JP5207221B2 - ポリマー粒子の製造方法、ポリマー粒子、艶消し剤、樹脂組成物、塗料組成物、成形体、及び塗膜 - Google Patents
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しかしながら、乳化重合では0.5μm以上の粒子径のポリマーを製造することは困難であり、前記用途には適さない。シード重合では前記用途に適した数μmの粒子径のポリマーを製造することができるが、操作が煩雑であるため製造コストが高くなるという課題を有する。分散重合はアルコール等の溶剤を用いるため、製造コストが高くなるという課題を有する。
ポリマー粒子中に凝集粒子が存在すれば、艶消し剤、光拡散剤、耐ブロッキング剤等として樹脂に添加した際、ポリマー粒子の本来の機能を充分に発揮できない。また、ポリマー粒子中に凝集粒子が多数存在すると、ポリマー粒子ラテックスの移送が困難になるという製造上の問題が生じる。
しかしながら、重合性官能基を持たないアニオン系界面活性剤を追加すると、攪拌や移送によるポリマー粒子ラテックスの泡立ちが促進され、泡立ちと共に凝集粒子が発生するという問題点があった。尚、特許文献1には、追加する界面活性剤として反応性の界面活性剤を用いることを示唆する記載はない。
即ち、本発明のポリマー粒子の製造方法は、ビニル単量体、該単量体に可溶な重合開始剤、及び第一の界面活性剤を水性媒体に加え、乳化した後に重合を開始させ、重合開始後に第二の界面活性剤を追加してポリマー粒子を製造する方法において、第二の界面活性剤として反応性界面活性剤を用いるものである。
ここで、第二の界面活性剤は、ビニル単量体の重合転化率が2〜50%の間に追加することが好ましい。
本発明の艶消し剤は、前記ポリマー粒子から得られるものである。
本発明の樹脂組成物は、前記ポリマー粒子を樹脂に配合して得られるものである。
本発明の塗料組成物は、前記ポリマー粒子を塗料に配合して得られるものである。
本発明の成形体は、前記樹脂組成物を成形して得られるものである。
本発明の塗膜は、前記塗料組成物を塗布して得られるものである。
本発明のポリマー粒子は凝集粒子がなく、樹脂用の艶消し剤、光拡散剤等としての使用に適している。
本発明の艶消し剤は、樹脂又は塗料に対して艶消し効果を付与することができる。
本発明の塗料組成物によれば、艶消し外観に優れた塗膜を得ることができる。
本発明のポリマー粒子の製造方法は、ビニル単量体、該単量体に可溶な重合開始剤、及び第一の界面活性剤を水性媒体に加え、乳化した後に重合を開始させ、重合開始後に第二の界面活性剤を追加する方法である。
ビニル単量体と該単量体に可溶な重合開始剤を水性媒体中に乳化し、ビニル単量体が乳化分散した状態で重合を行なう製造方法であり、微細懸濁重合であることが好ましい。
非架橋性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル単量体;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基を有するビニル単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有ビニル単量体等が挙げられる。これらのビニル単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、凝集粒子の発生を抑制できるため、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートのような疎水性の高い単量体が好ましい。
架橋性単量体の含有量が0.5質量%以上であると、凝集粒子の発生が少なくなり、ポリマー粒子を艶消し剤として使用した際の艶消し効果や、光拡散剤として使用した際の光拡散効果が高くなり好ましい。40質量%以下であると、重合度が上がりやすく、残存二重結合の増加による耐熱性の低下がなく、重合時の除熱が容易であることから好ましい。
重合開始剤としては、例えば、アゾニトリル、アゾアミド、環状アゾアミジン、アゾアミジン、マクロアゾ化合物等のアゾ系ラジカル重合開始剤;ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等の過酸化物系ラジカル重合開始剤等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の使用量が0.01質量部以上であると、重合開始剤が充分に機能し、重合速度が速く、未反応のビニル単量体が少なくなるため好ましい。1.0質量部以下であると、急激な重合発熱がないことから好ましい。
非反応性界面活性剤の中では、選択の幅が広いことから、アニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキル燐酸ナトリウム等が挙げられる。
反応性界面活性剤の好ましい例としては、ラテムルS−180、ラテムルPD−104、ラテムルPD−420、ラテムルPD−430(以上、(株)花王製);サーフマーFP−80、サーフマーFP−100、サーフマーFP−120、サーフマーFP−160、サーフマーFP−200、サーフマーFP−125(以上、東邦化学工業(株)製);アデカリアソープSE−10N、アデカリアソープSE−20N、アデカリアソープNE−10、アデカリアソープNE−20、アデカリアソープNE−30、アデカリアソープNE−40、アデカリアソープER−20、アデカリアソープER−30、アデカリアソープER−40(以上、(株)ADEKA製);AntoxMS−60、AntoxMS−2N(以上、日本乳化剤(株)製):エレミノールJS−2、エレミノールRS−30(以上、三洋化成工業(株)製)等が挙げられる。
