JP5209227B2 - 導電性フィルムのパターニング処理方法およびパターニングされた導電性フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、導電性フィルムのパターニング処理方法に関するものである。さらに詳しくは、容易かつ安全に導電回路などのパターンを形成することができ、液晶ディスプレイ(LCD)、透明タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンスランプ等の透明電極や電磁波シールド材として好適に使用することができる導電性フィルムのパターニング処理方法およびパターニングされた導電性フィルムに関するものである。
従来、液晶ディスプレイ、透明タッチパネル等の透明電極や電磁波シールド材として透明導電性フィルムが好適に用いられている。かかる透明導電性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)等の透明フィルム表面の少なくとも片面に、酸化インジウム(In)、酸化錫(SnO)、InとSnOの混合焼結体(ITO)等を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスによって設けたものがよく知られている。
しかし、通常導電性フィルムは、ウェブ状での連続加工や打ち抜き加工があり、また、表面加工中も曲げられた状態で用いられたり、また保管されたりするため、上記ドライプロセスにより得られる導電性フィルムは、該加工工程や保管している間にクラックが発生して表面抵抗が増大したりすることがある。
一方、透明基材フィルムの上に導電性高分子を塗布すること(ウエットプロセス)により形成される導電層は、膜自体に柔軟性があり、クラックなどの問題は生じがたい。また、導電性高分子を塗布することによって導電性フィルムを得る方法は、ドライプロセスとは異なって製造コストが比較的安く、またコーティングスピードも一般的に速いので生産性に優れるという利点もある。このような導電性高分子の塗布によって得られる導電性フィルムは、これまで一般的に用いられてきたポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等は、開発の初期段階では高い導電性が得られないために帯電防止用途などに使用が限定されていたり、導電層自体の色相が問題となったりしていた。しかし、最近では製法の改良などによりこれらの問題も改善されてきている。例えば、3,4−ジアルコキシチオフェンをポリアニオン存在下で酸化重合することによって得られるポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリアニオンとからなる導電性高分子(特許文献1)は、近年の製法の改良(特許文献2および特許文献3)などにより、高い光線透過率を保ったまま非常に低い表面抵抗を発現している。
しかしながら、これらの導電性高分子を導電層とする導電性フィルムは、従来の金属酸化物を用いた導電性フィルムとは異なり、酸やアルカリを用いて導電成分を溶出させることによりパターニングを行う方法を採用することはできない。代わりに、例えば過塩素酸ナトリウム水溶液や過酸化水素水等を用いて導電性高分子を不活性化させることによりパターニングを行なう方法が採られているが、ここで用いられる処理剤は安全上だけでなく保管上の問題もあり、工業的に利用することは困難である。
特開平1−313521号公報 特開2002−193972号公報 特開2003−286336号公報
本発明は、上記背景技術を鑑みなされたもので、その目的は、導電性高分子を用いた導電性フィルムを、工業的に容易にパターニングできる方法を提供することにあり、また、該方法により、ディスプレイやタッチパネル等に好適に使用することができるパターニングされた導電性フィルムを提供することにある。
本発明者は、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の溶媒を用いればポリチオフェン系導電性高分子からなる導電層を不活性化することができ、処理した部分の導電性を大きく低下させ得ることを見出し、本発明に到達した。
かくして本発明によれば、「基材フィルムの少なくとも片面に、下記一般式
Figure 0005209227
(式中、RおよびRは相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンとポリアニオンとからなる導電性高分子を主たる構成成分として含有する導電層を有する導電性フィルムを、イソプロピルアルコールを含有する処理液を用いて導電性高分子を部分的に不活性化することを特徴とするパターニングされた導電性フィルムの製造方法。」が提供される。
また好ましい態様として、不活性化された導電層部分と不活性化されていない導電層部分の表面抵抗の差が10 Ω/□以上であること、不活性化されていない導電層の全光線透過率が60%以上かつ表面抵抗が10〜1×10Ω/□であること、基材フィルムがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートで構成されていること、の少なくともいずれかを具備するパターニングされた導電性フィルムの製造方法が提供される。
本発明の導電性フィルムのパターニング処理方法によれば、汎用溶剤であるイソプロピルアルコールを含有する処理剤を用いることによって容易に導電層のパターニングができるため、工業的に安全かつ安価にパターニングされた導電性フィルムが得られる。また、得られるパターニングされた導電性フィルムは、非不活性化部分の導電性は元のままで優れた特性を有しており、透明タッチパネル、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンス素子、電子ペーパー等の透明電極として特に好適に使用することができる。
