JP4294304B2 - 電解コンデンサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて電解液を含浸・保持した電解コンデンサにおいて、電解液中での熱劣化が少ない半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維を含有するセパレータを用いたことにより、高温電解液中での耐熱性を著しく高め、高温使用時の寿命を長くした電解コンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に電解コンデンサ、具体的には巻回型アルミ電解コンデンサは、陽極アルミ箔と陰極アルミ箔との間にセパレータを介在させて巻付け形成してコンデンサ素子を作成し、このコンデンサ素子を液状の電解液中に浸漬して電解液を含浸させ、封口して製作している。上記セパレータにはクラフトパルプやマニラ麻パルプ、エスパルトパルプ等のセルロース繊維を配合した電解紙が用いられている。上記電解液としては、通常エチレングリコール(EG)、ジメチルホルムアミド(DMF)又はγ−ブチロラクトン(GBL)等を溶媒とし、これらの溶媒に硼酸やアジピン酸アンモニウム、マレイン酸水素アンモニウム等の溶質を溶解したものを用いてコンデンサ素子の両端から浸透させて製造している。EGは水系の溶媒、DMFおよびGBLは非水系の溶媒であり、それぞれの溶媒を用いた電解液は水系電解液と非水系電解液に、それぞれ分類することができる。
【0003】
近年、デジタル化された業務用及び民生用の各種電子機器に使用される電解コンデンサにはより一層の耐熱性が求められている。例えば、カーエレクトロニクスの進展に伴い、自動車に搭載されるアルミ電解コンデンサの数が増えるとともに、電装部品の設置場所については、省スペースを図るため車室内からエンジンルームへ設置することが検討されている。そのため、電解コンデンサにはより一層耐熱性、具体的には最高使用温度及び保証寿命の向上が求められている。
【0004】
照明用電子バラストに用いられる電解コンデンサにおいても、省スペースのため温度の高い状態で使用されることが多くなり、カーエレクトロニクスに使用される電解コンデンサ同様に一層の耐熱性向上が求められている。
【0005】
また、使用時の耐熱性だけでなく、基板に実装する際の耐熱性も重要である。表面実装を行うためにハンダリフロー工程が用いられている。ハンダリフロー工程は環境保全の観点から鉛フリーが求められており、ハンダリフロー温度も250℃を超えるようになってきている。こうした鉛フリーのハンダリフロー工程に対応するため、セパレータの素材にもハンダリフロー工程の温度以上の融点を持つことが求められている。
【0006】
このように、アルミ電解コンデンサには様々な用途、あるいは実装工程において、耐熱性の向上が求められており、より高温域で長時間使用できる電解コンデンサの開発が進められている。現在、電解コンデンサの最高使用温度は標準品で85℃、高信頼性品は105℃に対応したものが多い。保証寿命は短いもので1000時間、長いものになると5000時間、10000時間、更には最高使用温度85℃のアルミ電解コンデンサでは20000時間にまで達する。
【0007】
近年、照明及び自動車の電装用等の用途において最高使用温度が105℃を超え125℃や150℃のコンデンサが開発されている。これら最高使用温度の高いコンデンサの保証寿命は125℃タイプで5000時間程度が限界であり、85℃タイプや105℃タイプに比べて短い。また、150℃タイプでは保証寿命がまだ1000時間程度に過ぎない。
【0008】
このように、最高使用温度の高い125℃タイプや150℃タイプの電解コンデンサは開発され上市されているものの、最高使用温度の高い電解コンデンサの保証寿命は、85℃タイプや105℃タイプの最高使用温度が低い電解コンデンサの寿命に比べてまだまだ短かく、要求されている特性を満足しているとはいえない。このように最高使用温度が125℃や150℃の電解コンデンサの保証寿命を長くすることができない主な理由は、高温度使用時における等価直列抵抗(ESR)及び漏れ電流(LC)の上昇にある。
【0009】
従来、アルミ電解コンデンサの最高使用温度及び高温使用時の保証寿命を向上させる方策としては、専ら化成皮膜、電解液、封口材の改善が主に行われており、セパレータの改善により連続使用温度を向上させるという試みは見られなかった。
【0010】
そこで、発明者等は先にセパレータの改善からアルミ電解コンデンサの最高使用温度及び高温使用時の保証寿命の向上にアプローチする手段として、セパレータとして電解液中での熱劣化が少なく、高温電解液中においても長時間の保形性を有し、重量変化の少ない化学繊維、例えばアクリル繊維,アラミド繊維,冷却ゲル紡糸ビニロン繊維,ナイロン66繊維等を含有するセパレータを用いることにより、高温電解液中での耐熱性を著しく高め、高温使用時の寿命を長くした電解コンデンサを提供した(特許文献1)。
【0011】