第一の界面活性剤の使用量は、ビニル単量体100質量部に対して、0.01〜5.0質量部が好ましく、0.05〜3.0質量部がより好ましい。第一の界面活性剤の使用量が0.01質量部以上であると、ポリマー粒子ラテックスの安定性が良好であり、攪拌翼等への凝集物の付着が防止できるため好ましい。5.0質量部以下であると、ポリマー粒子ラテックスの泡立ちが抑制され、乳化重合の併発を防止できるため好ましい。
水性媒体の使用量は、ビニル単量体100質量部に対して、50〜1000質量部が好ましい。水性媒体の使用量が50質量部以上であると、重合時の発熱が抑えられ、重合発熱の除熱が良好となるため好ましい。1000質量部以下であると、ポリマー粒子の生産性が高く好ましい。
乳化処理により、ビニル単量体と重合開始剤の混合物は、粒子径0.5〜100μmの微細な液滴として水性媒体に乳化分散され、第一の界面活性剤によって乳化分散状態が安定化される。
重合操作は、微細懸濁重合として公知の方法を用いて行なうことが可能である。
第二の界面活性剤に用いる反応性界面活性剤としては、第一の界面活性剤として例示した反応性界面活性剤を用いることができる。
第二の界面活性剤に用いる非反応性界面活性剤としては、第一の界面活性剤として例示した非反応性界面活性剤を用いることができる。
第二の界面活性剤の追加は、反応系内に一括投入しても、一定時間をかけて滴下により投入してもよい。また、必要に応じて水で希釈した水溶液として投入してもよい。
ポリマー粒子の体積平均粒子径は、0.5〜100μmが好ましく、1.0〜50μmがより好ましい。
本発明のポリマー粒子は、樹脂又は塗料用の艶消し剤、光拡散剤、樹脂フィルム用耐ブロッキング剤、化粧品用充填剤、滑り性付与剤等として用いることができる。
1)ポリマー粒子ラテックスを2ml採取し、質量を測定した。次いで、重合禁止剤p−メトキシフェノールを0.2mg添加して冷却した。
2)重合禁止剤を添加したラテックスを、105℃の熱風乾燥機内で5時間加熱したときの残分の質量を測定した。
3)以下の式により、重合転化率を算出した。
重合転化率(%)=[(加熱残分の質量/採取したラテックスの質量)/(ビニル単量体の仕込み量/重合仕込み総量)]×100
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−910:(株)堀場製作所製)を用いて、ポリマー粒子の粒子径を測定した。
ポリマー粒子の分散媒にはイオン交換水を用い、ポリマー粒子の屈折率は1.12とした。
本明細書中における粒子径は、本測定による体積平均換算でのメジアン径を用いて表した。
重合後のポリマー粒子ラテックスに浮遊する凝集物の質量と、攪拌翼から剥がし取った凝集物の質量と、ビニル単量体の仕込み量から、以下の式により凝集物の割合を算出した。
凝集物の割合(%)=(凝集物の質量/ビニル単量体の仕込み量)×100
凝集物の割合の評価基準を、以下に示す。
◎:凝集物の割合が1%未満
○:凝集物の割合が1%以上、2%未満
△:凝集物の割合が2%以上、8%未満
×:凝集物の割合が8%以上
重合中にラテックスの表面に発生する泡の量を、目視により評価した。
泡立ちの評価基準を、以下に示す。
○:攪拌棒の周りで少量の泡が発生している状態
×:ラテックスの表面全体に多量の泡が発生している状態
重合後、ポリマー粒子ラテックスを#300メッシュ布で濾過し、評価した。
濾過性の評価基準を、以下に示す。
○:#300メッシュ布での濾過が速やかなもの
△:#300メッシュ布での濾過がゆっくりなもの
×:#300メッシュ布での濾過が困難なもの
温度計、攪拌棒、冷却管、窒素導入管を装備した2リットルの反応容器に、イオン交換水450.0部を入れ、反応容器内を窒素置換した。
下記の単量体混合物を、ミキサー(ウルトラタラックスT-25:IKA製)を用いて11,000rpmで1分間乳化処理し、乳化分散液を得た。ここで、第一の界面活性剤の使用量はビニル単量体100部に対して0.4部である。
単量体混合物:
i−ブチルメタクリレート 437.0部
n−ブチルアクリレート 8.8部
エチレングリコールジメタクリレート 54.2部
パーオクタ−O(日本油脂(株)製) 1.0部
フォスファノールRS−610NA 2.0部
(第一の界面活性剤 非反応性界面活性剤:東邦化学工業(株)製)
イオン交換水 500.0部
ビニル単量体の重合転化率が0.12%の時点で、下記の界面活性剤混合物を反応容器内に追加した。ここで、第二の界面活性剤の使用量はビニル単量体100部に対して0.2部である。
界面活性剤混合物:
ラテムルS−180 1.0部
(第二の界面活性剤 反応性界面活性剤:(株)花王製)
FSアンチフォームEPK 2.5部
(消泡剤:東レ・ダウコーニング(株)製)
イオン交換水 43.5部
界面活性剤混合物の追加を、表1に示した重合転化率の時点に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリマー粒子を製造した。得られたポリマー粒子の体積平均粒子径、凝集物の割合、重合中の泡立ち、濾過性は表1に示した。
