本発明の製造方法とは、体積平均粒子径が10nm以上、10μm以下である重合体微粒子の製造方法であって、ビニル系単量体を含む単量体成分と該単量体成分に可溶な重合開始剤を含む単量体組成物と、分散安定剤を含む乳化水との混合液を、加圧下、長さ30cm以上のキャピラリーに通して単量体組成物の液滴を小粒子径化して懸濁させる懸濁工程、及び
上記懸濁液を加熱して単量体成分を重合する工程を含むところに特徴を有する。
以下、各工程について説明する。
懸濁工程では、ビニル系単量体を含む単量体成分と該単量体成分に可溶な重合開始剤を含む単量体組成物と、分散安定剤を含む乳化水との混合液を、加圧下、長さ30cm以上のキャピラリーに通して単量体組成物の液滴を小粒子径化し、混合液中に懸濁させる。
単量体成分としては、1分子中に少なくとも1つのビニル基を有するビニル系単量体が挙げられる。ビニル系単量体としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート系単量体、多官能(メタ)アクリレート系単量体、スチレン系単量体、及びマレイミド系単量体が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びこれらの混合物を示し、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの混合物を示すものとする。
単官能(メタ)アクリレート系単量体とは、分子中に一つの(メタ)アクリロイル基を有し、該(メタ)アクリロイル基の他に重合性基を有さない単量体である。ここで「重合性基」とは、他のモノマーと結合を形成し得る基であればよく、例えばビニル基の如きラジカル重合性基のほか、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基等のエステル結合を形成可能な縮合性反応基も包含する。なお、カルボキシル基、ヒドロキシル基等は反応(結合)相手となる基が他のモノマーに存在する場合にのみ重合性基として機能する。
単官能(メタ)アクリレート系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロウンデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類が挙げられる。これらの単官能(メタ)アクリレート系単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でもアルキル(メタ)アクリレート類が好ましく、特にメチル(メタ)アクリレートが好適である。
多官能(メタ)アクリレート系単量体とは、分子中に一つの(メタ)アクリロイル基を有し、該(メタ)アクリロイル基の他に一つ以上の重合性基を有する単量体である。分子中に2以上の重合性基を有する単量体成分を用いることで、分子間に架橋構造を有する重合体微粒子が得られる。
多官能(メタ)アクリレート系単量体としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート類;が挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレート系単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2以上有するものが好ましく、より好ましくは1分子中に(メタ)アクリロイル基を3以上有するものが好ましい。また、多官能(メタ)アクリレート系単量体の中でも、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート類が好ましく、さらに好ましくはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等のアルキルスチレン類;p−フェニルスチレン等の芳香環含有スチレン類;o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のハロゲン含有スチレン類;p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシル基含有スチレン類;p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類;等が挙げられる。これらのスチレン系単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スチレンが好適である。
マレイミド系単量体の具体例としては、例えば、マレイミド;N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド等のN−アルキルマレイミド;N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(3−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−ブロモフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリブロモ)マレイミド、N−(2−ニトロフェニル)マレイミド、N−(3−ニトロフェニル)マレイミド、N−(4−ニトロフェニル)マレイミド、N−(2,4−ジニトロフェニル)マレイミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(4−フェニルフェニル)マレイミド、N−ナフチルマレイミド等のN−アリールマレイミド;N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(3−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−ブチルフェニル)マレイミド、N−(3−ブチルフェニル)マレイミド、N−(4−ブチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド等のN−アルキルアリールマレイミド;N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(3−メトキシフェニル)マレイミド、N−(4−メトキシフェニル)マレイミド、N−(4−エトキシフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシ−4−クロロフェニル)マレイミド等のアルコキシアリールマレイミド;N−(4−フェニルオキシフェニル)マレイミド等のアリールオキシアリールマレイミド;ベンジルマレイミド等のアラルキルマレイミド;等が挙げられる。これらのマレイミド系単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、N−アルキルマレイミド(好ましくはN−環状アルキルマレイミド)、N−アリールマレイミドが好ましく、特にN−シクロへキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドが好適である。
