JP5225173B2 - リチウムイオン二次電池用セパレータ - Google Patents

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池等のリチウムイオン二次電池に使用されるセパレータに関する。
近年のデジタルカメラ、携帯電話、携帯情報端末等の携帯電子機器の普及とその高性能化に伴い、高いエネルギー密度を有する二次電池として、有機電解液(非水電解液)を使用するリチウムイオン二次電池が注目されてきた。このリチウムイオン二次電池は、平均電圧として従来の二次電池であるアルカリ二次電池の約3倍程度の高い起電力が得られ、高エネルギー密度となるが、アルカリ二次電池のように水系電解液を使用することができないため、十分な耐酸化還元性を有する非水系電解液が使用されている。現在使用されている非水系電解液は可燃性であるため、発火等の危険性があり、種々の安全対策が設けられている。
これらの安全対策としては、過充電を防止するための保護回路や、保護回路が正常に作動せず、過充電された場合に安全に電池を破壊するための安全弁、PTC素子、セパレータのシャットダウン機能等が備えられている。しかしながら、この様な安全対策が備わっていても、電池の熱暴走が抑えられず、セパレータが溶融収縮すると、正極と負極が短絡し、発火に至る恐れがある。
現行のリチウムイオン二次電池のセパレータとしては、ポリエチレン等のポリオレフィン系多孔性フィルムが一般に使用されており、電池内部の温度が130℃近傍になった場合、溶融して微多孔を塞ぐことで、リチウムイオンの移動を妨げ、電流を遮断させるシャットダウン機能があるが、何らかの状況により更に温度が上昇した場合、ポリオレフィン系多孔性フィルム自体が溶融収縮してショートし、熱暴走する可能性が示唆されている。
一方で、ポリオレフィン系多孔性フィルムではなく、不織布を用いたセパレータにシャットダウン機能を付与する試みが検討されてきている。例えば、ポリプロピレン不織布等にポリエチレン微粉末を添着したセパレータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、ポリプロピレンは融点が165℃付近であり、シャットダウン機能が発現しなかった場合、不織布が溶融収縮してショートし、更なる熱暴走の可能性がある。また、不織布の繊維径や細孔径、添着するポリエチレン微粒子の粒径等についての詳細な記載がなされておらず、保液性や内部抵抗等の問題があり、十分な電池特性を発現できているとは言えない。
また、例えば、低融点樹脂成分と高融点樹脂成分からなる極細繊維を主体とする不織布をセパレータとして用いることで、電池内部の温度が上昇した場合、低融点樹脂成分が溶融し、繊維間の細孔を塞ぐことによって、シャットダウン機能を発現させることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この様なセパレータにおいては、不織布の強度を発現させるため、低融点樹脂成分を溶融させて繊維間を十分に結合させる必要があるが、強度発現に必要な加熱温度とシャットダウン温度の差が小さく、強度を維持しつつ、繊維間の細孔径や細孔数を制御することは非常に困難である。また、シャットダウン機能が十分に発現しなかった場合、不織布自体が溶融収縮してショートする可能性がある。
そこで、耐熱性繊維と熱溶融性樹脂材料を混合し、湿式抄造した不織布からなるセパレータが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、特許文献2のセパレータと同様に、耐熱性繊維からなる不織布の強度発現に必要な加熱温度と熱溶融性樹脂材料の溶融温度とのバランスをとるのが困難であり、また、シャットダウン機能を十分に発現させるためには、熱溶融性樹脂材料を多量に含有させる必要があるが、熱溶融性樹脂材料の耐熱性繊維への接着が十分とは言えず、熱溶融性樹脂材料の脱落や、繊維シートの均一性が不十分という問題があった。
特開昭60−52号公報 特開2004−115980号公報 特開2004−214066号公報
本発明の課題は、耐熱性が高く、均一性及び保液性に優れると共に、シャットダウン機能を有するリチウムイオン二次電池用セパレータを提供することにある。
本発明者らは、この課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の繊維を含有してなる不織布と有機微粒子とを複合化することにより、上記課題を満足するリチウムイオン二次電池用セパレータを提供できることを見出し、本発明に至ったものである。
即ち、本発明は、ポリエステル系短繊維を含有してなる不織布と有機微粒子とを複合させてなるリチウムイオン二次電池用セパレータにおいて、該不織布は平均繊維径3.0μm以下のポリエステル系短繊維を必須成分として含有し、かつ、全繊維の平均繊維径が5.0μm以下であり、該有機微粒子が80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子と150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子とであることを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレータである。
150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子が、貫通孔を有する微粒子、凹部を有する微粒子、凝集構造を有する微粒子から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子が、ポリエチレン系微粒子であることが好ましい。
不織布が、配向結晶化ポリエステル系短繊維とバインダー用ポリエステル系短繊維とを含有し、不織布と有機微粒子とを複合させる前に、170℃以上220℃以下の温度で該不織布が加熱処理されている。
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータは、ポリエステル系短繊維を含有してなる不織布を用いているので、耐熱性が高く、過充電時において安全性の高いリチウムイオン二次電池用セパレータを得ることができる。また、不織布が、平均繊維径3.0μm以下のポリエステル系短繊維を必須成分として含有し、かつ、全繊維の平均繊維径が5.0μm以下であるので、有機微粒子を複合化する際の塗布性に優れ、厚みの振れが小さく、その結果、従来の不織布を用いたセパレータに比べて、緻密性及び均一性に優れ、良好な品質を実現することができる。また、不織布が、配向結晶化ポリエステル系短繊維とバインダー用ポリエステル系短繊維とを含有し、不織布と有機微粒子とを複合させる前に、170℃以上220℃以下の温度で該不織布が加熱処理されていると、バインダー用ポリエステル系短繊維が軟化・溶融し、繊維間の接着強度が向上し、熱収縮も低減するという効果が得られる。
80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子が高温時に溶融、フィルム化し、細孔を塞ぐことにより、シャットダウン機能を発現する。80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子がポリエチレン系微粒子であると、加熱溶融時の成膜性が高く、多孔部分を被覆し、高いシャットダウン機能が得られる。
