JP5223718B2 - 操舵負荷推定装置及び電動パワーステアリング装置 - Google Patents

操舵負荷推定装置及び電動パワーステアリング装置 Download PDF

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Description

本発明は、路面から操舵輪に作用する路面反力によって生じる操舵負荷を推定する操舵負荷推定装置、及び推定された操舵負荷に基づいて、操舵輪を操舵するための操舵トルクの少なくとも一部を電動モータにより発生させる電動パワーステアリング装置に関する。
例えば、特許文献1には、操舵トルク及び電動モータによるアシストトルクに基づいて、路面反力であるセルフアライニングトルクを推定する装置が記載されている。このセルフアライニングトルクは、タイヤトレッドのねじれやパワーステアリング装置のクーロン摩擦等によってヒステリシス特性を持つ。このため、特許文献1では、推定したセルフアライニングトルク(SAT推定値)に基づいて、ヒステリシス特性を除去したセルフアライニングトルク補正値(SAT補正値)を算出する。
具体的には、特許文献1では、SAT推定値とSAT補正値とは、ヒステリシス特性分だけ大きさが相違するものと考え、ステアリング操作に伴ってヒステリシス特性の領域内でSAT推定値が増加又は減少したときには、SAT推定値が、1よりも小さい増加勾配又は減少勾配に従って増加又は減少するように算出する。そして、SAT推定値の変化がヒステリシス特性の領域を超えた場合には、SAT推定値の増加又は減少に1対1に対応して増加又は減少するように、SAT補正値を算出する。そして、このようにして算出したSAT補正値に基づいて、路面摩擦状態やタイヤ空気圧を推定することで、路面摩擦状態やタイヤ空気圧の推定精度の向上を図っている。
特開2003−127888号公報
ここで、特許文献1において、操舵トルク及びアシストトルクに基づいて推定されるSAT推定値は、操舵輪を直進状態から転舵させようとする総ての操舵トルク(以下、総操舵トルクという。)に対抗する操舵負荷であり、操舵輪が路面から受ける力(路面反力)ではない。
総操舵トルクは、例えば、ラックアンドピニオン機構やタイロッドを介して、操舵輪を転舵する力に変換される。このため、運転者がステアリングホイールを切り込む際には、総操舵トルクが操舵輪に伝達されるまでに、ラックアンドピニオン機構のギヤ摩擦やタイロッドでの摩擦(以下、これらを総称してギヤロスと呼ぶ)の分だけ減少される。このため、総操舵トルクに対抗する値として算出される操舵負荷は、ステアリングホイールの切り込み時、操舵輪が路面から受ける路面反力よりもギヤロスの分だけ大きな値が推定されてしまう。
逆に、運転者がステアリングホイールを中立方向に切り戻す際には、総操舵トルクよりも、路面反力が勝っている状態である。この場合、総操舵トルクではなく、路面反力に対して、ギヤロスが生じている状態である。従って、総操舵トルクに対抗する操舵負荷は、ステアリングホイールの切り戻し時に、操舵輪が路面から受ける路面反力よりもギヤロスの分だけ小さな値が推定されてしまう。
このようなギヤロスに起因して、操舵輪を転舵させようとする総ての操舵トルクに基づいて推定される操舵負荷にはヒステリシス特性が含まれる。
しかしながら、特許文献1に記載された手法では、SAT推定値から、このようなヒステリシス特性を精度良く除去したSAT補正値を求めることは困難である。以下、その理由について説明する。
例えば、総操舵トルクによるラックアンドピニオン機構のギヤ歯面に加わる力が変化すると、ギヤ歯面圧が変化する。この結果、ギヤ歯面間の摩擦力も変化する。従って、ギヤロスの大きさは、総操舵トルクの大きさに依存して変化する。
特許文献1では、SAT推定値が小さいときのヒステリシス特性の領域と、SAT推定値が大きいときのヒステリシス特性の領域の大きさを同等と見積もっている。このため、SAT推定値が小さいときと大きいときとで、SAT補正値に誤差が生じてしまう。
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、操舵負荷からヒステリシス特性を精度良く除去することが可能な操舵負荷推定装置、及びヒステリシス特性が除去された操舵負荷に基づいて、電動モータが発生する操舵トルクを制御する電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の操舵負荷推定装置は、
操舵輪を直進状態から転舵させようとする操舵トルクに基づき、路面から操舵輪に作用する路面反力によって生じる操舵負荷を推定する操舵負荷推定手段と、
操舵負荷が、路面反力よりも大きい切り込み時であるか、当該路面反力よりも小さい切り戻し時であるかを判別する判別手段と、
判別手段により切り戻し時と判別されたとき、操舵負荷推定手段によって推定された操舵負荷に第1の所定比率を乗じて求めた第1の補正値だけ大きくなるように操舵負荷を補正し、判別手段により切り込み時と判別されたとき、操舵負荷推定手段によって推定された操舵負荷に第2の所定比率を乗じて求めた第2の補正値だけ小さくなるように操舵負荷を補正する操舵負荷補正手段と、を備えることを特徴とする。
上述したように、操舵輪を直進状態から転舵させようとする操舵トルクに基づいて推定される操舵負荷には、主にギヤロスに起因してヒステリシス特性が含まれる。このギヤロスの大きさは、操舵トルクの大きさに依存して変化し、操舵トルクが大きくなるほど、ギヤロスの大きさも大きくなる。
