JP5214925B2 - 酵素の製造方法 - Google Patents

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本発明は、ラビリンチュラ綱(Labyrinthulea)に分類される微生物を培養することを特徴とする、リパーゼ活性を有する酵素の製造方法、およびそれにより得られる酵素に関する。具体的には、ヤブレツボカビ科(Thraustochytriceae)に属する微生物、特にヤブレツボカビ属(Thraustochytrium)またはシゾキトリウム属(Schizochytrium)に属する微生物を培養することを特徴とする、リパーゼ活性を有する酵素の製造方法、およびそれにより得られるリパーゼ活性を有する酵素に関する。
従来より、酵素は例えば食品や医薬品を製造する工程において利用され、あるいはそのもの自体を医薬品等として利用する等、様々な場面で利用されてきている。酵素は、例えば糖類、脂質、蛋白質、核酸等の様々な物質の分解、合成に関与していることも公知である。酵素を工業的に製造する方法も様々な方法が既に検討、報告されている。
脂質分解酵素であるリパーゼにおいては、例えばオレイルアルコールの存在下に
Burkholderia属微生物を培養することを特徴とするリパーゼの製造方法(特許文献1)、シュードモナス属菌株を親株として変異により得られた抗生物質耐性を有する菌株を培養し、培養物からリパーゼを採取することを特徴とするリパーゼの製造方法(特許文献2)、あるいは豆乳またはその乾燥粉末を含有する培地で接合菌類に属する菌を培養し、培養物からリパーゼを取得することを特徴とするリパーゼの製造方法(特許文献3)等、様々な微生物を用いた製造方法が既に報告されている。
一方、ラビリンチュラ綱に分類される微生物は、長鎖不飽和脂肪酸を製造することが既に知られている。
ヤブレツボカビ科に属する微生物においては、スキゾキトリウム属の微生物を用いた長鎖高度不飽和脂肪酸含有リン脂質の製造方法(特許文献4)、ドコサヘキサエン酸生産能を有するスラウストキトリウム属の微生物(特許文献5)等が既に報告されている。
また、アプラノキトリウム属に属するAplanochytridsについて酵素産生を確認した結果、Aplanochytridsにはリパーゼを産生するものが無かったという報告もなされている(非特許文献1)。
特開2000−354485号公報 特開平6−209772号公報 特開昭61−289883号公報 特開2007−143479号公報 特開2005−102680号公報 VaradaDamare and Seshagiri Raghukumar, Ind. J.Mar. Sci., 35, 326-340 (2006)
上記のとおり、ラビリンチュラ綱に分類される微生物は、長鎖不飽和脂肪酸を製造することが既に知られているが、ラビリンチュラ綱に分類される微生物、特にヤブレツボカビ科に属する微生物を用いたリパーゼ活性を有する酵素の製造方法は知られていない。
本発明の目的は、リパーゼ活性を有する酵素の効率的な製造方法、およびそれにより得られる酵素を提供することである。具体的には、リパーゼ活性を有する酵素の製造方法において、ラビリンチュラ綱(Labyrinthulea)に分類される微生物を培養して、リパーゼ活性を有する酵素を産生させる新規製造方法およびそれにより得られるリパーゼ活性を有する酵素を提供することである。より具体的には、ヤブレツボカビ科
Thraustochytriceae)に属する微生物、特にヤブレツボカビ属(Thraustochytrium)またはシゾキトリウム属(Schizochytrium)に属する微生物を培養して、リパーゼ活性を有する酵素を産生させる、リパーゼ活性を有する酵素の製造方法、およびそれにより得られるリパーゼ活性を有する酵素を提供することである。
本発明者らは、微生物に着目し、酵素を効率的に産生する微生物を広く自然界に求め鋭意探索の結果、ラビリンチュラ綱(Labyrinthulea)に分類される微生物、特にヤブレツボカビ科(Thraustochytriceae)に属するラビリンチュラに、リパーゼ活性を有する酵素を産生することを初めて見出し、本発明を完成させるに至った。
したがって、本発明は、以下の(1)に記載のリパーゼ活性を有する酵素の製造方法に関する。