また、上述した多官能(メタ)アクリレート系単量体とは異なる、2以上の重合性基を有する所謂架橋剤もビニル系単量体として使用することができる。多官能(メタ)アクリレート系単量体以外の架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、および、これらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸;ジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル類;エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル等の多官能アリルエーテル類などが挙げられる。架橋剤としては、これらを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。もちろん上記多官能(メタ)アクリレート系単量体も架橋剤として好ましく使用できる。
架橋剤の含有量は、単量体成分100質量部中0.1質量部〜95質量部が好ましく、1質量部〜50質量部がより好ましく、さらに好ましくは2質量部〜20質量部である。
ビニル基を有する化合物であれば、上述したビニル系単量体以外のビニル系単量体を使用してもよい。斯かる他のビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、ポリブタジエンおよび特公昭57−56507号公報、特開昭59−221304号公報、特開昭59−221305号公報、特開昭59−221306号公報、特開昭59−221307号公報等に記載される反応性重合体等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
各単量体の配合量は、重合体微粒子の用途に応じて所望の特性が得られるように適宜決定すればよい。
重合開始剤としては、通常のラジカル重合に用いられるものの内、上記単量体成分に可溶な重合開始剤を使用できる。例えば、過酸化物系開始剤や、アゾ系開始剤等が使用可能である。
過酸化物系開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メチキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
これらの重合開始剤の使用量は、単量体成分の合計100質量部に対して、0.01質量部〜20質量部とするのが好ましく、より好ましくは0.1質量部〜10質量部、さらに好ましくは0.5質量部〜2.0質量部である。
単量体組成物は、上述した構成成分に加えて、例えば、顔料、可塑剤、重合安定剤、蛍光増白剤、磁性粉、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤、分散安定剤等の添加剤、多孔質化剤、異形化剤を含有していてもよい。添加剤の使用量は、例えば単量体成分100質量部に対して0.05質量部以上、100.0質量部以下とするのが好ましい。
上記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等のラジカル捕捉作用を有するもの(ラジカル捕捉剤);リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等の過酸化物を分解する作用を有するもの(過酸化物分解剤);ラクトン系酸化防止剤、ヒドロキシアミン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤等の他の酸化防止剤;等が挙げられる。中でも、ラジカル捕捉剤が好ましく、ヒンダードフェノール系酸化防止剤がより好ましい。酸化防止剤の使用により、重合体微粒子の耐熱性を向上させることができ、また高温に加熱した場合でも、重合体微粒子の黄変を抑制することができる。なお酸化防止剤は、単量体組成物に添加した状態のまま重合体微粒子に含まれていてもよく、あるいは、分解や反応の結果物として、すなわち酸化防止剤に由来する成分として重合体微粒子に存在していてもよい。
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、フェノールのオルト位にtert−ブチル基が置換した構造を有する。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−1−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ,C7−C9側鎖アルキルエステル、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリル)トリ−p−クレゾール、カルシウムジエチルビス[[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート]、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、N−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルベンゼンとの反応生成物、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、オクタデシル−3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2’,3−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]プロピオノヒドラジド等;が挙げられる。
前記ヒンダードアミン系酸化防止剤は、2級又は3級アミノ基の窒素原子に結合する2つのメチレン基に、メチル基が2つずつ置換している構造を有する。ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、具体的には、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−メチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1−ウンデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよびその縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイン}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等が挙げられる。
前記リン系酸化防止剤としては、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、トリス[2−[[2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン−6−イル]オキシ]エチル]アミン、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフォナイト等;が挙げられる。
