以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。以下の説明においては、各形態に先行する形態ですでに説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。またそれぞれの実施形態は、本発明に係る技術を具体化するために例示するものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明に係る技術内容は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。以下の説明は、現金取扱装置10、現金取扱方法についての説明をも含む。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る現金取扱装置10の正面図である。現金取扱装置10は、投入された紙幣の金額を読取り、かつ投入された紙幣を収納する装置である。現金取扱装置10は、紙幣撮像部11と、画像表示部12とを含んで構成される。紙幣撮像部11は、投入者によって投入された1または複数の紙幣を撮像する。画像表示部12は、紙幣撮像部11によって撮像された各紙幣画像20の少なくとも一部を表示する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る現金取扱装置10を搭載したガソリンスタンド自動提供機14の正面図である。現金取扱装置10は精算機13の一部として設けられる。ガソリンスタンドの精算機13は、ガソリン自動提供機14に備えられる。精算機13は、ガソリンスタンド用のPOS(point of sales)システムの少なくとも一部として設けられる装置であり、たとえばガソリンスタンドの利用者が、ガソリンスタンドの係員などの手を借りずに、自動車へのガソリンの注入を自分で行い、かつ注入したガソリンの量に応じて支払いをする装置である。精算機13は、ガソリンの注入量を測定するガソリン量測定装置と連動して制御される。ガソリン自動提供機14では、ガソリンの注入が行われた後、注入されたガソリンの量に応じて金額を表示し、利用者に支払いを求める場合と、まず支払いが先に行われ、その後、支払われた金額に応じてガソリンの提供および注入が行われる場合とがある。
精算機13は、紙幣および硬貨などの現金、クレジットカード、プリペイドカードなどの支払媒体を取扱うことができ、いずれの支払媒体を取扱う場合にも、提供されたガソリン量と支払金額とを対応づけて料金の支払処理を行うことができる。精算機13は、半自動的にガソリンの提供を行うガソリン自動提供機14およびガソリン量測定装置と一体に設けられ、ガソリン自動提供機14には、ガソリンの注入を行うためのノズル15が設けられる。
ガソリン自動提供機14の大きさは、石油連盟によって定められており、ガソリン自動提供機14と一体に設けられる精算機13の大きさについても、石油連盟によって設定される。精算機13は、複数種類の支払媒体を取扱うことが、その機能として求められ、精算機13に求められる機能は、年々複雑化する向きにある。したがって、精算機13は、他の自動販売機などに備えられる精算機と比べても特に小形化が求められる。
第1実施形態に係る現金取扱装置10の、上下方向Zの寸法D1は、335ミリメートル(millimeters, 略号「mm」)、左右方向Xの寸法D2は、206mm、上下方向Zと左右方向Xとに垂直な前後方向Yの寸法は、現金取扱装置10の本体部分で280mm、釣り銭を排出する部分のカバーなど、現金取扱装置10の本体部分から投入者側に突出する部分の前後方向Yの寸法は59.2mm、釣り銭を排出する部分のカバーが開くことによって、投入者側に突出してときには、現金取扱装置10の本体部分から投入者側に突出する部分の寸法は、約73mmとして設定される。
第1実施形態の現金取扱装置10は、精算機13の一部として設けられ、現金として支払われる紙幣および硬貨を取扱う。現金取扱装置10には、利用者によって紙幣が投入されるときの紙幣投入口16と、硬貨が投入されるときの硬貨投入口17とが形成される。紙幣および硬貨は、紙幣の金額を読取る紙幣金額読取部18と、硬貨の金額を読取る硬貨金額読取部とによって、それぞれ金額が読み取られる。投入された後、紙幣と硬貨とは、それぞれ紙幣収納部と硬貨収納部とに収納される。現金取扱装置10は、紙幣処理部19と硬貨処理部とを含んで構成され、紙幣投入口16から投入された紙幣は紙幣処理部19によって処理され、硬貨投入口17から投入された硬貨は、硬貨処理部によって処理される。したがって、紙幣収納部は、紙幣処理部19の一部として設けられ、硬貨収納部は硬貨処理部の一部として設けられる。
紙幣金額読取部18は、投入された紙幣を磁気的に感知して金額を読取る。紙幣金額読取部18と硬貨金額読取部とからは、それぞれ読取った金額情報を表す信号が出力され、主制御部24に入力される。主制御部24は、紙幣投入口16から投入された紙幣の金額と硬貨投入口17から投入された硬貨の金額との情報を信号として取扱う。紙幣投入口16から投入される紙幣および硬貨投入口17から投入される硬貨は、それぞれ1枚ずつ投入されることを前提として、現金取扱装置10の内部構成が定められる。
長方形に形成される紙幣について、その長手方向および厚み方向に垂直な方向を「幅方向」と称する。紙幣投入口16は、紙幣の幅方向よりも長く、紙幣の長手方向よりも短い長さの長方形の形状に定められる開口として形成される。図1に示す第1実施形態の現金取扱装置10において紙幣投入口16の長手方向は、左右方向Xに定められ、紙幣投入口16に投入される紙幣は、その厚み方向を大略的に上下方向Zとして投入される。第1実施形態において紙幣投入口16または硬貨投入口17に対して紙幣または硬貨を挿入することを、「投入」と称することとする。
紙幣収納部は、複数の収納ケースを含んで構成され、紙幣投入口16から投入された紙幣は、その金種に応じて分類され、その金種に応じた収納ケースに収納される。日本において紙幣は、4種類発行されている。収納ケースは、4種類の紙幣に応じて4つ設けられてもよいけれども、本実施形態において収容ケースは、2つ設けられる。2つの収納ケースのうち一方には、千円札が収納され、他方には5千円札と1万円札と2千円札とが収納される。
