JP5223248B2 - エレベータの綱車装置 - Google Patents

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この発明はエレベータの綱車装置に関し、特に既存の駆動機に対するブレーキの増設に好ましく用いられる他、通常の巻上機としても有用なブレーキが内蔵された綱車装置に関する。
昨今、カゴが上方向移動する際の安全性向上のためブレーキ装置の複数化が求められるようになっている。既存の駆動機を複数のブレーキを備えた駆動機に一式交換することは、既存の機械室からの搬入出経路の問題や工事期間の問題がある。そのため、ブレーキ装置を容易に追加取付け出来て据付時間の短い方法や構造が要求される。従来の現場で追加取付け可能なブレーキとしては、出力軸延長部が出力軸と綱車に取付けられ、これにより回転延長部が形成されている。この回転延長部がブレーキ組立体の中央ハブに連結されている。ブレーキ組立体はベットプレートに固定されたトルクアームにて支えられているものがある(例えば特許文献1参照。)。
特開平5−238663号公報(第1頁、図1)
上記のような従来のエレベータの綱車装置は、既存の駆動綱車に延長軸を取付け、延長軸にブレーキ装置を取り付ける構造である。この構造は出力軸又は綱車に延長軸を接合する必要があるため、出力軸が両端支持された駆動機においては、延長軸を取り付けることが出来ず、ブレーキの追加ができないという課題があった。また、出力軸を延長してブレーキ装置を配置するため、駆動装置近辺にブレーキ装置を配置するスペースを確保しなければ装着できないという課題があった。
この発明は上記のような従来技術の課題を解決するためになされたもので、既存の駆動綱車の支持構造に関わらず交換可能で、延長軸を接合したりスペースが特に増大することのない省スペースなブレーキ装置付のエレベータの綱車装置を提供することを目的としている。
この発明に係るエレベータの綱車装置は、回転駆動する駆動機と、基体に対して回転自在に設けられ、外周面に綱溝を有しこの綱溝の内側で内周面または該内周面の内側部に制動面を有し中心部に内筒部を有し、上記駆動機の駆動により回転する駆動綱車と、この駆動綱車の内筒部に回転自在に支持され上記基体に対して回転が規制された支持部材と、この支持部材に対して固定され上記制動面に対して制動片を進退させる制動機構とを備え、上記支持部材は、上記駆動綱車の軸方向一側部を塞ぐ如く形成され、上記基体に対して回転方向に干渉するように設けられた係止部材により回転が規制されているものである。
この発明においては、駆動綱車として、外周面に綱溝を有しこの綱溝の内側で内周面または該内周面の内側部に制動面を有するものを用い、この駆動綱車の内筒部に回転自在に支持され上記基体に対して回転が規制された支持部材と、この支持部材に対して固定され上記制動面に対して制動片を進退させる制動機構とを備え、上記支持部材は、上記駆動綱車の軸方向一側部を塞ぐ如く形成され、上記基体に対して回転方向に干渉するように設けられた係止部材により回転が規制されているようにしたので、既存の駆動綱車の支持構造に拘らず交換することができ、また延長軸を接合したりスペースが特に増大することがない。このため綱車を交換するだけで既存の駆動機にブレーキ装置を追加することができる。

実施の形態1.
