JP5217059B2 - 寸法安定性に優れたスクリーン紗用モノフィラメント - Google Patents

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Description

本発明はスクリーン印刷用のメッシュ織物、特にプリント配線基盤の製造などの高度な精密性を要求されるハイメッシュでハイモジュラスのスクリーン紗を得るのに好適なポリエステルモノフィラメントに関する。
モノフィラメントは衣料分野ではもちろん、産業資材の分野でも幅広く利用されてきている。特に後者の産業資材の分野での用途の例として、タイヤコード、ロープ、ネット、テグス、ターポリン、テント、スクリーン、パラグライダー、およびセールクロス用などの原糸としてのモノフィラメントがある。そして、このモノフィラメントに要求される物性も厳しくなり、ゴムとの接着性、耐疲労性、染色性、耐磨耗性、結節強力などの改善が迫られている。特に最近の電子回路分野での印刷においては集積度が高まる一方であり、スクリーン紗としての印刷緻密さ及び印刷向上のための要求、すなわち、高強度・高モジュラスでかつ、ハイメッシュといった要求がますます強くなっている。そのため原糸について、高強力、高モジュラスでかつ、より細繊度のものが要求されている。
スクリーン紗原糸を設計する上で特開平2−289120号公報では、製織前原糸の破断強度や伸度、10%時のモジュラスを特定値にすることが提案されている。しかし、スクリーン紗製造にあたり、織目調整や熱セットや紗張りの工程を経るため、特に製織後の湿熱処理により糸の強度、伸度が変化するため、単に製織前原糸の物性値を規定するだけでは、スクリーン紗の精密印刷時の寸法安定性に欠けるという問題点があった。
又特開平2−277818号公報には強度と12.5%伸長時の強力、乾熱収縮率を特定範囲とすることにより寸法安定性の良いスクリーン紗用モノフィラメントとすることができる旨提示されている。しかしながらスクリーン紗製造工程には精錬や染色工程など湿熱工程があり、湿熱収縮等による原糸物性変化を考慮に入れたものではなく高度な寸法安定性を要求される分野では満足のいくものではなかった。
又特開2005−47020号公報には原糸物性として、破断強度、伸度、沸水収縮率を特定値とすることが提示されている。この方法は湿熱工程での収縮を考慮に入れたものであり、ある程度寸法安定性は向上するものの、収縮前後の原糸物性を規定したものでないため、スクリーン紗のロット間で寸法安定性がばらつく等安定性にかけるものであった。
更にスクリーン紗用として、十分な性能を発揮する為には、上述のように製織前の原糸物性を調整し、しかる後製織工程に供し、必要に応じて精錬、染色、等の湿熱処理を経ることにより収縮するが、該湿熱収縮後に所定の強伸度特性を有するとともに、更に、糸長方向に沿って、繊維径が安定していることが必要である。特に、モノフィラメントの表面に生じる節は製織時において糸の切断やスカム発生の原因となり好ましくなく、出来るだけ発生を防止する必要があるが、細繊度のモノフィラメントの場合難しく、最近のスクリーン紗に要求される特性を十分に満足していないのが現状である。
特開平2−289120号公報 特開平2−277818号公報 特開2005−47020号公報
本発明は、繊維径が均一で、連続印刷性能、特に寸法安定性に優れるハイメッシュでハイモジュラスなスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントを提供することにある。
本発明は上記の課題解決するために鋭意検討した結果得られたものであり、ポリエステルに特定のリン化合物を含有させることにより、紡糸及び延伸工程で生じるポリエステルの結晶成長をコントロール(均一化)することが可能となり繊維径が均一で節の少なく寸法安定性の良い糸とすることできたものである。
即ち、本発明によれば、
スクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントにおいて、ポリエステルが主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであって、下記式(1)で表されるフェニルホスホン酸又はその誘導体、及び/又はフェニルホスフィン酸又はその誘導体であるリン化合物を、ポリエステルを構成するジカルボン酸の全モル数に対して0.1〜300ミリモル%含み、該リン化合物が1〜100nmの層状構造を形成したポリエチレンテレフタレート組成物であり、且つ赤道方向の広角X線回折において2θ=5〜6°に回折ピークを有し、下記A〜Dの要件を満足することを特徴とするスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメント。
