JP5215836B2 - セパレータ及び該セパレータを使用した固体電解コンデンサ - Google Patents

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Description

本発明は陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて巻回してコンデンサ素子を作成し、該コンデンサ素子内に固体電解質層を形成した固体電解コンデンサ用のセパレータ及び該セパレータを使用した固体電解コンデンサに関し、特には導電性高分子の高充填化を実現するとともに、導電性高分子の連続性を確保することによって、インピーダンス特性,特に等価直列抵抗(以下ESRと略称する)、静電容量等の電気特性を改善し、生産性を高めたものである。
一般に電解コンデンサ、具体的には巻回型アルミ電解コンデンサは、陽極アルミ箔と陰極アルミ箔との間にセパレータを介在させて巻付け形成してコンデンサ素子を作成し、このコンデンサ素子を液状の電解液中に浸漬して電解質を含浸させ、封口して製作している。上記電解液としては、通常エチレングリコール(EG)、ジメチルホルムアミド(DMF)又はγ−ブチロラクトン(GBL)等を溶媒とし、これらの溶媒に硼酸やアジピン酸アンモニウム、マレイン酸水素アンモニウム等の溶質を溶解したものを用いてコンデンサ素子の両端から浸透させて製造している。
薄型テレビ,ブルーレイディスク,高性能家庭用ゲーム機器など、近年のデジタル化された業務用及び民生用の各種電子機器は動作周波数の高速化が飛躍的に進み、電子機器全体としての省電力化も強く求められている現状にある。そこでこれらの電子機器を構成する部品である電解コンデンサにも、動作周波数の高速化及び省電力化等のために、小型大容量でインピーダンス特性,特に等価直列抵抗(以下ESRと略称する)の低いものが求められている。
しかしながら、前記した電解液を電解質に使用した電解コンデンサでは、高周波域でESRの低減を十分にはかることが困難である。これは電解液そのものの比抵抗を低くすることができないためである。そのため、より比抵抗の小さい電解質として、二酸化マンガンやTCNQ錯体を使用した電解コンデンサが開発されている。
更に近時はポリピロールやポリチオフェン等の導電性を有する導電性高分子を電解質に使用した固体電解コンデンサが開発されている。これらの導電性高分子の比抵抗は、二酸化マンガンやTCNQ錯体の比抵抗よりも小さく、電解コンデンサ自体のESRが良好なものを製作することが可能であるため注目を集めている。なお、導電性高分子とは導電性を有して電解コンデンサの電解質として利用することができる高分子を指している。
従来、このような導電性高分子を電解質に使用した固体電解コンデンサは、主にパソコン用途などデジタル家電の10WV以下の低電圧用途に使用されてきたが、更に4WV以下の低電圧と100μF以上の静電容量の大容量化が要求されている。一方において、近年更なる用途展開として例えば車載用途等にも用いられるようになっており、車載用途では高温で25WVの高耐電圧が要求されている。ハイブリットカーや電気自動車等の車の電化が進む中で今後も車載用途の電解コンデンサの耐電圧はますます高くなることが予測される。
また、近年ハンダ中の鉛が環境に悪影響を及ぼすことから、鉛フリーハンダの導入が進められている。これに伴ってハンダリフロー温度が従来の180℃から260℃程度まで上がっており、必然的に電子機器に使用される各種電子部品の耐熱性を今まで以上に高くすることが必須の要件となっている。
しかしながら、電解質として導電性高分子を使用して電解コンデンサ、特には巻回型アルミ固体電解コンデンサを製造しようとした場合、従来の電解質として電解液を使用するアルミ電解コンデンサにおいて用いられている天然セルロース繊維を原料とするセパレータをそのまま使用することができないという問題がある。これはセパレータ中のセルロースが水酸基(OH基)を有するので導電性高分子の重合溶液の含浸、あるいは導電性高分子の重合を阻害するためである。更に、重合溶液に含まれる酸化剤(p−トルエンスルホン酸第二鉄等)は、天然セルロース繊維で構成されたセパレータと化学反応を起こすので、セパレータを損傷し、短絡を起こす可能性がある。したがって、電解質として導電性高分子を使用する固体電解コンデンサにおいては、天然セルロース繊維を原料とするセパレータをそのままでは使用することができないという問題がある。
このようなセルロースの影響を抑制するため、巻回したコンデンサ素子を熱処理し、セパレータを炭化することにより前記したセルロースの弊害を除去する試みが行われている。しかしながら、天然セルロース繊維を原料とするセパレータを使用したコンデンサ素子は、炭化により素子の形状が崩れたり、熱処理によるストレスからショート不良が増大する弊害がある。よって、炭化によってセルロースの弊害を除去することはできても電解コンデンサに対する近時の要求を充足する実用性のある天然セルロース繊維を原料とするセパレータ及び該セパレータを使用した固体電解コンデンサは提供されていない。
そこで、天然セルロース繊維を使用しないセパレータ及び該セパレータを使用した固体電解コンデンサの開発が種々試みられている。例えば、セルロース繊維の代わりにガラス繊維を用いたセパレータを使用することも提案されているが、ガラス繊維紙は厚みを薄くすることが困難であり、そのためコンデンサ素子が大きくなったり巻回が難しくなるという問題が生じる。
また、セパレータの原材料として化学繊維を用いたセパレータを使用することも提案されており、ビニロン繊維をセパレータに使用した電解コンデンサ(特許文献1)やポリエステル繊維をセパレータに使用した固体電解コンデンサ(特許文献2)、アクリル繊維をセパレータに使用した巻回型電解コンデンサ(特許文献3)が提供されている。また、より耐熱性の高いアラミドフロック及び/又はアラミドファイブリッドからなる合成繊維100%のセパレータを使用した固体電解コンデンサも提案されている(特許文献4)。これらの特許文献1〜4に記載されたセパレータによれば少なくとも上記のような問題は解決することができる。
一方、セルロースを原料とするセパレータの炭化による弊害を除去し、炭化工程の寸法安定性を高める手段として、アクリル繊維を混抄したセパレータが提案されている(特許文献5)。これは、セパレータの原料として天然セルロース繊維に融点を持たない耐熱性繊維であるアクリル繊維を10重量%以上50%重量未満配合した原料を使用することにより、加熱処理時の寸法収縮を抑制してコンデンサ素子の外形寸法が変化しにくい固体コンデンサを得ようとするものである。
また、セパレータとして熱分解温度の異なる少なくとも2種の構成成分からなるものを使用し、かつ、固体電解質層形成前に、コンデンサ素子をセパレータの構成成分のうちの低熱分解温度の熱分解温度以上の温度に加熱して、低熱分解温度成分の少なくとも一部を分解除去し、セパレータを減量してなるセパレータが提案されている(特許文献6)。具体的には2種の構成成分として、アラミド繊維とセルロースが開示されている。
特許第3319501号公報 特開2001−155967号公報 特開2001−332451号公報 特開2002−203750号公報 特開2004−146707号公報 特開2004−193402号公報
高周波域でのESRの低減を実現するためには、比抵抗の小さい導電性高分子を固体電解質として使用することが有効な手段であり、従来の天然セルロース繊維を原料とするセパレータを炭化する手段に代えて、前記した特許文献1〜6に示すような種々の開発が試みられているが、いずれも解決すべき課題を抱えており、近時の固体電解コンデンサに対する要求を充足するものではない。
前記ビニロン繊維を使用した固体電解コンデンサ(特許文献1)は、面実装型電解コンデンサに使用した際に製品が膨張する問題が発生する。また、前記ポリエステル繊維を使用した固体電解コンデンサ(特許文献2)は、近年ハンダリフロー温度が260℃程度まで上昇してきており、融点が260℃のポリエステルでは耐熱性の面での問題がある。
