本発明の電極保護膜は、構成単位(I)を有する重合体を含有する。
上記式(I)中、R1a、R2bは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。
また、mは1〜100のいずれかの整数を表し、好ましくは2〜100、より好ましくは5〜100、さらに好ましくは10〜100である。また、各構成単位におけるmの値は、同一であっても相異なっていてもよい。
mが2以上のとき、各構成単位におけるR1a同士、R2b同士は、同一又は相異なっていてもよい。
また、構成単位(I)の重合度は、mの値にもよるが、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。
また、本発明の電極保護膜は、構成単位(I)を有する重合体を含むアーム部と、分岐鎖を有する有機基を含むコア部とを有するスターポリマーを含有していてもよい。スターポリマーとしては、分岐鎖を有する有機基を含むコア部と、構成単位(I)を有する重合体を含むアーム部とを有する限り特に制限はされない。
コア部としては、分岐鎖を有する有機基を含み、スターポリマーを形成することができるものである限り特に制限はないが、例えば、鎖状式又は環式脂肪族化合物、芳香族化合物、複素環化合物等が挙げられ、3以上の分岐鎖を有する有機基を含むものや、ベンゼン環骨格を有するものや、炭素原子が好ましい。具体的に、コア部としては、式(XVII)
で表される構造のコア部や、式(III)で表される構造を有するコア部を挙げることができる。式(III)中、Fは、(CH2)q又はp−フェニレン基を表し、qは、0〜3のいずれかの整数を表す。その他、多数のベンゼン環を骨格に有する構造として、例えば、J.Am.chem.Soc.,Vol.118,No.37,8647,1996に記載のものを例示することができる。
具体的に、式(III)で表される構造を含むコア部としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
より具体的に、本発明におけるスターポリマーとしては、例えば、式(IV)で表される構造を有するスターポリマー、式(V)で表される構造を有するスターポリマー、式(II)で表される構造を有するスターポリマー等を好ましく例示することができ、その他、上記コア部の最外殻のベンゼン環にこれらと同様のアーム部を備えたスターポリマーを挙げることができる。
式(IV)中、Gは、構成単位(I)を有する重合体を含むアーム部を表し、R4は、C1〜C6のアルキル基を表し、t1は、2〜6の整数を表す。
式(V)中、Fは、(CH2)q又はp−フェニレン基を表し、qは0〜3の整数を表し、Gは構成単位(I)を有する重合体を含むアーム部を表し、n1〜n4は、それぞれ独立して0〜5のいずれかの整数であって、その和は3以上である。R5はC1〜C6のアルキル基を表す。
式(II)中、コア部Aは3以上の分岐鎖を有する有機基を表す。
式(II)中、Xa、Xbは、それぞれ独立して、周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表す。周期表第14〜16族の原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子、硫黄原子、ゲルマニウム原子、砒素原子、セレン原子、スズ原子、アンチモン原子、テルル原子、鉛原子等が挙げられ、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。
周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基の具体例としては、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−NH−、−Nr1−(式中、r1は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等のC1〜C6アルキル基等を表す。)、−NH−C(=O)−、−NH−C(=S)−、−O−C(=O)−NH−、式:−O−C(=O)−Cr2(CH2O−)2で表される基(r2は水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等のC1〜C6アルキル基;等を表す。以下、同様である。)、等が挙げられる。これらの中でも、入手が容易で、狭分散で多分岐のスターポリマーが得られること等から、−O−、−C(=O)−O−、−NH−が好ましい。
また、XaやXbにおける、周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基は、
(イ)3価以上の多価アルコール化合物に、2,2−ジメチロールプロピオン酸(Bis−MPA)等の2個以上の水酸機を有するヒドロキシカルボン酸(又はヒドロキシカルボン酸ハライド)を反応させ、得られた反応生成物の水酸基に、同様の2個以上の水酸基を有するヒドロキシカルボン酸(又はヒドロキシカルボン酸ハライド)を反応させることを、1〜200回繰り返すことにより得られるデンドリマー型の高分子から得られる基(末端部に−O−基を有するデンドリマー型の高分子基)、
(ロ)アンモニアに、(メタ)アクリル酸エステル(又は(メタ)アクリル酸ハライド若しくは(メタ)アクリル酸)を反応させ、次いで、エチレンジアミンを反応させ、得られる反応生成物に(メタ)アクリル酸エステル(又は(メタ)アクリル酸ハライド若しくは(メタ)アクリル酸)を反応させ、さらにエチレンジアミンを反応させることを1〜100回繰り返して得られる網目状構造の高分子から得られる基(末端部に−NH−基を有する網目状構造の高分子基)、又は、
(ハ)易動性水素を持つハロゲン化フェニル誘導体をモノマーとして、遷移金属触媒により脱ハロゲン化水素して選択的に重縮合することにより得られる、頭−尾結合の星型全共役ポリフェニレンビニレン、頭−尾結合の星型全共役ポリフェニレンエチニレン化合物から得られる基(末端部に−O−基を有する高分子基)、であってもよい。
式(II)中、Qは、構成単位(I)を有する重合体を含むアーム部を表し、m2が2以上のとき、複数のQ同士は同一でも相異なっていてもよい。
式(II)中、Yは、活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基を表す。ここで、「活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基」とは、ハロゲン原子が結合したとするならば、そのハロゲン原子は活性ハロゲン原子となるような構造を有する反応性を有する原子団をいう。
本発明の多分岐ポリマーにおいては、前記Yの活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基が、下記の式(XVIII)又は式(XIX)のいずれかであるのが好ましい。
式(XVIII)中、T1は2価の電子吸引性基を表し、R38は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基又はアシル基を表し、R39は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基又はアシル基を表す。
式(XVIII)中、「・」は、ハロゲン原子の置換位置を示す。
前記式(XIX)中、R40は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基又はアシル基を表し、R41は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基又はアシル基を表す。
式(XIX)中、「・」は、ハロゲン原子の置換位置を示す。
前記式(XVIII)中のT1としては、式(t11)又は(t21)で表される基であることがより好ましく、式(t11)で表される基であることがさらに好ましい。
上記式(t11)中、Z11は、酸素原子、硫黄原子、又はNr71(r71は、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、アルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいフェニルカルボニル基、アルキルスルホニル基もしくは置換基を有していてもよいフェニルスルホニル基を表す。)で表される基を表す。
式(II)中、R3は、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の置換されていてもよいアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基等のC1〜C6アルコキシル基;を表す。
n2は0又は1以上の整数を表し、n2が2以上のとき、Xb同士は同一でも相異なっていてもよい。
m2は、1から前記Aの有する分岐鎖の数のいずれかの整数を表し、m1は前記Aの有する分岐鎖の数を表し、n1は0又は1以上の整数を表す。
m2が2以上のとき、式:−(Xa)n1−Y−Qで表される基同士は同一でも相異なっていてもよく、n1が2以上のとき、Xa同士は同一でも相異なっていてもよく、(m1−m2)が2以上のとき、式:−(Xb)n2−R3で表される基同士は同一でも相異なっていてもよい。
本発明におけるスターポリマーのアーム部としては、構成単位(I)を有する重合体を含んでいる限り特に制限されないが、式(VI)で表されるポリマー鎖からなるアーム部や、式(VII)で表されるポリマー鎖からなるアーム部等を好ましく例示することができる。
式(VI)中、(C)は、構成単位(I)を有する重合体を含むポリマー鎖を表し、X1は、ハロゲン原子を表す。Z1は、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表し、かかる一つの炭素原子を介して重合開始剤の一部が結合した基である。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。また、式(VI)中、(D)は、繰り返し単位(X)を有する重合体を含むポリマー鎖を表す。
式(X)中、R18〜R20は、それぞれ独立して、水素原子;又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭素数1〜10の炭化水素基;を表す。
