35A〜図35Fは図34のレンズ成形型製造方法にしたがって切削されていくレンズ成形型Cの状態を示す図であり、図28や図33A〜図33Fに対応する構成については同一符号を付してある。図33A〜図33Fと同様に、図35A〜図35Fでは、全反射型プリズム部成形型、屈折型プリズム部成形型の順番でフレネル中心からフレネル周縁へ切削作業が進められていく。
そして、ステップST2の次にステップST6(ピッチマージン設定ステップ)を設けている点がこの実施の形態6の特徴である。このステップST6では、第1ピッチP1におけるピッチマージンΔP1を設定する。ここで、切削作業中の第n+1ピッチPn+1におけるピッチマージンΔPn+1とは、第n+1ピッチPn+1の屈折型プリズム部成形型(副単位プリズム部)を切削する際にバイトBの頂点がレンズ成形型Cに最初に接する部分から、切削済の隣接第nピッチPnの境界までの切削進行方向上の距離である。
このピッチマージンΔP1がステップST6で設定されるとステップST7(副単位プリズム部切削ステップ)へと移行して、切削条件(A)または切削条件(B)と、ピッチマージンΔP1(≧0)とにしたがって、第1ピッチP1の屈折型プリズム部成形型を切削する。このステップST7のときの切削作業状態は図35Bのようになっている。図33Bと比較すると分かるように、フレネル中心からフレネル周縁の方向へピッチマージンΔP1の分だけ屈折型プリズム部成形型をズラして切削している。
ステップST6では第2ピッチP2のピッチマージンΔP2(≧0)を設定し(図35D)、ステップST7ではピッチマージンΔP2にしたがって屈折型プリズム部成形型の切削を行なう(図35E)。ステップST6のピッチマージンを設定する理由が明らかになるのはこのときである。
以後、ステップST5で切削作業の完了が判定されるまで、ピッチマージンΔPnを持って各ピッチPnの屈折型プリズム部が切削されていく。このように図34のレンズ成形型製造方法によれば、レンズ成形型Cに歪が発生しないため、このレンズ成形型Cによって製造されたフレネルレンズ各ピッチの全反射面を設計通りの形状に保つことができ、フレネルレンズの光学性能を保証することができる。
説明を補足すると、任意の第nピッチPnにおけるピッチマージンΔPnは全て一定の微小値としても良いし、異なる微小値に設定しても良い。
また、上記の各図では、全反射型プリズム部、屈折型プリズム部をそれぞれ主単位プリズム部、副単位プリズム部とし、フレネル中心からフレネル周縁へ切削する場合を例としたが、この実施の形態6はこれに限定されず、屈折型プリズム部、全反射型プリズム部をそれぞれ主単位プリズム部、副単位プリズム部として、フレネル周縁からフレネル中心へ切削するようにした場合にも適用することが可能である。
図36A,図36Bはダミープリズム部を備えていないフレネルレンズの構成および動作を説明するための図であり、図37A,図37Bはダミープリズム部を備えたフレネルレンズの構成および動作を説明するための図である。
図36A,図37Aでは、図36A,図37Aのフレネルレンズの断面形状をそれぞれ拡大して示しており、図36B,図37Bでは、図36A,図37Aの全反射型プリズム部の高さRfl(実線)と屈折型プリズム部の高さRfr(1点破線)とを各ピッチ毎にそれぞれ示している。高さは、フレネルレンズの光軸方向に対するプリズム部の切削深さを言う。図36Aおよび図36B,図37Aおよび図37Bでは、いずれも紙面下方がフレネル中心、紙面上方がフレネル周縁である。
また、71h−1,71h,…,71i−4〜71i+1,…,71j−1〜71j+1は各ピッチPh−1〜Pj+1にそれぞれ設けられた全反射型プリズム部、72h−1,72h,…,72i−4〜72iは各ピッチPh−1〜Piにそれぞれ設けられた屈折型プリズム部、73はフレネルレンズ70の出射面である。