そのため、請求項1に記載の操舵負荷推定装置では、操舵負荷補正手段が、操舵負荷推定手段によって推定された操舵負荷に第1の所定比率又は第2の所定比率を乗じることによって、第1の補正値又は第2の補正値を求める。従って、第1の補正値及び第2の補正値は、操舵トルクに相関する操舵負荷が大きくなるほど大きくなり、逆に操舵負荷が小さくなるほど小さくなる。このように算出された第1補正値又は第2補正値を用いて、操舵負荷を補正することにより、推定された操舵負荷のヒステリシス特性を精度良く除去して、より路面反力に近似する補正操舵負荷を求めることができる。
請求項2に記載したように、操舵負荷推定装置は、第1及び第2の補正量の変化をなますローパスフィルタ手段を備え、操舵負荷推定手段によって推定された操舵負荷を補正するために、当該ローパスフィルタ手段により変化がなまされた第1及び第2の補正量が用いられるようにしても良い。このようなローパスフィルタ手段を備えることにより、第1及び第2の補正量の急激な変化を抑制することができる。その結果、第1及び第2の補正量により補正される操舵負荷の変化を滑らかにすることができる。
次に、請求項3に記載された電動パワーステアリング装置は、
ステアリングホイールにより車両の操舵輪を操舵する際に、電動モータによって、操舵輪を操舵するための操舵トルクの少なくとも一部を発生させる電動パワーステアリング装置であって、
操舵トルクに基づいて、路面から操舵輪に作用する路面反力によって生じる操舵負荷を推定する操舵負荷推定手段と、
操舵負荷が、路面反力よりも大きい切り込み時であるか、当該路面反力よりも小さい切り戻し時であるかを判別する判別手段と、
判別手段により切り戻し時と判別されたときに、操舵負荷推定手段によって推定された操舵負荷に第1の所定比率を乗じて求めた第1の補正値だけ大きくなるように操舵負荷を補正し、判別手段により切り込み時と判別されたとき、操舵負荷推定手段によって推定された操舵負荷に第2の所定比率を乗じて求めた第2の補正値だけ小さくなるように操舵負荷を補正する操舵負荷補正手段と、
操舵負荷補正手段により補正された操舵負荷に基づき、電動モータが発生する操舵トルクを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
このように、請求項3に係る発明は、上述した操舵負荷推定装置を電動パワーステアリング装置に応用したものである。ヒステリシス特性が除去された操舵負荷は、路面反力により近似したものとなる。従って、電動パワーステアリング装置において、例えば、路面反力により近似した操舵負荷に応じて、電動モータが発生する(補助)操舵トルクを制御することにより、運転者は、車両の各種の走行状態に応じた手応えをステアリングホイールから得られるようになる。
請求項4に記載したように、第1及び第2の補正量の変化をなますローパスフィルタ手段を備え、操舵負荷推定手段によって推定された操舵負荷を補正するために、当該ローパスフィルタ手段により変化がなまされた第1及び第2の補正量が用いられることが好ましい。これにより、補正される操舵負荷の変化が滑らかになるので、電動モータが発生する(補助)操舵トルクが振動したりする事態の発生を防止することができる。
請求項5に記載の電動パワーステアリング装置では、ステアリングホイールが、トーションバーが設けられた操舵軸に接続され、この操舵軸は、当該操舵軸の回転を、操舵輪の転舵方向への運動に変換して操舵輪に伝達する伝達機構に連結され、電動モータは、操舵軸及び伝達機構のいずれかに係合して、ステアリングホイールに加えられた操舵トルクを補助するためのアシストトルクを発生するものであり、
操舵軸のトーションバーの捩れの大きさから、運転者によってステアリングホイールに印加された操舵トルクを検出する操舵トルクセンサを備え、
制御手段は、操舵負荷補正手段により補正された操舵負荷が増加するほど大きくなるようにアシストゲインを定め、当該アシストゲインを操舵トルクに乗じることによって、電動モータが発生すべき操舵トルクに対応するアシスト指令信号を生成することを特徴とする。
つまり、請求項5では、制御手段が、補正された操舵負荷に基づいて、電動モータが発生する補助操舵トルクを制御する具体的な一例を示している。請求項5に記載の電動パワーステアリング装置は、補正された操舵負荷を用いて、電動モータが発生すべき操舵トルクに対応するアシスト指令信号そのものを生成する。
また、請求項6に記載の電動パワーステアリング装置では、ステアリングホイールが、トーションバーが設けられた操舵軸に接続され、この操舵軸は、当該操舵軸の回転を、操舵輪の転舵方向への運動に変換して操舵輪に伝達する伝達機構に連結され、電動モータは、操舵軸及び伝達機構のいずれかに係合して、ステアリングホイールに加えられた操舵トルクを補助するためのアシストトルクを発生するものであり、
操舵軸のトーションバーの捩れの大きさから、前記ステアリングホイールに印加された操舵トルクを検出する操舵トルクセンサを備え、
制御手段は、操舵トルクセンサによって検出される操舵トルクに基づいて電動モータに対する基本アシスト指令信号を生成し、当該基本アシスト指令信号を、操舵負荷補正手段により補正された操舵負荷に基づいて補正することにより、補正アシスト指令信号を生成することを特徴とする。
請求項6も、請求項5と同様に、制御手段が、補正された操舵負荷に基づいて、電動モータが発生する補助操舵トルクを制御する具体例を示している。ただし、請求項6では、請求項5と異なり、補正された操舵負荷が、基本アシスト指令信号を補正して、補正アシスト指令信号を生成するために用いられる。