本発明で用いられる導電性フィルムを、まず図面を用いて説明する。図1は、本発明にかかる導電性フィルムの断面図、すなわち層構成の一例を示すものである。図1中、符号1は基材フィルム、符号2は導電層、符号3はアンカー層を示す。図1から分かるように、本発明にかかる導電性フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に特定の導電性高分子を主成分とする導電層を有するものである。このような構成を有するものであれば、他の機能層が本発明の目的を損なわない限りにおいて形成されていてもよく、例えばアンカー層(符号3)、アンカー層と基材フィルムとの間に易接着層(符号4)を設けてもよい。また、導電層を形成した面とは反対側に、易接着層、ハードコート層(符号5)を設けてもよい。
本発明の方法により得られる、パターニングされた導電性フィルムの不活性化された導電層部分と不活性化されていない導電層部分の表面抵抗の差は、1×10Ω/□以上、好ましくは1×10Ω/□以上、特に好ましくは1×1010Ω/□以上であることが、パターニングされた導電性フィルムの回路特性の観点から望ましい。
なお本発明で用いられる導電性フィルムは、その全光線透過率が60%以上、好ましくは65%以上、特に好ましくは70%以上であることが望ましい。このような全光線透過率は、後述する導電層の厚みを調整することにより実現できる。
さらに、該導電性フィルムは、その不活性化されていない部分の導電層の表面抵抗が10〜1×10Ω/□の範囲にあることが好ましい。該表面抵抗が上限を超えると、液晶ディスプレイ、透明タッチパネル等の透明電極や電磁波シールド材として用いたときに電極として十分に機能しなかったり、十分な電磁波シールド特性が得られなくなったりする。一方、下限未満の場合には、該導電層の厚みを厚くすることが必要となり、全光線透過率やコストの観点から好ましくない。なお、好ましい表面抵抗は10〜5×10Ω/□の範囲である。
以下、本発明の導電性フィルムを形成する各層について、さらに詳述する。
〈導電層〉
本発明における導電層は、表面抵抗を下げられ、かつ透明性も具備する下記一般式
Figure 0005209227
で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェン(以下、“ポリ(3,4−ジ置換チオフェン)”と称することがある)と、ポリアニオンとからなる導電性高分子を主たる構成成分として含む組成物から形成される。すなわち、この導電性高分子はポリ(3,4−ジ置換チオフェン)とポリアニオンとの複合化合物である。
この導電性高分子を構成するポリ(3,4−ジ置換チオフェン)のRおよびRは相互に独立して水素または炭素数が1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数が1〜12のアルキレン基を表す。RおよびRが一緒になって形成される、置換基を有してもよい炭素数が1〜12のアルキレン基の代表例としては、1,2−アルキレン基(例えば、1,2−シクロヘキシレンおよび2,3−ブチレンなど)があげられる。また、RおよびRが一緒になって形成される炭素数が1〜12のアルキレン基の好適な例としては、メチレン、1,2−エチレンおよび1,3−プロピレン基があげられ、1,2−エチレン基が特に好適である。具体例としては、アルキル置換されていてもよいメチレン基、炭素数1〜12のアルキル基もしくはフェニル基で置換されていてもよい1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基があげられる。
一方、該導電性高分子を構成するポリアニオンとしては、高分子状カルボン酸類(例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸など)、高分子状スルホン酸(例えばポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸など)などがあげられる。これらの高分子状カルボン酸およびスルホン酸類は、ビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸類と他の重合可能な低分子化合物、例えばアクリレート類およびスチレンなどとの共重合体であってもよい。これらポリアニオンの中でもポリスチレンスルホン酸およびその全べてもしくは一部が金属塩であるものが好ましく用いられる。
本発明における導電層を形成するためのコーティング組成物は、上述の導電性高分子を主成分として水に分散または溶解させた液を用いるが、必要に応じてポリエステル、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラールなどの適当な有機高分子材料をバインダーとして添加することができる。
さらに必要に応じて、バインダーを溶解させる目的、もしくは基材フィルムへの濡れ性を改善する目的、固形分濃度を調整する目的などで、水と相溶性のある適当な溶媒を添加することができる。例えば、アルコール類(メタノール、エタノールなど)、アミド類(ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド)などが好ましく用いられる。
また、得られる導電層の塗膜強度を向上させる目的で、さらにアルコキシシランまたはアシロキシシランを添加してもよい。これらのシラン化合物は、加水分解され、その後に縮合反応された反応生成物の形態で導電層中に存在する。これらのシラン化合物としては、例えばメチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどがあげられる。なかでも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシランなどのテトラアルコキシシランおよびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルコキシ基以外の反応性官能基を有するトリアルコキシシランが好ましく、特にグリシドキシ基を有するトリアルコキシシランが好ましい。かかるシラン化合物の添加量は、導電性高分子の重量を基準として50重量%以下、特に10〜40重量%の範囲が好ましい。
