自動ネジ締めにおいては、ネジを被締結物のネジ孔に挿入してドライバで締め付ける。この際、ネジをネジ孔に挿入する部材がドライバ自身であれば挿入と同時に締結を開始することができるので便宜である。そこで、ネジを作業台上のトレイに収納し、ドライバが磁力を利用してビットに係合したネジをピックアップし、被締結物のネジ孔に挿入して締結する方法が従来から提案されている。
この方法では、ピックアップ時にドライバのビットとネジのリセスとを係合する必要がある。ビットの先端部は十字やマイナスなどの凸部形状を有し、リセスは十字やマイナスなどの凹部形状を有するが、両者は位置合わせがされておらずこのままでは両者は係合することができない。このため、ビットをリセスに押し付けた状態でビットがリセスに挿入又は係合するまでビットを若干回転させている(空回り)。また、かかる方法は、ネジの中心軸の位置又はネジを収納する穴の中心軸の位置を予め記憶しておき、ビットの中心軸がネジの中心軸に一致するようにドライバを移動していた。
以下、添付図面を参照して、本発明のネジ締め装置について説明する。図1は、ネジ締め装置100のブロック図である。図1において、横方向がX方向で、縦方向がY方向で、紙面に垂直な方向がZ方向である。図2(a)は、収納部110の部分拡大断面図である。ネジ締め装置100は、ネジをピックアップして被締結物としてのワークWに部品を締結する機能を有し、収納部110と、ドライバ120と、移動部160と、制御系と、を有する。
収納部110は図示しない作業台に載置され、ネジ10を収納するトレイである。ネジ10は、図示しないネジ供給部により一本ずつ又はマトリックス状に整列した状態で収納部110に供給される。ネジ10は、ネジ頭12とネジ部15とを有する。ネジ10は、ドライバのビットが係合されるリセス13をネジ頭12の上面16に有する。リセス13の形状は、マイナス、十字、星型の凹部など限定されない。
本実施例のリセス13は、図2(b)に示すように、十字形状を有する。この場合、リセス13は4つの谷部13aと一の円錐部13bから構成されている。各谷部13aは、図2(b)に示すように、ネジ10を上から見ると、図2(a)に示すネジ10の中心軸17を中心17aとして一定幅で放射方向に延び、4つの谷部13aの中心線13a1は中心17aの周りに90°間隔で広がっている。円錐部13bは、中心軸17を中心軸にし、ネジ10の中央に設けられる。リセス13の谷部13aの最外部を通る円の径はR1である。円錐部13bの底面の径(リセス13の内径)はR2である。
トレイ供給の場合は、図2(a)に示すように、ネジ10のネジ部15が挿入される穴112を有する。穴112はネジ切りされておらず、ネジ10は穴112に固定されていない。ネジ10は穴112に沿って順次供給され溝終端よりドライバ120でピックアップする。ネジ10は、穴112終端で回転可能である。本実施例では、ネジ10はリセス13の位相(又は方向)が予め設定されずに収納部110に搭載される。ネジ10の位相を予め制御する必要がないのでビットの先端部とネジのリセス13の位相合わせを簡単に行うことができる。
本実施例において、ワークWは、携帯電話の筐体の下型(ベース)であり、ネジ締め装置100は携帯電話の他の部品である筐体の上型(カバー)を下型にネジ止めする。別の実施例では、ワークWはHDDで、ネジ締め装置100はハードディスク装置(Hard Disc Drive:HDD)のスピンドルハブに部品としてのクランプリングをネジ止めする。スピンドルハブはスピンドルモータに結合されて磁気ディスクを搭載して磁気ディスクと共に回転する。クランプリングは、複数のネジ穴を有して一定の押圧力でスピンドルハブの周りに取り付けられた磁気ディスクをスピンドルハブに固定する。
ドライバ120は、(ドライバ)ビット125を回転して自動でネジ10を締め付け、図3に示すように、スリーブ121と、ビット125と、ビット駆動系と、各種検出部と、吸引系と、を有する。