請求項7に記載したように、第2の所定比率は、第1の所定比率と同じか、ゼロを含む範囲で、それよりも小さく設定されても良い。電動パワーステアリング装置により運転者の操舵をアシストする場合、原則として、操舵負荷が大きくなるほど、電動モータによる補助操舵トルクも大きくなる。ここで、第2の所定比率により算出される第2の補正量は、切り込み時に操舵負荷を減少補正するために用いられる。操舵負荷を減少補正した場合、電動モータが発生する補助操舵トルクも低下する。このように、第2の補正量による操舵負荷の減少補正は、操舵補助トルクの減少を招く。一方、第1の補正量は、切り戻し時に操舵負荷を増加補正するために用いられ、操舵補助トルクの増加に繋がる。従って、第2の所定比率は、第1の所定比率と同じか、ゼロを含む範囲で、それよりも小さく設定すると、電動パワーステアリング装置のアシストが十分に行なわれて、運転者による操舵操作の負担を軽減することができる。さらに、第1の所定比率は第2の所定比率以上に設定されるので、切り戻し時に、補助操舵トルクが不足して、運転者がステアリングホイールを通じて戻され感を強く受けることを防止できる。
請求項8に記載した電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールが操舵輪と機械的に分離され、操舵輪を操舵するための操舵トルクの全部が電動モータによって発生されるものであり、
ステアリングホイールが操舵されたとき、当該ステアリングホイールに操舵反力を与える反力用電動モータと、
操舵負荷補正手段により補正された操舵負荷に基づき、当該操舵負荷に応じた操舵反力をステアリングホイールに与えるように反力用電動モータを制御する操舵反力制御手段と、を備えることを特徴とする。
このように、電動パワーステアリング装置は、いわゆるステアバイワイヤの構成を有するものであっても良い。この場合、補正された操舵負荷に基づき反力用電動モータを制御することにより、路面反力に応じた操舵反力をステアリングホイールに与えることができる。
請求項9に記載した電動パワーステアリング装置では、制御手段が、操舵負荷補正手段により補正された操舵負荷に基づき、車両の運動状態を推定する運動状態推定手段を有し、当該運動状態推定手段によって推定される運動状態を所望の特性とするように、アシスト指令信号に対する補正信号を生成することを特徴とする。補正された操舵負荷は、操舵輪が路面から受ける力(路面反力)により近似したものとなる。このため、例えば、車両モデルに操舵負荷を入力することにより、車両のヨーレートやロールレートなどの車両の運動状態を精度良く推定することができる。このヨーレートやロールレートが所望の値となるように、アシスト指令信号に対する補正信号を生成することにより、車両の運動状態を所望の特性となるように制御することができる。
実施形態による電動パワーステアリング装置の全体構成を示す構成図である。 電動パワーステアリング装置において、補助操舵トルクを発生する電動モータに対して与えられるアシスト指令信号を出力するための制御ブロック図である。 図1に示す電動パワーステアリング装置のモデル図である。 (a)、(b)は、ギヤロスに関して説明するための説明図である。 (a)、(b)は、推定操舵負荷と負荷計測値との関係を示したグラフである。 図3の制御ブロック図における補正操舵負荷演算部の詳細な構成を示すブロック構成図である。 (a)、(b)は、補正操舵負荷演算部におけるフィルタ部の特性を示すボード線図である。 推定操舵負荷を補正した場合及び補正しない場合と、負荷計測値との関係を示すグラフである。 図3の制御ブロック図におけるアシストゲインマップを示すグラフである。
本発明の実施形態による電動パワーステアリング装置について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態による電動パワーステアリング装置(EPS)の全体構成を示す構成図である。
図1において、ステアリングホイール1に接続されたステアリングシャフト2には、トルクセンサ3が設けられている。このトルクセンサ3は、トーションバーを備え、このトーションバーの捩れ角を、ステアリングホイール1に加えたれた力である操舵トルクとして検出する。つまり、トーションバーを挟んで上下のステアリングシャフト2には回転角度差が生じる。トルクセンサ3は、この回転角度差に応じた値を、ステアリングホイール1からステアリングシャフト2に印加された操舵トルクとして検出するのである。さらに、トーションバーの下側のステアリングシャフト2には、運転者の操舵操作を補助する補助操舵トルクを与える電動モータ4が減速機5を介して取り付けられている。
ステアリングシャフト2の先端は、ピニオン軸7に連結されている。このピニオン軸7は、ラックアンドピニオン式のギヤ機構を介してラック軸8に連結されている。ラック軸8の両端には、タイロッド等を介して左右操舵輪としての一対のタイヤ(ホイール)9がそれぞれ連結されている。従って、ピニオン軸7の回転運動が、ラック軸8の直線運動に変換されることにより、そのラック軸8の直線運動変位に応じた角度だけ、左右の操舵輪9が転舵される。
上述したように、補助操舵トルクを発生する電動モータ4は、減速機5を介してステアリングシャフト2に取り付けられている。減速機5は、電動モータ4の回転を減速してステアリングシャフト2に伝達する。これにより、電動モータ4の駆動によって、ステアリングホイール1の操舵方向及び操舵トルクに応じた補助操舵トルクをステアリングシャフト2に伝達することができる。
電動モータ4の駆動は、電子コントロールユニット(ECU)10によって制御される。ECU10は、トルクセンサ3によって検出される操舵トルクと電動モータ4が発生する補助操舵トルクとに基づいて、操舵負荷を推定する。さらに、推定した操舵負荷からヒステリシス特性を除去した補正操舵負荷を算出する。そして、算出した補正操舵負荷、トルクセンサ3によって検出される操舵トルク、及び車速センサ11によって検出される車速に基づいて、電動モータ4が発生すべき補助操舵トルクを示すアシスト指令信号を算出して、電動モータ4に出力する。
以下、ECU10におけるアシスト指令信号の演算方法について詳しく説明する。ECU10は、まず、トルクセンサ3によって検出される操舵トルクTsと電動モータ4が発生する補助操舵トルクTaとに基づいて、図2に示す外乱オブザーバ20を用いて、操舵負荷Txを推定する。