R21は、アリール基又はヘテロアリール基を表し、具体的には、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のナフチル基、置換又は無置換のアントラセニル基等のアリール基、2−ピリジル基、4−ピリジル基等のヘテロアリール基を挙げることができ、これらの中でも、アリール基が好ましく、特に、フェニル基、p−(1−エトキシエトキシ)フェニル基、p−tert−ブトキシフェニル基が好ましい。
また、R18〜R21は、適当な炭素原子上に置換基を有していてもよい。かかる置換基の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭化水素基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;シアノ基;ニトロ基;メトキシ基、フェノキシ基等の炭化水素オキシ基;メチルチオ基等のアルキルチオ基;メチルスルフィニル基等のアルキルスルフィニル基;メチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;アミノ基、ジメチルアミノ基等の置換されていてもよいアミノ基;アニリノ基;等を挙げることができる。
繰り返し単位(X)の具体例を、繰り返し単位(X)に誘導される単量体で以下に例示する。
スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブトキシスチレン、m−t−ブトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、1−ビニルナフタレン、9−ビニルアントラセン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等。
繰り返し単位(X)は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
式(VII)中、(C)は、構成単位(I)を有する重合体を含むポリマー鎖を表し、(D)は、繰り返し単位(X)を有する重合体を含むポリマー鎖を表し、X3は、ハロゲン原子を表し、R6、R7は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。Z2は、少なくとも一つの炭素原子を有する基を表し、かかる一つの炭素原子を介して重合開始剤の一部が結合した基である。kは、1以上のいずれかの整数を表し、例えば、1〜300のいずれかの整数を挙げることができる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。炭素数1〜10の炭化水素基としては、後述の構成単位(VIII)におけるものと同様のものを挙げることができる。
式(VI)及び式(VII)の(D)中の繰り返し単位(X)を有する重合体における、繰り返し単位(X)の繰り返し数は特に制限されないが、20〜300のいずれかの整数であることが好ましく、30〜150のいずれかの整数がより好ましい。
本発明における構成単位(I)を有する重合体は、式(VIII)で表される繰り返し単位(VIII)を有する重合体でなくてもよいが、繰り返し単位(VIII)を有する重合体であることが好ましい。
ここで、式(VIII)中、R8〜R10は、それぞれ独立して、水素原子;又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭素数1〜10の炭化水素基;を表す。また、R8とR10は結合して環を形成してもよい。R11a及びR12bは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。
R13は、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、フェニル基、置換フェニル基、ナフチル基等の炭化水素基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基;トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基等のシリル基;を表す。
また、R8〜R10及びR13の炭化水素基、並びにR11a及びR12bのメチル基は、適当な炭素原子上に置換基を有していてもよい。かかる置換基の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭化水素基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;シアノ基;ニトロ基;メトキシ基、フェノキシ基等の炭化水素オキシ基;メチルチオ基等のアルキルチオ基;メチルスルフィニル基等のアルキルスルフィニル基;メチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;アミノ基、ジメチルアミノ基等の置換されていてもよいアミノ基;アニリノ基;等を挙げることができる。
mは1〜100のいずれかの整数を表し、好ましくは2〜100、より好ましくは5〜100、さらに好ましくは10〜100である。また、各繰り返し単位におけるmの値は、同一であっても相異なっていてもよい。
各繰り返し単位において、式:−CH(R11b)−CH(R12a)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。繰り返し単位(VIII)は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
繰り返し単位(VIII)の具体例を、繰り返し単位(VIII)に誘導される単量体で以下に例示する。
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(エチレングリコールの単位数は2〜100)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの単位数は2〜100)(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、「ブレンマーPMEシリーズ」〔式(II)においてR8=R9=水素原子、R10=メチル基、m=2〜90に相当する単量体〕(日本油脂(株)製)、アセチルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンゾイルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチルシリルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−ブチルジメチチルシリルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールシクロヘキセン−1−カルボキシレート、メトキシポリエチレングリコール−シンナメート。
これらの化合物は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明における、繰り返し単位(VIII)を有する重合体の中では、繰り返し単位(VIII)からなるブロック鎖a、及び繰り返し単位(IX)からなるブロック鎖Cを、C−a−Cの配置順序で有する共重合体;繰り返し単位(VIII)からなるブロック鎖a、及び繰り返し単位(X)からなるブロック鎖Bを、B−a−Bの配置順序で有する共重合体; 繰り返し単位(VIII)と繰り返し単位(IX)からなるブロック共重合体、及び、繰り返し単位(VIII)と繰り返し単位(IX)からなるランダム共重合体のいずれかからなるブロック鎖A、並びに繰り返し単位(X)からなるブロック鎖Bを、B−A−Bの配置順序で有する共重合体;繰り返し単位(VIII)からなるブロック鎖a、繰り返し単位(XI)からなるブロック鎖b及び繰り返し単位(X)からなるブロック鎖Bを、b−a−Bの配置順序で有する共重合体;及び、繰り返し単位(XII)と、非極性部位からなる繰り返し単位とからなる共重合体;からなる群から選ばれるいずれか1つ以上の共重合体が好ましい。
ここで、各ブロック鎖を特定の配置順序で有しているとは、特定の順である限り、各ブロック鎖が、直接結合していても、連結基、重合鎖等の他の構成単位をはさんで結合していてもよいことを意味する。各ブロック鎖を特定の配置順序で有している上述の共重合体のなかでも、各ブロック鎖が、特定の順で結合して配列している共重合体であることがより好ましい。この場合、結合しているとは、各ブロック鎖が直接結合している場合、酸素原子、アルキレン基等の低分子の連結基を介して結合している場合のいずれか1つ以上の場合を意味する。
式(IX)中、R14及びR16は、それぞれ独立して、水素原子;又は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭素数1〜10の炭化水素基;を表す。
R14とR16は結合して環を形成してもよい。
R15は、水素原子;炭素数1〜10の炭化水素基;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基等の炭化水素オキシ基;カルボキシル基;酸無水物基;アミノ基;エステル基;又は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基、及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機基;を表す。
R17は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基、及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機基を表す。
また、R14〜R17は、適当な炭素原子上に置換基を有していてもよい。かかる置換基の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭化水素基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;シアノ基;ニトロ基;メトキシ基、フェノキシ基等の炭化水素オキシ基;メチルチオ基等のアルキルチオ基;メチルスルフィニル基等のアルキルスルフィニル基;メチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;アミノ基、ジメチルアミノ基等の置換されていてもよいアミノ基;アニリノ基;等を挙げることができる。