150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子は、耐熱性が高く、過充電時において安全性の高いリチウムイオン二次電池用セパレータを得ることができる。更に、150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子が貫通孔を有する微粒子、凹部を有する微粒子、凝集構造を有する微粒子の少なくとも1種であることにより、電解液の保液性向上、電気抵抗の低減が図れる。
本発明におけるリチウムイオン二次電池用セパレータは、ポリエステル系短繊維を含有してなる不織布と有機微粒子とを複合させてなる。不織布は、平均繊維径3.0μm以下のポリエステル系短繊維を必須成分として含有し、かつ、全繊維の平均繊維径が5.0μm以下である。尚、平均繊維径3.0μm以下のポリエステル系短繊維の含有の有無については、不織布の抄造前の場合、各構成繊維の電子顕微鏡による3000倍の拡大写真を撮り、繊維10本の繊維径の相加平均を求めることによって確認できる。一方、不織布抄造後の場合、任意の5箇所の断面について、電子顕微鏡により3000倍の拡大写真を撮り、繊維径の小さい繊維から各2本ずつ選んで、計10本の相加平均をとり、平均繊維径3.0μm以下のポリエステル系短繊維の有無を判断することとする。一方、全繊維の平均繊維径については、各10本ずつ計50本の相加平均をとった値を全繊維の平均繊維径とする。断面が楕円形、多角形等の繊維や分割型複合繊維を使用した場合や加圧等による繊維が変形した場合は、断面積が等しい真円の径に換算した値を繊維径とする。
不織布が、平均繊維径3.0μm以下のポリエステル系短繊維を必須成分として含有していない場合、十分な緻密性が確保できないという弊害が起こる。また、全繊維の平均繊維径が5.0μmを超えた場合、不織布の厚みの振れが大きくなるという問題が発生する。一方、不織布が、平均繊維径3.0μm以下のポリエステル系短繊維を必須成分として含有し、全繊維の平均繊維径が5.0μm以下であると共に、平均繊維径が3μmを超えて5μm以下の配向結晶化ポリエステル系短繊維を含むことにより、更に緻密性と均一性向上させることができるため好ましい。
本発明において、ポリエステル系短繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系繊維、ポリブチレンテレフタレート系繊維、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維、ポリエチレンナフタレート系繊維、ポリブチレンナフタレート系繊維、ポリエチレンイソフタレート系繊維等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を併用しても構わない。これらの中でも、耐熱性に優れるポリエチレンテレフタレート系繊維が特に好ましい。
不織布の製造方法としては、一般的な不織布の製造方法が何れも使用でき、繊維ウェブを形成し、繊維ウェブ内の繊維を接着・融着・絡合させることにより製造することができる。得られた不織布は、そのまま使用しても良いし、複数枚からなる積層体として使用することもできる。繊維ウェブの製造方法としては、例えば、カード法、エアレイ法等の乾式法、湿式抄紙法等が挙げられる。この中で湿式抄紙法によって得られるウェブは、均質かつ緻密であり、有機微粒子と複合化させるのに好適に用いることができる。湿式抄紙法は、繊維を水中に分散して均一な抄紙スラリーとし、この抄紙スラリーを円網、長網、短網、傾斜式等のワイヤーの少なくとも1つを有する抄紙機を用いて繊維ウェブを得る方法である。
繊維ウェブから不織布を製造する方法としては、水流交絡法、ニードルパンチ法、バインダー接着法等を使用することができる。特に、均一性を重視して前記湿式抄紙法を用いる場合、バインダー用ポリエステル系繊維を不織布に含有させて、バインダー接着法により接着することが好ましく、これにより均一な不織布が形成される。
ポリエステル系短繊維の繊維長としては、1mm以上7mm以下が好ましく、2mm以上5mm以下がより好ましい。繊維長が7mmを超えた場合、地合不良となり、良好な繊維ウェブが形成できなくなる場合がある。特に、湿式抄紙法で不織布を製造する場合、分散時の繊維同士の異常な絡みが発生し、均一な分散状態にならず、地合不良となる場合がある。一方、繊維長が1mm未満の場合には、ウェブの十分な機械的強度が得られない場合がある。
本発明において、不織布が、配向結晶化ポリエステル系短繊維とバインダー用ポリエステル系短繊維とを含有し、不織布と有機微粒子とを複合させる前に、170℃以上220℃以下の温度で、不織布を加熱処理する。例えば、湿式抄紙法により該不織布を製造する場合、乾燥及びバインダー用ポリエステル系短繊維による接着効果を得るために、シリンダードライヤー等で加熱乾燥処理を実施するが、この処理だけでは十分な接着強度が得られない場合がある。そこで、湿式抄紙後に別途適切な温度で熱処理を実施することにより、不織布の機械的強度を向上させることができる。
ここで、配向結晶化ポリエステル系短繊維とは、高速紡糸や加熱延伸により、配向性を高くし、結晶化を進めたポリエステル系短繊維であり、高強度化、高軟化点化が可能となる。バインダー用ポリエステル系短繊維とは、前記配向結晶化ポリエステル系短繊維のような主体繊維と共に用いられ、低融点あるいは低軟化点を有するポリエステル系短繊維であり、加熱処理により、表面もしくは全体が溶融し、主体繊維と接着して繊維集合体からなる不織布の機械的強度を発現させるものである。低融点化あるいは低軟化点化のため、共重合ポリエステルや延伸度が低く、低配向、低結晶性のポリエステルが用いられる。バインダー用ポリエステル系短繊維としては、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型等の複合繊維、あるいは単一成分型の繊維等が挙げられるが、均一性を得やすい単一成分型の繊維が好ましい。
加熱処理の方法としては、熱カレンダー処理が挙げられ、熱ロール、平板プレス等を用いることができるが、連続処理が容易な熱ロールによる処理が好ましい。熱ロール方式の熱カレンダーとしては、金属ロールと金属ロールの組合せ、金属ロールと弾性ロールの組合せ、もしくは2組以上のニップを有する複数段の熱カレンダー等が使用できる。熱カレンダー処理を行うことにより、バインダー用ポリエステル系短繊維が溶融し、繊維間の接着強度が向上すると共に、基材の厚み調整、平滑化を併せて実施することができる。加熱処理温度が170℃未満では、十分な機械的強度が得られない場合があり、また、220℃を超えると、例えば、熱ロールや平板の表面に貼り付きが生じ、不織布に欠点が入りやすくなる場合がある。加熱処理の温度は、175℃以上195℃以下がより好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータに用いる不織布としては、目付が5.0〜30.0g/mであるのが好ましい。目付が30.0g/mを超えると、不織布だけでセパレータの大半を占めることとなり、有機微粒子との複合化による効果が得られにくい場合がある。5.0g/m未満であると不織布としての均一性を得ることが難しい場合がある。不織布の目付としては、7.0〜20.0g/mがより好ましい。尚、目付はJIS P 8124(紙及び板紙−坪量測定法)に規定された方法に基づく坪量を意味する。