表1はビニロン繊維(特許文献1)、ポリエステル繊維(特許文献2)、アクリル繊維(特許文献3,5)及びアラミド繊維(特許文献4,6)の分解温度及び融点についてまとめたものである。
Figure 0005215836
表1に示すように、ビニロン繊維(特許文献1)は分解温度が240℃であり、耐熱性が低いという問題がある。即ち、ビニロン繊維は240℃以上の温度での空気中で水分子の脱離現象が起こり、ガスを発生して高分子の主鎖が切断、分離して熱分解する。従ってハンダリフロー後にケースが膨張する問題がある。また、ポリエステル繊維(特許文献2)も融点が260℃と耐熱性が低くハンダリフロー温度が260℃では温度的に不向きである。
これに対して、アクリル繊維(特許文献3,5)は融点を持たない耐熱性繊維であり、分解温度も300℃であるため、ビニロン繊維やポリエステル繊維で問題のあった260℃のハンダリフローでの使用も可能となる。しかしながら、アクリル繊維は加熱により繊維が長さ方向に収縮して、セパレータの寸法変化が発生する問題がある。アクリルは、紡糸工程で加熱延伸されて規定の繊維径に紡糸されるが、再び繊維が加熱されることで、元の大きさに復元しようとする性質がある。そのため、炭化工程の加熱や重合時の温度によりアクリル繊維が長さ方向に収縮するので、セパレータの寸法が変化し、アクリル繊維の使用量が増えると加熱時のセパレータの寸法収縮が大きくなり、特に厚さ方向の収縮が大きい場合、素子止めテープが切れ、素子がばらけるので、耐熱性繊維の特徴を発揮できないという問題がある。
一方アラミド繊維も融点を持たない耐熱性繊維であり、ビニロン繊維やポリエステル繊維で問題のあった260℃のハンダリフローでの使用が可能なことは勿論、分解温度も450℃以上である。また、アラミド繊維は、アクリル繊維のように加熱によって復元しようとする性質は有しない。特許文献4に開示されたアラミドフロック及び/又はアラミドファイブリッドからなる合成繊維100%のセパレータを使用した固体電解コンデンサは、モノマーである3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)を酸化剤であるp−トルエンスルホン酸第二鉄で重合させて得るポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)を固体電解質とするものであり、熱処理の最高温度は重合工程の温度であり、200℃未満であるので、当該セパレータは劣化しない。
しかしながら、特許文献4にかかるセパレータはアラミドフロック及び/又はアラミドファイブリッドからなる合成繊維100%のセパレータであり、耐熱性繊維であるアラミド繊維の配合率が高すぎると低密度化、空隙の増加が原理的に不可能となり、セパレータ内に導電性高分子を保持する空隙が不足するため、導電性高分子を十分に保持できないので、静電容量の高容量化やESRの向上などさらなる電気的特性の改善が期待できない。
同様にアラミド繊維を原料に使用する特許文献6には、アラミド繊維とセルロース繊維を重量比で50:50で厚さ40μm、坪量10g/mとする実施例が開示されているが、合成繊維を用いて素子巻きに耐える実用的な引張強さのある合成繊維紙を抄造するには、一般的にバインダが必要不可欠である。特許文献6のようにバインダを用いずにセパレータを抄造すると、セルロースの水酸基間で生じた水素結合が減少するため、引張強さは減少する。このことを確認するために、天然セルロース繊維とアラミド繊維の配合組成において、バインダを用いずにセパレータを厚さ40μm、密度0.45g/cmで抄紙し、天然セルロース繊維とアラミド繊維の配合量を変化させて引張強さを測定した。その結果を表2に示す。
Figure 0005215836
表2に示すように、天然セルロース繊維100重量%からアラミド繊維の配合量を増やすに従って、セパレータの引張強さは減少している。天然セルロース繊維のみの場合、引張強さは12.7N/15mmであったが、バインダを用いずにアラミド繊維の配合量を増やすと、例えば天然セルロース繊維80重量%とアラミド繊維20重量%としたセパレータでは引張強さが6.9N/15mmに減少している。陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させ、コンデンサ素子の素子巻きに必要な最低限度の引張強さとしては、低速で巻回する場合は7.8N/15mm以上、高速で巻回する場合は9.8N/15mm以上必要であり、好ましくは11.8N/15mm以上の引張強さが必要である。
特許文献6の実施例では、バインダを配合することなくアラミド繊維を50重量%配合した原料を使用しており、到底7.8N/15mm以上の引張強さを得ることはできない。特許文献6の実施例に開示されたセパレータを実際に製作し、その引張強さを測定したところ、2.6N/15mmに過ぎず、この強度では事実上素子を作成することができない。
また、特許文献6の実施例では、セパレータの空隙率が85%以上、特には85〜95%の範囲とすることが好適であるとし、加熱処理によってセルロースを完全に除去するようにしている。そのため、実施例では加熱処理前に50:50の重量比であったアラミド繊維とセルロースが加熱処理後には100:0となっており、セルロースは加熱処理によって完全に消失させるとしている。即ち、セパレータ中のセルロースの存在していた部分は完全な空隙とすることによって前記空隙率を実現しようとしており、セルロースは不要であることが示されている。確かに、一見すると、空隙率を高めてセパレータ内の空隙が多ければ多いほど、導電性高分子の重合溶液の含浸性がよくなるとともに、含浸量が多くなると考えられる。
しかしながら、真空含浸法等によって重合溶液を陽極箔と陰極箔の間に均一に、かつ、十分含浸させるには、重合溶液が流動していくための経路と重合溶液を保持するための媒体が必要であり、その役割をセパレータを構成する繊維が担っている。また、重合溶液中の導電性高分子のモノマー溶液と酸化剤溶液の重合によって形成される導電性高分子を保持するためにも媒体が必要である。
よって、特許文献6のように、セパレータの空隙率を極端に高めたり、セパレータ中のセルロースの存在していた部分を完全な空隙としてしまうと、媒体となるセパレータ中の繊維は化学繊維であるアラミド繊維のみとなり、却って重合溶液の含浸性は悪化することとなる。また、重合によって形成された導電性高分子を保持するための媒体も減少するため、その連続性が失われてしまう。
天然セルロース繊維は、そのままでは固体電解コンデンサのセパレータとして使用することができず、セルロースの影響を抑制するために熱処理による炭化が必要であるが、炭化をするとセルロースの影響は抑制できたとしても素子の形状が崩れしまう等の新たな弊害が生じてしまう。そのためセルロースを原料とする実用性のあるセパレータは提供されていない。一方において、セルロースは電解液を電解質とする電解コンデンサのセパレータの原料として広く使用されており、高い空隙率を有する等セパレータの原料として本来的に優れた利点を有している。また、アラミド繊維を初めとする熱分解温度が450℃以上の耐熱性繊維は、固体電解コンデンサの耐熱性向上という観点からはセパレータの原料として魅力ある素材であるが、一方においてセパレータの空隙率を確保して重合液の含浸性を改善するという観点からはデメリットが多く、単体ではセパレータの原料として適していない。
そこで、本発明は従来の固体電解コンデンサ用のセパレータ及び該セパレータを使用した固体電解コンデンサが有している各種の課題を解消して、天然セルロース繊維を主体とするセパレータを使用することによって導電性高分子の高充填化を実現するとともに、導電性高分子の連続性を確保することによって、インピーダンス特性,特にESR等の電気特性を改善し、生産性を高めた固体電解コンデンサを得ること、より具体的にはエージング後において、100μF以上の静電容量と、20mΩ以下のESRを実現した固体電解コンデンサ用のセパレータ及び該セパレータを使用した固体電解コンデンサを得ることを目的とするものである。