図4(a)は、スリーブ121の下部(図3に示すB部)の拡大断面図である。図4(b)は、図4(a)に示すスリーブ121の底面図である。図5(a)は、図4(a)に示す回転位置から時計回りに45°回転したスリーブ121の下部の拡大断面図である。図5(b)は、図5(a)に示すスリーブ121の底面図である。図6(a)は、従来のスリーブ2の下部の断面図である。図6(b)は、図6(a)に示すスリーブ2の底面図である。
スリーブ121は、中空のほぼ円筒形状を有し、図4(b)及び図5(b)に示すように、ネジ10の上面16を吸着可能な中央の吸着孔(中空部)122と、縁部に設けられた溝123と、を有する。吸着孔122はビット125とシャフト128の一部を収納する。スリーブ121の材料は限定されない。本実施例では、スリーブ121は樹脂製で、吸着孔122や溝123は射出成型によって形成される。
従来技術の中にはネジの締結時にビットに対してスリーブが固定され、ネジのネジ頭が吸着孔に挿入され(即ち、吸着孔がネジの上面よりも大きく)、ビットが回転してネジを締結するものがある。しかし、この場合、ネジの締結中に、ネジ頭の側面がスリーブの吸着孔の内面と接触して磨耗して磨耗粉を発生する可能性がある。本実施例では、スリーブ121はビット125と共に回転し、ネジ10とスリーブ121も一体的に回転する。また、吸着孔122の大きさはネジ10の上面16よりも小さい。これにより、摩耗粉の発生を防止している。
吸着孔122は、その断面形状又は底面から見た形状が、図4(b)や図5(b)に示すように、ネジ10のリセス13及びビット125の先端部125aの形状と同様に、十字形状を有する。これに対して、従来技術では、図6(a)及び図6(b)に示すように、スリーブ2の吸着孔3は円筒形状を有する。ビット4はビット125と同一構造を有する。
このように、本実施例の吸着孔122は従来のような円筒形状を有さない。ビット125はスリーブ121と一体的に回転するために円筒形状でなくてもよい。より詳細には、吸着孔122は、底面から見た形状が、図4(b)に示すように、リセス13の外径R1を有する点線で示す円Cの内側に退避した4つの凹部122aを有する。かかる凹部122aをネジ10のリセス13の姿勢又は位相を検出する検出部位に使用することができる。かかる検出部位は、スリーブ121がある回転位置の場合にリセス13の上に配置され、別の回転位置にある場合にリセス13上から外れることが必要である。ここで、吸着孔122を底面から見た場合に円筒形状スリーブ121の中心又はビット125の中心は、ビット125又はスリーブ121の中心軸Kに対応する中心Jとなる。円Cは、中心Jを中心としてビット125の先端部125aの最外径を通り、仮想的に形成された円である。
本実施例では、凹部122aの数は十字形状に対応して4つ設けられている。十字形状の吸着孔122は、4つの凸部122bを有し、各凸部122bは中心Jから放射方向に延びる中心線122b1を有する。即ち、各凸部122bは中心線122b1に沿って延びている。中心線122b1は、それに関して各凸部122bが線対称になる線をいう。図4(b)及び図5(b)に示すように、吸着孔122を底面から見ると、4つの中心線122b1は中心Jの周りに90°の間隔で広がっている。
溝123は、図7及び図8に示すように、ネジ10の中心軸17とスリーブ121(又はビット125)の中心軸Kが一直線上にあってネジ10の上面16にスリーブ121の底面121aが非接触で近接して配置された場合にスリーブ121の回転位置に応じて吸着孔122内の圧力を変動させる。溝123は、スリーブ121の回転位置に応じて吸着孔122をスリーブ121の外部の外気に接続及び切断する。
ここで、図7(a)は、スリーブ121とネジ10の上面16とが近接した状態(約0.2mm)におけるスリーブ121の下部の断面図である。図7(b)は、図7(a)をEE方向から見た断面図である。図8(a)は、図7(a)とは中心Jに関して時計回りに45°だけ回転した位置に配置されたスリーブ121の下部の断面図である。図8(b)は、図8(a)をFF方向から見た断面図である。なお、図7(b)及び図8(b)においては、ビット125又はスリーブ121の中心軸Kとネジ10の中心軸17とは鉛直方向に一直線になっている。