繰り返し単位(VIII)と繰り返し単位(IX)からなるブロック共重合体、及び、繰り返し単位(VIII)と繰り返し単位(IX)からなるランダム共重合体のいずれかからなるブロック鎖A、並びに繰り返し単位(X)からなるブロック鎖Bを、B−A−Bの配置順序で有する共重合体における、ブロック鎖Aは、繰り返し単位(VIII)のモル数が、50〜95%の範囲であり、繰り返し単位(IX)のモル数が50〜5%の範囲の共重合体でなくてもよいが、繰り返し単位(VIII)のモル数が、50〜95%の範囲であり、繰り返し単位(IX)のモル数が50〜5%の範囲の共重合体であることが電極保護膜の強度の観点から好ましい。
繰り返し単位(VIII)と繰り返し単位(IX)からなるブロック共重合体、及び、繰り返し単位(VIII)と繰り返し単位(IX)からなるランダム共重合体のいずれかからなるブロック鎖A、並びに繰り返し単位(X)からなるブロック鎖Bを、B−A−Bの配置順序で有する共重合体においては、その共重合体中の総繰り返し単位モル数に対して、繰り返し単位(VIII)と繰り返し単位(IX)からなるブロック共重合体又はランダム共重合体からなるブロック鎖Aのモル数が10〜80%の範囲であり、繰り返し単位(X)のモル数が20〜90%の範囲の共重合体でなくてもよいが、その共重合体中の総繰り返し単位モル数に対して、繰り返し単位(VIII)と繰り返し単位(IX)からなるブロック共重合体又はランダム共重合体からなるブロック鎖Aのモル数が10〜80%の範囲であり、繰り返し単位(X)のモル数が20〜90%の範囲の共重合体であることが電極保護膜の強度の観点から好ましい。
繰り返し単位(XI)における式(XI)中、R22〜R24は、それぞれ独立して、水素原子;又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭素数1〜10の炭化水素基;を表す。
R25は、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;2−ピリジル基、4−ピリジル基等のヘテロアリール基;を表し、中でもアリール基が好ましい。
また、R22〜R25は、適当な炭素原子上に置換基を有していてもよい。そのような置換基として、前記R18〜R21の置換基として例示したものと同様のものを挙げることができる。
繰り返し単位(XI)は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
繰り返し単位(VIII)からなるブロック鎖a、繰り返し単位(XI)からなるブロック鎖b及び繰り返し単位(X)からなるブロック鎖Bを、b−a−Bの配置順序で有する共重合体は、その共重合体の総繰り返し単位モル数に対して、前記繰り返し単位(VIII)及び繰り返し単位(XI)の合計モル数の割合が10〜80%の範囲でないか、又は繰り返し単位(X)のモル数が20〜90%の範囲でなくてもよいが、前記繰り返し単位(VIII)及び繰り返し単位(XI)の合計モル数の割合が10〜80%の範囲であり、かつ繰り返し単位(X)のモル数が20〜90%の範囲であることが電極保護膜の強度の観点から好ましい。
また、繰り返し単位(VIII)からなるブロック鎖a、繰り返し単位(XI)からなるブロック鎖b及び繰り返し単位(X)からなるブロック鎖Bを、b−a−Bの配置順序で有する共重合体において、繰り返し単位(VIII)からなるブロック鎖aのモル数と、繰り返し単位(X)からなるブロック鎖Bのモル数及び繰り返し単位(XI)からなるブロック鎖bのモル数の合計との比が、1:30〜30:1の範囲内であることが好ましい。このような範囲内であると、強度がより優れた電極保護膜が得られる。
繰り返し単位(XII)と、非極性部位からなる繰り返し単位とからなる共重合体における、式(XII)中、R26は、水素原子;又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭素数1〜10の炭化水素基;を表す。また、前記R26の炭化水素基は、適当な炭素原子上に置換基を有していてもよい。かかる置換基の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭化水素基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;シアノ基;ニトロ基;メトキシ基、フェノキシ基等の炭化水素オキシ基;メチルチオ基等のアルキルチオ基;メチルスルフィニル基等のアルキルスルフィニル基;メチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;アミノ基、ジメチルアミノ基等の置換されていてもよいアミノ基;アニリノ基;等を挙げることができる。
R27は、末端に活性ハロゲン原子を有することのできる官能基を表す。iは、1以上の整数を表し、iが2以上の場合、R27同士は、同一または相異なっていてもよい。hは1〜3のいずれかの整数を表し、hが2以上の場合、式:−(R27)i−Sで表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。
R27は、末端に活性ハロゲン原子を有することのできる官能基であれば特に制限されないが、中でも、式(XIV)で表される官能基が好ましく挙げられる。式(XIV)中、R33及びR34は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭素数1〜10の炭化水素基;又は、他の繰り返し単位との結合手を表す。R33、R34が、同時に他の繰り返し単位との結合手となることはない。また、前記R33及びR34の炭化水素基は、適当な炭素原子上に置換基を有していてもよい。かかる置換基の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭化水素基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;シアノ基;ニトロ基;メトキシ基、フェノキシ基等の炭化水素オキシ基;メチルチオ基等のアルキルチオ基;メチルスルフィニル基等のアルキルスルフィニル基;メチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;アミノ基、ジメチルアミノ基等の置換されていてもよいアミノ基;アニリノ基;等を挙げることができる。
R28は、ハロゲン原子、又は有機基を表す。有機基としては特に制限はないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭化水素基などが好ましく挙げられる。
jは0又は1〜(4−h)のいずれかの整数を表し、jが2以上の場合、R28同士は、同一又は相異なっていてもよい。
Sは、上記式(XIII)で表される繰り返し単位(XIII)を有する重合体である。式(XIII)中、R29は、それぞれ独立して、水素原子;又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭素数1〜10の炭化水素基;を表す。
R30a及びR31bは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
R32は、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、フェニル基、置換フェニル基、ナフチル基等の炭化水素基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基;トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基等のシリル基;ジメチルホスホリル基、ジフェニルホスホリル基等のホスホリル基;メチルスルホニル基、フェニルスルホニル基等のスルホニル基を表す。
dは1〜1000のいずれかの整数を表し、dが2以上の場合には、R29同士、及び、式:−(−CH(R30a)−CH(R31b)−O−)m−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。
また、mは、1〜100のいずれかの整数を表し、mが2以上の場合には、式:−CH(R30a)−CH(R31b)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。
また、R29の炭化水素基は、適当な炭素原子上に置換基を有していてもよい。そのような置換基として、前記R18〜R20の置換基として例示したものと同様のものを挙げることができる。
繰り返し単位(XII)と、非極性部位からなる繰り返し単位とからなる共重合体における、非極性部位からなる繰り返し単位は、非極性部位からなる繰り返し単位であれば特に制限されないが、繰り返し単位(XV)であることが好ましい。
式(XV)中、R35は、水素原子;又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭素数1〜10の炭化水素基;を表す。
R36は、置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、より好ましくは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。そのような置換基としては、特に制限はないが、前記R18〜R21の置換基として例示したものと同様のものが好ましく挙げられる。
繰り返し単位(XV)は、繰り返し単位(XVI)でなくてもよいが、繰り返し単位(XVI)であることが好ましい。式(XVI)中、R37は、水素原子又はメチル基を表す。
繰り返し単位(XII)と、非極性部位からなる繰り返し単位とからなる共重合体は、繰り返し単位(XII)と、非極性部位からなる繰り返し単位とがブロック共重合していなくてもよいが、保護膜の強度の観点から、ブロック共重合していることが好ましい。
また、繰り返し単位(XII)と、非極性部位からなる繰り返し単位とを有する共重合体は、繰り返し単位(XII)からなるブロック鎖(A)と、同一でも相異なっていてもよい非極性部位からなる繰り返し単位からなるブロック鎖(B)及び(C)を、(B)−(A)−(C)の配置順序で有する共重合体でなくてもよいが、繰り返し単位(XII)からなるブロック鎖(A)と、同一でも相異なっていてもよい非極性部位からなる繰り返し単位からなるブロック鎖(B)及び(C)を、(B)−(A)−(C)の配置順序で有する共重合体であることが、電極保護膜の強度の観点から好ましく、ブロック鎖(A)とブロック鎖(B)とブロック鎖(C)とが(B)−(A)−(C)の順序で結合して配列してなる共重合体であることがより好ましい。