一方、化学繊維としてのポリアミドにおいて、脂肪族ポリアミドは一般にナイロンと呼ばれてストッキングなどに使用されており、一方芳香族ポリアミドは一般にアラミドと呼ばれ、その強度、耐熱性の高さから耐炎防護服などに広く使用されている。更に、近年、脂肪族ポリアミド樹脂からなる繊維と芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維の長所を併せ持つ半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維が提供されている(特許文献2,特許文献3)。
【0012】
【特許文献1】
特願2001−173021号
【特許文献2】
特開平9−13222号公報
【特許文献3】
特開平9−256219号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電解質として電解液を用いる巻回型アルミ電解コンデンサにおいて、セパレータとして使用されている従来のクラフトパルプや、マニラ麻、エスパルトパルプ等のセルロース繊維を用いたセパレータは、最高使用温度が高くなっても、長時間の使用に充分に耐えることができる特性を有しているかというと必ずしもそうではない。なぜなら、高温で連続使用した後のアルミ電解コンデンサを分解すると、セパレータの劣化、特に引張強度、耐折強度、重量の低下・減少が観察されるからである。また、セルロース繊維を用いたセパレータを電解液に浸漬すると、時間と共に徐々に引張強度、引き裂き強度および重量が低下・減少し、その強度の低下および重量の減少は温度の上昇により加速されるからである。
【0014】
このことは、従来用いられているセルロースを原料とするセパレータは、電解液中、特に高温度の電解液中で長時間使用することについては、まだ改善の余地があることを示している。また、前記した電解液中での熱劣化が少ない化学繊維を含有したセパレータについても、より使用に適した化学繊維についての改善の余地がある。
【0015】
そのため、本発明者等はアルミ電解コンデンサの最高使用温度を高め、最高使用温度での保証時間を伸ばす方策として、セパレータの耐熱性、特に電解液を含浸した状態での耐熱性を向上させることに着目し、高温電解液中での耐熱性を著しく高めたセパレータを使用する電解コンデンを提供することを課題としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて電解液を含浸・保持した電解コンデンサにおいて、前記セパレータとして半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維であって、ジカルボン酸成分の100モル%がテレフタル酸成分と、ジアミン成分の50モル%が1,9−ノナンジアミン、ジアミン成分の残り50モル%が2−メチル−1,8−オクタンジアミン成分とから合成させたポリアミド樹脂からなる繊維を少なくとも30重量%以上含有するセパレータを用いるとともに、電解液として非水系電解液を使用することにより、最高使用温度150℃において保障時間2000時間を可能とした電解コンデンサを提供する
【0017】
本発明によれば、セパレータとして非水系電解液中での熱劣化が少ない半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維を少なくとも30重量%以上含有するセパレータを用いることにより、前記半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維が高温の非水系電解液中であっても形状を維持する保形性を有し、かつ、重量変化が少ないため、セパレータそのものが高温使用時においても長時間に亘って保形性を維持することができる。その結果、最高使用温度を高め、かつ、最高使用温度での保証寿命を飛躍的に伸ばし、最高使用温度150℃において保障時間2000時間を可能とした電解コンデンサを得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる電解コンデンサの実施形態を説明する。本発明は、セパレータとして非水系電解液中での熱劣化が少なく、高温の非水系電解液中で長時間の保形性を有し、重量変化の少ない半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維を含有するセパレータを使用することにより、セパレータの耐熱性を著しく高めて、電解コンデンサの高温使用時における寿命を長くして、最高使用温度150℃において保障時間2000時間を可能としたことに特徴を有するものである。
【0019】
ポリアミドは主鎖にアミド結合−CONH−を持つ化合物であり、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドが知られている。これらのポリアミド樹脂からなる繊維を電解コンデンサのセパレータの原材料として見た場合、脂肪族ポリアミド樹脂からなる繊維は耐熱性・耐薬品性を有し、かつ、セパレータとして裁断することも容易であるが、弾性率が低く、伸びが大きい。そのため、巻回時にセパレータが伸びると素子のバラツキが大きくなる。よって、伸びの大きい脂肪族ポリアミド樹脂からなる繊維をセパレータの素材として使用することには困難が伴う。
