JP5221109B2 - 金属表面処理組成物 - Google Patents

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本発明は、従来のクロム酸塩処理及びりん酸塩処理に替わる、加工性、耐食性、上塗塗装性等に優れた皮膜を得ることのできる無公害型の金属表面処理組成物、該金属表面処理組成物を用いた金属板に関する。
従来、金属表面の耐食性を向上させるためクロム酸塩処理及びリン酸塩処理が一般に行われている。しかしながら近年クロムの毒性が社会問題になっている。クロム酸塩を使用する表面処理方法は、処理工程でのクロム酸塩ヒュ−ムの飛散の問題、排水処理設備に多大な費用を要すること、さらには化成処理皮膜からクロム酸の溶出による問題などがある。また6価クロム化合物は、IARC(International Agency for Research on Cancer Review)を初めとして多くの公的機関が人体に対する発癌性物質に指定しており、極めて有害な物質である。
またリン酸塩処理では、リン酸亜鉛系、リン酸鉄系の表面処理が通常行われているが、耐食性を付与する目的でリン酸塩処理後、通常クロム酸によるリンス処理を行うためクロム処理の問題とともにリン酸塩処理剤中の反応促進剤、金属イオンなどの排水処理、被処理金属からの金属イオンの溶出によるスラッジ処理などの問題がある。
クロム酸塩処理やリン酸亜鉛処理以外の処理方法としては、(1)重燐酸アルミニウムを含有する水溶液で処理した後、150〜550℃の温度で加熱する表面処理方法(特許文献1参照)、(2)タンニン酸を含有する水溶液で処理する方法(特許文献2参照)などが提案され、また、(3)亜硝酸ナトリウム、硼酸ナトリウム、イミダゾール、芳香族カルボン酸、界面活性剤等による処理方法もしくはこれらを組合せた処理方法が行われている。
しかしながら、(1)の方法は、この上に塗料を塗装する場合、塗料の付着性が十分でなく、また、(2)の方法は、耐食性が劣り、(3)の方法は、いずれも高温多湿の雰囲気に暴露された場合の耐食性が劣るという問題がある。
また、膜厚数μm以下の薄膜の皮膜を有する亜鉛系鋼板として、特許文献3、特許文献4、特許文献5などには、亜鉛系めっき鋼板を基材とし、これにクロメート皮膜を形成し、さらにこの上に最上層として有機複合シリケート皮膜を形成した防錆鋼板が知られており、このものは、加工性及び耐食性に優れた性能を有する。しかしながら、この防錆鋼板はクロメート皮膜を有するため、前記したと同様にクロメートイオンによる安全衛生面の問題があった。また、この防錆鋼板からクロメート皮膜を除いた鋼板では、いまだ耐食性が十分ではない。
特公昭53−28857号公報 特開昭51−71233号公報 特開昭58−224174号公報 特開昭60−50179号公報 特開昭60−50180号公報
本発明の目的は、クロム酸塩処理及びリン酸塩処理に匹敵する付着性、加工性、耐食性を持つ無公害型の表面処理組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のポリウレタン樹脂の水性分散体(A)を用い、これにシリカ粒子(B)、並びに金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩、バナジウム化合物、モリブデン化合物及びタングステン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(C)を組み合わせることで、クロム酸塩処理及びリン酸塩処理に匹敵する防錆力を持つ皮膜を形成することのできる金属表面処理組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、鋼材用の金属表面処理組成物であって、(A)ポリエポキシ化合物(a)とアミン化合物(b)との反応によって得られるアミノ基を有するエポキシプレポリマー(I)と、カルボキシル基含有ジオール(c)を含む1分子中に活性水素基を2つ以上含有する化合物(d)とポリイソシアネート化合物(e)との反応により得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(II)との反応によって得られるポリウレタン樹脂の水性分散体、(B)シリカ粒子(C)金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩、バナジウム化合物、モリブデン化合物及びタングステン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、並びに(F)レゾール型フェノール樹脂を含む硬化剤を含有してなることを特徴とする金属表面処理組成物に関する。

また、本発明は、鋼板に、上記金属表面処理組成物を塗布し、皮膜形成してなる金属板に関する。
本発明の金属表面処理組成物によれば、クロム酸によるリンス処理をしなくとも、従来のリン酸亜鉛処理と同等以上の耐食性を有し、さらに付着性、加工性に優れた皮膜を形成することができ、無公害型金属表面処理組成物として極めて有用なものである。
本発明の金属表面処理組成物は、ポリエポキシ化合物(a)とアミン化合物(b)との反応によって得られるアミノ基を有するエポキシプレポリマー(I)と、カルボキシル基含有ジオール(c)を含む1分子中に活性水素基を2つ以上含有する化合物(d)とポリイソシアネート化合物(e)との反応により得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(II)との反応によって得られるポリウレタン樹脂の水性分散体(A)、シリカ粒子(B)、並びに金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩、バナジウム化合物、モリブデン化合物及びタングステン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(C)を含有してなるものである。
ポリウレタン樹脂の水性分散体(A)
ポリウレタン樹脂はエポキシプレポリマー(I)とウレタンプレポリマー(II)との反応によって得られる。
エポキシプレポリマー(I)は、アミノ基を有し、ポリエポキシ化合物(a)とアミン化合物(b)との反応によって得られるものである。
ポリエポキシ化合物(a)は、1分子中に2つ以上エポキシ基を有する化合物であり、例えば、ビスフェノールAやビスフェノールF等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキシ樹脂;これらのエポキシ樹脂をアルキルフェノール及び脂肪酸から選ばれる少なくとも1種の変性剤によって変性してなる変性エポキシ樹脂;アルキルフェノール又はアルキルフェノールノボラック型樹脂とエピクロルヒドリンとを反応させてなるエポキシ基導入アルキルフェノール又はアルキルフェノールノボラック型樹脂;二塩基酸変性エポキシ樹脂、二塩基酸及びカルボキシル基含有フェノールで変性したエポキシ樹脂等を挙げることができる。
アミン化合物(b)は、1級アミノ基を有する化合物であり、例えばプロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン等の脂肪族アミン;ベンジルアミン、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン等の芳香族アミン;シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン等を挙げることができる。
またアミン化合物(b)としては、形成皮膜の耐食性及び硬化性の点から、アルカノールアミンを用いることが好ましい。該アルカノールアミンとしては、例えばモノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン等を挙げることができる。
またアミン化合物(b)としては、形成皮膜の耐水性等向上の点から、アミノシランを用いることができる。該アミノシランは、1分子中にアミノ基及びアルコキシシリル基を含有するものであり、その具体例としては、例えばγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
さらに、エポキシプレポリマー(I)の側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有せしめる場合には、特にアミン化合物(b)としてポリオキシアルキレンアミンを用いることができる。該ポリオキシアルキレンアミンとしては、1級アミノ基を有し、更にポリオキシアルキレン鎖を有している化合物であれば、特に制限されることなく、種々の化合物を用いることができる。ポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック鎖などを挙げることができる。またポリオキシアルキレン鎖は、100〜10000、特に200〜8000の範囲内の分子量を有することが好適である。
上記ポリオキシアルキレンアミンの代表例としては、例えば、下記一般式(1)
Figure 0005221109
(式中、R1は水酸基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、R2は水素原子又はメチル基を表し、mは2〜220、好ましくは5〜180の整数であり、nは2〜3の整数、好ましくは2である。ここでm個のオキシアルキレン単位(C2nO)は同じであっても又は互に異なっていてもよい。)で示される化合物を挙げることができる。アミン化合物(b)成分の少なくとも一部又は全部としてポリオキシアルキレンアミンを用いることは、本発明の金属表面処理組成物の貯蔵安定性の点で好ましい。
これらアミン化合物(b)は、単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
上記エポキシプレポリマー(I)の製造は、特に限定されることなく従来公知の手法が採用でき、通常、50〜250℃で1〜24時間加熱することにより行われる。上記(a)及び(b)成分の使用割合は種々変えることができるが、(a)成分中のエポキシ基と(b)成分中のアミノ基との当量比が一般に1:0.5〜1:2、好ましくは1:0.5〜1:0.9になるようにするのが望ましい。
このように製造されたエポキシプレポリマー(I)は、数平均分子量が500〜10000、好ましくは1000〜8000であることが、合成時の粘度制御や形成皮膜の耐食性等の点から好適である。ここで数平均分子量は計算値であり、上記(a)成分のモル数をM、分子量をmとし、(b)成分のモル数をN、分子量をnとしたときに以下の計算式によって算出されるものである。