「非接触」とは、ネジ10の上面16とスリーブ121の底面121aが接触した状態でスリーブ121が回転(空回り)すると接触部位で発塵や変形が発生するため、これを除く趣旨である。また、「近接」とは、圧力変動を検出可能な位置であり、本実施例では、0.2mmであるが、ネジ10のリセス13の形状(例えば、十字形状や星型形状)や大きさ(例えば、外径R1など)によって異なる。
溝123は、吸着孔122に非接触に形成され、吸着孔122と溝123とは隔壁121cによって分離されている。溝123と吸着孔122が接続していると、圧力変動の効果が小さくなる。
溝123は、図4(b)及び図5(b)に示すように、スリーブ121の底面121aに形成される。また、溝123は、スリーブ121の底面121aと円筒側面121bにおいて大気開放されている。溝123は、スリーブ121の底面121aから見るとU字形状の輪郭を有し、四分の一の球体と半円筒を組み合わせたような形状を有する。
溝123は、中心Jから放射方向に延びる中心線123aを有し、中心線123aと最も近い両側の凸部122bの中心線122b1とのなす角度はそれぞれ45°である。中心線123aは、それに関して溝123が線対称になる線をいう。溝123は、スリーブ121の円筒側面121bに接続された開放端123bを有する。開放端123bの大きさは限定されない。
溝123は、スリーブ121の底面121a側から見ると、中心Jを中心としてビット125の先端部125aの最外径を通る円Cを仮想的に形成した時に円Cの内側に張り出している。本実施例においては、この張り出し部は、概ね上述の四分の一の球体部(図8(b)の123c)である。この張り出し部123cはスリーブ121の回転位置に応じてリセス13の上に配置されたりリセス13から外れたりする。
図7(a)や図7(b)に示すように、張り出し部123cがリセス13から外れている場合には、スリーブ121の底面121aとネジ10の上面16とが若干離れているものの、吸着孔122とリセス13により吸着孔122の内部圧力はほぼ一定に維持される。一方、図8(a)や図8(b)に示すように、張り出し部123cがリセス13上に配置されている場合には、吸着孔122とリセス13と溝123が接続して吸着孔122がリセス13を介して大気開放された溝123に接続されるため吸着孔122の内部圧力が低下する。
ビット125の先端部125aの山部126の数又は吸着孔122の凸部122bの数をn(本実施例ではn=4)とする。この場合、溝123の中心線123aと、溝123に最も近いビット先端部125aの山部126の図示しない中心線又は溝123に最も近い吸着孔122の凸部122bの中心線122b1とがなす角度は360°/2n(本実施例では45°)に設定してもよい。溝123に最も近いビット先端部125aの山部126又は吸着孔122の凸部122bは溝123の両側に存在する。溝123の中心線123aと両側の中心線122b1(126a)とのなす角度が360°/2nで等しくなると、溝123とリセス13の谷部13aが位置合わせされた後でスリーブ121を右回りに360°/2nだけ回転しても左回りに360°/2nだけ回転してもビット先端部125aの山部126にリセス13の谷部13aを位置合わせすることができる。もちろん回転方向を決めておけば中心J周りに隣接する2つの中心線122b1の間の角度を2つの360°/2n以外の角度に分けてもよい。
溝123は、スリーブ121が図7(a)及び図7(b)に示す回転位置の場合にリセス13上から外れる。また、溝123は、スリーブ121が図8(a)及び図8(b)に示す回転位置の場合にリセス13の上に配置される。図8(b)においては、溝123の四分の一の球体部123cがリセス13の谷部13aの上に配置される。このように、溝123は、スリーブ121がある回転位置の場合にリセス13の上に配置され、別の回転位置にある場合にリセス13上から外れる。