このようなシラン化合物の加水分解/縮合を効率よく進行させるためには触媒を併用することが好ましい。触媒としては酸性触媒または塩基性触媒のいずれをも用いることができる。酸性触媒としては、酢酸、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、プロピオン酸、しゅう酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸等が好適である。一方塩基性触媒としてはアンモニア、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等の有機アミン化合物、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物などが好適である。
さらに、上記の導電層形成用のコーティング組成物には、基材フィルムに対する濡れ性を向上させる目的で、少量の界面活性剤を加えてもよい。好ましい界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、およびフッ素系界面活性剤(例えばフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、パーフルオロアルキル4級アンモニウム塩、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなど)があげられる。
導電層を形成する際の塗布方法としては、それ自体公知の方法を採用できる。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法などが好ましくあげられる。熱硬化性樹脂をバインダーとして併用した場合には、導電層の塗設はそれぞれを形成する成分を含む塗液を基材フィルムに塗布し、加熱乾燥させて塗膜を形成させる。加熱条件としては80〜160℃で10〜120秒間、特に100〜150℃で20〜60秒間が好ましい。UV硬化性樹脂またはEB硬化性樹脂をバインダーとして併用した場合には、一般的には予備乾燥を行った後、紫外線照射または電子線照射を行なう。
また、かかる導電層を形成するための塗液を、基材フィルム面上または後述するアンカー層上に塗布する際には、必要に応じて、さらに密着性・塗工性を向上させるための予備処理として、基材フィルム面または後述するアンカー層表面にコロナ放電処理、プラズマ放電処理などの物理的表面処理を施しても構わない。表面処理を行った後の基材フィルム面またはアンカー層上の表面濡れ指数(表面張力)は50ダイン/cm以上であることが好ましく、特に好ましくは60ダイン/cm以上である。表面張力が50ダイン/cm未満と低い場合には、濡れ性の改善効果が不十分となり、導電層の密着性・塗工性の改善効果が小さくなる。
以上に説明した導電性フィルムの導電層厚みは、0.01〜0.30μmの範囲、特に0.02〜0.25μmの範囲が好ましい。該導電層の厚さが薄すぎると十分な導電性が得られないことがあり、逆に厚すぎると全光線透過率が不足したり、ブロッキングを起こしたりすることがある。
〈パターニング処理方法〉
本発明においては、上記導電層を有する導電性フィルムのパターニング処理を行うために、イソプロピルアルコール(2−プロパノール;以下IPAと表記することがある)を絶縁性を向上させたい部分に塗布し、次いで乾燥処理することによって該部分の表面抵抗を好ましくは10Ω/□以上、好ましくは10Ω/□以上、特に好ましくは1010Ω/□以上増加させる必要がある。かくすることにより、回路などが形成されたパターニングされた導電性フィルムを安全かつ低コストで容易に製造することができる。
なお、IPAによる前記導電性高分子からなる導電層の不活性化の理由については明らかになっていないが、他の溶剤、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、ヘキサン、デカン等の直鎖アルキル系溶剤、水等の各種溶剤については不活性化の効果が確認されていないことより、IPAのみの特異的な現象、例えば、IPAの前記導電性高分子に対する親和性が非常に強いために、導電層中に浸透することにより導電層中に形成されている導電性高分子の三次元ネットワーク構造が破壊され、導電性高分子鎖同士の距離が増大する結果、分子間の電子のホッピングが起こりにくくなって導電性の低下が起こるものと推定される。
本発明のIPAを含有する処理液による上述のパターニング処理の方法は特には限定されず、従来公知のマスキング技術であるフォトレジストによるマスキング法により不活性化する部分以外をマスキングした後、非マスキング部分をIPA含有処理液で処理して不活性化し、次いでレジストを除去する方法、あるいは、スクリーン印刷やインクジェット印刷によって不活性化したい部分にIPA含有処理液を塗布する方法などがあげられる。
〈アンカー層〉
本発明で用いられる上記導電性フィルムには、基材フィルムと導電層との間にアンカー層が設けられていることが好ましい。該アンカー層を形成する成分としては、十分な架橋密度が容易に得られ、基材フィルム由来のオリゴマーを十分に封止できることから、活性線照射により硬化させることができる、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも2個有する多官能(メタ)アクリレート化合物およびこれを一部重合させたオリゴマー、さらには、ポリマーの側鎖に(メタ)アクリレート基を導入した活性線硬化性ポリマーなどを例示することができる。