A.モノフィラメントの湿熱処理前の原糸強度が5.0〜7.0cN/dtex、5%伸長時の強度が2.5〜3.7cN/dtex、伸度が20〜45%、湿熱収縮率が2.5〜9.0%であること。
B.ポリエステルの固有粘度が0.70〜1.00dL/gであること。
C.単糸繊度が1〜24dtexであること。
D.モノフィラメントの繊維長手方向50万メートルで繊維直径に対し1.1倍以上の節糸が1個以下であること。
Figure 0005217059
[上の式中、Rは炭素数1〜12個の炭化水素基であるアルキル基、アリール基又はベンジル基であり、Rは水素原子又は炭素数の1〜12個の炭化水素基であるアルキル基、アリール基又はベンジル基、Xは、水素原子または−OR基であり、Xが−OR基である場合、Rは水素原子又は炭素数の1〜12個の炭化水素基であるアルキル基、アリール基又はベンジル基、であり、RとRは同一であっても異なっていても良い。
提供される。
スクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントにおいて、ポリエステルに特定のリン化合物を含有させることにより、ポリマーの結晶成長を抑制でき繊維径が均一化した糸とすることができ、製織工程での糸削れが防止できる。また製織前の原糸物性、収縮率、製織後の湿熱処理後の原糸物性を特定値とすることで精密印刷における寸法安定性の良いスクリーン紗が安定して得られる。
精密印刷に適したハイメッシュスクリーン(200〜500メッシュ)用として1〜24dtexの細繊度モノフィラメントが用いられる。本発明のスクリーン紗用モノフィラメントを構成するポリエステルポリマーは、該ポリマーがフェニルホスホン酸又はその誘導体、及び/又はフェニルホスフィン酸又はその誘導体であるリン化合物を、ポリエステルを構成するジカルボン酸のモル数に対して0.1〜300ミリモル%含むポリマー組成物である。
本発明のポリエステルポリマーにおいては、フェニルホスホン酸又はその誘導体、及び/又はフェニルホスフィン酸又はその誘導体であるリン化合物を含有することにより、ポリマーの結晶性が向上し、溶融し、紡糸口金から吐出する段階で、微小結晶を多数形成する。そしてこの微小結晶が、紡糸及び延伸工程で生じる結晶成長を微分散化させ、均一化させることによって、繊維径が均一化し、ハイメッシュ紗製織時に繊維が塑性変形することで発生する糸削れ、スカム発生を少なくすることができる。本発明で用いられるポリエステルポリマーは、樹脂チップの極限粘度として、公知の溶融重合や固相重合を行うことにより0.60〜1.20の範囲にすることが好ましい。樹脂チップの極限粘度が低すぎる場合には溶融紡糸後の繊維を高強度化させることが困難となる。また極限粘度が高すぎると固相重合時間が大幅に増加し、生産効率が低下するため工業的観点から好ましくない。極限粘度としては、さらには0.65〜1.0の範囲であることが好ましい。また、微小結晶を多数形成させるためには、下記一般式(1)で表されるリン化合物のRがベンジル基であることが、さらにはフェニル基であることが好ましく、本発明のリン化合物がフェニルホスフィン酸又はフェニルホスホン酸であることが好ましい。特にはフェニルホスホン酸およびその誘導体であることが最適である。
Figure 0005217059
[上の式中、Rは炭素数1〜12個の炭化水素基であるアルキル基、アリール基又はベンジル基であり、Rは水素原子又は炭素数の1〜12個の炭化水素基であるアルキル基、アリール基又はベンジル基、Xは、水素原子または−OR基であり、Xが−OR基である場合、Rは水素原子又は炭素数の1〜12個の炭化水素基であるアルキル基、アリール基又はベンジル基、であり、RとRは同一であっても異なっていても良い。]
