以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
先ず、図1には、本発明手法に従って製造された中空樹脂成形品の一例としての自動車の吸気ホースが、その縦断面形態において概略的に示されている。かかる図1から明らかなように、この吸気ホース10は、樹脂製で、長さ方向中間部が蛇腹部12とされて、かかる蛇腹部12において容易に曲げ変形せしめられ得るようになっている。また、長さ方向の一端部が、その他端部よりも小径円筒状の小径筒部14とされている一方、その他端部が、小径筒部14よりも大径円筒状の大径筒部16とされている。
そして、かかる吸気ホース10にあっては、小径筒部14の外部への開口側部分内に、二つの吸気系部材のうちの一方の吸気系部材が有する、図1に二点鎖線で示される小径連結筒部18が内挿される一方、大径筒部16に対して、他方の吸気系部材が有する、図1に二点鎖線示される大径連結筒部20が外挿されて、二つの吸気系部材を連通状態で連結し得るようになっている。このため、吸気ホース10では、小径筒部14のうち、とりわけ、小径連結筒部18が内挿される部分の内径寸法において、高い寸法精度が要求される構造とされている。
而して、このような吸気ホース10は、ブロー成形によって製造されることとなるが、その際には、本発明に従う構造を有する、例えば、図2に示される如き中空樹脂成形品の製造装置が、有利に用いられる。
すなわち、図2から明らかなように、本実施形態の製造装置は、従来のブロー成形装置と同様に、押出機22と押出ダイを含む成形機ヘッド24とブロー成形用型26とを有している。押出機22は、図2に明示されてはいないものの、水平方向に延びる加熱筒28内にスクリュ(図示せず)が回転可能に設けられた公知の基本構造を有し、加熱筒28内に投入された熱可塑性樹脂材料が、加熱筒28による加熱とスクリュの回転とによって、溶融混練された状態で、先端側から側方に向かって押し出されるようになっている。
成形機ヘッド24は、全体として、矩形のブロック形状を有し、上下方向に延びるように位置せしめられた状態で、押出機22の先端に取り付けられている。また、この成形機ヘッド24の内部には、押出機22の先端から押し出される溶融樹脂材料を受け入れる樹脂流路が、上下方向に延びるように設けられ、この樹脂流路が、円環形状をもって下方に向かって開口する隙間からなるダイ間隙30に連通せしめられている。これによって、押出機22から成形機ヘッド24内に導入された溶融樹脂材料が、ダイ間隙30を通じて、下方に押し出され、以て、かかる溶融樹脂材料からなる円筒状のパリソン32が、上下方向に延びるように、連続的に押出成形されるようになっている(図6参照)。即ち、ここでは、成形機ヘッド24のダイ間隙30を形成する下端部にて、押出ダイが構成されている。
一方、ブロー成形用型26は、図2中、左右方向において互いに所定距離を隔てて対向配置された左分割型34と右分割型36とを有している(なお、以下に言う左方向と右方向は、図2の左方向と右方向を言うものとする)。それら左及び右分割型34,36は、図示しない油圧機構等の駆動機構によって、互いに接近乃至離隔移動せしめられて、型閉じ乃至型開きされるようになっている。また、左及び右分割型34,36の互いに対向面のそれぞれの上側部位には、目的とする吸気ホース10の小径筒部14の一部(外部への開口側端部)を除く部分を軸方向に延びる切断線にて切断したときの左右半分ずつの外面形状に対応した形状を呈するキャビティ形成凹所38,40が、それぞれ設けられる一方、下側部位には、後述する充填型42を軸方向に延びる切断線にて切断したときの左右半分ずつの外面形状に対応した形状を呈する充填型収容凹所44,46が、それぞれ設けられている。
そして、このブロー成形用型26にあっては、左及び右分割型34,36が、互いに接近せしめられて、型閉じされることにより、内部の上側部分に、各キャビティ形成凹所38,40同士が合わされてなる、吸気ホース10の小径筒部14の一部を除く部分の外面形状に対応した形状の成形キャビティ48が形成される一方、その下側部分に、各充填型収容凹所44,46同士が合わされてなる、充填型42の外面形状に対応した形状の充填型収容空間50が、成形キャビティ48に連通状態で形成されるようになっている(図7参照)。
そして、本実施形態の製造装置にあっては、従来のブロー成形装置にも用いられる上記の押出機22と押出ダイを含む成形機ヘッド24とブロー成形用型26とに加えて、成形機ヘッド24の下方に位置せしめられた充填型42と、この充填型42を支持して、上下方向に移動せしめる移動機構52と、かかる移動機構52による充填型42の上方への移動により、充填型42が成形機ヘッド24に当接せしめられたときに、それら充填型42と成形機ヘッド24との当接状態を解除可能にロックするロック機構54とを、更に有している。