【0020】
一方、芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維は耐薬品性や耐熱性が強いため、前記した電解液中での熱劣化が少ない化学繊維の一つとして使用することは可能であるものの、強度が高く、セパレータとして数10mm以下の正確な巾で裁断しようとすると裁断刃を傷めたり裁断面が毛羽立ったりと、電解コンデンサ用セパレータとしての裁断が困難であるという難点を残している。
【0021】
そこで、本発明者等は近年提供された脂肪族ポリアミド樹脂からなる繊維と芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維の長所を併せ持つ半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維に着目し、セパレータとして半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維を含有するセパレータを発明したものである。この半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維は、芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維に近い耐熱性、耐薬品性および伸びの小ささを有し、脂肪族ポリアミド樹脂からなる繊維に近い裁断のしやすさを併せ持っている。この半芳香族ポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミドの炭素結合が直鎖状につながっているのに対して、その直鎖状脂肪族構造の中に固いベンゼン核を有しており、この化学構造の違いにより、半芳香族ポリアミド樹脂は脂肪族ポリアミドよりも固く、又伸度が低い。
【0022】
本発明に用いる半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維は、株式会社クラレ製のジカルボン酸成分の60モル%以上が芳香族ジカルボン酸成分と、ジアミン成分の60モル%以上が炭素数6〜12の脂肪族アルキレンジアミンであるジアミン成分とから合成させたポリアミド樹脂(以下、ナイロン9Tと称する)からなる繊維(以下、この繊維をナイロン9Tからなる繊維と称する)変性繊維としてのジカルボン酸成分の100モル%がテレフタル酸成分と、ジアミン成分の50モル%が1,9−ノナンジアミン、ジアミン成分の残り50モル%が2−メチル−1,8−オクタンジアミン成分とから合成させたポリアミド樹脂(以下、ナイロン9MTと称する)からなる繊維(以下、この繊維をナイロン9MTからなる繊維と称する)である。
【0023】
セパレータに含有する繊維に求められる耐熱性とは、先ず高温電解液中で長時間経過した後においても形態を保持する(保形性)ことであり、更には、重量変化が少ないことである。また、鉛フリーのハンダリフロー工程(約250℃,数10秒間)にも耐えることができる耐熱性も必要である。そこで先ず、半芳香族ポリアミド樹脂の電解液中での耐熱性を評価するため、次のような試験を行った。なお、本実施形態では、前記ナイロン9MTからなる繊維として極限粘度0.75dl/g(濃硫酸中30℃で測定)、融点265、繊度1.0dtex、カット長5mm、強度4.59CN/dtex、伸度12.2%、初期弾性率50.1CN/dtexの繊維を使用した。
【0024】
まず使用する電解液は、水系電解液としてエチレングリコール(EG)系電解液を、非水系電解液としてγ−ブチロラクトン(GBL)系電解液を用いた。これは、電解液の溶媒により電解液中での繊維の劣化に差が出てくると考えられるからである。
【0025】
上記水系電解液及び非水系電解液に乾燥したナイロン9MTからなる繊維を浸漬した。電解液は市販の電解液を使用した。耐圧容器内で、180℃、250時間の加速劣化試験を行い、試験後、形態を保持しているか保形性の有無を確認した。保形性を有する繊維については、試験前後での重量変化を測定した。試験後の繊維は水洗・乾燥し、重量を測定した。なお、加速劣化をアレニウス則(反応温度が10℃上昇すると反応速度が2倍になる)に当てはめると、この加速劣化試験は150℃、2000時間の条件に相当する。
【0026】
次に、比較するため、通常セパレータに使用されているセルロース繊維(マニラ麻パルプ)を用い、同様の試験を行った。それぞれの加速劣化試験における保形性及び重量残存率を表1に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0004294304
【0028】
