JP4982885B2 - バイオサーファクタントの生産方法 - Google Patents

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Description

本発明は、バイオサーファクタントの一種であるマンノシルエリスリトールリピッドをグルコースから生産する方法に関する。
糖脂質は、脂質に1〜数十個の単糖が結合した物質であり、生体内において細胞間の情報伝達に関与し、神経系及び免疫系の機能維持にも重要な役割を果たしていることなどが明らかにされつつある。また、糖脂質は,糖の性質に由来する親水性と脂質の性質に由来する親油性の二つの性質を合わせ持つ両親媒性物質であり、このような性質を有する両親媒性物質は界面活性物質と呼ばれている。石油化学工業が隆盛となるまでは、レシチン、サポニン等の生体成分由来の界面活性剤(バイオサーファクタント)が利用されていた。近年、石油化学工業の発展により合成界面活性剤が開発され、その生産量が飛躍的に増加し、日常生活には無くてはならない物質となったが、この合成界面活性剤の使用量の拡大に伴って環境汚染が広がり、社会問題が生じている。このため、安全性が高く、環境に対する負荷を低減できる生分解性の高い界面活性物質の開発が望まれている。
従来より、微生物が生産する界面活性物質としては、糖脂質系、アシルペプタイド系、リン脂質系、脂肪酸系及び高分子系の界面活性物質の5つに分類されている。これらの中でも、糖脂質系の界面活性剤が最もよく研究されており、細菌及び酵母による多くの種類の界面活性物質が報告されている。
前記細菌としては、Pseudomonas属によるラムノリピッド(非特許文献1及び2参照)とユスチラジン酸(非特許文献3参照)、Rhodococcus属によるトレハロースリピッド(非特許文献4参照) などが知られている。しかし、いずれも生産量は15g/L以下である。
前記酵母としては、Candida属によるソホロースリピッドとマンノシルエリスリトールリピッド(特許 文献1参照)などが知られている。
前記ソホロースリピッドについては、Candida bombicolaを用いてグルコースとオレイン酸の流 加培養法により200時間で180g/Lの効率的なソホロースリピッドの生産が可能であることが報告されている(非特許文献5参照)。
前記マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)については、Candida sp. B-7株を用いて5質量%の大豆油から5日間で35g/L(生産速度:0.3g/L/h、原料収率:70質量%)のMELの生産が可能であることが報告されている(非特許文献6及び7参照)。また、Candida antarctica T-34株を用いて8質量%の大豆油から8日間で38g/L(生産速度:0.2g/L/h、原料収率: 48質量%)のMELの生産が可能であることが報告されている(非特許文献8及び9参照)。同じく、 Candida antarctica T-34株を用いて6日間隔で計3回の逐次流加により24日後に25質量% のピーナッツ油から110g/L(生産速度:0.2g/L/h、原料収率:44質量%)のMELの生産が可能であることが報告されている(非特許文献10参照)。
Candida sp. SY-16株を用いて10質量%の植物油脂から回分培養法により200時間で50 g/L(生産速度:0.25g/L/h、原料収率:50質量%)のMELの生産が可能であると共に、流加培養法により20質量%の植物油から200時間で120g/L(生産速度:0.6g/L/h、原料収率:50質量%)のMELの生産が可能であることが報告されている(非特許文献11参照)。
Pseudozyma aphidis株を用いて80質量%の植物油脂から流加培養法により24時間で13.9g/ L(生産速度:0.57g/L/h、原料収率:92質量%)のMELの生産が可能であることが報告されている(非特許文献12参照)。
また、醤油醸造工程において副産物として生産されるしょうゆ油(あぶら)を原料としてCandida antarctica T-34株を用いて7日間で8質量%のしょうゆ油から17g/L(生産速度:0.1g/L /h、原料収率:21質量%)のMELの生産が可能であることが提案されている(特許文献2参照)。
特開2002−45195号公報 特開2002−101847号公報 S.Itoh, H.Honda, Ftonami and T.Suzuki:J. Antibiotics,23,885(1971). M.Yamaguti, A.Sato and R.Yukuyama: Chem.Ind.,17,741(1976). S.S.Bhattacharijee, R.H.Haskins and P.A.Golin:Carbohyd.Res.,13,235(1970). P.Rapp, H.Boch, V.Wary and F.Wagner:J.Gen.Microbiol.,115,491(1979). U.Rau, C.Manzke and F.Wagner: Biotechnol.Lett., 18, 149(1996). T.Nakahara, H.Kawasaki, T.Sugisawa, Y.Takamori and T.Tabuchi:J.Ferme nt.Technol., 61, 19(1983). H.Kawasaki, T.Nakahara, M.Oogaki and T.Tabuchi:J.Ferment.Technol., 61, 143(1983). D.Kitamoto, S.Akiba, C.Hioki and T.Tabuchi:Agric.Biol.Chem., 54, 31(1990). D.KItamoto, K.Haneishi, T.Nakaharaand T.Tabuchi: Agric.Biol.Chem., 54, 37(1990). D.Kitamoto, K.Fijishiro, H.Yanagishita, T.Nakane and T.Nakahara: Biotechnol.Lett., 14, 305(1992). 金,伊炳大,桂樹徹,谷吉樹:平成10年日本生物工学会大会要旨,p195. U.Rau, L.A.Naguyen, H.Roeper, H.Koch and S.Lang: Appl.Microbiol.Biotechnol.,(2005).