より詳細には、図2乃至図4に示されるように、充填型42は、全体として、矩形の厚肉平板形状乃至はブロック形状を呈し、その中心部には、それを厚さ方向に貫通して、充填型42の上端面と下端面とにおいてそれぞれ開口する空気噴出孔56が、形成されている。また、充填型42の下端面には、空気噴出孔56の開口部の周囲に、その周方向に連続して延びる円筒状の接続筒部58が、下方に向かって一体的に突設されており、この接続筒部58に対して、図示しないコンプレッサ等の圧縮空気の供給源から延びる圧縮空気流通パイプ60が接続されている。これにより、圧縮空気供給源から供給されて、圧縮空気流通パイプ60内を流通せしめられる圧縮空気が、充填型42の上端面における空気噴出孔56の開口部から上方に向かって噴出せしめられるようになっている。そして、後述する如く、そのような空気噴出孔56から噴出される圧縮空気が、成形キャビティ48内に収容されたパリソン32のブロー成形時に、かかるパリソン32内に吹き込まれるようになっている(図8参照)。つまり、ここでは、それら圧縮空気流通パイプ60と図示しない圧縮空気供給源とによって、気体吹込手段が、構成されている。
また、充填型42の上端面は、水平方向に拡がる平坦面からなり、そして、そのような上端面における空気噴出孔56の開口部の周辺部には、それを取り囲むようにして、周方向に連続して延びる円環状の凹所からなる筒部形成キャビティ62が、上方に向かって開口するように設けられている。この筒部形成キャビティ62は、その形状が、吸気ホース10の小径筒部14のうち、前記小径連結筒部18が内挿される、外部への開口側端部の形状に対応した形状とされている。
そして、かかる筒部形成キャビティ62内には、後述する如く、成形機ヘッド24から連続的に押し出されるパリソン32の一部が充填されることとなるが、その際、筒部形成キャビティ62内の圧力が、パリソン32にて満たされた状態の圧力となったとき、つまり、筒部形成キャビティ62内へのパリソン32の充填が完了したときに、それを検出して、充填完了信号を出力する、第一の検出手段としての圧力センサ64が、筒部形成キャビティ62の底部の一部に露出せしめられた状態で埋設されている。なお、この圧力センサ64から出力される充填完了信号は、かかる充填完了信号に基づいて、後述するように、押出機22と移動機構52とロック機構54のそれぞれの作動を制御するコントローラ66に入力されるようになっている。また、筒部形成キャビティ62が満充填となったとして、圧力センサ64にて検出されるべき圧力値は、予め実施される試験や実験等によって適宜に決定される。
さらに、充填型42の内部には、充填型42を加熱するヒータ68と、かかるヒータ68にて加熱された充填型42の温度を検出する、図示しない熱電対とが埋設されている。また、それらヒータ68と熱電対は、何れも、コントローラ66に対して電気的に接続されている。これにより、熱電対にて検出される充填型42の温度に基づいて、ヒータ68が、コントローラ66にてON・OFF制御されて、充填型42の温度が所望の値となるようにコントロールされている。
一方、移動機構52は、図2に示される如く、充填型42を支持する支持体70を有している。この支持体70は、全体として、矩形のブロック形状を呈し、その上面が、充填型42の下端面よりも一周り小さな矩形状をもって、水平方向に拡がる平坦面からなる支持面72とされている。また、かかる支持面72には、充填型42の下面に一体形成された接続筒部58と、圧縮空気流通パイプ60の接続筒部58への接続側部分とを収容する収容溝74が、支持体70の側面に開口するように設けられている。そして、このような支持体70の支持面72に、充填型42が、その接続筒部58やそれに接続される圧縮空気流通パイプ60を収容溝74内に収容せしめた状態で、載置されている。
かくして、充填型42が、支持体70に対して、接続筒部58や圧縮空気流通パイプ60に邪魔されることなく、安定的に支持されるようになっている。また、この充填型42を支持する支持体70が、成形機ヘッド24の下方において、型開きされたブロー成形用型26の左及び右分割型34,36の間又はその下方に位置せしめられており、それによって、充填型42も、かかる支持体70と同様に、型開きされたブロー成形用型26の左及び右分割型34,36の間又はその下方に位置せしめられている。
また、支持体70の下面の中心部には、長尺なボールねじ軸76が、その上端面において連結されている。つまり、長尺なボールねじ軸76が、支持体70の下面の中心部から、真っ直ぐ下方に延び出している。そして、このボールねじ軸76が、基台78上に設置されたモーターユニット80と基台78の貫通孔82とをそれぞれ貫通して、位置せしめられている。
