実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1によるDC/DC電力変換装置について説明する。
図1は、この発明の実施の形態1によるDC/DC電力変換装置の回路構成を示す。図1に示すように、DC/DC電力変換装置は、DC/DC電力変換主回路1と制御回路2とから構成され、低圧側入出力両端子(VL,Vcom)間に入力された電圧V1を、2.0×V1〜2.5×V1に昇圧された電圧V2にして高圧側入出力両端子(VH,Vcom)間に出力する昇圧動作を行うDC/DC電力変換機能を有する。なお、低圧側入出力両端子(VL,Vcom)の負極側端子Vcomは、高圧側入出力両端子(VH,Vcom)の負極側端子Vcomと共通である。以下、低圧側入出力両端子(VL,Vcom)、高圧側入出力両端子(VH,Vcom)を、単に電圧端子VL、Vcom、電圧端子VH、Vcomと記載する。
DC/DC電力変換主回路1は、電圧端子VL、Vcom間に接続されて入力電圧V1を平滑化する低圧側平滑コンデンサとしての平滑コンデンサCLと、電圧端子VH、Vcom間に接続されて出力電圧V2を平滑化する高圧側平滑コンデンサとしての平滑コンデンサCHと、第1の直列体(S1d,S1u)を電圧端子VL、Vcom間に接続して成る第1の回路3、第2の直列体(D2d,D2u)を第1の回路3の高圧側に直列接続して成る第2の回路4、およびコンデンサCr12およびインダクタLr12の直列回路で構成されエネルギ移行素子として機能するLC直列体LC12で構成される定倍回路5とを備える。
第1の回路3を構成する第1の直列体(S1d,S1u)は、半導体スイッチ素子としてのMOSFETから成る低圧側素子S1d、高圧側素子S1uを直列接続して構成され、定倍回路5内で駆動回路として動作する。第2の回路4を構成する第2の直列体(D2d,D2u)は、ダイオード素子から成る低圧側素子D2d、高圧側素子D2uを直列接続して構成され、定倍回路5内で整流回路として動作する。そして、LC直列体LC12は、第1の直列体(S1d,S1u)の中間点となる低圧側素子S1d、高圧側素子S1uの接続点と、第2の直列体(D2d,D2u)の中間点となる低圧側素子D2d、高圧側素子D2uの接続点との間に接続される。以下、MOSFETから成る低圧側素子S1d、高圧側素子S1uを単にS1d、S1uと、ダイオード素子から成る低圧側素子D2d、高圧側素子D2uを単にD2d、D2uと称す。
また、DC/DC電力変換主回路1は、MOSFETから成る低圧側半導体スイッチ素子Spd、高圧側半導体スイッチ素子Spuを直列接続した直列体(Spd,Spu)を電圧端子VL、Vcom間に接続して成るPWM回路6と、PWM用コンデンサとしてのコンデンサCsと、リアクトルLcとを備える。コンデンサCsは、PWM回路6の中間点となる低圧側半導体スイッチ素子Spd、高圧側半導体スイッチ素子Spuの接続点と、第2の回路4の高圧側端子Vmとの間に接続され、リアクトルLcは、電圧端子VH、Vcomの正極側端子である電圧端子VHと第2の回路4の高圧側端子Vmとの間に接続される。以下、MOSFETから成る低圧側半導体スイッチ素子Spd、高圧側半導体スイッチ素子Spuを単にSpd、Spuと称す。
なお、各MOSFETは、ソース、ドレイン間に寄生ダイオードが形成されているパワーMOSFETである。
このようなDC/DC電力変換装置における接続の詳細について説明する。
平滑コンデンサCLの両端子は、それぞれ電圧端子VL、Vcomに接続され、電圧端子Vcomは接地されている。平滑コンデンサCHの低圧側端子は電圧端子Vcomに接続され、高圧側端子は電圧端子VHに接続されている。S1dのソース端子は電圧端子Vcomに、ドレイン端子はS1uのソース端子に、S1uのドレイン端子は電圧端子VLに接続されている。Spdのソース端子は電圧端子Vcomに、ドレイン端子はSpuのソース端子に、Spuのドレイン端子は電圧端子VLに接続されている。D2dのアノード端子は電圧端子VLに、カソード端子はD2uのアノード端子に、D2uのカソード端子はリアクトルLcの一方およびコンデンサCsの高圧側に接続されている。
LC直列体LC12の一端は、S1dとS1uとの接続点に接続され、他端はD2dとD2uとの接続点に接続されている。コンデンサCsの一端は、SpdとSpuの接続点に接続され、他端はD2uのカソード端子およびリアクトルLcの一方に接続されている。リアクトルLcの他方は平滑コンデンサCHの高圧側および電圧端子VHに接続されている。
S1d、S1u、Spd、Spuのゲート端子と、電圧端子VH、Vcomは、制御回路2に接続されている。S1d、S1u、Spd、Spuのゲート端子には、各MOSFETのソース端子の電圧を基準としたゲート信号GS1d、GS1u、GSpd、GSpuが制御回路2から入力され、制御回路2には、電圧端子VH、Vcomの各電圧が入力される。
次に、電圧端子VL、Vcom間に入力された電圧V1を、2×V1〜2.5×V1となる電圧V2に昇圧して電圧端子VH、Vcom間に出力する動作について説明する。電圧端子VH、Vcom間には電気負荷が接続され、エネルギを電圧端子VL、Vcom→電圧端子VH、Vcomの経路で移行して消費する。また、平滑コンデンサCL、CH、コンデンサCsの容量値は、LC直列体LC12のコンデンサCr12の容量値と比較して十分大きな値に設定される。
図2に、定倍回路5内の各MOSFETのゲート信号GS1d、GS1uと、PWM回路6内の各MOSFETのゲート信号GSpd、GSpuと、LC直列体LC12を流れる電流ILrと、第2の回路4の高圧側端子Vmの電圧(Vmと表示)と、リアクトルLcの電流ILcとの各波形を示す。なお、MOSFET(S1d、S1u、Spd、Spu)はゲート信号がハイ電圧でオンする。図2に示すように、定倍回路5用のゲート信号GS1d、GS1uは、LC直列体LC12のコンデンサCr12の容量値とインダクタLr12のインダクタンス値とから決まる共振周期Tと同じかやや大きな周期で、デューティ比約50%で1周期に1パルスのオンオフ信号である。PWM回路6用のゲート信号GSpd、GSpuは、定倍回路5用のゲート信号GS1d、GS1uと同期する同じ周期で、昇圧率に応じて決定される1周期に1パルスのオンオフ信号である。
コンデンサCsには約2×V1の電圧が蓄積され、コンデンサCr12には、以下に述べる動作の繰り返しによって電圧V1が平均的に蓄積されている。なお、コンデンサCsへの初期充電動作については後述する。
期間t1において、ゲート信号GS1dはハイ電圧、ゲート信号GS1uはロウ電圧、ゲート信号GSpuはハイ電圧、ゲート信号GSpdはロウ電圧となっている。S1dがオンすることにより、エネルギは、平滑コンデンサCL→D2d→インダクタLr12→コンデンサCr12→S1dの経路でコンデンサCr12に移行する。一方、Spuがオンすることにより、平滑コンデンサCLにコンデンサCsが直列に接続された状態となって高圧側端子Vmの電圧(Vm)が3×V1となる。これによりエネルギは、リアクトルLcを介して、平滑コンデンサCL→Spu→コンデンサCs→リアクトルLc→平滑コンデンサCHの経路で平滑コンデンサCHに移行する。リアクトルLcに流れる電流ILcは、リアクトルLcのインダクタンス値とリアクトルLcの両端電圧で決まる傾きで増加しながら流れる。
期間t2において、ゲート信号GS1dはハイ電圧、ゲート信号GS1uはロウ電圧、ゲート信号GSpuはロウ電圧、ゲート信号GSpdはハイ電圧となっている。S1dはオン状態を維持したままで、コンデンサCr12へのエネルギ移行動作は、期間t1から継続している。この動作は、LC直列体LC12の共振周期Tの1/2であるT/2時間続く。一方、SpuがオフしてSpdがオンすることにより、高圧側端子Vmの電圧(Vm)が2×V1となる。これによりリアクトルLcに蓄積されたエネルギが放出され、エネルギは、リアクトルLc→平滑コンデンサCH→Spd→コンデンサCsの経路で平滑コンデンサCHに移行する。リアクトルLcに流れる電流ILcは、リアクトルLcのインダクタンス値とリアクトルLcの両端電圧で決まる傾きで減少しながら流れる。
期間t3において、ゲート信号GS1dはロウ電圧、ゲート信号GS1uはハイ電圧、ゲート信号GSpuはロウ電圧、ゲート信号GSpdはハイ電圧となっている。Spdはオン状態を維持したままで、リアクトルLcからの平滑コンデンサCHへのエネルギ移行動作は、期間t2から継続している。また、S1dがオフしS1uがオンすることにより、コンデンサCr12に蓄積されたエネルギは、コンデンサCr12→インダクタLr12→D2u→コンデンサCs→Spd→平滑コンデンサCL→S1uの経路で、コンデンサCsに移行する。この動作は、LC直列体LC12の共振周期Tの1/2であるT/2時間続く。
この一連の動作の繰り返しにより、電圧を昇圧調整して出力する。
定倍回路5は、第1の回路3を駆動回路として、第2の回路4を整流回路として動作させ、平滑コンデンサCLからコンデンサCr12へのエネルギ移行、およびコンデンサCr12からコンデンサCsへのエネルギ移行を繰り返し行う。また、PWM回路6は、定倍回路5の高圧側端子となる高圧側端子Vmの電圧(Vm)を、期間t1において3×V1とし、それ以外の期間では2×V1として、リアクトルLcに接続することで、リアクトルLcを介して平滑コンデンサCHへエネルギを移行する。
期間t1の長さを調整することにより、出力電圧V2の高さ、即ち昇圧率を制御することができる。期間t1が長いと出力電圧V2は高く、短いと低くなる。コンデンサCsへのエネルギ蓄積期間として共振周期Tの1/2の期間を設ける必要があり、その間はS1u、Spdがオン状態である。このため、ゲート信号GS1d、GS1u、GSpd、GSpuの周期、即ち各MOSFETの駆動周期と共振周期Tをほぼ同じとすると、Spuのオン期間である期間t1の長さはT/2以下である。即ち、調整可能な出力電圧の最大値は2.5×V1となる。
制御回路2は、所望の昇圧率に応じて予め期間t1の長さを決定して、1周期に1パルスのゲート信号GSpd、GSpuを生成する。また、制御回路2では、電圧端子VH、Vcomの各電圧が入力され、電圧端子VH、Vcom間の電圧に応じて、ゲート信号GSpd、GSpuを生成する際にそのパルス幅である期間t1の長さを調整する。即ち、電圧端子VH、Vcom間の電圧である出力電圧V2の変動を抑制するように期間t1の長さを調整することにより、所望の出力電圧V2を確実に得ることができる。
次に、コンデンサCsへの初期充電動作について説明する。コンデンサCsには、電圧2×V1が蓄積されている必要がある。初期充電動作において、PWM回路6ではSpdをオン状態、Spuをオフ状態とし、定倍回路5ではS1dとS1uとを周期Tで交互にオンオフ動作させる。この動作により、コンデンサCsに電圧2×V1を充電することができる。
この実施の形態によるDC/DC電力変換装置に用いるリアクトルLcの仕様(特性)について、以下に説明する。例えば、周波数10kHz、V1=250V、出力電力10kW、リアクトルLcに流れる電流ILcのリプル電流p−p値ΔIと平均電流値Iaveとの比(ΔI/Iave)を0.8とした場合の、出力電圧V2とリアクトルLcの特性との関係を、比較例と共に図示する。特に、リアクトルLcの平均電流値Iaveを図3に、リアクトルLcのインダクタンス値Lを図4に、インダクタンス値Lと平均電流値Iaveの2乗との積で、リアクトルLcのサイズの目安となる、L×Iave2を図5に示す。
なお、比較例として、背景技術として上述した従来のDC/DC電力変換装置、即ち、入出力端子間に備えられた平滑コンデンサと、リアクトルと、半導体スイッチと、ダイオードとから構成され、半導体スイッチのオンオフ動作によりリアクトルへのエネルギの蓄積と放出をコントロールするDC/DC電力変換装置のリアクトルを用いる。
図に示すように、上記比較例と比べると、この実施の形態によるリアクトルLcの平均電流値Iaveは小さく、インダクタンス値Lは、出力電圧レベルが低い側で各段と小さくなる。また、リアクトルLcのサイズの目安となるL×Iave2も、大幅に小さくなる。このように、この実施の形態によると、従来は大型部品であったリアクトルのサイズを各段と小さくでき、DC/DC電力変換装置の小型化、軽量化が促進する。
また、上述した従来のDC/DC電力変換装置では、リアクトルへのエネルギの蓄積と放出を制御するスイッチ素子の印加電圧は、高電圧側の出力電圧であった。この実施の形態では、リアクトルLcに接続する電圧レベルとその期間を制御するPWM回路6内のSpd、Spuに印加される電圧は、低電圧側の電圧端子VL、Vcom間電圧、即ち入力電圧V1であるため、上記従来のスイッチ素子の印加電圧より大幅に低減できる。このため、PWM回路6内のSpd、Spuには、耐圧の低い素子を用いることができ、オン抵抗が小さく損失を低減できる。
また、従来のDC/DC電力変換装置では、上記スイッチ素子に流れる電流は低電圧側の入力電圧に依存した電流であるが、この実施の形態によるPWM回路6内のSpd、Spuに流れる電流は、高電圧側の出力電圧V2に依存した電流であるため大幅に小さい電流となる。このため、PWM回路6内のSpd、Spuの損失は、さらに低減できる。
このように、PWM回路6内のMOSFET(Spd、Spu)は、定倍回路5内のMOSFET(S1d、S1u)と同様に、定格の小さな素子を用いることができ、損失も小さい。このため、各MOSFETを各段と高周波で駆動することができる。その結果リアクトルLcのインダクタンス値Lを小さくでき、さらにリアクトルLcを小型、軽量にできる。
なお、図3〜図5を用いて示したリアクトルLcの特性では、従来の比較例を共に示すため、駆動周波数を10kHzとしたが、この実施の形態では、それより各段と高い周波数での駆動が可能である。
また、この実施の形態では、定倍回路5において、コンデンサCr12とインダクタLr12のLC直列体LC12を用い、平滑コンデンサCLからコンデンサCr12へのエネルギ移行、およびコンデンサCr12からコンデンサCsへのエネルギ移行に、LC共振を利用している。この共振周期Tは、コンデンサCr12の容量値とインダクタLr12のインダクタンス値とから決まり、共振電流は、共振周期Tの0(T)、T/2の位相でゼロ電流となる。この実施の形態では、各MOSFETの駆動周期を、共振周期Tと同じかやや大きくした。各MOSFETの駆動周期が共振周期Tより大きい場合、共振電流はT/2期間流れて電流値がゼロになった後も、MOSFET(S1d、S1u)のオンオフ状態が変化するまでは、第2の回路4内の各ダイオード素子(D2d、D2u)により逆流が防止されて電流は流れない。
このため、MOSFET(S1d、S1u)のスイッチング時に、MOSFET(S1d、S1u)を流れる電流値はゼロで、スイッチングによる損失が発生せず、損失の小さな高効率なエネルギ移行が可能となる。また、共振電流を利用して効率良くエネルギ移行するため、コンデンサCr12の容量値およびインダクタLr12のインダクタンス値は小さくても良く、コンデンサCr12およびインダクタLr12は、定格の小さな小型素子を使用できる。
なお、この実施の形態では、コンデンサCr12とインダクタLr12のLC直列体LC12を用いたが、第1の直列体(S1d,S1u)の中間点と第2の直列体(D2d,D2u)の中間点との間に接続されたコンデンサCr12の充放電経路内に、インダクタLr12を接続すれば良く、同様にLC共振を利用でき、同様の効果が得られる。
また、インダクタLr12を省略した構成としても良く、その場合は、定倍回路5において、共振電流を利用した高効率なエネルギ移行とはならないが、上述したように、PWM回路6内のMOSFET(Spd、Spu)に定格の小さな素子を用いることができ、高周波駆動が可能であると共に、リアクトルLcを各段と小型、軽量にできる。このため、小型、軽量化が大きく促進した高効率なDC/DC電力変換装置が得られる。
実施の形態2.