さらに、図37Aのみにおいて、72i+1,…,72j−1,72jは各ピッチPi+1,…,Pj−1,Pjにそれぞれ設けられた屈折型プリズム部(ダミープリズム部)である。この屈折型プリズム部72i+1〜72jは、図37Bに示すように全反射型プリズム部71i+1〜71jの高さRflと比較して、その高さRfrを低く設定しており(Rfr=0)、入射光の受光に関与していない。
さらに図37Aのフレネルレンズ70では、屈折型プリズム部72i+1〜72jも設けているので、全反射型プリズム部71h−1〜71i−1に加えて、全反射型プリズム部71i〜71j−1の全反射面にも歪(点線円NG内)が発生している。この屈折型プリズム部72i+1〜72jは、各ピッチPi+1〜Pjに意識して設けているものである。この屈折型プリズム部72i+1〜72jの有無によって、図36Aのフレネルレンズ70と図37Aのフレネルレンズ70との違いが特徴付けられる。
図36Aにおいて、ピッチPi−4からフレネル中心までの中心側ピッチ群では、比較的小さな入射角で光線が入射するので、全反射型プリズム部71i−4,71h,71h−1,…と屈折型プリズム部72i−4,72h,72h−1,…とをともに備えたハイブリッド型プリズム部を成形してある。全反射型プリズム部71i−4,71h,71h−1,…と、屈折型プリズム部72i−4,72h,72h−1,…との中心側ピッチ群における各高さRfl,Rfrは図36Bのように1:1になっている。
そして、図36Aの中心側ピッチ群から周縁側ピッチ群へ移行する領域に存在するピッチPi−3からピッチPiまでの媒介ピッチ群では、図36Bに示すように、フレネル中心側からフレネル周縁側のピッチになるほど、屈折型プリズム部72i−3,…,72iの高さRfrだけを徐々に減少させたハイブリッド型プリズム部(媒介プリズム部)を成形している。これは、中心側ピッチ群から周縁側ピッチ群へ移行する際の透過率特性を滑らかにすることが目的であり、この図36Aのフレネルレンズ70のように媒介ピッチ群を設けることで、原理的には透過率特性を滑らかすることができる。
一方、図37Aのフレネルレンズ70では、全反射型プリズム部の全反射面に点線円NG内の歪が発生することを想定し、図36Aのフレネルレンズ70の構成に加えて、前述したように屈折型プリズム部72i+1〜72jをわざと設けるようにしている。このため、図36Aのフレネルレンズ70と異なり、ピッチ間における透過率の不連続性を解消できるようになっている。
図38A,図38Bは図36Aのフレネルレンズ70と図37Aのフレネルレンズ70との違いを説明するための図である。図38Aは図36Aのフレネルレンズ70を、図38Bは図37Aのフレネルレンズ70を、ピッチPi−1〜ピッチPjをそれぞれ拡大した図になっている。図36A,図37Bと同一符号は相当する構成である。
図38AのピッチPi−1において、フレネル周縁側の隣接ピッチPiに最後の屈折型プリズム部72iが設けられているので、全反射型プリズム部71i−1の全反射面74i−1には点線円NG内の歪が生じている。したがって、全反射型プリズム部71i−1の入射面75i−1で受光した入射光束76i−1は、その全てが全反射面74i−1で全反射されて出射面73から出射さる訳ではない。つまり、一部の光束77i−1は入射面75i−1で屈折した後に点線円NG内の歪によって本来の全反射方向とは異なる方向へ散乱されるので、光損失が生じる。
一方、図38AのピッチPiでは、フレネル周縁側に隣接するピッチPi+1に屈折型プリズム部が存在しないため、ピッチPiの全反射型プリズム部71iの全反射面74iには歪が生じていない。したがってこのピッチPiでは、全反射型プリズム部71iの入射面75iで受光した光束76iが全反射面74i全面で全反射して出射面73から出射するため、ピッチPi−1と異なって光損失が生じていない。