そこで、本発明者らは上記目的を達成すべく、天然セルロース繊維と耐熱性繊維の組合せについて鋭意研究の結果、次のような知見を得た。セパレータ内に導電性高分子の重合溶液を保持する空隙を多く確保するためには、天然セルロース繊維の配合量を増やし、炭化の程度を強くすることが有効である。しかしながら、天然セルロース繊維の配合量を増加させると、炭化によってセパレータの寸法安定性が失われ、又炭化の程度が強過ぎると、導電性高分子を保持するための天然セルロース繊維の繊維形骸そのものが過度に消失してしまい、最早、重合溶液が流動していくための経路と重合溶液を保持するための媒体や導電性高分子を保持するための媒体として作用をすることが困難となる。更に、耐熱性繊維の配合量が少ないと、炭化によってセパレータの寸法安定性を確保することができなくなる。
一方、炭化後のセパレータの寸法安定性を確保するためには、天然セルロース繊維の配合量を減らし、耐熱性繊維の配合量を増やして、炭化の程度を弱くすればよい。しかしながら、天然セルロース繊維の配合量を減らし、耐熱性繊維の配合量を増加させると、炭化をしたとしても十分な空隙を確保することができず、素子巻き時の引張強度が失われてゆく。また、炭化の程度が不十分だと天然セルロースの水酸基の弊害を除去することができない。更に、耐熱性繊維を配合するには、素子巻き時の引張強度を確保するためにバインダの配合が不可欠である。
これらの知見を天然セルロース繊維を原料とするセパレータを中心として整理すると、次の通りである。天然セルロース繊維を原料とするセパレータは、水酸基によって導電性高分子の重合を阻害する欠点を有するが、高い空隙率を得やすく、水酸基の影響を抑制するために炭化した繊維が、重合溶液が流動していくための経路と重合溶液を保持するための媒体、及び重合した導電性高分子を保持する媒体として機能する。天然セルロース繊維を原料とするセパレータを炭化することによって前記水酸基の弊害を除去することができ、空隙率を増加させることができるが、炭化の程度が過ぎるとセルロース繊維の繊維形骸が消失してしまい、前記導電性高分子を保持する媒体を失わさせるとともに、セパレータの寸法安定性を悪化させる。そこで、原料繊維に耐熱性繊維を配合すると炭化時の寸法安定性を向上させることはできるが、素子巻き時の引張強さが不足してしまう。引張強さを確保するためには、耐熱性繊維の交絡点を接合するためのバインダを配合することが必要である。
一方において、炭化されていない天然セルロース繊維は水酸基の弊害を残すこととなり、又天然セルロース繊維の配合量の増加は炭化時の寸法安定性に悪影響を与える。また、耐熱性繊維の配合量の増加は、空隙率の確保、導電性高分子の保持、及び引張強さの確保に悪影響を与える。更に、バインダの配合量の増加は空隙率の増加に悪影響を与える。このように、天然セルロース繊維、耐熱性繊維とバインダはそれぞれ固体電解コンデンサのセパレータの原料としてメリットとデメリットを有しているものであり、導電性高分子の高充填化を実現するとともに、導電性高分子の連続性を確保することによって、低ESR化を実現するためには、これらのバランスを確保する必要があり、本発明者らは次のセパレータ及び該セパレータを使用した固体電解コンデンサを提供する。
本発明は上記目的を達成するために、陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて巻回し、該セパレータを炭化させた後に、固体電解質層として導電性高分子を保持させる固体電解コンデンサ用のセパレータにおいて、前記セパレータは、50重量%以上の天然セルロース繊維と、10重量%〜40重量%の熱分解温度が450℃以上の耐熱性繊維と、10重量%〜30重量%の湿熱融着樹脂又は2重量%〜10重量%のポリアクリルアミド系樹脂からなるバインダを原料として抄紙するとともに、250℃〜350℃の温度で60分〜120分加熱することにより炭化させてなり、炭化後のセパレータは、天然セルロース繊維の水酸基が除去されるとともに、天然セルロース繊維の繊維形骸が残存するセパレータを基本として提供する。そして、炭化後のセパレータは炭化前のセパレータに対して、空隙率70.2%〜83.0%、面積寸法保持率80.2%〜99.6%、厚さ寸法保持率56.0%〜97.1%としたセパレータとする。また、炭化のための加熱時において、耐熱性繊維によってセパレータの形態を保持した状態で、天然セルロース繊維を炭化させ繊維形骸に沿って導電性高分子を連続的に保持させ、繊維形骸とともに、部分的に未酸化のセルロース繊維を残存させる。
然セルロース繊維として、マニラ麻パルプ,サイザル麻パルプ,エスパルトパルプ,コットンパルプ,ジュートパルプ,ヘンプパルプ,木材パルプから選択された一種又は複数の繊維を使用する。耐熱性繊維として、アラミド繊維,アミドイミド繊維,ポリイミド繊維,フィブリル化アラミド繊維,アラミドフィブリッド,フィブリル化アミドイミド繊維,アルミナ繊維,ボロン繊維,炭素繊維,ガラス繊維から選択された一種又は複数の繊維を使用し、湿熱融着樹脂として、ポリビニルアルコールを用いる。
そして、陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて巻回し、該セパレータを炭化させた後に、固体電解質層として導電性高分子を保持させる固体電解コンデンサにおいて、セパレータとして前記構成のセパレータを使用し、固体電解質層として導電性高分子を保持させることを特徴とする固体電解コンデンサを提供する。また、導電性高分子として、ポリピロール,ポリチオフェン,ポリアニリン又はこれらの誘導体の少なくとも1種類を使用する。
本発明によって得られたセパレータ及び該セパレータを使用した固体電解コンデンサによれば、コンデンサ素子を炭化することによって、天然セルロース繊維を親水性から疎水性に変化させて、セルロースの水酸基による導電性高分子の重合溶液の含浸及び導電性高分子の重合の阻害を抑制することができる。更に、炭化されたセルロースによってセパレータの空隙率を拡大させるとともに、炭化後に繊維形骸や部分的に未酸化のセルロース繊維を残存させることにより、繊維形骸や未酸化の繊維を重合溶液が流動していくための経路と重合溶液を保持するための媒体、及び重合した導電性高分子を保持する媒体として作用させることができる。
同時に450℃以上の熱分解温度を有する耐熱性繊維を特定の配合割合で天然セルロース繊維に配合することにより、炭化時の加熱に対するセパレータの寸法安定性の確保を実現することができる。また、バインダを特定の割合で配合することにより、空隙率に悪影響を与えることなく、素子巻きに必要な引張強さを得ることができて、固体電解コンデンサとして必要な強度を維持してショート不良率を改善することができる。
よって、従来困難とされてきたセパレータの空隙率を増加させることによる重合溶液の含浸性及び導電性高分子の高充填化と連続性の確保、更に炭化時の加熱に対するセパレータの寸法安定性の確保を同時に改善することができ、炭化後のセパレータは炭化前のセパレータに対して、空隙率70.2%〜83.0%、面積寸法保持率80.2%〜99.6%、厚さ寸法保持率56.0%〜97.1%としたセパレータを得ることができる。重合した導電性高分子はセパレータ内に空隙及び炭化後の繊維形骸や未酸化の繊維に沿って導電性高分子層として連続して保持されるため、固体電解コンデンサの他の特性に悪影響を与えることなく、高周波域でのESR等を改善できる。具体的には、ショート不良等の他の特性に悪影響を与えることなく、エージング後(完成品)のコンデンサ素子特性において100μF以上の静電容量と20mΩ以下のESRを実現した固体電解コンデンサを得ることができる。
以下本発明にかかるセパレータ及び該セパレータを使用した固体電解コンデンサの最良の実施形態を説明する。本発明は固体電解質層として導電性高分子を保持させた固体電解コンデンサのセパレータとして、50重量%以上の天然セルロース繊維と、10重量%〜40重量%の熱分解温度が450℃以上の耐熱性繊維と、所定量のバインダを含有させたことを特徴とする。