また、前記硫黄系酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、ジエチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジプロピル−3,3’−チオジプロピオネート、ジブチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジヘキシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジオクチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジドデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジトリデシル−3,3−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジオクタデシル−3,3’−チオジプロピオネートジメチル−3,3’−チオジプロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−プロピルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ブチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ヘキシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−オクチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−トリデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−テトラデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ヘキサデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−フェニルチオプロピオネート)等が挙げられる。
ラクトン系酸化防止剤としては、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンの反応生成物(CAS No.181314−48−7)等が挙げられ、ヒドロキシアミン系酸化防止剤としては、還元型牛脂を原料としたアルキルアミンの酸化生成物等が挙げられ、ビタミンE系酸化防止剤としては、3,4−ジヒドロ−2,5,7,8−テトラメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)−2H−ベンゾピラン−6−オール等が挙げられる。
酸化防止剤の使用量は、単量体成分100質量部に対して、0.01質量部以上とするのが好ましく、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
多孔質化剤としては、トルエン、イソオクタン、ヘキサン、デカン、メチルイソブチルケトン等のような単量体とは混和するが、その重合後のポリマーとは混和しない溶剤や、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム等の強酸によって溶解する無機物等が挙げられる。単量体組成物に多孔質化剤を添加することで、非真球状の重合体微粒子が得られる。多孔質化剤の使用量は単量体成分100質量部に対して、5質量部以上とするのが好ましく、より好ましくは10質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。
異形化剤としてはマクロモノマー等が挙げられる。単量体組成物に添加したマクロモノマーが上記単量体成分の重合体と相分離を起こし、その結果、重合体微粒子が異形化される。異形化剤の使用量は単量体成分100質量部に対して、5質量部以上とするのが好ましく、より好ましくは10質量部以上であり、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。
単量体組成物の25℃における粘度は0.1mPa・s以上、10000mPa・s以下であるのが好ましい。より好ましくは0.3mPa・s以上、1000mPa・s以下、さらに好ましくは0.5mPa・s以上、50mPa・s以下である。単量体組成物の粘度が高すぎると、キャピラリー内で混合液に十分なせん断がかからず、粒子径が大きくなる傾向や、粒度分布が広くなる虞があり、一方単量体組成物の粘度は低すぎても安定な懸濁液が得られ難い場合がある。単量体組成物の粘度が上記範囲内であればキャピラリー内で効率よく混合液にせん断力をかけることができ、液滴径を小粒子径化させ易く、また、粒子径が均質な液滴が得られる。また、キャピラリーに通して得られた懸濁液を安定に維持することができる。
乳化水に含まれる分散安定剤は、重合反応を安定に進めるために用いられる。また、混合液に分散安定剤を存在させることで、懸濁工程において単量体組成物の液滴の粒子径を制御し、安定化させることが容易になる。具体的な分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、トラガント、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子;アニオン性界面活性剤;カチオン性界面活性剤;両性イオン性界面活性剤;ノニオン性界面活性剤、その他アルギン酸塩、ゼイン、カゼイン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、タルク、粘土、ケイソウ土、ベントナイト、水酸化チタン、水酸化トリウム、金属酸化物粉末等が挙げられる。これらの中でもアニオン性界面活性剤が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等がある。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。分散安定剤は1種を単独で使用してもよく、或いは2種以上の種類の異なる分散安定剤を組合せて使用してもよい。
分散安定剤の使用量は、所望する重合体微粒子のサイズ(粒子径)に応じて適宜決定すればよいが、例えば単量体成分100質量部に対して0.01質量部以上であるのが好ましく、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
上記分散安定剤と水とを混合することで乳化水を調製する。水としては、水道水、純水、イオン交換水、蒸留水等が使用できる。また乳化水には、有機溶媒が含まれていてもよい。有機溶媒としては、単量体成分を溶解し難く、また重合反応を阻害しないものであればよく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類等の有機溶媒が使用できる。
乳化水に有機溶媒を使用する場合、有機溶媒の使用量は、水と有機溶媒の合計100質量%に対して10質量%〜80質量%が好ましく、より好ましくは20質量%〜60質量%であり、さらに好ましくは30質量%〜50質量%である。
乳化水は、分散安定剤濃度が0.01質量%以上、5質量%以下となるように調整するのが好ましい。より好ましくは0.05質量%以上、1質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上、0.7質量%以下である。
乳化水は、無機塩や水溶性重合禁止剤を含んでいてもよい。無機塩や水溶性重合禁止剤を併用することにより、懸濁重合で併発する乳化重合による副生微粒子の生成を抑制することができる。無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸アンモニウム、五酸化バナジウム、塩化銅、塩化鉄、塩化チタン等が挙げられる。水溶性重合禁止剤としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、L−アスコルビン酸、クエン酸、ハイドロキノン、p−フェニレンジアミン、スルホン化ナフトヒドロキノンアンモニウム塩、チオシアサン酸アンモニウム等が挙げられる。無機塩、水溶性重合禁止剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組合せて使用してもよい。
