JP4286558B2 - マンノシルエリスリトールリピッドの製造方法 - Google Patents

マンノシルエリスリトールリピッドの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バイオサーファクタントの一種であるマンノシルエリスリトールリピッド(以下、単に「MEL」と略記する場合がある。)の生産効率(生産量、生産速度、及び収率)を大幅に向上させることができるマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
糖脂質は、脂質に1〜数十個の単糖が結合した物質であり、生体内において細胞間の情報伝達に関与し、神経系及び免疫系の機能維持にも重要な役割を果たしていることなどが明らかにされつつある。また、糖脂質は,糖の性質に由来する親水性と脂質の性質に由来する親油性の二つの性質を合わせ持つ両親媒性物質であり、このような性質を有する両親媒性物質は界面活性物質と呼ばれている。石油化学工業が隆盛となるまでは、レシチン、サポニン等の生体成分由来の界面活性剤(バイオサーファクタント)が利用されていた。近年、石油化学工業の発展により合成界面活性剤が開発され、その生産量が飛躍的に増加し、日常生活には無くてはならない物質となったが、この合成界面活性剤の使用量の拡大に伴って環境汚染が広がり、社会問題が生じている。このため、安全性が高く、環境に対する負荷を低減できる生分解性の高い界面活性物質の開発が望まれている。
【0003】
従来より、微生物が生産する界面活性物質としては、糖脂質系、アシルペプタイド系、リン脂質系、脂肪酸系及び高分子系の界面活性物質の5つに分類されている。これらの中でも、糖脂質系の界面活性剤が最もよく研究されており、細菌及び酵母による多くの種類の界面活性物質が報告されている。
【0004】
前記細菌としては、Pseudomonas属によるラムノリピッド(非特許文献1及び2参照)とユスチラジン酸(非特許文献3参照)、Rhodococcus属によるトレハロースリピッド(非特許文献4参照)などが知られている。しかし、いずれも生産量は15g/L以下である。
【0005】
前記酵母としては、Candida属によるソホロースリピッドとマンノシルエリスリトールリピッド(特許文献1参照)などが知られている。
前記ソホロースリピッドについては、Candida bombicolaを用いてグルコースとオレイン酸の流加培養法により200時間で180g/Lの効率的なソホロースリピッドの生産が可能であることが報告されている(非特許文献5参照)。
前記マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)については、Candida sp.B−7株を用いて5質量%の大豆油から5日間で35g/L(生産速度:0.3g/L/h、原料収率:70質量%)のMELの生産が可能であることが報告されている(非特許文献6及び7参照)。また、Candida antarctica T−34株を用いて8質量%の大豆油から8日間で38g/L(生産速度:0.2g/L/h、原料収率:48質量%)のMELの生産が可能であることが報告されている(非特許文献8及び9参照)。同じく、Candida antarctica T−34株を用いて6日間隔で計3回の逐次流加により24日後に25質量%のピーナッツ油から110g/L(生産速度:0.2g/L/h、原料収率:44質量%)のMELの生産が可能であることが報告されている(非特許文献10参照)。
Candida sp.SY−16株を用いて10質量%の植物油脂から回分培養法により200時間で50g/L(生産速度:0.25g/L/h、原料収率:50質量%)のMELの生産が可能であると共に、流加培養法により20質量%の植物油から200時間で120g/L(生産速度:0.6g/L/h、原料収率:50質量%)のMELの生産が可能であることが報告されている(非特許文献11参照)。
また、醤油醸造工程において副産物として生産されるしょうゆ油(あぶら)を原料としてCandida antarctica T−34株を用いて7日間で8質量%のしょうゆ油から17g/L(生産速度:0.1g/L/h、原料収率:21質量%)のMELの生産が可能であることが提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特公昭60−24797号公報
【特許文献2】
特開2002−101847号公報
【非特許文献1】
S.Itoh, H.Honda, Ftonami and T.Suzuki: J. Antibiotics,23,885(1971).
【非特許文献2】
M.Yamaguti, A.Sato and R. Yukuyama: Chem. Ind.,17,741(1976).
【非特許文献3】
S.S.Bhattacharijee, R. H. Haskins and P.A.Golin: Carbohyd.Res.,13,235(1970).
【非特許文献4】
P.Rapp, H.Boch, V.Wary and F.Wagner: J. Gen. Microbiol.,115,491(1979).