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータに用いられる150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子を構成する樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリロニトリル等のビニルシアン化合物、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物及びブタジエン等のビニル単量体を1種又は2種以上組み合わせて重合した樹脂が挙げられる。これらの中で、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、スチレン−アクリル共重合体が好ましい。また、有機微粒子の形状としては、貫通孔を有する微粒子、凹部を有する微粒子、凝集構造を有する微粒子であることがより好ましい。尚、凝集構造を有する微粒子とは、微細な有機一次粒子が複数凝集して、ほぼ球状の二次粒子を形成しているものである。
本発明で用いられる150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子は、微粉末状又は水を主体とする媒体中に分散された状態のもの(エマルジョン)を使用することができる。ただし、本発明におけるエマルジョンとは、広義のエマルジョンを示し、分散質と分散媒が共に液体である乳濁液、分散質が固体で分散媒が液体である懸濁液や分散液を総称する。したがって、150℃で実質的に溶融しない有機微粒子のエマルジョンの場合、分散質は常温で固体状態である。また、150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子の平均粒径としては、0.010μm以上10μm以下が好ましく、0.20μm以上5.0μm以下がより好ましい。尚、平均粒径は、レーザー回折法による粒度分布測定から求められる平均粒径である。
本発明における150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子とは、示差走査熱量測定(DSC)における融解ピーク温度が150℃以上であるもの、又は、乾燥粉末状態の有機微粒子を融点測定用のキャピラリーに充填し、融点測定器で室温から5℃/分の速度で昇温し、150℃で5分間維持した状態で、溶融液状化しないものとする。
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータに用いられる80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子としては、ポリエチレン、共重合ポリエチレン、共重合ナイロン、共重合ポリエステル、ポリオレフィン誘導体、ポリオレフィンワックス、石油ワックス、カルナバワックス等からなる微粒子が挙げられる。前記共重合ポリオレフィンとしては、エチレン−ビニルモノマー共重合体が挙げられ、より具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体等が挙げられる。中でも、ポリエチレン、共重合ポリエチレン、共重合ポリエステルからなる微粒子が好ましく、特に、ポリエチレン、共重合ポリエチレン等のポリエチレン系微粒子がより好ましい。
本発明で用いられる80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子は、微粉末状又は水を主体とする媒体中に分散された状態のもの(エマルジョン)を使用することができる。ここで、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子のエマルジョンの場合も、分散質は常温で固体状態である。また、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子の平均粒径としては、0.050μm以上10μm以下が好ましく、0.50μm以上6.0μm以下がより好ましい。
本発明における80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子とは、示差走査熱量測定(DSC)における融解ピーク温度が80℃以上140℃以下であるもの、又は、乾燥粉末状態の有機微粒子を融点測定用のキャピラリーに充填し、融点測定器で室温から1℃/分の速度で昇温し、80℃以上140℃以下で溶融液状化するものとする。
更に、本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータにおいては、有機微粒子の接着及び成膜性の向上のために、有機バインダーを併用することが好ましい。有機バインダーとしては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリルブタジエン共重合体、ポリウレタン等が挙げられ、水溶液又はエマルジョンとして用いられる。特に、有機バインダーとして用いられるエマルジョンとしては、分散質が常温で液体のものやガラス転移点の低い樹脂成分からなるものが好ましい。
本発明において、不織布に複合させる有機微粒子において、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子と150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子の含有比率は質量比で20:80〜95:5が好ましく、40:60〜90:10がより好ましい。
本発明において、不織布に有機微粒子を複合させる方法としては、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子と150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子を少なくとも含有する液状組成物をポリエステル系短繊維からなる不織布の両面もしくは片面に塗布、乾燥することによって作製することができる。塗布方法としては、エアドクターコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、含浸コーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ダイコーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、スプレーコーター等が挙げられる。この様に種々の塗布方法の中でも、不織布の両面をほぼ同時に塗布する方法が好ましく、より好ましくは、前計量方式で両面をほぼ同時に塗布する方法であり、具体的にはバックロールを使用せず、両面の塗布位置を前後にずらしたリバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター等が挙げられる。
上記の塗布方法により、均一な塗層を作製するために、必要に応じて、増粘剤、消泡剤、ぬれ剤等を上記液状組成物中に適宜添加することができる。
80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子と150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子の合計含有量は、塗層成分中、30質量%〜100質量%が好ましく、更に50質量%〜95質量%がより好ましい。
本発明において、不織布に複合させる有機微粒子を含有する塗層の付着量としては、1.0〜25.0g/mが好ましく、更に5.0〜15.0g/mがより好ましい。塗層の付着量が1.0g/m未満であると、不織布表面を十分被覆することができず、細孔径が大きくなり、シャットダウン特性が発現しなくなる場合がある。一方、塗層の付着量が25.0g/mを超えると、セパレータの薄膜化が困難となる場合がある。