モーターユニット80は、公知のねじ送り機構によって、ボールねじ軸76を、その軸心に沿って、上下方向に移動させ得る構造を有している。即ち、図に明示されてはいないものの、モーターユニット80にあっては、その内部に、移動不能で且つ回転可能な状態で、ボールねじ軸76に螺合されて、それを支持する雌ねじ部材と、この雌ねじ部材を回転させるサーボモータとを有している。そして、かかるサーボモータによる雌ねじ部材の回転により、ボールねじ軸76を、雌ねじ部材の回転方向と回転量に応じて、上方又は下方に所定の量だけ移動させ得る構造とされているのである。
かくして、移動機構52にあっては、図2及び図5から明らかなように、モーターユニット80によるボールねじ軸76の上下動に伴って、ボールねじ軸76が連結された支持体70とそれに支持される充填型42とを、型開きされた左分割型34と右分割型36との間において、上昇乃至は下降させ得るようになっている。
なお、ここでは、かかる支持体70の上昇乃至は下降が、充填型42の上端面を成形機ヘッド24の下端面に当接させる上死点から、支持体70の下面をモーターユニット80の上面に当接させる下死点の間の範囲内で行われるようになっている。また、かかる支持体70が上死点に位置せしめられたときには、充填型42の上端面において開口する(上方に向かって開口する)筒部形成キャビティ62が、成形機ヘッド24の下端面において開口する(下方に向かって開口する)ダイ間隙30に連通せしめられるようになっている。
一方、ロック機構54は、図2乃至図4から明らかなように、吸引手段としての4個の電磁石84,84,84,84を有している。それら各電磁石84は、何れも、円柱状の鉄芯に対してコイル巻回されて、鉄芯の軸方向の両側の端部が互いに異なる磁極とされた公知の構造を有している。そして、そのような4個の電磁石84,84,84,84が、矩形ブロック状の充填型42の四隅のそれぞれに、充填型42の上端面において開口するように設けられた、円形状の収容凹所86内に、各々、1個ずつ、収容されている。
また、電磁石84がそれぞれ収容された4個の収容凹所86,86,86,86は、それぞれの中心が、円環状の凹所からなる筒状形成キャビティ62の同心円上に位置させた状態で、充填型42に配設されている。一方、各収容凹所86内に収容された電磁石84は、軸方向の一方側の端面を、充填型42の上端面と面一となるように位置させた状態で、その他方側の端面において、図示しないボルト等にて、各収容凹所86の底面に固定されている。
これによって、4個の電磁石84,84,84,84のうち、筒部形成キャビティ62の中心を間に挟んで位置する2個ずつが、筒部形成キャビティ62の中心に関して対称的に位置せしめられ、以て、4個の電磁石84,84,84,84の全てが、軸方向一方側の端面を、充填型42の上端面において露呈させつつ、かかる上端面の四隅に均等にバランス良く配置された状態で、充填型42に固定されている。また、それら4個の電磁石84,84,84,84は、何れも、コントローラ66を介して、公知の電源装置(図示せず)に電気的に接続されている。
そして、ここでは、図5に示されるように、移動機構52の支持体70が上昇せしめられて、それに支持された充填型42が、その上面において、成形機ヘッド24の下端面に当接せしめられた状態下で、充填型42に固定された4個の電磁石84,84,84,84に対する電源装置からの給電が、コントローラ66からの作動信号に基づいて開始されるようになっている。かくして、各電磁石84において生ぜしめられる電磁力に基づいて吸引作用が発揮されて、磁性体材料からなる成形機ヘッド24が各電磁石84に吸引(吸着)され、その結果、充填型42と成形機ヘッド24とが密着せしめられて、それら充填型42と成形機ヘッド24との当接状態がロックされるようになっている。また、そのような充填型42と成形機ヘッド24との当接状態のロックは、各電磁石84への電源装置からの給電が停止されて、各電磁石84による成形機ヘッド24の吸引が解消されることにより、容易に解除されることとなる。このことから明らかなように、ここでは、4個の電磁石84,84,84,84とコントローラ66と電源装置(図示せず)とによって、ロック機構54が、構成されている。