(1) Thraustochytrium aureum ATCC 34304 株、Schizochytrium aggregatum ATCC 28209 株、Thraustochytrium roseum ATCC 28210 株、Schizochytrium limacinum ATCC MYA-1381 株、およびSchizochytrium sp. M-8株(FERM P-19755)から選ばれたヤブレツボカビ属(Thraustochytrium)またはシゾキトリウム属(Schizochytrium)に属する微生物を培養して、リパーゼ活性を有する酵素を産生させることを特徴とする、リパーゼ活性を有する酵素の製造方法
本発明は、リパーゼ活性を有する酵素の効率的な製造方法として有用である。
すなわち、本発明により、リパーゼ活性を有する酵素の製造方法において、ラビリンチュラ綱(Labyrinthulea)に分類される微生物を培養して、リパーゼ活性を有する酵素を産生させる新規製造方法およびそれにより得られるリパーゼ活性を有する酵素を提供することができる。具体的には、ヤブレツボカビ科(Thraustochytriceae)に属する微生物、特にヤブレツボカビ属(Thraustochytrium)またはシゾキトリウム属(Schizochytrium)に属する微生物を培養して、リパーゼ活性を有する酵素を産生させる、リパーゼ活性を有する酵素の製造方法、およびそれにより得られるリパーゼ活性を有する酵素を提供することができる。
本発明のリパーゼ活性を有する酵素の製造方法は、ラビリンチュラ綱(Labyrinthulea)に分類される微生物を培養して、リパーゼ活性を有する酵素を産生させることを特徴とする。具体的には、ヤブレツボカビ科(Thraustochytriceae)に属する微生物を培養して、リパーゼ活性を有する酵素を産生させることを特徴とする。
また、本発明は、上記のリパーゼ活性を有する酵素の製造方法により得られる酵素に関する。
ヤブレツボカビ科(Thraustochytriceae)に属する微生物としては、特にヤブレツボカビ属(Thraustochytrium)またはシゾキトリウム属(Schizochytrium)に属する微生物が挙げられ、特にThraustochytrium aureumSchizochytrium aggregatumThraustochytrium roseumSchizochytrium limacinum、またはSchizochytrium sp.に属する微生物が用いられる。
このような菌株として、具体的にはThraustochytrium aureum ATCC 34304株、Schizochytrium aggregatum ATCC 28209 株、Thraustochytrium roseum ATCC 28210 株、Schizochytrium limacinum ATCC MYA-1381 株、またはSchizochytrium sp. M-8株(FERM P-19755)が挙げられる。これらの菌株はATCCより入手可能であり、またSchizochytrium sp. M-8株については特開2005-287380号公報に既に報告されておりそれに記載の方法、あるいは特許性物寄託センターにFERM P-19755として寄託されており、入手可能である。
なお、本発明における前記微生物の分類は、「海洋と生物」,生物研究社,2001年,第23巻,第1号,p. 9に記載された分類体系にしたがっている。
上記のラビリンチュラ綱(Labyrinthulea)に分類される微生物を培養するのに適した通常用いられる固体培地あるいは液体培地等で、常法により培養する。この時、用いられる培地としては特に限定されないが、例えばGY培地(日本水産学会誌、68巻、5号、674-678(2002))やB1寒天平板培地(Appl. Microbiol. Biotechnol., 72, 1161-1169 (2006))、等を用いることができる。
この培地で暗条件下1日〜2週間程度、好ましくは3〜12日間、25〜35℃にて培養することにより、培養物、培養上清画分、菌体含有画分、菌体破砕物、菌体抽出液、菌体不溶性画分等として得ることができる。すなわち、ラビリンチュラ綱(Labyrinthulea)に分類される微生物を培地に培養し、同培地または/および前記微生物菌体からリパーゼ活性を有する酵素を採取することにより、リパーゼ活性を有する酵素を得ることができる。
酵素を回収する方法としては、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィー、硫安分画、硫酸ナトリウム分画、塩化ナトリウム分画等の塩析、透析、あるいは等電点電気泳動等の常法を用いて、あるいは組み合わせて行うことができる。