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータにおいて、セパレータの坪量は10.0〜50.0g/mが好ましく、15.0〜40.0g/mがより好ましい。また、セパレータの厚みは10.0〜50.0μmが好ましく、15.0〜40.0μmがより好ましい。セパレータの密度としては0.4〜1.2g/cmが好ましく、0.6〜1.0g/cmがより好ましい。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
繊度0.06dtex(平均繊維径2.4μm)、繊維長3mmの配向結晶化ポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維45質量部と繊度0.1dtex(平均繊維径3.0μm)、繊維長3mmの配向結晶化PET系短繊維15質量部と繊度0.2dtex(平均繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダー用PET系短繊維(軟化点120℃、融点230℃)40質量部とを一緒に混合し、パルパーにより水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、濃度1質量%の均一な抄造用スラリーを調製した。円網抄紙機を用い、この抄造用スラリーを湿式方式で抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによって、バインダー用PET系短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10.5g/mの不織布とした。更に、この不織布を金属ロール−金属ロールからなる1ニップの熱カレンダーを使用して、ロール温度185℃、線圧740N/cm、搬送速度20m/分で加熱処理を実施した。
次に、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子として、ケミパールA100(商品名、三井化学(株)製、ポリエチレン系微粒子エマルジョン、融点86℃、平均粒径4.0μm)を固形分換算で60質量部、150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子として、凹部を有する椀形微粒子であるニポールMH8055(商品名、日本ゼオン(株)製、スチレン−アクリル系微粒子エマルジョン、150℃で未溶融、平均粒径0.80μm)を固形分換算で30質量部、バインダーとして、ニポールLX816A(商品名、日本ゼオン(株)製、アクリレート系樹脂エマルジョン)を固形分換算で10質量部を混合、撹拌し、更にイオン交換水を加えて、固形分濃度30質量%の水系塗液を作製した。上記熱カレンダー処理後の不織布に、リバースロールコーターにて、乾燥固形分10.2g/mとなるように、均一に両面ほぼ同時にこの塗液を塗工して、厚み25.2μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例2)
繊度0.06dtex(平均繊維径2.4μm)、繊維長3mmの配向結晶化PET系短繊維55質量部と繊度0.2dtex(平均繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダー用PET系短繊維(軟化点120℃、融点230℃)45質量部とを一緒に混合し、パルパーにより水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、濃度1質量%の均一な抄造用スラリーを調製した。円網抄紙機を用い、この抄造用スラリーを湿式方式で抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによってバインダー用PET系短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10.4g/mの不織布とした以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.4μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.4μmであった。
(実施例3)
繊度0.06dtex(平均繊維径2.4μm)、繊維長3mmの配向結晶化PET系短繊維60質量部と繊度0.2dtex(平均繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダー用PET系短繊維(軟化点120℃、融点230℃)10質量部と繊度1.2dtex(平均繊維径10.6μm)、繊維長5mmの単一成分型バインダー用PET系短繊維(軟化点120℃、融点230℃)30質量部を一緒に混合し、パルパーにより水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、濃度1質量%の均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機を用い湿式方式で抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによってバインダー用PET系短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10.2g/mの不織布とした以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み26.0μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は5.0μmであった。
(実施例4)
実施例1において、繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの配向結晶化PET系短繊維の代わりに、繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長1.5mmの配向結晶化PET系短繊維を用いた以外は、実施例1と同様にして抄造し、目付10.2g/mの不織布とし、同様の加工を行い、厚み25.5μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.3μmであった。
(実施例5)
実施例1において、繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの配向結晶化PET系短繊維の代わりに、繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長7mmの配向結晶化PET系短繊維を用いた以外は、実施例1と同様にして抄造し、目付10.6g/mの不織布とし、同様の加工を行い、厚み26.2μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.1μmであった。
(実施例6)
実施例3において、繊度1.2dtex(平均繊維径10.6μm)、繊維長3mmのバインダー用PET系短繊維の代わりに、繊度1.1dtex(平均繊維径10.1μm)、繊維長5mmの芯鞘複合型バインダー用PET系短繊維(鞘部軟化点75℃、鞘部融点110℃、芯部融点250℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして抄造し、目付10.5g/mの不織布とし、同様の加工を行い、厚み26.0μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.9μmであった。
(実施例7)