一方、生分解性が高く、低毒性で環境に優しく、新規な生理機能を持つといわれるマンノシルエリスリトールリピッドなどのバイオサーファクタントを食品工業、医薬品工業、化学工業などで広く普及させていくためには、マンノシルエリスリトールリピッドの生産効率を高め、生産コストの低減を図ることが必要である。
現在までのところ、マンノシルエリスリトールリピッドの生産方法において、生産条件の最適化による生産効率(生産速度、対原料収率、及び収率)の向上が試みられてきた。しかしながら、いずれの方法も、脂肪酸あるいは脂肪酸トリグリセリド、若しくはこれらを含有する原料を培地に添加して、マンノシルエリスリトールリピッド生産菌を培養するものであり、脂肪酸給源を培地に添加して、マンノシルエリスリトールリピッドを生産するものであった。
一方、近年物質生産において、石油プロセスからバイオプロセスへの変換が、環境負荷低減の観点から 重要視されてきている。特に、再生可能な重要バイオマス資源として木質系バイオマスが挙げられる。木質系バイオマスからはグルコースが生産され、様々な物質生産の原料としての利用が期待されている。したがって、グルコースからマンノシルエリスリトールリピッドが製造できれば、木質系バイオマスからグルコースの生産を経て、バイオサーファクタントとして有用なマンノシルエリスリトールリピッドを生産するための一貫したバイオプロセスの確立に貢献できる。
本発明は、このような要望に応え、従来における前記諸問題を解決することを課題とするものである。
前記課題を解決するため、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、シュードザイマ属に属する特定のマンノシルエリスリトールリピッド生産菌が、脂肪酸又は脂肪酸トリグリセリド等の脂肪酸エステルを培地に含有させなくとも、グルコース含有培地(グルコース120g/L、酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウム0.5g/L、リン酸2水素カリウム0.4g/L、及び硫酸マグネシウム0.2g/L)で培養することにより、マンノシルエリスリトールリピドを生産し得ることを見いだし、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下(1)〜(5)に示されるとおりである。
(1) シュードザイマ属に属し、グルコースを基質としてマンノシルエリスリトールリピッドを生成する能力を有する微生物を、グルコースを含有し、脂肪酸あるいは脂肪酸エステル不含培地で培養し、培養物からマンノシルエリスリトールリピッドを採取することを特徴とする、マンノシルエリスリトールリピッドの生産方法。

(2) 上記マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物が、シュードザイマ・アンタクチカ(Pseudozyma antarctica)に属する微生物であることを特徴とする、上記(1)に記載の生産方法。

(3) 上記マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物が、シュードザイマ・アンタクチカ(Pseudozyma antarctica)KM-34(FERMP−20730)であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の生産方法。

(4) 培地の初発グルコース濃度が5〜20重量%の範囲で培養を行うことを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の生産方法。

(5) 培地組成及び培養条件が、以下に示されるものであることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の生産方法。
酵母エキス:0.1〜2g/L
硝酸ナトリウム:0.1〜1g/L
リン酸2水素カリウム:0.1〜2g/L
硫酸マグネシウム:0.1〜1g/L
グルコース:100〜200g/L
培養温度:26〜32℃
本発明の使用微生物は、シュードザイマ属に属し、グルコースを基質としてマンノシルエリスリトールリピッドを生成する能力を有する微生物であり、当該微生物は、従来技術のように脂肪酸あるいは脂肪酸トリグリセリド等の脂肪酸エステル、あるいは植物油等の油脂類を培地に含有させなくとも、グルコースを栄養源として培地に含有させることにより、マンノシルエリスリトールリピッドを生産することができる点で画期的なものである。また、木質系バイオマスからのグルコース生産技術と組み合わせることにより、木質系バイオマスからマンノシルエリスリトールリピッドの一貫生産も可能となる。
一方、本発明においては、植物油等の油脂類を使用しないので、これら由来の油分が生成物に混入せず、マンノシルエリスリトールリピッドの分離精製においても有利である。
