JP5210626B2 - 陸上輸送用冷凍装置及び陸上輸送用冷凍装置の運転制御方法 - Google Patents
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Description
また、陸上輸送用冷凍装置には、1台の圧縮機に対して複数台(通常2〜3台)のエバポレータユニットを接続し、複数の区画毎に異なる輸送温度を創出できるようにしたマルチタイプがある。
このため、運転要求のある全てのエバポレータユニットを同時に運転する同時運転方式では、区画毎の設定温度が大きく異なる場合、設定温度の高い区画に設置されたエバポレータユニットの吸熱量が支配的となり、低温設定側のエバポレータユニットに必要能力を確保することは困難になる。従って、この問題の解決策が必要となり、運転するエバポレータユニットを1台にして、順次運転するユニットを切り替えて行く切替運転方式が公知である。
さらに、庫内冷却温度が異なる複数台の低温ショーケースに適用され、省エネ運転を有効に行うことができるようにした冷凍システムが知られている。(たとえば、特許文献2参照)
上述したように、陸上輸送用冷凍装置の設定温度レンジは低温側に広いため、エバポレータを着霜条件で使用することは避けられず、従って、着霜を前提とした設計及び運転制御が必要となる。特に、マルチタイプの場合、区画毎に着霜の有無や着霜量に違いが生じるため、デフロストによる温度影響を最小限とすることが必要になる。
また、陸上輸送用冷凍装置は、配送時に荷室のドアを開閉する必要があるため、庫内空気の急激な温度変化が頻繁に発生しやすくなる。すなわち、陸上輸送用冷凍装置の場合、要求される冷却能力がドアの開閉により頻繁に急変することを意味している。従って、区画毎の設定温度に収束した後にも、ドア開閉等により設定温度と庫内温度とが乖離する現象が頻発することが予想されるので、このような状況にも対応できる能力配分制御が望まれる。
さらに、陸上輸送用冷凍装置の場合、車両の走行速度によりコンデンサ風量が変化するため、運転状態が時々刻々と変化する。従って、高外気温度時には、走行風の影響が冷凍サイクルのバランスを良化させる方向となる反面、低外気温度時には、オーバークールにより高低圧の差圧が得られず、必要冷媒循環量を確保できなくなるというリスクを発生させる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低温設定側冷凍区画の不冷リスクを低減できるとともに、安価で使い勝手のよい高精度な温度制御が可能な陸上輸送用冷凍装置及びその運転制御方法を提供することにある。
本発明に係る陸上輸送用冷凍装置の制御方法は、専用の駆動源により運転される圧縮機によって冷媒を循環させる冷媒回路に複数のエバポレータユニットが並列に接続され、前記複数のエバポレータユニットを分配配置した複数の冷凍区画毎に異なる複数の輸送温度を創出可能な陸上輸送用冷凍装置の運転制御方法において、前記冷媒回路に開度調整可能な絞り機構を採用するとともに、前記エバポレータユニットの冷媒蒸発圧力を検出する低圧圧力センサを設け、前記冷凍区画の設定温度が異なる異温度冷却運転時には、前記エバポレータユニットの複数に運転要求があると低温設定側のエバポレータユニットへ優先的に冷媒を分配する低温設定側優先制御が行われ、前記低温設定側優先制御は、各冷凍区画に設定された設定温度(Tset)の差が所定値(α)より大きい条件と、低温設定側の庫内温度(Tair)が高温設定側の設定温度(Tset)より低い条件と、低温設定側の庫内温度変化速度(ΔTair)が所定値(β)より小さい条件と、を全て満たした場合に選択されることを特徴とするものである。
また、上気の発明において、前記低温設定側優先制御は、前記低圧圧力センサ及びエバポレータ出口冷媒温度センサの検出値によりエバポレータ出口の過熱度制御を行ってもよい。
また、上記の発明において、冷凍区画の設定温度が略同一の冷却運転時は、各エバポレータユニットが個別に過熱度制御を行う合計冷凍能力優先制御を行うことが好ましい。
従って、外気との温度差が大きく侵入熱が多くなる低温設定側を優先して能力制御することができ、冷却能力不足によるリスクを大幅に低減することができ、低温設定側の設定温度到達時間も短くなる。
また、各冷凍区画の冷却能力をコントロールできることから、高精度な温度制御が可能となる。
図1は陸上輸送用冷凍装置の冷媒回路構成例を示す系統図、図2はトラックの荷室に装備された陸上輸送用冷凍装置の配置例を示す図である。