ポリエステルポリマー中の上記リン化合物含有量としては、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分のモル数に対して0.1〜300ミリモル%であることが好適である。リン化合物の量が0.1ミリモル%未満であると微小結晶の結晶性向上効果が不十分になる傾向にあり、300ミリモル%を超える場合には紡糸時の異物欠点が発生するために製糸性が低下する傾向にある。リン化合物の含有量はポリエステルを構成するジカルボン酸成分のモル数に対して1〜100ミリモル%の範囲がより好ましく、10〜80ミリモル%の範囲がさらに好ましい。
また、ポリマー中には、各種の添加剤、たとえば二酸化チタンなどの艶消剤、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、可塑剤、耐衝撃剤の添加剤、または補強剤としてモンモリナイト、ベントナイト、ヘクトライト、板状酸化鉄、板状炭酸カルシウム、板状ベーマイト、あるいはカーボンナノチューブなどの添加剤が含まれていてもよいことはいうまでもない。
本発明のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントにおいては、これらのリン化合物を含有することにより、ポリエステル中に1〜100nmの大きさのリン化合物の層状ナノ粒子を形成し含有することを特徴とする。このような繊維中の層状ナノ粒子は透過型電子顕微鏡により確認することができる。層状ナノ粒子の大きさが100nmを超える場合は繊維中で異物として作用し断糸や単糸切れが発生しやすく、強度やモジュラス等の機械特性の低下を引き起こしてしまう。一方、1nm未満の場合は本発明で重要なポリエステルポリマーの微小結晶の結晶性向上や製糸性向上、繊維径の均一化などの効果が得られにくい。このような層状ナノ粒子の大きさとしては5〜80nmが好ましく、10〜60nmであることがさらに好ましい。さらに、本発明の産業資材スクリーン紗用モノフィラメントの該ポリエステル繊維が1〜100nmの層状構造を有する粒子を含有し、赤道方向の広角X線回折において2θ=5〜6°に回折ピークを有することが必須である。これは、数nmの層間間隔を有する層状ナノ粒子が繊維軸方向に特異的に配向していることを示すものであり、これによって本発明者らは従来課題であったポリエステル製糸工程での断糸を抑制し、生産性を飛躍的に向上せしめることを見出した。
本発明のスクリーン紗用モノフィラメントには製織性の低下やスクリーン紗の伸びなどの発生を抑えるだけの特定の強度、伸度等の物性が必要である。一般的には伸度5%時の応力(モジュラス、以下5%LASE)により性能を評価することが行われているが、本発明者は更に高度な寸法安定性を得るためにはスクリーン紗の製造工程での湿熱処理により原糸が受ける影響を考慮することが重要であることを見出した。これらの知見に基づいてなされたもので、本発明によれば、スクリーン紗用モノフィラメントは0.7〜1.0dL/gの高IVポリエステルポリマーを使用して単糸繊度が1〜24dtexの細繊度モノフィラメントとし、該モノフィラメントの湿熱処理前の強度を5.0〜7.0cN/dtex、5%伸長時の強度を2.5〜3.7cN/dtex、伸度を20〜45%、湿熱収縮率を2.5〜9.0%とし、湿熱処理後の強度を5.0〜6.5cN/dtex、15%伸長時の強度を3.0〜5.0cN/dtex、伸度を20〜40%とすることにより、スクリーン紗として織目調整や湿熱セットや紗張りの工程経過後、高度に寸法安定性に優れるスクリーン紗が得られる。
使用するポリエステルの種類としてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のような芳香族ポリエステルが挙げられ、いずれでもよい。中でもPETは溶融紡糸を行う際の操業性、コストの面でももっとも好ましい。
ハイメッシュのスクリーン紗とするにはモノフィラメントの繊度は1〜24dtex、好ましくは4〜20dtex、より好ましくは5〜15dtexである。
本発明のモノフィラメントは湿熱処理前の強度が5.0〜7.0cN/dtex、5%伸長時の強度(5%LASEと略称)が2.5〜3.7cN/dtex、伸度が20〜45%、湿熱収縮率が2.5〜9.0%に設計する。
5%LASEが高い方が好ましいが、3.7cN/dtexを超えると製織時に筬による削れが発生し、織物に織込まれ、欠点となってしまうため好ましくない。逆に2.5cN/dtex未満では十分な布帛強度が得られないため好ましくない。