好ましく用いられる多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えばネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート)、メラミン(メタ)アクリレート等をあげることができ、これらは一種単独で用いても、二種以上を併用しても構わない。
このような多官能(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、アロニックスM−400、M−450、M−305、M−309、M−310、M−315、M−320、TO−1200、TO−1231、TO−595、TO−756(以上、東亞合成製)、KAYARD D−310、D−330、DPHA、DPHA−2C(以上日本化薬製)、ニカラックMX−302(三和ケミカル社製)等を例示することができる。
このような多官能(メタ)アクリレート化合物には、必要に応じて(メタ)アクリロイル基以外の硬化性官能基を持たせてもよいし、(メタ)アクリロイル基以外の硬化性官能基を有する化合物を併用してもよい。また、これら化合物の2〜20量体程度のオリゴマー、また皮膜を形成することが可能な範囲内で重合させたポリマーを用いることも可能である。
本発明におけるアンカー層を硬化させる方法は、活性線照射であれば特に限定されないが、光重合開始剤を併用し、紫外線ないし可視光線を照射して光硬化(光架橋)させるのが好ましい。好ましく用いられる光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フロオレノン、アントラキノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−1−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等をあげることができる。
かかる光重合開始剤の添加量は、アンカー層皮膜の重量を基準として10重量%以下であることが好ましい。添加量が10重量%を超えると、光重合開始剤が可塑剤として作用し、アンカー層の強度が低下する可能性がある。
なお、該アンカー層には、上記の成分のほかに、皮膜の強度を向上させる目的で微粒子を添加することも可能である。このような場合に用いられる微粒子としては、硬化後の皮膜の膜強度、すべり性、光学特性等の観点からケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、シリコーン樹脂からなるものが好ましい。なかでも、高強度の観点からケイ素酸化物が好ましい。これら微粒子は一種単独で用いても、二種以上を併用しても構わない。
かかる微粒子は、粉体状であっても溶媒分散ゾル状であっても構わないが、溶媒分散ゾル状である場合には、他の成分との相溶性の観点から分散媒は有機溶媒であることが好ましい。このような有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等をあげることができる。なかでもメタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが好ましい。
また、上記の微粒子の平均一次粒径は2〜2000nmが好ましく、さらには3〜200nm、最も好ましくは5〜100nmである。平均一次粒径が2000nmを超えるような場合には、透明性の高い皮膜を得るのが困難となり、一方平均一次粒径が2nm未満である場合には、粒子自体の強度が低く、また硬度の高い皮膜が得られなくなる。かかる微粒子の分散性を改良するために、各種の界面活性剤やアミン類等を併用してもよい。
好ましく用いられるケイ素酸化物微粒子としては、例えば市販されている以下のような微粒子分散ゾルをあげることができる。IPA−ST,MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40(以上日産化学社製)。
好ましく用いられる酸化アルミニウム微粒子としては、例えば以下のような微粒子分散ゾルをあげることができる。アルミナゾル−100、アルミナゾル−200、アルミナゾル−500(以上日産科学社製)、AS−150I、AS−150T(住友大阪セメント製)。
好ましく用いられるシリコーン樹脂微粒子としては、例えば市販されているN−31−4(日本純薬社製)をあげることができる。
以上に説明した微粒子は、分散性を向上させる観点および多官能(メタ)アクリレート化合物からなる活性線硬化性成分(マトリックス樹脂)との架橋を生成して皮膜強度を向上させる観点から、重合性官能基を有する表面処理剤で予め表面処理していることが好ましい。好ましく用いられる表面処理剤としては例えば、シラノール基を含有する、または加水分解することによりシラノール基を生成する化合物(以下、シランカップリング剤と称することがある)があげられる。なかでも、シラノール基以外の重合性官能基を併せ持ったシランカップリング剤が好ましい。かかる化合物のシラノール基と前述の微粒子(通常表面に水酸基を有する)は、熱などによって結合を形成することができ、微粒子表面にシランカップリング剤が結合され、微粒子が有機成分中にも分散しやすい状態を形成することができる。シラノール基以外の重合性官能基の例としては、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、アクリルアミド基、水酸基などをあげることができる。
このようなシラノール基以外の重合性官能基を持った化合物としては例えば、TSL−8350、TSL−8337、TSL−8370、TSL−8375(以上、GE東芝シリコーン社製)、A−9530、(新中村化学製)、A−187(日本ユニカ製)などをあげることができる。
微粒子の表面処理を行う場合には、まず前述のようなシランカップリング剤と処理する微粒子(分散ゾル)とを混合し、さらにイオン交換水を添加した後に室温に静置することにより先ずシランカップリング剤の加水分解を進める。加水分解させるのに必要な時間は用いる化合物の種類によって異なるが、1〜24時間程度である。シランカップリング剤の加水分解が十分に進行した後に、20℃〜150℃の温度で処理することにより、シランカップリング剤のシラノール基と粒子表面の水酸基とが反応し、表面処理された微粒子を得ることができる。