なお、ロック機構54により、充填型42と成形機ヘッド24との当接状態がロックされている間に、充填型42の筒部形成キャビティ62内に、成形機ヘッド24のダイ間隙30から押し出されるパリソン32の一部が充填されたときには、互いに当接する充填型42と成形機ヘッド24との間に、それらを離間させる方向に作用する作用力が、筒部形成キャビティ62の内圧、つまりパリソン32の充填圧に応じた大きさにおいて、不可避的に生ぜしめられる。そこで、本実施形態では、充填型42の筒部形成キャビティ62内へのパリソン32の充填完了時(満充填時)に、パリソン32の充填圧に基づいて、充填型42と成形機ヘッド24とを離間させる方向に作用する作用力の大きさよりも、ロック機構54の4個の電磁石84,84,84,84による成形機ヘッド24の吸引力(吸着力)の大きさが、大なる値となるように設定されており、また、パリソン32が充填型42の筒部形成キャビティ62内に充填完了よりも更に過剰に充填せしめられたときに、パリソン32の充填圧に基づいて、充填型42と成形機ヘッド24とを離間させる方向に作用する作用力の大きさよりも、ロック機構54の4個の電磁石84,84,84,84による成形機ヘッド24の吸引力(吸着力)の大きさが、小なる値となるように設定されている。
これによって、パリソン32が、筒部形成キャビティ62に適正な量において充填されているときには、充填型42と成形機ヘッド24の当接状態のロック機構54によるロックが、安定的に且つ確実に維持されるようになっている。その一方、パリソン32が、筒部形成キャビティ62に過剰な量で充填されたときには、充填型42と成形機ヘッド24の当接状態のロックが、自動的に解除されるようになっている。
そして、後述するように、かかるロック機構54と押出機22と移動機構52のそれぞれ作動が、移動機構52の基台78に設置されたコントローラ66によって、相互に連動する状態で制御されるようになっているのである。
ところで、かくの如き構造とされた製造装置を用いて、目的とする吸気ホース10を製造する際には、例えば、以下に示す如き手順に従って、その作業が進められる。
すなわち、先ず、図5に示されるように、ブロー成形用型26の左分割型34と右分割型36とを型開きした状態において、移動機構52の支持体70を上昇させて、かかる支持体70に支持された充填型42を、成形機ヘッド24の下端面に当接させると共に、それら充填型42と成形機ヘッド24との当接状態を、ロック機構54にてロックする。
そして、その後、成形機ヘッド24のダイ間隙30からパリソン32を押し出して、かかるパリソン32を、ダイ間隙30に連通する充填型42の筒部形成キャビティ62内に充填し、以て、筒部形成キャビティ62内で、吸気ホース10の小径筒部14の外方への開口側端部、つまり、吸気ホース10に連結されるべき部材の小径連結筒部18が内挿される小径筒部14部分を、充填方式にて成形する。
なお、これら支持体70の上昇操作と充填型42と成形機ヘッド24との当接状態のロック操作とパリソン32の押出し操作の一連の操作は、コントローラ66の作動制御の下で、移動機構52とロック機構54と押出機22とが、以下のように連動して、作動せしめられることにより、自動的に行われる。
すなわち、移動機構52のモーターユニット80内のサーボモータが、コントローラ66の制御の下で、予め設定された回転方向に予め設定された量だけ回転せしめられることにより、かかる移動機構52の支持体70に載置された充填型42が成形機ヘッド24の下端面に当接する位置まで、支持体70が上昇作動せしめられる。そして、そのときに、コントローラ66によって、サーボモータの回転が停止せしめられることで、支持体70の上昇が停止せしめられる。また、このサーボモータの回転停止時に、コントローラ66からの作動信号により、図示しない電源装置から、4個の電磁石84,84,84,84に対して給電が開始され、それによって、成形機ヘッド24が、各電磁石84に吸引されて、充填型42と成形機ヘッド24との当接状態がロックされる。そして、それと同時に、或いはその後に、押出機22の加熱筒28内のスクリュが、コントローラ66の作動制御の下で自動的に回転せしめられて、成形機ヘッド24からのパリソン32の押出しが開始される。
その後、成形機ヘッド24から押し出されたパリソン32の筒部形成キャビティ62内へのパリソン32の充填により、筒部形成キャビティ62の内圧が上昇していく間に、かかる内圧が、パリソン32にて筒部形成キャビティ62内が満たされた状態の圧力となったとき、つまり、筒部形成キャビティ62内へのパリソン32の充填が完了したときの値となったときに、充填型42内に埋設された圧力センサ64が、それを検出して、コントローラ66に対して、充填完了信号を出力する。
そして、そのような充填完了信号が、コントローラ66に入力されると、電源装置から各電磁石84への給電が、コントローラ66にて停止せしめられて、4個の電磁石84,84,84,84による成形機ヘッド24の吸引を同時に解消する。それによって、充填型42と成形機ヘッド24との当接状態のロックを解除する。