さらに、現段階では、本発明によるマンノシルエリスリトールリピッドの収量はそれほど高くはないものの、遺伝子工学的手法等による微生物の改良技術により生産性の向上が期待でき、上記本発明の油脂類を使用しない利点を併せて考察すれば、本発明は極めて有用なものである。
したがって、本発明は、医薬等種々用途への使用が期待されるバイオサーファクタント生産技術の発展に大いに貢献するものである。
(目的生産物)
本発明の目的生産物であるマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)は、下記構造式(1)で表される化合物である。
前記構造式(1)において、R〜Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アセチル基、又は炭素原子数1〜14、好ましくは3〜12の飽和若しくは不飽和の脂肪酸残基を表す。
前記マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)は、高い界面活性作用を有し、界面活性剤又はファインケミカルの種々の触媒として用いられる。ヒト急性前骨髄性白血病細胞性HL60株にマンノシルエリスリトールリピッドを作用させると顆粒系を分化させる白血病細胞の細胞分化誘導作用があり、また、ラット副腎髄質褐色細胞腫由来のPC12細胞にマンノシルエリスリトールリピッドを作用させると神経突起の伸長が生ずる神経系細胞株分化誘導作用等の生理活性作用を有する。更に、微生物産生の糖脂質として初めて、メラノーマ細胞のアポトーシスを誘導することが可能となり(X. Zhao et. al., Cancer Research,59, 482−486(1999))、癌細胞増殖抑制作用がある。これらの生理作用から見て、マンノシルエリスリトールリピッドには抗ガン剤等の医薬としての用途が期待される。また、マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)には生分解性があり、高い安全性を有すると考えられているものである。
(使用微生物)
本発明の使用微生物は、シュードザイマ属に属し、グルコースからマンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物であり、具体的には、シュードザイム・アンタクチカに属する微生物であり、特に、Pseudozyma antarcticaKM-34株(FERMP−20730)がグルコースを基質としてマンノシルエリスリトール リピッドを生産する効率が高い点で好ましい。 なお、Pseudozyma antarcticaKM-34株の場合、最適生育温度は28℃であり、 生育可能な温度範囲は24〜36℃である。
マンノシルエリスリトールリピッド生産菌としては、上記したようにシュードザイマ(Pseudozyma)属の微生物を含め、種々の微生物が知られているが、これらは全てマンノシルエリスリトールリピッド生産のために、脂肪酸、脂肪酸トリグリセリド等の脂肪酸エステル、あるいはこれらを含有する植物油等の脂肪酸給源を培地に含有させており、これらを含有させずに、グルコースを基質として、マンノシルエリスリトールリピッドを生産できる能力を有する微生物が存在することは全く知られておらず、このことは、本発明者の新知見にかかるものである。
(マンノシルエリスリトールリピッドの生産)
本発明における使用微生物の培養においては、培地に、脂肪酸、脂肪酸トリグリセリド等の脂肪酸エステル類、あるいは植物油等の油脂類を含有させず、グルコースを微生物の炭素源及び基質として含有させるが、このほかの条件については、特に制限はなく、適宜選定することができる。例えば、酵母に対して一般に用いられる培地を使用でき、このような培地として、例えば、YPD培地(イーストイクストラクト10g、 ポリペプトン20g、及びグルコース100g)を挙げることができる。
MELの生産量を増加させるためには原料であるグルコースの供給量を増加させることが好ましく、本発明者等は、培養開始時のグルコース濃度(初発グルコース濃度)を変化させて培養を行った結果、培養液中の初発グルコース濃度が少なくとも5%以上、好ましくは10〜20重量%の濃度の場合に、良好なMELの生産速度、生産量、及び収率が得られるという知見を得ている。これは、原料であるグルコースを酵母が基礎代謝のために炭素源として利用するため、基礎代謝に必要な炭素源の供給を十分行う必要があるためと考えられる。
本発明の使用微生物、特に前記Pseudozyma antarcticaKM-34株を用いてグルコースからマンノシルエリスリトールリピッドを生産する場合の好適な培地組成及び培養条件は、以下のとおりである。
酵母エキスは、0.1〜2g/Lが好ましく、1g/Lが特に好ましい
硝酸ナトリウムは、0.1〜1g/Lが好ましく、0.5g/Lが特に好ましい。