数平均分子量={M×m/|M−N|}+{N×n/|M−N|}
(ここで、|M−N|は、M−Nの絶対値を表す。)
ウレタンプレポリマー(II)は、末端にイソシアネート基を有し、カルボキシル基含有ジオール(c)を含む1分子中に活性水素基を2つ以上含有する化合物(d)とポリイソシアネート化合物(e)との反応により得られるものである。
カルボキシル基含有ジオール(c)としては、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸及びこれ等を縮合したポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオール等が挙げられる。これ等に12−ヒドロキシステアリン酸、パラオキシ安息香酸、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオン酸、サリチル酸等のヒドロキシカルボン酸を併用することもできる。
カルボキシル基含有ジオール(c)の配合量は特に限定されるものではない。水分散性、耐食性の点から好ましくはウレタンプレポリマー(II)中における含有割合が1〜25重量%、さらに好ましくは2〜15重量%である。
化合物(d)は、上記カルボキシル基含有ジオール(c)を含むものであり、さらに必要に応じて該(c)以外の1分子中に少なくとも2個以上の活性水素基を有する、例えば低分子量グリコール類、高分子量グリコール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類等をそれぞれ単独に用いてもよく、また、ポリエステルポリオールや高分子量グリコールに低分子量グリコールを併用しても良い。
低分子量グリコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、オクタンジオール、トリシクロデカンジメチロール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等があり、これ等は単独または2種以上混合して使用しても良い。
高分子量グリコール類としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートグリコール等が挙げられ、ポリエステルポリオール類としては、グリコール成分とジカルボン酸成分を反応させたものが挙げられ、公知の方法で容易に製造でき、エステル化反応に限らず、エステル交換反応によっても製造できる。またε−カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環反応によって得られるポリエステルジオール及びこれ等の共縮合ポリエステルも含むことができる。
上記化合物(d)は、形成皮膜の耐食性向上の点から、その成分の少なくとも一部としてビスフェノール骨格含有ジオール化合物(f)を含むことが好ましい。
上記ビスフェノール骨格含有ジオール化合物(f)としては、例えばビスフェノール類のエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。ビスフェノール類としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等が挙げられる。
上記ビスフェノール骨格含有ジオール化合物(f)を用いる場合には、化合物(d)中における含有割合が10〜98重量%、好ましくは50〜95重量%であることが好適である。
また上記化合物(d)は、形成皮膜の乾燥性、硬化性、耐水性等向上の点から、その成分の少なくとも一部として、1分子中に活性水素基を2つ以上含有する脂肪酸エステル(g)を含むことができる。
上記脂肪酸エステル(g)は、通常、エステル結合を介して脂肪酸に由来する構造単位を有するものであり、低分子量のものから高分子量のものまで特に制限なく、本発明の金属表面処理組成物の用途等に応じて適宜選択することが可能である。
例えば脂肪酸エステル(g)として、まずグリセリンモノ脂肪酸エステルが使用できる。該グリセリンモノ脂肪酸エステルには、例えばグリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノステアレート等が挙げられ、さらにグリセリンと炭素数10以上の脂肪酸とのエステル化反応、油脂とグリセリンとのエステル交換反応等により得られるものが挙げられる。またグリシドールと脂肪酸との反応生成物であってもよい。該グリセリンモノ脂肪酸エステルは、本発明の金属表面処理組成物を、耐水性、速乾性、仕上り性等が求められる用途において使用する場合、脂肪酸エステル(g)として好適に選択され得るものである。
上記脂肪酸としては、炭化水素鎖の末端にカルボキシル基が結合した構造を有しているものが挙げられ、例えば、乾性油脂肪酸、半乾性油脂肪酸、不乾性油脂肪酸を挙げることができる。乾性油脂肪酸及び半乾性油脂肪酸は、厳密に区別できるものではないが、通常、乾性油脂肪酸はヨウ素価が130以上の不飽和脂肪酸であり、半乾性油脂肪酸はヨウ素価が100以上かつ130未満の不飽和脂肪酸である。他方、不乾性油脂肪酸は、通常、ヨウ素価が100未満である脂肪酸である。
乾性油脂肪酸及び半乾性油脂肪酸としては、例えば、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸、ハイジエン酸脂肪酸等が挙げられ、また、不乾性油脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、水添ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。さらに、これらの脂肪酸は、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等と併用することができる。
グリセリンと上記脂肪酸との反応は、グリセリン中の水酸基と脂肪酸中のカルボキシル基との当量比が1:0.17〜1:0.5、好ましくは1:0.23〜1:0.43の範囲内となる割合で混合し、通常、エステル化触媒の存在下に、約100〜約180℃の温度で約0.5〜約10時間加熱することにより行うのが適している。エステル化触媒としては、例えば、硫酸、硫酸アルミニウム、硫酸水素カリウム、アルキル置換ベンゼン、塩酸、硫酸メチル、リン酸等が挙げられる。一方、油脂(脂肪酸のトリグリセライド)とグリセリンとの反応は、通常、酢酸亜鉛、リサージ、ジブチル錫オキサイド、ナフテン酸カルシウム等のエステル交換反応触媒の存在下でそれ自体既知の方法により好適に行うことができる。
また脂肪酸エステル(g)として、1分子中にエポキシ基を2つ以上含有するエポキシ樹脂と脂肪酸との反応生成物が使用できる。該エポキシ樹脂と脂肪酸との反応生成物は、2級の水酸基を有するものであり、本発明の金属表面処理組成物を、耐水性、速乾性、仕上り性等が求められる用途において使用する場合、脂肪酸エステル(g)として好適に選択され得るものである。特にエポキシ樹脂としてビスフェノールAのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を用いる場合には、高防食性が求められる用途に適する。
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAやビスフェノールF等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキシ樹脂;これらのエポキシ樹脂をアルキルフェノール等の変性剤によって変性してなる変性エポキシ樹脂;アルキルフェノール又はアルキルフェノールノボラック型樹脂とエピクロルヒドリンとを反応させてなるエポキシ基導入アルキルフェノール又はアルキルフェノールノボラック型樹脂;二塩基酸変性エポキシ樹脂、二塩基酸及びカルボキシル基含有フェノールで変性したエポキシ樹脂等を挙げることができる。
上記脂肪酸としては、前記グリセリンモノ脂肪酸エステルの説明で列記したものの中から適宜選択して使用することができる。
上記エポキシ樹脂と脂肪酸との反応は、エポキシ樹脂中のエポキシ基と脂肪酸中のカルボキシル基との当量比が1:0.6〜1:1.4、好ましくは1:0.8〜1:1.2の範囲内となる割合で混合し、例えばエポキシ基/カルボキシル基反応触媒の存在下で通常1〜10時間程度加熱反応させればよい。エポキシ基/カルボキシル基反応触媒としては、例えば、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルフォスフォニウムブロマイド、トリフェニルベンジルフォスフォニウムクロライド等の4級塩触媒;トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン類等を挙げることができる。また反応温度は、120〜150℃程度が適当である。
脂肪酸エステル(g)としては、さらに1分子中にカルボキシル基を2つ以上含有する化合物と長鎖炭化水素基を含有するモノエポキシ化合物との反応生成物が使用できる。該反応生成物は、2級の水酸基を有するものであり、耐水性や仕上り性等が求められる用途において使用する場合、脂肪酸エステル(g)として好適に選択され得るものである。
上記の1分子中にカルボキシル基を2つ以上含有する化合物としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4´−ジカルボン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、リンゴ酸、クエン酸等の多価カルボン酸及びこれらの酸無水物が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
上記の長鎖炭化水素基を含有するモノエポキシ化合物は、炭素数4以上、好ましくは炭素数6〜20の鎖状もしくは環状の炭化水素基を有するモノエポキシド化合物であり、具体例としては、例えば、ピバル酸グリシジルエステル、ヘキサン酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、2−エチルヘキサン酸グリシジルエステル、イソノナン酸グリシジルエステル、デカン酸グリシジルエステル、ウンデカン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、ミリスチン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、カージュラE10(ジャパンエポキシレジン社製、ネオデカン酸モノグリシジルエステル)等のグリシジルエステル;ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル;スチレンオキシド、AOEX24(ダイセル化学工業製、α−オレフィンモノエポキシド混合物)等のα−オレフィンモノエポキシド等が挙げられる。また、上記炭素数4以上の炭化水素基は、例えば、水酸基等の置換基を有していてもよく、かかる置換基を有する炭化水素基を有するモノエポキシド化合物としては、具体的には、例えば、1,2−エポキシオクタノール、ヒドロキシオクチルグリシジルエーテル等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