このとき、例えば、互いに当接状態とされた充填型42と成形機ヘッド24とを、シリンダ等のピストンロッドの先端に取り付けられたクランプ部材等によりクランプすることで、それら充填型42と成形機ヘッド24の当接状態をロックし、また、そのようなクランプを解消することで、充填型42と成形機ヘッド24の当接状態のロックを解除する構造を備えた従来装置を用いる場合とは異なって、充填型42と成形機ヘッド24との当接状態のロックを解除する際に、筒部形成キャビティ62の内圧に基づいて、充填型42と成形機ヘッド24とに対して、それらを互いに離間させる方向に加えられる作用力により、充填型42や成形機ヘッド24と各電磁石84との間で、大きな機械的摩擦力が生ずることがない。また、4個の電磁石84,84,84,84への給電が同時に停止されるため、それら4個の電磁石84,84,84,84による成形機ヘッド24の吸引が、同時に解消される。
そのため、本操作において、充填型42や成形機ヘッド24と各電磁石84との間での大きな機械的摩擦力の発生が原因で、圧力センサ64からの充填完了信号がコントローラ66に入力されたのにも拘わらず、ロック機構54による充填型42と成形機ヘッド24との当接状態のロックの解除作動の開始のタイミングが遅れてしまったり、各電磁石84毎に、成形機ヘッド24の吸引解除のタイミングがバラバラとなったり、或いはかかるロックの解除作動が不可能となってしまうようなことが、全くない。
そして、引き続き、図6に示されるように、ロック機構54による充填型42と成形機ヘッド24との当接状態のロックを解除したら、成形機ヘッド24からパリソン32を連続的に押し出しつつ、移動機構52の支持体70を下降させる。そして、支持体70が、充填型42を、成形機ヘッド34から下方に離間する位置であって、且つ左分割型34の充填型収容凹所44と右分割型36の充填型収容凹所46との間の位置となる、予め設定された離間位置に配置させる位置にまで達したときに、支持体70の下降を停止させ、それと同時に、成形機ヘッド24からパリソン32の押出も停止させる。これによって、パリソン32を、ブロー成形用型26の型開きされた左分割35と右分割型36との互いに対向面間に、成形機ヘッド24から垂下し、上下方向に延出させた状態で、位置させる。
なお、本工程で実施される充填型42と成形機ヘッド24との当接状態のロック解除操作と、充填型42を成形機ヘッド24に当接させる位置から離間位置に到達させるまで継続される支持体70の下降操作と、そのような支持体70の下降操作と並行して行われるパリソン32の連続的な押出し操作も、充填型42の圧力センサ64からの充填完了信号のコントローラ66への入力に基づいて、コントローラ66による作動制御の下で、ロック機構54と移動機構52と押出機22とが互いに連動して作動せしめられることにより、自動的に行われる。
つまり、充填完了信号のコントローラ66への入力により、ロック機構54の4個の電磁石84,84,84,84による成形機ヘッド24の吸引が解消された後、移動機構52のモーターユニット80内のサーボモータが、支持体70を下降させるように自動的に回転駆動せしめられて、支持体70に支持される充填型42が離間位置に到達したときに、モーターユニット80内のサーボモータが停止せしめられる。そして、このモーターユニット80内のサーボモータが駆動している間に限って、押出機22内のスクリュも自動的に回転せしめられて、パリソン32が連続的に押出成形されるようになっているのである。これらのことから明らかなように、ここでは、第一の制御手段と第二の制御手段とが、コントローラ66にて構成されている。
また、本工程では、押出機22のスクリュの回転速度と移動機構52のモーターユニット80内のサーボモータの回転駆動速度とが、予め調整されて、コントローラ66の作動制御の基で、成形機ヘッド24からのパリソン32の押出速度と支持体70の下降速度とが、互いに同一の速度となるように設定されている。これによって、成形機ヘッド24からのパリソン32の押出速度が支持体70の下降速度よりも遅かったり或いは早かったりしたときにパリソン32に加えられる、軸方向での余分な引張力や圧縮力が、パリソン32に作用せしめられたり、或いはそのために、パリソン32の肉厚が軸方向に不均一となったりすることが、有利に回避され得るようになっている。