【非特許文献5】
U. Rau, C. Manzke and F. Wagner: Biotechnol. Lett., 18, 149(1996).
【非特許文献6】
T. Nakahara, H. Kawasaki, T. Sugisawa, Y. Takamori and T. Tabuchi: J. Ferment.Technol., 61, 19(1983).
【非特許文献7】
H. Kawasaki, T. Nakahara, M. Oogaki and T. Tabuchi: J. Ferment. Technol., 61, 143(1983).
【非特許文献8】
D. Kitamoto, S. Akiba, C. Hioki and T. Tabuchi: Agric. Biol. Chem., 54, 31(1990).
【非特許文献9】
D. KItamoto, K. Haneishi, T. Nakahara and T. Tabuchi: Agric. Biol. Chem., 54, 37(1990).
【非特許文献10】
D. Kitamoto, K. Fijishiro, H. Yanagishita, T. Nakane and T. Nakahara: Biotechnol. Lett., 14, 305(1992).
【非特許文献11】
金,伊炳大,桂樹徹,谷吉樹:平成10年日本生物工学会大会要旨,p195.
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、生分解性が高く、低毒性で環境に優しく、新規な生理機能を持つといわれるマンノシルエリスリトールリピッドなどのバイオサーファクタントを食品工業、医薬品工業、化学工業などで広く普及させていくためには、マンノシルエリスリトールリピッドの生産効率を高め、生産コストの低減を図ることが必要である。しかしながら、現在までのところ、マンノシルエリスリトールリピッドの生産効率(生産速度、対原料収率、及び収率)は低く、更なる生産効率の高いマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法の開発が強く望まれているのが現状である。
【0008】
本発明は、このような要望に応え、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物としてクルツマノミセス(Kurtzmanomyces) sp.I−11株(FERM P−18126)を用い、その培地組成及び培養条件を最適化することによって、高い生産速度、高い収率と高い生産物濃度を達成でき、より安価にマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)を効率よく製造することができる方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。即ち、Candida antarctica T−34株を用いてマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)生産用培地(植物油脂80g/L、酵母エキス 1g/L、硝酸ナトリウム 0.5g/L、リン酸2水素カリウム0.4g/L、及び硫酸マグネシウム0.2g/L)で回分培養を行った結果、マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)をほとんど生産することができなかった。
そこで、Kurtzmanomyces sp.I−11(FERM P−18126)を用いてマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)生産用培地における無機窒素源の種類を変えて培養を行ったところ、無機窒素源の種類によりMELの生産量、菌体の増殖量に違いが認められた。この違いの原因として培養期間中の培養液のpH変化が考えられた。最もMELの生産が良好であった無機窒素源を用いて培養液中のpHを変化させて培養を行うと、制御するpHによりMELの生産量に違いが認められ、最も効率良くMELを生産できるpHの範囲があることを知見した。
【0010】
一般に、微生物を用いた発酵生産においては、培地組成及び培養条件によって菌体増殖や目的生産物の収率が大きく影響を受けることが知られている。そこで、前記Kurtzmanomyces sp.I−11(FERM P−18126)を用いたMEL生産用培地における酵母エキス、リン酸2水素カリウム、硫酸マグネシウム、及び無機窒素源の濃度を変えると共に、溶存酸素濃度及び温度の培養条件を変えてMELの生産に与える影響を調べて、MELの生産における最適な培地組成及び培養条件を求めた。
【0011】
また、MELの生産量を増加させるためには原料である植物油脂の供給量を増加させることが必要である。そこで、培養開始時の植物油脂濃度(初発植物油脂濃度)を変化させて培養を行った結果、培養液中の初発植物油脂濃度が高くなりすぎるとMELの生産速度、生産量、及び収率が減少することが判明し、高いMELの生産速度を維持できる最適な初発植物油脂濃度の範囲が存在することを知見した。これは、原料である植物油脂を酵母が利用するためには、まず、酵母は細胞外にリパーゼを分泌する。培養液中に分泌されたリパーゼは、植物油脂をグリセロールと脂肪酸に分解する。分解されたグリセロールと脂肪酸は、酵母細胞に吸収されて細胞内でMEL等の生産に使用される。この時、細胞内に吸収される脂肪酸の吸収速度よりも植物油脂から分解される脂肪酸の生成速度の方が高いため、培養液中の初発植物油脂濃度が高いと、次第に培養液中に脂肪酸が蓄積され、培養液中の脂肪酸の量が過剰となって、酵母によるMELの生産を抑制してしまうためであると考えられる。