次に、上記実施の形態1と同様の回路構成で、異なる制御を行うDC/DC電力変換装置について説明する。
この実施の形態では、電圧端子VL、Vcom間に入力された電圧V1を、1.5×V1〜2×V1となる電圧V2に昇圧して電圧端子VH、Vcom間に出力する。上記実施の形態1と同様に、電圧端子VH、Vcom間には電気負荷が接続され、エネルギを電圧端子VL、Vcom→電圧端子VH、Vcomの経路で移行して消費する。
図6に、定倍回路5内の各MOSFETのゲート信号GS1d、GS1uと、PWM回路6内の各MOSFETのゲート信号GSpd、GSpuと、LC直列体LC12を流れる電流ILrと、第2の回路4の高圧側端子Vmの電圧(Vmと表示)と、リアクトルLcの電流ILcとの各波形を示す。なお、MOSFET(S1d、S1u、Spd、Spu)はゲート信号がハイ電圧でオンする。図6に示すように、定倍回路5用のゲート信号GS1d、GS1uは、LC直列体LC12のコンデンサCr12の容量値とインダクタLr12のインダクタンス値とから決まる共振周期Tと同じかやや大きな周期で、デューティ比約50%で1周期に1パルスのオンオフ信号である。PWM回路6用のゲート信号GSpd、GSpuは、定倍回路5用のゲート信号GS1d、GS1uと同期する同じ周期で、昇圧率に応じて決定される1周期に1パルスのオンオフ信号である。
コンデンサCsには約V1の電圧が蓄積され、コンデンサCr12には、以下に述べる動作の繰り返しによって電圧V1が平均的に蓄積されている。なお、コンデンサCsへの初期充電動作については後述する。
期間tt1において、ゲート信号GS1dはロウ電圧、ゲート信号GS1uはハイ電圧、ゲート信号GSpuはハイ電圧、ゲート信号GSpdはロウ電圧となっている。S1uがオンすることにより、コンデンサCr12に蓄積されたエネルギは、コンデンサCr12→インダクタLr12→D2u→コンデンサCs→Spu→S1uの経路でコンデンサCsに移行する。この動作は、LC直列体LC12の共振周期Tの1/2であるT/2時間続く。一方、Spuがオンすることにより、平滑コンデンサCLにコンデンサCsが直列に接続された状態となって、高圧側端子Vmの電圧(Vm)が2×V1となる。これによりエネルギは、リアクトルLcを介して、平滑コンデンサCL→Spu→コンデンサCs→リアクトルLc→平滑コンデンサCHの経路で平滑コンデンサCHに移行する。リアクトルLcに流れる電流ILcは、リアクトルLcのインダクタンス値とリアクトルLcの両端電圧で決まる傾きで増加しながら流れる。
期間tt2において、ゲート信号GS1dはハイ電圧、ゲート信号GS1uはロウ電圧、ゲート信号GSpuはハイ電圧、ゲート信号GSpdはロウ電圧となっている。Spuはオン状態を維持したままで、リアクトルLcを介した平滑コンデンサCHへのエネルギ移行動作は、期間tt1から継続している。一方、S1uがオフしS1dがオンすることにより、エネルギは、平滑コンデンサCL→D2d→インダクタLr12→コンデンサCr12→S1dの経路でコンデンサCr12に移行する。
期間tt3において、ゲート信号GS1dはハイ電圧、ゲート信号GS1uはロウ電圧、ゲート信号GSpuはロウ電圧、ゲート信号GSpdはハイ電圧となっている。S1dはオン状態を維持したままで、コンデンサCr12へのエネルギ移行動作は、期間tt2から継続している。この動作は、LC直列体LC12の共振周期Tの1/2であるT/2時間続く。一方、SpuがオフしてSpdがオンすることにより、高圧側端子Vmの電圧(Vm)が1×V1となる。これによりリアクトルLcに蓄積されたエネルギが放出され、エネルギは、リアクトルLc→平滑コンデンサCH→Spd→コンデンサCsの経路で平滑コンデンサCHに移行する。リアクトルLcに流れる電流ILcは、リアクトルLcのインダクタンス値とリアクトルLcの両端電圧で決まる傾きで減少しながら流れる。
この一連の動作の繰り返しにより、電圧を昇圧調整して出力する。
定倍回路5は、第1の回路3を駆動回路として、第2の回路4を整流回路として動作させ、平滑コンデンサCLからコンデンサCr12へのエネルギ移行、およびコンデンサCr12からコンデンサCsへのエネルギ移行を繰り返し行う。また、PWM回路6は、定倍回路5の高圧側端子となる高圧側端子Vmの電圧(Vm)を、期間(tt1+tt2)において2×V1とし、それ以外の期間では1×V1として、リアクトルLcに接続することで、リアクトルLcを介して平滑コンデンサCHへエネルギを移行する。
期間(tt1+tt2)の長さを調整することにより、出力電圧V2の高さ、即ち昇圧率を制御することができる。期間(tt1+tt2)が長いと出力電圧V2は高く、短いと低くなる。コンデンサCsへのエネルギ蓄積期間として共振周期Tの1/2の期間を設ける必要があり、その間はS1u、Spuがオン状態である。このため、ゲート信号GS1d、GS1u、GSpd、GSpuの周期、即ち各MOSFETの駆動周期と共振周期Tをほぼ同じとすると、Spuのオン期間である期間(tt1+tt2)の長さはT/2〜Tの範囲で調整される。即ち、調整可能な出力電圧の最小値は1.5×V1となる。
制御回路2は、所望の昇圧率に応じて予め期間(tt1+tt2)の長さを決定して、1周期に1パルスのゲート信号GSpd、GSpuを生成する。また、制御回路2では、電圧端子VH、Vcomの各電圧が入力され、電圧端子VH、Vcom間の電圧に応じて、ゲート信号GSpd、GSpuを生成する際にそのパルス幅である期間(tt1+tt2)の長さを調整する。即ち、電圧端子VH、Vcom間の電圧である出力電圧V2の変動を抑制するように期間(tt1+tt2)の長さを調整することにより、所望の出力電圧V2を確実に得ることができる。
次に、コンデンサCsへの初期充電動作について説明する。コンデンサCsには、電圧V1が蓄積されている必要がある。初期充電動作において、PWM回路6ではSpdをオフ状態、Spuをオン状態とし、定倍回路5ではS1dとS1uとを周期Tで交互にオンオフ動作させる。この動作により、コンデンサCsに電圧V1を充電することができる。
この実施の形態によるDC/DC電力変換装置に用いるリアクトルLcの仕様(特性)について、以下に説明する。例えば、周波数10kHz、V1=250V、出力電力10kW、リアクトルLcに流れる電流ILcのリプル電流p−p値ΔIと平均電流値Iaveとの比(ΔI/Iave)を0.8とした場合の、出力電圧V2とリアクトルLcの特性との関係を、比較例と共に図7に示す。なお、比較例は上記実施の形態1で示した従来の比較例と同じものである。図に示すように、リアクトルLcのインダクタンス値Lと平均電流値Iaveの2乗との積で、リアクトルLcのサイズの目安となる、L×Iave2は、上記比較例と比べると大幅に小さくなる。例えば、昇圧率1.5の出力電圧V2=375Vで調整する場合は約1/2となり、昇圧率1.9の出力電圧V2=475Vで調整する場合は約1/10となる。このように、従来は大型部品であったリアクトルのサイズを各段と小さくでき、DC/DC電力変換装置の小型化、軽量化が促進する。
また、この実施の形態においても、上記実施の形態1と同様に、リアクトルLcに接続する電圧レベルとその期間を制御するPWM回路6内のSpd、Spuに印加される電圧、およびSpd、Spuに流れる電流を、従来のものに比べて各段と低減でき、損失を低減できる。また、PWM回路6内のMOSFET(Spd、Spu)は、定倍回路5内のMOSFET(S1d、S1u)と同様に、定格の小さな素子を用いることができ、各MOSFETを各段と高周波で駆動することができる。その結果リアクトルLcのインダクタンス値Lを小さくでき、さらにリアクトルLcを小型、軽量にできる。
また、定倍回路5において、エネルギ移行にLC共振を利用し、各MOSFETの駆動周期を、共振周期Tと同じかやや大きくした。このため、MOSFET(S1d、S1u)のスイッチング時に、MOSFET(S1d、S1u)を流れる電流値はゼロで、損失の小さな高効率なエネルギ移行が可能となる。また、共振電流を利用して効率良くエネルギ移行するため、コンデンサCr12およびインダクタLr12は、定格の小さな小型素子を使用できる。
なお、この実施の形態においても、上記実施の形態1と同様に、インダクタLr12はコンデンサCr12の充放電経路内に接続すれば良く、同様の効果が得られる。
また、インダクタLr12を省略した構成としても良く、その場合は、定倍回路5において、共振電流を利用した高効率なエネルギ移行とはならないが、PWM回路6内のMOSFET(Spd、Spu)に定格の小さな素子を用いることができ、高周波駆動が可能であると共にリアクトルLcを各段と小型、軽量にできる効果は同様に得られる。
また、電圧端子VL、Vcom間に入力された電圧V1を、上記実施の形態1では2×V1〜2.5×V1に昇圧し、上記実施の形態2では1.5×V1〜2×V1に昇圧したが、昇圧率に応じて制御回路2が上記実施の形態1あるいは上記実施の形態2で示した制御を選択して用いることで、1.5×V1〜2.5×V1に昇圧して電圧端子VH、Vcom間に出力する事ができる。
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3によるDC/DC電力変換装置について説明する。
図8は、この発明の実施の形態3によるDC/DC電力変換装置の回路構成を示す。図8に示すように、DC/DC電力変換装置は、DC/DC電力変換主回路1aと制御回路2aとから構成され、高圧側入出力両端子(VH,Vcom)間に入力された電圧V2を、0.4×V2〜0.5×V2に降圧された電圧V1にして低圧側入出力両端子(VL,Vcom)間に出力する降圧動作を行うDC/DC電力変換機能を有する。なお、低圧側入出力両端子(電圧端子VL、Vcom)の負極側端子Vcomは、高圧側入出力両端子(電圧端子VH、Vcom)の負極側端子Vcomと共通である。
DC/DC電力変換主回路1aは、電圧端子VL、Vcom間に接続されて出力電圧V1を平滑化する低圧側平滑コンデンサとしての平滑コンデンサCLと、電圧端子VH、Vcom間に接続されて入力電圧V2を平滑化する高圧側平滑コンデンサとしての平滑コンデンサCHと、第1の直列体(D1d,D1u)を電圧端子VL、Vcom間に接続して成る第1の回路3a、第2の直列体(S2d,S2u)を第1の回路3aの高圧側に直列接続して成る第2の回路4a、およびコンデンサCr12およびインダクタLr12の直列回路で構成されエネルギ移行素子として機能するLC直列体LC12で構成される定倍回路5aとを備える。