また、繰り返し単位(XII)と、非極性部位からなる繰り返し単位とからなる共重合体においては、繰り返し単位(XII)、繰り返し単位(XIII)、及び非極性部位からなる繰り返し単位の総モル数に対して、繰り返し単位(XII)のモル数が、0.001〜50%の範囲であり、繰り返し単位(XIII)のモル数が、9.999〜80%の範囲であり、非極性部位からなる繰り返し単位のモル数が、19.999〜90%の範囲であることが、電極保護膜の強度の観点から好ましい。
本発明における繰り返し単位(IX)は特に制限されないが、中でも、繰り返し単位(IX-I)、繰り返し単位(IX-II)、繰り返し単位(IX-III)、及び繰り返し単位(IX-IV)を好ましく例示することができる。
式(IX-I)中、R140〜R160は、それぞれ独立して、水素原子;又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭素数1〜10の炭化水素基;を表す。
R140とR160は結合して環を形成してもよい。
R170は炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜10の2価芳香族炭化水素基、炭素数3〜10の2価脂環式炭化水素基、又はこれらを複合した2価有機基を表す。
また、R140〜R160及びR170は、適当な炭素原子上に置換基を有していてもよい。置換基の具体例としては、フッ素原子、クロル原子、又はブロム原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭化水素基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;ニトリル基;ニトロ基;メトキシ基、フェノキシ基等の炭化水素オキシ基;メチルチオ基;メチルスルフィニル基;メチルスルホニル基;アミノ基、ジメチルアミノ基等の置換基を有していてもよいアミノ基;アニリノ基;等を挙げることができる。
式(IX-I)で表される繰り返し単位(IX-I)の具体例を、繰り返し単位(IX-I)に誘導される単量体で以下に例示する。これらの化合物は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
前記式(IX-II)中、R140〜R160は、式(IX-I)で表される繰り返し単位(IX-I)のR140〜R160と同様である。pは1〜3のいずれかの整数を表す。水酸基の置換位置は特に限定されない。
式(IX-II)で表される繰り返し単位(IX-II)の具体例を、繰り返し単位(IX-II)に誘導される単量体で以下に例示する。これらの化合物は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
前記式(IX-III)中、R140〜R160は、繰り返し単位(IX-I)のR140〜R160と同様である。R180は、繰り返し単位(IX-I)のR170と同様である。R190は、水素原子;又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;を表す。
R190は、適当な炭素原子上に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、前記R140〜R160の置換基として例示したものと同様のものを挙げることができる。
繰り返し単位(IX-III)の具体例を、繰り返し単位(IX-III)に誘導される単量体で以下に例示する。これらの化合物は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
式(IX-IV)中、R140〜R160は、それぞれ独立して、水素原子;又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の炭素数1〜10の炭化水素基;を表す。また、R140とR160は結合して環を形成してもよい。
R200は、水素原子、又は下記式(IX-V)で表される官能基を表す。
式(IX-V)中、R210メチレン基、エチレン基、1−メチルエチレン基、プロピレン基等の炭素数1〜6のアルキレン基;フェニレン基、ナフチレン基等の炭素数6〜10の2価芳香族炭化水素基;シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロへキシレン基、アダマンタンジイル基等の炭素数3〜10の2価脂環式炭化水素基;アルキレン基、2価芳香族炭化水素基、2価脂環式炭化水素基を2以上複合した2価の有機基;を表す。
また、式(IX-IV)中のR140〜R160及びR200、並びに式(IX-V)中のR210は、適当な炭素原子上に置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、式(IX-I)中のR140〜R160の置換基として例示したものと同様のものを挙げることができる。
繰り返し単位(IX-IV)の具体例を、繰り返し単位(IX-IV)に誘導される単量体で以下に例示する。これらの化合物は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
繰り返し単位(IX-I)〜(IX-IV)以外の繰り返し単位(IX)を、繰り返し単位(IX)に誘導される単量体で以下に例示する。これらの化合物は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明における重合体が、繰り返し単位(VIII)を含む場合、その繰り返し単位(VIII)の重合度は、特に制限されないが、ミクロ相分離構造を形成する上では、5以上であることが好ましい。
本発明における重合体が、繰り返し単位(IX)を含む場合、その繰り返し単位(IX)の重合度は、特に制限されないが、ミクロ相分離構造を形成する上では、5以上であることが好ましい。
本発明における重合体が、繰り返し単位(X)を含む場合、その繰り返し単位(X)の重合度は、特に制限されないが、ミクロ相分離構造を形成する上では、5以上であることが好ましい。
本発明における重合体が、非極性部位からなる繰り返し単位を含む場合、その非極性部位からなる繰り返し単位の重合度は、特に制限されないが、ミクロ相分離構造を形成する上では、5以上であることが好ましい。
本発明における重合体が、上記繰り返し単位(XII)を含む場合、その繰り返し単位(XII)の重合度は、特に制限されないが、ミクロ相分離構造を形成する上では、3以上であることが好ましい。
本発明における重合体が、上記繰り返し単位(XIII)を含む場合、その繰り返し単位(XIII)の重合度は、特に制限されないが、ミクロ相分離構造を形成する上では、5以上であることが好ましい。
また、本発明における重合体中の構成単位(I)の含有量は特に制限されないが、電極保護膜の強度の観点から、本発明における重合体中40〜80重量%含まれていることが好ましい。
本発明における重合体の数平均分子量は、特に制限されないが、5000〜1000000の範囲が、保護膜の強度の観点から好ましい。また、本発明におけるスターポリマーの数平均分子量(Mn)としては、例えば、50000〜1000000程度である。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)としては、例えば、1.01〜1.50であることが好ましい。
また、本発明における重合体やスターポリマーは、ミクロ相分離構造を有していることが好ましく、ネットワーク型ミクロ相分離構造を有していることが特に好ましい。この様な構造を有することで、イオン導電性、物理的特性、熱的特性、特に強度を改善することができる。本発明における「ミクロ相分離構造」には、シリンダー、ラメラ、球状といった構造が含まれ、ポリマーの一次構造、分子量、分子量分布等の条件により適宜安定な相分離構造をとり得る。
以上のような重合体又はスターポリマーを含有した本発明の電極保護膜は、さらに金属塩を含有することが好ましい。重合体やスターポリマーと共に金属塩を含有させることにより、導電率の向上を図ることができると共に、保護膜の強度をさらに向上させることができる。保護膜の強度が向上する理由としては、金属塩が、構成単位(I)の酸素原子等に配位して擬似架橋を形成する結果、重合体の架橋密度が増加することが考えられる。
金属塩を含有させる方法としては、例えば、本発明における重合体又はスターポリマーと金属塩とを溶媒中で混合し均一にする方法の他、重合体又はスターポリマーを金属塩を含む溶液に接触させることなども含まれる。なお、溶媒は、重合体又はスターポリマーが溶解するものであれば特に制限はないが、極性溶媒が好ましく、例えば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、クロロホルム、N−メチルピロリドン、メタノール等を挙げることができる。
金属塩としては、特に制限されないが、電解質塩であることが好ましい。電解質塩としては、アルカリ金属塩、(CH3)4NBF6等の4級アンモニウム塩、(CH3)4PBF6等の4級ホスホニウム塩、AgClO4等の遷移金属塩、あるいは塩酸、過塩素酸、ホウフッ化水素酸等のプロトン酸が挙げられ、アルカリ金属塩、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩又は遷移金属塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましい。金属塩は、複数種を併用してもよい。
アルカリ金属塩の具体例としては、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiC(CH3)(CF3SO2)2、LiCH(CF3SO2)2、LiCH2(CF3SO2)、LiC2F5SO3、LiN(C2F5SO2)2、LiB(CF3SO2)2、LiPF6、LiClO4、LiI、LiBF4、LiSCN、LiAsF6、NaCF3SO3、NaPF6、NaClO4、NaI、NaBF4、NaAsF6、KCF3SO3、KPF6、KI、LiCF3CO3、NaClO3、NaSCN、KBF4、Mg(ClO4)2、Mg(BF4)2等が挙げられ、リチウム塩が特に好ましい。
金属塩は、重合体又はスターポリマーにおける構成単位(I)に対して、0.005〜80モル%の範囲で含有させることが好ましく、0.01〜30モル%の範囲で含有させることがより好ましい。この範囲で含有させることにより、金属塩を均一に分散させることができ、強度がより均一な電極保護膜を得ることができる。