図1及び図2に示す陸上輸送用冷凍装置は、トラック等の車両荷台に搭載されている荷室(バン)に装備され、複数の冷凍区画に分割された荷室内部を異なる温度に冷却可能なことから、マルチタイプと呼ばれている。
陸上輸送用冷凍装置は、たとえばトラック1の荷台下部等に設置されたコンデンシングユニット4と、冷凍区画毎に設置された二つのエバポレータユニット5A,5Bと、を具備して構成される。図示の例において、エバポレータユニット5Aは第1荷室2A内の上部適所に設置され、エバポレータユニット5Bは第2荷室2B内の上部適所に設置されている。
冷媒回路10は、圧縮機11と、コンデンサ12と、第1電子膨張弁13Aと、第1エバポレータ14Aとが冷媒配管15により接続されることで、冷媒が循環する閉回路を形成している。
また、低圧圧力センサ18は、第1エバポレータ14A及び第2エバポレータ14Bの下流側に設置され、両エバポレータの蒸発圧力を求めるための圧力センサである。
コンデンサ12は、圧縮機11から供給された高温高圧のガス冷媒を外気と熱交換させることにより、冷媒を凝縮させる熱交換器(放熱器)である。
また、第2電子膨張弁13Bは、第2エバポレータ14Bの上流側に配設される絞り機構であり、第1電子膨張弁13Aと同様の機能を有している。
また、第2エバポレータ14Bは、第2荷室2Bの冷凍区画内に設置された熱交換器であり、第2エバポレータ14Aと同様の機能を有している。
なお、第1エバポレータ14A及び第2エバポレータ14Bは、第1荷室2A及び第2荷室2B内の空気を流通させるため、図示しないファンを備えている。
低圧圧力センサ18は、冷媒回路10を循環する冷媒の低圧を検出する圧力センサである。すなわち、低圧圧力センサ18は、圧縮機11が吸引して圧縮するガス冷媒の圧力を検出する圧力センサである。
そして、コンデンシングユニット4内の制御部は、使用者が設定する設定温度等の各種運転条件、第1サーミスタ17A及び第2サーミスタ17Bの検出温度、そして低圧圧力センサ18の検出値等が入力されるので、所定の制御フローに基づいて圧縮機11の運転制御、第1電子膨張弁13A及び第2電子膨張弁13Bの開度制御等を実施する。
図3に示すフローチャートは、予め設定されている「冷媒分配制御I」及び「冷媒分配制御II」の二つの冷媒分配制御から、状況に応じて最適な制御方式をひとつ選択して実行する選択運転制御例を示している。
また、図4は「冷媒分配制御I」の運転制御例を示すフローチャート、図5は「冷媒分配制御II」の運転制御例を示すフローチャートである。
しかし、ステップS2の判断により、「制御モード設定済」であるYESの場合には、次のステップS3に進んでエバポレータユニット5A,5Bに「サーモON要求有」か否かを判断する。
しかし、ステップS5の判断により、温度差の絶対値ΔTsetが所定値α以下となるNOと判断された場合には、冷凍区画間の設定温度差が小さいため、後述するステップM1に進んで「冷媒分配制御I」を実行する。
TsetBより低いと判断されたYESの場合には、次のステップS8に進んで制御モードが「冷媒分配制御II」に設定されているか否かを判断する。しかし、第1荷室2Aの庫内温度TairAが第2荷室2Bの設定温度TsetB以上に高いと判断されたNOの場合には、後述するステップM1に進んで「冷媒分配制御I」を実行する。
一方、ステップS8において、制御モードが「冷媒分配制御II」に設定されていないNOの場合には、次のステップS9に進んで「ΔTairA≧β」であるか否かについて、すなわち、第1荷室2Aの庫内温度変化速度ΔTairAについて、所定値β以上に大きいか否かを判断する。
一方、ステップS9の判断において、第1荷室2Aの庫内温度変化速度TairAが所定値βより低くNOと判断された場合には、冷却能力が不足していると判断できるので、次のステップM2に進んで「冷媒分配制御II」を実行する。
一方、ステップS12において、制御モードが「冷媒分配制御II」に設定されていないNOと判断された場合には、次のステップS13に進んで「ΔTairB≧β」であるか否かについて、すなわち、第2荷室2Bの庫内温度変化速度TairBについて、所定値β以上に大きいか否かを判断する。
一方、ステップS13の判断において、第2荷室2Bの庫内温度変化速度TairBが所定値βより低いNOの場合には、冷却能力が不足していると判断できるので、次のステップM2に進んで「冷媒分配制御II」を実行する。
この制御では、最初にステップS21からS29において、第1荷室2Aの膨張弁開度制御を実施した後、第2荷室2Bについても同様の膨張弁開度制御を実施する。なお、図4及び図5のフローチャート上においては、第1荷室2AがA室と、第2荷室2BがB室と記載されている。