水溶性重合禁止剤及び無機塩の使用量は、単量体成分の合計100質量部に対して0.001質量部以上、10質量部以下となるように乳化水に添加するのが好ましい。より好ましくは0.01質量部以上、さらに好ましくは0.05質量部以上であり、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。無機塩及び/又は水溶性重合禁止剤を2種以上使用する場合は、その使用量の合計量が上記範囲内であればよい。
単量体組成物と乳化水とを混合して混合液を調製する。混合液調製時の温度は特に限定されないが、好ましくは1℃以上、50℃以下である。より好ましくは5℃以上、40℃以下であり、さらに好ましくは10℃以上、30℃以下である。
乳化水は、混合液中の単量体成分の濃度が1質量%以上、80質量%以下となるように単量体組成物と混合するのが好ましい。より好ましくは5質量%以上、60質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以上、50質量%以下である。単量体成分の濃度が上記範囲内であれば、単量体組成物の液滴径を所望のサイズに調整し易く、また液滴を安定化させ易いので好ましい。
混合液では、単量体組成物と乳化水とが分離することなく混ざり合った状態であるのが好ましい。なお、単量体組成物の液滴を効率よく小粒子径化する観点から、混合液はキャピラリーに通液する前に、単量体組成物の体積平均液滴径が1μm以上、100μm以下にする一次懸濁処理を行うのが好ましい(一次懸濁液)。より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。一次懸濁処理後の混合液中の単量体組成物の液滴径が上記範囲内であれば、キャピラリー内での単量体組成物の液滴の小粒子径化を効率よく進めることができる。一次懸濁液に含まれる液滴の体積平均粒子径は粒度分布測定装置(「コールターマルチサイザーIII型」ベックマンコールター社製)により測定することができる。
混合液の一次懸濁処理を実施する手段としては、従来公知の分散、懸濁方法、装置を採用することができる。例えば、T.K.ホモミクサー、ラインミキサー(例えばエバラマイルダー(登録商標))、ホモジナイザー T 10 basic(ヤマト科学株式会社製)等の高速攪拌機が使用できる。これらの攪拌機は、単量体組成物の液滴径を特定の範囲にする一次懸濁処理を行わない場合にも、単量体組成物と乳化水の混合手段として好ましく使用できる。
一次懸濁処理の条件は特に限定されず、所望する単量体組成物の液滴径に応じて適宜決定することができるが、例えば、撹拌速度を2000rpm以上とするのが好ましく、より好ましくは3000rpm以上である。撹拌速度が大きいほど、一次懸濁処理後の混合液中の単量体組成物の液滴径を小さくすることができる。また、撹拌時間は、通常1〜60分であることが好ましい。撹拌時間が長いほど、一次懸濁処理後の混合液中の単量体組成物の液滴径を小さくすることができ、粒子径分布を狭くすることができる。また、撹拌時間を上記範囲内とすることで、液温の上昇を防ぐことができ、重合反応の制御が容易となる。
キャピラリーに通液する前の混合液(一次懸濁液を含む、以下同様。)の25℃における粘度は0.1mPa・s以上、45mPa・s以下であるのが好ましい。より好ましくは0.25mPa・s以上、20mPa・s以下、さらに好ましくは0.5mPa・s以上、10mPa・s以下である。混合液の粘度が高すぎると、キャピラリー内で混合液に十分なせん断がかからず、粒子径が大きくなる傾向や、粒度分布が広くなる虞があり、一方粘度は低すぎても安定な懸濁液が得られ難い場合がある。混合液の粘度が上記範囲内であれば、キャピラリー内で効率よく混合液にせん断力をかけることができ、液滴径を小粒子径化させ易く、また、粒子径が均質な液滴が得られる。また、キャピラリーに通して得られた懸濁液を安定に維持することができる。
本発明では、単量体組成物と乳化水との混合液を、加圧下で、キャピラリーに通して、単量体組成物の液滴を小粒子径化し、懸濁させる。本発明は、キャピラリー内を通過する混合液にせん断力をかけることにより、単量体組成物の液滴の小粒子径化を図るものである。すなわち、キャピラリー入り口側からは混合液に圧力をかけつつ、キャピラリーユニット(懸濁工程を実施する装置においてキャピラリーを有する部分を意味する)で圧力を調整することによりキャピラリー出口側からは混合液に背圧がかかる構成とすることで、所定長のキャピラリー内で混合液にせん断力をかけ続けることにより、単量体組成物の液滴を小粒子径化すると共に、その均質化を図る。
本発明では、加圧下で、混合液をキャピラリー内に通過させる。キャピラリー(キャピラリーユニット)の入り口における圧力は5MPa以上とするのが好ましい。より好ましくは10MPa以上、さらに好ましくは12MPa以上であり、好ましくは200MPa以下であり、より好ましくは100MPa以下、さらに好ましくは15MPa以下である。圧力が上記範囲内であれば、単量体組成物の液滴を小粒子径化し、且つ均質化するのに十分なせん断力を混合液に与えることができる。加圧手段としては高圧ポンプ等の公知の加圧手段を使用できる。以下、高圧ポンプユニットとキャピラリーユニットとを備えた装置を分散小粒子径化装置と称する。
キャピラリー内に通過させる際の混合液の流速は0.5m/sec以上、100m/sec以下が好ましい。より好ましくは1m/sec以上、さらに好ましくは3m/sec以上であり、より好ましくは50m/sec以下、さらに好ましくは30m/sec以下である。混合液をキャピラリー内に通過させる際の速度が低すぎるとせん断力が不十分となり粗大粒子が多く発生する可能性があり、一方高すぎると微小粒子が多く発生する虞がある。
混合液を通過させるキャピラリーの長さは30cm以上であるのが好ましく、より好ましくは50cm以上であり、さらに好ましくは100cm以上である。キャピラリーの長さは5000cm以下であるのが好ましく、より好ましくは3000cm以下であり、さらに好ましくは2000cm以下である。キャピラリー長が短すぎると、単量体組成物の液滴の小粒子径化が不十分となったり、液滴径の均質化が不十分になる場合があり、長すぎると、単位時間当たりの処理量が低くなり生産コストが高くなる可能性がある。キャピラリーの長さが上記範囲内であれば、単量体組成物液滴の小粒子径化とその均質化とを効率よく進めることができる。
キャピラリーの内径は0.01mm以上、50mm以下であるのが好ましい。より好ましくは0.05mm以上、さらに好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは30mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。キャピラリーの内径が上記範囲内であれば、十分なせん断力をかけることが出来るため単量体組成物の液滴を小粒子径化し易くなる。
キャピラリーの形状としては、直線状、螺旋状に巻回された形状、矩形の凹凸が繰り返された形状、長さ方向に沿ってジグザグに折り曲げられた形状等が挙げられる。また、キャピラリーが螺旋状に巻回されている場合には、キャピラリーユニットをコンパクト化できるので好ましい。
分散小粒子径化装置に備えられるキャピラリーユニットに含まれるキャピラリー数は特に限定されないが、例えば1個以上、20個以下であるのが好ましい。より好ましくは1個以上、10個以下であり、さらに好ましくは1個以上、5個以下である。キャピラリーが2個以上ある場合、2個以上のキャピラリーの長さ及び内径は同一であってもよく、異なっていてもよいが、上流側に効率よく背圧をかける観点からは、キャピラリーの内径は異なるものであるのが好ましい。なお、2個以上のキャピラリーを使用する場合、全てのキャピラリーの長さの合計が上記範囲内となるようにするのが好ましい。