次に、図7に示されるように、充填型42が離間位置に位置せしめられて、パリソン32が、上下方向延びるように位置せしめられた状態下で、型開きされたフロー成形用型26の左分割型34と右分割型36とを互いに接近させて、型閉じする。そして、かかる型閉じによって左分割型34と右分割型36との間の上部側と下部側とに、成形キャビティ48と充填型収容空間50とを互いに連通する状態で形成して、成形キャビティ48内にパリソン32を収容せしめると共に、充填型収容空間50内に充填型42を収容せしめる。このとき、成形キャビティ48内に収容されたパリソン32の上端部が、左分割型34と右分割型36のそれぞれ上端部同士の間で潰されるように挟まれる。これによって、成形キャビティ48内のパリソン32の上部側が密閉される。また、パリソン32の下側開口部は、充填型42にて閉塞せしめられると共に、充填型42の中心部に設けられた空気噴出孔56に連通せしめられる。
引き続いて、図8に示されるように、圧縮空気供給源(図示せず)の作動により、かかる圧縮空気供給源から供給されて、圧縮空気流通パイプ60内を流通せしめられる圧縮空気を、充填型42の空気噴出孔56の上側開口部から噴出させて、パリソン32内に吹き込む。そして、それにより、パリソン32を膨張させて、成形キャビティ48の内面形状に対応した形状に成形する。かくして、充填型42の筒部形成キャビティ62内で充填方式にて成形された小径筒部14の外方への開口側端部を除く吸気ホース10部分、つまり、小径筒部14の内方への開口側端部と、蛇腹部12と大径筒部16とをブロー成形して、中間成形体88を得る。
その後、中間成形体88をブロー成形用型26から取り出した後、大径筒部16の先端部位をカットして、大径筒部16を外方に開口せしめ、以て、目的とする図1に示される如き構造を有する吸気ホース10を得るのである。
このように、本実施形態の吸気ホース10の製造装置にあっては、先ず、充填型42を用いた充填方式によって、吸気ホース10に連結されるべき部材の小径連結筒部18が内挿される小径筒部14部分が、充填型42の筒部形成キャビティ62内で成形され、次いで、ブロー成形方式によって、かかる小径筒部14部分を除いた吸気ホース10の全体が、成形キャビティ48内でブロー成形されるようになっている。そのため、小径連結筒部18が内挿される小径筒部14部分が、高い寸法精度をもって、筒部形成キャビティ62に対応した所望の形状において確実に形成され得る。そして、それ故に、かかる小径筒部14部分を含めた吸気ホース10の全体をブロー成形によって成形する場合とは異なって、ブロー成形後に、小径筒部14に対する内径切削加工等、小径筒部14の寸法精度を高めるための後加工を行う必要が、有利に解消され得る。
そして、この本実施形態装置では、特に、ロック機構54が有する4個の電磁石84,84,84,84への給電によって、充填型42と成形機ヘッド24との当接状態がロックされる一方、各電磁石84への給電の停止によって、充填型42と成形機ヘッド24との当接状態のロックが解除されるようになっている。そのため、前述せるように、互いに当接せしめられた充填型42と成形機ヘッド24とをクランプすることによって、それら充填型42と成形機ヘッド24との当接状態をロックするようにした従来装置とは異なって、充填型42や成形機ヘッド24と各電磁石84との間での大きな機械的摩擦力の発生することがない。それ故、そのような大きな機械的摩擦力の発生が原因で、圧力センサ64からの充填完了信号がコントローラ66に入力されたにも拘わらず、ロック機構54による充填型42と成形機ヘッド24との当接状態のロックの解除作動の開始のタイミングが遅れてしまったり、各電磁石84毎に、成形機ヘッド24の吸引解除のタイミングがバラバラとなったり、或いはかかるロックの解除作動が不可能となってしまうようなことが、全くない。
このため、かかる本実施形態の製造装置にあっては、パリソン32の充填圧の大きさに何等影響を受けることなく、充填型42の筒部形成キャビティ62内へのパリソン32の充填完了と同時に、充填型42が、傾きのない安定した姿勢で、移動機構52により移動せしめられ、以て、かかる充填型42の移動と共に、成形機ヘッド24のダイ間隙30から押し出されるパリソン32が、駄肉のない真っ直ぐな形状をもって、安定的に成形され得るようになる。
しかも、本実施形態においては、ロック機構54が、充填型42に固定された4個の電磁石84,84,84,84と、電源装置と、電源装置から各電磁石84への給電を制御するコントローラ66とを含んで構成されているだけであるところから、例えば、従来装置のロック機構が有するシリンダやクランプ部材、更には、シリンダを作動させるための油圧機構等の高価で且つ複雑な構造の装置等が何等用いられておらず、それによって、ロック機構、ひいては製造装置全体の構造の簡略化と低コスト化とが、有利に図られ得ている。