図1〜図3はこの発明の実施の形態1に係るエレベータの綱車装置を説明する図であり、図1は実施の形態1の綱車装置を既存の駆動機の駆動綱車と交換した状態を示す図で、(a)は要部断面正面図、(b)は図1(a)の円Aで囲むシール部の構造を示す要部断面図、(c)はシール部の変形例を示す要部断面図である。図2は図1に示された駆動機の側面図、図3は図2に示された綱車装置の内部構造を示す一部破断側面図である。なお、この実施の形態1は駆動綱車を装着する軸が回転するタイプに適用したものである。図において、駆動綱車1は椀状ないしは周囲に外筒部を有する円盆状に形成され、中心部に内筒部(この例ではボス部)11、外側部に外筒部12を有し、外筒部12の外周面に綱溝13、外筒部12の内周面に制動面14が形成されている。内筒部11には既存の駆動機2の出力軸21が貫通、嵌合されており、内筒部11の内周面11aが出力軸21に対する結合部となっている。駆動綱車1は上記の如く駆動機2の基体20に対して回転自在に設けられている。
駆動綱車1の図1の右側部には、内筒部11の外周面11bに対して軸受3を介して回転自在に支持され、駆動綱車1との間に制動機構4を収容する空間を形成すると共に、該制動機構4を固定、支持するための略ドーナツ円盤状の支持部材5が外筒部12を蓋する如く設けられている。なお、支持部材5には図2に示すように、基体20の両側面部20a、20bに対して回転方向にそれぞれ干渉する2つのブロック状のストッパである係止部材(51)51a、51bが突設されており、何れの方向に対しても回転が規制されている。なお、上記係止部材51a、51bは複数のボルト52によって支持部材5の外側面にそれぞれ固定されている。
制動機構4は、この例では駆動綱車1の軸対称に2組設けられており、支持部材5に一体形成された取付座53にそれぞれ固定された2つの電磁石機構41(41a、41b)と、2つの制動片6(6a、6b)を制動面14に対してそれぞれ進退させる2つの動作片42(42a、42b)と、2つの制動バネ43(43a、43b)によって構成されている。なお、上記動作片42は電磁石機構41とそれぞれ対向して配置され、制動バネ43は動作片42と電磁石機構41の間に配置され、制動片6は動作片42に固定されている。そして、支持部材5における電磁石機構4及び制動片6に対応する位置には点検孔54と、この点検孔54を塞ぐ点検孔蓋55が設けられている。
また、支持部材5を支承する軸受3の一側部(図1(a)の左側)にはシール31、他側部には軸受蓋32が設けられ、支持部材5の外周部と駆動綱車1の外筒部12との間には図1(b)、図1(c)に示すようなシール手段7が設けられている。図1(b)はラビリンスシール71とした場合である。ラビリンスシール71は、例えば、駆動綱車1の外筒部12の内周面部と支持部材5の外周面部とが近接されている対向面に空所を迷路状に設けたものである。また、図1(c)はオイルシールのような密閉シール72とした場合を模式的に示している。この実施の形態1の綱車装置10は上記駆動綱車1、軸受3、制動機構4、支持部材5、係止部材51及び制動片6などから構成されている。なお、電磁石機構41の制御回路などは図示を省略している。また、既存の駆動機2には、出力軸21を回転させる駆動用のモータ22、ブレーキドラム23a、既存ブレーキ用の電磁石機構23b、ブレーキアーム23cなどが付設されている。
次に上記のように構成された実施の形態1の動作について説明する。上記のように構成された綱車装置10において、駆動綱車1を制動させる場合は、内蔵された制動機構4の電磁石機構41a、41bと動作片42a、42bの間にある制動バネ43a、43bのバネ力により動作片42a、42bを介し制動片6a、6bが制動面14に押し付けられることで制動力を得る。回転動作させる場合は、制動機構4の電磁石機構41a、41bに通電することにより動作片42a、42bを電磁石機構41a、41bの方向に吸引し、動作片42a、42bに固定された制動片6a、6bと制動面14との間に間隙を得ると同時に、モータ22により出力軸21を回転させることにより、駆動綱車1が回転動作する。
なお、支持部材5は係止部材51(51a、51b)によって基体20に対して係止されているので、駆動綱車1が回転しても回転しない。また、シール手段7を設けているので、外部から制動機構4や制動面14などの内側に塵埃や潤滑油が侵入することが防止される。また、制動機構4や制動片6の点検をするときには点検孔蓋55を開けることで点検、メンテナンスを行なう。一方、駆動綱車にブレーキ装置が付設されていない既存の巻上機(図示省略)にブレーキ装置を追加する際には、その駆動綱車を図1に示すブレーキ装置、即ちこの実施の形態1の制動機構4が内蔵された綱車装置10に交換することで、ブレーキ装置の機械的な部分の追加が完了する。
上記のように、実施の形態1によれば、駆動綱車1の内側部に制動機構4を配置したことにより、省スペースであり、ブレーキ装置を追加する場合に、延長軸を接合したりスペースが特に増大することもなく、駆動綱車を交換するだけで既存の駆動機にブレーキ装置を追加することができる。また、制動機構4がロープ油の飛散する方向から外れた位置にあるので制動面14へのロープ油の付着が防止でき、さらに、シール手段7を設けたので、ロープ油の進入をより確実に防止出来る。また、支持部材5を駆動綱車1の内筒部(ボス部)11に回転可能に設け、回転止めのための係止部材51a、51bを既存の基体20の両側面部20a、20bに対して回転方向にそれぞれ干渉するように突設したので、駆動機2本体に支持部材5の取り付けのための施工を必要とせず、容易に制動機構4を有する綱車装置10に交換できる。
また、制動片6a、6bを駆動綱車1の回転中心を対称に両側2箇所に配置したことにより、駆動綱車1の内周側の空所を有効に利用して制動機構4を設けることができ、制動機構を小型化することができる。さらに、支持部材5は、駆動綱車1の内周面に対向したシール手段7を設けたことにより、制動機構4を収容した空所内に塵疾あるいは綱車からの油の進入を抑制でき、信頼性の高いエレベータ用巻上機が得られる。さらに、支持部材5に制動機構4の点検孔54を設けたことで、制動機構4及び制動片6の点検を外側より容易に行なうことができ、保守性が向上される。また、駆動綱車1と制動機構4を一体化したことによって、制動機構4を追加取付する際に、駆動綱車1と制動機構4の位置調整作業は不要であり、出荷時の制動面14と制動片6の位置関係が保持されるので、現地での摺合せ作業が不要であり、据付時間の短縮が図れる。
実施の形態2.