現金取扱装置10は、釣り銭紙幣ケースをさらに含んで構成される。釣り銭紙幣ケースは、紙幣処理部19の一部として形成され、釣銭として返還される紙幣を収納する。釣り銭紙幣ケースには、千円札のみが予め収納され、現金取扱装置10において返却が必要となった紙幣は、全て千円札として返却される。ガソリンスタンドの精算機13は、多くの機能が求められれば求められるほど、予め定める空間内に多くの装置を搭載する必要が生じるので、現金取扱装置10は、小形化が求められる。したがって、一度投入された紙幣は、収納ケースに収容され、たとえば釣り銭として返却に用いられることはない。
紙幣金額読取部18は、紙幣の全体が紙幣投入口16を通過し、現金取扱装置10の内部への紙幣の投入が終了する以前に、紙幣として読取り可能であるか否かを表す情報を、信号として主制御部24に対して出力する。主制御部24は、紙幣金額読取部18から紙幣の読取りが可能であるとの情報を表す信号が入力されると、現金取扱装置10の内部への紙幣全体の投入を許容する。また紙幣金額読取部18から紙幣の読取りが不可能であるとの情報を表す信号が入力されると、紙幣投入口16からの紙幣の投入を拒絶し、紙幣投入口16から現金取扱装置10の外部へ紙幣を返却する。
紙幣金額読取部18からの信号を受けて、主制御部24からの制御が行われ、一旦、現金取扱装置10の内部への紙幣の投入が終了すると、投入された紙幣は返却されない。換言すれば、現金取扱装置10は、内部において紙幣を還流することはできない装置構成となっている。これによって、現金取扱装置10を小形化することができ、多くの機能を有する精算機13の一部として設置が可能となる。
現金取扱装置10は、現金の回収、釣り銭の補給、装置部品の校正、清掃および修理などのメンテナンスを行うために、開放可能に形成され、本実施形態では現金取扱装置10の一部として形成される蓋体21を含んで形成される。蓋体21は、紙幣投入口16が形成される側に向かって開放可能に形成される。したがって、現金取扱装置10に対して、投入者が位置する側に立つ人によって開放可能である。但し現金取扱装置10の蓋体21を開け、現金取扱装置10の内部を開放するためには、鍵によって錠22による閉鎖を解除することを必要とし、錠22による閉鎖を解除するための鍵は、たとえばガソリンスタンドの係員が保有するものとする。
現金取扱装置10は、制御部25をさらに含んで構成され、制御部25は、画像表示部12を制御し、紙幣撮像部11による撮像の後、予め定める時間内に、紙幣撮像部11によって撮像した紙幣についての、紙幣画像20の少なくとも一部を、画像表示部12によって表示させる。具体的には、紙幣撮像部11による1または複数の紙幣の撮像の後、予め定める時間内に、前記1または複数の紙幣の、各紙幣画像20の少なくとも一部を表示させる。各紙幣について、撮像終了から紙幣画像20の表示までの時間は、時間の計測を行って時間的に制御してもよいけれども、時間の計測および制御を行わなくてもよい。時間の計測および制御を行わなくても、現金取扱装置10の処理速度によって必然的に必要となる時間が前記予め定める時間以内であれば、足りる。本実施形態では、時間の計測および制御は、行っていない。
図3は、本発明の第1実施形態における画像表示部12の正面図である。画像表示部12は、蓋体21の表面の一部に、蓋体21と一体化して設けられ、蓋体21に固定して配置される。画像表示部12は、たとえば左右方向Xの寸法が12センチメートル(
centimeters, 略号「cm」)以上16cm以下に設定され、上下方向Zの寸法が、たとえば9cm以上12cm以下に設定される画像表示部12の寸法は、大きければ大きいほど、紙幣を現金取扱装置10に投入する投入者によって視認しやすくなるけれども、現金取扱装置10の小形化が難しくなる。本実施形態において画像表示部12は、液晶表示を行う液晶パネルおよびバックライトなどを含んで構成され、左右方向Xおよび上下方向Zに垂直な前後方向Yにおける画像表示部12の寸法は、たとえば12cm以下に設定される。
他の実施形態においてバックライトは省略されてもよいけれども、本実施形態において液晶パネルの表示は、バックライトの点灯によって視認容易な表示となる。バックライトは常時点灯されてもよいけれども、使用される電力量を低減する目的、または他人が投入された紙幣についての情報を隠蔽する目的で、点灯から予め定める時間が経過したときに消灯されてもよい。
紙幣撮像部11は、第1撮像部26と、第2撮像部27とを有する。第1撮像部26は、投入された紙幣の前面および背面のうち、一方を撮像する。第2撮像部27は、投入された紙幣の前面および背面のうち、他方を撮像する。制御部25は、紙幣の前面または背面と向きとを認識する。前面と背面と向きとを全て認識してもよい。画像表示部12は、紙幣撮像部11によって撮像された紙幣画像20のうち、紙幣番号30が印刷された領域を、判読可能に表示する。画像表示部12は、紙幣番号30が印刷された領域を、画像として表示する。
具体的には、制御部25は認識部29を備え、認識部29が、紙幣の前面または背面と向きとを認識する。制御部25は、紙幣撮像部11によって撮像された紙幣画像20を、認識部29による認識結果に応じて回転処理し、画像表示部12に表示させる。制御部25は、後に述べるように、回転処理以外の処理を行ってもよい。また回転処理は、角度0度および360度のうち、少なくともいずれか一方の角度、回転させる処理をも含むものとする。
紙幣撮像部11は、紙幣投入口16の近傍かつ紙幣投入口16よりも現金取扱装置10の内方に設けられる。現金取扱装置10に設けられた状態で、第1および第2撮像部26,27の左右方向Xの寸法は、紙幣投入口16の長手方向の開口寸法以上に設定される。第1および第2撮像部26,27は、ラインスキャナによって実現され、各ラインスキャナは、紙幣の幅方向、すなわち左右方向Xを長手方向として設置される。ラインスキャナは、その長手方向に比べて、他の方向における寸法は小さく形成することが可能であるので、現金取扱装置10を大形化することなく、現金取扱装置10の一部として設置することが可能である。
紙幣投入口16の長手方向の開口寸法が、紙幣の長手方向の寸法よりも短く設定されるので、投入者は、紙幣の幅方向を左右方向Xに定めて紙幣を投入する。紙幣は1枚ずつ受入れられ、複数枚が重なった状態で投入されるときには、紙幣金額読取部18が読取り不可能と判断し、紙幣投入口16から内部に投入される紙幣を拒絶する。紙幣の表裏のそれぞれを、「前面」および「背面」と称し、日本で発行される現行の紙幣については、紙幣番号30が印刷される側の表面を、前面とする。紙幣投入口16に投入される紙幣が、前面を上方に向けて投入されても、背面を上方に向けて投入されても、紙幣金額読取部18は読取り可能と判断し、紙幣投入口16からの紙幣の投入を許容する。