単量体混合物の組成を下記の内容に変更し、乳化処理の条件を24,000rpmで1分間に変更し、界面活性剤混合物の追加を、重合転化率11.1%の時点に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリマー粒子を製造した。得られたポリマー粒子の体積平均粒子径、凝集物の割合、重合中の泡立ち、濾過性は表1に示した。
単量体混合物:
i−ブチルメタクリレート 318.8部
メチルメタクリレート 112.3部
n−ブチルアクリレート 9.6部
エチレングリコールジメタクリレート 59.3部
パーオクタ−O 1.0部
フォスファノールRS−610NA 2.0部
イオン交換水 500.0部
第二の界面活性剤を、非反応性界面活性剤であるフォスファノールRS−610NAとし、界面活性剤混合物の追加を、重合転化率32.5%の時点に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリマー粒子を製造した。得られたポリマー粒子の体積平均粒子径、凝集物の割合、重合中の泡立ち、濾過性は表1に示した。
第一の界面活性剤の組成を、非反応性界面活性剤であるフォスファノールRS−610NAと反応性界面活性剤であるラテムルS−180との併用(比率は表2に記載:合計2.0部)とし、界面活性剤混合物の追加を、重合転化率37.5%の時点に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリマー粒子を製造した。得られたポリマー粒子の体積平均粒子径、凝集物の割合、重合中の泡立ち、濾過性は表2に示した。
第一の界面活性剤の組成を、表2に記載した内容(合計:2.0部)とし、単量体混合物の乳化分散液の攪拌を350rpmから150rpmとし、界面活性剤混合物の追加を、表2に示した重合転化率の時点に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリマー粒子を製造した。得られたポリマー粒子の体積平均粒子径、凝集物の割合、重合中の泡立ち、濾過性は表2に示した。
界面活性剤混合物の追加を行なわず、それ以外は実施例10と同様にしてポリマー粒子の製造を試みた。しかし、重合発熱のピークを迎える頃に凝集固化した。
実施例1〜10及び比較例1で製造したポリマー粒子ラテックスを、#300メッシュ布で濾過し、次いで、噴霧乾燥を行ないポリマー粒子として回収した。
噴霧乾燥は、熱風入口温度180℃、熱風出口温度75℃の運転条件で行なった。
ポリアセタール樹脂(ジュラコンM90−34:ポリプラスチックス(株)製)100部に対して、回収したポリマー粒子を10部配合し、二軸押出機を用いて200℃で溶融混練し、樹脂組成物のペレットを得た。
射出成形機を用いて樹脂組成物のペレットを200℃で成形し、縦80mm、横50mm、厚さ3mmの成形体を得た。
成形体外観の評価基準を以下に示す。評価結果を表1及び表2に示す。
○:均一の艶消し外観を有する
×:艶消しが不十分であり、外観が不均一
水溶性塗料(水溶性つやだしニス:カンペハピオ(株)製)の固形分100部に対して、回収したポリマー粒子を5部配合し、ミキサー(泡とり練太郎:シンキー(株)製)で180秒間混合した。塗料組成物を電着板にへらで塗り、室温で30分間、次いで105℃のオーブンで30分間乾燥し、塗膜を得た。
<塗膜2の作成>
油溶性塗料(クリヤーラッカー:カンペハピオ(株)製)の固形分100部に対して、回収したポリマー粒子を5部配合し、塗膜1と同様にして塗膜を得た。
塗膜外観の評価基準を以下に示す。評価結果を表1及び表2に示す。
○:均一の艶消し外観を有する
×:艶消しが不十分であり、外観が不均一
Claims (9)
- ビニル単量体、該単量体に可溶な重合開始剤、及び第一の界面活性剤を水性媒体に加え、乳化した後に重合を開始させ微細懸濁重合を行い、重合開始後に第二の界面活性剤を追加して体積平均粒子径0.5〜100μmのポリマー粒子を製造する方法において、
第二の界面活性剤として反応性界面活性剤を用いることを特徴とするポリマー粒子の製造方法。 - ビニル単量体の重合転化率が2〜50%の間に第二の界面活性剤を追加することを特徴とする請求項1記載のポリマー粒子の製造方法。
- 請求項1又は2記載のポリマー粒子の製造方法により得られるポリマー粒子を用いて得られる艶消し剤。
- 請求項1又は2記載のポリマー粒子の製造方法により得られるポリマー粒子を用いて得られる光拡散剤。
- 請求項1又は2記載のポリマー粒子の製造方法により得られるポリマー粒子を用いて得られる樹脂フィルム用耐ブロッキング剤。
- 請求項1又は2記載のポリマー粒子の製造方法により得られるポリマー粒子を用いて得られる化粧品用充填剤。
- 請求項1又は2記載のポリマー粒子の製造方法により得られるポリマー粒子を用いて得られる滑り性付与剤。
- 請求項1又は2記載のポリマー粒子の製造方法により得られるポリマー粒子を塗料に配合して得られる塗料組成物。
- 請求項8記載の塗料組成物を塗布して得られる塗膜。
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