第2の回路4aを構成する第2の直列体(S2d,S2u)は、半導体スイッチ素子としてのMOSFETから成る低圧側素子S2d、高圧側素子S2uを直列接続して構成され、定倍回路5a内で駆動回路として動作する。第1の回路3aを構成する第1の直列体(D1d,D1u)は、ダイオード素子から成る低圧側素子D1d、高圧側素子D1uを直列接続して構成され、定倍回路5a内で整流回路として動作する。そして、LC直列体LC12は、第2の直列体(S2d,S2u)の中間点となる低圧側素子S2d、高圧側素子S2uの接続点と、第1の直列体(D1d,D1u)の中間点となる低圧側素子D1d、高圧側素子D1uの接続点との間に接続される。以下、MOSFETから成る低圧側素子S2d、高圧側素子S2uを単にS2d、S2uと、ダイオード素子から成る低圧側素子D1d、高圧側素子D1uを単にD2d、D2uと称す。
また、DC/DC電力変換主回路1aは、上記実施の形態1と同様に、MOSFETから成るSpd、Spuを直列接続した直列体(Spd,Spu)を電圧端子VL、Vcom間に接続して成るPWM回路6と、PWM回路6の中間点と第2の回路4aの高圧側端子Vmとの間に接続されたPWM用コンデンサとしてのコンデンサCsと、電圧端子VHと高圧側端子Vmとの間に接続されるリアクトルLcとを備える。
なお、各MOSFETは、ソース、ドレイン間に寄生ダイオードが形成されているパワーMOSFETである。
このようなDC/DC電力変換装置における接続の詳細について説明する。なお、上記実施の形態1と同様の部分は省略する。
S2dのソース端子は電圧端子VLに、ドレイン端子はS2uのソース端子に、S2uのドレイン端子はリアクトルLcの一方およびコンデンサCsの高圧側に接続されている。D1dのアノード端子は電圧端子Vcomに、カソード端子はD1uのアノード端子に、D1uのカソード端子は電圧端子VLに接続されている。LC直列体LC12の一端は、S2dとS2uとの接続点に接続され、他端はD1dとD1uとの接続点に接続されている。
S2d、S2u、Spd、Spuのゲート端子と、電圧端子VL、Vcomは、制御回路2aに接続されている。S2d、S2u、Spd、Spuのゲート端子には、各MOSFETのソース端子の電圧を基準としたゲート信号GS2d、GS2u、GSpd、GSpuが制御回路2aから入力され、制御回路2aには、電圧端子VL、Vcomの各電圧が入力される。
次に、電圧端子VH、Vcom間に入力された電圧V2を、0.4×V2〜0.5×V2となる電圧V1に降圧して電圧端子VL、Vcom間に出力する動作について説明する。電圧端子VL、Vcom間には電気負荷が接続され、エネルギを電圧端子VH、Vcom→電圧端子VL、Vcomの経路で移行して消費する。また、上記実施の形態1と同様に、平滑コンデンサCL、CH、コンデンサCsの容量値は、LC直列体LC12のコンデンサCr12の容量値と比較して十分大きな値に設定される。
図9に、定倍回路5a内の各MOSFETのゲート信号GS2d、GS2uと、PWM回路6内の各MOSFETのゲート信号GSpd、GSpuと、LC直列体LC12を流れる電流ILrと、第2の回路4aの高圧側端子Vmの電圧(Vm)と、リアクトルLcの電流ILcとの各波形を示す。なお、MOSFET(S2d、S2u、Spd、Spu)はゲート信号がハイ電圧でオンする。図9に示すように、定倍回路5a用のゲート信号GS2d、GS2uは、LC直列体LC12のコンデンサCr12の容量値とインダクタLr12のインダクタンス値とから決まる共振周期Tと同じかやや大きな周期で、デューティ比約50%で1周期に1パルスのオンオフ信号である。PWM回路6用のゲート信号GSpd、GSpuは、定倍回路5a用のゲート信号GS2d、GS2uと同期する同じ周期で、降圧率に応じて決定される1周期に1パルスのオンオフ信号である。
コンデンサCsには約2×V1の電圧が蓄積され、コンデンサCr12には、以下に述べる動作の繰り返しによって電圧V1が平均的に蓄積されている。なお、コンデンサCsへの初期充電動作については後述する。
期間s1において、ゲート信号GS2dはハイ電圧、ゲート信号GS2uはロウ電圧、ゲート信号GSpuはハイ電圧、ゲート信号GSpdはロウ電圧となっている。S2dがオンすることにより、コンデンサCr12に蓄積されたエネルギは、コンデンサCr12→インダクタLr12→S2d→平滑コンデンサCL→D1dの経路で平滑コンデンサCLに移行する。一方、SpdがオフしてSpuがオンすることにより、平滑コンデンサCLにコンデンサCsが直列に接続された状態となって高圧側端子Vmの電圧(Vm)が3×V1となる。これによりリアクトルLcに蓄積されたエネルギが放出され、エネルギは、リアクトルLc→コンデンサCs→Spu→平滑コンデンサCL→平滑コンデンサCHの経路で平滑コンデンサCLに移行する。リアクトルLcに流れる電流ILcは、リアクトルLcのインダクタンス値とリアクトルLcの両端電圧で決まる傾きで絶対値を減少しながら流れる(図中、電流は負極性の電流として表している)。
期間s2において、ゲート信号GS2dはハイ電圧、ゲート信号GS2uはロウ電圧、ゲート信号GSpuはロウ電圧、ゲート信号GSpdはハイ電圧となっている。S2dはオン状態を維持したままで、平滑コンデンサCLへのエネルギ移行動作は、期間s1から継続している。この動作は、LC直列体LC12の共振周期Tの1/2であるT/2時間続く。一方、SpuがオフしSpdがオンすることにより、高圧側端子Vmの電圧(Vm)が2×V1となる。これによりエネルギは、リアクトルLcを介して、平滑コンデンサCH→リアクトルLc→コンデンサCs→Spdの経路でコンデンサCsに移行すると同時に、リアクトルLcにエネルギが蓄積される。リアクトルLcに流れる電流ILcは、リアクトルLcのインダクタンス値とリアクトルLcの両端電圧で決まる傾きで絶対値を増加しながら流れる。
期間s3において、ゲート信号GS2dはロウ電圧、ゲート信号GS2uはハイ電圧、ゲート信号GSpuはロウ電圧、ゲート信号GSpdはハイ電圧となっている。Spdはオン状態を維持したままで、リアクトルLcを介したコンデンサCsへのエネルギ移行動作は、期間s2から継続している。また、S2dがオフしS2uがオンすることにより、コンデンサCsに蓄積されたエネルギが、コンデンサCs→S2u→インダクタLr12→コンデンサCr12→D1u→平滑コンデンサCL→Spdの経路で、コンデンサCr12に移行する。この動作は、LC直列体LC12の共振周期Tの1/2であるT/2時間続く。
この一連の動作の繰り返しにより、電圧を降圧調整して出力する。
定倍回路5aは、第2の回路4aを駆動回路として、第1の回路3aを整流回路として動作させ、コンデンサCsからコンデンサCr12へのエネルギ移行、およびコンデンサCr12から平滑コンデンサCLへのエネルギ移行を繰り返し行う。また、PWM回路6は、定倍回路5aの高圧側端子となる高圧側端子Vmの電圧(Vm)を、期間(s2+s3)において2×V1とし、それ以外の期間では3×V1として、リアクトルLcに接続することで、平滑コンデンサCHからリアクトルLcを介してコンデンサCsおよび平滑コンデンサCLへエネルギを移行する。
期間(s2+s3)の長さを調整することにより、出力電圧V1の高さ、即ち降圧率を制御することができる。期間(s2+s3)が長いと出力電圧V1は高く、短いと低くなる。コンデンサCr12へのエネルギ蓄積期間として共振周期Tの1/2の期間を設ける必要があり、その間はS2u、Spdがオン状態である。このため、ゲート信号GS2d、GS2u、GSpd、GSpuの周期、即ち各MOSFETの駆動周期と共振周期Tをほぼ同じとすると、Spdのオン期間である期間(s2+s3)の長さはT/2〜Tの範囲で調整される。即ち、調整可能な出力電圧V1は、(0.4×V2)≦V1≦(0.5×V2)となる。
制御回路2aは、所望の降圧率に応じて予め期間(s2+s3)の長さを決定して、1周期に1パルスのゲート信号GSpd、GSpuを生成する。また、制御回路2aでは、電圧端子VL、Vcomの各電圧が入力され、電圧端子VL、Vcom間の電圧に応じて、ゲート信号GSpd、GSpuを生成する際にそのパルス幅である期間(s2+s3)の長さを調整する。即ち、電圧端子VL、Vcom間の電圧である出力電圧V1の変動を抑制するように期間(s2+s3)の長さを調整することにより、所望の出力電圧V1を確実に得ることができる。
次に、コンデンサCsへの初期充電動作について説明する。コンデンサCsには、電圧2×V1が蓄積されている必要がある。初期充電動作において、定倍回路5a内のS2d、S2uおよびPWM回路6内のSpd、Spuを周期Tで、図9で示した降圧動作時と同様のデューティ比にてオンオフする。これにより、コンデンサCsの電圧と電圧V1との関係を2:1とすることができる。このとき、電圧V1は、(0.4×V2)≦V1≦(0.5×V2)となっている。
この実施の形態においても、上記実施の形態1と同様に、リアクトルLcのインダクタンス値Lと平均電流値Iaveの2乗との積でリアクトルLcのサイズの目安となる、L×Iave2は、従来のものに比して大幅に小さくなる。このため、従来は大型部品であったリアクトルのサイズを各段と小さくでき、DC/DC電力変換装置の小型化、軽量化が促進する。
また、リアクトルLcに接続する電圧レベルとその期間を制御するPWM回路6内のSpd、Spuに印加される電圧、およびSpd、Spuに流れる電流を、従来のものに比べて各段と低減でき、損失を低減できる。また、PWM回路6内のMOSFET(Spd、Spu)は、定倍回路5a内のMOSFET(S1d、S1u)と同様に、定格の小さな素子を用いることができ、各MOSFETを各段と高周波で駆動することができる。その結果リアクトルLcのインダクタンス値Lを小さくでき、さらにリアクトルLcを小型、軽量にできる。
また、定倍回路5aにおいて、エネルギ移行にLC共振を利用し、各MOSFETの駆動周期を、共振周期Tと同じかやや大きくした。各MOSFETの駆動周期が共振周期Tより大きい場合、共振電流はT/2期間流れて電流値がゼロになった後も、MOSFET(S2d、S2u)のオンオフ状態が変化するまでは、第1の回路3a内の各ダイオード素子(D1d、D1u)により逆流が防止されて電流は流れない。
このため、MOSFET(S2d、S2u)のスイッチング時に、MOSFET(S2d、S2u)を流れる電流値はゼロで、損失の小さな高効率なエネルギ移行が可能となる。また、共振電流を利用して効率良くエネルギ移行するため、コンデンサCr12およびインダクタLr12は、定格の小さな小型素子を使用できる。
なお、この実施の形態においても、上記実施の形態1と同様に、インダクタLr12はコンデンサCr12の充放電経路内に接続すれば良く、同様の効果が得られる。
また、インダクタLr12を省略した構成としても良く、その場合は、定倍回路5において、共振電流を利用した高効率なエネルギ移行とはならないが、PWM回路6内のMOSFET(Spd、Spu)に定格の小さな素子を用いることができ、高周波駆動が可能であると共にリアクトルLcを各段と小型、軽量にできる効果は同様に得られる。
実施の形態4.