本発明におけるスターポリマーの製造方法としては、特に制限されないが、例えば、アーム部となるアニオン重合活性末端を有する重合体と、コア部となる化合物とを反応させることにより製造することができる。すなわち、アーム部となる重合体(以下、「アーム重合体」という)の合成反応終了後、反応液中へさらにコア部となる化合物を添加することにより行うことができる。また、合成したアーム重合体を、コア部となる化合物の溶液中に添加することもできる。
この反応は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、有機溶媒中において−100℃〜50℃、好ましくは−70℃〜40℃の温度で重合反応を行うことができ、これにより構造が制御され、且つ分子量分布の狭い重合体を得ることができる。また、かかるスターポリマーの生成反応は、アーム重合体を形成させるのに用いた溶媒中で連続して行うこともできる他、溶媒を添加して組成を変更して、又は溶媒を別の溶媒に置換して行うこともできる。かかる溶媒としては、アーム重合体の合成反応に用いられる溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
このようなスターポリマーの製造方法においては、コア部となる化合物として、2以上のエステル基を有する化合物を用いることが好ましく、これにより、1つのエステル基に対してアニオン重合活性末端が2度攻撃することから、1つのエステル基に対して2つのアームを形成することができ、狭分散のスターポリマーを簡易かつ確実に得ることができる。2以上のエステル基を有する化合物とアニオン重合活性末端を有する重合体の添加割合としては、アニオン重合活性末端を有する重合体の活性末端(o)が2以上のエステル基を有する化合物のエステル基の数(r)の2倍量となるように予め計算して添加してもよく、また、(o)が(r)の2倍量を超える過剰量となるように添加してもよい。
2以上のエステル基を有する化合物としては、鎖状式又は環式脂肪族化合物、芳香族化合物、複素環化合物等特に制限されるものではなく、芳香族化合物、芳香族炭化水素基等のベンゼン環を骨格に有する化合物であることが好ましい。具体的に、例えば、式(XX)で表される化合物や、式(XXI)で表される化合物を挙げることができる。
式(XX)中、R42は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、tは、2〜6のいずれかの整数を表す。式(XXI)中、R43〜R46は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基を表し、e43〜e46は、それぞれ独立して、1〜5のいずれかの整数を表し、Fは、(CH2)q又はp−フェニレン基を表し、qは、0〜3のいずれかの整数を表す。
アーム部となるアニオン重合活性末端を有する重合体の合成方法としては、モノマー(混合)溶液中に、アニオン重合開始剤を滴下する方法や、アニオン重合開始剤を含む溶液にモノマー(混合)液を滴下する方法のいずれの方法でも行うことができるが、分子量及び分子量分布を制御することができることから、アニオン重合開始剤を含む溶液にモノマー(混合)液を滴下する方法が好ましい。このアーム重合体の合成反応は、通常、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、有機溶媒中において、−100〜50℃、好ましくは−100〜40℃の範囲の温度下で行われる。
具体的に、アーム部となるアニオン重合活性末端を有する重合体の合成方法としては、例えば、構成単位(I)を有する繰り返し単位を誘導可能な化合物を用いて、該繰り返し単位を有する重合体であって、アニオン重合活性末端を有する重合体を製造する方法や、繰り返し単位(VIII)を誘導可能な化合物を用いて、該繰り返し単位を有する重合体であって、アニオン重合活性末端を有する重合体を製造する方法や、繰り返し単位(VIII)を誘導可能な化合物及び繰り返し単位(IX)を誘導可能な化合物の混合物を用いて、繰り返し単位(VIII)からなるブロック鎖a、及び繰り返し単位(IX)からなるブロック鎖Cを、C−a−Cの配置順序で有する共重合体であって、アニオン重合活性末端を有する共重合体を製造する方法や、繰り返し単位(VIII)を誘導可能な化合物及び繰り返し単位(X)を誘導可能な化合物の混合物を用いて、繰り返し単位(VIII)からなるブロック鎖a、及び繰り返し単位(X)からなるブロック鎖Bを、B−a−Bの配置順序で有する共重合体であって、アニオン重合活性末端を有する共重合体を製造する方法や、繰り返し単位(VIII)を誘導可能な化合物、繰り返し単位(IX)を誘導可能な化合物、及び繰り返し単位(X)を誘導可能な化合物の混合物を用いて、繰り返し単位(VIII)と繰り返し単位(IX)からなるブロック共重合体、及び、繰り返し単位(VIII)と繰り返し単位(IX)からなるランダム共重合体のいずれかからなるブロック鎖A、並びに繰り返し単位(X)からなるブロック鎖Bを、B−A−Bの配置順序で有する共重合体であって、アニオン重合活性末端を有する共重合体を製造する方法や、繰り返し単位(VIII)を誘導可能な化合物、繰り返し単位(XI)を誘導可能な化合物、及び繰り返し単位(X)を誘導可能な化合物の混合物を用いて、繰り返し単位(VIII)からなるブロック鎖a、繰り返し単位(XI)からなるブロック鎖b及び繰り返し単位(X)からなるブロック鎖Bを、b−a−Bの配置順序で有する共重合体であって、アニオン重合活性末端を有する共重合体を製造する方法や、繰り返し単位(XII)を誘導可能な化合物及び非極性部位からなる繰り返し単位を誘導可能な化合物の混合物を用いて、繰り返し単位(XII)と、非極性部位からなる繰り返し単位とからなる共重合体であって、アニオン重合活性末端を有する共重合体を製造する方法を挙げることができる。
アーム重合体を製造する際に用いるアニオン重合開始剤としては、アルカリ金属又は有機アルカリ金属を例示することができ、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等を例示することができ、有機アルカリ金属としては、上記アルカリ金属のアルキル化物、アリル化物、アリール化物等を例示することができ、具体的には、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、エチルナトリウム、リチウムビフェニル、リチウムナフタレン、リチウムトリフェニル、ナトリウムナフタレン、α-メチルスチレンナトリウムジアニオン、1,1-ジフェニルヘキシルリチウム、1,1-ジフェニル-3-メチルペンチルリチウム等を挙げることができる。
アーム重合体を製造する際に用いる有機溶媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類の他、アニソール、ヘキサメチルホスホルアミド等のアニオン重合において通常使用される有機溶媒を挙げることができ、これらは一種単独溶媒又は二種以上の混合溶媒として使用することができる。これらのうち、極性及び溶解性の観点から、テトラヒドロフランとトルエン、テトラヒドロフランとヘキサン、テトラヒドロフランとメチルシクロヘキサンの混合溶媒を好ましく例示することができる。
また、アーム部となるアニオン重合活性末端を有する重合体は、例えば、式(XXII)で表される化合物(XXII)を重合開始化合物として製造することができる。
式(XXII)中、W及びW’は、それぞれ独立して、重合を阻害せずに水酸基又はハロゲン原子に置換し得る官能基を表す。具体的には、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、ジメチルフェニルシリルオキシ基等のシリルオキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基が挙げられ、反応の容易さから、特にシリルオキシ基が好ましい。
すなわち、まず、アニオン重合開始剤によって、化合物(XXII)を重合開始種を有する化合物とし、次いで、該重合活性種を有する化合物に、繰り返し単位(X)を誘導可能な化合物等を加えてアニオン重合を行い、さらに、コア部となる化合物を反応させて、化合物(XXII)が最外殻となるようなスターポリマー(以下、スターポリマーAという。)を製造した後、化合物(XXII)のW及びW’をハロゲン原子又はハロゲン原子を有する基に置換し(以下、化合物(XXII)のW及びW’をハロゲン原子又はハロゲン原子を有する基に置換した化合物を化合物(XXII’)という。)、さらに、構成単位(I)を有する繰り返し単位を誘導可能な化合物、繰り返し単位(VIII)を誘導可能な化合物、繰り返し単位(IX)を誘導可能な化合物、繰り返し単位(X)を誘導可能な化合物、繰り返し単位(XI)を誘導可能な化合物、繰り返し単位(XII)を誘導可能な化合物、及び/又は非極性部位からなる繰り返し単位を誘導可能な化合物等の重合可能なモノマーを加えて、重合(重合の容易さの観点から、より好ましくはリビングラジカル重合)を行うことにより、本発明におけるスターポリマーを製造することができる。
また、式(VII)で表されるポリマー鎖からなるアーム部を有するスターポリマーは、例えば、化合物(XXII)のW及びW’をハロゲン原子に置換した後、(メタ)アクリル酸系化合物をリビングラジカル重合し、さらに、構成単位(I)を有する繰り返し単位を誘導可能な化合物、繰り返し単位(VIII)を誘導可能な化合物、繰り返し単位(IX)を誘導可能な化合物、繰り返し単位(X)を誘導可能な化合物、繰り返し単位(XI)を誘導可能な化合物、繰り返し単位(XII)を誘導可能な化合物、及び/又は非極性部位からなる繰り返し単位を誘導可能な化合物等の重合可能なモノマー等をリビングラジカル重合させることにより製造することができる。