天然セルロース繊維は水酸基を有するので導電性高分子の重合溶液の含浸、或いは導電性高分子の重合を阻害するが、炭化をすることによって、水酸基の弊害を抑制することが可能である。また、炭化することによって空隙率そのものはより拡大し、炭化後にも繊維形骸を残存させることにより、重合溶液が流動していくための経路と重合溶液を保持するための媒体、及び重合した導電性高分子を保持する媒体として機能させることができる。そこで、本発明では主体繊維として天然セルロース繊維を50重量%以上配合し、更には50重量%〜88重量%の範囲で配合する。
天然セルロース繊維としては、電解質として電解液を使用するアルミ電解コンデンサのセパレータとして使用可能な天然セルロース繊維であれば特に限定はなく、マニラ麻パルプ,サイザル麻パルプ,エスパルトパルプ,コットンパルプ,ジュートパルプ,ヘンプパルプ,木材パルプ等から選択された一種又は複数の繊維を使用する。天然セルロース繊維を50重量%以上配合するのは、セパレータ内に導電性高分子の重合溶液を保持する空隙を多く確保するとともに、炭化後に重合溶液が流動していくための経路と重合溶液を保持するための媒体、及び重合した導電性高分子を保持する媒体として機能させるためである。
これらの天然セルロース繊維は、水酸基の影響を抑制するために熱処理による炭化が必要であるが、天然セルロース繊維の配合量を増加するほど炭化によってセパレータの寸法安定性が悪くなる。そこで、50重量%〜88重量%の天然セルロース繊維を配合したとしても炭化による寸法安定性を確保するため、10重量%〜40重量%の熱分解温度が450℃以上の耐熱性繊維をセパレータの原料として配合する。具体的には、アラミド繊維,アミドイミド繊維,ポリイミド繊維,フィブリル化アラミド繊維,アラミドフィブリッド,フィブリル化アミドイミド繊維,アルミナ繊維,ボロン繊維,炭素繊維,ガラス繊維から選択された一種又は複数の繊維が使用可能である。
これらの耐熱性繊維は表3に示すように、いずれも450℃以上の耐熱性を有している。450℃以上の耐熱性を条件とするのは、260℃のハンダリフローでの使用を可能とすることは勿論、炭化時の加熱温度によっても影響を受けず、セパレータの基本形態を維持するためである。また、配合量を10重量%〜40重量%としたのは、炭化によって天然セルロース繊維が減少しても、その影響を受けることなくセパレータの寸法安定性を保って基本形態を確保することと、天然セルロース繊維を炭化することによる空隙率の増加とのバランスを取ったものである。
Figure 0005215836
アラミド繊維等の熱分解温度が450℃以上の耐熱性繊維を天然セルロース繊維に配合することにより、炭化時の加熱に対してセパレータの寸法安定性を確保できることを特許文献3に示すアクリル繊維と比較して明らかとする。450℃以上の耐熱性繊維としてはアラミド繊維とアミドイミド繊維を使用した。実験は、アクリル繊維、アラミド繊維、アミドイミド繊維について、それぞれ天然セルロース繊維に対する配合量を0%〜100%まで変化させ、260℃で60分加熱した後の厚さ寸法保持率と、面積寸法保持率を寸法安定性の評価として測定した。その結果を表4,表5に示す。
[厚さ寸法保持率の評価]
厚さ保持率は、250mm×15mmの試験片を10枚折り重ねて、先端をホッチキス針で固定する。測定は、旧JIS C2301(電解コンデンサ紙)に規定されたマイクロメータで測定し、次の式から算出した。
厚さ保持率(%)=処理後の厚さ/処理前の厚さ×100
厚さ保持率は、処理前の厚さを100とした時の変化の割合を示す値で、その値が100を超えれば増加を示し、その値が大きいほど厚さの変化が大きいことを示している。厚さ方向の変化が大きいと、テープ止めが切れて素子が弾けたり、巻崩れる問題が発生する。
Figure 0005215836
[面積寸法保持率の評価]
面積保持率は100mm×100mmの試験片を使用した。測定は、ノギスを使用して測定し次の式から算出した。
面積保持率(%)=処理後の面積/処理前の面積×100
面積保持率は、処理前の面積を100とした時の面積保持を示す値で、その値が小さいほど変化が大きい意味を示し、保持率が小さいとコンデンサ素子の外形寸法の変化が大きく、ショート不良率やLC,ESRのバラツキが大きくなる。
Figure 0005215836
表4に示すように、天然セルロース繊維にアクリルを配合した場合、厚さ方向寸法が加熱前の厚さに対し大きく増加し、アクリルを20重量%と配合すると厚さ寸法保持率が108.0%となって加熱前の厚さを超えてしまう。これに対して、天然セルロース繊維にアミドイミド又はアラミドを配合する場合は、配合率が増すにしたがって厚さ寸法保持率は天然セルロース単独の場合の88%から100%へ近づいた。すなわちアミドイミド又はアラミドの配合量が多くなると厚さ収縮が少なくなっている。
表5に示すように、天然セルロース繊維にアクリルを配合した場合、セパレータは面方向に収縮し、天然セルロース繊維単独では99.7%であった面積寸法保持率が、アクリルを20重量%配合すると、85.3%となっている。アクリルは酸化・脱水反応等による減量はないので、その体積は一定とみなすことができる。したがって、面方向に収縮した分、必然的に厚さが増加すると考えられる。換言すると厚さの増加は、セパレータとしては面方向の大きな収縮、即ち面積の減少を示しており、表5に示すようにアクリルを混抄した場合、配合割合が増加するにつれて面積寸法が加熱前の広さに対し大きく減少している。一方、天然セルロース繊維にアミドイミド又はアラミドを配合した場合は、その配合量を増加するにしたがって全体としては厚さの変化が小さくなる方向にあり、加熱に対する寸法安定性が大きいことを表している。
これらのことから、450℃以上の耐熱性を有する耐熱性繊維は天然セルロース繊維を原料とするセパレータを炭化することによるセルロースの酸化反応と脱水によってセパレータの寸法安定性が失われてしまうことを補うことができる。即ち、耐熱性繊維によってセパレータの外形的な骨格構造を維持することができ、水酸基を抑制するために天然セルロース繊維を炭化することによる弊害を除去することができる。
陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させ、コンデンサ素子の素子巻きに必要な最低限度の引張強さとしては、高速で巻回する場合は9.8N/15mm以上必要である。しかしながら、耐熱性繊維を天然セルロース繊維に配合すると、前記した表2に示すようにセルロースの水酸基間で生じた水素結合が減少するため、耐熱性繊維の配合量の増加とともに引張強さは低下する。そこで、本発明では、9.8N/15mm以上の引張強さを確保するために、天然セルロース繊維と耐熱性繊維とともに所定量のバインダをセパレータの原料に配合する。
バインダとしては、ポリビニルアルコール(PVA)等の湿熱融着樹脂やポリアクリルアミド系樹脂(PAM)を用いる。湿熱融着樹脂を用いる場合は、10重量%〜30重量%の含有量とすることが適当である。これは湿熱融着樹脂は繊維の形状で存在し、常温の水への溶解が少ないため、抄紙機への粘着も少なく30重量%まで配合することが可能であるとともに、バインダの効果を得るためには少なくとも10重量%含有させる必要があるためである。一方、ポリアクリルアミド系樹脂を用いる場合は2重量%〜10重量%の含有量とすることが適当である。これは、ポリアクリルアミド系樹脂(PAM)は水溶性樹脂で溶液として使用することとなり、含有量が過剰となると抄紙機への粘着が生じるため、10重量%が最大量と考えられるとともに、バインダの効果を得るためには少なくとも2重量%含有させる必要があるためである。
本発明で使用するアラミド繊維等の450℃以上の熱分解温度を有する耐熱性繊維は、250℃〜350℃の加熱では繊維が影響を受けることがないため、繊維の交絡点が接合されることがなく、素子巻きに必要な引張強さを得ることができない原因となっている。本発明では、前記したバインダを配合することにより、バインダが耐熱性繊維の交絡点を接合するので、素子巻きに必要な引張強さを発現することができる。また耐熱性繊維は、バインダにより接合された交絡点を介して繊維同士が連続しているので、耐熱性繊維が維持する構造も導電性高分子の重合溶液が含浸するための媒体や導電性高分子を保持するための媒体となる。