この図38Aの場合に対して、図38Bに示したフレネルレンズ70では、全反射面74iに点線円NG内の歪が生じることを想定し、ピッチPiのフレネル周縁側に隣接するピッチPi+1にも光の受光に関与しない屈折型プリズム部72i+1をわざと設けている。このようにすることで、ピッチPiでも、一部の光束77iは入射面75iで屈折した後に点線円NG内の歪によって本来の全反射方向とは異なる方向へ散乱されることで、ピッチPi−1と同様に光損失を生じさせて、透過率の不連続性を解消している。
以下、フレネル周縁側の各ピッチにも同様にして、受光に関与しない屈折型プリズム部を屈折型プリズム部72j−1,72jに至るまで設けて透過率の不連続性を解消している。そして、フレネルレンズ70への入射光の入射角が充分に大きくなり、全反射面の全面にわたって全反射しなくなったピッチ以降において、ダミーの屈折型プリズム部を完全に消滅するようにしている。
このように、全反射型プリズム部71j−1,71jが設けられる周縁側ピッチ群に至るまで、受光に関与しない屈折型プリズム部72i+1〜72jを設けるようにすることで、点線円NGの歪に起因した透過率の不連続性を全て解消することができる。
実施の形態1で説明したように、屈折型プリズム部は無効面を備えており、この無効面で受光された入射光束(無効光線群)は、フレネルレンズ内部で迷光となって出射面から出射し、スクリーン上にゴーストを発生させる要因となる。また、入射光の入射角の大きさによっては、全反射型プリズム部へ入射しても全反射面で全反射されない光線(俗に表現すれば、全反射面を‘空振り’する空振光線)も存在し、これも迷光となってゴーストを発生させる。この実施の形態7では、迷光を吸収してゴーストを軽減する構成を入射面側や出射面側に施したフレネルレンズについて説明する。
図39はこの発明の実施の形態7によるフレネルレンズの断面形状を示す図であり、無効光線に起因するゴーストを軽減する構成をフレネルレンズの入射側に設けた場合である。図9と同一符号は相当する構成である。
図39において、81は屈折型プリズム部3Aの無効面3Z,3Z−1,…にそれぞれ設けられた光吸収層である。
光吸収層81は、各ピッチの無効面3Z,3Z−1,…へ入射する無効光線lieを吸収する働きをする。無効面3Z,3Z−1,…に光吸収層81を設けることにより、無効光線によるフレネルレンズ1内部の迷光の発生を防ぐことができるようになり、スクリーン上に発生するゴーストを軽減できるという効果が得られる。
図40において、82はフレネルレンズ1の出射面5に設けられた迷光吸収板である。迷光吸収板82はフレネルレンズ1の出射面5と平行な入射面および出射面を有する平行平板であり、光を透過する光透過層83と、光を吸収する薄膜の光吸収層84とが、フレネルレンズ1の不図示の光軸と平行になるように交互に積層されている。
図40に示すように、屈折型プリズム部3Aの入射面3Bや全反射型プリズム部4Aの入射面4Bで受光した光線b3,b4の光路と比較すると、無効面3Z,3Z−1,…から入射したフレネルレンズ1内部の迷光be1や全反射型プリズム部4Aの入射面4Bから入射して全反射面4Cを空振りした空振光線の迷光be2は、フレネルレンズ1の径方向に向ってより大きく進行するため、フレネルレンズ1の出射面5から出射して光線be1’,be2’になると、フレネルレンズ1の光軸と平行に積層された各光吸収層84によって吸収されるようになる。
なお、光透過層83と光吸収層84との積層構造は、図41Aのようにフレネルレンズ1の光軸を中心として同心円状(放射状)にしても良いし、図41Bのように光透過層83や光吸収層84が紙面左右方向へ広がるように、光透過層83,光吸収層84を紙面上下方向へ積層しても良い。この場合、縦横比3:4のスクリーンに適用すると、紙面上下方向が3,紙面左右方向が4に当たる。
また、光吸収層84の積層間隔(光透過層83の厚さ)は、フレネルレンズ1のピッチ間隔に合せても良いし、フレネルレンズ1の光軸からの距離に応じて変化させても良く、仕様に応じて自由に設計可能である。付け加えれば、光吸収層84の積層構造は、フレネルレンズ1,不図示のレンチキュラーの周期構造との干渉によるモアレ縞の発生を避けるようなピッチに設定すべきである。