図4は、本発明の第1実施形態における紙幣処理部19の電気的接続関係を表すブロック図である。第1実施形態において現金取扱装置10は、光学文字認識部28をさらに含んで構成され、制御部25は、認識部29と、表示制御部32とをさらに含む。光学文字認識部28は、光学文字認識(optical character recognition, 略称「OCR」)を行う。これによって、印刷によって紙幣に印字された、たとえば紙幣番号30および金額表示を読取る。現行の紙幣では、たとえば紙幣番号30は、1枚の紙幣に2箇所印刷されており、2箇所の紙幣番号30のいずれも、紙幣の前面に、一方を上方とする文字として印刷される。
現金取扱装置10は、光学文字認識部28によってOCRを行うことによって、紙幣の姿勢を認識する。光学文字認識部28によって読取られた文字の向きに関する情報は、光学文字認識部28から出力されて制御部25の認識部29に入力される。認識部29は、紙幣撮像部11によって撮像された画像の向きを、光学文字認識部28によって読取られた文字の向きに基づいて判断し、認識する。
長方形の紙幣の外形を成す4つの辺のうち、紙幣番号30を示す数字について上方と判断される側に位置する辺を「上辺」と称し、紙幣番号30を示す数字について下方と判断される側に位置する辺を「下辺」と称する。上辺および下辺は、紙幣の長方形においていずれも長辺のうちの1つである。紙幣が紙幣投入口16から投入されるとき、前面を上方に向け、かつ上辺を右方に向けた紙幣の姿勢を、「第1姿勢」と称し、前面を上方に向け、かつ上辺を左方に向けた紙幣の姿勢を、「第2姿勢」と称する。また前面を下方に向け、かつ上辺を右方に向けた紙幣の姿勢を、「第3姿勢」と称し、前面を下方に向け、かつ上辺を左方に向けた紙幣の姿勢を、「第4姿勢」と称する。
紙幣投入口16から投入される紙幣は、第1〜第4姿勢のいずれかの姿勢で投入される。これらいずれの姿勢で投入される場合にも、紙幣金額読取部18は読取り可能と判断し、紙幣投入口16からの紙幣の投入を許容する。紙幣投入口16から投入された紙幣は、第1および第2撮像部26,27によって撮像され、紙幣撮像部11によって撮像された紙幣画像20は、光学文字認識部28と制御部25内の表示制御部32とに入力される。制御部25に備えられる認識部29は、投入された紙幣が、第1〜第4姿勢のいずれの姿勢であるかを、光学文字認識部28のOCR処理の結果から判断し、第1〜第4姿勢のいずれの姿勢であるかという情報を、表示制御部32に対して出力する。表示制御部32は、光学文字認識部28のOCR処理による判断結果から、第1および第2撮像部26,27からの紙幣画像20の情報のうち、いずれの紙幣画像20が紙幣の前面であるかを判断する。
制御部25内の認識部29は、光学文字認識部28のOCR処理による判断結果から、紙幣画像20に表れる紙幣の4つの辺のうち、いずれの辺が、紙幣の上辺であるかを判断し、同じく制御部25内の表示制御部32に対して出力する。その上で、表示制御部32は、前面と判断された紙幣画像20を選択し、紙幣画像20のうち、紙幣の上辺に対応すると判断された向きを紙幣画像20の上方と判断する。さらに表示制御部32は、紙幣画像20の上方と判断された向きを、画像表示部12における上方の向きに対応させて、紙幣の前面に対応する紙幣画像20を、画像表示部12に出力する。これによって、画像表示部12において表示される紙幣画像20は、紙幣の前面に対応した画像となり、かつ紙幣の上方を画像表示部12の上方に向けて表示することができる。
紙幣撮像部11は、第1撮像部26と、第2撮像部27とを有する。第1撮像部26は、投入された紙幣の前面および背面のうち、一方を撮像する。第2撮像部27は、投入された紙幣の前面および背面のうち、他方を撮像する。制御部25に備えられる認識部29は、紙幣の前面または背面と向きとを認識し、画像表示部12に対し、投入された各紙幣の前面および背面のうち予め定める一方の紙幣画像20を、同一の向きとして表示させる。これによって、紙幣が投入される向きを制限することなく、複数の紙幣についての紙幣画像20を、整然と並べて表示することが可能となる。したがって、撮像された紙幣に関する情報を、画像表示部12に表示された紙幣画像20から判読することを、容易にすることができる。
図3に示すように、画像表示部12は、投入された紙幣の前面の画像全体と、紙幣画像20のうち紙幣番号30が位置する領域を含む一部の画像とを表示する。画像表示部12において紙幣の前面の紙幣画像20全体が表示された紙幣画像20に比べて、紙幣番号30が位置する領域を含む紙幣の一部の画像は、拡大されて表示される。画像表示部12によって表示される紙幣画像20のうち、少なくとも紙幣番号30が位置する領域を表示した画像は、紙幣番号30が判読可能に表示される。これによって投入された1枚の紙幣およびこれを撮像した紙幣画像20は、他の紙幣およびそれを撮像した紙幣画像20と区別可能となる。換言すれば、紙幣の個別認識が可能となる。
画像表示部12によって、紙幣番号30が印刷された領域を計数情報または文字情報ではなく画像情報として表示するので、文字認識を行って文字情報または計数情報として表示する場合に比べて、紙幣の個別認識を行うことのできる、たとえば印刷の具合および汚れなどの情報をも含めて表示することが可能となる。したがって、投入された紙幣の個別認識を可能にする情報を多く表示することができる。
現金取扱装置10は、情報蓄積部33をさらに含んで構成され、情報蓄積部33は、紙幣撮像部11によって撮像された紙幣の紙幣画像20の情報を記憶する。情報蓄積部33は、撮像された紙幣が投入された時刻の情報を、撮像された紙幣の紙幣画像20の情報に関連させて、さらに記憶する。紙幣撮像部11からの紙幣画像20は、さらに情報蓄積部33に対して出力される。情報蓄積部33に記憶される紙幣画像20は、表示制御部32を経由して入力される、紙幣の前面の画像のみを記憶する構成とすることも可能であるけれども、本実施形態においては、紙幣撮像部11によって撮像された画像を全て記憶する。