この加速劣化試験によると、セルロース繊維の代表例としてのマニラ麻の重量残存率は水系電解液で94%、非水系電解液で75%であった。また、両電解液中での劣化試験後の繊維を洗浄すると繊維が崩れることから、重量減に伴い、保形性を失うほどではないが、繊維そのものの強度も大きく劣化していることが分かった。
【0029】
このことは、セルロース系セパレータを用いて製造した電解コンデンサを、150℃の温度で2000時間使用すると、セパレータの重量減少が起こり、同時にセパレータの強度も低下することを示している。更に長時間使用すると、セパレータの劣化は一層進むことが予想される。
【0030】
一方、試験に供した半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維としてのナイロン9MTからなる繊維は、電解液の種類により加熱劣化試験の結果が大きく異なり、水系電解液を用いた加熱劣化試験においては保形性を有しておらず、繊維が崩壊していた。一方、非水系電解液を用いた加熱劣化試験においては試験後に繊維を水洗しても形態を保持しており、保形性を有していた。また、試験後の残存重量も99%以上であり、高温電解質中でも分解していなかった。
【0031】
以上のことから、ナイロン9MTからなる繊維は高温使用条件下で長寿命を要求される電解コンデンサ、特に電解液に非水系電解液を使用する電解コンデンサのセパレータの素材として適していることが分かる。また、このナイロン9MTからなる繊維の融点は265℃と、鉛フリーハンダリフローの温度である250℃よりも高い融点を持つことから、ハンダリフロー工程での耐熱性も十分満たしている。
【0032】
そこで、本発明は上記した非水系電解液において、電解液中での熱劣化が少なく、高温電解液中で長時間の保形性を有し、かつ、重量変化の少ない半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維を含有するセパレータを採用したものである。
【0033】
次に、セパレータの製造について述べる。本発明では半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維を配合して、抄紙方法によりセパレータとしてシート化した。即ち、湿式不織布である。抄紙法は水を媒介とすることにより繊維を均一に分散・積層することが可能であり、均一性を求めるアルミ電解コンデンサのセパレータの製造方法として適切である。
【0034】
次に、湿式不織布の繊維間の接着であるが、一般に化学繊維そのものは自己接着性がないため、自己接着性のある繊維の混抄や、ケミカルボンド、サーマルボンドによりシートに強度を付与することが行われている。
【0035】
本発明においては、電解液中での耐熱性の高い繊維を用いることが重要であり、シート化及び繊維間の接着の方法如何によってセパレータの耐熱性を向上するものではない。従って、上記の接着方法に限定はなく、いずれの接着方法を用いても本発明の課題を解決することができる。
【0036】
例えば、自己接着性のある繊維として、セルロース繊維を配合することも可能である。セルロース繊維は高温の電解液中での重量保持率が劣るが、配合する他の繊維に充分な耐熱性があれば、セルロース繊維を配合することも可能である。高温の非水系電解液中での耐熱性に優れる半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維とセルロースを混抄する場合、混抄の割合は得ようとするコンデンサの耐熱性の特性により任意に決めることができるが、耐熱性を向上させるためには、少なくとも高温の非水系電解液中での耐熱性に優れる半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維を30重量%以上含有することが望ましい。
【0037】
なお、耐熱性を向上させることのできる割合であれば、配合割合に特に限定はない。また、半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維に混抄する繊維に限定はなく、セルロース繊維以外の他の繊維を使用することもできる。もちろん、耐熱性のある半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維100%でセパレータを構成することがセパレータ、ひいては電解コンデンサの耐熱性向上に有効であることは言うまでもない。
【0038】
以下に本発明にかかる電解コンデンサの具体的な実施例を従来例とともに説明する。先ず陽極アルミ箔と陰極アルミ箔を所望の寸法を持つスリット状に形成した後、各陽極アルミ箔と陰極アルミ箔にリード棒を取り付け、表2に示す実施例1〜2,比較例1,従来例1に記載したセパレータを介して巻付け形成してコンデンサ素子を作成した。
【0039】
【表2】
Figure 0004294304
【0040】