次に、上記実施の形態3と同様の回路構成で、異なる制御を行うDC/DC電力変換装置について説明する。
この実施の形態では、電圧端子VH、Vcom間に入力された電圧V2を、0.5×V2〜0.67×V2となる電圧V1に降圧して電圧端子VL、Vcom間に出力する。上記実施の形態3と同様に、電圧端子VL、Vcom間には電気負荷が接続され、エネルギを電圧端子VH、Vcom→電圧端子VL、Vcomの経路で移行して消費する。
図10に、定倍回路5a内の各MOSFETのゲート信号GS2d、GS2uと、PWM回路6内の各MOSFETのゲート信号GSpd、GSpuと、LC直列体LC12を流れる電流ILrと、第2の回路4aの高圧側端子Vmの電圧(Vm)と、リアクトルLcの電流ILcとの各波形を示す。なお、MOSFET(S2d、S2u、Spd、Spu)はゲート信号がハイ電圧でオンする。図10に示すように、定倍回路5a用のゲート信号GS2d、GS2uは、LC直列体LC12のコンデンサCr12の容量値とインダクタLr12のインダクタンス値とから決まる共振周期Tと同じかやや大きな周期で、デューティ比約50%で1周期に1パルスのオンオフ信号である。PWM回路6用のゲート信号GSpd、GSpuは、定倍回路5a用のゲート信号GS2d、GS2uと同期する同じ周期で、降圧率に応じて決定される1周期に1パルスのオンオフ信号である。
コンデンサCsには約V1の電圧が蓄積され、コンデンサCr12には、以下に述べる動作の繰り返しによって電圧V1が平均的に蓄積されている。なお、コンデンサCsへの初期充電動作については後述する。
期間ss1において、ゲート信号GS2dはロウ電圧、ゲート信号GS2uはハイ電圧、ゲート信号GSpuはハイ電圧、ゲート信号GSpdはロウ電圧となっている。S2u、Spuがオンすることにより、コンデンサCsに蓄積されたエネルギが、コンデンサCs→S2u→インダクタLr12→コンデンサCr12→D1u→Spuの経路で、コンデンサCr12に移行する。この動作は、LC直列体LC12の共振周期Tの1/2であるT/2時間続く。一方、SpdがオフしてSpuがオンすることにより、平滑コンデンサCLにコンデンサCsが直列に接続された状態となって高圧側端子Vmの電圧(Vm)が2×V1となる。これによりリアクトルLcに蓄積されたエネルギが放出され、エネルギは、リアクトルLc→コンデンサCs→Spu→平滑コンデンサCL→平滑コンデンサCHの経路で、平滑コンデンサCLおよびコンデンサCsに移行する。リアクトルLcに流れる電流ILcは、リアクトルLcのインダクタンス値とリアクトルLcの両端電圧で決まる傾きで絶対値を減少しながら流れる(図中、電流は負極性の電流として表している)。
期間ss2において、ゲート信号GS2dはハイ電圧、ゲート信号GS2uはロウ電圧、ゲート信号GSpuはハイ電圧、ゲート信号GSpdはロウ電圧となっている。Spuはオン状態を維持したままで、リアクトルLcのエネルギ放出による平滑コンデンサCLおよびコンデンサCsへのエネルギ移行動作は、期間ss1から継続している。一方、S2uがオフしてS2dがオンすることにより、コンデンサCr12に蓄積されたエネルギは、コンデンサCr12→インダクタLr12→S2d→平滑コンデンサCL→D1dの経路で平滑コンデンサCLに移行する。
期間ss3において、ゲート信号GS2dはハイ電圧、ゲート信号GS2uはロウ電圧、ゲート信号GSpuはロウ電圧、ゲート信号GSpdはハイ電圧となっている。S2dはオン状態を維持したままで、平滑コンデンサCLへのエネルギ移行動作は、期間ss2から継続している。この動作は、LC直列体LC12の共振周期Tの1/2であるT/2時間続く。一方、SpuがオフしてSpdがオンすることにより、高圧側端子Vmの電圧(Vm)が1×V1となる。これによりエネルギは、リアクトルLcを介して、平滑コンデンサCH→リアクトルLc→コンデンサCs→Spdの経路で、コンデンサCsに移行すると同時に、リアクトルLcにエネルギが蓄積される。リアクトルLcに流れる電流ILcは、リアクトルLcのインダクタンス値とリアクトルLcの両端電圧で決まる傾きで絶対値を増加しながら流れる。
この一連の動作の繰り返しにより、電圧を降圧調整して出力する。
定倍回路5aは、第2の回路4aを駆動回路として、第1の回路3aを整流回路として動作させ、コンデンサCsからコンデンサCr12へのエネルギ移行、およびコンデンサCr12から平滑コンデンサCLへのエネルギ移行を繰り返し行う。また、PWM回路6は、定倍回路5aの高圧側端子となる高圧側端子Vmの電圧(Vm)を、期間ss3において1×V1とし、それ以外の期間では2×V1として、リアクトルLcに接続することで、平滑コンデンサCHからリアクトルLcを介してコンデンサCsおよび平滑コンデンサCLへエネルギを移行する。
期間ss3の長さを調整することにより、出力電圧V1の高さ、即ち降圧率を制御することができる。期間ss3が長いと出力電圧V1は高く、短いと低くなる。コンデンサCr12へのエネルギ蓄積期間として共振周期Tの1/2の期間を設ける必要があり、その間はS2u、Spuがオン状態である。このため、ゲート信号GS2d、GS2u、GSpd、GSpuの周期、即ち各MOSFETの駆動周期と共振周期Tをほぼ同じとすると、Spdのオン期間である期間ss3の長さはT/2以下である。即ち、調整可能な出力電圧V1は、(0.5×V2)≦V1≦(0.67×V2)となる。
制御回路2aは、所望の降圧率に応じて予め期間ss3の長さを決定して、1周期に1パルスのゲート信号GSpd、GSpuを生成する。また、制御回路2aでは、電圧端子VL、Vcomの各電圧が入力され、電圧端子VL、Vcom間の電圧に応じて、ゲート信号GSpd、GSpuを生成する際にそのパルス幅である期間ss3の長さを調整する。即ち、電圧端子VL、Vcom間の電圧である出力電圧V1の変動を抑制するように期間ss3の長さを調整することにより、所望の出力電圧V1を確実に得ることができる。
次に、コンデンサCsへの初期充電動作について説明する。コンデンサCsには、電圧V1が蓄積されている必要がある。初期充電動作において、定倍回路5a内のS2d、S2uおよびPWM回路6内のSpd、Spuを周期Tで、図10で示した降圧動作時と同様のデューティ比にてオンオフする。これにより、コンデンサCsの電圧と電圧V1との関係を1:1とすることができる。このとき、電圧V1は、(0.5×V2)≦V1≦(0.67×V2)となっている。
この実施の形態においても、上記実施の形態3と同様に、リアクトルLcのインダクタンス値Lと平均電流値Iaveの2乗との積でリアクトルLcのサイズの目安となる、L×Iave2は、従来のものに比して大幅に小さくなる。このため、従来は大型部品であったリアクトルのサイズを各段と小さくでき、DC/DC電力変換装置の小型化、軽量化が促進する。
また、リアクトルLcに接続する電圧レベルとその期間を制御するPWM回路6内のSpd、Spuに印加される電圧、およびSpd、Spuに流れる電流を、従来のものに比べて各段と低減でき、損失を低減できる。また、PWM回路6内のMOSFET(Spd、Spu)は、定倍回路5a内のMOSFET(S1d、S1u)と同様に、定格の小さな素子を用いることができ、各MOSFETを各段と高周波で駆動することができる。その結果リアクトルLcのインダクタンス値Lを小さくでき、さらにリアクトルLcを小型、軽量にできる。
また、定倍回路5aにおいて、エネルギ移行にLC共振を利用し、各MOSFETの駆動周期を、共振周期Tと同じかやや大きくした。このため、MOSFET(S2d、S2u)のスイッチング時に、MOSFET(S2d、S2u)を流れる電流値はゼロで、損失の小さな高効率なエネルギ移行が可能となる。また、共振電流を利用して効率良くエネルギ移行するため、コンデンサCr12およびインダクタLr12は、定格の小さな小型素子を使用できる。
なお、この実施の形態においても、上記実施の形態3と同様に、インダクタLr12はコンデンサCr12の充放電経路内に接続すれば良く、同様の効果が得られる。
また、インダクタLr12を省略した構成としても良く、その場合は、定倍回路5aにおいて、共振電流を利用した高効率なエネルギ移行とはならないが、PWM回路6内のMOSFET(Spd、Spu)に定格の小さな素子を用いることができ、高周波駆動が可能であると共にリアクトルLcを各段と小型、軽量にできる効果は同様に得られる。
また、電圧端子VH、Vcom間に入力された電圧V2を、上記実施の形態3では0.4×V2〜0.5×V2に降圧し、上記実施の形態4では0.5×V2〜0.67×V2に降圧したが、降圧率に応じて制御回路2aが上記実施の形態3あるいは上記実施の形態4で示した制御を選択して用いることで、0.4×V2〜0.67×V2に降圧して電圧端子VL、Vcom間に出力する事ができる。
実施の形態5.
以下、この発明の実施の形態5によるDC/DC電力変換装置について説明する。
図11は、この発明の実施の形態5によるDC/DC電力変換装置の回路構成を示す。図11に示すように、DC/DC電力変換装置は、DC/DC電力変換主回路1bと制御回路2bとから構成される。そして、低圧側入出力両端子(VL,Vcom)間に入力された電圧V1を、1.5×V1〜2.5×V1に昇圧された電圧V2にして高圧側入出力両端子(VH,Vcom)間に出力する昇圧機能と、高圧側入出力両端子(VH,Vcom)間に入力された電圧V2を、0.4×V2〜0.67×V2に降圧された電圧V1にして低圧側入出力両端子(VL,Vcom)間に出力する降圧機能との双方のDC/DC電力変換機能を有する。なお、低圧側入出力両端子(電圧端子VL、Vcom)の負極側端子Vcomは、高圧側入出力両端子(電圧端子VH、Vcom)の負極側端子Vcomと共通である。
DC/DC電力変換主回路1bは、電圧端子VL、Vcom間に接続されて出力電圧V1を平滑化する低圧側平滑コンデンサとしての平滑コンデンサCLと、電圧端子VH、Vcom間に接続されて入力電圧V2を平滑化する高圧側平滑コンデンサとしての平滑コンデンサCHと、第1の直列体(S1d,S1u)を電圧端子VL、Vcom間に接続して成る第1の回路3b、第2の直列体(S2d,S2u)を第1の回路3bの高圧側に直列接続して成る第2の回路4b、およびコンデンサCr12およびインダクタLr12の直列回路で構成されエネルギ移行素子として機能するLC直列体LC12で構成される定倍回路5bとを備える。
第1の回路3bを構成する第1の直列体(S1d,S1u)、および第2の回路4bを構成する第2の直列体(S2d,S2u)は、半導体スイッチ素子としてのMOSFETから成る低圧側素子S1d、S2d、高圧側素子S1u、S2uを直列接続して構成される。そして、定倍回路5b内で、昇圧動作時には、第1の回路3bが駆動回路として動作し、第2の回路4bが整流回路として動作する。また、降圧動作時には、第2の回路4bが駆動回路として動作し、第1の回路3bが整流回路として動作する。そして、LC直列体LC12は、第1の直列体(S1d,S1u)の中間点となる低圧側素子S1d、高圧側素子S1uの接続点と、第2の直列体(S2d,S2u)の中間点となる低圧側素子S2d、高圧側素子S2uの接続点との間に接続される。
また、DC/DC電力変換主回路1bは、上記実施の形態1〜4と同様に、MOSFETから成るSpd、Spuを直列接続した直列体(Spd,Spu)を電圧端子VL、Vcom間に接続して成るPWM回路6と、PWM回路6の中間点と第2の回路4bの高圧側端子Vmとの間に接続されたPWM用コンデンサとしてのコンデンサCsと、電圧端子VHと高圧側端子Vmとの間に接続されるリアクトルLcとを備える。
なお、各MOSFETは、ソース、ドレイン間に寄生ダイオードが形成されているパワーMOSFETである。
各MOSFET(S1d、S1u、S2d、S2u、Spd、Spu)のゲート端子と、電圧端子VL、VH、Vcomは、制御回路2bに接続されている。S1d、S1u、S2d、S2u、Spd、Spuのゲート端子には、各MOSFETのソース端子の電圧を基準としたゲート信号GS1d、GS1u、GS2d、GS2u、GSpd、GSpuが制御回路2bから入力され、制御回路2bには、電圧端子VL、VH、Vcomの各電圧が入力される。
この実施の形態では、昇圧動作時には、上記実施の形態1、2で示した制御および動作を行い、降圧動作時には、上記実施の形態3、4で示した制御および動作を行う。このように、昇圧動作と降圧動作を切り換えることにより、昇降圧動作を実現している。
なお、昇圧動作時における第2の回路4b、および降圧動作時における第1の回路3bは、整流回路として用いるため、各MOSFETをオフさせてソース、ドレイン間の寄生ダイオードにて整流することで上記実施の形態1、2および上記実施の形態3、4と同様の動作となる。この整流回路としての動作は、寄生ダイオードの導通タイミングに合わせて各MOSFETをオン動作させてもよく、より損失が小さくなる。
以上のように、この実施の形態では、昇圧機能と降圧機能との双方のDC/DC電力変換機能を有し、しかも、上記各実施の形態と同様に、PWM回路6内のMOSFET(Spd、Spu)を、定格の小さな素子を用いて各MOSFETの高周波駆動を可能にし、リアクトルLcのサイズを各段と小さくしてDC/DC電力変換装置の小型化、軽量化を促進すると共に、高効率なエネルギ移行を実現する。
実施の形態6.