現金取扱装置10では、情報蓄積部33によって、紙幣撮像部11で撮像された紙幣の紙幣画像20の情報を記憶するので、投入された紙幣の金種の情報と、投入された紙幣の個別認識を可能とする情報とを、情報蓄積部33に蓄積することができる。したがって、金額読取りの誤りの有無について証拠となる情報を蓄積することができる。これによって、投入者が、実際に投入された紙幣とは異なる金種の紙幣を投入したと主張することを防止することができる。
現金取扱装置10は、計時部34を含んで構成され、計時部34は、紙幣撮像部11に接続される。計時部34は、時計を含み、紙幣撮像部11において撮像が行われた時刻の情報を信号として出力する。計時部34からのこの時刻の情報の信号は、情報蓄積部33に対して入力される。情報蓄積部33に入力される、同一紙幣を撮像した前面および背面の紙幣の画像は、互いに関連するとの情報と共にグループ化され、さらに投入された時刻の情報と共に情報蓄積部33に記憶される。具体的には、情報蓄積部33は、記録媒体および記録媒体に情報を書き込むヘッドなどを含んで構成される。紙幣画像20および時刻の情報などは、記録媒体に、情報を表す信号を書き込むことによって、情報の記憶が行われる。
情報蓄積部33は、たとえばフラッシュメモリなどの不揮発性の記録媒体を含んで実現される。情報蓄積部33に含まれる記録媒体は、不揮発性の記録媒体で実現されるならば、フラッシュメモリでなくてもよい。また情報蓄積部33は、コンピュータによって読取り可能な記録媒体で実現され、これによって画像情報を含む情報の蓄積が行われた後の、コンピュータによる解析が可能となる。
現金取扱装置10は、一時記憶部36をさらに含んで構成される。一時記憶部36は、記憶媒体およびライティングヘッドを有する。一時記憶部36は、記憶媒体に対してライティングヘッドによってデータの書き込み、読出し、書換え、および消去の処理動作を行う。一時記憶部36に記憶される情報は、紙幣撮像部11によって撮像された紙幣画像20および時刻情報である。情報蓄積部33が単数またはグループ化された複数の紙幣画像20と時刻情報とを永続的に蓄積するのに対して、一時記憶部36は、投入者が精算機13を利用する間の時間におよそ対応して、紙幣画像20および時刻情報を記憶する。
情報蓄積部33は、撮像された紙幣が投入された時刻の情報を、撮像された紙幣の紙幣画像20の情報に関連させて記憶するので、投入された紙幣を、投入された時刻に基づいて特定することが可能となる。したがって投入された紙幣を、投入者の操作に関連付けて特定することが可能となる。これによって、投入された紙幣の金種の情報、および個別認識を可能とする情報を、投入者の操作に関連付けて特定することが可能となるので、金額読取りの誤りの有無について、証拠となる情報を、投入者の操作に関連付けて読出すことが可能となる。したがって、撮像された紙幣が投入された時刻の情報を記憶しない場合に比べて、投入者によって投入された紙幣を特定するための証拠として信憑性の高い複数の情報を蓄積することができる。
現金取扱装置10は、入力部38および入力制御部39をさらに含んで構成される。入力部38は、キーボードおよびタッチパネルを含む。キーボードは、現金取扱装置10の内部に配置され、蓋体21を開けて現金取扱装置10を開放することによって操作可能となる。これは、たとえば紙幣金額読取部18、硬貨金額読取部などの校正、紙幣金額読取部18および硬貨金額読取部が読取った金額データの訂正などに用いられ、ガソリンスタンドにおいては係員が操作する。タッチパネルは、画像表示部12の投入者側の表面に貼付され、手指の接触を感知し、投入者は、タッチパネルに手指を接触させることによって、現金取扱装置10の操作を行う。
入力部38は、入力制御部39に接続され、入力制御部39は、制御部25による指令に基づいて入力部38を制御する。たとえば入力モードの切換え、セキュリティを実現する機能に対するパスワードを用いた処理などを行う。
タッチパネルは、投入者がタッチすることによって手指が接触したときに、接触したという情報を入力制御部39を介して制御部25に向けて送る。これによって、たとえば画像表示部12に含まれるバックライトが消灯された状態であっても、投入者が接触したという情報がタッチパネルから制御部25に伝送されると、バックライトは点灯される。他の実施形態では、たとえば後述する第2実施形態のように、タッチパネルにおける手指の接触位置に応じて、画像表示部12による表示内容が変更される構成とすることもできる。
図4に示す複数の構成のうち、制御部25、光学文字認識部28、情報蓄積部33、一時記憶部36および入力制御部39は、1つの基板40に搭載されることによって一体に形成される。基板40は、具体的にはRAMボードである。図4のブロック図において、1つの基板40に搭載される範囲は二点鎖線で表している。この基板40は、錠22による閉鎖を解除することによって開放可能となる、現金取扱装置10の内部に配置される。
紙幣撮像部11、光学文字認識部28、情報蓄積部33、入力制御部39および一時記憶部36は、制御部25に接続され、制御部25によって制御される。特に光学文字認識部28は、制御部25内の認識部29に接続され、光学文字認識部28から出力される文字認識結果は、制御部25の認識部29に入力される。画像表示部12は、制御部25に備えられる表示制御部32によって制御され、入力部38は、入力制御部39によって制御される。紙幣金額読取部18は、主制御部24に接続され、主制御部24は、基板40に設けられる制御部25に接続される。
他の実施形態において主制御部24、光学文字認識部28、入力制御部39および一時記憶のうち1つ以上が、制御部25と一体化されて単一部品として実現される構成とすることも可能である。この場合、制御部25を含む単一部品は、たとえば集積回路(
integrated circuit, 略称「IC」)と、これに機能を付与するプログラムとを含んで実現されてもよい。
第1実施形態によれば、紙幣撮像部11は、投入者によって投入された紙幣を撮像する。画像表示部12は、紙幣撮像部11によって撮像された紙幣画像20の少なくとも一部を表示する。これによって、紙幣を投入した投入者が、投入された紙幣の紙幣画像20を視認して、投入された紙幣の金種を確認することができる。したがって、投入者が投入したと信じる金額と、投入された紙幣の金額として示された投入金額とにずれが生じた場合に、投入者の認識に誤りがあるのか、投入された紙幣の金額を読取った装置に誤りがあるのかを明確化することができる。また、投入者の認識と金額を読取った装置とのいずれに誤りがあるのかを投入者自身が把握することを促すことができる。したがって、投入者に誤認識がある場合に、投入者の誤認識を是正することができる。これによって、投入者の誤認識に基づいて、現金取扱装置10に関する苦情が発生することを防止することができる。