上記カルボキシル基含有化合物とモノエポキシ化合物との反応は、前者中のカルボキシル基と後者中のエポキシ基との当量比が1:0.6〜1:1.4、好ましくは1:0.8〜1:1.2の範囲内となる割合で混合し、例えばエポキシ基/カルボキシル基反応触媒の存在下で通常1〜10時間程度加熱反応させればよい。エポキシ基/カルボキシル基反応触媒としては、前述の中から適宜選択して使用できる。
脂肪酸エステル(g)としては、さらに環状カーボネート化合物と脂肪酸アミンとの反応生成物が使用できる。該反応生成物は、ウレタン結合を有するので貯蔵時の加水分解性に優れ、脂肪酸エステル(g)として好適に選択され得るものである。
上記環状カーボネート化合物は、1分子当たりに少なくとも1つの環状カーボネート基を含有するものであり、通常、5員または6員環カーボネート基を含有する化合物である。5員環状カーボネートとしては、例えばグリセリンカーボネート(1,3−ジオキソラン−2−オン−4−メタノール)、1,3−ジオキソラン−2−オン−4−プロパノール、1,3−ジオキソラン−2−オン−ブタノール、1,3−ジオキソラン−2−オン−ペンタノール等の多価アルコールと炭酸エステルとの反応物;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類のジグリシジルエーテルやビスフェノール型エポキシ樹脂と炭酸ガスとの反応物等が挙げられる。これらのうち、合成の容易さの点から、グリセリンカーボネートが好適に使用できる。また環状カーボネート系化合物として、形成皮膜の耐食性向上の点からはビスフェノール骨格を有するものが好適に使用できる。
脂肪酸アミンは、1分子中にアミノ基及び脂肪酸残基を含有するものであり、例えばオレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、牛脂、魚油、椰子油、大豆油、オリーブ油、アマニ油、綿実油、ナタネ油およびそれら油脂に水添して得られる硬化油等から選ばれる少なくとも1種を、エチレンジアミン等のアルキレンジアミンやポリオキシアルキレンジアミン等を用いてアミン変性して得られるものが例示できる。これらのうち特に不飽和脂肪酸に由来するものが形成皮膜の乾燥性、硬化性の点から好適に使用できる。
上記環状カーボネート系化合物と脂肪酸アミンとは、環状カーボネート系化合物中の環状カーボネート基と脂肪酸アミン中のアミノ基とのモル比が1:0.8〜1:1.2、好ましくは1:0.95〜1:1.05の範囲となるように反応させることが望ましい。この反応は、通常25〜250℃、好ましくは50〜160℃の温度で行われる。
上記脂肪酸エステル(g)を用いる場合には、化合物(d)中における含有割合が1〜95重量%、好ましくは20〜70重量%であることが硬化性、耐水性、仕上り性の点から好適である。
また、本発明においてウレタンプレポリマー(II)の側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有せしめる場合には、上記化合物(d)がその成分の少なくとも一部として側鎖となるポリオキシアルキレン鎖を有するポリオールを含むことが好適である。
側鎖となるポリオキシアルキレン鎖を有するポリオールとしては、1分子中に水酸基を2個以上有し、更にポリオキシアルキレン鎖を有している化合物で、ウレタンプレポリマーに組み込まれた際に側鎖となる部分にポリオキシアルキレン鎖を導入できるものであれば、特に制限されることなく、種々の化合物を用いることができる。ポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック鎖などを挙げることができる。またポリオキシアルキレン鎖は、100〜10000、特に200〜8000の範囲内の分子量を有することが好適である。
側鎖となるポリオキシアルキレン鎖を有するポリオールの具体例としては、例えばポリオキシアルキレン鎖を有するアクリレートとジアルカノールアミンとの反応生成物、グリセリンカーボネートとポリオキシアルキレンアミンとの反応生成物などが挙げられ、さらにグリシドールとポリオキシアルキレンアミンとの反応生成物であっても良い。
ポリオキシアルキレン鎖を有するアクリレートとしては、例えば、下記式(2)
Figure 0005221109
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは2〜220、好ましくは5〜180の整数であり、nは2〜3の整数、好ましくは2である、ここでm個のオキシアルキレン単位(C2nO)は同じであっても又は互に異なっていてもよい。)で示される化合物を挙げることができる。その具体例としては、例えば、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシポリエチレングリコールアクリレートなどを挙げることができる。
ジアルカノールアミンとしては、例えばジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどが挙げられる。
ポリオキシアルキレン鎖を有するアクリレートとジアルカノールアミンとは、アクリレートとアミノ基とのモル比が1:0.8〜1:1.2、好ましくは1:0.95〜1:1.05の範囲となるように反応させることが望ましい。この反応は、通常25〜250℃、好ましくは50〜160℃の温度で行われる。
上記ポリオキシアルキレンアミンとしては、前述のアミン化合物(b)において説明したポリオキシアルキレンアミンと同様のものを適宜選択して使用することができる。グリセリンカーボネートとポリオキシアルキレンアミンとは、グリセリンカーボネート中の環状カーボネート基とポリオキシアルキレンアミン中のアミノ基とのモル比が1:0.8〜1:1.2、好ましくは1:0.95〜1:1.05の範囲となるように反応させることが望ましい。この反応は、通常25〜250℃、好ましくは50〜160℃の温度で行われる。
上記化合物(d)成分の少なくとも一部として側鎖となるポリオキシアルキレン鎖を有するポリオールを用いることは、本発明の金属表面処理組成物の貯蔵安定性の点で好ましい。
ポリイソシアネート化合物(e)は、1分子中にイソシアネート基を2個以上含有するものであり、その具体例としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(又は1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート類;これらのジイソシアネ−トのビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4´−トルイジンジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルエーテルイソシアネート、(m−もしくはp−)フェニレンジイソシアネート、4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)等の芳香族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネ−ト化合物のビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン−4,4´,4´´−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4´−ジメチルジフェニルメタン−2,2´,5,5´−テトライソシアネート等の1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート類;これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロ−ルプロパン、ヘキサントリオ−ル等のポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;これらのウレタン化付加物のビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物等を挙げることができる。
また上記化合物(e)は、側鎖となるポリオキシアルキレン鎖を有するポリイソシアネートであっても良い。側鎖となるポリオキシアルキレン鎖を有するポリイソシアネートとしては、例えば1分子中にイソシアネート基を2個以上有し、更にポリオキシアルキレン鎖を有している化合物であれば、特に制限されることなく、種々の化合物を用いることができる。上記化合物(e)成分の少なくとも一部として側鎖となるポリオキシアルキレン鎖を有するポリイソシアネートを用いることは、本発明の金属表面処理組成物の貯蔵安定性の点で好ましい。
上記ウレタンプレポリマー(II)の製造は、特に限定されることなく従来公知の手法が採用でき、例えば前記した(d)及び(e)成分を一度に反応させても良いし、多段的に反応させても良い。上記(d)及び(e)成分の使用割合は種々変えることができるが、全成分中のイソシアネート基と水酸基との当量比が一般に1:0.9〜1:0.5、好ましくは1:0.9〜1:0.7になるようにするのが望ましい。反応は通常40〜180℃、好ましくは60〜130℃の温度で行われる。この反応を促進させるため、通常のウレタン化反応において使用されるトリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等のアミン系触媒や、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の錫系触媒等を必要に応じて用いてもよい。
このように製造されたウレタンプレポリマー(II)は、酸価10〜100mgKOH/g、好ましくは13〜60mgKOH/g、さらに好ましくは17〜56mgKOH/g、数平均分子量が1000〜6000、好ましくは1500〜5000であることが、合成時の粘度制御や形成皮膜の耐食性等の点から好適である。ここで数平均分子量は計算値であり、上記(d)成分のモル数をO、分子量をoとし、(e)成分のモル数をP、分子量をpとしたときに以下の計算式によって算出されるものである。