図7(a)と図7(b)はリセス13の谷部13aの位相とスリーブ121の凸部122b(又はビット125の先端部125aの山部126)の位相とが一致し、中心線13a1と中心線122b1とが一致した状態を示している。図7(a)に示す矢印AC1はエア流路を示している。エア流路AC1はスリーブ121の底面121aとネジ10の上面16との間の隙間によって形成される。スリーブ121の底面121aとネジ10の上面16とが近接して配置されているのでエア流路AC1を流れる流量は小さい。
図8(a)と図8(b)はリセス13(の谷部13a)の位相とスリーブ121(の凸部122b)の位相とが45°ずれ、4つの谷部13aの1つの中心線13a1と中心線123aとが一致している状態を示している。図8(a)に示す矢印AC2はエア流路を示している。エア流路AC2はスリーブ121の底面121aとネジ10の上面16との間の隙間と溝123の開放端123bによって形成される。開放端123bから大量の外部エアが流入するため流量が大きい。エア流路AC1の流量とエア流路AC2の流量が検出され、溝123は両者間の圧力差が検出される程度の深さと開放端123bの大きさを有する。本発明は、溝123の深さや開放端123bの大きさを限定するものではない。
ビット125は、先端部(下端部)125aと基端部(上端部)125bを有する円筒部材である。
先端部125aは、ネジ10のリセス13に係合可能であり、図4(b)及び図5(b)に示すように、十字形状を有する。なお、本発明はビット125がネジ10を締め付け可能である限り、ビット先端部125aの形状を限定するものではない。ビット125の先端部125aがネジ10のリセス13と係合して回転することにより、ネジ10をワークWに締結することができる。
本実施例のビット125の先端部125aは4つの山部126を有する。各山部126はリセス13の各谷部13aに嵌合可能であり、図4(b)に示すように、先端部125aをスリーブ121の底面側から見た場合の大きさは、図2(b)に示すように、ネジ10を上面側から見たリセス13の大きさよりも若干小さい。各山部126は中心Jから放射方向に延びる中心線126aを有する。即ち、各山部126は中心線126aに沿って延びている。中心線126aは、それに関して山部126が線対称になる線をいう。図4(b)及び図5(b)に示すように、先端部125aを底面から見ると、4つの中心線126aは中心Jの周りに90°の間隔で広がっている。
本実施例では、ビット125は磁性部材で構成され、ネジ10は金属から構成されている。このため、先端部125aがリセス13に係合するとネジ10はビット125に固定される。この結果、収納部110に収納されたネジ10のリセス13にビット125が挿入及び係合され、上昇するとネジ10をピックアップすることができる。但し、吸着孔122はネジ10の上面16を吸着するので磁力による吸着は必ずしも必須ではない。
基端部125bは、ビット駆動系のシャフト128の下端部128aと機械的に係合する。係合するための両者の形状は問わない。この結果、ビット125とシャフト128は一体として回転する。
ビット駆動系は、ビット125を回転駆動する機構であり、シャフト128と、ギアボックス130と、サーボモータ132と、を有する。
シャフト128は、下端部128aと、係合部128bと、上端部128cと、を有する円筒部材である。下端部128aは、ビット125の基端部125bと係合する。係合部128bの周りにはビット駆動系のギアボックス130のギア131eが固定される。この結果、シャフト128はギア131eと一体に回転する。シャフト128の上端部128cには、図9に示すように、切り欠き128c1が設けられている。ここで、図9は、図3のA部の拡大側面図及び断面図である。なお、ビット125とシャフト128を別体として設けるかどうかは選択的であり、ビット125とシャフト128が一体であってもよい。
サーボモータ132はモータ軸133を有し、図示しないケーブルを介して電源が供給される。モータ軸133の周りにはギアボックス130のギア131aが取り付けられている。このため、モータ軸133とギア131aとは一体として回転する。モータ軸133はギア131aと共にギアボックス130の蓋部131iに設けた穴からギアボックス130の内部に突出している。
また、各種検出部は、回転位置検出センサ140と、回転位置検出センサ(エンコーダ)144と、真空監視センサ146と、を有する。