(メタ)アクリル酸系化合物としては、(メタ)アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−ピリジル等のアクリル酸エステル化合物;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸2−ピリジル等のメタクリル酸エステル化合物;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(エチレングリコールの単位数は2〜100)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの単位数は2〜100)(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、「ブレンマーPMEシリーズ;日本油脂(株)製」、アセチルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンゾイルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチルシリルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−ブチルジメチルシリルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールシクロヘキセン−1−カルボキシレート、メトキシポリエチレングリコール−シンナメート等を挙げることができ、これらは2種以上混合して用いることができる。
化合物(XXII’)を用いてリビングラジカル重合させる方法としては、例えば、(A)化合物(XXII’)を重合開始剤とし、遷移金属錯体を触媒として重合反応を行うリビングラジカル重合法や、(B)安定ラジカル系開始剤を用いるリビングラジカル重合法等が挙げられ、より効率よく目的とするスターポリマーを得ることができる観点から、(A)のリビングラジカル重合法が好ましい。
(A)のリビングラジカル重合法に用いる遷移金属錯体を構成する中心金属としては、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、銅等の周期律表第7〜11族元素(日本化学会編「化学便覧基礎編I改訂第4版」(1993年)記載の周期律表による)が好ましく挙げられる。なかでもルテニウムが好ましい。
これらの金属に配位して錯体を形成する配位子としては、特に限定されないが、例えば、リン系配位子、ハロゲン原子、一酸化炭素、水素原子、炭化水素系配位子、含酸素系配位子、他のカルコゲナイド、含窒素系配位子等が挙げられる。遷移金属錯体は、これらの配位子の二種以上を有していてもよい。
遷移金属錯体の好ましい具体例としては、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドロテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム;ジカルボニルシクロペンタジエニルヨウ化ルテニウム(II)、ジカルボニルシクロペンタジエニルヨウ化鉄(II)、カルボニルシクロペンタジエニルヨウ化ニッケル(II);(1−エトキシカルボニル−1−メチルエチル)メチルテルル、(1−シアノ−1−メチルエチル)メチルテルル、α−メチルベンジルメチルテルル、ベンジルメチルテルル、メチルベンゾイルテルル等のテルル錯体等が挙げられる。これらの遷移金属錯体は1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用できる。
リビングラジカル重合においては、さらに、前記遷移金属錯体に作用することによりラジカル重合を促進させる活性化剤を併用することもできる。かかる活性化剤としては、ルイス酸及び/又はアミン類を使用することができる。
ルイス酸の種類は特に制限されず、例えば、アルミニウム系ルイス酸、スカンジウム系ルイス酸、チタン系ルイス酸、ジルコニウム系ルイス酸、スズ系ルイス酸等を使用することができる。アミン類としては、2級アミン、3級アミン、含窒素芳香族複素環化合物等、含窒素化合物であれば、特に制限されないが、2級アミン、3級アミンが好ましい。これらのルイス酸及びアミン類は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。ルイス酸及び/又はアミン類の使用量は、遷移金属錯体1モルに対し、通常0.1〜20モル、好ましくは0.2〜10モルである。
(A)のリビングラジカル重合法によるスターポリマーの製造方法においては、前記化合物(XXII’)が、重合開始剤として働く。すなわち、前記化合物(XXII’)が有するW及びW’で表される官能基中の活性ハロゲン原子の結合箇所が、遷移金属錯体の作用でラジカル種となることにより、重合活性点となり、そこへ、リビングラジカル重合性不飽和結合を有する化合物が重合する。
リビングラジカル重合法によりアーム部を形成する方法としては、
(1)一種のリビングラジカル重合性不飽和結合を有する化合物を用いて、単独重合体からなるアーム部を形成する方法、
(2)複数のリビングラジカル重合性不飽和結合を有する化合物を反応系に同時に添加して、ランダム共重合体からなるアーム部を形成する方法、
(3)複数のリビングラジカル重合性不飽和結合を有する化合物を反応系へ逐次的に添加して、ブロック共重合体からなるアーム部を形成する方法、
(4)複数のリビングラジカル重合性不飽和結合を有する化合物の組成比を経時的に変化させて、グラジエント共重合体からなるアーム部を形成する方法、
等が挙げられる。
重合方法は特に制限されず、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、又は乳化重合法等が採用できるが、溶液重合が好ましい。
溶液重合法を採用する場合は、前記化合物(XXII’)、重合性不飽和結合を有する化合物、遷移金属錯体、所望によりルイス酸及び/又はアミン類を有機溶媒中で混合し、加温しながら撹拌することにより目的とするスターポリマーを得ることができる。
(B)のリビングラジカル重合法に用いる安定ラジカル系開始剤としては、安定フリーラジカル化合物とラジカル重合開始剤との混合物、又は各種アルコキシアミン類が挙げられる。
なお、スターポリマーではない、本発明における重合体についても、スターポリマーのアーム部に含まれる構成単位(I)を有する重合体を製造する場合と同様の方法により作製することができる。
重合反応の追跡及び重合反応終了の確認は、公知の分析手段、例えば、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、膜浸透圧法、NMR等により容易に行うことができる。
本発明の電極保護膜は、本発明の効果を妨げない限り、上記スターポリマーや金属塩の他に、任意成分を含んでいてもよい。そのような任意成分としては、架橋剤、フィラー、増感剤、貯蔵安定剤等を挙げることができる。増感剤としては、尿素、ニトリル化合物(N,N−ジ置換−P−アミノベンゾニトリル等)、燐化合物(トリ−n−ブチルホスフィン等)等が挙げられ、貯蔵安定剤としては、第4級アンモニウムクロライド、ベンゾチアゾール、ハイドロキノン等を挙げることができる。
架橋剤は、本発明におけるスターポリマーの繰り返し単位(IX)1モルに対して、0.01〜2モル用いることが好ましく、0.1〜1モル用いることがより好ましい。用いる架橋剤としては、特に制限されないが、分子内に2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネート化合物や分子内に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物、分子内に2個以上のアミノ基を有するポリアミン化合物、分子内に2個以上のアルデヒド基を有するポリアルデヒド化合物、又はイミダゾール化合物を挙げることができる。
本発明の電極保護膜形成溶液は、溶媒中に、構成単位(I)を有する重合体を含有するか、又は、分岐鎖を有する有機基を含むコア部と、構成単位(I)を有する重合体を含むアーム部とを有するスターポリマーを含有することを特徴とする。ここで、溶媒は、構成単位(I)を有する重合体、又は該スターポリマーを溶解し得るものであれば特に制限はないが、極性溶媒が好ましい。極性溶媒としては、極性を有するものであれば特に限定されないが、具体的には、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、クロロホルム、N−メチルピロリドン、メタノール、γ−ブチルラクトン、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジメトキシエタン、プロピオンカーボネート、又はこれらの混合溶媒等を例示することができる。
また、本発明の電極保護膜形成溶液は、本発明における電極保護膜の機能を阻害しない限り、上記の金属塩の他に任意成分をさらに含有していてもよい。そのような任意成分としては、架橋剤、フィラー、増感剤、貯蔵安定剤等を挙げることができる。増感剤としては、尿素、ニトリル化合物(N,N−ジ置換−P−アミノベンゾニトリル等)、燐化合物(トリ−n−ブチルホスフィン等)等が挙げられ、貯蔵安定剤としては、第4級アンモニウムクロライド、ベンゾチアゾール、ハイドロキノン等を挙げることができる。
本発明の電極保護膜形成溶液は、上述したように、構成単位(I)を有する重合体や該スターポリマーを溶媒中で製造すること等により製造することができる。なお、本発明の電極保護膜形成溶液には、便宜上、ゲル状等のものも含まれる。
本発明の電極は、少なくとも電極活物質、電解質塩、並びに、本発明の電極保護膜を構成要素として含む。また、電極が正極の場合に、さらに導電材を含むものが好ましい。
本発明の電極に用いる電極活物質は特に制限されず、従来公知の電極活物質を使用することができる。具体的には、金属リチウム、金属銀、金属亜鉛等の単体金属; Li−Al等の合金;黒鉛、カーボンブラック、フッ化グラファイト、ポリアセチレン、焼成、熱分解、CVD等によって得られる各種炭素系電極材;MnO2、CoO2、V2O5、V2O6、TiO2、WO2、Cr2O5、Cr3O8、CuO、Cu2V2O7、Bi2O3、Bi2PB2O5、Mo8O2、LiCoO2、LiNi0.2Co0.8O2、LiNi0.5Mn0.5O2、LiNi0.56Mn0.2Co0.24O22、LiNi0.6Co0.15Al0.05O2、LiMnO2、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiFePO4等の金属酸化物系電極材;TiS2、TiS3、MoS2、CuCo2S4、VSe2、NbSe2CrS2、NbSe3等のカルコゲン化物系電極材;Ag2CrO4、Ag2MoO4、AgIO3、Ag2P2O7等の酸素酸銀系電極材、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ−p−フェニレン等のπ−共役系高分子系電極材;等を例示することができる。また、金属酸化物系電極材の中でも、リチウム酸化物系電極材が好ましい。