また、現金取扱装置10は、制御部25をさらに含んで構成され、制御部25は、画像表示部12を制御し、紙幣撮像部11による撮像の後、予め定める時間内に、紙幣撮像部11によって撮像した紙幣についての、紙幣画像20の少なくとも一部を、画像表示部12によって表示させる。これによって、投入者によって投入された紙幣と、画像表示部12に表示された紙幣画像20が示す紙幣とが同一であることについての、投入者に対する説得力を確保することができる。投入者が紙幣を投入してから、画像表示部12が紙幣画像20を表示するまでの時間差が大きければ大きいほど、前記投入者に対する説得力は低下する。前記時間差を予め定める時間内に設定することによって、前記投入者に対する説得力が低下することを防止することができる。
また第1実施形態によれば、画像表示部12は、紙幣撮像部11によって撮像された紙幣画像20のうち、紙幣番号30が印刷された領域を、判読可能に表示する。これは、拡大表示すれば拡大表示するほど判読容易になり、画像の解像度および液晶パネルの解像度を高くすれば高くするほど判読容易になる。逆に判読可能な程度に小さく表示し、画像および液晶パネルの解像度を低くすれば、画像表示部12の装置を簡略化し、処理速度を向上し、現金取扱装置10を小形化することができる。但し紙幣番号30が印刷された領域は、判読可能に表示されるものとする。
これによって、投入された紙幣の個別認識を可能とする情報を表示することができる。したがって、金額読取りの誤りの有無について証拠となる情報を表示することができる。これによって、投入者が実際に投入された紙幣とは異なる金種の紙幣を投入したと主張することを防止することができる。
また第1実施形態によれば、紙幣撮像部11は、第1撮像部26と、第2撮像部27とを有する。第1撮像部26は、投入された紙幣の前面および背面のうち、一方を撮像する。第2撮像部27は、投入された紙幣の前面および背面のうち、他方を撮像する。認識部29は、紙幣の前面または背面と向きとを認識する。これによって、紙幣における特定の領域の位置を認識することが可能となる。したがって、紙幣が投入される向きを制限することなく、紙幣画像20のうち、紙幣番号30が印刷された領域を抽出することが可能となる。これによって、紙幣番号30が印刷された領域を判読可能に表示することを容易にすることができる。
図5は、本発明の第1実施形態に係る現金取扱方法の工程を表すフローチャートである。現金取扱方法は、投入された紙幣の金額を読取り、かつ投入された紙幣を収納する方法である。現金取扱方法は、紙幣撮像工程と、紙幣画像表示工程とを含んで構成される。紙幣撮像工程では、投入者によって投入された紙幣を撮像する。紙幣画像表示工程では、紙幣撮像工程において撮像された紙幣画像20の少なくとも一部を表示する。具体的には、紙幣画像表示工程では、紙幣撮像工程における撮像に応じて、紙幣撮像工程において撮像さえr他紙幣画像の少なくとも一部の画像を、投入者に対して表示する。本実施形態において現金取扱方法は、現金取扱装置10を用いて行われる。
具体的には、図5のフローチャートに示すように、現金取扱工程は、紙幣読取工程と、紙幣判断工程と、紙幣撮像工程と、光学文字認識工程と、画像処理工程と、紙幣画像表示工程と、精算工程とを含んで構成される。本処理は、投入者による紙幣の投入によって開始される。本処理開始後、ステップa1の紙幣読取工程に移行し、紙幣金額読取部18によって紙幣の読取りを行う。紙幣金額読取部18は、磁気的なセンサによって投入された紙幣に対して、少なくとも読取りを試みる。紙幣金額読取部18は、読取ったことによって得られる読取結果を出力する。紙幣金額読取部18から出力される信号は、主制御部24に対して伝送される。
次に、ステップa2の紙幣判断工程に移行し、紙幣金額読取部18からの読取結果を主制御部24によって判断し、紙幣の読取りに成功したか否かを判断する。具体的には現行の4種類の紙幣について予め準備する基礎データとの比較によって、読取った紙幣の金種を判断する。この判断は、紙幣全体が紙幣投入口16を通過し終えないうちに終了し、次の工程に移行する。この紙幣判断工程では、4種類のうちのいずれか1つの金種として判断できれば読取り可能であると判断され、現行のいずれの金種としても判断できなければ、読取りが不可能であったと判断する。読取りが不可能であったと判断されれば、次のステップa3の紙幣返却工程に移行し、紙幣の返却を行う。
ステップa3の紙幣返却工程における紙幣の返却は、紙幣投入口16からの投入を拒否することで行われる。紙幣投入口16に、紙幣の現金取扱装置10への進入を補助または阻止するローラを配置する場合には、進入を補助するときとは逆の向きにローラを回転することによって、積極的に紙幣を排出して返却してもよい。ステップa3の紙幣返却工程の後は、本処理を終了し、再び紙幣が紙幣投入口16に投入されることによって本処理が開始されるまで、待機状態をとる。
ステップa2の紙幣判断工程において読取りが可能であったと判断された後は、ステップa4の紙幣撮像工程に移行し、紙幣撮像部11によって紙幣の撮像を行う。紙幣は、紙幣投入口16から収納ケースまでの、紙幣の搬送経路の途中に配置される第1および第2撮像部26,27によって、撮像される。撮像された画像情報は、光学文字認識部28および制御部25に対して信号として送られ、制御部25から一時記憶部36および情報蓄積部33に送られる。
次にステップa5の光学文字認識工程に移行し、光学文字認識部28によって紙幣撮像工程で撮像した紙幣の画像に印刷される文字を認識する。文字認識は、少なくとも紙幣番号30について行われ、これによって紙幣の姿勢を判断し、かつ紙幣の画像のうち紙幣番号30の印刷される領域に対応する画像の一部の位置を特定する。光学文字認識部28から文字認識の結果を受取った制御部25の認識部29は、第1および第2撮像部26,27いずれが撮像した画像が、紙幣の前面に対応する画像であるかの判断を行う。紙幣番号30の印刷される領域の位置についての情報および紙幣が第1〜第4姿勢のいずれの姿勢であるかについての情報は、表示制御部32に対して出力される。