上記した原料を使用して、円網抄紙機等の公知の抄紙機によって、所定厚さ、所定密度に抄紙したセパレータを250℃〜350℃の温度で60分〜120分加熱することにより炭化する。炭化温度と時間が250℃、60分を大きく下回ると、炭化が不十分となって未炭化のセルロース分が残存するため、セルロースの水酸基による弊害が除去できなかったり、或いはエージング後においてガスが発生したりして導電性高分子の連続性が切断されるため、ESRが悪化し、静電容量も減少することとなる。また、炭化温度と時間が350℃、120分を大きく上回ると、導電性高分子を保持するためのセルロース繊維の繊維形骸の残存量が減少し、本願発明の目的とする導電性高分子の高充填化と連続性を実現することができず、炭化後の段階から重合溶液の含浸性の低下とともに、ESRが悪化し、静電容量が減少してしまう。そこで、本願発明では、炭化によって重合溶液が含浸するための媒体及び導電性高分子を保持するための媒体としての繊維形骸を上記原料によって抄紙したセパレータに適度に残存させるために、250℃〜350℃の温度で60分〜120分加熱することにより炭化することとした。
上記構成の本発明によれば、導電性高分子の高充填化を実現するとともに、導電性高分子の連続性を確保することができ、固体電解コンデンサの他の特性に悪影響を与えることなく、高周波域でESRの低減等の電気特性を改善することができる。そこで、本発明と導電性高分子の高充填化及び連続性との関係を説明する。
導電性高分子の高充填化を図るためには、先ず導電性高分子を重合するための重合溶液をより多く含浸するために、セパレータ中の空隙率が大きいほど好ましい。また、単に空隙率が大きいだけではなく、重合溶液が流動していくための経路と重合溶液を保持するための媒体がセパレータ中に存在することが必要である。
導電性高分子の連続性を高めるためにも、先ず導電性高分子を重合するための重合溶液をより多く含浸するにはセパレータ中の空隙率が大きいほど好ましい。また、単に空隙率が大きいだけではなく、重合した導電性高分子を保持するための媒体がセパレータ中に存在することが必要である。導電性高分子の連続性は、導電性高分子を保持するための媒体がセパレータ中において連続している必要がある。即ち、導電性高分子を保持するための何らかの繊維がセパレータ中において連続していることが必要である。導電性高分子の保持媒体である繊維が断続すると、繊維の切れた部分では導電性高分子も連続していないのである。
天然セルロース繊維を原料とするセパレータにおいては、過度に炭化を進めれば加熱によってセルロース繊維に欠損する部分が増加していき、繊維形骸が徐々に断片化して切れることとなり、繊維としての連続性を失う。また、炭化を極限まで進め、セルロース繊維の大半が消失すると、空隙は増加するが重合溶液を保持し、重合した導電性高分子を保持
する媒体がなくなることになり、導電性高分子の連続性が阻害されることとなる。したがって、炭化を進めれば進めるほど空隙は多くなるが、重合溶液や導電性高分子を保持する媒体を失うこととなり、行き過ぎた炭化は却ってESRを悪化させることとなる。
そこで、本発明ではセパレータの主体繊維として50重量%以上の天然セルロース繊維を配合し、250℃〜350℃の温度で60分〜120分加熱して炭化を施すことによって、重合溶液を十分に含浸することができるためセパレータ中の空隙を確保するとともに、炭化の温度と時間及び天然セルロース繊維に配合する耐熱性繊維とバインダとのバランスによって炭化後に天然セルロース繊維の繊維形骸を残存させ、この繊維形骸や部分的な未酸化のセルロース繊維を重合溶液が流動していくための経路と重合溶液を保持するための媒体として利用することにより高充填化と連続性の確保を図るものである。
なお、50重量%以上配合した天然セルロース繊維の水酸基による弊害を除去するために行う炭化によって悪影響を受けることとなるセパレータの寸法安定性の確保については、250℃〜350℃の温度で60分〜120分の炭化のための加熱による影響を受けない450℃以上の耐熱性を有する耐熱性繊維を10重量%〜40重量%配合することによって確保することとしている。即ち、耐熱性繊維によってセパレータの基本形状を確保するものである。更に、耐熱性繊維を配合することによる引張強さの低下については、所定量(湿熱融着樹脂の場合は10重量%〜30重量%、ポリアクリルアミド系樹脂の場合は2重量%〜10重量%)のバインダを含有させることによって、耐熱性繊維の繊維の交絡点を接合させて素子巻き時に必要な引張強さを確保するようにしている。この繊維の交絡点がバインダによって接合された耐熱性繊維も重合溶液が流動していくための経路と重合溶液を保持するための媒体として作用する。このように本発明の達成しようとする高充填化は単にセパレータの空隙率を数値の大きさによって達成するものではない。セパレータの基本形状を維持する耐熱性繊維の中に炭化によって質量の減少した天然セルロース繊維の繊維形骸や部分的に未酸化のセルロース繊維がバランスよく配合されている状態を作り出して初めて実現できるものである。
次に、実施例に基づいて、本発明にかかる固体電解コンデンサが導電性高分子の高充填化と連続性を確保することによって、固体電解コンデンサの他の特性に悪影響を与えることなく、高周波域でのESR等を改善できることを従来例及び比較例との対比において明らかとする。
[実施例1〜実施例3]
天然セルロース繊維としてサイザル麻パルプ88重量%と、耐熱性繊維としてフィブリル化アラミド繊維10重量%、バインダとしてポリアクリルアミド樹脂(以下、PAMという)2重量%を原料として、円網抄紙機を使用して厚さ40μm、密度0.45g/cmのセパレータを抄紙し、それぞれ250℃(実施例1)、300℃(実施例2)、350℃(実施例3)で60分間加熱して炭化させた。
[実施例4〜実施例6]
天然セルロース繊維としてサイザル麻パルプ50重量%と、耐熱性繊維としてフィブリル化アラミド繊維40重量%、バインダとしてPAM10重量%を原料として、円網抄紙機を使用して厚さ40μm、密度0.33g/cmのセパレータを抄紙し、それぞれ250℃(実施例4)、300℃(実施例5)、350℃(実施例6)で60分間加熱して炭化させた。
[実施例7〜実施例9]
天然セルロース繊維としてサイザル麻パルプ70重量%と、耐熱性繊維としてフィブリル化アラミド繊維20重量%、バインダとして湿熱融着樹脂であるポリビニルアルコール(以下、PVAという)10重量%を原料として、円網抄紙機を使用して厚さ40μm、密度0.45g/cmのセパレータを抄紙し、それぞれ250℃(実施例7)、300℃(実施例8)、350℃(実施例9)で60分間加熱して炭化させた。
[実施例10〜実施例12]
天然セルロース繊維としてサイザル麻パルプ50重量%と、耐熱性繊維としてフィブリル化アラミド繊維20重量%、バインダとしてPVA30重量%を原料として、円網抄紙機を使用して厚さ40μm、密度0.35g/cmのセパレータを抄紙し、それぞれ250℃(実施例10)、300℃(実施例11)、350℃(実施例12)で60分間加熱して炭化させた。なお、実施例1〜12において、フィブリル化アラミド繊維は帝人テクノプロダクツ株式会社より商品名「帝人トワロン」で販売されている繊維を使用した。また、PAM、PVAは製紙用として一般に市販されているものを使用した。
[実施例13〜実施例22]
天然セルロース繊維としてサイザル麻パルプ75重量%と、耐熱性繊維20重量%、バインダとしてPAM5重量%を原料として、円網抄紙機を使用して厚さ40μm、密度0.45g/cmのセパレータを抄紙し、300℃で60分間加熱して炭化させた。使用する耐熱性繊維は各実施例において次のように変化させた。実施例13はフィブリル化アラミド繊維、実施例14はアラミド繊維、実施例15はアラミドフィブリッド、実施例16はフィブリル化アミドイミド繊維、実施例17はアミドイミド繊維、実施例18はポリイミド繊維、実施例19はマイクロガラス繊維、実施例20は炭素繊維、実施例21はボロン繊維、実施例22はアルミナ繊維を耐熱性繊維として使用した。
[実施例23〜実施例32]