本発明の電極に用いる電解質塩は、特に制限はないが、例えば、LiClO4、LiCF3SO3、LiBF4、LiPF4、LiAsF6、LiAlCl4、LiBr、LiSCN、LiI、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2、NaClO4、NaI、NaBF4、NaSCN、KPF6、KSCN等の各種ハロゲン化アルカリや、有機酸陰イオンをもつアルカリ金属塩を好ましく例示することができ、中でもリチウム塩を特に好ましく例示することができる。
本発明の電極に用いる導電材としては、特に限定されないが、具体的には、ケッチェンブラック、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、コークス粉末末、黒鉛等を例示することができ、中でも、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等を好ましく例示することができる。
電極用の支持体上に作成された電極活物質を含む層上に、電解質塩を含む溶液をキャスト又は塗布して乾燥した後、本発明の電極保護膜形成溶液をさらにその上にキャスト又は塗布・乾燥すること等により、本発明の電極保護膜を表面に有する本発明の電極を製造することができる。塗布する方法は特に制限されず、ロールコーター法、カーテンコーター法、スピンコート法、ディップ法、キャスト法等の方法を用いることができる。
なお、本発明の電極保護膜形成溶液のキャスト又は塗布後においては、常圧又は減圧留去、加熱乾燥等の方法で溶媒を除去する必要があるが、少なくとも溶媒が含んだ状態で加熱処理するのが好ましい。ここで溶媒を含んだ状態とは、溶媒が完全に除去される前の状態であり、キャスト、又は塗布した溶液中にしめる固形分に対して、10〜50重量%、好ましくは15〜30重量%の範囲で溶媒が残存している状態である。溶媒が残存した状態で加熱処理することにより、均一にミクロ相分離構造を形成することができる。加熱する温度は特に制限されないが、ガラス転移点温度付近又はそれ以上が好ましい。
以上のようにして得られる本発明の電極保護膜は、イオン伝導性膜として機能し、膜中で、ミクロ相分離構造を形成する。イオン伝導性膜中におけるミクロ相分離構造は、ネットワーク型ミクロ相分離構造であることが好ましい。膜中にこの様な構造を有することで、イオン導電性及び、物理的特性、熱的特性、特に電極保護膜の強度を改善することができる。
キャスト又は塗布する回数は、用いる溶液の固形分濃度にも関係するが、1コートで行うのが好ましい。塗布する方法は特に制限されないが、電解質塩が電極活物質を含む層に浸透するように、塗布後溶媒が残存する方法が好ましい。溶液をキャスト又は塗布後、常圧、又は減圧下に徐々に溶媒を留去するのが好ましい。
本発明の電極保護膜は、導電性を有するものが好ましい。
本発明の電極保護膜に含まれる重合体又はスターポリマーは、電解質塩と複合して導電性を示すポリマーが好ましく、さらに、電解質としても用い得るポリマーであることが好ましい。電解質として用いられるポリマーと、電極保護膜に用いる重合体又はスターポリマーとは、同一素子内において、同一でも相異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
以上のようにして、本発明の電極を、効率よく簡便に製造することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
(1)評価用電極の作成
(a)正極の作成
コバルト酸リチウム(LiCoO2, 日本化学工業社製、セルシードC-10、粒径10〜15μm)0.85gとケッチェンブラック(KB, ケッチェンブラックインターナショナル社製)0.07gをよく混合した後、フッ化ビニリデン樹脂(株式会社クレハ製、KFポリマー#1120L)を固形分換算で0.10g添加し、次に、脱水N-メチルピロリドン(NMP, 和光純薬社製)5mlを加えよく混合し、スラリー状の正極組成物を得た。
スラリー状の正極組成物を厚さ20μmのアルミ箔上に50μm厚のドクターブレードを用いて均一に塗布し、100℃, 15-16時間の真空乾燥を行い、20-30MPaで15分間のプレスを行うことによって正極を得た。
(b)負極の作成
天然黒鉛(中越黒鉛工業所社製、LF−18A)0.90gに、フッ化ビニリデン樹脂(株式会社クレハ製、KFポリマー#1120L)を固形分換算で0.10gを添加し、次に、脱水N-メチルピロリドン(NMP, 和光純薬社製)2mlを加えよく混合し、スラリー状の負極組成物を得た。
スラリー状の負極組成物を厚さ20μmの銅箔上に50μm厚のドクターブレードを用いて均一に塗布し、100℃, 15-16時間の真空乾燥を行い、20-30Mpaで15分間のプレスを行うことによって負極を得た。
(2)電極保護膜用のポリマー
(a)スターポリマーB
窒素置換した2000mLの四つ口フラスコに、脱水テトラヒドロフラン(以下、「THF」と略す)113g、脱水トルエン 1020g、ジ(m−t−ブチルジメチルシリルオキシメチルフェニル)エチレン(DPE−(m−OTBDMS)2)13.75g(29.3mmol)を加えて撹拌下反応系を−40℃に保持した。反応系にn−ブチルリチウム/ヘキサン1.6mol/L溶液(以下、「NBL」と略す)11.35g(26.7mmol)を加え、30分間撹拌した。その後、反応系にスチレン 200g(1920,3mmol)を加えて重合を行った。滴下が終了して20分後にサンプリングを行い、ガスクロマトグラフィー(以下、「GC」と略す)により重合完結を確認した。
このポリマーをゲルろ過クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す)により分析したところ、分子量Mn=9400、分散度Mw/Mn=1.049の単峰性ポリマーであった。
この反応系に脱水THF 25mlに溶解させた1,1,2,2テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)エタン 1.56g(2.5mmol)を添加し、30分間反応を継続した後、メタノールを用いて反応を停止させた。この重合溶液を大量のメタノール中に投じてポリマーを析出させ、ろ過・洗浄後、真空下50℃で5時間乾燥させることにより、白色粉末状のポリマー 205g(収率97%)を得た。
分取GPCを用いて、過剰量のアームポリマーを除去することにより、白色粉末状スターポリマーを得た。このスターポリマーをGPCにより分析したところ、分子量Mn=46800、分散度Mw/Mn=1.021の単峰性ポリマーであった。また、多角度光散乱検出器(以下、「GPC−MALLS」と略す)で測定したところ、分子量Mw=81100、分散度Mw/Mn=1.013であった。
窒素置換した2000mLフラスコに、脱水THF 1500ml、前述のスターポリマー(分子量Mn=81100、分散度Mw/Mn=1.013) 200g、テトラブチルアンモニウムフロリド 100ml(1.0M in THF)を加えて、室温下で一晩撹拌した。溶媒を半分まで濃縮し、この溶液を大量のメタノール中に投じてポリマーを析出させ、ろ過・洗浄後、真空下50℃で5時間乾燥させることにより、白色粉末状のスターポリマー(t−ブチルジメチルシリルオキシメチル基(OTBDMS基)がOH基に置換された)195g(収率98%)を得た。
窒素置換した2000mL四つ口フラスコに、脱水THF 1200ml、前述のOH基を有するスターポリマー 190g(2.3mmol)、トリエチルアミン 5.70g(56.3mmol)を加えて、撹拌下反応系を0℃に保持した。反応系にブロモイソブチリルプロミド 11.2g(48.7mmol)を徐々に加え、滴下終了後、室温に戻して一晩撹拌を行った。ろ過によりトリエチルアミン蓚酸塩を除去後、溶媒を半分まで濃縮し、この溶液を大量のメタノール中に投じてポリマーを析出させ、ろ過・洗浄した。得られたポリマーをTHF/メタノールで分別精製を行った後、大量のメタノールで再沈後、真空下50℃で5時間乾燥させることにより、白色粉末状のポリマー(OH基がブロモイソブチリルブチレート基(OBiB基)に置換された)140g(収率74%)を得た。
このポリマー溶液をGPCにより分析したところ、分子量Mn=45700、分散度Mw/Mn=1.026の単峰性ポリマーであった。また、GPC−MALLSで測定したところ、分子量Mw=82500、分散度Mw/Mn=1.020であった。
100mlフラスコに、上述のスターポリマー(分子量Mn=45700、分散度Mw/Mn=1.026)2.05g(0.025mmol)、PME-1000(後述の式(XXIII)で表される繰り返し単位からなる化合物)7.79g(7.00mmol)、メタクリル酸 2−ヒドロキシエチル(以下、「HEMA」と略す) 0.41g(3.15mmol)、トルエン 40gを仕込み、脱気した。ここで、PME-1000(以下、「PME」と略す)は、式(XXIII)
で表される繰り返し単位からなる化合物を表す。
前述の脱気した溶液に、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム 0.04g(0.04mmol)を加えて、均一に溶解した後、ジ−n−ブチルアミン 0.02g(0.16mmol)を加え、80℃に加温することにより重合反応を開始させた。
重合反応を開始して4時間後に、反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。NMRにより転化率を求めたところ、PMEは46%、HEMAは90%であった。反応液をカラムにかけ、金属錯体と未反応モノマーを除去した。溶媒を減圧濃縮し、脱水N-メチルピロリドン(以下、「NMP」と略す)を加え、10%NMP溶液に調製した。このようにして、PME:HEMA:Stが60:6:34wt%であるスターポリマーBを得た。また、スターポリマーB中のPEO(ポリエチレンオキサイド)の含量は54重量%であった。このスターポリマーBのGPC−MALLS分析を行ったところ、分子量Mw=241000であった。
リチウム塩としてLiPF6を、[Li]/[EO unit]=0.03となるようにスターポリマーBに添加することによって作製したポリマーのイオン導電率は、 8.9×10-5(30℃), 1.3×10-4(40℃), 2.2×10-4(50℃), 3.5×10-4(60℃)であった。
(b)ポリマーC
アルゴン雰囲気下において、PME-1000 90.0g(80.8mmol)、HEMA 10.0g(76.8mmol)、トルエン 300.0gをフラスコに取り、均一に混合後、脱気処理を行った。