ギアボックス130は、モータ132の動力(トルク)をシャフト128に伝達する。ギアボックス130のケース131fはスリーブ121に固定され、ケース131fは蓋部131iが取り付けられて覆われている。ギアボックス130は、ギア列(ギア131a乃至131e)を有する。ギア131aはモータ132のモータ軸133の周りに固定されてモータ軸133と共に回転する。ギア131bは、軸131gの周りに固定されてギア131aに噛み合っている。軸131gはケース131fに回転自在に保持されている。軸131gの周りには更にギア131cが固定されてギア131dに噛み合っている。ギア131dは軸131hの周りに固定されてギア131eに噛み合っている。軸131hはケース131fに回転自在に保持されている。この結果、モータ132の回転力はシャフト128に伝達される。
回転位置検出センサ140は、シャフト128の回転位置を検出することによって、それに係合するビット125が回転位置(原点位置)にあることを検出する。回転位置検出センサ140は、光センサであり、図9に示すように、発光部141aと、受光部141bと、発光部141aと受光部141bとを支持するフレーム142と、を有する。但し、センサ140の種類は透過型の光センサに限定されない。
発光部141aから受光部141bに向かう光Lはシャフト128の上端部128cの切り欠き128c1が図9に示す位置にあるときのみ検出することができる。受光部141bによる検出結果は制御部170に伝達される。フレーム142は平板形状の支持プレート134に固定され、支持プレート134は、ネジ135によってL字形状の支持プレート136の一端に固定される。支持プレート136の他端はネジ137によりギアボックス130の蓋部131iに固定される。この結果、フレーム142はギアボックス130に固定される。
切り欠き128c1は断面円弧形状をシャフト128の長手方向に切り取ったものである。切り欠き128c1の鉛直方向の端面はシャフト128の鉛直方向の中央軸から偏芯している。切り欠き128c1の鉛直方向の端面をシャフト128の鉛直方向の中央軸に設けるとシャフト128が180度回転した場合もセンサ140が同様に検出してシャフト128の回転位置を一義的に検出することができなくなってしまうからである。もっとも180度回転してもビット125は対称であるために端面が中央に形成されてもよい。センサ140が検出する切り欠き128c1は図9に示す形状に限定されない。例えば、凹部(溝)や突起として構成されてもよい。
上述したように、ネジ10はリセス13の位相又は姿勢が一定方向に揃わずに収納部110に搭載される。従って、回転位置検出センサ140によってビット125を原点位置に位置決めしてもリセス13に無回転で挿入及び係合されるとは限らない。換言すれば、ビット125原点位置に位置決めするだけではビット125の先端部125aはネジ10のリセス13に位置合わせ(アライメント)されていない。
回転位置検出センサ144は、モータ132の回転角度を検出するエンコーダである。回転位置検出センサ144はモータ軸133に設けられ、モータ軸133の回転位置を検出するロータリエンコーダであり、制御部170に接続される。回転位置検出センサ144はビット125の回転位置を検出するのにも使用可能であり、この場合には、制御部170は回転位置検出センサ140か144のいずれか一つを使用すればよい。本実施例では、ビット125を原点位置に復帰させるのに回転位置検出センサ140を使用し、真空監視センサ146の検出結果に基づいてビット125の先端部125aとネジ10のリセス13のアライメントに回転位置検出センサ144を使用する。
ロータリエンコーダがアブソリュート方式であれば回転位置検出センサ140と同様に絶対位置を検出することができる。従って、この場合は、回転位置検出センサ144はビット125が原点位置にあるときのモータ軸133の回転位置(回転角度)を原点に設定してこれを検出する。一方、ロータリエンコーダがインクリメント方式であれば2つのパルスの位相ずれから回転方向と回転量を計算することができる。この場合の回転量はモータ軸133の回転量であるからビット125の回転量に変換するにはモータ軸133の回転量にギア比を掛けなければならない。また、ビット125が原点位置に復帰するのに必要な回転量が算出された後はそれをモータ軸133の回転量に変換しなければならない。