天然セルロース繊維としてサイザル麻パルプ60重量%と、耐熱性繊維20重量%、バインダとしてPVA20重量%を原料として、円網抄紙機を使用して厚さ40μm、密度0.40g/cmのセパレータを抄紙し、300℃で60分間加熱して炭化させた。使用する耐熱性繊維は各実施例において次のように変化させた。実施例23はフィブリル化アラミド繊維、実施例24はアラミド繊維、実施例25はアラミドフィブリッド、実施例26はフィブリル化アミドイミド繊維、実施例27はアミドイミド繊維、実施例28はポリイミド繊維、実施例29はマイクロガラス繊維、実施例30は炭素繊維、実施例31はボロン繊維、実施例32はアルミナ繊維を耐熱性繊維として使用した。
[実施例33]
実施例23と同様の天然セルロース繊維としてサイザル麻パルプ60重量%と、耐熱性繊維としてフィブリル化アラミド繊維20重量%、バインダとしてPVA20重量%を原料として、円網抄紙機を使用して厚さ40μm、密度0.40g/cmのセパレータを抄紙し、300℃で120分間加熱して炭化させた。
[従来例1〜従来例5]
天然セルロース繊維としてサイザル麻パルプ100重量%を原料として、円網抄紙機を使用して厚さ40μm、密度0.40g/cmのセパレータを抄紙し、それぞれ200℃(従来例1)、250℃(従来例2)、300℃(従来例3)、350℃(従来例4)、400℃(従来例5)で60分間加熱して炭化させた。
[従来例6〜従来例7]
天然セルロース繊維として、それぞれサイザル麻パルプ100重量%(従来例6)とクラフトパルプ100重量%(従来例7)を原料として、円網抄紙機を使用して厚さ40μm、密度0.40g/cmのセパレータを抄紙し、350℃で120分間加熱して炭化させた。
[従来例8〜従来例12/特許文献6に相当]
天然セルロース繊維としてサイザル麻パルプ50重量%と、耐熱性繊維としてフィブリル化アラミド繊維50重量%を原料として、円網抄紙機を使用して厚さ40μm、密度0.40g/cmのセパレータを抄紙し、それぞれ200℃(従来例8)、250℃(従来例9)、300℃(従来例10)、350℃(従来例11)、400℃(従来例12)で60分間加熱して炭化させた。
[比較例1,比較例2/実施例1〜実施例3に対応]
実施例1〜実施例3と同一の原料を使用して、円網抄紙機で同一厚さ、同一密度に抄紙したセパレータを炭化条件のみを異にして、それぞれ200℃(比較例1)、400℃(比較例2)で60分間加熱して炭化させた。
[比較例3,比較例4/実施例4〜実施例6に対応]
実施例4〜実施例6と同一の原料を使用して、円網抄紙機で同一厚さ、同一密度に抄紙したセパレータを炭化条件のみを異にして、それぞれ200℃(比較例3)、400℃(比較例4)で60分間加熱して炭化させた。
[比較例5,比較例6/実施例7〜実施例9に対応]
実施例7〜実施例9と同一の原料を使用して、円網抄紙機で同一厚さ、同一密度に抄紙したセパレータを炭化条件のみを異にして、それぞれ200℃(比較例5)、400℃(比較例6)で60分間加熱して炭化させた。
[比較例7,比較例8/実施例10〜実施例12に対応]
実施例10〜実施例12と同一の原料を使用して、円網抄紙機で同一厚さ、同一密度に抄紙したセパレータを炭化条件のみを異にして、それぞれ200℃(比較例7)、400℃(比較例8)で60分間加熱して炭化させた。
[比較例9〜比較例13]
天然セルロース繊維としてサイザル麻パルプ45重量%と、耐熱性繊維としてフィブリル化アラミド繊維45重量%、バインダとしてPAM10重量%を原料として、円網抄紙機を使用して厚さ40μm、密度0.40g/cmのセパレータを抄紙し、それぞれ200℃(比較例9)、250℃(比較例10)、300℃(比較例11)、350℃(比較例12)、400℃(比較例13)で60分間加熱して炭化させた。
実施例、従来例、比較例において、使用した耐熱性繊維及びバインダとして使用した繊維を表6に示す。なお、天然セルロース繊維としてはサイザル麻パルプ及び木材クラフトパルプをリファイナで適宜叩解したパルプを使用した。また、天然セルロース繊維及びフィブリル化した耐熱性繊維の叩解の程度は得ようとするセパレータの特性に応じて適度の範囲に設定すればよい。また、バインダであるPAMは、抄紙時の内添又は抄紙後の塗工のどちらの手段によってもよいが、上記実施例及び比較例においては内添して抄紙した。
Figure 0005215836
次に、これらの実施例、従来例、比較例に示す各セパレータを使用して、陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて巻回し、該セパレータを炭化させた後に、導電性高分子の重合溶液を含浸させ、固体電解質層として導電性高分子を重合させて保持させた固体電解コンデンサを製作し評価した。先ず陽極アルミ箔と陰極アルミ箔を所望の寸法を持つスリット状に形成した後、各陽極アルミ箔と陰極アルミ箔にリード棒を取り付け、各セパレータを介して巻付け形成してコンデンサ素子を作製した。次にコンデンサ素子を所定温度で一定時間加熱してセパレータを炭化した。この段階ではコンデンサ素子のアルミ箔端面には酸化被膜が形成されていないので、60℃,1.0重量%アジピン酸アンモニウム水溶液中で化成処理を行って、その後3,4−エチレンジオキシチオフェンとp−トルエンスルホン酸鉄(3)とをi−プロパノールに溶解した重合溶液(モノマー:酸化剤=1:1.5,モル比)に浸漬した後、100℃の温度で60分間保持して化学重合によるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)の固体電解質層を形成した。この固体電解質層形成方法を2回繰返して得られた固体電解質層を有するコンデンサ素子を乾燥・加熱した後にケースに入れ、開口部を封口部材で封止し、封口部材側に面実装用座板を取り付けた。その後に、105℃の温度で120分間、直流電圧を0から徐々に上昇させて定格電圧の1.5倍の6Vで電圧印加を行ってエージング処理をし、定格電圧4WV、定格静電容量100μFの面実装型の固体電解コンデンサを各1000個作製した。
実施例、従来例、比較例にかかるセパレータ及びこれらのセパレータを使用して製作した固体電解コンデンサの原料及び特性の評価を実施例1〜実施例6は表7に、実施例7〜実施例12は表8に、実施例13〜実施例22は表9に、実施例23〜実施例33は表10に、従来例1〜従来例12は表11に、比較例1〜比較例13は表12に示す。
Figure 0005215836
Figure 0005215836
Figure 0005215836
Figure 0005215836
Figure 0005215836
Figure 0005215836
各実施例、従来例及び比較例におけるセパレータ及び得られた固体電解コンデンサの各測定値及び評価方法は次の通りである。
[セパレータの評価/厚さ,密度,引張強さ]
セパレータの厚さ,密度,引張強さは旧JIS C2301(電解コンデンサ紙)に規定された方法で測定した。なお、引張強さの試験条件は次の通りである。
試験条件:幅15mmのセパレータを純水中に30秒間浸漬し、その後JIS C 2111(電気絶縁紙試験方法)の引張強さの項目に準じて試験を行った。
[セパレータの評価/重量保持率]
セパレータの炭化後の重量保持率は、炭化後の重量/炭化前の重量×100によって測定した。なお、厚さ保持率及び面積保持率の測定方法は前記したとおりである。
[セパレータの評価/空隙率]
天然セルロース繊維と耐熱性繊維を含有するセパレータを用いる場合、耐熱性繊維がセパレータの外形的形状を保持するので、セパレータとしての外形と寸法は変化しないと仮定した上で、加熱によるセパレータの空隙率を次の計算式によって測定した(「紙の科学」,330頁式(1)/門屋卓他著参照)。
空隙率=(1−紙の密度/紙を構成する材料の密度)×100 …(1)
なお、炭化後のセパレータの密度は次の数式(数1)により計算した。この数式(数1)により各実施例、従来例、比較例毎に炭化の度合いに応じた炭化後のセパレータの密度を計算し、(1)式に紙の密度として代入することにより、炭化後のセパレータの空隙率を算出した。
Figure 0005215836