数平均分子量={O×o/|O−P|}+{P×p/|O−P|}
(ここで、|O−P|は、O−Pの絶対値を表す。)
本発明に用いられるポリウレタン樹脂の水性分散体(A)は、前記エポキシプレポリマー(I)と上記ウレタンプレポリマー(II)との反応によって得られるポリウレタン樹脂が、水性媒体中に水分散されているものである。
エポキシプレポリマー(I)とウレタンプレポリマー(II)との反応は、特に限定されることなく従来公知の手法が採用でき、通常、20〜80℃で0.1〜10時間加熱することにより行われる。両者の使用割合は種々変えることができるが、エポキシプレポリマー(I)中のアミノ基とウレタンプレポリマー(II)中のイソシアネート基との当量比が0.01:1〜0.9:1、好ましくは0.2:1〜0.8:1となるように選択することが望ましい。
上記の通り得られるポリウレタン樹脂は、水性媒体へ分散される。水性媒体としては、水、または水を主として水溶性有機溶媒等の有機溶媒を溶解してなる水−有機溶媒混合溶液等を挙げることができる。水分散は、特に制限なく従来公知の方法で行うことができ、例えば上記ポリウレタン樹脂に中和剤、界面活性剤等を必要に応じて添加し、水を徐々に加えながら撹拌して混合分散することができる。中和剤としては、カルボキシル基を中和できるものであれば特に制限はないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノプロパノール、トリエチルアミン、アンモニウム等が挙げられる。中和剤は、ポリウレタン樹脂に加えてカルボキシル基を中和しておいてもよいし、分散媒である水に加えておき分散と同時に中和してもよい。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合物等のノニオン系界面活性剤、ラウリル硫酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアニオン系界面活性剤が挙げられる。
上記ポリウレタン樹脂は、さらに必要に応じて鎖延長剤を反応させることにより高分子量化することができる。鎖延長剤としては、例えばエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、アミン末端ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等のジアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン;ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシエチルジエチレントリアミン、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール、3−アミノプロパンジオール等のアミノ基と水酸基をもつ化合物;ヒドラジン類、酸ヒドラジド類等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
上記ポリウレタン樹脂は、酸価10〜100mgKOH/g、好ましくは10〜50mgKOH/g、さらに好ましくは12〜45mgKOH/g、アミン価0〜50mgKOH/g、好ましくは3〜35mgKOH/g、及び水酸基価20〜200mgKOH/g、好ましくは30〜150mgKOH/gであることが、形成皮膜の付着性、耐食性等の点から好適である。
シリカ粒子(B)
本発明の金属表面処理組成物における(B)成分であるシリカ粒子は、形成皮膜が弱アルカリ性を保つのに寄与し、鋼板の耐食性を向上させるために効果があり、さらには皮膜の粘着性を除くために効果がある。シリカ粒子(B)としてはコロイダルシリカ(水分散型)ならびにヒュームドシリカ(気相シリカ)のいずれも使用できる。コロイダルシリカの市販品としては、例えばスノーテックスC、スノーテックスN、スノーテックスO(いずれも日産化学社製)、アデライトAT−20A、同AT−20N(いずれも旭電化工業社製)等を挙げることができ、ヒュームドシリカの市販品としては、例えば疎水性シリカAEROSIL R−811、親水性シリカAEROSIL 200V(いずれも日本アエロジル社製)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組合せて使用することができる。シリカ粒子の平均粒子径(1次粒子径)としては分散液の安定性等の点から5〜100nm、好ましくは10〜50nmの範囲が適している。
シリカ粒子(B)の添加量は、特に限定されるものではない。好ましくはポリウレタン樹脂の水性分散体(A)の固形分100重量部に対しSiOとして1〜50重量部の範囲であり、さらに好ましくは5〜30重量部の範囲である。これら範囲の下限値は、皮膜に粘着性の点及び、耐食性の点で意義がある。また、これら範囲の上限値は皮膜の硬度、皮膜の伸び率及びプレス加工性の点で意義がある。
化合物(C)
本発明の金属表面処理組成物の(C)成分である化合物は、金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩、バナジウム化合物、モリブデン化合物及びタングステン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である。これら化合物は、硬化性、鋼板との付着性、皮膜の耐水性、耐アルカリ性及び耐食性の向上に効果がある。
金属弗化水素酸及び金属弗化水素酸塩としては、例えば、ジルコニウム弗化水素酸、チタン弗化水素酸、珪弗化水素酸、ジルコニウム弗化塩、チタン弗化塩、珪弗化塩等が挙げられる。金属弗化水素酸の塩を形成するものとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム等が挙げられるが、中でもアンモニウムが好ましく、具体例として、ジルコニウム弗化アンモニウム等が挙げられる。
バナジウム化合物としては、例えば、酸化バナジウム、オルソバナジン酸リチウム、オルソバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸リチウム、メタバナジン酸カリウム、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸アンモニウム、ピロバナジン酸ナトリウム、塩化バナジル、硫酸バナジル等が挙げられる。
モリブデン化合物としては、例えば、酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸ストロンチウム、モリブデン酸バリウム、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸ナトリウム、リンモリブデン酸亜鉛などが挙げられる。
タングステン化合物としては、例えば、酸化タングステン、タングステン酸、タングステン酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、メタタングステン酸ナトリウム、パラタングステン酸ナトリウム、ペンタタングステン酸アンモニウム、ヘプタタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、ホウタングステン酸バリウムなどが挙げられる。
これら化合物(C)は単独で又は2種以上組合せて使用することができる。また、耐湿性及び耐食性の点から、金属弗化水素酸又は金属弗化水素酸塩と、バナジウム化合物、モリブデン化合物又はタングステン化合物から選ばれる少なくとも1種、とを組合せることが好ましい。
化合物(C)の添加量は、特に限定されるものではない。好ましくはポリウレタン樹脂の水性分散体(A)の固形分100重量部に対して0.3〜20重量部の範囲であり、さらに好ましくは0.5〜15重量部の範囲、特に好ましくは1〜10重量部の範囲である。これら範囲の下限値は、付着性及び耐食性の点で意義がある。また、これら範囲の上限値は塗料安定性の点で意義がある。
本発明の金属表面処理組成物は、上記(A)〜(C)成分を必須とするものであり、さらに下記(D)〜(F)などを含有することができる。
シランカップリング剤(D)
本発明の金属表面処理組成物は、シランカップリング剤(D)を含んでいてもよい。シランカップリング剤(D)は、鋼板との付着性をより向上させることができる。
シランカップリング剤としては、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のグリシジル基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン等のビニル基含有シランカップリング剤;γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
シランカップリング剤(D)の添加量は、特に限定されるものではない。好ましくは、ポリウレタン樹脂の水性分散体(A)の固形分100重量部に対して0.3〜25重量部の範囲であり、さらに好ましくは1〜10重量部の範囲である。これら範囲の下限値は、付着性の点で意義がある。また、これら範囲の上限値は塗料安定性の点で意義がある。
潤滑機能付与剤(E)
本発明の金属表面処理組成物は、潤滑機能付与剤(E)を含んでいてもよい。潤滑機能付与剤(E)は、得られる皮膜に潤滑性を付与するものであれば良い。具体的には例えば、フッ素樹脂微粉末(例えば、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂等の微粉末)、ポリオレフィンワックス(例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等)、1つの粒子中にポリオレフィンとフッ素樹脂とが混在して含まれる潤滑剤、グラファイト、窒化ホウ素、フッ化カーボン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
潤滑機能付与剤(E)の平均粒径としては0.3〜5.0μm、さらには0.5〜3.0μmの範囲が好ましい。潤滑機能付与剤の平均粒径が小さくなると潤滑性向上効果が減少していく傾向にあり、また、平均粒径が大きくなり過ぎると皮膜からの突出部分が多くなり、連続加工において潤滑機能付与剤が剥がれ、金型に付着しやすくなるという問題が生じる。