以下、この発明の実施の形態6によるDC/DC電力変換装置について説明する。
図12は、この発明の実施の形態6によるDC/DC電力変換装置の回路構成を示す。図12に示すように、DC/DC電力変換装置は、DC/DC電力変換主回路1cと制御回路2cとから構成され、低圧側入出力両端子(VL,Vcom)間に入力された電圧V1を、2.5×V1〜3.5×V1に昇圧された電圧V2にして高圧側入出力両端子(VH,Vcom)間に出力する昇圧動作を行うDC/DC電力変換機能を有する。なお、低圧側入出力両端子(電圧端子VL、Vcom)の負極側端子Vcomは、高圧側入出力両端子(電圧端子VH、Vcom)の負極側端子Vcomと共通である。
DC/DC電力変換主回路1cは、電圧端子VL、Vcom間に接続されて入力電圧V1を平滑化する低圧側平滑コンデンサとしての平滑コンデンサCLと、電圧端子VH、Vcom間に接続されて出力電圧V2を平滑化する高圧側平滑コンデンサとしての平滑コンデンサCHと、第1の回路3c、第2の回路4cおよびエネルギ移行素子として機能するLC直列体LC12、LC13を有する定倍回路5cとを備える。
第1の回路3cは、半導体スイッチ素子としてのMOSFETから成る低圧側素子S1dA、S1dB、高圧側素子S1uA、S1uBを直列接続して構成される2個の第1の直列体(S1dA,S1uA)、(S1dB,S1uB)を電圧端子VL、Vcom間に並列接続して成り、定倍回路5c内で駆動回路として動作する。第2の回路4cは、ダイオード素子から成る低圧側素子D2d、D3d、高圧側素子D2u、D3uを直列接続して構成される2個の第2の直列体(D2d,D2u)、(D3d,D3u)を直列接続して成り、低圧側の第2の直列体(D2d,D2u)には、平滑コンデンサCL2が並列接続される。また、2個の第2の直列体(D2d,D2u)、(D3d,D3u)は、定倍回路5c内で整流回路として動作する。
そして、LC直列体LC12は、コンデンサCr12およびインダクタLr12の直列回路で構成され、第1の直列体(S1dA,S1uA)の中間点と第2の直列体(D2d,D2u)の中間点との間に接続される。LC直列体LC13は、コンデンサCr13およびインダクタLr13の直列回路で構成され、第1の直列体(S1dB,S1uB)の中間点と第2の直列体(D3d,D3u)の中間点との間に接続される。以下、MOSFETから成る低圧側素子S1dA、S1dB、高圧側素子S1uA、S1uBを単にS1dA、S1dB、S1uA、S1uBと、ダイオード素子から成る低圧側素子D2d、D3d、高圧側素子D2u、D3uを単にD2d、D3d、D2u、D3uと称す。
また、DC/DC電力変換主回路1cは、上記各実施の形態と同様に、MOSFETから成るSpd、Spuを直列接続した直列体(Spd,Spu)を電圧端子VL、Vcom間に接続して成るPWM回路6と、PWM回路6の中間点と第2の回路4cの高圧側端子Vmとの間に接続されたPWM用コンデンサとしてのコンデンサCsと、電圧端子VHと高圧側端子Vmとの間に接続されるリアクトルLcとを備える。
なお、各MOSFETは、ソース、ドレイン間に寄生ダイオードが形成されているパワーMOSFETである。
このようなDC/DC電力変換装置における接続の詳細について説明する。
平滑コンデンサCLの両端子は、それぞれ電圧端子VL、Vcomに接続され、電圧端子Vcomは接地されている。平滑コンデンサCHの低圧側端子は電圧端子Vcomに接続され、高圧側端子は電圧端子VHに接続されている。S1dAのソース端子は電圧端子Vcomに、ドレイン端子はS1uAのソース端子に、S1uAのドレイン端子は電圧端子VLに接続されている。S1dBのソース端子は電圧端子Vcomに、ドレイン端子はS1uBのソース端子に、S1uBのドレイン端子は電圧端子VLに接続されている。Spdのソース端子は電圧端子Vcomに、ドレイン端子はSpuのソース端子に、Spuのドレイン端子は電圧端子VLに接続されている。D2dのアノード端子は電圧端子VLに、カソード端子はD2uのアノード端子に、D2uのカソード端子は平滑コンデンサCL2の一方に、CL2の他方は電圧端子VLに接続されている。D3dのアノード端子はD2uのカソードに、カソード端子はD3uのアノード端子に、D3uのカソード端子は、リアクトルLcの一方およびコンデンサCsの高圧側に接続されている。
LC直列体LC12の一端は、S1dAとS1uAとの接続点に接続され、他端はD2dとD2uとの接続点に接続されている。LC直列体LC13の一端は、S1dBとS1uBとの接続点に接続され、他端はD3dとD3uとの接続点に接続されている。コンデンサCsの一端は、SpdとSpuとの接続点に接続され、他端はD3uのカソード端子およびリアクトルLcの一方に接続されている。リアクトルLcの他方は平滑コンデンサCHの高圧側および電圧端子VHに接続されている。
S1dA、S1uA、S1dB、S1uB、Spd、Spuのゲート端子と、電圧端子VH、Vcomは、制御回路2cに接続されている。S1dA、S1uA、S1dB、S1uB、Spd、Spuのゲート端子には、各MOSFETのソース端子の電圧を基準としたゲート信号GS1dA、GS1uA、GS1dB、GS1uB、GSpd、GSpuが制御回路2cから入力され、制御回路2cには、電圧端子VH、Vcomの各電圧が入力される。
上述したように、この実施の形態によるDC/DC電力変換装置は、電圧端子VL、Vcom間に入力された電圧V1を、2.5×V1〜3.5×V1に昇圧された電圧V2にする昇圧動作を行うが、3×V1〜3.5×V1に昇圧する第1の場合と、2.5×V1〜3×V1に昇圧する第2の場合とで制御が異なる。
まず、第1の場合、即ち、電圧端子VL、Vcom間に入力された電圧V1を、3×V1〜3.5×V1となる電圧V2に昇圧して電圧端子VH、Vcom間に出力する動作について説明する。電圧端子VH、Vcom間には電気負荷が接続され、エネルギを電圧端子VL、Vcom→電圧端子VH、Vcomの経路で移行して消費する。また、平滑コンデンサCL、CL2、CH、コンデンサCsの容量値は、LC直列体LC12、LC13のコンデンサCr12、Cr13の容量値と比較して十分大きな値に設定される。また、Lr12とCr12から決まるLC直列体LC12の共振周期と、Lr13とCr13から決まるLC直列体LC13の共振周期は、ほば同じとする。
図13に、定倍回路5c内の各MOSFETのゲート信号GS1dA、GS1uA、GS1dB、GS1uBと、PWM回路6内の各MOSFETのゲート信号GSpd、GSpuと、各LC直列体LC12、LC13を流れる電流ILr1、ILr2と、第2の回路4cの高圧側端子Vmの電圧(Vmと表示)と、リアクトルLcの電流ILcとの各波形を示す。なお、各MOSFETはゲート信号がハイ電圧でオンする。図13に示すように、定倍回路5c用のゲート信号GS1dA、GS1uA、GS1dB、GS1uBは、LC直列体LC12、LC13のコンデンサCr12、Cr13の容量値とインダクタLr12、Lr13のインダクタンス値とから決まる共振周期Tと同じかやや大きな周期で、デューティ比約50%で1周期に1パルスのオンオフ信号である。PWM回路6用のゲート信号GSpd、GSpuは、定倍回路5c用のゲート信号GS1dA、GS1uA、GS1dB、GS1uBと同期する同じ周期で、昇圧率に応じて決定される1周期に1パルスのオンオフ信号である。
コンデンサCsには約3×V1の電圧が蓄積され、平滑コンデンサCL2には約V1の電圧が蓄積されている。また、以下に述べる動作の繰り返しによって、コンデンサCr12には電圧V1がコンデンサCr13には約2×V1の電圧が、それぞれ平均的に蓄積されている。なお、コンデンサCsおよび平滑コンデンサCL2への初期充電動作については後述する。
期間u1において、ゲート信号GS1dAはロウ電圧、ゲート信号GS1uAはハイ電圧、ゲート信号GS1dBはハイ電圧、ゲート信号GS1uBはロウ電圧、ゲート信号GSpuはハイ電圧、ゲート信号GSpdはロウ電圧となっている。S1uA、S1dBがオンすることにより、エネルギは、コンデンサCr12→インダクタLr12→D2u→平滑コンデンサCL2→S1uAの経路と、平滑コンデンサCL→平滑コンデンサCL2→D3d→インダクタLr13→コンデンサCr13→S1dBの経路とで、平滑コンデンサCL2とコンデンサCr13とに移行する。一方、Spuがオンすることにより、平滑コンデンサCLにコンデンサCsが直列に接続された状態となり、高圧側端子Vmの電圧(Vm)が4×V1となる。これによりエネルギは、リアクトルLcを介して、平滑コンデンサCL→Spu→コンデンサCs→リアクトルLc→平滑コンデンサCHの経路で平滑コンデンサCHに移行する。リアクトルLcに流れる電流ILcは、リアクトルLcのインダクタンス値とリアクトルLcの両端電圧で決まる傾きで増加しながら流れる。
期間u2において、ゲート信号GS1dAはロウ電圧、ゲート信号GS1uAはハイ電圧、ゲート信号GS1dBはハイ電圧、ゲート信号GS1uBはロウ電圧、ゲート信号GSpuはロウ電圧、ゲート信号GSpdはハイ電圧となっている。S1uA、S1dBはオン状態を維持したままで、平滑コンデンサCL2およびコンデンサCr13へのエネルギ移行動作は、期間u1から継続している。この動作は、LC直列体LC12、LC13の共振周期Tの1/2であるT/2時間続く。一方、SpuがオフしてSpdがオンすることにより、高圧側端子Vmの電圧(Vm)が3×V1となる。これによりリアクトルLcに蓄積されたエネルギが放出され、リアクトルLc→平滑コンデンサCH→Spd→コンデンサCsの経路で平滑コンデンサCHに移行する。リアクトルLcに流れる電流ILcは、リアクトルLcのインダクタンス値とリアクトルLcの両端電圧で決まる傾きで減少しながら流れる。
期間u3において、ゲート信号GS1dAはハイ電圧、ゲート信号GS1uAはロウ電圧、ゲート信号GS1dBはロウ電圧、ゲート信号GS1uBはハイ電圧、ゲート信号GSpuはロウ電圧、ゲート信号GSpdはハイ電圧となっている。Spdはオン状態を維持したままで、リアクトルLcからの平滑コンデンサCHへのエネルギ移行動作は、期間u2から継続している。S1dAがオンしS1uAがオフ、S1dBがオフしS1uBがオンすることにより、平滑コンデンサCLおよびコンデンサCr13に蓄積されたエネルギは、平滑コンデンサCL→D2d→インダクタLr12→コンデンサCr12→S1dAの経路と、コンデンサCr13→インダクタLr13→D3u→コンデンサCs→Spd→平滑コンデンサCL→S1uBの経路とで、コンデンサCr12およびコンデンサCsに移行する。この動作は、LC直列体LC12、LC13の共振周期Tの1/2であるT/2時間続く。
この一連の動作の繰り返しにより、電圧を昇圧調整して出力する。
定倍回路5cは、第1の回路3cの2個の第1の直列体(S1dA,S1uA)、(S1dB,S1uB)を駆動回路として、第2の回路4cの2個の第2の直列体(D2d,D2u)、(D3d,D3u)を整流回路として動作させ、平滑コンデンサCLからコンデンサCr12、Cr13および平滑コンデンサCL2へ、さらにコンデンサCsへのエネルギ移行を繰り返し行う。また、PWM回路6は、定倍回路5cの高圧側端子となる高圧側端子Vmの電圧(Vm)を、期間u1において4×V1とし、それ以外の期間では3×V1として、リアクトルLcに接続することで、リアクトルLcを介して平滑コンデンサCHへエネルギを移行する。
期間u1の長さを調整することにより、出力電圧V2の高さ、即ち昇圧率を制御することができる。期間u1が長いと出力電圧V2は高く、短いと低くなる。コンデンサCsへのエネルギ蓄積期間として共振周期Tの1/2の期間を設ける必要があり、その間はS1dA、S1uB、Spdがオン状態である。このため、ゲート信号GS1dA、GS1uA、GS1dB、GS1uB、GSpd、GSpuの周期、即ち各MOSFETの駆動周期と共振周期Tをほぼ同じとすると、Spuのオン期間である期間u1の長さはT/2以下である。即ち、調整可能な出力電圧の最大値は3.5×V1となる。