ステップS24で第1電子膨張弁13Aの演算設定開度が算出されると、次のステップS25に進んで「A室膨張弁開度変更」をするか否かを判断する。すなわち、第1電子膨張弁13Aの現開度とステップS24で算出された演算設定開度とを比較し、現開度からの開度変更が必要か否かを判断する。
一方、ステップS22の判断により、第1荷室2A用の第1電子膨張弁13Aが全閉状態にあるYESの場合には、ステップS29に進んで「A室膨張弁初期開度設定」を実施した後、後述するB室の膨張弁開度制御へ進む。
このようにしてステップM1の「冷媒分配制御I」を実施することにより、エバポレータユニット5A,5Bが各々独立して、個別の過熱度制御を行うことができる。
換言すれば、「冷媒分配制御II」は、開度調整可能な絞り機構である電子膨張弁を採用するとともに、エバポレータユニットの冷媒蒸発圧力を検出する低圧圧力センサを設けた冷媒回路において、冷凍区画の設定温度が異なる異温度冷却運転時に、エバポレータユニットの複数に運転要求があると低温設定側のエバポレータユニットへ優先的に冷媒を分配する低温設定側優先制御である。
ステップS71では、「A室膨張弁初期開度設定/B室膨張弁最小開度設定」が実施され、この後、最後のステップS56の「終了」に進んで制御を終了する。
ステップS43で低圧上限PLmaxを算出した後には、次のステップS45に進んで「A室エバポレータ出口過熱度演算」を実施する。この演算により第1エバポレータ14Aの出口過熱度が算出されると、次のステップS46に進んで「A室膨張弁開度演算」を実施する。ここで算出される第1電子膨張弁13Aの演算設定開度は、第1エバポレータ14Aの出口過熱度を所定の制御範囲内とする開度である。
ステップS47の判断により、第1電子膨張弁13Aの開度変更が必要と判断されたYESの場合には、次のステップS48に進んで「A室膨張弁開度変更」を実施する。すなわち、第1電子膨張弁13Aの開度は、現開度から演算設定開度に変更される。しかし、第1電子膨張弁13Aの開度変更が不要と判断されたNOの場合には、ステップS48をバイパスして次のステップS49へ進む。なお、ステップS48において「A室膨張弁開度変更」を実施した後についても、次のステップS49へ進むこととなる。
この結果、第1エバポレータ14Aの過熱度が適正範囲内にあるYESの場合には、次のステップS50に進んで「PL(n)<PLmax」の条件を満たしているか否かを判断する。しかし、第1エバポレータ14Aの過熱度が適正範囲内に入っていないNOの場合には、冷媒分配が優先されているA室エバポレータへの冷媒分配調整が未完了と判断できるので、B室膨張弁制御を実施せずにステップS56の「終了」に進んで制御を終了する。
一方、ステップS53の判断において、低減開度が最小開度以上に大きいと判断されたNOの場合には、次のステップS55へ進んで「B室膨張弁開度−γ」の制御が実施される。すなわち、第2膨張弁13Bは、開度を絞ることが可能な状態にあるから、開度をγだけ絞ることでステップS52で算出された低減開度に変更される。この後、最後のステップS56の「終了」に進んで制御を終了する。
そして、以下の制御については、上述したステップS45〜S55により第1荷室2Aの第1電子膨張弁13Aを優先的に開度制御した後に第2荷室2Bの第2電子膨張弁13Bを開度制御したように、ステップS45〜S55の第1荷室(A室)2Aを第2荷室(B室)2Bと読み替えた制御を実施することにより、第2荷室2Bの第2電子膨張弁13Bを優先的に開度制御した後に第1荷室2Aの第1電子膨張弁13Aが開度制御される。
このとき、第1サーミスタ17A及び第2サーミスタ17Bにより検出した低温センサ検出値(エバポレータ出口過熱度)は、低温設定側のエバポレータユニット5A,5Bが冷凍能力を確保できるように決定された低圧上限(低圧制御値)PLmaxとなるように制御する。
図6に示す陸上輸送用冷凍装置は、荷室2が仕切壁3によって第1荷室2A及び第2荷室2Bに分割されている。以下のシミュレーションでは、第1荷室2Aの設定温度を−18℃の冷凍状態とし、第2荷室2Bの設定温度を+5℃のチルド状態とする。
図6に示した陸上輸送用冷凍装置の場合、低温設定側の第1荷室2Aでは、熱負荷となる外部からの侵入熱Q1及び仕切壁3からの侵入熱Q3に対して、第1エバポレータユニット5Aの冷凍機吸熱(冷却能力)Q4により冷却する。また、高温設定側の第2荷室2Bでは、外部からの侵入熱(熱負荷)Q2に対して、第2エバポレータユニット5Bの冷凍機吸熱Q5(冷却能力)により冷却する。