吸引系(真空引き手段)は、スリーブ121の吸着孔122の内部を吸引して内部圧力を低下させ、スリーブ121の底部にネジ10を真空吸着する機能を有する。吸引系は、吸引プラグ150と、吸引プラグ150に取り付けられた配管152と、真空ポンプ154と、を有する。吸引プラグ150は、スリーブ121の吸着孔122に接続されたネジ部151aと、配管152に接続される接続部151bと、を有する。配管152は、一端が吸引プラグ150の接続部151bに接続され、他端が真空ポンプ154に接続され、途中で真空監視センサ146に接続される。なお、配管152は、金属製の配管のみならず、ホースやチューブなどの弾性部材も含む。真空ポンプ154には、周知の構造を適用することができる。
真空監視センサ146は、配管152(従って、スリーブ121の吸着孔122)の内部圧力を検出する圧力計や流量計であり、検出結果を制御部170に通知する。
移動部160は、収納部110とワークWとの間でドライバ120を3次元的に移動する機能を有し、X軸ロボット162と、Y軸ロボット164と、Z軸ロボット166とを有する。X軸ロボット162は、図1に示す横方向にドライバ120を移動させる。Y軸ロボット164は、図1に示す縦方向にドライバ120を移動させる。Z軸ロボット166は、図1の紙面に垂直な方向にドライバ120を移動させる。これらのロボットには当業界で周知の構成を適用することができ、ここでは詳しい説明を省略する。
制御系は制御部170を有する。制御部170は、ネジ10のピックアップ時、ネジ10の搭載時、ネジ10の締結時などに、ドライバ120のサーボモータ132の回転と移動部160によるドライバ120の移動を制御する。制御部170は、MPUなどのプロセッサとRAMやROMなどの図示しないメモリを含む。制御部170は、ネジ10を収納する収納部110からネジ10をピックアップし、ワークWに部品をネジ10で固定するようにドライバ120と移動部160の動作を制御する。
以下、図10乃至図12に示すフローチャートを参照してネジ締め装置100(制御部170)の動作について説明する。
まず、初期作業を行う(ステップ1100)。
初期作業では、図11に示すように、まず、スリーブ121及びビット125の形状のティーチングを行う(ステップ1102)。ステップ1102では、例えば、スリーブ121の凸部122bの中心線122b1及びビット125の先端部125aの山部126の中心線126aが90°(より一般的には、360°/n)間隔に広がり、溝123の中心線123aが隣接する2つの中心線122b1又は126aに対して45°(より一般的には、360°/2n)の角度で配置されていることを制御部170に記憶させる。
次に、ネジ10の配置のティーチングを行う(ステップ1104)。ステップ1104では、例えば、収納部110に配置された複数のネジ10の穴112の中心座標を制御部170に記憶させる。これにより、制御部170は、各ネジ10の中心軸17にスリーブ121又はビット125の中心軸Kを整列させる際の移動部160の各ロボットの移動量を算出してこれを記憶する。
次に、移動部160を介してネジ10をピックアップする(ステップ1200)。以下、図12を参照して、ステップ1200のピックアップ動作の詳細について説明する。