補助操舵トルクTaは、電動モータ4への電流指令値から算出する。その他にも、電動モータ4に通電される電流値を電流センサによって検出し、その検出値から算出することも可能であるし、トルクセンサを用いて実際に電動モータ4が発生するトルクを検出しても良い。
また、図2の外乱オブザーバ20では、操舵トルクTs及び補助操舵トルクTaに加えて、電動モータ4の加速トルクIcθc’’を考慮して、操舵負荷Txを求めている。電動モータ4の回転角度θcが変化するとき、電動モータ4を加速させるためにトルクが消費されるためである。なお、Icは電動モータ4、減速機5およびステアリングシャフト2を合わせた(ステアリングシャフト周りの)等価慣性モーメントである。
このようにして推定される操舵負荷Txは、操舵輪が路面から受ける力(横力、摩擦力など)である路面反力によって発生するが、路面反力そのものではない。図3に示すモデルに基づいて、操舵トルクTs及び補助操舵トルクTaに対する操舵負荷Txの関係を説明する。
図3に示すモデルでは、ステアリングホイール1は、慣性モーメントIh[kgm2]及び減衰定数Ch[Nm・s/rad]を有し、運転者によってステアリングホイール1が操舵されたとき、ステアリングホイール1に操舵トルクTh[Nm]がかかり、かつ、操舵角度θh[rad]だけ回転される。また、12は、トルクセンサ3におけるトーションバーに相当するものである。ステアリングホイール1が操舵されると、トーションバー12が捻られる。このとき、トーションバー12は、捩れバネ定数Kt[Nm/rad]に従って、捻られていない状態に戻そうとするバネ力を発生する。運転者がステアリングホイール1に加えた操舵トルクThは、ステアリングホイール1の慣性モーメント及び減衰定数Chによって多少減衰され、トルクセンサ3により、操舵トルクTsとして検出される。
また、13は、電動モータ4、減速機5及びステアリングシャフト2を仮想的に一体化したものに相当する。この電動モータ4、減速機5及びステアリングシャフト2の仮想一体物13は、慣性モーメントIc[kgm2]及び減衰定数Cc[Nm・s/rad]を有する。なお、その際、電動モータ4分の慣性モーメントは、ステアリングシャフト2における慣性モーメントに換算して算出される。また、電動モータ4、減速機5及びステアリングシャフト2の仮想一体物13は、電動モータ4を含むため、ステアリングシャフト2に対して補助操舵トルクTa[Nm]を作用させる。なお、この電動モータ4が発生する補助操舵トルクTa[Nm]も、ステアリングシャフト2におけるトルクに換算されている。また、θcは、ステアリングシャフト2の回転角度に換算した電動モータ4の回転角度である。
さらに、ピニオン軸7も、トーションバー12と同じく、回転方向に弾性要素として捩れる。このため、図3では、ピニオン軸7の捩れバネ定数をKin[Nm/rad]として示している。14は、ピニオン軸7が連結されるラック軸8から操舵輪9までを仮想的に一体化したものに相当する。このラック軸8から操舵輪9までの仮想一体物14は、慣性モーメントIL[kgm2]及び減衰定数CL[Nm・s/rad]を有する。なお、その際、仮想一体物14の慣性モーメントILは、ステアリングシャフト2における慣性モーメントに換算して算出されている。また、ラック負荷TL[Nm]は、ラック軸8を直線運動させ、ひいては操舵輪9を転舵させる横力を、ステアリングシャフト2の回転トルクに換算したものである。さらに、ラック軸8のストロークは、ステアリングシャフト2の回転角に換算され、θL[rad]として表されている。
上述した図3に示すモデルに示すように、操舵負荷Txは、操舵輪の路面反力に近いラック負荷TLとは異なり、電動モータ4、減速機5及びステアリングシャフト2の仮想一体物13において、操舵トルクTs及び補助操舵トルクTaに対抗するトルクとして推定される。ここで、ステアリングホイール1の操舵角度が保持され、タイヤ9の転舵角度が一定であり、タイヤ9が路面から受ける力も一定であると仮定すると、操舵負荷Txは操舵トルクTs及び補助操舵トルクTaの加算値に等しく、またラック負荷TLとも一致する。しかしながら、ステアリングホイール1が中立位置から左右いずれかの方向に切り込まれるとき、及び操舵されていたステアリングホイール1が中立位置に切り戻されるときには、上述した力のバランスが崩れ、操舵負荷Txとラック負荷TLとは不一致となる。
このように、ステアリングホイール1が切り込まれたり、切り戻された時に、操舵負荷Txとラック負荷TLとが不一致となる理由を、図4(a)、(b)の図面に基づいて説明する。なお、図4(a),(b)は、ラックアンドピニオン機構を中心として、電動パワーステアリング装置を模式的に表したものである。
ステアリングホイール1が中立位置から切り込まれるときには、操舵トルクTs及び補助操舵トルクTaが、ラックアンドピニオン機構等を介して、タイヤ9を転舵する力に変換される。このため、運転者がステアリングホイール1を切り込む際には、図4(a)に示すように、操舵トルクTs及び補助操舵トルクTaがタイヤ9に伝達されるまでに、ピニオン軸7とラック軸8とのギヤ摩擦によるロストルクTf分だけ減少される。なお、厳密には、減速機5のギヤ摩擦の他、タイロッドの直線運動をタイヤを転舵させる回転運動に変換するナックルアーム回りの各種ジョイント部分による摩擦力によってもロストルクは発生する。本実施形態においては、これら全てのロストルクによる操舵トルクの減少を総称してギヤロスと呼ぶ。
このギヤロスのため、路面反力に近いラック負荷TLは、外乱オブザーバ20によって推定された操舵負荷Txよりも小さくなってしまう。換言すれば、操舵負荷Txは、ステアリングホイール1の切り込み時、タイヤ9が路面から受ける路面反力よりもギヤロスの分だけ大きな値が推定されてしまう。