また、発熱を伴う連続高速加工においては、摩擦熱によって表面温度が上昇するため低融点の潤滑機能付与剤では液状になり、皮膜に固定されず金型に付着、堆積して金属表面を傷つけるため好ましくない。発熱を伴う高速加工においては軟化点100℃以上、好ましくは130〜150℃のポリオレフィンワックスの使用が適しており、高温においてもワックスが皮膜に均一に固定され鋼板の表面を傷つけることなく有効に潤滑機能を発揮することができる。潤滑機能付与剤(E)は、塗装作業性、潤滑性等の点から2種類以上を混合して用いることができ、例えば、前記ポリオレフィン系ワックスとフッ素樹脂粉末とを併用したもの等が好ましいものとして挙げられる。
潤滑機能付与剤(E)の添加量は、特に限定されるものではない。好ましくはポリウレタン樹脂の水性分散体(A)の固形分100重量部に対して、2〜50重量部の範囲であり、さらに好ましくは5〜30重量部の範囲である。これら範囲の下限値は潤滑性の向上効果の点で意義がある。また、これら範囲の上限値は皮膜の光沢値、透明性、表面の平滑性、皮膜の伸び率及び付着力、付着性、プレス加工性並びに上塗塗膜との付着性の点で意義がある。
硬化剤(F)
本発明の金属表面処理組成物は、硬化剤(F)を含んでいてもよい。硬化剤(F)の添加により緻密なバリヤー皮膜を形成し耐食性、硬度をさらに向上させることができる。
硬化剤(F)は、特に限定されるものではなく、例えば、ブロック化ポリイソシアネート化合物、アミノ樹脂、オキサゾリン基含有化合物、レゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロック化剤によってブロック化してなる化合物である。
上記ブロック化する前のポリイソシアネート化合物としては、1分子中にイソシアネート基を2個以上含有するものであり、例えば、前記ポリイソシアネート化合物(e)と同様のもの等が挙げられる。
イソシアネート基をブロックするブロック化剤としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノールなどのフェノール系;ε−カプロラクタム;δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどラクタム系;メタノール、エタノール、n−又はi−プロピルアルコール、n−,i−又はt−ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコールなどのアルコール系;ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系などのブロック化剤を好適に使用することができる。
上記ポリイソシアネート化合物と上記ブロック化剤とを混合することによって容易に上記ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロックすることができる。これらのブロック化ポリイソシアネート化合物は単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
アミノ樹脂としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂等があげられる。上記反応に用いられるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等がある。また、上記メチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってエーテル化したものも使用でき、エーテル化に用いられるアルコールの例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。これらのアミノ樹脂は、通常、原料のアミノ成分名に由来してメラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、ステログアナミン樹脂、スピログアナミン樹脂、ジシアンジアミド樹脂等と呼ばれる。これらのアミノ樹脂は単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
上記アミノ樹脂のうち、メラミン樹脂及びベンゾグアナミン樹脂が硬化性の点から好適である。
オキサゾリン基含有化合物としては、例えば、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−メチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−トリメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ヘキサメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−オクタメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−デカメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−o−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−シクロヘキシレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ジフェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレン−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレン−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。
また、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有不飽和単量体の単独重合体および共重合体等もオキサゾリン基含有化合物として挙げることができる。
さらに、日本触媒社製のエポクロスWS−500、エポクロスWS−700、エポクロスK2020E等のオキサゾリン基を含有するポリマーも挙げることができる。これらオキサゾリン基含有化合物は、単独で又は2種類以上組合せて使用することできる。
レゾール型フェノール樹脂としては、フェノール成分とホルムアルデヒド類とを反応触媒の存在下で加熱して縮合反応させてメチロール基を導入して得られるメチロール化フェノール樹脂のメチロール基の一部をアルコールでアルキルエーテル化してなるものである。
レゾール型フェノール樹脂の製造においては、出発原料である上記フェノール成分として、2官能性フェノール化合物、3官能性フェノール化合物、4官能性以上のフェノール化合物等を使用することができる。
レゾール型フェノール樹脂の製造に用いられる2官能性フェノール化合物としては、o−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノールなどの2官能性フェノール等を挙げることができ、3官能性フェノール化合物としては、フェノール、m−クレゾール、m−エチルフェノール、3,5−キシレノール、m−メトキシフェノール等が挙げられ、4官能性フェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF等を挙げることができる。これらの中でも、3官能性以上のフェノール化合物、特にフェノール及び/又はビスフェノールAを用いることが、付着性及び耐食性の点から好ましい。これらのフェノール化合物は、単独で又は2種以上混合して使用することができる。
レゾール型フェノール樹脂の製造に用いられるホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド又はトリオキサン等が挙げられ、単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
メチロール化フェノール樹脂のメチロール基の一部をアルキルエーテル化するのに用いられるアルコールとしては、炭素原子数1〜8個、好ましくは1〜4個の1価アルコールを好適に使用することができる。好適な1価アルコールとしてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどを挙げることができる。
上記レゾール型フェノール樹脂は、数平均分子量が200〜2,000の範囲が好ましく、300〜1,200の範囲がさらに好ましい。また、ベンゼン核1核当りのメチロール基の平均数が0.3〜3.0個の範囲が好ましく、0.5〜3.0個の範囲がより好ましく、0.7〜3.0個の範囲がさらに好ましい。上記レゾール型フェノール樹脂を使用することによって、付着性及び加工性等に優れた皮膜を形成することができる。
硬化剤(F)の配合量は、特に限定されるものではない。好ましくはポリウレタン樹脂の水性分散体(A)の固形分100重量部に対して、固形分で1〜50重量部の範囲であり、さらに好ましくは3〜20重量部の範囲である。これら範囲の下限値は、付着性及び耐食性の点で意義がある。また、これら範囲の上限値は加工性の点で意義がある。
本発明の金属表面処理組成物への硬化剤(F)の添加方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法により添加することができる。例えば、水溶性の硬化剤の場合は、水性媒体へ直接添加することができる。また難水溶性又は非水溶性の硬化剤の場合は、前記ポリウレタン樹脂の水性分散体(A)の製造においてポリウレタン樹脂を水性媒体へ分散する前にポリウレタン樹脂に混合する添加方法をとることができる。
なお、ポリウレタン樹脂の水性分散体(A)は以上のような硬化剤の添加により十分に架橋するが、さらに低温架橋性を増大させるため、公知の硬化促進触媒を使用することができる。この硬化促進触媒としては、例えば、N−エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第1スズ、ナフテン酸亜鉛、硝酸ビスマス等が使用できる。
本発明の金属表面処理組成物には、さらに必要に応じて、例えば、上記した成分以外に、増粘剤、ハジキ防止剤、消泡剤、界面活性剤、酸化剤、防菌剤、防錆剤(タンニン酸、フィチン酸、ベンゾトリアゾール等)、着色顔料、体質顔料、防錆顔料、導電性顔料等を含有することができる。
また、本発明の金属表面処理組成物には、必要に応じて、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール系、プロピレングリコール系等の親水性溶剤を添加してもよい。
金属板