【0012】
従って、前記Kurtzmanomyces sp.I−11(FERM P−18126)を用いてマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)生産用培地のpHを制御し、最適な培地組成及び培養条件を設定すると共に、培養途中から植物油脂を流加し、全植物油脂濃度(初発植物油脂量+流加植物油脂量)を25質量%以上に制御することによって、培養液中の脂肪酸濃度を過度に上昇させることなく、培養液中の植物油脂濃度を増加させることができ、回分培養では不可能であった20質量%以上(200g/L以上)の高濃度でマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)を効率よく生産できることを見出し、本発明をなすにいたった。
【0013】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、下記の通りである。
<1> 植物油脂と栄養素を含む培養液中でマンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物(Candida antarctica株を除く)を培養してマンノシルエリスリトールリピッドを製造する方法において、前記培養液のpHをアンモニアを用いて5.2〜5.8の範囲に制御して培養を行い、初発植物油脂濃度が18〜20質量%で培養を開始し、該培養開始後7〜8日目より前記植物油脂を1.0〜1.1g/L/hの速度で培養液中に供給し、前記植物油脂を流加後における培養液中の前記初発植物油脂量と流加植物油脂量とを合わせた全植物油脂濃度が25〜40質量%となる条件で培養を行い、前記マンノシルエリスリトールリピッドの生産量が、20質量%以上(200g/L以上)であることを特徴とするマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
> 培養液中に無機窒素源を含有し、該無機窒素源が、硝酸アンモニウム及び尿素のいずれかである前記<1>に記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
> マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物(Candida antarctica株を除く)におけるマンノシルエリスリトールリピッドを生産する上での培地組成及び培養条件が、下記の通りである前記<1>から<>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
酵母エキス:0.1〜2g/L
硝酸アンモニウム:0.1〜1g/L
リン酸2水素カリウム:0.1〜2g/L
硫酸マグネシウム:0.1〜1g/L
培養液pH:5.2〜5.8
溶存酸素濃度:3〜9ppm
培養温度:26〜32℃
> 植物油脂が、大豆油、菜種油、コーン油、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油及びパーム油から選択される少なくとも1種である前記<1>から<>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
> 植物油脂として、食品廃油(しょうゆ油を除く)を用いる前記<1>から<>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
> マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物(Candida antarctica株を除く)が、クルツマノミセス(Kurtzmanomyces) sp.I−11株(FERM P−18126)である前記<1>から<>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
> 培養液中のマンノシルエリスリトールリピッド濃度を7質量%以上とした状態で該培養液を室温で1〜2日間静置し、マンノシルエリスリトールリピッドを沈殿させて、該培養液からマンノシルエリスリトールリピッドを回収する前記<1>から<>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
> 培養液中のマンノシルエリスリトールリピッド濃度を7質量%以上とした状態で該培養液を遠心分離してマンノシルエリスリトールリピッドを沈殿させて、該培養液からマンノシルエリスリトールリピッドを回収する前記<1>から<>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
(マンノシルエリスリトールリピッドの製造方法)
本発明のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法は、植物油脂と栄養素を含む培養液中でマンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物を、該培養液のpHを5.2〜5.8の範囲に制御しながら培養を行うものである。
【0015】