逆に、運転者が切り込んだステアリングホイール1を中立方向に切り戻す際には、操舵トルクTsおよび補助操舵トルクTaによる、タイヤ9を転舵させようとする力よりも、路面反力が勝っている状態である。この場合、操舵トルクTsおよび補助操舵トルクTaではなく、路面反力によって、ラックアンドピニオン機構が駆動されることになる。従って、図4(b)に示すように、操舵負荷Txは、ステアリングホイール1の切り戻し時に、タイヤ9が路面から受ける路面反力に近いラック負荷TLよりも、ラックアンドピニオン機構のロストルクの分だけ小さな値が推定されてしまう。
図5(a)、(b)は、外乱オブザーバ20により推定した操舵負荷Txと、実際に減速機5よりもピニオン軸7側の負荷を歪みゲージにより計測した負荷計測値との関係を示すものである。図5(a),(b)に示すように、ステアリングホイール1の切り込みには、推定操舵負荷が負荷計測値よりも大きくなり、逆に、ステアリングホイール1の切り戻し時には、推定操舵負荷が負荷計測値よりも小さくなっている。このように、推定操舵負荷は、ステアリングホイール1の切り込み時と切り戻し時とで、ヒステリシス特性を有する。さらに、特に図5(b)から、推定操舵負荷が大きくなるほど、負荷計測値との乖離が大きくなっていることが分かる。
ここで、推定操舵負荷が大きくなるほど、ピニオン軸7とラック軸8との間のギヤ歯面に加わる圧力が大きくなり、その結果、ギヤ歯面間の摩擦力も大きくなる。ギヤ歯面間の摩擦力は、歯面摩擦係数と歯面間に加わる力との乗算結果に等しいためである。従って、推定操舵負荷が大きくなるほど、ラックアンドピニオン機構のロストルクTfなどが大きくなるので、負荷計測値との乖離が大きくなるのである。
そのため、本実施形態では、図2に示すように、外乱オブザーバ20が推定した操舵負荷から、上述したヒステリシス特性を除去するための補正操舵負荷演算部30を備える。この補正操舵負荷演算部30の構成を図6に基づいて説明する。
図6に示すように、補正操舵負荷演算部30には、推定操舵負荷の他、トルクセンサ3によって検出された操舵トルク、及びステアリングホイールの操舵角度を検出する操舵角センサ(図示せず)の検出値から算出された操舵速度が入力される。
本実施形態では、ステアリングホイール1の中立位置から一方の操舵方向領域をプラス、他方の操舵方向領域をマイナスと定めた、符号付きの操舵トルクが用いられる。ステアリングホイール1の操舵位置がプラスの操舵方向領域に属していれば操舵トルクの符号はプラスとなり、マイナスの操舵方向領域に属していれば操舵トルクの符号はマイナスとなる。
また、操舵速度も符号付きの操舵速度が用いられ、マイナスの操舵方向領域からプラスの操舵方向領域に向かう方向に操舵速度が生じている場合、操舵速度の符号はプラスとなり、プラスの操舵方向領域からマイナスの操舵方向領域に向かう方向に操舵速度が生じている場合には、操舵速度の符号はマイナスとなる。
このような符号付きの操舵トルクと操舵速度は、乗算器31に入力され、乗算される。このため、乗算器31における乗算結果の符合は、操舵トルクと操舵速度の符号が一致している場合にはプラスとなり、不一致の場合にはマイナスとなる。ここで、ステアリングホイール1が切り込まれる場合には、操舵トルクと操舵速度の符号が一致し、切り戻されている場合には操舵トルクと操舵速度の符号が不一致となる。従って、乗算器31の乗算結果がプラスである場合には、ステアリングホイール1が切り込まれている状態であることを意味し、マイナスである場合には、切り戻されている状態であることを意味する。この乗算器31の乗算結果は、変換部32に入力される。
変換部32は、乗算器31から入力された乗算結果がプラスの符合を有している場合、プラスの符号を持った一定値(例えば1)を出力し、乗算結果がマイナスの符号を有している場合、マイナスの符号を持った一定値(例えば−1)を出力するものである。この変換部32の出力は、係数出力部33に与えられる。
係数出力部33は、後述する乗算器34において、推定操舵負荷に対する補正量を算出するために、推定操舵負荷に乗じる係数を出力するものである。この係数出力部33は、
変換部32の出力値に、自身に記憶されている所定値(例えば0.2)を乗じた結果を係数として出力する。従って、係数出力部33は、ステアリングホイール1の切り込み時、プラスの符号を有する係数を出力し、ステアリングホイール1の切り戻し時、マイナスの符号を有する係数を出力する。
乗算器34は、係数出力部33から出力された符号付の係数を推定操舵負荷に乗じることによって補正量を算出するものである。乗算器34によって算出された補正量は、フィルタ部35に入力される。
フィルタ部35は、ノッチフィルタ36とローパスフィルタ37とを備える。ノッチフィルタ36は、予め計測した操舵トルクや操舵速度の振動が起こりやすい周波数帯域の信号成分を減衰させるものである。また、ローパスフィルタ37は、所定のカットオフ周波数よりも高い周波数帯域の信号成分を減衰させるものである。
これらノッチフィルタ36及びローパスフィルタ37からなるフィルタ部35の特性を図7(a),(b)のボード線図に示す。図7(a)、(b)に示すように、本実施形態では、ノッチフィルタ36の遮断周波数帯域が、ローパスフィルタ37のカットオフ周波数よりも高い領域に設定されている。しかしながら、操舵トルクや操舵速度の振動が起こりやすい周波数帯域は、車種毎に異なり、図7(a),(b)に示された特性図は、あくまで一例にすぎない。
このように、フィルタ部35は、乗算器34が算出した補正量の変化をなますローパスフィルタ37を有している。これにより、補正量の急増や急減を抑制することができるので、この補正量を用いて算出される補正操舵負荷の変化も滑らかなものとなる。その結果、補正操舵負荷に基づいて、電動モータ4が発生する補助操舵トルクを制御しても、その補助操舵トルクが振動したりする事態の発生を防止することができる。