制御回路2cは、所望の昇圧率に応じて予め期間u1の長さを決定して、1周期に1パルスのゲート信号GSpd、GSpuを生成する。また、制御回路2cでは、電圧端子VH、Vcomの各電圧が入力され、電圧端子VH、Vcom間の電圧に応じて、ゲート信号GSpd、GSpuを生成する際にそのパルス幅である期間u1の長さを調整する。即ち、電圧端子VH、Vcom間の電圧である出力電圧V2の変動を抑制するように期間u1の長さを調整することにより、所望の出力電圧V2を確実に得ることができる。
次に、コンデンサCsおよび平滑コンデンサCL2への初期充電動作について説明する。コンデンサCsには電圧3×V1が、平滑コンデンサCL2には電圧V1が蓄積されている必要がある。初期充電動作において、PWM回路6ではSpdをオン状態、Spuをオフ状態とし、定倍回路5cでは、S1dAとS1uAを、またS1dBとS1uBを、周期Tで交互にオンオフ動作させる。この動作により、コンデンサCsに電圧3×V1を充電すると同時に平滑コンデンサCL2に電圧V1を充電することができる。
このように動作するDC/DC電力変換装置に用いるリアクトルLcの仕様(特性)について、以下に説明する。例えば、周波数10kHz、V1=250V、出力電力10kW、リアクトルLcに流れる電流ILcのリプル電流p−p値ΔIと平均電流値Iaveとの比(ΔI/Iave)を0.8とした場合の、出力電圧V2とリアクトルLcの特性との関係を、比較例と共に図示する。特に、リアクトルLcの平均電流値Iaveを図14に、リアクトルLcのインダクタンス値Lを図15に、インダクタンス値Lと平均電流値Iaveの2乗との積で、リアクトルLcのサイズの目安となる、L×Iave2を図16に示す。なお、比較例は上記実施の形態1で示した従来の比較例と同じものである。
図に示すように、上記比較例と比べると、この実施の形態によるリアクトルLcの平均電流値Iaveは小さく、インダクタンス値Lは、出力電圧レベルが低い側で各段と小さくなる。また、リアクトルLcのサイズの目安となるL×Iave2も、大幅に小さくなる。このように、この実施の形態によると、従来は大型部品であったリアクトルのサイズを各段と小さくでき、DC/DC電力変換装置の小型化、軽量化が促進する。
次に、第2の場合、即ち、電圧端子VL、Vcom間に入力された電圧V1を、2.5×V1〜3×V1となる電圧V2に昇圧して電圧端子VH、Vcom間に出力する動作について説明する。
上記第1の場合と同様に、電圧端子VH、Vcom間には電気負荷が接続され、エネルギを電圧端子VL、Vcom→電圧端子VH、Vcomの経路で移行して消費する。
図17に、定倍回路5c内の各MOSFETのゲート信号GS1dA、GS1uA、GS1dB、GS1uBと、PWM回路6内の各MOSFETのゲート信号GSpd、GSpuと、各LC直列体LC12、LC13を流れる電流ILr1、ILr2と、第2の回路4cの高圧側端子Vmの電圧(Vmと表示)と、リアクトルLcの電流ILcとの各波形を示す。図17に示すように、定倍回路5c用のゲート信号GS1dA、GS1uA、GS1dB、GS1uBは、LC直列体LC12、LC13のコンデンサCr12、Cr13の容量値とインダクタLr12、Lr13のインダクタンス値とから決まる共振周期Tと同じかやや大きな周期で、デューティ比約50%で1周期に1パルスのオンオフ信号である。PWM回路6用のゲート信号GSpd、GSpuは、定倍回路5c用のゲート信号GS1dA、GS1uA、GS1dB、GS1uBと同期する同じ周期で、昇圧率に応じて決定される1周期に1パルスのオンオフ信号である。
コンデンサCsには約2×V1の電圧が蓄積され、平滑コンデンサCL2には約V1の電圧が蓄積されている。また、以下に述べる動作の繰り返しによって、コンデンサCr12には電圧V1がコンデンサCr13には約2×V1の電圧が、それぞれ平均的に蓄積されている。なお、コンデンサCsおよび平滑コンデンサCL2への初期充電動作については後述する。
期間uu1において、ゲート信号GS1dAはハイ電圧、ゲート信号GS1uAはロウ電圧、ゲート信号GS1dBはロウ電圧、ゲート信号GS1uBはハイ電圧、ゲート信号GSpuはハイ電圧、ゲート信号GSpdはロウ電圧となっている。S1dA、S1uBがオンすることにより、エネルギは、平滑コンデンサCL→D2d→インダクタLr12→コンデンサCr12→S1dAの経路と、コンデンサCr13→インダクタLr13→D3u→コンデンサCs→Spu→S1uBの経路とで、コンデンサCr12およびコンデンサCsに移行する。この動作は、LC直列体LC12、LC13の共振周期Tの1/2であるT/2時間続く。一方、Spuがオンすることにより、平滑コンデンサCLにコンデンサCsが直列に接続された状態となって、高圧側端子Vmの電圧(Vm)が3×V1となる。これによりエネルギは、リアクトルLcを介して、平滑コンデンサCL→Spu→コンデンサCs→リアクトルLc→平滑コンデンサCHの経路で平滑コンデンサCHに移行する。リアクトルLcに流れる電流ILcは、リアクトルLcのインダクタンス値とリアクトルLcの両端電圧で決まる傾きで増加しながら流れる。
期間uu2において、ゲート信号GS1dAはロウ電圧、ゲート信号GS1uAはハイ電圧、ゲート信号GS1dBはハイ電圧、ゲート信号GS1uBはロウ電圧、ゲート信号GSpuはハイ電圧、ゲート信号GSpdはロウ電圧となっている。Spuはオン状態を維持したままで、リアクトルLcを介した平滑コンデンサCHへのエネルギ移行動作は、期間uu1から継続している。一方、S1uAとS1dBとがオンすることにより、エネルギは、コンデンサCr12→インダクタLr12→D2u→平滑コンデンサCL2→S1uAの経路と、平滑コンデンサCL→平滑コンデンサCL2→D3d→インダクタLr13→コンデンサCr13→S1dBの経路とで、平滑コンデンサCL2およびコンデンサCr13に移行する。
期間uu3において、ゲート信号GS1dAはロウ電圧、ゲート信号GS1uAはハイ電圧、ゲート信号GS1dBはハイ電圧、ゲート信号GS1uBはロウ電圧、ゲート信号GSpuはロウ電圧、ゲート信号GSpdはハイ電圧となっている。S1uAおよびS1dBはオン状態を維持したままで、平滑コンデンサCL2およびコンデンサCr13へのエネルギ移行動作は、期間uu2から継続している。この動作は、LC直列体LC12、LC13の共振周期Tの1/2であるT/2時間続く。一方、SpuがオフしてSpdがオンすることにより、高圧側端子Vmの電圧(Vm)が2×V1となる。これによりリアクトルLcに蓄積されたエネルギが放出され、エネルギは、リアクトルLc→平滑コンデンサCH→Spd→コンデンサCsの経路で平滑コンデンサCHに移行する。リアクトルLcに流れる電流ILcは、リアクトルLcのインダクタンス値とリアクトルLcの両端電圧で決まる傾きで減少しながら流れる。
この一連の動作の繰り返しにより、電圧を昇圧調整して出力する。
定倍回路5cは、第1の回路3cの2個の第1の直列体(S1dA,S1uA)、(S1dB,S1uB)を駆動回路として、第2の回路4cの2個の第2の直列体(D2d,D2u)、(D3d,D3u)を整流回路として動作させ、平滑コンデンサCLからコンデンサCr12、Cr13および平滑コンデンサCL2へ、さらにコンデンサCsへのエネルギ移行を繰り返し行う。また、PWM回路6は、定倍回路5cの高圧側端子となる高圧側端子Vmの電圧(Vm)を、期間(uu1+uu2)において3×V1とし、それ以外の期間では2×V1として、リアクトルLcに接続することで、リアクトルLcを介して平滑コンデンサCHへエネルギを移行する。
期間(uu1+uu2)の長さを調整することにより、出力電圧V2の高さ、即ち昇圧率を制御することができる。期間(uu1+uu2)が長いと出力電圧V2は高く、短いと低くなる。コンデンサCsへのエネルギ蓄積期間として共振周期Tの1/2の期間を設ける必要があり、その間はS1dA、S1uB、Spuがオン状態である。このため、ゲート信号GS1dA、GS1uA、GS1dB、GS1uB、GSpd、GSpuの周期、即ち各MOSFETの駆動周期と共振周期Tをほぼ同じとすると、Spuのオン期間である期間(uu1+uu2)の長さはT/2〜Tの範囲で調整される。即ち、調整可能な出力電圧の最小値は2.5×V1となる。
制御回路2cは、所望の昇圧率に応じて予め期間(uu1+uu2)の長さを決定して、1周期に1パルスのゲート信号GSpd、GSpuを生成する。また、制御回路2cでは、電圧端子VH、Vcomの各電圧が入力され、電圧端子VH、Vcom間の電圧に応じて、ゲート信号GSpd、GSpuを生成する際にそのパルス幅である期間(uu1+uu2)の長さを調整する。即ち、電圧端子VH、Vcom間の電圧である出力電圧V2の変動を抑制するように期間(uu1+uu2)の長さを調整することにより、所望の出力電圧V2を確実に得ることができる。
次に、コンデンサCsおよび平滑コンデンサCL2への初期充電動作について説明する。コンデンサCsには電圧2×V1が、平滑コンデンサCL2には電圧V1が蓄積されている必要がある。初期充電動作において、PWM回路6ではSpdをオフ状態、Spuをオン状態とし、定倍回路5cでは、S1dAとS1uAを、またS1dBとS1uBを、周期Tで交互にオンオフ動作させる。この動作により、コンデンサCsに電圧2×V1を充電すると同時に平滑コンデンサCL2に電圧V1を充電することができる。
このように動作するDC/DC電力変換装置に用いるリアクトルLcの仕様(特性)について、以下に説明する。例えば、周波数10kHz、V1=250V、出力電力10kW、リアクトルLcに流れる電流ILcのリプル電流p−p値ΔIと平均電流値Iaveとの比(ΔI/Iave)を0.8とした場合の、出力電圧V2とリアクトルLcの特性との関係を、比較例と共に図18に示す。なお、比較例は上記実施の形態1で示した従来の比較例と同じものである。図に示すように、リアクトルLcのインダクタンス値Lと平均電流値Iaveの2乗との積で、リアクトルLcのサイズの目安となる、L×Iave2は、上記比較例と比べると大幅に小さくなる。このように、従来は大型部品であったリアクトルのサイズを各段と小さくでき、DC/DC電力変換装置の小型化、軽量化が促進する。
また、上述した第1の場合、第2の場合のいずれにおいても、上記実施の形態1と同様に、リアクトルLcに接続する電圧レベルとその期間を制御するPWM回路6内のSpd、Spuに印加される電圧、およびSpd、Spuに流れる電流を、従来のものに比べて各段と低減でき、損失を低減できる。また、PWM回路6内のMOSFET(Spd、Spu)は、定倍回路5c内のMOSFETと同様に、定格の小さな素子を用いることができ、各MOSFETを各段と高周波で駆動することができる。その結果リアクトルLcのインダクタンス値Lを小さくでき、さらにリアクトルLcを小型、軽量にできる。
また、定倍回路5cにおいて、エネルギ移行にLC共振を利用し、各MOSFETの駆動周期を、共振周期Tと同じかやや大きくした。このため、MOSFETのスイッチング時に、MOSFETを流れる電流値はゼロで、損失の小さな高効率なエネルギ移行が可能となる。また、共振電流を利用して効率良くエネルギ移行するため、コンデンサCr12、Cr13およびインダクタLr12、Lr13は、定格の小さな小型素子を使用できる。
なお、この実施の形態においても、上記実施の形態1と同様に、インダクタLr12はコンデンサCr12の充放電経路内に、インダクタLr13はコンデンサCr13の充放電経路内に接続すれば良く、同様の効果が得られる。
また、インダクタLr12、Lr13を省略した構成としても良く、その場合は、定倍回路5cにおいて、共振電流を利用した高効率なエネルギ移行とはならないが、PWM回路6内のMOSFET(Spd、Spu)に定格の小さな素子を用いることができ、高周波駆動が可能であると共にリアクトルLcを各段と小型、軽量にできる効果は同様に得られる。
また、電圧端子VL、Vcom間に入力された電圧V1を、上記第1の場合では3×V1〜3.5×V1に昇圧し、上記第2の場合では2.5×V1〜3×V1に昇圧したが、昇圧率に応じて制御回路2cが第1の場合、あるいは第2の場合で示した制御を選択して用いることで、2.5×V1〜3.5×V1に昇圧して電圧端子VH、Vcom間に出力する事ができる。
実施の形態7.