以上に説明した微粒子の添加量は、形成されるアンカー層の重量を基準として5〜90重量%とするのが好ましく、特に10〜85重量%の範囲が好ましい。
かかるアンカー層は、例えば上述の多官能(メタ)アクリレート系活性線硬化性化合物、必要に応じて(表面処理された)微粒子および光重合開始剤を溶媒に溶解・分散させて塗布した後、乾燥、光照射して硬化させることにより形成する。ここで用いる溶媒としては特に制約はないが、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、セカンダリーブタノール、t−ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、トルエン、キシレン、芳香族炭化水素類等があげられる。なかでも溶解性の観点からメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類が好ましい。有機溶剤はアンカー層を形成するための溶液の全固形分濃度が1〜70重量%になる範囲で用いるのが好ましい。
なお、該アンカー層には、本発明の目的を損なわない範囲において光増感剤、レベリング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、染料等を併用しても構わない。
アンカー層を形成する際の塗布方法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法などが好ましくあげられ、塗液を基材フィルムに塗布し、加熱乾燥た後に、紫外線または可視光の活性線照射を行なう。例えば紫外線照射の場合には、照射量が10〜2000mJ/cm、好ましくは50〜1500mJ/cm、特に好ましくは100〜1000mJ/cmとなる範囲にすればよい。
なお、アンカー層の密着性・塗工性を向上させるための予備処理として、基材フィルム表面にコロナ放電処理、プラズマ放電処理などの物理的表面処理を施しても構わない。
アンカー層の厚みは、薄くなりすぎると基材フィルムからのオリゴマーを封止する効果が不十分になるばかりか、活性線照射により硬化反応させる場合に酸素障害の影響が大きくなって硬化不良となりやすく、逆に厚くなりすぎると皮膜の柔軟性が低下してフィルムを曲げた際に割れやすくなるので、1.0〜7.0μmの範囲、特に2.0〜6.0μmの範囲とするのが好ましい。
(易接着層)
本発明においては、必要に応じて、前記アンカー層と基材フィルムとの間に易接着層をさらに設けてもよい。かかる易接着層を形成する成分は、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール/ポリエチレン共重合体等、透明性を備えるものであれば特に制限はされないが、密着性の観点から、特にポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂の両方を構成成分として含有するものが好ましい。
ここで用いられるポリエステル樹脂も特に制限はなく、以下に示す多塩基酸とポリオールとからなるポリエステルを例示することができるが、特に水(多少の有機溶剤を含有していてもよい)に可溶性または分散性のポリエステルが好ましい。
ポリエステル樹脂の多塩基酸成分としては例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等をあげることができる。なかでも、これら酸成分を2種類以上含有する共重合ポリエステルが好ましい。なお、若干量であればマレイン酸、イタコン酸等の不飽和多塩基酸成分や、p−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸成分が含まれていてもよい。
またポリオール成分としては例えば、エチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ジメチロールプロパン等や、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールをあげることができるがこれらに限定されるものではない。
一方オキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂も、水(多少の有機溶剤を含有していてもよい)に可溶性または分散性のアクリル樹脂が好ましい。かかるオキサゾリン基とポリアルキレンオキシ鎖とを有するアクリル樹脂としては例えば、以下に示すモノマーを共重合成分として含むものをあげることができる。
まずオキサゾリン基を有するモノマーとしては、例えば2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中で2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的に入手しやすく好適である。かかるオキサゾリン基を有するアクリル樹脂を用いることによりアンカーコート層の凝集力が向上し、透明導電塗膜層との密着性がより強固になる。さらにフィルム製膜工程内や透明導電塗膜層加工工程における金属ロールに対する耐擦傷性を基材フィルム表面に付与できる。なお、オキサゾリン基を含有するモノマーの含有量は、該アクリル樹脂中の含有量として2〜40重量%、好ましくは3〜35重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。
次にポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸のカルボキシル基にアルキレンオキシドを付加反応させたものを挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖はポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド等を挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位は3〜100であることが好ましい。かかるポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を用いることによりアンカーコート層中のポリエステル樹脂とアクリル樹脂の相溶性がポリアクリレンオキシド鎖を含有しないアクリル樹脂と比較してよくなり、アンカーコート層の透明性を向上させることができる。ここでポリアルキレンオキシド鎖の繰返し単位が3より小さいとポリエステル樹脂とアクリル樹脂との相溶性が低下してアンカーコート層の透明性が低下し、逆に100より大きいとアンカーコート層の耐湿熱性が下がり、高湿度、高温下での透明導電塗膜層との密着性が悪化する。なお、ポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーの含有量は、該アクリル樹脂中の含有量として3〜40重量%、好ましくは4〜35重量%、さらに好ましくは5〜30重量%の範囲である。
アクリル樹脂のその他の共重合成分としては、例えば以下のモノマーをあげることができる。すなわちアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ基含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等のカルボキシ基またはその塩を有するモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、アクリロイルモルフォリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド等のアミド基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物のモノマー;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマル酸モノエステル、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等であるが、これらのモノマーに限定されるものではない。
易接着層を形成するポリエステル樹脂の易接着層中の含有割合は5〜95重量%であることが好ましく、特に50〜90重量%であることが好ましい。易接着層を形成するオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂の易接着層中の含有割合は5〜90重量%であることが好ましく、特に10〜50重量%であることが好ましい。ポリエステル樹脂が95重量%を超える、もしくはオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂が5重量%未満になると易接着層の凝集力が低下し、アンカー層の密着性が不十分になる場合がある。
上記易接着層(以下「塗膜」ということがある)を基材フィルム上に形成させるために、上記の成分を水溶液、水分散液または乳化液等の水性塗液の形態として使用することが好ましい。塗膜を形成するために、必要に応じて、前記成分以外に他の成分、例えば帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤等を添加することもできる。特に滑剤を添加することにより、耐ブロッキング性をさらに良好なものとすることができる。
易接着層の塗工に用いる水性塗液の固形分濃度は通常20重量%以下であるが特に1〜10重量%であることが好ましい。この割合が1重量%未満であると、基材フィルムへの濡れ性が不足することがあり、一方20重量%を超えると塗液の貯蔵安定性や易接着層の外観が悪化することがある。
易接着層の膜厚は、十分な密着向上効果を発現しかつ透明性を損なわない範囲であれば特に制限されないが、通常は0.001〜0.10μm、好ましくは0.005〜0.090μm、特に好ましくは0.01〜0.085μmの範囲が適当ある。
次に本発明における基材フィルムは特に制限する必要はないが、(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート(以下、PETと称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下、PENと称することがある。)などのポリエステル(全酸成分を基準として20モル%以下、好ましくは10モル%以下の第3成分を共重合していてもよい)やアミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボニル基等の官能基で一部変性した樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などからなるフィルムが好適である。これらの基材フィルムのうち、機械特性や透明性、生産コストの点からポリエステル(PET、PENおよびそれらの共重合ポリエステル)フィルムが特に好ましい。基材フィルムの厚みも特に制限されないが、500μm以下が好ましい。500μmより厚い場合には剛性が強すぎて、得られたフィルムをディスプレイなどに貼付ける際の取扱い性が低下しやすい。
基材フィルムとしてポリエステルフィルムを用いる場合には、易接着層を設けるための上述の塗料塗布は、任意の段階で実施することができるが、ポリエステルフィルムの製造過程で実施するのが好ましい。特に、配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布するのが好ましい。
ここで配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向、また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。