リン酸2水素カリウムは、0.1〜2g/Lが好ましく、0.4g/Lが特に好ましい。
硫酸マグネシウムは、0.1〜1g/Lが好ましく、0.2g/Lが特に好ましい。
グルコースは、100g/L以上が好ましく、100g/Lが特に好ましい。
培養温度は、26〜32℃が好ましく、30℃が特に好ましい
本発明のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定。
することができるが、例えば、種培養、本培養及びマンノシルエリスリトールリピッド生産培養の順にスケールアップしていくことが望ましい。
これらの培養における、培地、培養条件を例示すると以下のとおりである。
a)種培養;グルコース20g/L、酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウム1g/L、リン酸2水素カリウム0.5g/L、及び硫酸マグネシウム0.5g/Lの組成の液体培地4mLが入った試験管に1白金耳接種し、30℃で1日間振とう培養を行う。
b)本培養;上記種培養と同じ組成の培地100mLの入った坂口フラスコに接種して、30℃で2日間培養を行う。
c)マンノシルエリスリトールリピッド生産培養所定量のグルコースと酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウム1g/L、リン酸2水素カリウム0.5g/L、及び硫酸マグネシウム0.5g/Lの組成の液体培地1.4Lが入ったジャーファメンターに接種して、30℃で800rpmの撹拌速度で培養を行う。この培養においては、培養途中からグルコースを培養容器中に流下させて、培地中のグルコース濃度を50〜200g/Lに保持することが望ましい。
生成したマンノシルエリスリトールリピドは、培養液中に不溶性物質として蓄積される。したがって、遠心分離することにより、マンノシルエリスリトールリピドを分離、採取する。
以下に、本発明について実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
Pseudozyma antarcticaKM-34の培養)
a)保存培地(麦芽エキス3g/L、酵母エキス3g/L、ペプトン5g/Lグルコース10g/L、寒天30g/L)に保存しておいたPseudozyma antarcticaKM-34(FERMP−20730)株を、 グルコース20g/L、酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウムム1g/L、リン酸2水素カリウム0.5g/L、及び硫酸マグネシウム0.5g/Lの組成の液体培地4mLが入った試験管に1白金耳接種し、30℃で振とう培養を行い、次いで、
b)得られた菌体培養液を同じ組成の培地20mLの入った坂口フラスコに接種して、30℃で振とう培養を行い、さらに
c)これを所定量のグルコースと酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウム1g/L、リン酸2水素カリウム 0.5g/L、及び硫酸マグネシウム0.5g/Lの組成の液体培地1.4Lが入ったジャーファメンターに接種して、30℃で800rpmの撹拌速度で培養を行った。
上記a)〜c)の各培養により得られた菌体培養液を使用して、以下の(1)〜(5)に示される試験を行った。
(試験手法、結果)
(1)バイオサーファクタントの生産の確認
上記a)の培養を10日間行い、得られたPseudozyma antarcticaKM-34株(FERMP−20730)の菌体培養液を疎水性のフィルム上にスポットしてその表面張力の変化を観察した。また、コントロールとして培養前の培養液、及び比較例としてPseudozyma aphidis ATCC 23657株を同様にして培養して得られた培養液をそれぞれスポットして比較した。これらの結果を図1に示す。
なお、図1においては、Pseudozyma antarcticaKM-34株(FERMP−20730)及びPseudozyma aphidis ATCC23657株をそれぞれ大豆油含有培地で培養して得られた培養液を使用した結果も併せて示す。
これによれば、Pseudozyma antarcticaKM-34株(FERMP−20730)の菌体培養液のスポットにおいては、コントロールと比べ培地の表面張力が低下しており、このことはグルコースからバイオサーファクタントが生産可能であることを示している。一方、比較の対象としたPseudozyma aphidis ATCC23657株はグルコースからバイオサーファクタントを生産できないことがわかる。なお、両菌株とも大豆油で培養すると表面張力が低下しており、バイオサーファクタントを生産していることが確認できる。
(2)Pseudozyma antarcticaKM-34株のマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)生産能の確認