前記マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、Candida sp.B−7株、Candida antarctica T−34株、Candida sp.SY−16株、Kurtzmanomyces sp.I−11株、などが挙げられるが、これらの中でも、クルツマノミセス(Kurtzmanomyces) sp.I−11株がMELの生産効率が高い点で特に好ましい。
【0016】
前記クルツマノミセス(Kurtzmanomyces) sp.I−11株は、リパーゼ生産菌として独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに2000年11月20日に寄託(FERM P−18126)されている。前記クルツマノミセス(Kurtzmanomyces) sp.I−11株の菌学的な特徴は、本発明者が先に提案した特開2002−159290号公報に詳細に記載されている。
なお、クルツマノミセス(Kurtzmanomyces) sp.I−11株は、上述の通り、リパーゼ生産菌としては知られているが、マンノシルエリスリトールリピッドの生産菌として優れた特徴を有していることは、全く知られておらず、このことは、本発明者の新知見にかかるものである。
【0017】
前記クルツマノミセス(Kurtzmanomyces) sp.I−11株の培養には、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、酵母に対して一般に用いられる培地、例えば、YPD培地(イーストイクストラクト10g、ポリペプトン20g、及びグルコース20g)を使用することができる。また、最適生育pHは5.6であり、生育可能なpH範囲は2.1〜6.6である。最適生育温度は28℃であり、生育可能な温度範囲は24〜36℃である。なお、MELの生産性を高めるためには、単にクルツマノミセス(Kurtzmanomyces) sp.I−11株が生育できるだけでは十分ではなく、培地組成及び培養条件を最適化する必要があり、これら最適条件については後述する。
【0018】
前記植物油脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油などが挙げられ、これらの中でも、大豆油がMELの生産効率(生産量、生産速度、及び収率)を向上させることができる点で特に好ましい。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用しても構わない。
なお、植物油脂としては、てんぷらを製造した後の食品廃油なども利用可能である。
【0019】
前記無機窒素源として、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、硝酸アンモニウム、尿素、硝酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫安、などが挙げられ、これらの中でも、硝酸アンモニウム、尿素が好ましい。
【0020】
前記クルツマノミセス(Kurtzmanomyces) sp.I−11株を用いてマンノシルエリスリトールリピッドの生産する場合の好適な培地組成及び培養条件としては、以下の通りである。
酵母エキスは、0.1〜2g/Lが好ましく、1g/Lが特に好ましい
硝酸アンモニウムは、0.1〜1g/Lが好ましく、0.5g/Lが特に好ましい。
リン酸2水素カリウムは、0.1〜2g/Lが好ましく、0.4g/Lが特に好ましい。
硫酸マグネシウムは、0.1〜1g/Lが好ましく、0.2g/Lが特に好ましい。
植物油脂は、80〜220g/Lが好ましく、180g/Lが特に好ましい。
溶存酸素濃度は、3〜9ppmが好ましく、7ppmが特に好ましい
培養温度は、26〜32℃が好ましく、30℃が特に好ましい
pHは、5.2〜5.8が好ましく、5.4が特に好ましい。
なお、培養液のpH調整は、菌体の栄養素となり得るアンモニアを用いて行うことが好ましい。
【0021】
本発明のマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)の製造方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、グルコース20g/L、酵母エキス1g/L、硝酸アンモニウム1g/L、リン酸2水素カリウム0.5g/L、及び硫酸マグネシウム0.5g/Lの組成の液体培地4mLが入った試験管に1白金耳接種し、30℃で1日間振とう培養を行う。
これを同じ組成の培地100mLの入った坂口フラスコに接種して、30℃で2日間培養を行う。更に、これを所定量の植物油脂と酵母エキス1g/L、硝酸アンモニウム1g/L、リン酸2水素カリウム0.5g/L、及び硫酸マグネシウム0.5g/Lの組成の液体培地1.4Lが入ったジャーファメンターに接種して、30℃で1.5L/分の通気速度と800rpmの撹拌速度で本培養を開始する。
なお、pHは、pHメーターで測定できる。溶存酸素濃度は、溶存酸素濃度メーターで測定できる。
【0022】
−回分培養−
前記回分培養では、培養途中で植物油脂の供給は行わないで、1日に1乃至2回培養液を無菌的に採取して、培養液中の各成分を経時的に測定する。MEL、トリグリセリド、ジグリセリド、及び脂肪酸は、採取した培養液に酢酸エチルを加えて激しく振とうした後に静置し、上清の酢酸エチル層を回収する。この酢酸エチル溶液をイアトロスキャン(ヤトロン社製)のロッドにチャージして所定の方法により各成分を定量分析する。