図4〜図6はこの発明の実施の形態2に係るエレベータの綱車装置を説明するものであり、図4は実施の形態2の綱車装置を既存の駆動機の駆動綱車と交換した場合を示す図で、(a)は要部断面正面図、(b)は図4(a)の軸受付近の詳細を示す要部断面図である。図5は図4に示された駆動機の側面図、図6は図5に示された綱車装置の内部構造を示す一部破断側面図である。なお、各図中、同一符号は同一または相当部分を示している。上記実施の形態1では、駆動綱車1が出力軸21に嵌合されて共に回転する構造の駆動機(巻上機)に用いた場合を例示したが、この実施の形態2は軸が固定されている構造の駆動機に用いた場合の例である。図において、既存の駆動機2は、支軸24に対し軸受25で回転自在に支持された出力ボス26を備え、実施の形態2に係る駆動綱車1Aは出力ボス26に対してボルト261により締結され、出力ボス26と共に支軸24の周りを回転する構造である。
駆動綱車1Aは、中心部側に上記出力ボス26に固定するためのフランジ部を有する内筒部11Aが形成されており、支持部材5Aは、該内筒部11Aの外周面に対して軸受3を介して回転可能に支持され、該支持部材5Aの軸方向外側に突設された2つの係止部材(ストッパ)51a、51bが基体20の両側面部20a、20bに対して回転方向に干渉することにより実施の形態1と同様に回転が規制されている。支持部材5Aの内側に形成された取付座53Aには、4つの制動機構4が軸対称に90°間隔で設けられ、制動面14に対向する4箇所の制動片6はそれぞれ4箇所の動作片42に固定されている。
なお、出力ボス26の軸方向外側端面には軸受蓋251が設けられ、この軸受蓋251の内周側と支軸24の外周面との間にはシール252が設けられている。また、内筒部11Aの軸方向外側端面には、図4(b)に示すように軸受3の内輪を押さえて固定するための軸受押え33が設けられ、支持部材5Aの中心部側の軸方向外側部には軸受3の外輪を押えて固定するためのリング状の蓋32が設けられ、該蓋32の中心部側端部と上記軸受押え33との間にはオイルシール34が設けられている。その他の構成は上記実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
上記のように構成された実施の形態2においては、駆動綱車1Aが出力ボス26に取付けられている他は実施の形態1と同様に動作する。そして、同様の効果が期待できるほか、制動片6が制動面14の周方向に軸対称的に4箇所に設けられていることにより、制動機構4を実施の形態1よりも小形にできるという効果が得られる。なお、制動機構4の数は特に限定されるものではなく、少なくとも1つ備えていれば基本的な効果が期待できるが、バランス等の点で2以上(複数)とすることは好ましい。
実施の形態3.