最初に、運転開始から「冷媒分配制御I」を継続して冷却を行う(a)のシミュレーション結果によれば、運転開始から冷却を開始すると、エバポレータユニット5A,5Bの同時運転により両室ともに略同じペースで庫内温度が低下し、高温設定側の第2荷室2Bが設定温度の+5℃に到達する。この後、第2荷室2B側の庫内温度は、所定の条件でサーモON/サーモOFFを繰り返すことにより、設定温度の+5℃前後に維持される。
しかし、低温設定側の第1荷室2Aにおいて、図3に示すステップS6の条件(TsetA≦TsetB)及びステップS9の条件(ΔTairA≧β)を満たした時点から「冷媒分配制御II」に切り替わるため、冷媒が優先的に分配されて冷却能力を増し、−18℃の設定温度まで順調に温度低下することとなる。このとき、荷室2B側では、サーモON/サーモOFFを繰り返すことで設定温度の+5℃前後に維持される。
すなわち、本発明の選択制御を行うことにより、プルダウン運転時において、高温設定側の第2荷室2Bを運転する時間は長くなるものの、低温設定側の第1荷室2Aを設定温度まで速やかに冷却することができる。
最初に、第1荷室2A及び第2荷室2Bが各々設定温度の範囲内にあり、「冷媒分配制御I」により運転されている状態で第1荷室2Aのドアが開かれると、陸上輸送用冷凍装置は運転停止される。すなわち、荷下ろし中は圧縮機11の運転が停止されて陸上輸送用冷凍装置は運転停止状態となる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
2A 第1荷室(A室)
2B 第2荷室(B室)
4 コンデンシングユニット
5A,5B エバポレータユニット
10 冷媒回路
11 圧縮機
12 コンデンサ
13A 第1電子膨張弁
13B 第2電子膨張弁
14A 第1エバポレータ
14B 第2エバポレータ
17A 第1サーミスタ
17B 第2サーミスタ
18 低圧圧力センサ
Claims (5)
- 専用の駆動源により運転される圧縮機によって冷媒を循環させる冷媒回路に複数のエバポレータユニットが並列に接続され、前記複数のエバポレータユニットを分配配置した複数の冷凍区画毎に異なる複数の輸送温度を創出可能な陸上輸送用冷凍装置の運転制御方法において、
前記冷媒回路に開度調整可能な絞り機構を採用するとともに、前記エバポレータユニットの冷媒蒸発圧力を検出する低圧圧力センサを設け、
前記冷凍区画の設定温度が異なる異温度冷却運転時には、前記エバポレータユニットの複数に運転要求があると低温設定側のエバポレータユニットへ優先的に冷媒を分配する低温設定側優先制御が行われ、
前記低温設定側優先制御は、各冷凍区画に設定された設定温度(Tset)の差が所定値(α)より大きい条件と、低温設定側の庫内温度(Tair)が高温設定側の設定温度(Tset)より低い条件と、低温設定側の庫内温度変化速度(ΔTair)が所定値(β)より小さい条件と、を全て満たした場合に選択されることを特徴とする陸上輸送用冷凍装置の運転制御方法。 - 前記低温設定側優先制御は、低温設定側エバポレータユニットの絞り機構開度をエバポレータ出口の過熱度制御にて行い、かつ、高温設定側エバポレータユニットの絞り機構開度は蒸発圧力上限値を超えないように開度制御されることを特徴とする請求項1に記載の陸上輸送用冷凍装置の運転制御方法。
- 前記低温設定側優先制御は、前記低圧圧力センサ及びエバポレータ出口冷媒温度センサの検出値によりエバポレータ出口の過熱度制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の陸上輸送用冷凍装置の運転制御方法。
- 冷凍区画の設定温度が略同一の冷却運転時は、各エバポレータユニットが個別に過熱度制御を行う合計冷凍能力優先制御が行われることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の陸上輸送用冷凍装置の運転制御方法。
- 専用の駆動源により運転される圧縮機によって冷媒を循環させる冷媒回路に複数のエバポレータユニットが並列に接続され、前記複数のエバポレータユニットを分配配置した複数の冷凍区画毎に異なる複数の輸送温度を創出可能な陸上輸送用冷凍装置であって、
前記冷媒回路に設けられた開度調整可能な絞り機構と、前記エバポレータユニットの冷媒蒸発圧力を検出する低圧圧力センサと、前記冷凍区画の設定温度が異なる異温度冷却運転時に、請求項1から4いずれかに記載の運転制御方法により低温設定側優先制御を行う制御部と、を備えていることを特徴とする陸上輸送用冷凍装置。
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