本発明の金属表面処理組成物は、従来のクロメート処理工程を省くことができ、無処理の冷延鋼板やアルミニウム板、又は無処理の亜鉛系めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板等のめっき鋼板に直接塗布、乾燥させることで耐食性及びプレス加工性に優れた金属板を得ることができる。なお、本発明の金属表面処理組成物をクロメート処理された鋼板に塗装しても性能的には何ら問題無く、より耐食性に優れた金属板を得ることができるため必要に応じて使用することができる。
上記亜鉛系めっき鋼板としては、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、ニッケル−亜鉛合金めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼板等が挙げられる。亜鉛−アルミニウムめっき鋼板としては、亜鉛ベースの場合、5%Al−Zn系、8%Al−Zn系、15%Al−Zn系等が、またアルミニウムベースとしては、55%Al−Zn系、75%Al−Zn系等が知られているが、本発明の金属表面処理組成物はこれらのものだけでなく、めっき層がアルミと亜鉛を主成分とする複合めっき鋼板に適用可能である。例えばAl−Zn合金中にMg、Mn、Si、Ti、Ni、Co、Pb、Sn、Crおよびレアメタル(La、Ce、Y、Nb等)等を添加されたものでも適用可能である。
本発明の金属表面処理組成物は前記鋼板に塗布して使用されるが、その塗布量は乾燥皮膜重量で0.3〜6.0g/mの範囲が好ましく、0.5〜4.0g/mの範囲であればさらに好ましい。皮膜が薄くなると耐食性、耐黒変色性及び潤滑性が低下し、また厚くなると耐食性は向上するがプレス加工性が低下し、また、コストが高くなる。
また、本発明の金属表面処理組成物を塗布した鋼板に溶接適正を付与したい場合には乾燥皮膜重量を1.5g/m以下、特に0.3〜1.0g/m程度にすることが望ましい。塗布量が多いとスポット溶接の際にチリを発生しやすくなり、溶接強度も不十分となるため、連続打点適正が低下する。
本発明組成物を鋼板に塗布して皮膜形成させるにあたり、本組成物の粘度を水等の希釈剤により塗布量に応じて5〜30センチポイズ程度に適宜調整後、ロールコーター塗装、スプレー塗装、デッピング塗装等の一般に公知の方法により所定の皮膜重量となるよう塗装した後、鋼板の最高到達温度(PMT)が50〜180℃の範囲内で5〜60秒乾燥させることが好ましい。このようにして皮膜組成物を塗装、乾燥することにより、耐食性、プレス加工性等に優れた鋼板が製造される。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、別記しない限り「重量部」及び「重量%」を示す。
合成例1(ポリウレタン樹脂水性分散体III−1の合成)
エポキシプレポリマー(I−1)の作成
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中でビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:jER−1001、エポキシ当量450g/eq)(180g)を、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(49.6g)に溶解し、これに2−アミノエタノール(18.3g)を加え、85℃で3時間保持し、エポキシ基及びアミノ基含有量(注1)が1.50〜1.55mmol/g程度となるまで反応させた。その後、メチルエチルケトン(148.7g)を加え、エポキシプレポリマー(I−1)溶液を得た。得られたエポキシプレポリマー(I−1)溶液の固形分濃度は50.0%、プレポリマーの数平均分子量は1983であった。
(注1)エポキシ基及びアミノ基含有量:下記測定方法にて追跡した。
三角フラスコに試料(g)をはかりとり、これに40mlのメチルエチルケトンを加えて溶解する。溶解しにくい場合は50℃まで加熱して溶解する。次に、全量ピペットでCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)溶液10mlを加えて均一にする。続いて、スクリーン指示薬0.2mlを正確に加えて、N/10過塩素酸−酢酸溶液で滴定し、最後の一滴で桃色が約30秒間続いたとき終点とする。アミノ基含有量は下記計算値から算出する。尚、CTAB溶液はCTAB20gに酢酸200mlを加えて溶解しさらにメチルエチルケトン200mlを加えて均一溶液に調整し、スクリーン指示薬は氷酢酸100mlにアルファズリン0.3gを溶解した溶液に、チモールブルー1.5gをメタノール500mlに溶解した溶液を混合して調整した。
計算式:E=(A-B)×0.1×F/(S×0.01×W)
ここでE:エポキシ基及びアミノ基含有量(mmol/g)
A:本試験のN/10過塩素酸-酢酸溶液の使用量(ml)
B:空試験のN/10過塩素酸-酢酸溶液の使用量(ml)
F:N/10過塩素酸-酢酸溶液のファクター
S:試料の加熱残分(%)
W:試料の量(g)
ウレタンプレポリマー(II−1)の作成
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中で「ビスオール3PN」(注2)(212.3g)、「ビスオール6PN」(注3)(305.9g)、ジメチロールプロピオン酸(61.1g)をN−メチルピロリドン(154.2g)に溶解し、ヘキサメチレンジイソシアネート(191.7g)を30分かけて滴下し、60℃で1.5時間反応を行った。その後80℃に昇温し2時間反応を行って、イソホロンジイソシアネート(168.7g)を加え更に80℃で3時間、NCO価(注4)が25〜37程度となるまで反応させた。その後、メチルエチルケトン(418g)を加え、ウレタンプレポリマー(II−1)溶液を得た。得られたウレタンプレポリマー(II−1)溶液の固形分濃度は62.2%、プレポリマーの数平均分子量は2473、酸価は27.2mgKOH/gであった。
(注2)ビスオール3PN:商品名、東邦化学社製、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(プロピレンオキサイド変性量=3モル)
(注3)ビスオール6PN:商品名、東邦化学社製、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(プロピレンオキサイド変性量=6モル)
(注4)NCO価:ウレタンプレポリマー1g中に含まれるイソシアネート基量(mg)で、下記測定方法にて追跡した。
三角フラスコに試料(g)を正しくはかりとり、ジオキサン10mlを加え、溶解した試料を50℃に加熱し、正しくはかりとったN/5ジブチルアミン−ジオキサン溶液10mlを加え、2分間かき混ぜて試料とジブチルアミンを反応させる。次に、ブロムフェノールブルー-エチルアルコール溶液を2〜3滴加えて、N/10塩酸溶液で滴定し、青色から黄緑色に変化したときを終点とする。
計算式N={0.1×42×(A-B)×f}/(0.01×S×W)
ここでN:NCO価(試料1g中に含まれるNCOのmg数)
A:空試験のN/5ジブチルアミン-ジオキサン溶液を中和するのに使用した
N/10塩酸溶液の量(ml)
B:試料の滴定に使用したN/10塩酸溶液の量(ml)
f:N/10塩酸溶液のファクター
S:試料の加熱残分(%)
W:試料の量(g)
42:NCOの分子量
ポリウレタン樹脂水性分散体(III−1)の作成
上記と同様の装置を用い、62.2%ウレタンプレポリマー(II−1)溶液(1511g)を、攪拌状態で50℃に保持し、その中に50%エポキシプレポリマー(I−1)溶液(753.6g)を加え、1時間攪拌した。次いで40℃に冷却し、トリエチルアミン(36.8g)で中和し、脱イオン水(2392.6g)を加えて、分散した。その中に、脱イオン水(91.3g)で希釈したジエチレントリアミン(9.1g)を30分かけて滴下し、50℃で2時間保持した。その後、60℃でメチルエチルケトンを減圧留去することで、ポリウレタン樹脂の水性分散体(III−1)を得た。この水性分散体の固形分濃度は35.0%、ポリウレタン樹脂の酸価は19.4mgKOH/g、アミン価は8.1mgKOH/g、水酸基価は59.1mgKOH/gであった。
合成例2(ポリウレタン樹脂水性分散体III−2の合成)
エポキシプレポリマー(I−2)の作成
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中でビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:jER−1004、エポキシ当量875g/eq)(660g)を、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(174.2g)に溶解し、これに2−アミノエタノール(36.6g)を加え、85℃で3時間保持し、アミノ基含有量(注1)が0.860〜0.865mmol/g程度となるまで反応させた。その後、メチルエチルケトン(522.5g)を加え、エポキシプレポリマー(I−2)溶液を得た。得られたエポキシプレポリマー(I−2)溶液の固形分濃度は50.0%、プレポリマーの数平均分子量は3483であった。
ウレタンプレポリマー(II−2)の作成
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中で「ビスオール3PN」(注2)(508.7g)、「ビスオール6PN」(注3)(733.1g)、ジメチロールプロピオン酸(194.3g)をN−メチルピロリドン(388.2g)に溶解し、ヘキサメチレンジイソシアネート(504.6g)を30分かけて滴下し、60℃で1.5時間反応を行った。その後80℃に昇温し2時間反応を行って、イソホロンジイソシアネート(444.0g)を加え更に80℃で3時間、NCO価(注4)が25〜37程度となるまで反応させた。その後、メチルエチルケトン(1100g)を加え、ウレタンプレポリマー(II−2)溶液を得た。得られたウレタンプレポリマー(II−2)溶液の固形分濃度は61.6%、プレポリマーの数平均分子量は2384、酸価は34.1mgKOH/gであった。
ポリウレタン樹脂水性分散体(III−2)の作成
上記と同様の装置を用い、61.6%ウレタンプレポリマー(II−2)溶液(1200.6g)を、攪拌状態で50℃に保持し、その中に50%エポキシプレポリマー(I−2)溶液(1079.8g)を加え、1時間攪拌した。次いで40℃に冷却し、トリエチルアミン(36.3g)で中和し、脱イオン水(2401.4g)を加えて、分散した。その中に、脱イオン水(74.5g)で希釈したジエチレントリアミン(7.45g)を30分かけて滴下し、50℃で2時間保持した。その後、60℃でメチルエチルケトンを減圧留去することで、ポリウレタン樹脂の水性分散体(III−2)を得た。この水性分散体の固形分濃度は35.0%、ポリウレタン樹脂の酸価は19.7mgKOH/g、アミン価は6.8mgKOH/g、水酸基価は83.7mgKOH/gであった。