次にステップa6の画像処理工程に移行し、表示制御部32によって画像処理を行う。画像処理工程では、第1および第2撮像部26,27からの紙幣画像20のうち、紙幣の前面に対応する画像を選択し、かつ画像の姿勢を制御することによって、画像表示部12で表示される紙幣画像20の向きを紙幣の上下に対応させる。具体的には、紙幣の前面に対応する画像は、2種類の姿勢をとり得るので、180度の角度で回転させるか否かの判断を行い、画像の回転処理が必要であれば180度の角度で回転させ、必要でなければ回転処理を行うことなく画像表示部12に対して出力する。
次にステップa7の画像表示工程に移行し画像表示部12によって紙幣画像20の表示を行う。本実施形態では、紙幣の全体に対応する画像と、紙幣番号30が印刷された領域に対応する部分の画像とを、画像表示部12に表示する。この表示は、紙幣撮像工程が行われてから予め定める時間内に行われる。この時間は1秒以内の範囲内のいずれかの値に定められる。この時間は、伝送速度などによる装置構成上の制約はあるけれども、短ければ短いほど、撮像された紙幣と紙幣画像20との対応関係を投入者にはっきりと示すことができる。
画像表示部12には、予め定める表示枚数の紙幣に対応した紙幣画像20を表示することができる。この枚数は1枚とすることも、また複数のいずれかの枚数として定めておくこともできる。投入される紙幣は、料金精算が完了するまでに投入された枚数を、一度の支払いに関する紙幣であると判断する。ただし装置的誤作動または人為的ないたずらなどによる無限ループを回避するため、予め定める時間、たとえば3分を上限として、一度の支払いに関する時間を制限する。
画像表示部12は、表示制御部32によって制御され、投入された順序で、投入された各紙幣に対応する紙幣画像20を順次表示する。一度の支払いのために投入される紙幣の枚数が、画像表示部12に予め定められる表示枚数よりも多い場合には、画像表示部12に表示される紙幣画像20のうち、最も早く投入された紙幣に対応する紙幣画像20から順次消去し、遅く投入された紙幣に対応する紙幣画像20を表示することによって、支払い紙幣の枚数には、制限を設ける必要はなくなる。
次にステップa8の精算工程に移行し、硬貨処理部の硬貨読取部からの読取結果、提供されたガソリン量についての情報も含めて、精算の処理を行う。その後、現金取扱方法は、終了する。精算が終了した後には、予め定める数秒から数分の範囲内で画像表示部12による表示を継続し、その後、画像表示部12のバックライトを消灯する。これによって、投入者は、自分が投入された紙幣を紙幣画像20によって確認するとともに、投入者が現金取扱装置10付近から立ち去った後に、他者が前記投入者の支払い状況について情報を得る機会の増大を抑制することができる。
従来技術では、紙幣から読取った金額情報は、計数情報として処理され、投入者に対しては数字による文字情報として表示される。従来技術のように、金額の情報を文字情報としてのみ表示する場合には、実際に投入者が投入された紙幣の金額と、文字情報として表示された金額とが一致することについて、投入者に対する説得力は、画像表示を行う場合に比べて小さい。したがって、投入者が投入したと信じる紙幣の金額と、文字情報として表示された金額とに差異が生じた場合、投入者は紙幣の金額を読取る装置の不具合があるものと予想しやすくなる。
投入者は、自分の認識を確かめるために、投入された紙幣を返却しようとする場合も考えられるけれども、ガソリンスタンドのPOSシステムに用いられる精算機13は、小形化が要求されるので、精算機13内部で紙幣を還流できない。したがって、投入者に投入された紙幣は収納ケースに収納され、同一紙幣を返却することができない。仮に投入者が1万円札を投入し、返却命令を下す返却ボタンを押しても釣り銭用に貯蔵される千円札が10枚返却される構造となっている。
最後に投入された紙幣を、精算が完了するまで予め定めるバッファストックの位置に保持しておくことができるならば、ガソリンスタンドの係員が、投入者がいる精算機13の場所に到着し、錠22による閉鎖を解除して装置を開放すれば、最後に投入された紙幣を特定し、投入者に提示することができるけれども、特に小形化が要求される現金取扱装置10では、バッファストックを設ける空間的余裕がない。したがって、たとえば別個の収納ケースに収納された千円札のうち最後に投入された紙幣と、1万円札のうち最後に投入された紙幣のいずれの紙幣が、遅く投入されたかについては、係員にも判断することができない。
本実施形態に係る現金取扱装置10のように、投入された紙幣についての情報を、ログデータとして、画像情報をも含めて蓄積すれば、投入が完了した後にも、投入の順序の情報を、紙幣の個別認識を可能とする情報を参照しながら解析することが可能となる。したがって、投入者の認識と装置の動作とのいずれの側に誤りがあったのかを、明確化することができる。
しかも現金取扱装置10が通常の動作を行うときには、紙幣画像20を投入者に対して画像として表示し、確認を促すことで、投入者が紙幣の返還を求めなくても、いずれの金種の紙幣を投入したのかを知ることができる。さらに画像情報として紙幣画像20を画像表示部12に表示することによって、紙幣の、金額情報以外の情報、たとえば紙幣番号30、汚れなどの情報をも投入者に示すことができる。これによって、投入者への説得力を、文字情報としてのみ金額を表示する場合に比べて、高くすることができる。
投入者が、金額の読取りを行う装置の誤作動ではないかと考えるのと同様に、紙幣撮像部11および画像表示部12のいずれかに不具合が生じたことによって、投入された紙幣とは異なる紙幣画像20が画像表示部12に表示されているのではないかと考えた場合には、ガソリンスタンドの係員が現金取扱装置10の錠22による閉鎖を解除して、現金取扱装置10の内部を開放して紙幣をあらためることができる。収納ケースが複数あることによって、いずれの紙幣が最後に投入されたのかを特定できない場合にも、画像表示部12に表示される紙幣画像20と、最後に投入された可能性のある収納ケース内の紙幣とを比較することによって、いずれの紙幣が最後に投入されたのかを特定することができる。
同じ金種の紙幣は、類似するデザインに印刷製造されるので、従来技術のように、紙幣の個別認識を可能にする情報が蓄積されない場合には、最後に投入された1枚の紙幣を、特定し断定することはできない。これに対し本実施形態に係る現金取扱装置10では、紙幣の個別認識をも可能とするので、画像表示部12による表示を行い、かつ現金取扱装置10内部の紙幣を取り出すことによって、最後に投入された1枚の紙幣を特定することができる。さらにこのような紙幣の特定および確認は、画像表示部12における表示が終了した後であっても、画像情報と共に蓄積される情報を取り出し、画像表示部12または他のコンピュータなどの装置によって画像データを視認可能に再生することによって可能となる。