一般的に、微生物による発酵生産においては、原料が無くなって最高濃度に達するまで生産物の増加の程度が緩やかとなることが多い。MEL生産でも同様の現象が観察されたので、MEL生産速度は、培養の経時変化よりMELがほぼ直線的に増加する部分の傾きより最小自乗法で計算する。
【0023】
ここで、前記回分培養においては、培養液のpHを5.2〜5.8の範囲に制御し、培養液中に無機窒素源を含有させ、該無機窒素源が、硝酸アンモニウム及び尿素のいずれかであることが好ましい。この場合、初発植物油脂濃度が10〜20質量%の範囲で培養を行うことが好ましく、14〜20質量%の範囲で培養を行うことがより好ましい。
【0024】
−流加培養−
前記流加培養では、前記回分培養と同様の方法で培養を開始し、培養途中から培養液に植物油脂を定量送液システムを用いて供給する。該定量送液システムは、流量コントローラーと、電子天秤と、ポンプとから構成されている。
具体的には、電子天秤に乗せられた植物油脂の質量を常時測定し、設定した流量に応じた流量コントローラーの信号により送液ポンプを駆動させて、植物油脂を培養液に供給する。流量は0.1g/h刻みで設定でき、1時間当たり10回程度ポンプを駆動する。供給した植物油脂の質量は、流量コントローラーに表示され、予め設定した時間(=設定した供給量)までポンプが植物油脂を供給する。
【0025】
ここで、前記流加培養においては、初発植物油脂濃度を14〜20質量%で培養を開始し、該培養開始して6〜7日後より植物油脂を0.9〜1.1g/L/hの速度で供給することが好ましい。
また、植物油脂を流加後における培養液中の初発植物油脂量と流加植物油脂量とを合わせた全植物油脂濃度が25質量%以上となる条件で培養を行うことが好ましく、30〜35質量%で培養を行うことがより好ましい。
【0026】
−マンノシルエリスリトールリピッドの回収方法−
本発明のマンノシルエリスリトールリピッドの回収方法は、培養液中のマンノシルエリスリトールリピッド濃度を7質量%以上とした状態で該培養液を室温で1〜2日間静置し、マンノシルエリスリトールリピッドを沈殿させて、該培養液からマンノシルエリスリトールリピッドを回収する。
また、本発明のマンノシルエリスリトールリピッドの回収方法は、培養液中のマンノシルエリスリトールリピッド濃度を7質量%以上とした状態で該培養液を遠心分離してマンノシルエリスリトールリピッドを沈殿させて、該培養液からマンノシルエリスリトールリピッドを回収する。
【0027】
従来、培養液からのマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)の回収は、培養液に1〜2倍量の酢酸エチルなどの有機溶媒を加えて激しく振とうした後、遠心分離を行って水層と有機溶媒層と菌体層とに分けて、該有機溶媒層を回収することによって行っている。この回収方法では、培養液の大部分を占める水を同時に処理するため、より多くの手数と資材を要していた。
【0028】
本発明においては、実用生産に近い形態であるジャーファメンターを用いて、初発植物油脂濃度が10〜20質量%の範囲で培養を開始し、培養期間中のpHを5.2〜5.8に保持して培養を行うことにより生産速度を高くし、培養途中において原料である植物油脂を最適の条件(初発植物油脂濃度14〜20質量%、植物油脂供給開始時間6〜7日後、植物油脂供給速度1.0g/L/h)で供給することによって効率的なMELの生産を可能としている。この場合、MEL濃度が7質量%以上、好ましくは10質量%以上とすることにより、得られた培養液を静置又は遠心分離するだけでMELと水が分離し、生産したMELを簡便に効率よく回収できるものである。
【0029】
以上説明したように、本発明のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法によれば、前記マンノシルエリスリトールリピッドを好ましくは20質量%以上(200g/L以上)、より好ましくは20〜40質量%(200〜400g/L)の高濃度に生産することができる。
【0030】
−マンノシルエリスリトールリピッド−
前記マンノシルエリスリトールリピッドは、下記構造式(1)で表される化合物である。
【0031】
【化1】
Figure 0004286558
【0032】
前記構造式(1)において、R〜Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アセチル基、又は炭素原子数1〜14、好ましくは3〜12の飽和若しくは不飽和の脂肪酸残基を表す。
【0033】
前記マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)は、高い界面活性作用を有し、界面活性剤又はファインケミカルの種々の触媒として用いられる。ヒト急性前骨髄性白血病細胞性HL60株にマンノシルエリスリトールリピッドを作用させると顆粒系を分化させる白血病細胞細胞分化誘導作用があり、また、ラット副腎髄質褐色細胞腫由来のPC12細胞にマンノシルエリスリトールリピッドを作用させると神経突起の伸長が生ずる神経系細胞株分化誘導作用等の生理活性作用を有する。更に、微生物産生の糖脂質として初めて、メラノーマ細胞のアポトーシスを誘導することが可能となり(X.Zhao et. al., Cancer Research,59, 482-486(1999))、癌細胞増殖抑制作用がある。これらの生理作用から見て、マンノシルエリスリトールリピッドには抗ガン剤等の医薬としての用途が期待される。また、マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)には生分解性があり、高い安全性を有すると考えられる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例により本発明について更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
−マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物−
ポテトデキストロース培地に保存しておいたクルツマノミセス(Kurtzmanomyces) sp.I−11株(FERM P−18126)を用いた。
【0036】
−培地成分の最適濃度の決定−
培地成分の酵母エキス、硝酸アンモニウム、リン酸2水素カリウム、及び硫酸マグネシウムの各培地成分の最適濃度を決定するため、各成分について6〜8段階に濃度を変えて回分培養を行った。その結果、酵母エキス1g/L、硝酸アンモニウム0.5g/L、リン酸2水素カリウム0.4g/L、及び硫酸マグネシウム0.2g/Lを最適培地組成とした。
【0037】
−溶存酸素濃度と培養温度の最適培養条件の決定−
溶存酸素濃度と培養温度の最適培養条件を決定するため、2つの条件について5〜7段階に変えて回分培養を行った。なお、培養液のpHはアンモニアを用いて5.4に制御した。pHは、pHメーター、溶存酸素濃度は、溶存酸素濃度メーターにより測定した。
その結果から、最適培養条件として、溶存酸素濃度7ppm、培養温度30℃に決定した。
【0038】
−培養条件−
グルコース20g/L、酵母エキス1g/L、硝酸アンモニウム1g/L、リン酸2水素カリウム0.5g/L、及び硫酸マグネシウム0.5g/Lの組成の液体培地4mLが入った試験管に1白金耳接種し、30℃で1日間振とう培養を行った。
これを同じ組成の培地100mLの入った坂口フラスコに接種して、30℃で2日間培養を行った。更に、これを所定量の植物油脂と酵母エキス1g/L、硝酸アンモニウム1g/L、リン酸2水素カリウム0.5g/L、及び硫酸マグネシウム0.5g/Lの組成の液体培地1.4Lが入ったジャーファメンターに接種して、30℃で1.5L/分の通気速度と800rpmの撹拌速度で本培養を開始した。
【0039】
−回分培養−
回分培養では、培養途中において植物油脂の供給を行わないで、1日に1乃至2回培養液を無菌的に採取して、培養液中の各成分を経時的に測定した。MEL、トリグリセリド、ジグリセリド、及び脂肪酸は、採取した培養液に酢酸エチルを加えて激しく振とうした後、静置し、上清の酢酸エチル層を回収した。この酢酸エチル溶液をイアトロスキャン(ヤトロン社製)のロッドにチャージして所定の方法により各成分を定量分析した。
なお、MEL生産速度は、培養の経時変化よりMELがほぼ直線的に増加する部分の傾きから最小自乗法により計算した。
【0040】
−無機窒素源の選定−
無機窒素源として、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、尿素、及び硫安を用いて、pHの制御を行わないで前記回分培養を行った。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
Figure 0004286558
表1の結果から、硝酸アンモニウムでは168時間で52g/LのMELを生産した。尿素では192時間で29g/LのMELを生産した。これに対し、硝酸ナトリウム、塩化アンモニウム及び硫安ではほとんどMELを生産することができなかった。
また、各無機窒素源でのpHの変化を見ると、MELをほとんど生産できなかった硝酸ナトリウム、塩化アンモニウム及び硫安では、培養開始後1日目以降のpHはアルカリ性又は酸性に傾いていた。これに対し、MELを良く生産した硝酸アンモニウムでは最初にpHが3前後まで低下した後、2日目ごろからpH4.7〜5.7の弱酸性域に推移した。また、尿素においても2日目以降からpHは4.6〜4.9であった。
これらの結果から、MEL生産には培養液のpHが大きく影響していることが認められる。
【0042】
−培養液のpH選定−
次に、MEL生産に及ぼす培養液のpHの影響を調べるため、pHコントローラーを用いて培養期間中のpH5.0〜6.6の間で一定の値に保持して培養を行った。この時、無機窒素源としては最も良くMELを生産した硝酸アンモニウムを用いた。なお、pHを調整するために用いるアルカリ溶液としては、菌体の栄養素となり得るアンモニアを使用した。
【0043】
【表2】
Figure 0004286558
表2の結果から、pHが5.2〜5.8、特にpH5.4に制御して培養することがMELの生産効率を高める上で効果的であることが認められた。
【0044】
(実施例1)−回分培養−
上記のようにして設定した、培養条件において、初発大豆油濃度を表3に示すように変化させて、MEL生産に与える初発大豆油濃度の影響を検討した。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】
Figure 0004286558
表3の結果から、初発大豆油濃度が10〜20質量%の間では、MEL生産速度は0.72〜0.77g/L/hとほぼ一定であった。MEL生産量は大豆油濃度の上昇に連れてほぼ直線的に増加し、初発大豆油濃度が20質量%では154g/Lに達し、収率は大豆油濃度の上昇に伴って次第に上昇し、初発大豆油濃度が18質量%では0.85g/gに達した。