実施例1において、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子として、ケミパールA100(商品名、三井化学(株)製、ポリエチレン系微粒子エマルジョン、融点86℃、平均粒径4.0μm)を固形分換算で56質量部、150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子として、球状微粒子であるガンツパールGM0401S(商品名、ガンツ化成(株)製、架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子、150℃で未溶融、平均粒径4.0μm)を36質量部、バインダーとして、ニポールLX814(商品名、日本ゼオン(株)製、アクリレート系樹脂エマルジョン)を固形分換算で8質量部とした以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.6μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例8)
実施例1において、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子として、ケミパールA100(商品名、三井化学(株)製、ポリエチレン系微粒子エマルジョン、融点86℃、平均粒径4.0μm)を固形分換算で56質量部、150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子として、貫通孔を有する微粒子であるグロスデール2000−TX(商品名、三井化学(株)製、スチレン−アクリル系微粒子エマルジョン、150℃で未溶融、平均粒径0.50μm)を固形分換算で36質量部、バインダーとして、ニポールLX814(商品名、日本ゼオン(株)製、アクリレート系樹脂エマルジョン)を固形分換算で8質量部とした以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.3μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例9)
実施例1において、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子として、ケミパールA100(商品名、三井化学(株)製、ポリエチレン系微粒子エマルジョン、融点86℃、平均粒径4.0μm)を固形分換算で56質量部、150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子として、形状として凹部を有する微粒子であるグロスデール240−V(商品名、三井化学(株)製、ポリスチレン系微粒子エマルジョン、150℃で未溶融、平均粒径0.50μm)を固形分換算で36質量部とし、バインダーとして、ニポールLX814(商品名、日本ゼオン(株)製、アクリレート系樹脂エマルジョン)を固形分換算で8質量部とした以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.4μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例10)
実施例1において、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子として、ケミパールA100(商品名、三井化学(株)製、ポリエチレン系微粒子エマルジョン、融点86℃、平均粒径4.0μm)を固形分換算で56質量部、150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子として、形状として凝集構造を有する微粒子であるグロスデール110−M(商品名、三井化学(株)製、スチレン−アクリル系樹脂微粒子エマルジョン、150℃で未溶融、平均粒径1.0μm)を固形分換算で36質量部とし、バインダーとして、ニポールLX814(商品名、日本ゼオン(株)製、アクリレート系樹脂エマルジョン)を固形分換算で8質量部とした以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.2μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例11)
実施例1において、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子として、ケミパールM200(商品名、三井化学(株)製、ポリエチレン系微粒子エマルジョン、融点100℃、平均粒径6.0μm)を用いた以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.4μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例12)
実施例1において、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子として、セポルジョンPA150(商品名、住友精化(株)製、共重合ナイロン樹脂エマルジョン、融点90℃、平均粒径1.0μm)を用いた以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.2μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例13)
実施例1において、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子として、セポルジョンPA200(商品名、住友精化(株)製、共重合ナイロン樹脂エマルジョン、融点125℃、平均粒径0.70μm)を用いた以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.5μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例14)
実施例1において、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子として、セポルジョンES907(商品名、住友精化(株)製、共重ポリエステル樹脂エマルジョン、融点120℃、平均粒径1.5μm)を用いた以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.2μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例15)
実施例1において、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子として、セポルジョンG315(商品名、住友精化(株)製、エチレン−グリシジルメタクリレート系樹脂エマルジョン、融点120℃、平均粒径1.5μm)を用いた以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.0μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例16(参考例)
実施例1において、不織布抄造後の熱カレンダーを使用した加熱処理でのロール温度を160℃とした以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み26.2μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例17)
実施例1において、不織布抄造後の熱カレンダーを使用した加熱処理でのロール温度を170℃とした以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.7μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例18)