さらに紙幣金額読取部18の読取結果と紙幣画像20との両方に、投入された紙幣の金額情報が含まれるので、紙幣金額読取部18に不具合があった場合には、この不具合を明確かつ容易に発見することができる。画像表示部12が投入者に対して紙幣画像20を表示して確認を促すので、紙幣金額読取部18の不具合を、現金取扱装置10の校正を行う係員のみならず、精算機13の利用者である紙幣の投入者も見つけることができる。
また紙幣の金額に関する情報として、投入者による認識と、紙幣金額読取部18による読取結果とに、さらに紙幣画像20の情報を追加することができるので、この構成の追加によって、投入された紙幣についての情報を多くすることができる。したがって、情報間に矛盾が生じた場合にも、いずれの情報が正しいかを客観的に判断する判断材料を提供することができる。
第1実施形態によれば、紙幣撮像工程では、投入者によって投入された紙幣を撮像する。紙幣画像表示工程では、紙幣撮像工程において撮像された紙幣画像20の少なくとも一部を表示する。これによって、紙幣を投入した投入者が、投入された紙幣の紙幣画像20を視認して、投入された紙幣の金種を確認することができる。したがって、投入者が投入したと信じる金額と、投入された紙幣の金額として示された投入金額とにずれが生じた場合に、投入者の認識に誤りがあるのか、投入された紙幣の金額を読取った装置に誤りがあるのかを明確化することができる。また、投入者の認識と金額を読取った装置とのいずれに誤りがあるのかを投入者自身が把握することを促すことができる。したがって、投入者に誤認識がある場合に、投入者の誤認識を是正することができる。これによって、投入者の誤認識に基づいて、現金取扱装置10に関する苦情が発生することを防止することができる。
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態における画像表示部12の正面図である。第2実施形態に係る現金取扱装置10は、第1実施形態に係る現金取扱装置10に類似しており、以下、第1実施形態に対する第2実施形態の相違点を中心に説明する。画像表示部12は、複数の紙幣に対応する紙幣画像20を表示可能であり、投入者が、表示された紙幣画像20のうちの1つを選択することによって、画像表示部12は、選択された紙幣画像20を拡大表示する。図6(a)は、画像表示部12に各紙幣画像20の全体が表示されている状態を表している。図6(b)は、投入者によって選択された紙幣画像20が拡大表示された状態を表している。図6(c)は、投入者の操作によって紙幣番号30が拡大表示された状態を表している。
現金取扱装置10は、投入者の操作によって、操作が表す情報を制御部25に入力する入力部38をさらに含み、画像表示部12は、投入者の操作が表す情報に応じて、紙幣番号30が印刷される領域の画像を拡大して表示可能である。入力部38は、たとえばタッチパネルを含み、タッチパネルは、画像表示部12の投入者側の表面に貼付される。現金取扱装置10は、光学文字認識部28を備えるので、紙幣番号30が印刷される領域を認識することができる。画像表示部12のうち、紙幣番号30が印刷される領域の画像を表示する部分に近いタッチパネルの部分を、投入者が押圧することによって、制御部25は、この操作が投入者による紙幣番号30の拡大の指示を表すものと判断し、紙幣番号30が印刷される領域の画像を拡大して表示する。
これらの構成によって、投入者は、現金取扱装置10のうち、少なくとも画像表示に関係する部分が正常に作動していることを、新たな紙幣の投入を行うことなく確認することができる。したがって、投入者の操作に応じた表示形式の変更を行わない場合に比べて、投入された紙幣がいずれの紙幣であるのかについて、投入者に対する説得力を増大させることができる。さらに投入者が新たな紙幣を投入した場合には、新たに投入された紙幣の紙幣番号30を、投入者が画像表示部12を操作および視認することによって、確認することができる。これによって投入者は、現金取扱装置10内部の装置構成に由来するはずのない情報を、現金取扱装置10を介して確認することができるので、現金取扱装置10の正常な稼動についての信頼度を高くすることができる。
図7は、本発明の第2実施形態における表示制御部32が行う処理を表すフローチャートである。本処理は、図5においてステップa7として示した、紙幣画像表示工程において、表示制御部32が行う処理であり、複数の紙幣の撮像が終了することによって開始される。本処理開始後、ステップb1の座標決定工程に移行し、各紙幣画像20における座標の決定を行う。次に、ステップb2の紙幣番号領域抽出工程に移行し、紙幣番号30が印刷される領域の作業を抽出する。これは、第1実施形態と同様に、光学文字認識部28からの情報信号に基づいて決定されてもよいけれども、第2実施形態では、各金種情報に基づいて決定される。紙幣画像20に対して紙幣の金種が特定されると、各金種の紙幣について紙幣番号30が印刷される領域の位置を特定することができる。
次にステップb3の縮小画像準備工程に移行し、いわゆるサムネイルを作成する。サムネイル、すなわち縮小した画像は、データ量が小さいので、表示にかかる速度を速くすることができ、複数の紙幣画像20を画像表示部12に表示するときの処理速度を速くすることができる。次にステップb4の投入検出工程に移行し、投入者による新たな紙幣の投入が行われたか否かを検出する。これは、紙幣金額読取部18からの信号を主制御部24および制御部25を介して取得することによって行われ、検出されたならば、ステップb1の座標決定工程から、ステップb3の縮小画像準備工程までの工程を繰返す。ステップb4において新たに投入される紙幣が検出されない場合には、本処理は終了する。この処理は、制御部25によって行うことも可能である。
図8は、本発明の第2実施形態に係る現金取扱装置10を用い、投入者からの苦情が生じた場合の対応方法を表すフローチャートである。この対応方法は、紙幣番号30が印刷される領域の画像を拡大して表示する紙幣番号拡大工程と、紙幣を収納ケースから取出す紙幣取出工程と、紙幣番号拡大工程において表示された画像から読取れる紙幣番号30を、紙幣取出工程において取出された紙幣に印刷される紙幣番号30と比べる紙幣番号比較工程と、苦情の解決のための手段を選択する是正手段選択工程とを含んで構成される。