この混合溶液に、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム 0.48g(0.5mmol)、ジ−n−ブチルアミン 0.26g(2.0mmol)を加え、さらに2,2−ジクロロアセトフェノン 0.19g(1.0mmol)を加え、撹拌下、80℃に加温して重合反応を開始させた。
重合反応を開始して45時間経過後、反応系の温度0℃に冷却して重合反応を停止させた。反応液のカラム精製を行って金属錯体と未反応モノマーを除去した。減圧下に揮発分を除去して得られた粘稠な残渣を60℃で5時間減圧乾燥した。
以上のようにして、PME-1000とHEMAとのランダム共重合体(以下、「P−(PME-1000/HEMA)」と称する)を得た。得られた共重合体のGPC−MALLS分析を行ったところ、分子量Mw=155000、分散度Mw/Mn=1.54であった。
アルゴン雰囲気下において先に合成したP−(PME-1000/HEMA) 28.0g(0.18mmol)、スチレン 84.0g(807mmol)、トルエン 110gをフラスコに採取し、均一に混合した。この混合溶液を脱気後、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム 0.06g(0.08mmol)、ジ−n−ブチルアミン 0.05g(0.37mmol)を加え、100℃に加温することにより重合反応を開始させた。
重合反応を開始して28時間後に反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。スチレンの重合率は19%であった。大量の冷ヘキサンで再沈し、得られたポリマーを30℃で20時間減圧乾燥した。
以上のようにして、(PME-1000/HEMA)とスチレンとのブロック共重合体(PME:HEMA:Stが59:7: 34 wt%)を得た。得られた共重合体のGPC−MALLS分析を行ったところ、分子量Mw=445000、分散度Mw/Mn=2.07であった。また、共重合体中の繰り返し単位総モル数に対するPME-1000の繰り返し単位モル数の比率が12%、HEMAの繰り返し単位モル数の比率が12%、スチレンの繰り返し単位モル数の比率が76%であった。
以上のようにして得られた重合体を「ポリマーC」とする。ポリマーC中のPEO(ポリエチレンオキサイド)の含量は54重量%であった。
リチウム塩としてLiPF6を、[Li]/[EO unit]=0.03となるようにポリマーCに添加することによって作製したポリマーのイオン導電率は、 2.0×10-5(30℃), 4.0×10-4(40℃), 7.6×10-4(50℃), 1.3×10-4(60℃)であった。
(c)ポリマーD
PME-1000 90.0g(80.8mmol)、HEMA 10.0g(76.8mmol)、トルエン 300.0gを用いる代わりに、PME-1000 180.0g(162mmol)、HEMA 20g(154mmol)、トルエン600gを用いたこと以外は、ポリマーCと同様にして、ポリマーD(PME:HEMA:Stが63:7:30 wt%)を製造した。ポリマーDについてGPC−MALLS分析を行ったところ、分子量Mw=396000、分散度Mw/Mn=1.87であった。また、ポリマーD中のPEO(ポリエチレンオキサイド)の含量は58重量%であった。
なお、リチウム塩としてLiPF6を、[Li]/[EO unit]=0.03となるようにポリマーDに添加することによって作製したポリマーのイオン導電率は、 3.6×10-5(30℃), 6.6×10-4(40℃), 1.2×10-4(50℃), 1.9×10-4(60℃)であった。
(d)フッ化ビニリデン樹脂
フッ化ビニリデン樹脂として、株式会社クレハ製のKFポリマー#1120Lを用意した。
(e)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂として、ジャパン エポキシ レジン株式会社製のエピコート828(2−エチル−4−メチル−イミダゾールを硬化触媒として使用)を用意した。
(3)電極保護膜の形成
(a)実施例1:上記スターポリマーB 1gを脱水テトラヒドロフラン(THF, 和光純薬社製)9g中に溶解させ均一にする。架橋剤TDI(トリレンジイソシアナート)をスターポリマーB溶液中に0.04g添加し30分攪拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をバーコーターNo.5でもって評価用電極上(正極、負極)に塗布し、80℃での加熱真空乾燥を5時間行うことによって、スターポリマー保護膜形成電極B(実施例1)を得た。
(b)実施例2:上記ポリマーC 1gを脱水テトラヒドロフラン(THF, 和光純薬社製)9g中に溶解させ均一にする。架橋剤TDI(トリレンジイソシアナート)をポリマー溶液中に0.04g添加し30分攪拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をバーコーターNo.5でもって評価用電極上(正極、負極)に塗布し、80℃での加熱真空乾燥を5時間行うことによって、ポリマー保護膜形成電極C(実施例2)を得た。
(c)実施例3:上記ポリマーD 1gを脱水テトラヒドロフラン(THF, 和光純薬社製)9g中に溶解させ均一にする。架橋剤TDI(トリレンジイソシアナート)をポリマー溶液中に0.04g添加し30分攪拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をバーコーターNo.5でもって評価用電極上(正極、負極)に塗布し、80℃での加熱真空乾燥を5時間行うことによって、ポリマー保護膜形成電極D(実施例3)を得た。
(d)比較例1:濃度が5wt%となるように、脱水N-メチルピロリドン(NMP)溶媒で調整した上記フッ化ビニリデン樹脂(PVdF樹脂)溶液をバーコーターNo.5でもって評価用電極上(正極、負極)に塗布し、120℃での加熱真空乾燥を5時間行うことによって、フッ化ビニリデン樹脂保護膜形成電極(比較例1)を得た。
(e)比較例2:上記エポキシ樹脂(エピコート828)1g を濃度が5wt%となるようテトラヒドロフラン(THF)を加えた。得られた溶液中に硬化触媒2−エチル−4−メチル−イミダゾールを0.01g添加し15分の攪拌の後、バーコーターNo.5でもって評価用電極上(正極、負極)に塗布し、140℃での加熱乾燥を3時間行うことによって、エポキシ樹脂保護膜形成電極(比較例2)を得た。
(f)スターポリマーB、ポリマーC〜Dをそれぞれ用いた実施例1〜実施例3の電極、及びフッ化ビニリデン樹脂(PVdF樹脂)を用いた比較例1の電極では、電極上に700〜800nmの均一な薄膜が形成されたが、エポキシ樹脂を用いた比較例2の電極では、均一な膜が形成されなかった。
(4)磨耗試験
ラビングテスター(太平理化工業(株)製)を用い、200gの荷重をかけて綿布で10回、実施例1〜3、比較例1〜2の電極上をそれぞれこすった。この磨耗試験によって、保護膜がとれて電極素地が露出するかを調べた。保護膜がとれて電極素地が露出すると、綿布に電極活物質が付くので、綿布に電極活物質が付くかどうかを判断基準とした。結果を表1に示す。
スターポリマーB、ポリマーC〜Dを用いた実施例1〜3の電極の保護膜は、フッ化ビニリデン樹脂(PVdF樹脂)を用いた比較例1の電極の保護膜や、エポキシ樹脂を用いた比較例2の電極の保護膜に比べて、電極上で良好な膜を形成し、かつ得られる膜は耐摩耗性に富むことがわかった。
(5)切断試験
実施例1〜3、比較例1〜2の保護膜形成電極、及び樹脂で保護していない電極(未保護電極:比較例3)をそれぞれ裁断し、その際にバリや活物質の脱落、電極面にヒビ等が生じるかを観察した。その結果を表2に示す。
正極においては、未保護電極において活物質の脱落が観察されたが、実施例1〜3、比較例1〜2の保護膜形成正極においてはどれも活物質のはく離は観察されず良好な結果を示した。他方、負極においては、比較例1〜2の保護膜形成負極、比較例3の未保護負極において、裁断時に電極面上でのヒビの発生や活物質のはく離が観察されたが、スターポリマーB、ポリマーC〜Dのいずれかを用いた実施例1〜3の保護膜形成負極においては、ビビやはく離が見られず良好な結果を示した。
(6)CV試験
保護膜を形成させても電極が良好に作動するかどうか、すなわち、保護膜が電池反応に悪影響を及ぼさないかどうかを調べるために、以下の条件でサイクリックボルタモグラム(CV)試験を行った。
CV試験条件
対極・参照極: リチウム金属
電解液: 1M LiPF6EC/DEC(1:1, vol/vol)、
測定電圧範囲, 掃引速度:
保護膜形成正極の場合:3.0〜4.3V, 掃引速度 10mV/min
保護膜形成負極の場合:0〜3.0V, 掃引速度 1mV/sec
測定温度: 23℃
(7)CV測定
比較例2のエポキシ樹脂保護電極におけるエポキシ樹脂保護膜は表面が均一ではないためCV測定を行わなかった。CV測定は、スターポリマーBを用いた実施例1の電極(正極・負極)、フッ化ビニリデン樹脂(PVdF樹脂)を用いた比較例1の電極(正極・負極)、及び比較例3の未保護の電極(正極・負極)について行った。ただし、比較例1の正極は、PVdF樹脂溶液を正極上にキャストした際に、PVdF樹脂溶液の溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)が、正極中のバインダーとして存在するPVdF樹脂を溶解させ、電極内構造を崩壊させる恐れがあるため、比較例1については負極のみの測定結果を示す。
正極のCV測定の結果を図1に、負極のCV測定の結果を図2に示す。
スターポリマーBを保護膜として用いた実施例1の正極と負極は共に、未保護電極(比較例3)のCV曲線にほぼ一致した(図1及び図2参照)。この結果から、実施例1の電極におけるスターポリマーB保護膜はイオン導電性を有し、そのため電極反応に抵抗として悪影響を与えず、電池中に存在しても問題ないことがわかった。それに対して、PVdF樹脂保護膜を形成させた比較例1の負極は、未保護負極に対してその電流値が低いことから、PVdF樹脂膜が大きな抵抗を与えている(図2参照)。よって、PVdF樹脂膜は電極保護膜として不適切であることがわかった。
以上の磨耗試験、切断試験、CV試験の結果から、実施例1の電極で用いられているスターポリマーBは、外部からの物理的な作用に対して電極保護し、かつ、電極の作動に悪影響を与えないことから、電極保護膜として有用であることが示された。