これに対し、大豆油濃度が4、6及び8質量%での各MEL生産速度はそれぞれ0.25、0.6、及び0.62g/L/hであった。大豆油濃度が8質量%から濃度を低下することによりMELの生産速度は急激に減少した。大豆油濃度が4、6及び8質量%でのMEL生産量はそれぞれ19、34及び51g/Lであった。大豆油濃度4、6、及び8質量%でのMEL収率はそれぞれ0.48、0.57、及び0.64g/gであった。
一方、大豆油濃度が20質量%を超えると、大豆油濃度の増加に連れてMEL生産速度、MEL生産量、及び収率はいずれも低下し、大豆油濃度が22質量%及び24質量%での生産速度は0.56g/L/h及び0.61g/L/hであり、生産量は142g/L及び127g/L、収率は0.65g/g及び0.53g/gであった。
従って、回分培養によるMEL生産量の上限は、初発大豆油濃度を20質量%とした場合には154g/Lであり、これ以上のMEL生産量の増加は困難であった。これは、培養途中で培養液中の脂肪酸濃度が過度に上昇し、該脂肪酸がMELの生産を阻害していると考えられる。この中間生産物である脂肪酸の培養液中の濃度を一定濃度以下に保持することによって、MEL生産の阻害を解除し、MEL生産を効率的に行う方法について、以下検討した。
【0046】
−流加培養−
前記流加培養では、前記回分培養と同様の方法で培養を開始し、培養途中から培養液に植物油脂を定量送液システムにより供給した。該定量送液システムは、流量コントローラーと、電子天秤と、ポンプとから構成されている。電子天秤に乗せられた植物油脂の質量を常時測定し、設定した流量に応じた流量コントローラーの信号により送液ポンプを駆動させて、植物油脂を培養液に供給した。流量は0.1g/h刻みで設定可能であり、1時間当たり10回程度ポンプを駆動した。供給した植物油脂の量は、流量コントローラーに表示され、予め設定した時間(=設定した供給量)までポンプが植物油脂を供給可能であった。
【0047】
(実施例2)−流加培養(1)−
初発大豆油濃度を10、14及び18質量%として培養を開始し、培養開始後4及び6日目より大豆油を0.9g/L/hの速度で供給する流加培養を行った。結果を表4に示す。
【0048】
【表4】
Figure 0004286558
表4の結果から、初発大豆油濃度が18質量%では15日目にMEL濃度が20質量%に達した。初発大豆油濃度が14質量%では17日目にMEL濃度が20質量%に達した。これに対し、初発大豆油濃度が10質量%では、培養を終了した16日目のMEL濃度は186g/Lであり、MEL濃度は20質量%に達しなかった。
【0049】
(実施例3)−流加培養(2)−
実施例2の結果から、初発大豆油濃度を18質量%として培養を開始し、培養開始後5、6、7及び8日目より0.9g/L/hの速度で大豆油を供給する流加培養を行った。結果を表5に示す。
【0050】
【表5】
Figure 0004286558
表5の結果から、流加開始時間が6日目及び7日目のものは、15日目にMEL濃度が20質量%に達した。流加開始時間が8日目のものは、17日目にMEL濃度が20質量%に達した。これに対し、流加開始時間が5日目のものは、培養を終了した18日目のMEL濃度が185g/Lであり、MEL濃度が20質量%に達しなかった。
【0051】
(実施例4)−流加培養(3)−
実施例2及び3の結果から、初発大豆油濃度を18質量%として培養を開始し、培養開始後7日目より大豆油を供給し、大豆油の供給速度が0.6、0.8、0.9、1.0及び1.1g/L/hとなるように流加培養を行った。結果を表6に示す。
【0052】
【表6】
Figure 0004286558
表6の結果から、大豆油の供給速度を1.0g/L/hとした時、MEL濃度は12日目に20質量%に達した。また、0.6、0.8、0.9、1.0及び1.1g/L/hのいずれの供給速度においてもMEL濃度は20質量%に達したが、到達までの時間は0.8及び0.9g/L/hでは15日目、1.1g/L/hでは14日目であった。
【0053】
(実施例5)−流加培養(4)−
MEL生産量のさらなる向上を目指して、供給する大豆油量を増加させた。初発大豆油濃度を18質量%とし、培養開始後7日目より1.0g/L/hの速度で大豆油を供給した。培養液中の全大豆油濃度(初発大豆油濃度+供給大豆油濃度)が25、30、35及び40質量%となるように大豆油を供給し、流加培養を行った。結果を表7に示す。
【0054】
【表7】
Figure 0004286558
表7の結果から、全大豆油濃度(初発大豆油量+供給大豆油量)が25質量%では12日後にMEL濃度が203g/Lであった。全大豆油濃度(初発大豆油量+供給大豆油量)が30質量%では15日後にMEL濃度が239g/Lであった。全大豆油濃度(初発大豆油量+供給大豆油量)が35質量%では20日後にMEL濃度が279g/Lであった。全大豆油濃度(初発大豆油量+供給大豆油量)が40質量%では24日後にMEL濃度が307g/Lであった。
従って、全大豆油濃度(初発大豆油量+供給大豆油量)を25〜40質量%の範囲に調節することにより、MEL濃度が20質量%以上の高濃度のMEL生産が可能となることが認められる。
【0055】
(実施例6) −MELの回収−
初発大豆油濃度が10〜20質量%の条件で培養してMELを生産した後、培養液を10,000rpmで5分間遠心分離を行った。その結果、培養液は、菌体層と、緑色の油状液体層と、透明な液体層との3層に分離した。また、培養液を試験管に取って静置しておくと1〜2日間で同様に菌体層と、緑色の油状液体層と、透明な液体層との3層に分離した。