本処理は、投入者からの苦情の連絡を、係員が受取ることによって開始される。次にステップc1の紙幣番号拡大工程に移行し、係員がタッチパネルなどの入力部38を操作することによって、紙幣番号30が印刷される領域の画像を拡大して表示させる。この表示は画像表示部12を用いて行われる。次にステップc2の紙幣取出工程に移行し、紙幣を収納ケースから取出す。これは、錠22による閉鎖を鍵によって解除し、現金取扱装置10内部の収納ケースを開放することによって行われる。このとき係員は、最も遅く投入された可能性のある紙幣を取出す。この紙幣は、収納ケースが複数ある場合には、収納ケースの個数に対応した枚数の紙幣とする。
次にステップc3の紙幣番号比較工程に移行し、画像表示部12に拡大して表示された紙幣番号30と、収納ケースから取出された紙幣の紙幣番号30とを比較する。これが一致していれば、表示に誤作動がないことを投入者に説得する説得材料となる。次にステップc4の是正手段選択工程に移行し、是正手段を選択する。画像表示部12に表示された紙幣番号30と収納ケースに収納された紙幣の紙幣番号30とが一致しなければ(条件1)、現金取扱装置10の不具合、紙幣に関する紙詰まりなど、投入者の責任にない異常が発生したことが示唆され、善後策(ステップc5)を講じる。具体的には投入者に対する現金の払い戻し、現金取扱装置10の使用停止、または現金取扱装置10の修理などを行う。画像表示部12に表示された紙幣番号30と収納ケースに収納された紙幣の紙幣番号30とが一致すれば(条件2)、投入順序を明らかにし、投入者に対して説明し、投入者に納得を促す(ステップc6)。その後、本処理は終了する。
投入者が投入した他の紙幣に関しても、ステップc1の紙幣番号拡大工程〜ステップc3の紙幣番号比較工程を繰返して行えば、画像表示部12に表示された他の紙幣の紙幣番号30と収納ケースに投入された紙幣の紙幣番号30とから、投入された紙幣の投入の順序を明らかにすることができる。
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態における画像表示部12の正面図である。第3実施形態に係る現金取扱装置10は、第1実施形態に係る現金取扱装置10に類似しており、以下、第1実施形態に対する第3実施形態の相違点を中心に説明する。紙幣撮像部11は、一括してあるいは連続して投入された複数の紙幣を撮像し、画像表示部12は、撮像した各紙幣画像20についての予め定める一部の領域を並べて表示する。具体的には、制御部25が、画像表示部12を制御することによって、画像表示部12に前記予め定める一部の領域を並べて表示させる。
現行の紙幣の場合、紙幣の長手方向の端部から3cm以内の範囲内には、金種を表す数字が印刷されている。画像表示部12は、各紙幣画像20のうち、紙幣の長手方向端部から3cm以内の範囲に対応する画像の一部を並べて表示する。これによって、複数の紙幣について撮像した画像全体を並べて表示する場合に比べて、予め定める一部を大きく表示することと、画像表示部12のうち表示に用いられる領域の大きさを小さくすることとを、両立することができる。したがって、画像表示部12を小形化することができる。
(変形例)
第1〜第3実施形態において、第1〜第4姿勢のいずれの姿勢で紙幣が投入されても、紙幣金額読取部18は、紙幣を読取り可能であり、紙幣撮像部11は、第1および第2撮像部26,27を用いて投入された紙幣を読取るものとしたけれども、第1〜第4姿勢のうち、紙幣の前面が上方に向けられた姿勢で投入された場合のみ、または紙幣の背面が上方に向けられた姿勢で投入された場合のみにおいて紙幣金額読取部18が紙幣の読取りを行う構成とすることも可能である。
このような構成とすることによって、紙幣撮像部11の一部として設けられる第1および第2撮像部26,27のうち、いずれか一方を省略することが可能となる。また表示制御部32は、紙幣の前面および背面に対応した画像のうちから一方を選択する必要がなくなる。
さらに第1〜第4姿勢のうちのいずれか1つの姿勢で投入された紙幣を読取り、他の姿勢で投入された紙幣を紙幣返却工程で返却する構成とすることによって、表示制御部32が紙幣画像20の回転を行う構成を省略することができる。また紙幣番号30が印刷された領域を抽出する処理を省略することが可能となる。
紙幣撮像部11が、第1および第2撮像部26,27のいずれか一方のみを有する場合であっても、第1〜第4姿勢のうちの特定の姿勢で投入された場合のみにおいて紙幣金額読取部18が紙幣の読取りを行う構成とすることによって、画像表示部12は、紙幣撮像部11によって撮像された紙幣画像20のうち、紙幣番号30が印刷された領域を、判読可能に表示することは、可能である。これによって、投入された紙幣の個別認識を可能とする情報を表示することができ、投入者が実際に投入した紙幣とは異なる金種の紙幣を投入したと主張することを防止することが可能となる。
第1〜第3実施形態において、紙幣の金種は4種類であるものとして説明したけれども、紙幣の金種は4種類に限定するものではない。たとえば、旧紙幣と新紙幣との両方が投入されることが想定される場合には、4種類よりも多い金種の紙幣についてその形式、特に紙幣番号30の位置についての情報を予め一時記憶部36に記憶しておくことによって、いずれの紙幣についても対応することが可能となる。また予め定める種類の、たとえば2千円札などの取扱を行わず、残余の3種類の紙幣を取扱う構成としてもよい。
第1〜第3実施形態における現金取扱装置10は、ガソリンスタンドの精算機13に利用されるものとしたけれども、他の精算機、たとえば飲食物を自動的に販売する自動販売機、現金自動預け払機(automated teller machine, 略称「ATM」)などにも適用可能である。第1〜第3実施形態に係る現金取扱装置10は、小形化が可能な装置であるので、小形化が必要な精算機にも、また小形化が必要ない精算機にも用いることが可能であり、汎用性の高い現金取扱装置を実現することができる。
画像表示部12は、蓋体21に固定して設けるものとした。これによって、現金取扱装置10全体を一体化して形成することができ、現金取扱装置10が別体の複数の部分から成る場合に比べて、現金取扱装置10の搬送および設置を容易にすることができる。但し他の実施形態において、画像表示部は、蓋体21から離れて他の部分に固定して設けられてもよい。