フィルタ部35によってフィルタ処理された補正量は、減算器38に入力される。減算器38は、推定操舵負荷から補正量を減算することにより、補正操舵負荷を算出する。
従って、ステアリングホイール1が切り込まれている場合には、補正量がプラスの符号を有するため、減算器38からは、推定操舵負荷から補正量分だけ減少した補正操舵負荷が出力される。一方、ステアリングホイール1が切り戻されている場合には、補正量がマイナスの符号を有するため、減算器38からは、推定補正負荷から補正量分だけ増加した補正操舵負荷が出力される。
上述したように、本実施形態では、推定操舵負荷に係数を乗じることによって補正量を求めているので、補正量は、推定操舵負荷が大きくなるほど大きくなり、逆に推定操舵負荷が小さくなるほど小さくなる。従って、このような補正量を用いて推定操舵負荷を増減補正することにより、上述したように、その大きさが大きくなるほど実際の負荷との乖離が大きくなる推定操舵負荷から精度良くヒステリシス特性を除去することができる。
図8に、補正操舵負荷演算部30による補正を行って求めた補正操舵負荷及び補正前の推定操舵負荷と、実際に計測した負荷計測値との関係を示す。図8から明らかなように、補正前の推定操舵負荷は、切り込み時と切り戻し時とで、大きなヒステリシス特性を有している。それに対して、補正操舵負荷演算部30により算出された補正操舵負荷は、切り込み時と切り戻し時の特性がほぼ一致しており、精度良くヒステリシス特性が除去できていることが分かる。
なお、ステアリングホイールが切り込まれる時と、切り戻される時とで、推定操舵負荷から補正量を算出するための係数は同じであっても良いが、推定操舵負荷の0〜30%の範囲で異なった値に設定しても良い。係数の値を異ならせるには、例えば、変換部32において、乗算器31の乗算結果がプラスの符号を有している場合と、マイナスの符号を有している場合とで、異なる一定値を出力するようにすれば良い。
係数を異なる値とする場合には、ステアリングホイールが切り込まれる時の係数を、切り戻される時の係数よりも小さく(0を含む)設定することが好ましい。電動パワーステアリング装置により運転者の操舵をアシストする場合、原則として、操舵負荷が大きくなるほど、電動モータ4による補助操舵トルクも大きくなる。ここで、ステアリングホイール1が切り込まれる際に算出される補正量は、上述したように、推定操舵負荷を減少補正するために用いられる。このため、推定操舵負荷を減少補正して補正操舵負荷を求めた場合、電動モータ4が発生する補助操舵トルクも低下する。逆に、ステアリングホイール1が切り戻される際に算出される補正量は、推定操舵負荷を増加補正するために用いられ、操舵補助トルクの増加に繋がる。
従って、切り込み時の係数を切り戻し時の係数よりも小さくすることにより、切り込み時の補正量を切り戻し時の補正量よりも小さくすることができ、その結果、電動パワーステアリング装置のアシストが十分に行なわれて、運転者による操舵操作の負担を軽減することができる。さらに、切り戻し時の係数が切り込み時の係数よりも大きく設定されることにより、切り戻し時に、電動モータ4の補助操舵トルクが不足して、運転者がステアリングホイール1を通じて戻され感を強く受けることを防止できる。
また、上述した実施形態では、操舵トルクと操舵速度の符号が一致しているか、不一致であるかにより、ステアリングホイール1が切り込まれているか、切り戻されているかを判別した。しかしながら、ステアリングホイールが切り込まれているか、切り戻されているかの判別は他の手法によっても可能である。
例えば、トルクセンサ3によって検出された操舵トルクの大きさとその変化から判別しても良い。具体的には、操舵トルクが0よりも大きい値であって、その変化が増加していれば切り込み時、減少していれば切り戻し時と判定することができる。
また、ステアリングホイール1の操舵角(トルクセンサ3の検出トルクからトーションバーの捩れ角を求め、電動モータ4のステアリングシャフト換算の回転角に加算することにより推定されるステアリングホイールの操舵角度でも良い)とその変化から判別しても良い。
さらに、電動モータ4の回転角およびトルクセンサ3の検出トルクから推定される操舵角度と、電動モータ4の回転角を用いて、ステアリングホイール1側からタイヤ9を回しているのか、タイヤ9側からステアリングホイール1が回されているのか判別しても良い。
再び、図2の説明に戻ると、補正操舵負荷演算部30により算出された補正操舵負荷は、アシストトルク演算部40のアシストゲインマップ41に与えられる。このアシストゲインマップ41には、車速センサ11によって検出された車速も与えられる。
アシストゲインマップ41は、図9に示すように、補正操舵負荷Tx’と車速とを入力パラメータとし、それらの入力された補正操舵負荷Tx’と車速とに対応したアシストゲインを出力するものである。アシストゲインマップ41は、補正操舵負荷Tx’が大きくなるほど、また、車速が低くなるほど、大きなアシストゲインが出力されるように設定されている。
アシストゲインマップ41によって出力されたアシストゲインは、乗算器42に与えられる。乗算器42は、トルクセンサ3によって検出した操舵トルクも入力し、操舵トルクとアシストゲインとを乗算することにより、アシスト指令値を出力する。また、アシストゲインマップ41によって出力されたアシストゲインは、補償部50の補償器51にも入力される。この補償器51は、補正操舵負荷Tx’によって算出されたアシストゲインの大きさに応じて、操舵に係る機械系の安定性を確保するための適切な補償値を出力する。例えば、アシストゲインが小さい場合には、操舵トルクTsに対して進み要素を増加する補償値を出力し、電動モータ4の補助操舵トルクの立ち上がりを早めて機械系の振動を防止する。また、アシストゲインが大きい場合には、操舵トルクTsに対して遅れ要素を増加する補償値を出力し、機械系の振動を防止する。