湿熱収縮率は2.5〜9.0%の範囲が好ましく、この範囲外では湿熱処理後の15%伸長応力を特定の範囲内にすることができず好ましくない。
また本発明では湿熱処理後の原糸強度と15%伸長時の強度を指標におくことで、湿熱処理を経たスクリーン紗の寸法安定性を向上させることが重要で、本発明のモノフィラメントは湿熱処理後の強度が5.0〜6.5cN/dtex、15%伸長時の強度が3.0〜5.0cN/dtex、伸度が20〜40%とすることが必要である。
湿熱処理後の強度が5.0cN/dtex未満ではスクリーン紗強度が不足し紗張り時に破れが発生しやすく、7.0cN/dtexを超える場合は収縮率が取れにくくなったり、製織時に筬による削れが発生しやすくなる。
又伸度が20%未満では製織糸切れが多発するなど糸の取り扱い性が悪くなる。伸度が45%以上では紗伸びが発生し易くなる。
かかる特性のモノフィラメントを得るための具体的な製造法について説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
紡糸口金を用いて、溶融紡糸しモノフィラメントとし、続いて延伸を施すことにより上記物性を有する原糸が得られる。紡糸工程で一旦未延伸糸として巻き取り改めて延伸する工程としては、紡糸速度が400〜1000m/分であり、紡糸後に3.0〜10倍延伸することが好ましい。紡糸速度としてはさらには400〜600m/分であることが好ましい。また延伸倍率としては3〜7倍であることが好ましい。このように低速にて紡糸し、高倍率に延伸することによってより高強度の延伸繊維を得ることが可能である。従来は例え低速で紡糸したとしても高倍率延伸時に結晶の欠点に起因する強度の弱い部分が存在するため、高倍率延伸時に断糸が起こることが多かった。しかし本発明ではリン化合物の配合により延伸による結晶化において微細結晶が均一に形成されるため、延伸欠点が発生しにくく、高倍率に延伸でき、繊維を高強度化することが可能となったものである。
本発明のポリエステルモノフィラメントの製造方法における延伸方法としては、引取りローラーから一旦巻き取って、いわゆる別延伸法で延伸してもよく、あるいは引取りローラーから連続的に延伸工程に未延伸糸を供給する、いわゆる直接延伸法で延伸しても構わない。また延伸条件としては1段ないし多段延伸であり、数対の加熱ロールを用い、一段又は多段で延伸することが好ましく、最終的に強度、伸度、収縮率が所定の範囲に入るように延伸倍率を定める。この延伸にはリラックス延伸等の弛緩処理も含まれる。延伸負荷率としては60〜95%であることが好ましい。延伸負荷率とは繊維が実際に断糸する張力に対する、延伸を行う際の張力の比である。
このように製織前の原糸物性を調整し、しかる後製織工程に供し、必要に応じて精錬、染色、等の湿熱処理を経ることにより収縮し、糸は湿熱収縮後の所定の強伸度特性を有するものとなり、その結果スクリーン紗は高度の寸法安定性を有するものと成る。
モノフィラメントの表面に生じる節は製織時において糸の切断やスカム発生の原因となり好ましくなく、出来るだけ発生を防止する必要がある。節の発生要因としてはポリマーに含有する未溶融異物やポリマー自身の劣化が挙げられる。ポリマー内の未溶融異物については、パック入り口から口金吐出口までに濾過層を形成することでその排出を抑制させたり、分散させたりすることができる。この濾過層についてはモノフィラメント直径の約10〜15%の目開き量が好ましく、10%未満にするとパック内に異常な圧力がかかり、パック内部品とパック本体の破損につながる。15%を超える場合は節糸の主因となる未溶融異物が粗大粒子のまま糸に含有し、節の発生リスクが大きくなる。また、ポリマー自身の劣化についてはポリマー送液に関し、配管の曲がりを減らし、パック導入から吐出までの時間を1分以内とし、ポリマーが受ける熱量を出来る限り軽減することによって節の発生リスクを低減させることができる。
以下の実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例中、固有粘度、強度、伸度、湿熱時収縮率、湿熱処理後の強度、湿熱処理後の伸度、15%伸長時の強度、節数の数の評価、糸削れ評価、ヒステリシスの評価は、以下の定義で行った。
固有粘度:
35℃でオルトクロロフェノールにサンプルを溶解した各濃度(C)の希釈溶液を作成し、それら溶液の粘度(ηr)から下記式によってCを0に近づけることで算出した。