図7及び図8はこの発明の実施の形態3に係るエレベータの綱車装置を説明するもので、図7は既存の駆動機の駆動綱車をこの実施の形態3の綱車装置に交換した場合を示す要部断面正面図、図8は図7に示された綱車装置の内部構造を示す一部破断側面図である。なお、この実施の形態3は、駆動綱車を支える出力軸(回転軸)が片側で支持されている構造の駆動機に適用した場合である。図において、既存の駆動機2の出力軸21は駆動機2本体の一方側(図7の右側)に突出され、また駆動機2の基体20Aは台座として形成されている。駆動綱車1は出力軸21に対して実施の形態1と同様に嵌合され、保持部材5も実施の形態1と同様に駆動綱車1の内筒部(ボス部)11に対して軸受3を介して回動可能に支持されている。
一方、保持部材5の回動を制限する係止部材(ストッパ)51は、基体20Aに調整シム27を介してボルト28aによって固定された台座28に軸方向に挿通され、保持部材5に締結された複数のボルトからなっている。その他の構成は、上記実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
上記のように構成された実施の形態3においては、実施の形態1と同様に動作し、同様の効果が得られるほか、保持部材5の回動を制限する係止部材51を複数のボルトによって構成したので、製造が簡単であり、実施の形態1、2に例示したブロック状の係止部材を取り付けるための施工を必要とせず、組立も簡単であるという効果が得られる。
以上説明したように、この発明の綱車装置は既存の駆動綱車の支持構造に拘らず交換することができるという顕著な効果を奏するものである。なお、上記実施の形態1〜3では制動機構4の設置空間を外部と密閉するためにシール手段7を設けたが、必ずしも密封しなくても差し支えない。また、制動面14は綱溝13の背面部側の内周面に構成したが、これに限定されるものではなく、該内周面の内側部であれば制動面を例えば綱溝13の背面部からずらせた位置に設けてもよい。さらに、上記実施の形態ではこの発明の綱車装置を既存の駆動機の駆動綱車の交換に供する場合について説明したが、必ずしも交換用に限定されるものではないことはいうまでもなく、新造の駆動機に取り付け、最初からブレーキの複数化を図る場合にも好ましく用いることができることは当然である。
この発明の実施の形態1に係るエレベータの綱車装置を既存の駆動機の駆動綱車と交換した状態を示す図で、図1(a)は要部断面正面図、図1(b)は図1(a)の円Aで囲むシール部の構造を示す要部断面図。 図1に示された駆動機の側面図。 図2に示された綱車装置の内部構造を示す一部破断側面図。 この発明の実施の形態2に係るエレベータの綱車装置を既存の駆動機の駆動綱車と交換した状態を示す図であり、図4(a)は要部断面正面図、図4(b)は図4(a)の軸受付近の詳細を示す要部断面図。 図4に示された駆動機の側面図。 図5に示された綱車装置の内部構造を示す一部破断側面図。 この発明の実施の形態3に係るエレベータの綱車装置を既存の駆動機の駆動綱車と交換した場合を示す要部断面正面図。 図7に示された綱車装置の内部構造を示す一部破断側面図。
符号の説明
1、1A 駆動綱車、 10 綱車装置、 11、11A 内筒部、 11a 内周面、 11b 外周面、 12 外筒部、 13 綱溝、 14 制動面、 2 駆動機、 20、20A 基体、 20a、20b 側面部、 21 出力軸、 22 モータ、 23a ブレーキドラム、 23b 電磁石機構、 23c ブレーキアーム、 24 支軸、 25 軸受、 251 軸受蓋、 252 シール、 26 出力ボス、 27 調整シム、 28 台座、 28a ボルト、 3 軸受、 31 シール、 32 軸受蓋、 32 蓋、 33 軸受押え、 34 オイルシール、 4 制動機構、 41(41a、41b) 電磁石機構、 42(42a、42b) 動作片、 制動バネ 43(43a、43b)、 5、5A 支持部材、 51(51a、51b) 係止部材(ストッパ)、 52 ボルト、 53、53A 取付座、 54 点検孔、 55 点検孔蓋、 6(6a、6b) 制動片、 7 シール手段、 71 ラビリンスシール、 72 密閉シール。

Claims (6)

  1. 回転駆動する駆動機と、
    基体に対して回転自在に設けられ、外周面に綱溝を有しこの綱溝の内側で内周面または該内周面の内側部に制動面を有し中心部に内筒部を有し、上記駆動機の駆動により回転する駆動綱車と、
    上記綱溝の内側で上記駆動綱車の内筒部に回転自在に支持され上記基体に対して回転が規制された支持部材と、
    この支持部材に対して固定され上記制動面に対して制動片を進退させる制動機構と
    を備え
    上記支持部材は、上記駆動綱車の軸方向一側部を塞ぐ如く形成され、上記基体に対して回転方向に干渉するように設けられた係止部材により回転が規制されていることを特徴とするエレベータの綱車装置。
  2. 上記駆動綱車は椀状ないしは周囲に外筒部を有する円盆状に形成され、上記制動面は、上記外筒部内側の内周面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータの綱車装置。
  3. 上記制動片は、上記駆動綱車の回転中心を対称に複数設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項に記載のエレベータの綱車装置。
  4. 上記支持部材と上記駆動綱車との間にシール手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項の何れかに記載のエレベータの綱車装置。
  5. 上記支持部材は、上記制動機構の点検を行なうための点検孔を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項の何れかに記載のエレベータの綱車装置。
  6. 上記駆動綱車、上記支持部材、及び上記制動機構は、既存のエレベータの駆動綱車を交換し得るように形成されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項の何れかに記載のエレベータの綱車装置。
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