補償部50の加算器52は、アシストトルク演算部40から出力されたアシスト指令値と補償器51から出力された安定化補償値とを加算することにより、電動モータ4に与えるアシスト指令信号を生成する。
このように、ヒステリシス特性が精度良く除去され、路面反力により近似した補正操舵負荷Tx’に基づいて、電動モータ4に対するアシスト指令信号を生成することにより、切り込みから切り戻しにかけて、運転者はステアリングホイール1から連続性のある操舵反力を感じることができるようになる。また、車両旋回時において、切り込みから切り戻しを行なったときに、急激な車両挙動が抑えられる。
さらに、上述したように、切り戻し時には、補助操舵トルクが増加されるので、戻され感が低減される。この補助操舵トルクの増加分は、補助操舵負荷Tx’が大きいときには多くなり、小さいときには少なくなる。このため、小操舵角領域において、増加された補助操舵トルクによりステアリングホイール1が戻りにくくなる現象は生じない。
なお、図2を用いて説明した例では、ECU10が、補正操舵負荷Tx’から、アシスト指令値を直接的に出力するものであった。しかしながら、他の手法によって、アシスト指令値を作成することも可能である。例えば、ECU10は、電動モータ4に対する基本アシスト指令値を、トルクセンサ3によって検出される操舵トルクと車速とに基づいて算出する。そして、補正操舵負荷Tx’に基づいてアシスト補正値を算出し、このアシスト補正値を基本アシスト指令値に対して加減算あるいは乗算することにより、補正アシスト指令値を作成するようにしても良い。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することができる。
例えば、本発明は、ステアリングホイールに接続されたシャフトと、操舵輪を実際に操舵するための操舵機構とが機械的に分離された、いわゆるステアバイワイヤとして構成される電動パワーステアリング装置に適用しても良い。
この場合、電動パワーステアリング装置は、シャフトを介してステアリングホイールに操舵反力を与える反力用モータと、操舵機構の一部として、操舵輪を操舵するための操舵トルクの全部を発生する操舵用モータとの2種類の電動モータを有する。そして、操舵用モータが発生する操舵トルクに基づいて、図2に示したのと同様な外乱オブザーバを用いて推定操舵負荷Txを求める。さらに、補正操舵負荷演算部により推定操舵負荷Txからヒステリシス特性を除去した補正操舵負荷Tx’を求める。
そして、補正操舵負荷Tx’に基づいて、反力用モータの発生トルクを制御する。補正操舵負荷Tx’は、路面反力により近似したものであるため、路面反力に応じた操舵反力をステアリングホイールに与えることができる。これにより、運転者は、操舵反力から、車の旋回状態や路面状態を把握しやすくなる。
そして、運転者がこのような操舵反力を感じつつステアリングホイールを操舵したとき、その操舵トルクを検出し、その操舵トルク及び車速に基づいて、操舵用モータの発生トルクを制御する。従って、この場合、操舵用モータは、間接的に(反力用モータの発生トルク制御を介して)、補正操舵負荷に基づく制御が行われることになる。
また、本発明は、例えば本出願人が既に出願し公開された特開2007−22373号公報に開示されるような、基本アシスト量と操舵トルクとから車両モデルを用いて車両の運動状態を推定し、その運動状態が所望の特性となるように、基本アシストトルクに対するトルク補正量を求め、そのトルク補正量により基本アシストトルクを補正した補正トルクを発生するように、電動モータを制御する電動パワーステアリング装置に適用しても良い。
上述した公報においては、基本アシスト量と操舵トルクとを加算した信号を車両モデルに入力して車両の運動状態を推定している。この基本アシスト量と操舵トルクとを加算した信号は、本発明における推定操舵負荷Txを求めていることに相当する。推定操舵負荷Txは、上述したようにギヤロスに起因してヒステリシス特性を有するため、それにより推定される車両の運動状態は相応の誤差を伴うと考えられる。
それに対して、本願発明のように、推定操舵負荷Txからヒステリシス特性を除去した補正操舵負荷Tx’を車両モデルへの入力とすることで、車両の運動状態を精度良く推定することができるようになる。その結果、車両の運動状態を所望の特性に制御する際の制御精度が向上する。
また、上述した実施形態では、補助操舵トルクを発生する電動モータ4がステアリングシャフト2に連結された、いわゆるコラム式の電動パワーステアリング装置について説明した。しかしながら、本発明による電動パワーステアリング装置は、電動モータ4がラック軸に連結された、いわゆるラック式の電動パワーステアリング装置にも適用可能である。さらに、電動モータ4はタイロッドに連結されても良い。
また、トルクセンサ3によって検出される操舵トルクと車速とに基づいてアシスト指令値を算出するとともに、補正操舵負荷を算出せず、単に、ステアリングホイールが切り込まれているか、切り戻されているかを判別して、その判別結果に基づき、予め設定されたギヤロス分だけ、アシスト指令値を増減補正するようにしても良い。これにより、制御を簡略化することができる。
1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、3…トルクセンサ、4…電動モータ、5…減速機、7…ピニオン軸、8…ラック軸、9…操舵輪、10…ECU、11…車速センサ、20…外乱オブザーバ、30…補正操舵負荷演算部、40…アシストトルク演算部、50…補償部

Claims (9)

  1. 操舵輪を直進状態から転舵させようとする操舵トルクに基づき、路面から前記操舵輪に作用する路面反力によって生じる操舵負荷を推定する操舵負荷推定手段と、