η=limit(ln(ηr/C))
繊維の広角X線回折:
Bruker社製D8 DISCOVER with GADDS Super Speedを用い、回折角2θ=0°〜50°における繊維の赤道方向の広角X線回折を測定し、2θ=5〜6°の回折ピークの有無を求めた。また、透過型電子顕微鏡観察から繊維中に存在する粒子形態および粒子サイズを求めた。
繊度、強度、伸度:
繊維の繊度、強度および伸度はJIS−L1017に準拠し、オリエンテック社製のテンシロンを用いてサンプル長25cm、伸長速度30cm/minで測定し、サンプル破断した時の強度と伸度である。5%LASEは上記の測定時のサンプルが5%伸長した時の応力を測定した。
湿熱収縮率:
5000m採取して、かせ状態にし、高圧内130℃の湿熱雰囲気内に繊度×0.1倍(g)をかけつつ、10分間入れ湿熱処理とした。処置終了後の糸は自然乾燥を行い、糸長を再度測定した。処置後の糸長を処置前の糸長5000mで割って百分率表示として湿熱処置後の収縮率とした。
湿熱処理後の強度、伸度、15%LASE:
湿熱処理後の繊維の強度および伸度は湿熱処置後の糸をオリエンテック社製のテンシロンを用いてサンプル長25cm、伸長速度30cm/minで測定し、サンプル破断した時の強度と伸度である。15%LASEは上記の測定時のサンプルが15%伸長した時の応力を測定した。
節数の評価:
整経機のクリール出口に設置されているドロッパー前に隙間が糸径×1.1倍で公差±2μmとなる12本通しのスリットガイド設置した。そのスリットガイドに糸を通し、12本×8段=96本をそれぞれ糸速500m/minにて各糸長20万m整経した。その際、スリットガイドにて断糸した回数を節の数と見なし、整経中での断糸回数を測定した。検出した断糸回数を糸長10万m換算して評価を行った。
糸削れの評価:
スルーザー型織機により、織機の回転数250rpmとして織幅1インチあたり300本の経糸を用いてメッシュ織物を製織し、織りあがった反物を検反機にて目視検査を行った。この時、通常黒に見えるメッシュ模様が白色化して見える織物欠点の数を数えて評価した。
織幅1.5m×織物長さ30mあたり糸削れによる欠点5個未満を○、5以上10ヶ未満を△、10ヶ以上を×と判定した。
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル100部、エチレングリコール60部、酢酸カルシウム1水塩0.06部(テレフタル酸ジメチルに対して0.066モル%)および整色剤として酢酸コバルト4水塩0.013部(テレフタル酸ジメチルに対して0.01モル%)をエステル交換反応缶に仕込み、この反応物を窒素ガス雰囲気下で4時間かけて140℃から220℃まで昇温し、反応缶中に生成するメタノールを系外に留去しながらエステル交換反応させた。引き続いてエステル交換反応が終わる前にフェニルホスホン酸(PPA)を0.03重量部(50ミリモル%)を添加した。その後、反応混合物に安定剤としてリン酸トリメチル0.058部(テレフタル酸ジメチルに対して0.080モル%)、および消泡剤としてジメチルポリシロキサンを0.024部加えた。次に、10分後に、反応混合物に三酸化アンチモン0.041部(テレフタル酸ジメチルに対して0.027モル%)を添加し、同時に過剰のエチレングリコールを留去しながら240℃まで昇温し、その後、反応混合物を重合反応缶に移した。次いで1時間40分かけて760mmHgから1mmHgまで減圧するとともに240℃から280℃まで昇温して重縮合反応せしめた後、常法に従ってチップ化して極限粘度0.65のポリエステル樹脂チップを得た。このチップを65Paの真空度下、120℃で2時間予備乾燥した後、同真空下240℃で10〜13時間固相重合を行い、表1に記載した固有粘度のポリエステル樹脂チップを得た。
モノフィラメントの作製:
製糸化は以下の通り行った。上記の乾燥樹脂チップを紡糸設備にて常法で溶融し、ギヤポンプを経て290℃に加熱された紡糸ヘッドに供給した。溶融ポリマーは、ノズル孔径0.25mmの円形紡糸孔を1個有する紡糸口金から、通常のクロスフロー型紡糸筒からの冷却風で冷却・固化し、紡糸油剤を付与しつつ、1200m/分の紡速にて巻き取りつつ、オイリングローラーにて油剤を付着させながら、未延伸糸を得た。その後、加熱されたホットローラーにて予熱後、スリットヒーター200℃で加熱しながら3.8倍で延伸し、0.03倍のリラックス処理を施した後、巻き取り、13dtex−1filの延伸糸を得た。得られた延伸糸は強度5.2cN/dtex、伸度32%、5%LASE 4.0cN/dtex、湿熱収縮率2.8%であった。表1にポリエステル、原糸物性を示す。原糸の節糸発生個数は0個であった。この原糸をスルーザー型織機で製織した際、糸削れ発生による織物欠点は30mあたり0ヶであった。仕上げ加工したスクリーン紗を連続印刷したところ、伸びが少なく寸法安定性に優れるものであった。
[実施例2]
実施例1において、ポリエステル作製の際、固相重合を実施しなかったこと以外は実施例1と同様に実施し、モノフィラメントを得た。表1にポリエステル、原糸物性を示す。
[実施例3]
実施例1において、ポリエステル作製の際、フェニルホスホン酸(PPA)の代わりに、フェニルホスフィン酸(PPI)100ミリモル%を使用したこと以外は実施例1と同様に実施し、モノフィラメントを得た。表1にポリエステル、原糸物性を示す。
[実施例4]
実施例1において、ポリエステル作製の際、フェニルホスホン酸(PPA)の代わりに、フェニルホスフィン酸(PPI)80ミリモル%を使用したこと以外は実施例1と同様に実施し、モノフィラメントを得た。表1にポリエステル、原糸物性を示す。
[比較例1]
実施例1において、ポリエステル作製の際、リン化合物を含有させないこと以外は実施例1と同様に実施してポリエステル組成物からなるチップを得た。このチップを用い実施例1と同様にして溶融紡糸し、未延伸糸とし、モノフィラメントを得た。表1にポリエステル、原糸物性を示す。
[比較例2]
実施例1において、ポリエステル作製の際、リン化合物としてフェニルホスフィン酸の代わりに正リン酸を40mmol%添加したこと以外は、実施例1と同様に実施してポリエステル組成物からなるチップを得た。このチップを用い実施例1と同様にして溶融紡糸し、未延伸糸とし、モノフィラメントを得た。表1にポリエステル、原糸物性を示す。
実施例1〜4、比較例1〜2の結果を表1にまとめる。
Figure 0005217059
本発明のポリエステルモノフィラメントはスクリーン印刷用のメッシュ織物、プリント配線基盤の製造などの高度な精密性を要求されるハイメッシュでハイモジュラスのスクリーン紗を得るのに好適である。

Claims (1)

  1. スクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントにおいて、ポリエステルが主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであって、下記式(1)で表されるフェニルホスホン酸又はその誘導体、及び/又はフェニルホスフィン酸又はその誘導体であるリン化合物を、ポリエステルを構成するジカルボン酸の全モル数に対して0.1〜300ミリモル%含み、該リン化合物が1〜100nmの層状構造を形成したポリエチレンテレフタレート組成物であり、且つ赤道方向の広角X線回折において2θ=5〜6°に回折ピークを有し、下記A〜Dの要件を満足することを特徴とするスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメント。
    A.モノフィラメントの湿熱処理前の原糸強度が5.0〜7.0cN/dtex、5%伸長時の強度が2.5〜3.7cN/dtex、伸度が20〜45%、湿熱収縮率が2.5〜9.0%であること。
    B.ポリエステルの固有粘度が0.70〜1.00dL/gであること。
    C.単糸繊度が1〜24dtexであること。
    D.モノフィラメントの繊維長手方向50万メートルで繊維直径に対し1.1倍以上の節糸が1個以下であること。
    Figure 0005217059
    [上の式中、Rは炭素数1〜12個の炭化水素基であるアルキル基、アリール基又はベンジル基であり、Rは水素原子又は炭素数の1〜12個の炭化水素基であるアルキル基、アリール基又はベンジル基、Xは、水素原子または−OR基であり、Xが−OR基である場合、Rは水素原子又は炭素数の1〜12個の炭化水素基であるアルキル基、アリール基又はベンジル基、であり、RとRは同一であっても異なっていても良い。]
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