a)の培養を1日間行った後、b)の培養を10日間行った。1日毎に培養液を採取し、これを用いてPseudozyma antarcticaKM-34株の培養時間に伴うバイオサーファクタントの生産性を薄層クロマトグラフィーで確認した。一方、比較例としてPseudozyma aphidis ATCC23657株を上記と同じ条件で培養し、同様にして薄層クロマトグラフィーを行った。また、これら両菌株を、それぞれ大豆油含有培地で培養し、得られた培養液を用いて同様にして薄層クロマトグラフィー(TLC)を行った。
結果を図2に示す。なお、図中、左端はマンノシルエリスリトールリピッドの標準である。
これによれば、両株とも大豆油含有培地ではマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)を生産しているが、代表的なMEL生産菌であるPseudozyma aphidis ATCC23657株は、大豆油不含のグルコース含有培地ではMEL を全く生産できなかった。他方、Pseudozyma antarcticaKM-34株はグルコースからマンノシルエリスリトールリピッドを生産していることが明らかである。また、マンノシルエリスリトールリピッドの標準と対比して、Pseudozyma antarcticaKM-34株が生産しているバイオサーファクタントはマンノシルエリスリトールリピッドであることがわかる。
(3)マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)生産用培地で同リピッドの生産
Pseudozyma antarcticaKM-34株を用い、a)の培養を1日間行った後、b)の培養を10日間行った。一方、大豆油含有培地を用いて同株を10日間培養した。 これらの培養においては、一日毎に培養液を採取し、そのMEL生産量を高速液体クロマトグラフィーで検出した。結果を図3に示す。なお、図3は、培養液中の酢酸エチル可溶分を高速液体クロマトグラフィーで検出した結果であり、既知のマンノシルエリスリトールリピッドのものと一致する。図3によれば、大豆油含有培地と比較しその生産量は低いものの、グルコースを基質として培養時間の経過に伴ってMELを確実に生産していることが分かる。この実験条件でグルコースからのMEL生産量は2.66g/Lであった。
(4)マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)生産に対するグルコース濃度の影響
a)に使用した培地においてグルコース濃度を種々変更し、Pseudozyma antarcticaKM-34株を接種しa)の培養を10日間行った後、培養液を酢酸エチルで抽出し、該抽出液について高速液体クロマトグラフィーで分析してMEL生産量を測定した。結果を図4に示す。これによれば培地中のグルコース濃度が100g/Lのとき、MEL生産量が最大であった(10g/L)。また、100g/L以上のグルコース添加においても低濃度の場合(50g/L)に比し、生産量の上昇がみられた。
(5)Pseudozyma antarcticaKM-34株を用い、a)の培養を10日間行った後、培養液を酢酸エチルで抽出し、該抽出液について薄層クロマトグラフィー(TLC)を行った後、アンスロン試薬を噴霧し、スポットを検出した。一方、大豆油含有培地を用いる他は、同様にしてPseudozyma antarcticaKM-34株を培養し、同様にスポットの検出を行った。結果を図5に示す。なお図5中、レーン1はMEL標準を示し、MEL−A,MEL−B及びMEL−Cはそれぞれ順に一般式中(R=炭素原子数1〜14の脂肪酸残基、R=アセチル基)、同(R=炭素原子数1〜14の脂肪酸残基、R=水素原子、R=アセチル基)及び同(R=炭素原子数1〜14の脂肪酸残基、R=アセチル基、R=水素原子)で表される化合物を示す。
図5の結果によれば、レーン3,4(大豆油含有培地での培養したもの)では、青色と茶色に呈色するスポットが生じたが、レーン2(大豆油不含、グルコース含有培地で培養したものは)、青色に呈色したスポットのみが生じている。茶色の呈色は、植物油等の脂質成分を表し、青色の呈色は、糖骨格を有する糖脂質、すなわちMELを表す。この結果は、大豆油含有培地で培養したものは、糖脂質以外の油の混入を示し、他方、本願発明の大豆油不含グルコース含有培地で培養したものは他の脂質の混入がないことを示す。したがって、グルコースを基質として、MELを生産すれば、その分離精製において有利である。
(6)Pseudozyma antarctica JCM 3941株Pseudozyma antarctica JCM 10317株によるマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)の生産