さらに、光吸収層84を埋め込む複数のスリットを図41Aや図41Bの積層パターンでフレネルレンズ1の出射面5側に作成し、これらのスリットに光吸収層84を設けても良い。この際、光吸収層84として、上記複数のスリット内に光吸収性のある塗料を充填することで形成するのが適当である。このように、フレネルレンズ1の出射面5に迷光吸収板82を一体成形することにより、部品点数を削減できるようになる。
図42において、85はフレネルレンズ1の出射面5側に設けられた光吸収板であり、フレネルレンズ1の出射面5と平行な入射面および出射面を有する平行平板である。
図40でも述べた通り、迷光be1や迷光be2はフレネルレンズ1の径方向へより大きく進行するため、屈折型プリズム部3Aの入射面3Bや全反射型プリズム部4Aの入射面4Bで受光して出射面5から出射した光線b3’,b4’の光路長B3’,B4’と比較すると、光吸収板85内の迷光be1’,be2’の光路長BE1’,BE2’の方が大きくなる。この両者の光路差の分だけ光吸収板85によって迷光be1’,be2’の方が大きく吸収され、光吸収板85から出射するときの迷光be1’,be2’の強度を低下できる。
また、光吸収板85の内部(出射面)で多重反射する迷光be3,be4は、多重反射の回数に応じてその光路長がさらに長くなって大きく吸収されるため、迷光be1’,be2’よりも強度が低下し、全く問題にならない。
さらに、光吸収板85の入射面側で反射した迷光be5,be6はフレネルレンズ1の各部位で(多重)屈折・反射してから光吸収板85へ入射するため、反射の際にフレネルレンズ1の各部位で屈折・反射してフレネルレンズ1から出射する光が屈折・反射の各界面で受ける損失分だけさらに強度が低下する。
このように、光吸収板85を利用することによって、簡単な構成で迷光を吸収することができ、スクリーン上に発生するゴーストを軽減できるという効果が得られる。
なお、図39〜図42のゴーストを軽減する各構成を任意に組み合わせて迷光を吸収しても良い。例えば、光吸収層81と迷光吸収板82との組合せや、光吸収層81と光吸収板85との組合せをフレネルレンズ1に適用することにより、迷光をさらに吸収することができるようになり、スクリーン上のゴーストを軽減できるという効果が得られる。
また、この実施の形態7によれば、フレネルレンズ1の光軸と略平行になるように、複数の光透過層83間に複数の光吸収層84を積層した迷光吸収板82を出射面5に備えるようにしたので、フレネルレンズ1内部で発生した迷光を吸収できるようになり、スクリーン上に発生するゴーストを軽減できるという効果が得られる。
さらに、この実施の形態7によれば、フレネルレンズ1の出射面5に迷光吸収板82を一体成形するようにしたので、少ない部品点数で迷光を吸収できるという効果が得られる。
さらに、この実施の形態7によれば、フレネルレンズ1の光軸を中心として同心円状(放射状)に光透過層83と光吸収層84とを積層するようにしたので、迷光の吸収効率を最良にできるという効果が得られる。
さらに、この実施の形態7によれば、光透過層83と光吸収層84とを一方向に対して平行に積層するようにしたので、迷光吸収板82の製造が容易になり、製造コストを削減できるという効果が得られる。
さらに、この実施の形態7によれば、フレネルレンズ1の出射面5に光吸収板85を設けるようにしたので、簡単な構成で迷光を吸収できるようになり、スクリーン上に発生するゴーストを軽減できるという効果が得られる。
【符号の説明】
Claims (15)
- 各ピッチにそれぞれ備えられた各プリズム部を介して所定の入射角の入射光線を所定の出射角の出射光線として出射するフレネルレンズにおいて、
所定の入射角で入射する第1入射光線を第1屈折現象によって第1透過光線にする第1入射面と、