なかでも未延伸フィルムまたは一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムに易接着層を形成するための水性塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
易接着層を形成するための水性塗液を基材フィルムに塗布する際には、密着性や塗布性を向上させるための予備処理として、フィルム表面にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは塗液組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。
かかる界面活性剤は、上記易接着層を形成する水性塗液の基材フィルムへの濡れを促進するものであり、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪族エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は塗膜を形成する組成物中に0.1〜10重量%含まれていることが好ましい。
易接着層を形成する際の塗布方法としては、それ自体公知の方法を採用すればよい。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法などを例示することができ、これらの方法を単独または組み合わせて用いることができる。なお、塗膜は必要に応じてフィルムの片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
本発明で用いられる導電性フィルムは、上述のとおり基材フィルムの少なくとも片面に導電層を有することが必要であるが、導電層が形成される側と反対の面には必要に応じて易接着層、ハードコート層などの機能付与層がさらに設けられていてもよい。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各評価は下記の方法にしたがった。
(1)膜厚
反射分光膜厚計(大塚電子製、商品名「FE−3000」)を用いて、試料導電性フィルムの導電層側の波長300〜800nmにおける反射率を測定した。
アンカー層の膜厚は、上述の反射スペクトルの干渉波形からピークバレー法を用いてフィッティングさせることにより算出した。
また導電層の膜厚は、上述の反射率測定値について代表的な屈折率の波長分散の近似式としてn−k Cauchyの分散式を引用し、スペクトルの実測値とフィッティングさせることにより求めた。
(2)アンカー層表面の濡れ指数
JIS K6768に準拠し、アンカー層表面に濡れ性標準試薬を塗布し、2秒以上撥水することなく濡れる最小の試薬番号をアンカー層表面の濡れ指数とした。
(3)全光線透過率
JIS K7150にしたがい、スガ試験機(株)製のヘイズメーターHCM−2Bにて測定を行った。
(4)表面抵抗
三菱化学社製Lorester MCP−T600を用いて、JIS K7194に準拠して測定した。測定は任意の箇所を5回測定し、それらの平均値とした。
(5)塗膜成分の分析
不活性化処理を行った部分の塗膜のESCA分析を行い、ポリチオフェン由来の硫黄元素のピークを検出することにより導電性高分子成分の存在を確認した。
[実施例1]
<易接着層形成用塗液成分>
ポリエステル:酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸65モル%/イソフタル酸30モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=80℃、平均分子量13000)。
なお、かかるポリエステルは特開平6−116487号公報の実施例1に記載の方法に準じて下記のとおり製造した。すなわち2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル44部、イソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール34部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃までに上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。
アクリル:メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%で構成されている(Tg=50℃)。
なお、かかるアクリルは特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記のとおり製造した。すなわち、四つ口フラスコに、界面活性剤としてラウリルスルホン酸ナトリウム3部およびイオン交換水181部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、さらにモノマー類であるメタクリル酸メチル23.3部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン22.6部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート40.7部、アクリルアミド13.3部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるように調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ攪拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が35%のアクリルの水分散体を得た。
添加剤:シリカフィラー(平均粒系100nm)(日産化学株式会社製:商品名スノーテックスZL)
濡れ剤:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製 商品名ナロアクティーN−70)