キャピラリー長(L)に対するキャピラリー内径(D)の比(D/L)は0.000001以上、0.2以下であるのが好ましい。より好ましくは0.00001以上であり、さらに好ましくは0.00004以上、より好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.01以下である。キャピラリー長(L)に対するキャピラリー内径(D)の比が上記範囲内であれば、十分なせん断力をかけることが出来るため単量体組成物液滴を小粒子径化することができる。キャピラリーを2個以上使用する場合は、2個以上のキャピラリーが各々上記比を満足することが望ましい。
キャピラリーユニットに備えられるキャピラリーは、内径が互いに異なる3つ以上の部位に分けられ、連続する3つの部位について各部位の圧力変位量を測定したとき、キャピラリー(ユニット)に下記関係を満たす連続する3つの部位が少なくとも1セット以上存在しているのが好ましい。
ΔP1>ΔP3>ΔP2
ここで、ΔP1は、連続する3つの部位のうち最上流側の圧力変位量を意味し、ΔP2は、連続する3つの部位のうち中央の部位の圧力変位量を意味し、ΔP3は、連続する3つの部位のうち最下流側の圧力変位量を意味する。
例えば、キャピラリーユニットが、内径が互いに異なる3つの部位に分けられる場合、最上流側の部位を懸濁液が通液する際の圧力変位量がΔP1、最下流側の部位通液時の圧力変位量がΔP3、そしてこれら2つの部位の間に備えられた部位通液時の圧力変位量がΔP2となる。また、キャピラリーユニットが、内径の異なる4つの部位に分けられる場合、最上流側を1番目、最下流側を4番目とすると、最上流側から連続する3つの部位(1番目、2番目、3番目)が上記関係を満たす態様と、最上流側から2つ目の部位から連続する3つの部位(2番目、3番目、4番目)が上記関係を満たす態様のいずれであってもよい(キャピラリーユニットが5以上の部位に分けられる場合も同様)。すなわち、上記関係を満たす連続する3つの部位がキャピラリーユニットに少なくとも1セット存在していればよく、その位置は特に限定されない。
なお、同じ内径のキャピラリーが連続する場合、これらをまとめて1つの部位とする。例えば、5つのキャピラリーを使用し、最上流側から2番目、3番目、4番目のキャピラリーが同じ内径を有する場合は、2番目〜4番目を1つの部位と称する。
キャピラリーが斯かる構成を有することで、混合液には、キャピラリー入り口側から圧力をかけつつ、混合液が排出されるキャピラリー出口側からは背圧をかけることができ、これらの圧力の作用により混合液にせん断力がかかることで、単量体組成物の液滴の小粒子径化と均質化とを効率よく進めることができ、また小粒子径化された液滴を安定に維持することができる。また上記構成によれば、キャピラリー内を通過する間に混合液の圧力を大気圧にまで段階的に減少することもでき、キャピラリー内及びキャピラリー出口での泡や空洞化の発生も抑制することができる。
キャピラリー(ユニット)に上記関係を満足する部位を少なくとも1セット以上存在させるためには、混合液の粘度や圧力等に応じて、キャピラリーの長さ、内径等を上述した範囲内で適宜選択すればよい。
混合液をキャピラリー(キャピラリーユニット)に通過させる回数(パス回数)は、特に限定されず1回でもよいし、複数回であってもよい。生産コストの観点からパス回数は10回以下が好ましく、より好ましくは5回以下であり、さらに好ましくは3回以下であり、最も好ましくは1回である。一次懸濁処理を行わない場合には、2回以上、20回以下、混合液をキャピラリーに通過させるのが好ましい(より好ましくは3回以上、さらに好ましくは5回以上、より好ましくは15回以下、さらに好ましくは10回以下)。
なお、分散小粒子径化装置が後述するノズルユニットを有する場合、上記パス回数は、ノズルユニットを有する分散小粒子径化装置に混合液を通過させる回数を意味する。
キャピラリーに通過させる混合液の温度は、好ましくは−10℃以上、より好ましくは0℃以上、さらに好ましくは5℃以上であり、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下である。キャピラリー通過時には、せん断や混合液とキャピラリー内壁との摩擦により混合液の温度が上昇し、単量体成分の重合反応が開始してしまう場合があるが、混合液の温度が上記範囲内であれば、温度上昇による重合反応の開始を抑制することができる。したがって、分散小粒子径化装置は、キャピラリー内に通液される混合液の温度を調整することができる温度制御手段を有していてもよい。
本発明の懸濁工程に使用できる分散小粒子径化装置としては、例えば、美粒株式会社製の「美粒モジュール」と高圧ポンプとを組み合わせた装置等が挙げられる。
またキャピラリー(キャピラリーユニット)の上流側には、キャピラリーに供給する前に、混合液中の単量体組成物の液滴の小粒子径化を促す手段を設けてもよい。これにより、キャピラリー内での単量体組成物の液滴の小粒子径化と液滴径の均質化とを一層効率よく進めることができる。
単量体組成物の液滴の小粒子径化を促進するには、例えば、混合液が存在する系内にジェット流(噴出流)を生じさせられる手段を使用すればよく、斯かるジェット流は、例えば、圧力をかけた混合液を微細な流路を有するノズルから噴出させることにより生じさせることができる。すなわち、まず高圧の混合液が微細な流路を高速で通過することで、又は高圧の混合液がノズルに衝突することで、単量体組成物の液滴が小粒子径化され、またノズルの下流側では、該ノズルから混合液が噴出されることで生じたジェット流とその周囲に存在する液との間に生じるによりせん断力により、単量体組成物の液滴の小粒子径化が促進される。したがって、混合液に圧力をかけてノズルから噴出させた噴出液を、前記キャピラリーに通して懸濁液とすることは、本発明の好ましい実施態様である。
上記ノズルは、噴出孔部と、噴出液の背圧を調整するための1つ以上のセル部との連結構造を有しているのが好ましい(以下、ノズルユニットと称する場合がある)。噴出孔部は、供給される高圧の混合液を噴出できるオリフィスを有しており、連結部を介して続くセル部と連結されている。開口は0.02mm〜1.00mmであるのが好ましい(より好ましくは0.03mm〜0.5mm、さらに好ましくは0.05mm〜0.2mm)。また噴出孔部の長さは0.05mm〜50mmであるのが好ましい(より好ましくは0.1mm〜30mm、さらに好ましくは0.2mm〜10mm)。
セル部は、内径が互いに異なる3つ以上の部位に分けられ、連続する3つの部位について各部位の内径を、最も上流側からd1、d2、d3としたときに、次の関係を満たすものであるのが好ましい:d2>d1>d3。
斯かる構成を有することにより、セル部内において、下流側に位置し内径d3を有するセル部から、内径d2を有するセル部へと背圧がかけられる結果、上流側からの圧力と、下流側からの背圧との作用により混合液にせん断力がかかることにより、キャピラリーに供給する単量体組成物の液滴の小粒子径化が促進される。