従って、かくの如き本実施形態の製造装置を用いれば、高い寸法精度が必要とされる小径筒部14部分を有する吸気ホース10のブロー成形に共されるパリソン32を、可及的に低いコストで、健全な形状をもって成形することが出来、それによって、目的とする吸気ホース10を、安定した品質をもって、経済的に有利に製造することが可能となるのである。
また、本実施形態では、4個の電磁石84,84,84,84が、充填型42の上端面において露呈させつつ、かかる上端面の四隅に均等にバランス良く配置された状態で、充填型42に固定されているところから、給電せしめられた4個の電磁石84,84,84,84にて、充填型42と成形機ヘッド24とが、それぞれの当接面同士の四隅において均等な力で密着せしめられて、それら充填型42と成形機ヘッド24との当接状態のロックが安定的に維持され得る。そして、それによって、パリソン32が、より健全な形状をもって有利に成形され得ることとなる。
さらに、本実施形態装置は、従来のブロー成形装置にも用いられるものと同様な構造を有する押出機22及び成形機ヘッド24とを有し、そして、それらに加えて、圧縮空気を吹出可能とされた充填型42と、充填型42が収容可能なブロー成形用型26と、移動機構52とロック機構54とを含んで構成されている。
つまり、本実施形態の製造装置においては、既存のブロー成形装置を構成する押出機22や成形機ヘッド24が、そのままの構造で利用されている。それ故、ブロー成形後の内径切削が不要な中空樹脂成形品を製造可能ではあるものの、パリソンが下側から上側に向かって押し出される構造を有するために、既存のブロー成形装置の設備が利用不可能な従来の内径切削レスタイプの中空樹脂成形品の製造装置に比して、押出機22を成形機ヘッド24を利用している分だけ、設備コストが効果的に低く抑えられ得る。また、ブロー成形用型26も、左分割型34と右分割型36とに、キャビティ形成凹所38,40に加えて、単なる凹部たる充填型収容凹所44,46が設けられてなるだけの簡略な構造を有するものであり、それによっても、キャビティ形成凹所のみを有する従来のブロー成形用型に比しての型制作費の上昇が、可及的に抑制され得る。
これによっても、本実施形態の製造装置にあっては、他部材(小径連結筒部18)が内挿される小径筒部14に対するブロー成形後の内径切削が不要とされた、目的とする吸気ホース10が、より低い製造コストで、極めて有利に製造され得るのである。
また、本実施形態においては、ロック機構54の4個の電磁石84,84,84,84による成形機ヘッド24の吸引力(吸着力)の大きさが所定の値に設定されていることで、パリソン32が、筒部形成キャビティ62に適正な量において充填されているときには、充填型42と成形機ヘッド24の当接状態のロック機構54によるロックが、安定的に且つ確実に維持される一方、パリソン32が、筒部形成キャビティ62に過剰な量で充填されたときには、充填型42と成形機ヘッド24の当接状態のロックが、自動的に解除されるようになっている。
これによって、本実施形態では、例えば、何等かの障害の発生により、コントローラ66による各電磁石84への適性な給電制御が困難乃至は不能となった場合にも、パリソン32の筒部形成キャビティ62内への満充填後に、充填型42と成形機ヘッド24の当接状態のロックが自動的に解除されて、パリソン32の筒部形成キャビティ62内への過充填の発生が未然に防止され得る。そして、その結果として、健全なパリソン32が、より安定的に成形され得ると共に、パリソン32の筒部形成キャビティ62内への過充填の発生に起因した移動機構52やロック機構54等の構成部材の故障等が、効果的に防止され得る。
さらに、本実施形態では、支持体70が、充填型42を成形機ヘッド24に当接させる位置まで上昇せしめられたときに、かかる支持体70の上昇が自動的に停止されるように、移動機構52の作動が、コントローラ66にて制御されると共に、そのような支持体70の停止状態下で、ロック機構52の4個の電磁石84,84,84,84への給電が自動的に開始されて、充填型42と成形機ヘッド24の当接状態がロックされ、そして、それと同時に、或いはその後に、押出機22のスクリュが、コントローラ66にて自動的に回転せしめられて、充填型42の筒部形成キャビティ62内に、パリソン32が充填されるようになっているところから、目的とする吸気ホース10の小径筒部14の形成作業、ひいては吸気ホース10の製造作業の効率化が、有利に図られ得る。
加えて、本実施形態においては、コントローラ66の作動制御の下で、充填型42に埋設された圧力センサ64から出力される充填完了信号に基づいて、ロック機構52による充填型42と成形機ヘッド24との当接状態のロックの解除と、充填型42を離間位置にまで下降させる支持体70の下降と、かかる支持体70の下降速度に同期した速度での成形機ヘッド24からのパリソン32の押出しとが、全て自動的に行われるようになっており、これによっても、目的とする吸気ホース10の製造作業の効率化が、極めて有利に実現され得るのである。