実施例1において、不織布抄造後の熱カレンダーを使用した加熱処理でのロール温度を220℃とした以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み24.6μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例19(参考例)
実施例1において、不織布抄造後の熱カレンダーを使用した加熱処理でのロール温度を230℃とした以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み24.3μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例20)
実施例1において、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子として、ケミパールA100(商品名、三井化学(株)製、ポリエチレン系微粒子エマルジョン、融点86℃、平均粒径4.0μm)を固形分換算で30質量部、150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子として、凹部を有する椀形微粒子であるMH8055(商品名、日本ゼオン(株)製、スチレン−アクリル系微粒子エマルジョン、150℃で未溶融、平均粒径0.80μm)を固形分換算で60質量部、バインダーとして、ニポールLX816A(商品名、日本ゼオン(株)製、アクレート系樹脂エマルジョン)を固形分換算で10質量部とした以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.4μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例21)
実施例1において、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子として、ケミパールA100(商品名、三井化学(株)製、ポリエチレン系微粒子エマルジョン、融点86℃、平均粒径4.0μm)を固形分換算で15質量部、150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子として、凹部を有する椀形微粒子であるMH8055(商品名、日本ゼオン(株)製、スチレン−アクリル系微粒子エマルジョン、150℃で未溶融、平均粒径0.80μm)を固形分換算で30質量部、バインダーとして、ニポールLX816A(商品名、日本ゼオン(株)製、アクレート系樹脂エマルジョン)を固形分換算で55質量部とした以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.1μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例22)
実施例1において、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子として、ケミパールA100(商品名、三井化学(株)製、ポリエチレン系微粒子エマルジョン、融点86℃、平均粒径4.0μm)を固形分換算で90質量部、150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子として、凹部を有する椀形微粒子であるMH8055(商品名、日本ゼオン(株)製、スチレン−アクリル系微粒子エマルジョン、150℃で未溶融、平均粒径0.80μm)を固形分換算で7質量部、バインダーとして、ニポールLX816A(商品名、日本ゼオン(株)製、アクレート系樹脂エマルジョン)を固形分換算で3質量部とした以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.2μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例23)
実施例1において、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子として、ケミパールA100(商品名、三井化学(株)製、ポリエチレン系微粒子エマルジョン、融点86℃、平均粒径4.0μm)を固形分換算で85質量部、150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子として、凹部を有する椀形微粒子であるMH8055(商品名、日本ゼオン(株)製、スチレン−アクリル系微粒子エマルジョン、150℃で未溶融、平均粒径0.80μm)を固形分換算で5質量部、バインダーとして、ニポールLX816A(商品名、日本ゼオン(株)製、アクレート系樹脂エマルジョン)を固形分換算で10質量部とした以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.5μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例24)
実施例1において、80℃以上140℃以下で実質的にで溶融する有機微粒子として、ポリロン393(商品名、中京油脂(株)製、ポリエチレンワックスエマルジョン、融点105℃、平均粒径0.15μm)を用い、塗布方式としてワイヤーバーによる塗工を行った以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み24.2μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例25)
実施例1において、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子として、ケミパールW410(商品名、三井化学(株)製、ポリエチレン系微粒子エマルジョン、融点110℃、平均粒径9.5μm)を用い、塗布方式としてワイヤーバーによる塗工を行った以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み27.4μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例26)
実施例1において、150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子としてニポールLX303A(商品名、日本ゼオン(株)製、ポリスチレン系微粒子エマルジョン、150℃で未溶融、平均粒径0.16μm)を用い、塗布方式としてワイヤーバーによる塗工を行った以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み24.2μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(実施例27)
実施例1において、150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子としてテクポリマーMB30X−8(商品名、積水化成品工業(株)製、架橋ポリメタクリル酸メチル、150℃で未溶融、平均粒径8.0μm)を用い、塗布方式としてワイヤーバーによる塗工を行った以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み27.0μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(比較例1)