合成例3(ポリウレタン樹脂水性分散体III−3の合成)
エポキシプレポリマー(I−3)の作成
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中でビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:jER−1007、エポキシ当量1750g/eq)(696.0g)を、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(179.5g)に溶解し、これに2−アミノエタノール(22.0g)を加え、85℃で3時間保持し、アミノ基含有量(注1)が0.500〜0.505mmol/g程度となるまで反応させた。その後、メチルエチルケトン(538.5g)を加え、エポキシプレポリマー(I−3)溶液を得た。得られたエポキシプレポリマー(I−3)溶液の固形分濃度は50.0%、プレポリマーの数平均分子量は5983であった。
ウレタンプレポリマー(II−3)の作成
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中で「ビスオール3PN」(注2)(438.9g)、「ビスオール6PN」(注3)(632.5g)、ジメチロールプロピオン酸(241.2g)をN−メチルピロリドン(363.4g)に溶解し、ヘキサメチレンジイソシアネート(504.6g)を30分かけて滴下し、60℃で1.5時間反応を行った。その後80℃に昇温し2時間反応を行って、イソホロンジイソシアネート(444.0g)を加え更に80℃で3時間、NCO価(注4)が25〜37程度となるまで反応させた。その後、メチルエチルケトン(1100g)を加え、ウレタンプレポリマー(II−3)溶液を得た。得られたウレタンプレポリマー(II−3)溶液の固形分濃度は60.7%、プレポリマーの数平均分子量は2261、酸価は44.7mgKOH/gであった。
ポリウレタン樹脂水性分散体(III−3)の作成
上記と同様の装置を用い、60.7%ウレタンプレポリマー(II−3)溶液(353.8g)を、攪拌状態で50℃に保持し、その中に50%エポキシプレポリマー(I−3)溶液(568.4g)を加え、1時間攪拌した。次いで40℃に冷却し、トリエチルアミン(13.8g)で中和し、脱イオン水(956.7g)を加えて、分散した。その中に、脱イオン水(22.8g)で希釈したジエチレントリアミン(2.28g)を30分かけて滴下し、50℃で2時間保持した。その後、60℃でメチルエチルケトンを減圧留去することで、ポリウレタン樹脂の水性分散体(III−3)を得た。この水性分散体の固形分濃度は35.0%、ポリウレタン樹脂の酸価は19.2mgKOH/g、アミン価は5.3mgKOH/g、水酸基価は135mgKOH/gであった。
合成例4(ポリウレタン樹脂水性分散体III−4の合成)
エポキシプレポリマー(I−4)の作成
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中でビスフェノールF型エポキシ樹脂(ThaiEpoxy社製、EpotecYDF2001、エポキシ当量480g/eq)(192g)を、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(52.6g)に溶解し、これに2−アミノエタノール(18.3g)を加え、85℃で3時間保持し、アミノ基含有量(注1)が1.50〜1.55mmol/g程度となるまで反応させた。その後、メチルエチルケトン(157.8g)を加え、エポキシプレポリマー(I−4)溶液を得た。得られたエポキシプレポリマー(I−4)溶液の固形分濃度は50.0%、プレポリマーの数平均分子量は2103であった。
ウレタンプレポリマー(II−4)の作成
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中で「ビスオール3PN」(注2)(212.3g)、「ビスオール6PN」(注3)(305.9g)、ジメチロールプロピオン酸(61.1g)をN−メチルピロリドン(154.2g)に溶解し、ヘキサメチレンジイソシアネート(191.7g)を30分かけて滴下し、60℃で1.5時間反応を行った。その後80℃に昇温し2時間反応を行って、イソホロンジイソシアネート(168.7g)を加え更に80℃で3時間、NCO価(注4)が25〜37程度となるまで反応させた。その後、メチルエチルケトン(418g)を加え、ウレタンプレポリマー(II−4)溶液を得た。得られたウレタンプレポリマー(II−4)溶液の固形分濃度は62.2%、プレポリマーの数平均分子量は2473、酸価は27.2mgKOH/gであった。
ポリウレタン樹脂水性分散体(III−4)の作成
上記と同様の装置を用い、62.2%ウレタンプレポリマー(II−4)溶液(1511g)を、攪拌状態で50℃に保持し、その中に50%エポキシプレポリマー(I−4)溶液(799.2g)を加え、1時間攪拌した。次いで40℃に冷却し、トリエチルアミン(36.8g)で中和し、脱イオン水(2396.5g)を加えて、分散した。その中に、脱イオン水(91.3g)で希釈したジエチレントリアミン(9.1g)を30分かけて滴下し、50℃で2時間保持した。その後、60℃でメチルエチルケトンを減圧留去することで、ポリウレタン樹脂の水性分散体(III−4)を得た。この水性分散体の固形分濃度は35.0%、ポリウレタン樹脂の酸価は19.4mgKOH/g、アミン価は8.1mgKOH/g、水酸基価は59.1mgKOH/gであった。
合成例5(ポリウレタン樹脂水性分散体III−5の合成)
エポキシプレポリマー(I−5)の作成
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中でビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:jER−1001、エポキシ当量450g/eq)(180g)を、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(82.1g)に溶解し、これに3−アミノプロピルトリエトキシシラン(66.4g)を加え、85℃で3時間保持し、アミノ基含有量(注1)が1.21〜1.22mmol/g程度となるまで反応させた。その後、メチルエチルケトン(164.3g)を加え、エポキシプレポリマー(I−5)溶液を得た。得られたエポキシプレポリマー(I−5)溶液の固形分濃度は50.0%、プレポリマーの数平均分子量は2464であった。
ウレタンプレポリマー(II−5)の作成
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中で「ビスオール3PN」(注2)(323.2g)、「ビスオール6PN」(注3)(465.8g)、ジメチロールプロピオン酸(104.5g)をN−メチルピロリドン(239.2g)に溶解し、ヘキサメチレンジイソシアネート(302.8g)を30分かけて滴下し、60℃で1.5時間反応を行った。その後80℃に昇温し2時間反応を行って、イソホロンジイソシアネート(266.4g)を加え更に80℃で3時間、NCO価(注4)が25〜37程度となるまで反応させた。その後、メチルエチルケトン(660g)を加え、ウレタンプレポリマー(II−5)溶液を得た。得られたウレタンプレポリマー(II−5)溶液の固形分濃度は61.9%、プレポリマーの数平均分子量は2438、酸価は29.9mgKOH/gであった。
ポリウレタン樹脂水性分散体(III−5)の作成
上記と同様の装置を用い、61.9%ウレタンプレポリマー(II−5)溶液(236.2g)を、攪拌状態で50℃に保持し、その中に50%エポキシプレポリマー(I−5)溶液(147.9g)を加え、1時間攪拌した。次いで40℃に冷却し、トリエチルアミン(6.3g)で中和し、脱イオン水(408.2g)を加えて、分散した。その中に、脱イオン水(14.4g)で希釈したジエチレントリアミン(1.44g)を30分かけて滴下し、50℃で2時間保持した。その後、60℃でメチルエチルケトンを減圧留去することで、ポリウレタン樹脂の水性分散体(III−5)を得た。この水性分散体の固形分濃度は35.0%、ポリウレタン樹脂の酸価は19.9mgKOH/g、アミン価は7.6mgKOH/g、水酸基価は66.1mgKOH/gであった。
合成例6(ポリウレタン樹脂水性分散体III−6の合成)
エポキシプレポリマー(I−6)の作成
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中でエポキシ当量450g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(126g)を、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(54.91g)に溶解し、これに「ジェファーミンM−2070」(商品名、ハンツマン社製、一般式(1)で示される構造に含まれる化合物、Rはメトキシ基、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック鎖、数平均分子量約2000)(140g)を加え、90℃で3時間反応させた後、2−アミノエタノール(8.55g)を加え、90℃で3時間保持し、エポキシ基及びアミノ基含有量(注1)が0.762〜0.767mmol/g程度となるまで反応させた。その後、メチルエチルケトン(219.6g)を加え、エポキシプレポリマー(I−6)溶液を得た。得られたエポキシプレポリマー(I−6)溶液の固形分濃度は50%、プレポリマーの数平均分子量は3922であった。
ウレタンプレポリマー(II−6)の作成
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中で「ビスオール3PN」(注2)(49.9)、「ビスオール6PN」(注3)(71.9g)、ジメチロールプロピオン酸(20.1g)をN−メチルピロリドン(47.3g)に溶解し、ヘキサメチレンジイソシアネート(50.5g)を30分かけて滴下し、60℃で1.5時間反応を行った。その後80℃に昇温し2時間反応を行って、イソホロンジイソシアネート(44.4g)を加え更に80℃で3時間、NCO価(注4)が34〜38程度となるまで反応させた。その後、メチルエチルケトン(110.5g)を加え、ウレタンプレポリマー(II−6)溶液を得た。得られたウレタンプレポリマー(II−6)溶液の固形分濃度は60.0%、プレポリマーの数平均分子量は2367、プレポリマーの酸価は35.5mgKOH/gであった。