上記第1透過光線を第2屈折現象によって所定の出射角の第1出射光線にする平面形状の出射面と、
上記第1入射面および隣接ピッチと接する無効面とから成る断面形状を有する屈折型プリズム部と、
上記所定の入射角で入射する第2入射光線を第3屈折現象によって第2透過光線にする第2入射面と、
上記第2透過光線を全反射現象によって上記第1透過光線と平行な第3透過光線にする全反射面と、
上記屈折型プリズム部の上記出射面戸から成る断面形状を有し、
上記第3透過光線を上記出射面での第4屈折現象によって上記所定の出射角の第2出射光線にする全反射型プリズム部とから構成され、
上記第3透過光線とならない一部の第2入射光線を上記第1入射光線として受光するように、上記第1入射面と上記第2入射面の交線が、上記無効面と上記全反射面との交線である谷線と、1つ隣の谷線の両方を含む平面よりも入射光線側に配置されるように、上記全反射型プリズム部に上記屈折型プリズム部を一体化したハイブリッド型プリズム部を有するピッチを備えることを特徴とするフレネルレンズ。 - 少なくとも2以上の複数ピッチにハイブリッド型プリズム部を有し、上記ハイブリッド型プリズム部に対する屈折型プリズム部の割合が各ピッチ毎に異なることを特徴とする請求項1記載のフレネルレンズ。
- ハイブリッド型プリズム部の透過率と屈折型プリズム部の透過率とを等しくする特性変化角を基に定められる小入射角領域の各ピッチには、上記屈折型プリズム部をそれぞれ備えることを特徴とする請求項1記載のフレネルレンズ。
- 特性変化角近傍の特性変化領域の各ピッチにおいて、入射角の減少に応じて、ハイブリッド型プリズム部に対する屈折型プリズム部の混在比率を増加することを特徴とする請求項3記載のフレネルレンズ。
- 特性変化角近傍の特性変化領域の各ピッチにおいて、入射角の減少に応じて、第2入射面の面積が微減し、第1入射面の面積が微増する媒介プリズム部を備えることを特徴とする請求項3記載のフレネルレンズ。
- 光を透過する複数の光透過層と、上記光透過層間をフレネルレンズの光軸と略平行に積層され、光を吸収する複数の光吸収層とから構成された迷光吸収板を出射面に備えることを特徴とする請求項1記載のフレネルレンズ。
- 迷光吸収板は、
フレネルレンズの出射面に一体成形されることを特徴とする請求項6記載のフレネルレンズ。 - 光透過層および光吸収層は、
フレネルレンズの光軸を中心として同心円状に積層されることを特徴とする請求項6記載のフレネルレンズ。 - 光透過層および光吸収層は、
一方向に対して略平行に積層されることを特徴とする請求項6記載のフレネルレンズ。 - 光を吸収する光吸収板を出射面に備えることを特徴とする請求項1記載のフレネルレンズ。
- ハイブリッド型プリズム部は、ピッチマージンをそのピッチ間にそれぞれ有して形成されることを特徴とする請求項1記載のフレネルレンズ。
- 受光に関与しない高さを光軸方向に有するダミープリズム部を少なくとも一部のピッチ群に連続して備えることを特徴とする請求項1記載のフレネルレンズ。
- 請求項1から請求項12のうちのいずれか1項記載のフレネルレンズと、上記フレネルレンズから表示内容が付加された出射光を受光し、上記出射光を結像して拡散する結像拡散手段とを備えることを特徴とするスクリーン。
- 結像拡散手段は、フレネルレンズの出射面に一体成形することを特徴とする請求項13記載のスクリーン。
- 請求項13または請求項14記載のスクリーンと、
概ね平行な光を出射する照明光源手段と、
上記照明光源手段からの光を集光する集光光学手段と、
上記集光光学手段が集光した光を表示内容にしたがって空間的に強度変調する光変調手段と、
上記光変調手段で変調された光を上記スクリーンへ投影する投影光学手段とを備えることを特徴とする画像表示装置。
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