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
例えば、充填型42への電磁石84の配設個数や配設位置等は、例示のものに何等限定されるものではなく、充填型42の大きさや形状等に応じて、適宜に変更され得るものである。
また、電磁石84を、充填型42に代えて、成形機ヘッド24に固定して、この成形機ヘッド24に固定された電磁石84にて、磁性体材料からなる充填型42を吸引することにより、それら充填型42と成形機ヘッド24との当接状態をロックするように為すことも可能である。更には、充填型42と成形機ヘッド24の両方に、電磁石84を固定しても良い。その際には、充填型42と成形機ヘッド24の材質が、磁性体材料に限られずに自由に選択可能となる。
更にまた、吸引手段は、例示の電磁石84に、何等限定されるものではなく、充填型と押出ダイのうちの何れか一方に固定されて、給電により生ぜしめられる電磁力に基づいて吸引作用を発揮し、それら充填型と押出ダイのうちの何れか他方を吸引することにより、充填型と押出ダイとの当接状態をロックし得るものであれば、電磁石以外の装置や部材が、吸引手段として、適宜に用いられ得る。
また、移動機構52の構造は、電動モータを駆動源とするねじ送り機構を利用した例示の構造に何等限定されるものではなく、その他、電動モータを駆動源とする、ラックとピニオンを含む公知のギヤ機構やリンク機構等を利用した構造や、油圧シリンダや空気圧シリンダ等をアクチュエータとして利用した構造等が、適宜に採用され得る。
さらに、気体吹込手段も、従来と同様に、ブロー成形用型26を貫通して、パリソン32の内部に差し込まれる圧縮空気注入用ノズル(針体)等を利用して、パリソン32内に圧縮空気等を吹き込む構造のものを用いることも、勿論可能である。
更にまた、充填型42の筒部形成キャビティ62内へのパリソン32の充填完了を検出する第一の検出手段として、例示の圧力センサ64に代えて、或いはそれに加えて、例えば、成形機ヘッド24のダイ間隙30や樹脂流路の内圧を検出する圧力センサや、筒部形成キャビティ62内に充填されるパリソン32(樹脂材料)の重量を検出するセンサ、成形機ヘッド24や充填型42の温度を検出するセンサ、或いは押出機22の加熱筒28内のスクリュの回転量を検出するセンサ等を利用することが出来る。また、そのようなセンサ等を用いることなく、例えば、コントローラによる押出機22のスクリュの回転数の制御のみによって、筒部形成キャビティ62内へのパリソン32の充填完了を検出するように為すことも出来る。
また、前記実施形態では、充填型42が、予め設定された離間位置に到達したときに、移動機構52の支持体70の下降が、コントローラ66にて停止せしめられるようになっていたが、例えば、充填型42が離間位置に到達したときに、かかる充填型42に係合し、支持体70から離脱させた状態で保持する保持部を、ブロー成形用型26の左及び右分割型34,36に設け、それによって、充填型42が離間位置に到達した時点で、支持体70の移動を停止させることなく、充填型42の移動を停止させるようにしても良い。このような構造によれば、充填型42の移動を離間位置で停止させるために、支持体70の移動位置乃至は移動量を厳密に管理する必要が解消され、以て、移動機構52、ひいては製造装置全体の構造の簡略化が、有利に図られ得ることとなる。
さらに、充填型42が、予め設定された離間位置に到達したときに、それを検出するセンサを設け、このセンサによる検出信号に基づいて、移動機構52による充填型42の移動を停止するように為すことも出来る。
また、前記実施形態では、充填型42が、押出ダイを含む成形機ヘッド24との当接状態から下方に移動せしめられると同時に、パリソン32が、成形機ヘッド24のダイ間隙30から下方に押し出されるようになっていたが、例えば、充填型42を、押出ダイを含む成形機ヘッド24との当接状態から上方に移動させると同時に、パリソン32を、成形機ヘッド24のダイ間隙30から上方に押し出すような構造も、採用可能である。
加えて、前記実施形態では、本発明を、自動車の吸気ホースの製造装置と製造方法に適用したものの具体例を示したが、本発明は、かかる吸気ホース以外の、外方に開口する筒部が端部部位に設けられた中空樹脂成形品の製造装置と製造方法の何れに対しても、有利に適用されるものであることは、勿論である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。