ポリウレタン樹脂水性分散体(III−6)の作成
上記と同様の装置を用い、60.0%ウレタンプレポリマー(II−6)溶液(394.5g)を、攪拌状態で50℃に保持し、その中に50%エポキシプレポリマー(I−6)溶液(392.2g)を加え、1時間攪拌した。次いで40℃に冷却し、トリエチルアミン(12.1g)で中和し、脱イオン水(1009.9g)を加えて分散し、その後70℃に昇温して、1時間保持した。その後、60℃でメチルエチルケトンを減圧留去することで、ポリウレタン樹脂の水性分散体(III−6)を得た。この水性分散体の固形分濃度は30.0%、ポリウレタン樹脂の酸価は19.4mgKOH/g、水酸基価は58.8mgKOH/gであった。
合成例7(ポリウレタン樹脂水性分散体III−7の合成)
ポリウレタン樹脂水性分散体(III−7)の作成
温度計、攪拌装置、還流冷却管を備えた4つ口フラスコを窒素置換させ、その中でUHCARB100(注5)(360g)、ジメチロールプロピオン酸(40.0g)をN-メチルピロリドン(130.2g)に溶解し、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート(251.5g)を加え、85℃で3時間攪拌する。その後、50℃まで冷却し、アセトン(170.8g)を加え、トリエチルアミン(29.4g)で中和し、脱イオン水(1296.0g)を加えて分散した。その中に脱イオン水(54.0g)で希釈したエチレンジアミン(5.4g)を30分かけて滴下し、40℃で2時間保持した。その後、50℃でアセトンを減圧留去することでポリウレタン樹脂の水性分散体(III-6)を得た。この水性分散体の固形分濃度は30.0%、ポリウレタン樹脂の酸価は25.8mgKOH/gであった。
(注5)UHCARB100:商品名、宇部興産社製、ポリカーボネートジオール、数平均分子量約1000
合成例7(レゾール型フェノール樹脂の合成)
フェノール188部、37%ホルムアルデヒド水溶液324部をフラスコに仕込み、50℃に加熱し内容物を均一に溶解した。次に、酢酸亜鉛を添加、混合して系内のpHを5.0に調整した後、90℃に加熱し5時間反応を行った。ついで50℃に冷却し、32%水酸化カルシウム分散液をゆっくり添加し、pHを8.5に調整した後、50℃で4時間反応を行った。反応終了後20%塩酸でpHを4.5に調整した後、キシレン/n−ブタノール/シクロヘキサン=1/2/1(重量比)の混合溶剤で樹脂分の抽出を行い、触媒、中和塩を除去し、ついで減圧下で共沸脱水し、固形分60%の淡黄色で透明なレゾール型フェノール樹脂溶液を得た。得られた樹脂(固形分)は数平均分子量約320で、ベンゼン核1核あたり、平均メチロール基数1.3個、平均アルコキシメチル基数0.2個を有していた。
合成例8 (レゾール型フェノール樹脂の合成)
ビスフェノールA100部、37%ホルムアルデヒド水溶液178部及び水酸化ナトリウム1部をフラスコに仕込み、60℃で3時間反応させた後、減圧下、50℃で1時間脱水した。ついでn−ブタノール100部とリン酸3部を加え、110〜120℃で2時間反応を行った。反応終了後、得られた溶液を濾過して生成したリン酸ナトリウムを濾別し、固形分約50%のレゾール型フェノール樹脂溶液を得た。得られた樹脂(固形分)は、数平均分子量880で、ベンゼン核1核当たり、平均メチロール基数0.4個、平均アルコキシメチル基数1.0個を有していた。
実施例1〜18、比較例1〜3
金属表面処理組成物の製造
上記で得た各ポリウレタン樹脂水性分散体を用いて、下記表1に示す金属表面処理組成物を得た。なお、表1における配合は水溶液である金属表面処理組成物中の固形分重量比で表示した。また、各金属表面処理組成物は脱イオン水により固形分20%に希釈して下記試験に供した。なお、実施例8〜10、12及び13の硬化剤(F)の添加方法は、ポリウレタン樹脂の水性分散体(III−1)の合成において、脱イオン水を添加する前にポリウレタン樹脂に硬化剤(F)を混合し、5分間攪拌した後に脱イオン水を加える方法により行った。
Figure 0005221109
(注6)スノーテックスC:商品名、日産化学社製、コロイダルシリカ、粒子径10〜20nm、SiO含有量20%
(注7)シリコーンKBM−903:商品名、信越化学工業社製、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
(注8)ケミパールW−700:商品名、三井化学社製、高密度タイプポリエチレンワックス
(注9)サイメル303:商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、アルキルエーテル化メラミン樹脂
(注10)サイメル250:商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、アルキルエーテル化メラミン樹脂
(注11)デュラネートMF−K60X:商品名、旭化成ケミカルズ社製、ブロック化ポリイソシアネート化合物
(注12)エポクロスWS−700:商品名、日本触媒社製、オキサゾリン基含有アクリルポリマー
試験用塗板の作成及び皮膜性能評価
表1で得られた実施例1〜18及び比較例1〜3の各金属表面処理組成物を70mm×150mmの電気亜鉛めっき鋼板(商品名:ジンコート、板厚0.6mm、めっき付着量20g/m)にバーコーターを用いて乾燥皮膜重量が1.2g/mとなるように塗装し、表1に記載の条件で乾燥させて各試験板を作成した。得られた各試験板について下記の各種性能試験を行った。得られた結果を表1に示す。
試験方法
耐湿性:試験板を温度40℃で湿度95%の環境下に120時間放置した後、色差計「SMカラーコンピューターMODEL SM−5」(スガ試験機社製)を用いて試験前後の試験板の色差(ΔE)を測定し、下記の基準で評価した。
◎:ΔEが2未満
○:ΔEが2以上、5未満
△:ΔEが5以上、10未満
×:ΔEが10以上
耐アルカリ性:35℃の5%水酸化ナトリウム水溶液に試験板を2分間浸漬した後に水洗して乾燥し、色差計「SMカラーコンピューターMODEL SM−5」(スガ試験機社製)を用いて試験前後の試験板の色差(ΔE)を測定し、下記の基準で評価した。
◎:ΔEが2未満
○:ΔEが2以上、5未満
△:ΔEが5以上、10未満
×:ΔEが10以上
耐食性:試験板の裏面及び切断部を防錆塗料にてシールした後、JIS Z−2371に従い塩水噴霧試験を実施した。試験時間は、無処理(i)の試験板は120時間、アルカリ処理(ii)後の試験板および、4T折り曲げ加工(iii)後の試験板については72時間である。
上記(i)〜(iii)の処理、加工方法は下記に示すとおりである。
(i) 無処理:試験板に下記処理、加工等を行わず、そのまま試験に供した
(ii) アルカリ処理:試験板を35℃の5%水酸化ナトリウム水溶液に2分浸漬した後水洗して乾燥する
(iii)4T折り曲げ加工:試験板の表面を外側にして折り曲げ、その内側に試験板と同じ厚さの板を4枚はさみ、試験板を万力にて180度折り曲げる
評価は、試験後の白錆の発生程度を下記の基準で評価した。なお、4T折り曲げ加工後の試験板については、加工部について評価を行った。
◎:白錆、ふくれ等の発生程度が塗膜面積の5%未満
○:白錆、ふくれ等の発生程度が塗膜面積の5%以上で10%未満
△:白錆、ふくれ等の発生程度が塗膜面積の10%以上で30%未満
×:白錆、ふくれ等の発生程度が塗膜面積の30%以上
上塗塗膜付着性:各金属表面処理組成物の被膜が形成された試験板の上に熱硬化性アクリル系塗料であるマジクロン#1000(関西ペイント社製、商品名)を硬化膜厚が25μmとなるように塗装し、150℃で20分間焼付して上塗塗装板を作成した。作成した上塗塗装板を沸騰水に2時間浸漬した後、平面部のふくれと剥離面積の程度を下記基準により目視で評価した。
◎:ふくれがなく且つ剥離面積が3%未満
○:ふくれがわずかで且つ剥離面積が3%未満
若しくはふくれはなく且つ剥離面積は3%以上10%未満
△:ふくれはわずかで且つ剥離面積が3%以上10%未満
×:ふくれが多い若しくは剥離面積が10%以上

Claims (7)

  1. 鋼材用の金属表面処理組成物であって、(A)ポリエポキシ化合物(a)とアミン化合物(b)との反応によって得られるアミノ基を有するエポキシプレポリマー(I)と、カルボキシル基含有ジオール(c)を含む1分子中に活性水素基を2つ以上含有する化合物(d)とポリイソシアネート化合物(e)との反応により得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(II)との反応によって得られるポリウレタン樹脂の水性分散体、(B)シリカ粒子(C)金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩、バナジウム化合物、モリブデン化合物及びタングステン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、並びに(F)レゾール型フェノール樹脂を含む硬化剤を含有することを特徴とする金属表面処理組成物。
  2. アミン化合物(b)が、アルカノールアミンを含有する請求項1記載の金属表面処理組成物。
  3. 化合物(d)が、その成分の少なくとも一部としてビスフェノール骨格含有ジオール化合物(f)を含む請求項1又は2記載の金属表面処理組成物。
  4. ポリウレタン樹脂が、酸価10〜100mgKOH/g、アミン価0〜50mgKOH/g、及び水酸基価20〜200mgKOH/gである請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属表面処理組成物。
  5. シランカップリング剤(D)を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属表面処理組成物。
  6. ポリオレフィン系ワックス及び/又はフッ素樹脂粉末である潤滑機能付与剤(E)を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属表面処理組成物。
  7. 鋼板に、請求項1〜のいずれか1項に記載の金属表面処理組成物を乾燥皮膜重量で0.3〜6.0g/m塗布し、皮膜形成してなる金属板。
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