まず、制御部170は、ネジ10を収納する収納部110が図示しない作業台に載置されたかどうかを判断する(ステップ1202)。かかる判断は、図示しない作業台に設けられた図示しない検出部やカメラの検出結果を利用することができる。また、同時に、制御部170は、収納部110にネジがあるかどうかを判断する。本実施例では、収納部110は一つのネジ10のみを収納するが、本発明は複数のネジ10を同時にピックアップしてワークWに取り付ける場合にも適用可能である。例えば、6本のネジを6つのドライバ120を使用して同時にピックアップする場合には、制御部170は、収納部110に所定数(即ち、6本)のネジ10が収納されているかどうかを判断する。この判断は収納部110のネジ穴が塞がっているかどうかを検出する検出部やカメラを収納部110に設ける。制御部170は、これらの条件が満足されるまでピックアップを待機し、必要に応じてエラー表示を行う。なお、ステップ1202においては、ネジ10のリセス13の方向は不定であり、制御部170は把握していない。
次に、ビット125を原点位置に復帰させる(ステップ1204)。ステップ1204においては、本実施例の制御部170は、回転位置検出センサ140の検出結果を取得し、これに基づいてサーボモータ132を駆動してシャフト128を回転してビット125を回転する。ステップ1204では、ビット125が原点位置にないと判断した場合、制御部170はモータ132を介してセンサ140の受光部141bが光Lを検出するまで、即ち、ビット125が原点位置に移動するまで、ビット125を回転する。これにより、ビット125は、図9に示す状態に位置決めされる。
次に、ドライバ120をスリーブ121の底面121aがネジ10の上面16に非接触でかつ近接するようなサーチ位置まで下降する(ステップ1206)。サーチ位置は、例えば、スリーブ121の底面121aとネジ10の上面16との間の距離が、図7(a)や図8(a)に示す距離である。ステップ1206においては、制御部170は、移動部160のZ軸ロボット166を介してドライバ120を下降させる。
次に、サーボモータ132を介してスリーブ121とビット125を回転させる(サーチ)(ステップ1208)。最小の回転角度は、360°/nである。最大の回転角度は360°である。例えば、ステップ1206の結果、溝123が図7(b)に示すような位置(但し、溝123の中心線123aと隣接する中心線122b1(及び126a)の角度は45°である必要はない)にあるものとする。すると、中心Jの周りに時計回りにスリーブ121とビット125を回転させると、溝123の中心線123aが、図8(b)に示すように、最初に右側の谷部13aの中心線13a1に一致する位置に溝123が到達する。この時、図8(a)に示すように、エア流路AC2の流量が大きいために圧力低下がピークとなる。この圧力低下のピークは、ステップ1208の回転角度が360°であれば、その後、90°毎に現れる。
本実施例は、一つの溝123を設けているが、本発明は溝123の数を限定するものではない。例えば、図14及び図15に示すように、スリーブ121に4つの溝123を設けてもよい。ここで、図14(a)は、スリーブ121とネジ10の上面16とが近接した状態(約0.2mm)におけるスリーブ121の下部の断面図である。図14(b)は、図14(a)をE1−E1方向から見た断面図である。図14(b)は、図7(b)の変形例であり、4つの溝123をスリーブ121の底面121aに設けている。図15(a)は、図14(a)から時計回りに45°回転した位置に配置されたスリーブ121の下部の断面図である。図15(b)は、図15(a)をF1−F1方向から見た断面図である。なお、図15(b)においては、スリーブ121(ビット125)の中心軸Kとネジ10の中心軸17とは鉛直方向に一直線になっている。
図14(b)及び図15(b)は4つの溝123を有し、図7(b)及び図8(b)は一つの溝123を有するが、溝123の構造は同一である。溝123は、中心Jから放射方向に延びる中心線123aを有し、中心線123aと最も近い凸部122bの中心線122b1とのなす角度は45°である。中心軸Kに関して中心線123aは90°間隔で分布している。各溝123は、スリーブ121の底面121a側から見ると、中心Jを中心としてビット125の先端部125aの最外径を通る円Cを仮想的に形成した時に円Cの内側に張り出している。この張り出し部はスリーブ121の回転位置に応じてリセス13の上に配置されたりリセス13から外れたりする。