次に、この発明の実施の形態7によるDC/DC電力変換装置について説明する。
図19は、この発明の実施の形態7によるDC/DC電力変換装置の回路構成を示す。図19に示すように、DC/DC電力変換装置は、DC/DC電力変換主回路1dと制御回路2dとから構成され、高圧側入出力両端子(VH,Vcom)間に入力された電圧V2を、0.29×V2〜0.4×V2に降圧された電圧V1にして低圧側入出力両端子(VL,Vcom)間に出力する降圧動作を行うDC/DC電力変換機能を有する。なお、低圧側入出力両端子(電圧端子VL、Vcom)の負極側端子Vcomは、高圧側入出力両端子(電圧端子VH、Vcom)の負極側端子Vcomと共通である。
DC/DC電力変換主回路1dは、電圧端子VL、Vcom間に接続されて入力電圧V1を平滑化する低圧側平滑コンデンサとしての平滑コンデンサCLと、電圧端子VH、Vcom間に接続されて出力電圧V2を平滑化する高圧側平滑コンデンサとしての平滑コンデンサCHと、第1の回路3d、第2の回路4dおよびエネルギ移行素子として機能するLC直列体LC12、LC13を有する定倍回路5dとを備える。
第1の回路3dは、ダイオード素子から成る低圧側素子D1dA、D1dB、高圧側素子D1uA、D1uBを直列接続して構成される2個の第1の直列体(D1dA,D1uA)、(D1dB,D1uB)を電圧端子VL、Vcom間に並列接続して成り、定倍回路5d内で整流回路として動作する。第2の回路4dは、半導体素子としてのNOSFETから成る低圧側素子S2d、S3d、高圧側素子S2u、S3uを直列接続して構成される2個の第2の直列体(S2d,S2u)、(S3d,S3u)を直列接続して成り、低圧側の第2の直列体(S2d,S2u)には、平滑コンデンサCL2が並列接続される。また、2個の第2の直列体(S2d,S2u)、(S3d,S3u)は、定倍回路5d内で駆動回路として動作する。
そして、LC直列体LC12は、コンデンサCr12およびインダクタLr12の直列回路で構成され、第1の直列体(D1dA,D1uA)の中間点と第2の直列体(S2d,S2u)の中間点との間に接続される。LC直列体LC13は、コンデンサCr13およびインダクタLr13の直列回路で構成され、第1の直列体(D1dB,D1uB)の中間点と第2の直列体(S3d,S3u)の中間点との間に接続される。以下、MOSFETから成る低圧側素子S2d、S3d、高圧側素子S2u、S3uを単にS2d、S3d、S2u、S3uと、ダイオード素子から成る低圧側素子D1dA、D1dB、高圧側素子D1uA、D1uAを単にD1dA、D1dB、D1uA、D1uAと称す。
また、DC/DC電力変換主回路1dは、上記各実施の形態と同様に、MOSFETから成るSpd、Spuを直列接続した直列体(Spd,Spu)を電圧端子VL、Vcom間に接続して成るPWM回路6と、PWM回路6の中間点と第2の回路4dの高圧側端子Vmとの間に接続されたPWM用コンデンサとしてのコンデンサCsと、電圧端子VHと高圧側端子Vmとの間に接続されるリアクトルLcとを備える。
なお、各MOSFETは、ソース、ドレイン間に寄生ダイオードが形成されているパワーMOSFETである。
このようなDC/DC電力変換装置における接続の詳細について説明する。なお、上記実施の形態6と同様の部分は省略する。
S2dのソース端子は電圧端子VLに、ドレイン端子はS2uのソース端子に、S2uのドレイン端子はS3dのソース端子に接続されている。S3dのドレイン端子はS3uのソース端子に、S3uのドレイン端子はリアクトルLcとコンデンサCsとの接続点に接続されている。D1dAのアノード端子は電圧端子Vcomに、カソード端子はD1uのアノード端子に、D1uのカソード端子は電圧端子VLに接続されている。D1dBのアノード端子は電圧端子Vcomに、カソード端子はD1uBのアノード端子に、D1uBのカソード端子は電圧端子VLに接続されている。LC直列体LC12の一端は、S2dとS2uとの接続点に接続され、他端はD1dAとD1uAとの接続点に接続されている。LC直列体LC13の一端は、S3dとS3uとの接続点に接続され、他端はD1dBとD1uBとの接続点に接続されている。
S2d、S2u、S3d、S3u、Spd、Spuのゲート端子と、電圧端子VL、Vcomは、制御回路2dに接続されている。S2d、S2u、S3d、S3u、Spd、Spuのゲート端子には、各MOSFETのソース端子の電圧を基準としたゲート信号GS2d、GS2u、GS3d、GS3u、GSpd、GSpuが入力され、制御回路2dには、電圧端子VL、Vcomの各電圧が入力される。
上述したように、この実施の形態によるDC/DC電力変換装置は、電圧端子VH、Vcom間に入力された電圧V2を、0.29×V2〜0.4×V2に降圧された電圧V1にする降圧動作を行うが、0.29×V2〜0.33×V2に降圧する第1の場合と、0.33×V2〜0.4×V2に降圧する第2の場合とで制御が異なる。
まず、第1の場合、即ち、電圧端子VH、Vcom間に入力された電圧V2を、0.29×V2〜0.33×V2となる電圧V1に降圧して電圧端子VL、Vcom間に出力する動作について説明する。電圧端子VL、Vcom間には電気負荷が接続され、エネルギを電圧端子VH、Vcom→電圧端子VL、Vcomの経路で移行して消費する。また、平滑コンデンサCL、CL2、CH、コンデンサCsの容量値は、LC直列体LC12、LC13のコンデンサCr12、Cr13の容量値と比較して十分大きな値に設定される。Lr12とCr12から決まるLC直列体LC12の共振周期と、Lr13とCr13から決まるLC直列体LC13の共振周期は、ほば同じとする。
図20に、定倍回路5d内の各MOSFETのゲート信号GS2d、GS2u、GS3d、GS3uと、PWM回路6内の各MOSFETのゲート信号GSpd、GSpuと、各LC直列体LC12、LC13を流れる電流ILr1、ILr2と、第2の回路4dの高圧側端子Vmの電圧(Vmと表示)と、リアクトルLcの電流ILcとの各波形を示す。なお、各MOSFETはゲート信号がハイ電圧でオンする。図20に示すように、定倍回路5d用のゲート信号GS2d、GS2u、GS3d、GS3uは、LC直列体LC12、LC13のコンデンサCr12、Cr13の容量値とインダクタLr12、Lr13のインダクタンス値とから決まる共振周期Tと同じかやや大きな周期で、デューティ比約50%で1周期に1パルスのオンオフ信号である。PWM回路6用のゲート信号GSpd、GSpuは、定倍回路5d用のゲート信号GS2d、GS2u、GS3d、GS3uと同期する同じ周期で、降圧率に応じて決定される1周期に1パルスのオンオフ信号である。
コンデンサCsには約3×V1の電圧が蓄積され、平滑コンデンサCL2には約V1の電圧が蓄積されている。また、以下に述べる動作の繰り返しによって、コンデンサCr12には電圧V1がコンデンサCr13には約2×V1の電圧が、それぞれ平均的に蓄積されている。なお、コンデンサCsおよび平滑コンデンサCL2への初期充電動作については後述する。
期間v1において、ゲート信号GS2dはロウ電圧、ゲート信号GS2uはハイ電圧、ゲート信号GS3dはハイ電圧、ゲート信号GS3uはロウ電圧、ゲート信号GSpuはハイ電圧、ゲート信号GSpdはロウ電圧となっている。S2uおよびS3dがオンすることにより、エネルギは、平滑コンデンサCL2→S2u→インダクタLr12→コンデンサCr12→D1uAの経路と、コンデンサCr13→インダクタLr13→S3d→平滑コンデンサCL2→平滑コンデンサCL→D1dBの経路とで、コンデンサCr12および平滑コンデンサCL、CL2に移行する。一方、SpdがオフしSpuがオンすることにより、平滑コンデンサCLにコンデンサCsが直列に接続された状態となって、高圧側端子Vmの電圧(Vm)が4×V1となる。これにより、リアクトルLcに蓄積されているエネルギが放出され、エネルギは、リアクトルLc→コンデンサCs→Spu→平滑コンデンサCL→平滑コンデンサCHの経路で平滑コンデンサCLに移行する。リアクトルLcに流れる電流ILcは、リアクトルLcのインダクタンス値とリアクトルLcの両端電圧で決まる傾きで絶対値を減少しながら流れる(図中、電流は負極性の電流として表している)。
期間v2において、ゲート信号GS2dはロウ電圧、ゲート信号GS2uはハイ電圧、ゲート信号GS3dはハイ電圧、ゲート信号GS3uはロウ電圧、ゲート信号GSpuはロウ電圧、ゲート信号GSpdはハイ電圧となっている。S2uおよびS3dはオン状態を維持したままで、コンデンサCr12および平滑コンデンサCL、CL2へのエネルギ移行動作は、期間v1から継続している。この動作は、LC直列体LC12、LC13の共振周期Tの1/2であるT/2時間続く。一方、SpuがオフしSpdがオンすることにより、高圧側端子Vmの電圧(Vm)が3×V1となる。これによりエネルギは、リアクトルLcを介して、平滑コンデンサCH→リアクトルLc→コンデンサCs→Spdの経路でコンデンサCsに移行すると同時に、リアクトルLcにエネルギが蓄積される。リアクトルLcに流れる電流ILcは、リアクトルLcのインダクタンス値とリアクトルLcの両端電圧で決まる傾きで絶対値を増加しながら流れる。
期間v3において、ゲート信号GS2dはハイ電圧、ゲート信号GS2uはロウ電圧、ゲート信号GS3dはロウ電圧、ゲート信号GS3uはハイ電圧、ゲート信号GSpuはロウ電圧、ゲート信号GSpdはハイ電圧となっている。Spdはオン状態を維持したままで、リアクトルLcを介したコンデンサCsへのエネルギ移行動作は、期間v2から継続している。また、S2uがオフしS2dがオン、S3uがオンしS3dがオフすることにより、コンデンサCr12およびコンデンサCsに蓄積されたエネルギが、コンデンサCr12→インダクタLr12→S2d→平滑コンデンサCL→D1dAの経路と、コンデンサCs→S3u→インダクタLr13→コンデンサCr13→D1uB→平滑コンデンサCL→Spdの経路とで、平滑コンデンサCLおよびコンデンサCr13に移行する。この動作は、LC直列体LC12、LC13の共振周期Tの1/2であるT/2時間続く。
この一連の動作の繰り返しにより、電圧を降圧調整して出力する。
定倍回路5dは、第2の回路4dの2個の第2の直列体(S2d,S2u)、(S3d,S3u)を駆動回路として、第1の回路3dの2個の第1の直列体(D1dA,D1uA)、(D1dB,D1uB)を整流回路として動作させ、コンデンサCsからコンデンサCr12、Cr13および平滑コンデンサCL2へ、さらに平滑コンデンサCLへのエネルギ移行を繰り返し行う。また、PWM回路6は、定倍回路5dの高圧側端子となる高圧側端子Vmの電圧(Vm)を、期間(v2+v3)において3×V1とし、それ以外の期間では4×V1として、リアクトルLcに接続することで、平滑コンデンサCHからリアクトルLcを介してコンデンサCsおよび平滑コンデンサCLへエネルギを移行する。
期間(v2+v3)の長さを調整することにより、出力電圧V1の高さ、即ち降圧率を制御することができる。期間(v2+v3)が長いと出力電圧V1は高く、短いと低くなる。コンデンサCr13へのエネルギ蓄積期間として共振周期Tの1/2の期間を設ける必要があり、その間はS2u、S3d、Spdがオン状態である。このため、ゲート信号GS2d、GS2u、GS3d、GS3u、GSpd、GSpuの周期、即ち各MOSFETの駆動周期と共振周期Tをほぼ同じとすると、Spdのオン期間である期間(v2+v3)の長さはT/2〜Tの範囲で調整される。即ち、調整可能な出力電圧V1は、(0.29×V2)≦V1≦(0.33×V2)となる。
制御回路2dは、所望の降圧率に応じて予め期間(v2+v3)の長さを決定して、1周期に1パルスのゲート信号GSpd、GSpuを生成する。また、制御回路2dでは、電圧端子VL、Vcomの各電圧が入力され、電圧端子VL、Vcom間の電圧に応じて、ゲート信号GSpd、GSpuを生成する際にそのパルス幅である期間(v2+v3)の長さを調整する。即ち、電圧端子VL、Vcom間の電圧である出力電圧V1の変動を抑制するように期間(v2+v3)の長さを調整することにより、所望の降圧率の出力電圧V1を確実に得ることができる。
次に、コンデンサCsおよび平滑コンデンサCL2への初期充電動作について説明する。コンデンサCsには電圧3×V1が、平滑コンデンサCL2には電圧V1が蓄積されている必要がある。
初期充電動作において、定倍回路5d内のS2d、S2uとS3d、S3uおよびPWM回路6内のSpd、Spuを周期Tで、図20で示した降圧動作時と同様のデューティ比にてオンオフする。この動作により、コンデンサCsに電圧3×V1を充電すると同時に平滑コンデンサCL2に電圧V1を充電することができる。このとき、電圧V1は、(0.29×V2)≦V1≦(0.33×V2)となっている。
このように動作するDC/DC電力変換装置に用いるリアクトルLcの仕様(特性)は、上記各実施の形態と同様に、平均電流値Iaveは小さく、インダクタンス値Lは出力電圧レベルが低い側で各段と小さくなる。また、リアクトルLcのサイズの目安となるL×Iave2も大幅に小さくなる。このように、従来は大型部品であったリアクトルのサイズを各段と小さくでき、DC/DC電力変換装置の小型化、軽量化が促進する。