[ショート不良率]
炭化後のコンデンサ素子のショート不良率は、両極間のショートによる導通をテスターで確認した。先ず導電性高分子重合後のコンデンサ素子のショート不良率は、炭化後コンデンサ素子に導電性高分子層を形成した後、両極間のショートによる導通をテスターで確認した。ショート不良率は1000個の素子について検査し、ショート素子の全素子数に対する割合をショート不良率とした。また、エージング後のショート不良についても同様に行った。
[ESR,静電容量]
ESRは20℃,100kHzの周波数でLCRメータによってエージングの前後について測定した。静電容量は20℃,120Hzの周波数でLCRメータによって測定した。
[含浸性]
含浸性は、コンデンサ素子として巻回し、炭化処理をした後のコンデンサ素子の内、10個を別途取り出して重合液に浸漬させた後に、該コンデンサ素子を分解して最も吸い上げしていない部分の吸い上げ高さを測った。
[外観膨れ]
外観膨れについては、エージング後のコンデンサ素子を目視で検査した。
表11に示す従来例1〜従来例5は、天然セルロース繊維としてサイザル麻パルプ100重量%からなるセパレータを使用して加熱温度を200℃〜400℃で60分間加熱したものである。加熱温度が上昇するに従って重量保持率や厚さ保持率が減少し、セパレータ内の空隙が増加していると考えられる。例えば、250℃で加熱した従来例2では、重量保持率及び厚さ保持率がそれぞれ90.0%,90.9%であるのに対し、300℃で加熱した従来例3では、それぞれ30.4%,51.1%に減少している。その一方で、寸法安定性を失っていることから、ショート不良率が炭化後導電性高分子層を形成後のコンデンサ素子特性において、従来例2の10%から従来例3では30%に増加しており、400℃で加熱した従来例5では60%にもなっている。このように、従来の天然セルロース繊維のみからなるセパレータは炭化によって寸法安定性を欠くようになるため、ショート不良が多く、ESRの値も悪化しており、固体電解コンデンサのセパレータとして使用することはできない。
従来例6,従来例7は炭化のための加熱温度と加熱時間を350℃で120分として加熱時間を長くし、又従来例7はサイザル麻パルプに代えて木材クラフトパルプを使用した例であるが、従来例1〜5と同様に寸法安定性を欠き、ESR及びショート不良率ともに使用可能な値ではない。具体的には炭化後導電性高分子層を形成後のコンデンサ素子特性及びエージング後(完成品)のコンデンサ素子特性の双方において、100μF以上の静電容量と20mΩ以下のESRを実現することができない。また、炭化を進めることによって従来例6,従来例7は重量保持率が16.4%と16.1%まで減少しているが、重量が0%となることはない。
従来例8〜従来例12は天然セルロース繊維としてのサイザル麻パルプと耐熱性繊維としてのフィブリル化アラミド繊維を50重量%ずつ配合した例であり、特許文献6に相当する例である。いずれも引張強さは2.6N/15mmしかなく、コンデンサ素子を作製しようとしたが、裁断時に紙切れが多発しコンデンサ素子を作製できなかった。
実施例1〜実施例3は、サイザル麻パルプ88重量%にフィブリル化アラミド繊維10重量%、PAM2重量%を配合したセパレータを炭化のために、それぞれ250℃、300℃、350℃の温度で60分間加熱したものである。天然セルロース繊維であるサイザル麻パルプを88重量%含有しているため、加熱温度が上がるにつれて重量保持率が92.1%,42.5%,33.2%と減少し、空隙率は70.6%,77.8%,78.1%と増加するが、10重量%配合された加熱による影響を受けないフィブリル化アラミド繊維によってセパレータの基本的な形状が維持され、面積保持率は、それぞれ99.3%,82.1%,80.2%を確保している。そのため、ショート不良率はいずれも0%であった。そして、炭化後導電性高分子層を形成後のコンデンサ素子特性(以下、炭化後素子特性という)及びエージング後のコンデンサ素子特性(以下、エージング後素子特性という)として、いずれも100μF以上の静電容量を達成しており、このことから導電性高分子の高充填化を実現していることが判る。さらに、炭化されたサイザル麻繊維が、重合溶液が流動していくための経路と重合溶液を保持するための媒体、及び重合した導電性高分子を保持する媒体として機能するため、ESRも20mΩ以下の良好な値を示しており、導電性高分子の連続性を確保していることが判る。
これに対して、比較例1,比較例2は、実施例1〜実施例3と同一のセパレータを使用して、炭化温度を200℃と400℃の温度で60分間加熱した例である。比較例1では、炭化温度が低いため、重量保持率が99.8%と炭化が不十分であり、サイザル麻パルプの水酸基の弊害を除去することができず、エージング後に膨れが発生して、炭化後及びエージング後の特性としてESRも22mΩ,30mΩと悪化している。一方、比較例2では炭化温度が高すぎるため、重量保持率が30.5%と極端に減少し、含浸性は4mmと良好であるが、サイザル麻パルプの繊維形骸の残存が不十分であり、導電性高分子の連続性を確保することができず、そのためエージング後素子特性としてESRが26mΩと悪化し、又ショート不良率も6%と増加している。このことは炭化条件が過ぎると導電性高分子の連続性が途切れ、ESR、静電容量ともに悪化し、更に部分的に極間に繋がった導電性高分子によるショートが生じるため、ショート不良率も悪化することを示している。よって、重合溶液が流動していくための経路と重合溶液を保持するための媒体、及び重合した導電性高分子を保持する媒体として天然セルロース繊維が機能するための炭化の条件としては、250℃〜350℃の温度で60分〜120分が適当である。
実施例10〜実施例12は、サイザル麻パルプ50重量%にフィブリル化アラミド繊維20重量%、PVA30重量%を配合したセパレータを炭化のために、それぞれ250℃、300℃、350℃の温度で60分間加熱したものである。天然セルロース繊維であるサイザル麻パルプを50重量%含有しているため、加熱温度が上がるにつれて重量保持率が93.2%,57.8%,40.9%と減少し、空隙率も75.4%,80.7%,81.3%と増加し、20重量%配合された加熱による影響を受けないフィブリル化アラミド繊維によってセパレータの基本的な形状が維持されているため、面積保持率は、それぞれ99.1%,93.6%,89.2%を確保している。そのため、ショート不良率はいずれも0%であった。そして、炭化後素子特性及びエージング後素子特性として、いずれも100μF以上の静電容量を達成しており、このことから導電性高分子の高充填化を実現していることが判る。さらに、炭化されたサイザル麻繊維が、重合溶液が流動していくための経路と重合溶液を保持するための媒体、及び重合した導電性高分子を保持する媒体として機能するため、導電性高分子の連続性を確保することができ、炭化後素子特性及びエージング後素子特性の双方においてESRも18Ω以下の良好な値を示している。よって、炭化後において重合溶液が流動していくための経路と重合溶液を保持するための媒体、及び重合した導電性高分子を保持する媒体として機能するためには、天然セルロース繊維は少なくとも50重量%以上配合する必要があることが判る。
これに対して、比較例7,比較例8は、実施例10〜実施例12と同一のセパレータを使用して、炭化温度を200℃と400℃の温度で60分間加熱した例である。比較例7では、炭化温度が低いため、重量保持率が99.6%と炭化が不十分であり、サイザル麻パルプの水酸基の弊害を除去することができず、エージング後の特性としてESRも33mΩと悪化している。一方、比較例8では炭化温度が高すぎるため、重量保持率が32.2%と極端に減少し、含浸性は4mmと良好であるが、サイザル麻パルプの繊維形骸の残存が不十分であり、導電性高分子の連続性を確保することができず、エージング後素子特性としてESRが28mΩと悪化し、又ショート不良率も5%と増加している。よって、重合溶液が流動していくための経路と重合溶液を保持するための媒体、及び重合した導電性高分子を保持する媒体として天然セルロース繊維が機能するための炭化の条件としては、250℃〜350℃の温度で60分〜120分が適当である。