上記セルは、内径の異なる複数のセルを連結したものであってもよいし、内径の異なる複数の部分を有する1つのセルであってもよい。内径の異なる複数のセル部を連結する場合、セル部の数は3以上であるのが好ましく、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上であり、好ましくは10以下であり、より好ましくは7以下、さらに好ましくは6以下である。上記関係を満足する限り、特定の内径を有する部位を構成するセルの個数も特に限定されるものではなく、例えば、内径d1を有するセル部の数と、内径d2を有するセル部の数は同一であってもよく、異なっていてもよい。セルは内径が上記関係を満足するものであればよく、セル内径及び長さは、セルの上流側に設けられるノズルユニットや、セルの下流側に設けられるキャピラリーユニットに応じて適宜決定することができる。したがってセルのサイズは特に限定されないが、例えばセル内径は0.1mm〜10mm、長さは1mm〜100mmであるのが好ましい。
ノズルユニットを使用する場合、ノズルユニットに供給する混合液の圧力は10MPa以上とするのが好ましく、より好ましくは30MPa以上、さらに好ましくは50MPa以上であり、好ましくは300MPa以下であり、より好ましくは200MPa以下、さらに好ましくは150MPa以下である。圧力が高すぎると単量体組成物の微小粒子(液滴)が発生し得られる重合体微粒子の粒度分布が広くなる虞があり、一方低すぎると、単量体組成物の小粒子径化を促進し難い場合がある。ノズルに供給する混合液に圧力を付与する加圧手段としては、公知の加圧手段を使用でき、例えば、高圧ポンプ等が挙げられる。ノズルユニットは、高圧ポンプとキャピラリーユニットとの間に配置するのが好ましい。この場合は、ノズルユニットとキャピラリーユニットとに個別に高圧ポンプを配置する必要はない。
本発明法で使用できるノズルユニットとしては、微細な流路を有するもの(好ましくは上記噴出孔部)であればよく、例えば、美粒株式会社製の「美粒ノズル」、スギノマシン社製の湿式微粒化装置「スターバースト(登録商標)」シリーズ、及び吉田機械興業株式会社製の高圧分散装置「ナノヴェイタ(登録商標)」、株式会社SMT社製の圧力式ホモジナイザー「G−Model」シリーズ、マイクロフルイダイズ社製の高圧ホモジナイザー「マイクロフルイダイザー(登録商標)」シリーズ等が挙げられる。これらのノズルユニットを、上述したキャピラリーユニットの上流側で使用することができる。また、ノズルユニットと高圧ポンプと上述したキャピラリーユニットを備えた装置を使用してもよく、斯かる装置としては、例えば美粒株式会社製の「BERYU MINI」等が挙げられる。
上記ノズルユニットを有する分散小粒子径化装置は単独で、あるいは2種以上を組合せて使用してもよく、またノズルユニットを有する分散小粒子径化装置とノズルユニットを有さない分散小粒子径化装置とを組合せて使用してもよい。2以上の分散小粒子径化装置を使用する場合のパス回数は、混合液を1の分散小粒子径化装置に通過させる毎にカウントする。したがって、混合液を2つの分散小粒子径化装置にそれぞれ1回ずつ通過させる場合のパス回数は2回となる。
懸濁工程では、単量体組成物の液滴の体積平均液滴径を10nm以上、10μm以下にまで小粒子径化するのが好ましい。より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは100nm以上であり、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。懸濁工程における単量体組成物の液滴の体積平均液滴径は、所望する重合体微粒子のサイズに応じて適宜決定することができる。
次いで、得られた懸濁液を加熱して単量体成分を重合する(重合工程)。本発明法は懸濁重合を採用するものであり、重合工程では、上記懸濁工程を経て得られた単量体成分や必要により用いられる添加剤を含有する液滴状の単量体組成物(液滴懸濁体組成物)を重合することにより、重合体微粒子が水中に分散含有されてなる分散液を得る。分散液には上述の分散安定剤を添加してもよい。これにより重合時の単量体組成物の液滴及び重合体微粒子の安定性を確保することができる。このとき添加する分散安定剤の量は上述した分散安定剤の使用量には含まれない。分散安定剤の使用量は単量体成分の合計100質量部に対して0.01質量部以上であるのが好ましく、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下であることが好ましい。
単量体成分の重合条件は特に限定されず、使用する単量体成分や添加剤の種類及びこれらの配合組成等に応じて適宜決定すればよいが、重合温度としては、例えば60℃〜100℃が好ましく、より好ましくは65℃〜95℃、さらに好ましくは70℃〜90℃である。重合反応は2時間〜7時間とするのが好ましく、より好ましくは2.5時間〜5時間であり、さらに好ましくは3時間〜4.5時間である。
重合反応は不活性ガス雰囲気下で実施することが推奨される。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、及びこれらの内2種以上のガスを混合した混合ガス等が挙げられる。また重合反応は、撹拌下で行うことが好ましい。撹拌は、パドル翼、タービン翼、ブルーマージン翼、プロペラ翼等従来公知の撹拌翼を用いた撹拌を採用し得る。
重合反応により得られた重合体微粒子が反応液中に分散含有されてなる分散液は、このまま重合体微粒子の溶剤分散体として各種添加剤として使用することができる。また、必要に応じて、上記分散液を固液分離することにより重合体微粒子が得られる。固液分離方法としては、例えば、ろ過、遠心分離、及びスプレードライ等が挙げられる。
固液分離する際には、凝集剤を用いてもよい。凝集剤としては、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化アンモニウム、カリミョウバン等の金属塩類;硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、炭酸、酢酸等の酸類;メタノール、エタノール等のアルコール類;等が挙げられる。これらの凝集剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記凝集剤の添加量は特に限定されないが、分散液中の重合体微粒子100質量部に対して、0.05質量部〜10質量部である。凝集に必要な時間は短く、通常は0.1分〜2時間の範囲で凝集が起こる。そのため、急激な凝集剤の添加は撹拌不能を起こす場合があるので好ましくなく、凝集剤は分散液へ徐々に添加することが好ましい。また、凝集剤を添加する際の分散液の温度は30℃〜100℃が好ましい。
上述の通り、重合反応により得られた重合体微粒子が反応液中に分散含有されてなる分散液は、固液分離することなく、そのまま重合体微粒子の溶剤分散体(水分散体)として使用することができる。また、重合体微粒子の溶剤分散体は、上記分散液に、例えばエチレングリコール等の水よりも沸点が高い溶剤を添加した後、加熱減圧下で水を留去する方法;分散液を固液分離して得られた重合体微粒子と溶剤とを適当な方法で混合する方法;等によっても製造することができる。溶剤としては、例えば、水;炭化水素系溶剤;ハロゲン化炭化水素系溶剤;アルコール系溶剤;フェノール等のフェノール系溶剤;エーテル系溶剤;ケトン系溶剤;エステル系溶剤;等が使用できる。溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