次に、第2の場合、即ち、電圧端子VH、Vcom間に入力された電圧V2を、0.33×V2〜0.4×V2となる電圧V1に降圧して電圧端子VL、Vcom間に出力する動作について説明する。電圧端子VL、Vcom間には電気負荷が接続され、エネルギを電圧端子VH、Vcom→電圧端子VL、Vcomの経路で移行して消費する。また、平滑コンデンサCL、CL2、CH、コンデンサCsの容量値は、LC直列体LC12、LC13のコンデンサCr12、Cr13の容量値と比較して十分大きな値に設定される。Lr12とCr12から決まるLC直列体LC12の共振周期と、Lr13とCr13から決まるLC直列体LC13の共振周期は、ほば同じとする。
図21に、定倍回路5d内の各MOSFETのゲート信号GS2d、GS2u、GS3d、GS3uと、PWM回路6内の各MOSFETのゲート信号GSpd、GSpuと、各LC直列体LC12、LC13を流れる電流ILr1、ILr2と、第2の回路4dの高圧側端子Vmの電圧(Vmと表示)と、リアクトルLcの電流ILcとの各波形を示す。なお、各MOSFETはゲート信号がハイ電圧でオンする。図21に示すように、定倍回路5d用のゲート信号GS2d、GS2u、GS3d、GS3uは、LC直列体LC12、LC13のコンデンサCr12、Cr13の容量値とインダクタLr12、Lr13のインダクタンス値とから決まる共振周期Tと同じかやや大きな周期で、デューティ比約50%で1周期に1パルスのオンオフ信号である。PWM回路6用のゲート信号GSpd、GSpuは、定倍回路5d用のゲート信号GS2d、GS2u、GS3d、GS3uと同期する同じ周期で、降圧率に応じて決定される1周期に1パルスのオンオフ信号である。
コンデンサCsには約2×V1の電圧が蓄積され、平滑コンデンサCL2には約V1の電圧が蓄積されている。また、以下に述べる動作の繰り返しによって、コンデンサCr12には電圧V1がコンデンサCr13には約2×V1の電圧が、それぞれ平均的に蓄積されている。なお、コンデンサCsおよび平滑コンデンサCL2への初期充電動作については後述する。
期間vv1において、ゲート信号GS2dはハイ電圧、ゲート信号GS2uはロウ電圧、ゲート信号GS3dはロウ電圧、ゲート信号GS3uはハイ電圧、ゲート信号GSpuはハイ電圧、ゲート信号GSpdはロウ電圧となっている。S2d、S3u、Spuがオンすることにより、エネルギは、コンデンサCr12→インダクタLr12→S2d→平滑コンデンサCL→D1dAの経路と、コンデンサCs→S3u→インダクタLr13→コンデンサCr13→D1uB→Spuの経路とで、平滑コンデンサCLおよびコンデンサCr13に移行する。この動作は、LC直列体LC12、LC13の共振周期Tの1/2であるT/2時間続く。一方、Spdがオフ、Spuがオンすることにより、平滑コンデンサCLにコンデンサCsが直列に接続された状態となって、高圧側端子Vmの電圧(Vm)が3×V1となる。これにより、リアクトルLcに蓄積されたエネルギが放出され、リアクトルLc→コンデンサCs→Spu→平滑コンデンサCL→平滑コンデンサCHの経路で、平滑コンデンサCLおよびコンデンサCsに移行する。リアクトルLcに流れる電流ILcは、リアクトルLcのインダクタンス値とリアクトルLcの両端電圧で決まる傾きで絶対値を減少しながら流れる(図中、電流は負極性の電流として表している)。
期間vv2において、ゲート信号GS2dはロウ電圧、ゲート信号GS2uはハイ電圧、ゲート信号GS3dはハイ電圧、ゲート信号GS3uはロウ電圧、ゲート信号GSpuはハイ電圧、ゲート信号GSpdはロウ電圧となっている。Spuはオン状態を維持したままで、リアクトルLcのエネルギ放出による平滑コンデンサCLおよびコンデンサCsへのエネルギ移行動作は、期間vv1から継続している。一方、S2u、S3dがオンすることにより、エネルギは、平滑コンデンサCL2→S2u→インダクタLr12→コンデンサCr12→D1uAの経路と、コンデンサCr13→インダクタLr13→S3d→平滑コンデンサCL2→平滑コンデンサCL→D1dBの経路とで、コンデンサCr12および平滑コンデンサCL、CL2に移行する。
期間vv3において、ゲート信号GS2dはロウ電圧、ゲート信号GS2uはハイ電圧、ゲート信号GS3dはハイ電圧、ゲート信号GS3uはロウ電圧、ゲート信号GSpuはロウ電圧、ゲート信号GSpdはハイ電圧となっている。S2u、S3dはオン状態を維持したままで、コンデンサCr12および平滑コンデンサCL、CL2へのエネルギ移行は期間vv2から継続している。この動作は、LC直列体LC12、LC13の共振周期Tの1/2であるT/2時間続く。一方、SpuがオフしSpdがオンすることにより、高圧側端子Vmの電圧(Vm)が2×V1になり、エネルギは、リアクトルLcを介して、平滑コンデンサCH→リアクトルLc→コンデンサCs→Spdの経路で、コンデンサCsに移行すると同時に、リアクトルLcにエネルギが蓄積される。リアクトルLcに流れる電流ILcは、リアクトルLcのインダクタンス値とリアクトルLcの両端電圧で決まる傾きで絶対値を増加しながら流れる。
この一連の動作の繰り返しにより、電圧を降圧調整して出力する。
定倍回路5dは、第2の回路4dの2個の第2の直列体(S2d,S2u)、(S3d,S3u)を駆動回路として、第1の回路3dの2個の第1の直列体(D1dA,D1uA)、(D1dB,D1uB)を整流回路として動作させ、コンデンサCsからコンデンサCr12、Cr13および平滑コンデンサCL2へ、さらに平滑コンデンサCLへのエネルギ移行を繰り返し行う。また、PWM回路6は、定倍回路5dの高圧側端子となる高圧側端子Vmの電圧(Vm)を、期間vv3において2×V1とし、それ以外の期間では3×V1として、リアクトルLcに接続することで、平滑コンデンサCHからリアクトルLcを介してコンデンサCsおよび平滑コンデンサCLへエネルギを移行する。
期間vv3の長さを調整することにより、出力電圧V1の高さ、即ち降圧率を制御することができる。期間vv3が長いと出力電圧V1は高く、短いと低くなる。コンデンサCr13へのエネルギ蓄積期間として共振周期Tの1/2の期間を設ける必要があり、その間はS2d、S3u、Spuがオン状態である。このため、ゲート信号GS2d、GS2u、GS3d、GS3u、GSpd、GSpuの周期、即ち各MOSFETの駆動周期と共振周期Tをほぼ同じとすると、Spdのオン期間である期間vv3の長さはT/2以下である。即ち、調整可能な出力電圧V1は、(0.33×V2)≦V1≦(0.4×V2)となる。
制御回路2dは、所望の降圧率に応じて予め期間vv3の長さを決定して、1周期に1パルスのゲート信号GSpd、GSpuを生成する。また、制御回路2dでは、電圧端子VL、Vcomの各電圧が入力され、電圧端子VL、Vcom間の電圧に応じて、ゲート信号GSpd、GSpuを生成する際にそのパルス幅である期間vv3の長さを調整する。即ち、電圧端子VL、Vcom間の電圧である出力電圧V1の変動を抑制するように期間vv3の長さを調整することにより、所望の出力電圧V1を確実に得ることができる。
次に、コンデンサCsおよび平滑コンデンサCL2への初期充電動作について説明する。コンデンサCsには電圧2×V1が、平滑コンデンサCL2には電圧V1が蓄積されている必要がある。初期充電動作において、定倍回路5d内のS2d、S2uとS3d、S3uおよびPWM回路6内のSpd、Spuを周期Tで、図21で示した降圧動作時と同様のデューティ比にてオンオフする。この動作により、コンデンサCsに電圧2×V1を充電すると同時に平滑コンデンサCL2に電圧V1を充電することができる。このとき、電圧V1は、(0.33×V2)≦V1≦(0.4×V2)となっている。
このように動作するDC/DC電力変換装置に用いるリアクトルLcの仕様(特性)は、上記第1の場合と同様に、リアクトルLcのサイズの目安となるL×Iave2を大幅に低減でき、リアクトルのサイズを各段と小さくでき、DC/DC電力変換装置の小型化、軽量化が促進する。
また、上述した第1の場合、第2の場合のいずれにおいても、上記実施の形態1と同様に、リアクトルLcに接続する電圧レベルとその期間を制御するPWM回路6内のSpd、Spuに印加される電圧、およびSpd、Spuに流れる電流を、従来のものに比べて各段と低減でき、損失を低減できる。また、PWM回路6内のMOSFET(Spd、Spu)は、定倍回路5d内のMOSFETと同様に、定格の小さな素子を用いることができ、各MOSFETを各段と高周波で駆動することができる。その結果リアクトルLcのインダクタンス値Lを小さくでき、さらにリアクトルLcを小型、軽量にできる。
また、定倍回路5dにおいて、エネルギ移行にLC共振を利用し、各MOSFETの駆動周期を、共振周期Tと同じかやや大きくした。このため、MOSFETのスイッチング時に、MOSFETを流れる電流値はゼロで、損失の小さな高効率なエネルギ移行が可能となる。また、共振電流を利用して効率良くエネルギ移行するため、コンデンサCr12、Cr13およびインダクタLr12、Lr13は、定格の小さな小型素子を使用できる。
なお、この実施の形態においても、上記実施の形態1と同様に、インダクタLr12はコンデンサCr12の充放電経路内に、インダクタLr13はコンデンサCr13の充放電経路内に接続すれば良く、同様の効果が得られる。
また、インダクタLr12、Lr13を省略した構成としても良く、その場合は、定倍回路5dにおいて、共振電流を利用した高効率なエネルギ移行とはならないが、PWM回路6内のMOSFET(Spd、Spu)に定格の小さな素子を用いることができ、高周波駆動が可能であると共にリアクトルLcを各段と小型、軽量にできる効果は同様に得られる。
また、電圧端子VH、Vcom間に入力された電圧V2を、上記第1の場合では0.29×V2〜0.33×V2に降圧し、上記第2の場合では0.33×V2〜0.4×V2に降圧したが、降圧率に応じて制御回路2dが第1の場合、あるいは第2の場合で示した制御を選択して用いることで、0.29×V2〜0.4×V2に降圧して電圧端子VL、Vcom間に出力する事ができる。
実施の形態8.
以下、この発明の実施の形態8によるDC/DC電力変換装置について説明する。
上記実施の形態6、7では、整流回路として動作する2つの直列体を、ダイオード素子から成る低圧側素子と高圧側素子とを直列接続して構成したが、この実施の形態では、上記実施の形態5と同様に半導体スイッチ素子としてのMOSFETから成る低圧側素子と高圧側素子とを直列接続して構成する。即ち、上記実施の形態6の図12で示したDC/DC電力変換主回路1cにおいて、第2の回路4cの替わりに、上記実施の形態7の図19で示した第2の回路4dを用いる。そして、制御回路2cには、電圧端子VL、VH、Vcomの各電圧が入力され、S1dA、S1uA、S1dB、S1uB、S1d、S1u、S2d、S2u、Spd、Spuのゲート端子には、各MOSFETのソース端子の電圧を基準としたゲート信号GS1dA、GS1uA、GS1dB、GS1uB、GS1d、GS1u、GS2d、GS2u、GSpd、GSpuが制御回路2bから入力される。
この実施の形態では、昇圧動作時には、上記実施の形態6で示した制御および動作を行い、降圧動作時には、上記実施の形態7で示した制御および動作を行う。このように、昇圧動作と降圧動作を切り換えることにより、昇降圧動作を実現している。
なお、昇圧動作時における第2の回路4d、および降圧動作時における第1の回路3cは、整流回路として用いるため、各MOSFETをオフさせてソース、ドレイン間の寄生ダイオードにて整流することで上記実施の形態6および上記実施の形態7と同様の動作となる。この整流回路としての動作は、寄生ダイオードの導通タイミングに合わせて各MOSFETをオン動作させてもよく、より損失が小さくなる。
以上のように、この実施の形態では、昇圧機能と降圧機能との双方のDC/DC電力変換機能を有し、しかも、上記各実施の形態と同様に、PWM回路6内のMOSFET(Spd、Spu)を、定格の小さな素子を用いて各MOSFETの高周波駆動を可能にし、リアクトルLcのサイズを各段と小さくしてDC/DC電力変換装置の小型化、軽量化を促進すると共に、高効率なエネルギ移行を実現する。
なお、上記実施の形態6〜8では、定倍回路5c、5dは、第1の直列体、第2の直列体およびLC直列体をそれぞれ2個備えるとしたが、3個以上の同数有しても良い。第1の直列体、第2の直列体およびLC直列体をそれぞれ3個以上のN個有した場合、第1の回路では、N個の第1の直列体が電圧端子VL、Vcom間に並列接続され、第2の回路では、N個の第2の直列体が第1の回路の高圧側に直列接続され、N個の第2の直列体の内、低圧側のN−1個の第2の直列体にそれぞれ平滑コンデンサが並列接続される。そして、各LC直列体は、各第1の直列体の中間点と各第2の直列体の中間点との間にそれぞれ接続される。これにより、広範囲の昇圧率、降圧率に対応できるDC/DC電力変換装置で、上記実施の形態6〜8と同様の効果が得られる。
なお、上記各実施の形態では、各半導体スイッチング素子に、ソース、ドレイン間に寄生ダイオードが形成されているパワーMOSFETを用いたが、ダイオードを逆並列接続した他の半導体スイッチ素子でも良く、ダイオードを逆並列接続したIGBTが効果的に使用でき、同様の効果が得られる。