繊度0.3dtex(平均繊維径5.3μm)、繊維長3mmの配向結晶化させたPET系短繊維60質量部と、繊度1.2dtex(平均繊維径10.6μm)、繊維長5mmのバインダー用PET系短繊維40質量部とを一緒に混合し、パルパーにより水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、濃度1質量%の均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機を用い湿式方式で抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによってバインダー用PET系短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10.6g/mの不織布とした以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.2μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は7.2μmであった。
(比較例2)
繊度0.06dtex(平均繊維径2.4μm)、繊維長5mmの配向結晶化させたPET系短繊維60質量部と、繊度1.2dtex(平均繊維径10.6μm)、繊維長5mmのバインダー用PET系短繊維40質量部とを一緒に混合し、パルパーにより水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、濃度1質量%の均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機を用い湿式方式で抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによってバインダー用PET系短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10.4g/mの不織布とした以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.0μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は5.3μmであった。
(比較例3)
実施例1において、150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子として、球状微粒子であるグロスデール201−S(商品名、三井化学(株)製、ポリスチレン系微粒子エマルジョン、150℃で未溶融、平均粒径0.60μm)を固形分換算で90質量部、バインダーとして、ニポールLX816A(商品名、日本ゼオン(株)製、アクリレート系樹脂エマルジョン)を固形分換算で10質量部とし、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子を使用しなかった以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.4μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(比較例4)
実施例1において、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子として、セポルジョンPA150(商品名、住友精化(株)製、共重合ナイロン樹脂エマルジョン、融点90℃、平均粒径1.0μm)を固形分換算で90質量部、バインダーとしてニポールLX816A(商品名、日本ゼオン(株)製、アクリレート系樹脂エマルジョン)を固形分換算で10質量部とし、150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子を使用しなかった以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み26.2μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
(比較例5)
実施例1において、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子の代わりに、ハイドリンP−7(商品名、中京油脂(株)製、パラフィンワックスエマルジョン、融点54℃、平均粒径0.85μm)を使用した以外は、実施例1と同様の加工を行い、厚み25.3μmのリチウムイオン二次電池用セパレータを得た。尚、全繊維の平均繊維径は3.2μmであった。
<評価>
実施例及び比較例で得られた不織布及びリチウムイオン二次電池用セパレータについて、下記の評価を行い、結果を表1に示した。
[最大細孔径の評価]
不織布及びリチウムイオン二次電池用セパレータについて、バブルポイント法により最大細孔径を求めた結果を表1に示す。
[均一性の評価]
リチウムイオン二次電池用セパレータについて、任意の10箇所の厚さを測定し、その差が1.0μm以下の場合を○、1.0μmを超えて2.0μm以下の場合を△、2.0μmを超えている場合を×で表した。尚、厚さはJIS B 7502に規定された方法により測定した値で表し、5N加重時の外側マイクロメータによる測定値である。結果を表1に示す。
[引張強度の評価]
リチウムイオン二次電池用セパレータより、50mm×200mmの試験片を採取し、JIS L 1096に準拠して引張強度を測定した結果を表1に示す。
[保液性の評価]
リチウムイオン二次電池用セパレータから、70mm×70mmのシートサンプルを取り出し、エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートの体積比1:1の混合溶媒中に2分間浸漬した後、混合溶媒中から取り出し、表面に付着した余分な溶媒を拭き取った後、ステンレス板にのせ、取り出し20秒後の質量Wを測定し、更に取り出し120秒後の質量Wを測定した。混合溶媒に浸漬前のセパレータの質量をWとし、以下の式から得られる値を保液性の指標として保液率を計算した。結果を表1に示す。
保液率(%)=100×(W−W)/(W−W
[耐熱性の評価]
リチウムイオン二次電池用セパレータを、150℃の恒温槽に入れ、20分間加熱処理を行い、各リチウムイオン二次電池用セパレータの収縮率を測定して耐熱性を評価した。収縮率の測定は、以下のようにして行った。50mm×50mmのシートサンプルを切り出し、クリップで固定した耐熱ガラス板に挟んで、150℃の恒温槽内に30分間保管した後に取り出し、シートサンプルの長さを測定し、試験前の長さと比較して、長さの減少割合の百分率を収縮率とし、耐熱性の評価とした。結果を表2に示す。また、従来公知のリチウムイオン二次電池用セパレータである厚さ20μmのポリエチレン製微多孔膜について、耐熱性の評価を行ったところ、ポリエチレン製微多孔膜は溶融収縮し、収縮率は30%以上であった。
[透気度の評価]
リチウムイオン二次電池用セパレータから、70mm×70mmのシートサンプルを5枚切り取り、王研式透気度計にてガーレー透気度を測定し、5枚の平均値をセパレータの透気度とし、表2に示した。
[シャットダウン特性の評価]
前記透気度の評価で採取した70mm×70mmのシートサンプルの中から、平均値に最も近いシートサンプルについて、130℃の恒温槽中で15分間保持した後、取り出して放冷後、王研式透気度計にてガーレー透気度を測定し、加熱処理後のセパレータのガーレー透気度値を処理前のセパレータのガーレー透気度値で除した値が20以上となるものを◎、10以上20未満となるものを○、5以上10未満となるものを△、2以上5未満となるものを×、2未満となるものを××として、シャットダウン特性を評価した。結果を表3に示す。
実施例及び比較例で得られたリチウムイオン二次電池用セパレータの電気特性を評価するため、以下のような電極及びセルを作製し、測定を行った。
<正極の作製>