重合体微粒子と溶剤との混合方法としては、例えば、撹拌混合、粉砕混合等が挙げられる。攪拌混合に使用できる装置としては、例えば、ホモミキサー、ホモディスパー、高圧ホモジナイザー等が挙げられ、粉砕混合に使用できる装置としては、例えば、ビーズミル、ジェットミル、ハンマーミル、遊星型ボールミル等のメディアミル、上述の分散小粒子径化装置(美粒株式会社製)等が挙げられる。
重合体微粒子の含有率は前記溶剤分散体100質量%中、10質量%〜60質量%であるのが好ましく、より好ましくは15質量%〜50質量%である。
上記製造方法によれば、様々な粒子径を有する粒度分布の狭い重合体微粒子を得ることができるが、本発明の製造方法は粒子径が小さく、狭い粒度分布を有する重合体微粒子を製造するのに特に好適である。本発明に係る重合体微粒子の体積平均粒径は10nm以上、10μm以下である。好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。
なお、重合体微粒子の粒子径は、体積平均粒子径が1μm未満の場合、光散乱法により測定することができ、体積平均粒子径が1μm以上の場合、コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置により測定することができる。
また、重合体微粒子の粒子径の変動係数(CV値)は25%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは18%以下であり、小さいほど好ましいが、例えば2%以上、さらには3%以上であることも許容される。
本発明に係る重合体微粒子の形状は特に限定されず、真球状粒子であってもよく、重合体微粒子表面に凹凸を有する異形化された非真球状粒子であってもよい。また本発明に係る重合体微粒子は多孔質状であってもよい。真球状の重合体微粒子は、フィルムのアンチブロッキング剤や滑り性付与剤、各種基板間の隙間保持剤等のスペーサー等に好適である。一方、非真球状や多孔質状の重合体微粒子は、真球状である場合に比べて重合体微粒子の表面積が大きくなるため、これをフィルムのアンチブロッキング剤とすれば、延伸フィルムにおける樹脂との密着性を向上でき、またボイドの抑制や重合体微粒子の脱落を低減することができる場合がある。
本発明の重合体微粒子は、粒子径が小さく、また粗大な粒子や微小な粒子の含有量が少なく、粒子径の粒度分布が狭いことから、例えば、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等の各種フィルムのアンチブロッキング剤や滑り性付与剤;各種フィルム、成型体など高分子材料のコーティング剤、あるいはコーティング剤用の添加剤;各種樹脂の粘度、チクソ性、粘弾性、或いは強度などの改質剤;液晶表示素子用面内スペーサー、液晶表示素子用シール部スペーサー、EL表示素子用スペーサー、タッチパネル用スペーサー、セラミックスやプラスチック等の各種基板間の隙間保持剤等のスペーサー;半導体用封止材、液晶用シール材、LED発光素子用封止材等の各種電子部品用封止材;光拡散フィルム、光拡散板、導光板、防眩フィルム等の光拡散剤;トナー用外添剤などの帯電制御材料、耐熱性付与剤、機械的強度向上剤などの各種フィルムの改質材料;複写機またはプリンターの帯電防止コーティング剤、電荷保持体、トナー転写用部材、定着ベルト、中間転写ベルト、被膜型抵抗体、導電ペースト、リチウムイオン電池などの電池用材料(電極材料、バインダー、セパレータ補強剤等)、帯電防止性樹脂、コンデンサ用導電性接着層、導電性摺動部材、回路基板用基材、耐熱半導電性材料、自己温度制御通電発熱体、サーマルヘッド用発熱抵抗体、記録用通電発熱シート、電線ケーブルの被覆体、面状発熱体電磁波遮蔽シート、フレキシブル配線シート、電磁波吸収シート、熱線吸収シート、紫外線吸収シートなどの電子部材用途;紫外線遮光性材料、カラーフィルター用ブラックマトリックスなどの遮光用途;低騒音歯車の表面処理剤、摩擦材用成型体などの摺動用途;電子機器の基板(例えば、光センサー用基板や光スイッチ用基板等の光変換装置の基板、プリント配線用基板、サーマルヘッド基板など)、インクジェットインク、水分散型塗料、研磨剤、潤滑液用添加剤等が挙げられ、有機樹脂粒子などの公知の用途に好適に用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
各種物性の測定および評価は、以下の方法で行った。
〔単量体組成物(油相)、一次懸濁液の粘度の測定〕
東機産業株式会社製のTV−20形粘度計を使用し、標準コーンロータの回転速度100rpm、測定温度25℃の条件で、下記実施例及び比較例で調製した単量体組成物(油相)、および一次懸濁液の粘度を測定した。
〔単量体組成物の液滴の体積平均液滴径の測定、重合体微粒子の体積平均粒子径、粒度分布、及び変動係数(CV値)の測定〕
(1)体積平均液滴径及び体積平均粒子径が1μm未満の場合
下記実施例及び比較例で得られた重合体微粒子の分散液をイオン交換水で希釈し、光散乱粒度分布測定機(Particle Sizing Systems社製「NicompMODEL380」)にて測定して、体積平均粒子径(μm)を求め、この値を重合体微粒子の平均粒子径とした。
重合体微粒子の分散液に代えて、懸濁液を使用したこと以外は、上記と同様にして光散乱粒度分布測定機にて測定を行い体積平均液滴径(μm)を求め、この値を懸濁液中に分散している単量体組成物の液滴の平均液滴径とした。
(2)体積平均液滴径及び体積平均粒子径が1μm以上の場合
体積平均粒子径1μm以上の重合体微粒子の体積平均粒子径は、コールターマルチサイザーIII型(ベックマンコールター社製)にて測定し、体積平均粒子径(μm)を求め、この値を重合体微粒子の平均粒子径とした。
重合体微粒子の分散液に代えて、懸濁液を使用したこと以外は上記と同様にして、コールターマルチサイザーIII型(ベックマンコールター社製)にて測定を行ない体積平均液滴径(μm)を求め、この値を懸濁液中に分散している単量体組成物の液滴の平均液滴径とした。
(3)変動係数(CV値)
上記測定で得られた体積平均粒子径と粒子径とを基に標準偏差を算出し、下式より変動係数(%)を求めた。
変動係数(%)=100×(標準偏差/個数平均粒子径)
〔SEM観察〕
走査型電子顕微鏡(日本電子製「JSM−7600F」)を使用して、実施例及び比較例で得られた重合体微粒子を観察した。
[実施例1]
フラスコに、スチレン(St)35部、メタクリル酸メチル(MMA)10部、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)5部、及び過酸化ラウロイル(LPO)1部を混合し、重合性単量体組成物(油相)を調製した。油相の粘度(25℃)は0.83mPa・sであった。
別のフラスコで、予めポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、ハイテノール(登録商標)NF−08)0.5部と、水200部とを混合して乳化水(水相)を調製し、ここに上記油相を加えて混合液とした後、この混合液をホモミキサー(プライミクス(株)製「T.K.ホモミクサー MARK II model 2.5」)により3000rpmで5分間撹拌して一次懸濁処理を行った。一次懸濁処理後の混合液(一次懸濁液)中に分散している単量体組成物の液滴の体積平均液滴径は7μmであった。また混合液の粘度(25℃)は3mPa・sであった。