初発大豆油濃度が18質量%の条件で培養した場合において、菌体層と、緑色の油状液体層と、及び透明な液体層中のMEL量を測定した。その結果、上層の透明な液体層中にはMELはほとんど存在せず、中層の緑色の油状液体中にはMELが460g/L含まれており、下層の菌体層にはMELが183g/L含まれていた。
従って、初発大豆油濃度が10質量%以上において生産されるMEL濃度は7質量%以上であり、この濃度以上のMELを含有する培養液を静置又は遠心分離することにより、培養液とMEL含有層とを簡単に分離することができ、効率よくMELを回収できることが判明した。
【0056】
(比較例1)
初発大豆油濃度を4、6、及び8質量%で回分培養してMELを生産した(初発大豆油濃度が4、6及び8質量%でのMEL生産量はそれぞれ1.9、3.4及び5.1質量%であった。)。
得られた培養液を10,000rpmで5分間遠心分離を行うと、菌体と淡い緑色に懸濁した液体の2層に分離した。また、培養液を試験管に取って2日間静置しておくと同様に2層に分離したが、静置しておいても実施例6のような菌体層と、緑色の油状液体層と、透明な液体層との3層に分離されず、MELを効率よく回収することができなかった。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物としてクルツマノミセス(Kurtzmanomyces) sp.I−11株(FERM P−18126)を用い、その培地組成及び培養条件を最適化することによって、バイオサーファクタントの一種であるマンノシルエリスリトールリピッドの生産効率(生産量、生産速度、及び収率)を大幅に向上させることができた。

Claims (8)

  1. 植物油脂と栄養素を含む培養液中でマンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物(Candida antarctica株を除く)を培養してマンノシルエリスリトールリピッドを製造する方法において、前記培養液のpHをアンモニアを用いて5.2〜5.8の範囲に制御して培養を行い、
    初発植物油脂濃度が18〜20質量%で培養を開始し、該培養開始後7〜8日目より前記植物油脂を1.0〜1.1g/L/hの速度で培養液中に供給し、
    前記植物油脂を流加後における培養液中の前記初発植物油脂量と流加植物油脂量とを合わせた全植物油脂濃度が25〜40質量%となる条件で培養を行い、前記マンノシルエリスリトールリピッドの生産量が、20質量%以上(200g/L以上)であることを特徴とするマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
  2. 培養液中に無機窒素源を含有し、該無機窒素源が、硝酸アンモニウム及び尿素のいずれかである請求項1に記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
  3. マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物(Candida antarctica株を除く)におけるマンノシルエリスリトールリピッドを生産する上での培地組成及び培養条件が、下記の通りである請求項1から2のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
    酵母エキス:0.1〜2g/L
    硝酸アンモニウム:0.1〜1g/L
    リン酸2水素カリウム:0.1〜2g/L
    硫酸マグネシウム:0.1〜1g/L
    培養液pH:5.2〜5.8
    溶存酸素濃度:3〜9ppm
    培養温度:26〜32℃
  4. 植物油脂が、大豆油、菜種油、コーン油、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油及びパーム油から選択される少なくとも1種である請求項1から3のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
  5. 植物油脂として、食品廃油(しょうゆ油を除く)を用いる請求項1から4のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
  6. マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物(Candida antarctica株を除く)が、クルツマノミセス(Kurtzmanomyces) sp.I−11株(FERM P−18126)である請求項1から5のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
  7. 培養液中のマンノシルエリスリトールリピッド濃度を7質量%以上とした状態で該培養液を室温で1〜2日間静置し、マンノシルエリスリトールリピッドを沈殿させて、該培養液からマンノシルエリスリトールリピッドを回収する請求項1から6のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
  8. 培養液中のマンノシルエリスリトールリピッド濃度を7質量%以上とした状態で該培養液を遠心分離してマンノシルエリスリトールリピッドを沈殿させて、該培養液からマンノシルエリスリトールリピッドを回収する請求項1から7のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
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