次に、250℃〜350℃の温度で60分〜120分の炭化が適当であることを確認するため、実施例22にかかるセパレータを使用して、200℃,250℃,300℃,350℃,400℃の各温度で、10分,30分,40分,50分,60分,120分,300分の各時間加熱して、各実施例と同様の定格電圧4WV、定格静電容量100μFの面実装型の固体電解コンデンサを作製して、エージング後素子特性としての静電容量,ESR,ショート不良率,外観膨れについての評価を表13に○×で示した。なお、評価基準は、表14に示すとおりである。
Figure 0005215836
Figure 0005215836
表13に示すように、250℃〜350℃の温度で、60分から120分加熱して炭化したセパレータを使用した固体電解コンデンサは、エージング後素子特性として、静電容量が100μF以上、ESRが20mΩ以下、ショート不良率が1%以下、外観膨れもない。よって、4つの評価項目の全てが○の良好な値を示している。一方、上記炭化温度と時間の範囲を逸脱した炭化条件の場合は、静電容量,ESR,ショート不良率,外観膨れの項目の少なくとも一つ以上が前記○となる値を外れ、固体電解コンデンサとして不適当な×の値となっている。このことからも重合溶液が流動していくための経路と重合溶液を保持するための媒体、及び重合した導電性高分子を保持する媒体として天然セルロース繊維が機能するための炭化の条件としては、250℃〜350℃の温度で60分〜120分が適当であることが判る。
比較例3,比較例4は実施例4〜実施例6と、比較例5,比較例6は実施例7〜実施例9と同一のセパレータを使用して、炭化温度を200℃と400℃で60分間加熱した例である。それぞれの測定値は、比較例1,比較例2と実施例1〜実施例3との関係、比較例7,比較例8と実施例10〜実施例12と同様の関係を示している。
また、比較例9〜比較例13はサイザル麻パルプの配合量を45重量%に減らし、フィブリル化アラミド繊維45重量%、PAM10重量%を配合したセパレータを炭化のために、それぞれ200℃、250℃、300℃、350℃、400℃で60分間加熱したものである。フィブリル化アラミド繊維を40重量%を超えて45重量%配合すると、バインダとしてのPAMを添加最大量の10重量%配合したとしても引張強さは、許容最低限の7.8N/15mmしか発現しない。また、サイザル麻パルプを50重量%未満の45重量%しか配合していないため、炭化をいかに進めても、静電容量は80μm〜92μFに留まり、含浸性も1mm或いは2mmと悪く、炭化後及びエージング後の特性としてESRが25mΩ〜30mΩと悪化している。よって、天然セルロース繊維は50重量%以上配合することが必要である。
実施例13〜実施例22は、サイザル麻パルプに配合する耐熱性繊維をフィブリル化アラミド繊維,アラミド繊維,アラミドフィブリッド,フィブリル化アミドイミド繊維,アミドイミド繊維,ポリイミド繊維,マイクロガラス繊維,炭素繊維,ボロン繊維,アルミナ繊維と変化させて、サイザル麻パルプ75重量%、耐熱性繊維20重量%、PAM5重量%を配合し300℃で60分加熱したセパレータを使用したものである。また、実施例23〜実施例32は、それぞれ実施例13〜実施例22と同一の耐熱性繊維を使用してサイザル麻パルプ60重量%、耐熱性繊維20重量%、PVA20重量%を配合し300℃で60分加熱したセパレータを使用したものである。
実施例13〜実施例32及び実施例33はいずれも101μF以上の静電容量と19mΩ以下のESRを実現して、ショート不良率も0%である。よって、450℃以上の耐熱性を有する耐熱性繊維であれば、繊維の種類に特に影響を受けることなく、炭化時にセパレータの基本形状を維持し、天然セルロース繊維を炭化することによる寸法安定を確保することが可能である。そして、炭化された天然セルロース繊維が、重合溶液が流動していくための経路と重合溶液を保持するための媒体、及び重合した導電性高分子を保持する媒体として機能するため、導電性高分子の連続性を確保することができる。
本発明によれば、従来困難とされてきたセパレータの空隙率を増加させることによる重合溶液の含浸性及び導電性高分子の高充填化と連続性の確保、更に炭化時の加熱に対するセパレータの寸法安定性の確保を同時に改善することができ、炭化後のセパレータは炭化前のセパレータに対して、空隙率70.2%〜83.0%、面積寸法保持率80.2%〜99.6%、厚さ寸法保持率56.0%〜97.1%としたセパレータを得ることができる。重合した導電性高分子はセパレータ内に空隙及び炭化後の繊維形骸や未酸化の繊維に沿って導電性高分子層として連続して保持されるため、導電性高分子の高充填化を実現するとともに、導電性高分子の連続性を確保することができ、固体電解コンデンサの他の特性に悪影響を与えることなく、高周波域でのESR等を改善できる。具体的には、ショート不良等の他の特性に悪影響を与えることなく、エージング後(完成品)のコンデンサ素子特性において100μF以上の静電容量と20mΩ以下のESRを実現した固体電解コンデンサを得ることができる。

Claims (10)

  1. 陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて巻回し、該セパレータを炭化させた後に、固体電解質層として導電性高分子を保持させる固体電解コンデンサ用のセパレータにおいて、
    前記セパレータは、50重量%以上の天然セルロース繊維と、10重量%〜40重量%の熱分解温度が450℃以上の耐熱性繊維と、10重量%〜30重量%の湿熱融着樹脂又は2重量%〜10重量%のポリアクリルアミド系樹脂からなるバインダを原料として抄紙するとともに、250℃〜350℃の温度で60分〜120分加熱することにより炭化させてなり、
    炭化後のセパレータは、天然セルロース繊維の水酸基が除去されるとともに、天然セルロース繊維の繊維形骸が残存することを特徴とするセパレータ。
  2. 炭化後のセパレータは炭化前のセパレータに対して、空隙率70.2%〜83.0%、面積寸法保持率80.2%〜99.6%、厚さ寸法保持率56.0%〜97.1%とした請求項1記載のセパレータ。
  3. 化のための加熱時において、耐熱性繊維によってセパレータの形態を保持した状態で、天然セルロース繊維を炭化させる請求項1記載のセパレータ。
  4. 繊維形骸に沿って導電性高分子を連続的に保持させた請求項1,2又はに記載のセパレータ。
  5. 繊維形骸とともに、部分的に未酸化のセルロース繊維を残存させる請求項1,2,3又はに記載のセパレータ。
  6. 天然セルロース繊維として、マニラ麻パルプ,サイザル麻パルプ,エスパルトパルプ,コットンパルプ,ジュートパルプ,ヘンプパルプ,木材パルプから選択された一種又は複数の繊維を使用した請求項1,2,3,4又は5に記載のセパレータ。
  7. 耐熱性繊維として、アラミド繊維,アミドイミド繊維,ポリイミド繊維,フィブリル化アラミド繊維,アラミドフィブリッド,フィブリル化アミドイミド繊維,アルミナ繊維,ボロン繊維,炭素繊維,ガラス繊維から選択された一種又は複数の繊維を使用した請求項1,2,3,4,5又は6に記載のセパレータ。
  8. 湿熱融着樹脂として、ポリビニルアルコールを用いた請求項1,2,3,4,5,6又は7に記載のセパレータ。
  9. 陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて巻回し、該セパレータを炭化させた後に、固体電解質層として導電性高分子を保持させる固体電解コンデンサにおいて、
    セパレータとして請求項1〜のいずれかに記載のセパレータを使用し、固体電解質層として導電性高分子を保持させることを特徴とする固体電解コンデンサ。
  10. 導電性高分子として、ポリピロール,ポリチオフェン,ポリアニリン又はこれらの誘導体の少なくとも1種類を使用した請求項に記載の固体電解コンデンサ。
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