    前記操舵負荷が、前記路面反力よりも大きい切り込み時であるか、当該路面反力よりも小さい切り戻し時であるかを判別する判別手段と、
    前記判別手段により切り戻し時と判別されたとき、前記操舵負荷推定手段によって推定された操舵負荷に第1の所定比率を乗じて求めた第1の補正値だけ大きくなるように前記操舵負荷を補正し、前記判別手段により切り込み時と判別されたとき、前記操舵負荷推定手段によって推定された操舵負荷に第2の所定比率を乗じて求めた第2の補正値だけ小さくなるように前記操舵負荷を補正する操舵負荷補正手段と、を備えることを特徴とする操舵負荷推定装置。
  2. 前記第1及び第2の補正量の変化をなますローパスフィルタ手段を備え、前記操舵負荷推定手段によって推定された操舵負荷を補正するために、当該ローパスフィルタ手段により変化がなまされた第1及び第2の補正量が用いられることを特徴とする請求項に記載の操舵負荷推定装置。
  3. ステアリングホイールにより車両の操舵輪を操舵する際に、電動モータによって、前記操舵輪を操舵するための操舵トルクの少なくとも一部を発生させる電動パワーステアリング装置であって、
    前記操舵トルクに基づいて、路面から前記操舵輪に作用する路面反力によって生じる操舵負荷を推定する操舵負荷推定手段と、
    前記操舵負荷が、前記路面反力よりも大きい切り込み時であるか、当該路面反力よりも小さい切り戻し時であるかを判別する判別手段と、
    前記判別手段により切り戻し時と判別されたときに、前記操舵負荷推定手段によって推定された操舵負荷に第1の所定比率を乗じて求めた第1の補正値だけ大きくなるように前記操舵負荷を補正し、前記判別手段により切り込み時と判別されたとき、前記操舵負荷推定手段によって推定された操舵負荷に第2の所定比率を乗じて求めた第2の補正値だけ小さくなるように前記操舵負荷を補正する操舵負荷補正手段と、
    前記操舵負荷補正手段により補正された操舵負荷に基づき、前記電動モータが発生する操舵トルクを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  4. 前記第1及び第2の補正量の変化をなますローパスフィルタ手段を備え、前記操舵負荷推定手段によって推定された操舵負荷を補正するために、当該ローパスフィルタ手段により変化がなまされた第1及び第2の補正量が用いられることを特徴とする請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
  5. 前記ステアリングホイールは、トーションバーが設けられた操舵軸に接続され、この操舵軸は、当該操舵軸の回転を、前記操舵輪の転舵方向への運動に変換して前記操舵輪に伝達する伝達機構に連結され、前記電動モータは、前記操舵軸及び伝達機構のいずれかに係合して、前記ステアリングホイールに加えられた操舵トルクを補助するためのアシストトルクを発生するものであり、
    前記操舵軸のトーションバーの捩れの大きさから、運転者によって前記ステアリングホイールに印加された操舵トルクを検出する操舵トルクセンサを備え、
    前記制御手段は、前記操舵負荷補正手段により補正された操舵負荷からアシストゲインを定め、当該アシストゲインを前記操舵トルクに乗じることによって、前記電動モータが発生すべき操舵トルクに対応するアシスト指令信号を生成することを特徴とする請求項3又は4に記載の電動パワーステアリング装置。
  6. 前記ステアリングホイールは、トーションバーが設けられた操舵軸に接続され、この操舵軸は、当該操舵軸の回転を、前記操舵輪の転舵方向への運動に変換して前記操舵輪に伝達する伝達機構に連結され、前記電動モータは、前記操舵軸及び伝達機構のいずれかに係合して、前記ステアリングホイールに加えられた操舵トルクを補助するためのアシストトルクを発生するものであり、
    前記操舵軸のトーションバーの捩れの大きさから、前記ステアリングホイールに印加された操舵トルクを検出する操舵トルクセンサを備え、
    前記制御手段は、前記操舵トルクセンサによって検出される操舵トルクに基づいて前記電動モータに対する基本アシスト指令信号を生成し、当該基本アシスト指令信号を、前記操舵負荷補正手段により補正された操舵負荷に基づいて補正することにより、最終的なアシスト指令信号を生成することを特徴とする請求項3又は4に記載の電動パワーステアリング装置。
  7. 前記第2の所定比率は、前記第1の所定比率と同じか、ゼロを含む範囲で、それよりも小さく設定されることを特徴とする請求項5又は6に記載の電動パワーステアリング装置。
  8. 前記ステアリングホイールは前記操舵輪と機械的に分離され、前記操舵輪を操舵するための操舵トルクの全部が前記電動モータによって発生されるものであり、
    前記ステアリングホイールが操舵されたとき、当該ステアリングホイールに操舵反力を与える反力用電動モータと、
    前記操舵負荷補正手段により補正された操舵負荷に基づき、当該操舵負荷に応じた操舵反力を前記ステアリングホイールに与えるように前記反力用電動モータを制御する操舵反力制御手段と、を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の電動パワーステアリング装置。
  9. 前記制御手段は、前記操舵負荷補正手段により補正された操舵負荷に基づき、車両の運動状態を推定する運動状態推定手段を有し、当該運動状態推定手段によって推定される運動状態を所望の特性とするように、前記アシスト指令信号に対する補正量信号を生成することを特徴とする請求項6又は7に記載の電動パワーステアリング装置。
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