実施例1〜は、セパレータに電解液中での熱劣化が少ない半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維としてのナイロン9MTからなる繊維を少なくとも30重量%以上含有した電解コンデンサの例である。セパレータの製造に際しては、強度を高くするためにバインダーとしてセルロース繊維やPVAを混抄した。耐熱性を有するナイロン9MTからなる繊維の接着については、セルロース繊維やPVAの混抄以外にケミカルボンドやサーマルボンドでも有効であることは先に述べたとおりである。ここでは、セルロース繊維としてのマニラ麻パルプとの混抄、あるいはセルロース繊維としてのマニラ麻パルプとPVAの混抄によりシート化した例を示した。比較例1としては、ナイロン9MTの含有割合を15重量%として、マニラ麻パルプ及びPVAとの混抄によりシート化した。従来例としては、マニラ麻パルプを用いた電解紙をセパレータとして使った電解コンデンサの例を挙げた。コンデンサの作製は、陽極箔と陰極箔の間に上記セパレータを挟み巻回しコンデンサ素子を形成し、コンデンサ素子にγ−ブチロラクトン(GBL)を溶媒とする非水系電解液を含浸し、アルミケースに入れ封口し、16WV、470μFのアルミ電解コンデンサを得た。
【0041】
耐熱性の評価は、等価直列抵抗(ESR)、漏れ電流(LC)及び静電容量(C)の項目で行い、前記表2にそれぞれ初期特性と加熱劣化後の特性を示した。なお、測定条件は次の通りである。電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)は20℃、100kHzの周波数でLCRメータによって測定した。静電容量(C)は20℃、120Hzの周波数でLCRメータによって測定した。漏れ電流(LC)は定格直流電圧を2分間印加後に電解コンデンサに流れる電流を20℃で測定した。加熱劣化試験は150℃の高温層で定格直流電圧を2000時間連続印加し、20℃に復帰後、等価直列抵抗(ESR)、漏れ電流(LC)及び静電容量(C)を測定した。
【0042】
表2に記載したように、実施例1〜はESR、LC、Cの初期特性が従来例と同等であり、これらの素材が電解コンデンサのセパレータとして充分に使用できることを示している。また、加熱劣化後のESRの上昇が、いずれも従来例に比べ小さい。従来は、125℃および150℃で長時間使用すると、ESRおよびLCが上昇するため、保証時間を長くすることができなかったが、本実施例では加熱劣化試験後、ESRおよびLCは上昇するものの、上昇の程度が従来例よりも小さい。このことからアルミ電解コンデンサの耐熱性が向上していることが分かる。なお、加熱劣化試験前後での容量の変化についても、従来例よりも実施例の方が小さく、容量(C)に関しても従来例以上の性能を有していることが分かる。
【0043】
比較例1はナイロン9MTからなる繊維の配合率を15重量%と低くしたセパレータを用いた電解コンデンサの例であるが、加熱劣化後の特性において実施例1,2とは顕著な差があり、高温の非水系電解液中での耐熱性を高め、高温使用時の寿命を長くするためには、実施例1に示すようにナイロン9MTからなる繊維の配合率は少なくとも30重量%以上とする。
【0044】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によればセパレータとして非水系電解液中での熱劣化が少ない半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維を少なくとも30重量%以上含有するセパレータを用いることにより、前記半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維が高温非水系電解液中であっても繊維の形状を維持する保形性を有し、かつ、重量変化が少ないため、セパレータそのものが高温使用時においても長時間に亘って保形性を維持することができる。その結果、従来なしえなかった最高使用温度150℃において、保証時間を2000時間とすることが可能になる。よって、非水系電解液を使用する電解コンデンサであっても、最高使用温度を高め、かつ、最高使用温度での保証寿命を飛躍的に伸ばすことのできる電解コンデンサを得ることができ、電装部品全体の耐熱性向上および電装部品の設置場所の自由度を向上させることができる。

Claims (1)

  1. 陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて電解液を含浸・保持した電解コンデンサにおいて、
    前記セパレータとして半芳香族ポリアミド樹脂からなる繊維であって、ジカルボン酸成分の100モル%がテレフタル酸成分と、ジアミン成分の50モル%が1,9−ノナンジアミン、ジアミン成分の残り50モル%が2−メチル−1,8−オクタンジアミン成分とから合成させたポリアミド樹脂からなる繊維を少なくとも30重量%以上含有するセパレータを用いるとともに、電解液として非水系電解液を使用することにより、最高使用温度150℃において保障時間2000時間を可能としたことを特徴とする電解コンデンサ。
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