また、得られた酵素のリパーゼ活性の測定は、微生物リパーゼの活性測定に用いる常法、例えば「リパーゼ その基礎と応用」(岩井美枝子著、1991年、幸書房)に記載の測定方法に従い行うことができる。
このようにして得られたリパーゼ活性を有する酵素は、食品あるいは医薬品等各種用途に用いることができる。
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
6種のラビリンチュラ菌株(Schizochytirum limacinum ATCC MYA-1381、
Schizochytirum aggregatum ATCC 28209、Thraustochytrium striatum ATCC 24473、
Thraustochytrium roseum ATCC 28210、Thraustochytrium aureum ATCC 34304、および
Schizochytrium sp. M-8(M-8;FERM P-19755))について、酵素活性を確認した。すなわち、保存株のコロニーをビタミン混合物(ビタミンB1 1mg/100ml、ビタミンB2 1mg/100ml、ビタミンB12 100mg/100ml)を0.1%含有するB1寒天平板培地(酵母エキス 2.0 g、 ポリペプトン 2.0 g、グルコース 5.0 g、寒天 15.0 g、1リットル 1/2 人工海水, pH 7.0;Burja, A.ら, Appl. Microbiol. Biotechnol., 72, 1161-1169 (2006))へ画線し、暗条件下,28℃で3〜5日間培養した。
次に、リパーゼ活性の基質としてTween 80(ナカライテスク製)を1%含むB1寒天平板培地を調製し、上記の新鮮な培養菌体を平板培地へ接種し、さらに暗条件下、28℃で5〜7日間培養した。リパーゼ活性の検出は、接種したコロニー周辺に白濁帯(不透明帯)を示したものをリパーゼ産生株と判定した。これを各株につき3回試験を実施し、活性の有無を判断した。
この結果、上記6種のラビリンチュラ全てに、リパーゼ活性を有する酵素を産生することが確認された。
酵素の粗精製および比活性
実施例1の結果を元に、Schizochytrium sp. M-8株(FERM P-19755)について酵素の粗精製を行った。GY培地(酵母エキス 2.0 g、ポリペプトン 2.0 g、グルコース
5.0 g、1リットル 1/2 人工海水, pH 7.0)を用い、28℃で5日間培養後、遠心分離により得られた上清を80%硫酸アンモニアで塩析を行った。塩析沈殿物を回収後、80%エタノールに懸濁後、遠心分離により回収したタンバクを粗精製酵素として、リパーゼ活性を測定した。
リパーゼ活性は、特開平6-14773号公報に記載の方法と同様に測定した。すなわち、反応液に50mM酢酸緩衝液(pH5.6)4.5ml、オリーブ油1g、0.1M塩化カルシウム0.5ml、および得られた粗精製酵素液1mlを含む反応液を500rpmで回転撹拌しながら30℃で60分間反応させ、反応終了後、20mlのエタノールを加え、生成した脂肪酸を0.05N KOHで滴定した。なお、ブランクは粗精製酵素液の代わりに蒸留水を加え、上記同様に操作を行った。また、リパーゼの活性の表示は、上記条件下で1分間に1マイクロモルの脂肪酸を遊離する活性を1単位(U)とした。
この結果、本実施例で得られた粗精製酵素の比活性は、5.3U/mgであった。
本発明により、リパーゼ活性を有する酵素の効率的な製造方法を提供することができる。このようにして得られたリパーゼ活性を有する酵素は、消化薬、フレーバー剤の製造、臨床検査試薬、洗剤用酵素、油脂の製造、農薬・医薬品の光学活性中間体の製造等各種用途に供することができる。

Claims (1)

  1. Thraustochytrium aureum ATCC 34304 株、Schizochytrium aggregatum ATCC 28209 株、Thraustochytrium roseum ATCC 28210 株、Schizochytrium limacinum ATCC MYA-1381 株、およびSchizochytrium sp. M-8株(FERM P-19755)から選ばれたヤブレツボカビ属(Thraustochytrium)またはシゾキトリウム属(Schizochytrium)に属する微生物を培養して、リパーゼ活性を有する酵素を産生させることを特徴とする、リパーゼ活性を有する酵素の製造方法。
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