得られた一次懸濁液を分散小粒子径化装置(高圧ポンプと、キャピラリーユニットとして美粒株式会社製「美粒モジュール(小O)」とを連結した装置)に供給し、分散小粒子径化装置に備えられた高圧ポンプで混合液を12.5MPaまで昇圧した後、キャピラリーユニットに供給した。分散小粒子径化装置から排出された懸濁液を、同じ条件で再び分散小粒子径化装置に供給して(全パス回数2回)、単量体組成物の液滴径が小粒子径化された懸濁液(二次懸濁液)を得た(懸濁液中に懸濁している単量体組成物の液滴の体積平均液滴径:1.19μm)。
なお、実施例1で使用した分散小粒子径化装置は、その内部に長さ30cm以上のキャピラリーを有し、当該キャピラリーが、内径が互いに異なる3つ以上の部位に分けられ、連続する3つの部位について各部位の圧力変位量を測定したとき、キャピラリーが、ΔP1>ΔP3>ΔP2(ΔP1は、連続する3つの部位のうち最上流側の圧力変位量を意味し、ΔP2は、連続する3つの部位のうち中央の部位の圧力変位量を意味し、ΔP3は、連続する3つの部位のうち最下流側の圧力変位量を意味する)の関係を満たす連続する3つの部位を1セット有するものであった。
次いで、得られた二次懸濁液を、撹拌器、不活性ガス導入管、還流冷却管及び温度計を備えた反応容器に投入し、窒素雰囲気下、70℃で1時間攪拌した後、反応溶液を昇温し、75℃で1時間、90℃で1.5時間攪拌して重合反応を完了させた。その後、重合体微粒子分散液を冷却、ろ過し、重合生成物を90℃で、12時間乾燥して、重合体微粒子(1)を得た。得られた重合体微粒子(1)の体積平均粒子径は1.26μmで、CV値は21.5%であった。
[実施例2]
フラスコに、N−(フェニル)マレイミド(PMI)10部、スチレン(St)25部、メタクリル酸メチル(MMA)10部、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)5部、及び過酸化ラウロイル(LPO)0.25部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「Irganox(登録商標)1010」、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])0.25部を仕込み、35℃の温浴で固体成分を溶解し重合性単量体組成物(油相)を調製した。油相の粘度(25℃)は1.22mPa・sであった。
別のフラスコで、予めポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、ハイテノール(登録商標)NF−08)0.25部と、水190部とを混合して乳化水(水相)を調製し、ここに上記油相を加えて混合液とした後、この混合液をホモミキサー(プライミクス(株)製「T.K.ホモミクサー MARK II model 2.5」)により3000rpmで5分間撹拌して一次懸濁処理を行った。一次懸濁処理後の混合液(一次懸濁液)中に分散している単量体組成物の液滴の体積平均液滴径は10μmであった。また混合液の粘度(25℃)は2mPa・sであった。
得られた一次懸濁液を実施例1と同じ分散小粒子径化装置(高圧ポンプと、キャピラリーユニットとして美粒株式会社製「美粒モジュール(小O)」とを連結した装置)に供給し、分散小粒子径化装置に備えられた高圧ポンプで混合液を21.0MPaまで昇圧した後、キャピラリーユニットに供給した。分散小粒子径化装置から排出された懸濁液について、分散小粒子径化装置に供給する懸濁工程を同じ条件でさらに2回実施して(全パス回数3回)、単量体組成物の液滴径が小粒子径化された懸濁液(二次懸濁液)を得た(懸濁液中に懸濁している単量体組成物の液滴の体積平均液滴径:907nm)。
次いで、得られた二次懸濁液と4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4H−TEMPO)0.05部を溶解した水10部とを、撹拌器、不活性ガス導入管、還流冷却管及び温度計を備えた反応容器に投入し、窒素雰囲気下、70℃で1時間攪拌した後、反応溶液を昇温し、75℃で1時間、90℃で1.5時間攪拌して重合反応を完了させた。その後、重合体微粒子分散液を冷却、ろ過し、重合生成物を90℃で、12時間乾燥して、重合体微粒子(2)を得た。得られた重合体微粒子(2)の体積平均粒子径は612nmで、CV値は20.2%であった。
[実施例3]
実施例3では、実施例1で使用した分散小粒子径化装置において、高圧ポンプとキャピラリーユニットとの間に、ノズルユニット(美粒株式会社製「美粒ノズル」)を配置した装置を使用した。実施例1と同様にして調製した混合液(一次懸濁液)を、高圧ポンプで100MPaまで昇圧した後、この混合液をノズルユニットに供給し、ノズルユニットから噴出させた噴出液を、キャピラリーユニットに通して懸濁液を得た。得られた懸濁液について、上記装置(高圧ポンプ、ノズルユニット、キャピラリーユニット)に通す懸濁工程を同じ条件でさらに2回実施して(全パス回数3回)、単量体組成物の液滴径が小粒子径化された懸濁液(二次懸濁液)を得た。このとき得られた懸濁液中に分散している単量体組成物の液滴の体積平均液滴径は85nmであった。
なお、実施例3で使用したノズルユニットは、連結された1個のセル部を有し、このセル部は内径の異なる部分を3つ有するものであった。そして、セル部の内径を上流側から内径をd1、d2、d3としたときに、d2>d1>d3の関係を満足するものであった。
得られた懸濁液を、撹拌器、不活性ガス導入管、還流冷却管及び温度計を備えた反応容器に投入し、窒素雰囲気下、70℃で1時間攪拌した後、反応溶液を昇温し、75℃で1時間、90℃で1時間攪拌して重合反応を完了させた。その後、重合体微粒子分散液を冷却、ろ過し、重合生成物を90℃で、12時間乾燥して、重合体微粒子(3)を得た。得られた重合体微粒子(3)の体積平均粒子径は192nm、CV値は17.3%であった。
[実施例4]
実施例1と同様にして得られた混合液を、そのまま実施例1と同じ分散小粒子径化装置に供給した(一次懸濁処理なし)。分散小粒子径化装置に備えられた高圧ポンプで混合液を26.5MPaまで昇圧した後、キャピラリーユニットに供給した。分散小粒子径化装置から排出された液を、分散小粒子径化装置に供給する懸濁工程を同じ条件でさらに8回実施して(全パス回数9回)、単量体組成物の液滴径が小粒子径化された懸濁液を得た(全パス回数10回、懸濁液中に懸濁している単量体組成物の体積平均液滴径:1.01μm)。
得られた懸濁液を、撹拌器、不活性ガス導入管、還流冷却管及び温度計を備えた反応容器に投入し、窒素雰囲気下、70℃で1時間攪拌した後、反応溶液を昇温し、75℃で1時間、90℃で1.5時間攪拌して重合反応を完了させた。その後、重合体微粒子分散液を冷却、ろ過し、重合生成物を90℃で、12時間乾燥して、重合体微粒子(4)を得た。得られた重合体微粒子(4)の体積平均粒子径は1.18μm、CV値は23.2%であった。
[実施例5]
実施例3と同様にして、混合液、懸濁液を調製した後、単量体成分の重合反応を行って、重合体微粒子(5)の水分散体を得た。なお、実施例5では、重合反応完了後、重合生成物のろ過、乾燥は行わなかった。得られた重合体微粒子(5)の体積平均粒子径は192nm、CV値は17.3%であった。
[比較例1]
混合液をホモミキサーにより10000rpmで8分間撹拌して一次懸濁処理を行ったこと(一次懸濁処理後の混合液中に分散している単量体組成物の液滴の体積平均液滴径1.27μm)、懸濁工程を実施しなかったこと以外は実施例1と同様にして一次懸濁液を重合して、比較重合体微粒子(1)を得た。得られた比較重合体微粒子(1)の体積平均粒子径は1.32μm、CV値は35.5%であった。