Pseudozyma antarctica JCM 3941株Pseudozyma antarctica JCM 10317株を用い、a)の培養を10日間行った後、培養液を酢酸エチルで抽出し、該抽出液について薄層クロマトグラフィー(TLC)を行った後、アンスロン試薬を噴霧し、スポットを検出した。一方、大豆油含有培地を用いる他は、同様にしてPseudozyma antarctica JCM 3941株(レーンA)とPseudozyma antarctica JCM 10317株(レーンB)を培養し、同様にスポットの検出を行った。結果を図6に示す。なお図5中、レーンSはMEL標準を示す。
図6の結果によれば、大豆油含有培地での培養したもの(右図、4%大豆油)では、青色と茶色に呈色するスポットが生じ、大豆油不含、グルコース含有培地(左図、12%グルコース)で培養したものは、青色に呈色したスポットのみが生じている。この結果は、この二種類の株を用いて、Pseudozyma antarcticaKM-34株と同様に、大豆油不含グルコース含有培地でMELを生産可能であることを示すと共に、生産物に油が混入しないことを示している。
(7)ジャーファメンターを用いたマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)の生産
Pseudozyma antarcticaKM-34株を用い、a)の培養を1日間行った後、b)の培養を10日間行い、さらに、c)の培養を、グルコース100g/L、酵母エキス1g/L、硝酸ナトリウム1g/L、リン酸2水素カリウム 0.5g/L、及び硫酸マグネシウム0.5g/Lの組成の液体培地1.4Lが入ったジャーファメンターに接種して、30℃で800rpmの撹拌速度で、1週間培養を行った。1週間培養後、グルコース100g/Lを流下して、さらに、30℃で800rpmの撹拌速度で、1週間培養した。その後、培養液を酢酸エチルで抽出し、該抽出液をエバポレーターに供し、該抽出液中のMEL量を計測した。その結果、ジャーファメンターを用いて、6gのMELを生産できた。
Pseudozyma antarcticaKM-34株及びPseudozyma aphidis株をグルコース含有培地及び大豆油含有培地で培養して得られた培養液の、疎水性フィルム上にスポットし、その表面張力を観察した結果を示す写真である。 Pseudozyma antarcticaKM-34株が、大豆油不含グルコース含有培地でマンノシルエリスリトールリピドを生産しうることを示す、該培養物についての薄層クロマトグラフィー写真である。 Pseudozyma antarcticaKM-34株の時間毎のMEL生産量を高速液体クロマトグラフィーで定量した結果に基づき作成したグラフである。 Pseudozyma antarcticaKM-34株のMEL生産量とグルコースの培地濃度の関係を示すグラフである。 Pseudozyma antarctica KM-34株を、大豆油不含グルコース含有培地で培養して、マンノシルエリスリトールリピドを生産する場合において、生産物に油が混入しないことを示す薄層クロマトグラフィーの写真である。 Pseudozyma antarcticaに分類される他の菌株が、大豆油不含グルコース含有培地で培養してマンノシルエリスリトールリピドを生産可能であること示す、薄層クロマトグラフィーの写真である。

Claims (4)

  1. シュードザイマ・アンタクチカ(Pseudozyma antarctica)に属し、グルコースを基質としてマンノシルエリスリトールリピッドを生産し、細胞外に分泌する能力を有する微生物を、グルコースを含有し、脂肪酸及び脂肪酸エステルを含まない培地で培養し、培養物からマンノシルエリスリトールリピッドを採取することを特徴とする、マンノシルエリスリトールリピッドの生産方法。
  2. 上記マンノシルエリスリトールリピッドを生産し、細胞外に分泌する能力を有する微生物が、シュードザイマ・アンタクチカ(Pseudozyma antarctica)KM-34(FERMP-20730)であることを特徴とする請求項に記載の生産方法。
  3. 培地の初発グルコース濃度が5〜20重量%の範囲で培養を行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の生産方法。
  4. 培地組成及び培養条件が、以下に示されるものであることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の生産方法。
    酵母エキス:0.1〜2g/L
    硝酸ナトリウム:0.1〜1g/L
    リン酸2水素カリウム:0.1〜2g/L
    硫酸マグネシウム:0.1〜1g/L
    グルコース:100〜200g/L
    培養温度:26〜32℃
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