<基材フィルムおよび易接着層の形成>
溶融ポリエチレンテレフタレート(〔η〕=0.62dl/g、Tg=78℃)をダイより押し出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.4倍延伸した後、その両面に上述のポリエステル60部、アクリル30部、添加剤5部、濡れ剤5部からなる塗液をイオン交換水で濃度8%に調整し、ロールコーターで均一に塗布した。次いで塗工後にこのフィルムを横方向に125℃で3.6倍延伸し、220℃で幅方向に3%収縮させ熱固定を行い、易接着層が形成された、厚さ188μmの基材フィルムを得た。なお、易接着層の厚さは0.04μmであった。
<アンカー層の形成>
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートおよびシリカナノ粒子を主成分とした塗剤(商品名Z7501:JSR株式会社製)をMEKにて固形分濃度40%に調整し、ロールコーターで均一に塗布した。次いで塗工後に70℃で2分間の乾燥処理を行い、その後高圧水銀ランプによりUV照射を行った。UV照射量は300mJ/cm2で実施した。なおアンカー層の乾燥厚みは6.0μmであった。次いで得られたアンカーコート層表面に4kWの出力、処理速度10m/分でコロナ処理を行った。このアンカー層表面の濡れ指数は65ダイン/cmであった。
<導電層の形成>
導電性ポリマー:ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)0.5重量%とポリスチレンスルホン酸(分子量Mn=150,000)0.8重量%を含んでなるポリマーの水分散体(BaytronP:バイエルAG製)97部に対して3部のジエチレングリコール、0.5部のγ―グリシドキシトリメトキシシランを添加して調整した溶液を、マイヤーバーを用いて上記のアンカー層を設けた基材フィルム上に塗工し、140℃で1分間の乾燥を行い導電層を形成した。得られた導電層の厚みは0.08μmであった。
<不活性化処理によるパターニング>
上述のように作製した導電性フィルムを20cm角の大きさに切り出し、中央部の表面抵抗を測定した後、スクリーン印刷法を用いて中央部の10cm角の面積にIPAを塗布し、10分間室温にて乾燥させた。その後、処理部と未処理部の表面抵抗を測定した。また、処理部と未処理部のESCA分析を行い硫黄元素のピーク強度の比較を行い、処理部と未処理部で導電性高分子の検出量が変わらないことを確認した。
[実施例2]
パターニングの方法として同様に切り出した20cm角のサンプルの半分(20cm×10cm面積)をIPAに10分間浸漬し、その後10分間室温で乾燥させた。その他は実施例1と同様に実施した。
[比較例1]
パターニングに用いる溶剤をエタノールに変更した以外は実施例1と同様に実施した。
[比較例2]
パターニングに用いる溶剤をMEKに変更した以外は実施例1と同様に実施した。
[比較例3]
パターニングに用いる溶剤をトルエンに変更した以外は実施例1と同様に実施した。
[比較例4]
パターニングに用いる溶剤を酢酸エチルに変更した以外は実施例1と同様に実施した。
[比較例5]
パターニングに用いる溶剤を水に変更した以外は実施例1と同様に実施した。
[比較例6]
パターニングに用いる溶剤を0.1Mの塩酸に変更した以外は実施例1と同様に実施した。
[比較例7]
パターニングに用いる溶剤を0.1%水酸化ナトリウム水溶液に変更した以外は実施例1と同様に実施した。
それぞれの評価結果を表1に示す。
Figure 0005209227
上記表1から、IPAで処理した部分の表面抵抗は著しく増大するのに対して、本発明外の溶剤で処理した部分の表面抵抗は殆ど変化しないことがわかる。すなわち、本発明の処理方法によれば、導電性フィルムにパターニング処理が容易にできることがわかる。
以上に説明した本発明のパターニング処理方法によれば、導電性フィルムに容易に回路パターンなどを形成することができ、タッチパネル、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)、無機エレクトロルミネッセンス素子、電子ペーパー等の透明電極や電磁波シールド材として使用するのに極めて有用である。
本発明で用いられる導電性フィルムの一例を示す断面図である。
符号の説明
1 基材フィルム
2 導電層
3 アンカー層
4 易接着層
5 ハードコート層

Claims (4)

  1. 基材フィルムの少なくとも片面に、下記一般式
    Figure 0005209227
    (式中、RおよびRは相互に独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を表す)
    で表される繰返し単位からなるポリカチオン状のポリチオフェンとポリアニオンとからなる導電性高分子を主たる構成成分として含有する導電層を有する導電性フィルムを、イソプロピルアルコールを含有する処理液を用いて該導電性高分子を部分的に不活性化することを特徴とするパターニングされた導電性フィルムの製造方法。
  2. 活性化された導電層部分と不活性化されていない導電層部分の表面抵抗の差が10Ω/□以上である請求項1に記載のパターニングされた導電性フィルムの製造方法
  3. 不活性化されていない導電層の全光線透過率が60%以上かつ表面抵抗が10〜10Ω/□である請求項1または2に記載のパターニングされた導電性フィルムの製造方法
  4. 基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートで構成される請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターニングされた導電性フィルムの製造方法
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