正極活物質であるコバルト酸リチウム80質量部、導電助剤であるアセチレンブラック10質量部、及びバインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量部をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に均一に混合して、正極剤ペーストを作製した。このペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗工し、乾燥、カレンダー処理を行って厚さ100μmの正極を作製した。
<負極の作製>
負極活物質である黒鉛90質量部と、バインダーであるPVdF5質量部とを、NMPを溶剤として、均一になるように混合して、負極剤ペーストを作製した。この負極剤ペーストを厚さ20μmの銅箔上に塗工し、乾燥、カレンダー処理を行って厚さ90μmの負極を作製した。
<電池の作製>
実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池用セパレータを介して、上記のようにして得られた正極と負極とを重ね合わせ、ラミネートフィルム外装材内に装填し、電解質として1mol/LのLiBFを溶解させたエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(体積比1/1)溶液を注入し、真空封止を行ってリチウムイオン二次電池を作製した。
[内部抵抗の評価]
作製したリチウムイオン二次電池の内部抵抗を交流インピーダンス法により、振幅10mV、周波数10kHzの条件で測定した。結果を表3に示す。
[放電容量維持率の評価]
作製したリチウムイオン二次電池について、1Cでの定電流充電(4.1Vまで)と4.1Vでの定電圧充電を行い、1Cで3.0Vまでの定電流放電を繰り返し実施し、1回目に対する100回目の放電容量の比を百分率(%)で表した。結果を表3に示す。
Figure 0005225173
Figure 0005225173
Figure 0005225173
実施例で得られたリチウムイオン二次電池用セパレータは、ポリエステル系短繊維を含有してなる不織布と有機微粒子とからなり、全繊維の平均繊維径が5.0μm以下であり、かつ、平均繊維径が3.0μm以下の短繊維を必須成分として含有し、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子と150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子とを含有させているので、耐熱性が高く、均一性並びに保液性に優れると共に、シャットダウン特性を有している。
実施例1、7〜10の比較から、150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子が、貫通孔を有する微粒子、凹部を有する有機微粒子、凝集構造を有する微粒子から選ばれる少なくとも1種であると、保液性が高く、内部抵抗が低く、優れている。
実施例1、12〜15、24、25の比較から、実施例1、15、25のように、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子が、ポリエチレン系微粒子である方が、加熱溶融時の成膜性が高く、シャットダウン特性に優れている。ただし、実施例25では、有機微粒子の粒径がやや大きいため、セパレータの均一性がやや劣るが問題のないレベルである。
実施例1、16(参考例)、17、18、19(参考例)を比較すると、実施例16(参考例)では不織布抄造後の加熱処理温度がやや低く、引張強度、耐熱性が若干低いが特に問題はないレベルである。一方、実施例19(参考例)では抄造後の熱処理温度がやや高いため、熱ロールへのシートの貼り付きが少し生じたが、セパレータ特性としては問題ないレベルである。
実施例1〜6の比較から、実施例1のように、全繊維の平均繊維径が5.0μm以下であり、かつ平均繊維径が3.0μm以下のポリエステル系短繊維を必須成分として含有しているだけでなく、平均繊維径が3.0μmを超えて5.0μm以下の短繊維を含有し、更に繊維長が2mm以上5mm以下であり、バインダー繊維が単一成分型の熱融着繊維であるものがより優れている。
一方、比較例で得られたリチウムイオン二次電池用セパレータは、本発明の条件を満足しておらず、実用には大きな問題を生じる。例えば、比較例1では、全繊維の平均繊維径が5.0μmを大きく超えており、平均繊維径が3.0μm以下のポリエステル系短繊維も含有していないため、不織布基材の最大細孔径がかなり大きく、均一性が劣るため、セパレータとしても、最大細孔径が小さくなりきらず、均一性も低下し、保液性、耐熱性、内部抵抗等も劣る結果であった。比較例2では、平均繊維径が3.0μm以下のポリエステル系短繊維を含有しているものの、全繊維の平均繊維径が5.0μmを超えているため、不織布基材の最大細孔径が大きく、セパレータとしても均一性がかなり劣る結果となった。比較例3においては、均一性はやや劣る程度であるが、80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子を含有しておらず、シャットダウン機能は発現しなかった。比較例4においては、均一性はやや劣る程度であるが、150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子を含有していないため、シャットダウン機能は発現するものの、保液性、耐熱性が劣る結果であった。更に、比較例5においては、均一性がやや劣る程度であるが、融点が80℃未満の有機微粒子を用いているため、セパレータの製造段階で、有機微粒子が溶融し、透気度2400sec/100mLと透気性が大幅に低下したため、保液率の低下、内部抵抗の増大により、放電容量維持率は途中で測定不可能となってしまった。
本発明の活用例としては、リチウムイオン二次電池やリチウムイオンポリマー二次電池等のリチウムイオン二次電池用セパレータに好適に用いられ、その他にはリチウムイオンキャパシタ用セパレータとしても用いることができる。

Claims (3)

  1. ポリエステル系短繊維を含有してなる不織布と有機微粒子とを複合させてなるリチウムイオン二次電池用セパレータにおいて、不織布は平均繊維径3.0μm以下のポリエステル系短繊維を必須成分として含有し、かつ、全繊維の平均繊維径が5.0μm以下であり、該有機微粒子が80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子と150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子とであり、不織布が配向結晶化ポリエステル系短繊維とバインダー用ポリエステル系短繊維とを含有し、不織布と有機微粒子とを複合させる前に、170℃以上220℃以下の温度で、不織布が加熱処理されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレータ。
  2. 150℃未満で実質的に溶融しない有機微粒子が、貫通孔を有する微粒子、凹部を有する有機微粒子、凝集構造を有する微粒子から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のリチウムイオン二次電池用セパレータ。
  3. 80℃以上140℃以下で実質的に溶融する有機微粒子が、ポリエチレン系微粒子である請求項1記載のリチウムイオン二次電池用セパレータ。
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