図14(a)や図14(b)に示すように、張り出し部がリセス13から外れている場合には、スリーブ121の底面121aとネジ10の上面16とが若干離れているものの、吸着孔122とリセス13により吸着孔122の内部圧力はある程度一定に維持されている。一方、図15(a)や図15(b)に示すように、張り出し部がリセス13上に配置されている場合には、吸着孔122とリセス13と溝123が接続して吸着孔122がリセス13を介して大気開放された溝123に接続されるため吸着孔122の内部圧力が低下する。
図14(a)と図14(b)はリセス13の谷部13aの位相とスリーブ121の凸部122b(又はビット125の先端部125aの山部126)の位相とが一致し、中心線13a1と中心線122b1(又は125a1)とが一致した状態を示している。図14(a)に示す矢印AC3はエア流路を示している。エア流路AC3はスリーブ121の底面121aとネジ10の上面16との間の隙間によって形成される。エア流路AC3を流れる流量は、エア流路AC1と同様に小さい。
図15(a)と図15(b)はリセス13(の谷部13a)の位相とスリーブ121(の凸部122b)の位相とが45°ずれ、4つの谷部13aの中心線13a1と4つの溝123の中心線123aとが一致している状態を示している。図15(a)に示す矢印AC4はエア流路を示している。エア流路AC4はスリーブ121の底面121aとネジ10の上面16との間の隙間と4つの溝123の開放端123bを含み、開放端123bからは外部エアが流入するため流量が大きい。エア流路AC3の流量とエア流路AC4の流量が検出される圧力である。
エア流路AC3とエア流路AC4の流量差はエア流路AC1とエア流路AC2の流量差よりも大きい。従って、圧力低下のピーク値は略4倍になり、S/N比が改善するので圧力低下のピーク位置を検出する精度が向上する。また、4つの溝123を使用して4つのエア流路AC4の流量の合計を使用することによって一つの溝123を使用する場合よりも溝123とリセス13を作成する際の形状誤差がピーク位置に与える影響を低減することができる(平均化効果)。
再び図12に戻って、次に、制御部170は、真空監視センサ146の検出結果と回転位置検出センサ144の検出結果から溝123の中心線123aがネジ10のリセス13の谷部13aの中心線13a1に一致したときのスリーブ121(ビット125)の回転位置の情報を取得する(ステップ1210)。制御部170は、ステップ1208でビット125を360°/nだけ回転した場合には圧力低下ピークの位置(即ち、図8(b)に示すスリーブ121(ビット125)の回転角度)の情報を取得する。制御部170は、ステップ1208でビット125を360°回転した場合には4つの圧力低下ピークの位置の一つの情報を選択する。また、制御部170は、ステップ1102のティーチング情報から補正量を取得する(ステップ1210)。補正量は、溝123の中心線123aとビット125の中心線126aとの角度差であるから、本実施例では45°である。この結果、制御部170は、図8(b)に示すビット125の回転位置から45°ずらした位置でビット125の先端部125aの位相がネジ10のリセス13の位相と一致することを理解し、このスリーブ121(ビット125)の回転角度(アライメント角度)の情報を取得する。
次に、制御部170は、ステップ1210で取得したアライメント角度の位置までスリーブ121(ビット125)を回転する(ステップ1216)。この結果、ビット125の先端部125aの位相がネジ10のリセス13の位相と一致する。
次に、ドライバ120を下降し(ステップ1218)、図13に示すように、ビット125の先端部125aをネジ10のリセス13に嵌合し、ネジ10を吸着する(ステップ1220)。ここで、図13は、ビット125の先端部125aがネジ10のリセス13に嵌合した状態の断面図である。
アライメントは高精度に行われるために、ビット125の先端部125aがネジ10のリセス13と無回転で嵌合することができる。この結果、ビット125の先端部125a及び/又はネジ10のリセス13の変形や損傷、磨耗粉の発生を防止することができる。この結果、磨耗粉による製品の汚染、電気的ショート、トルク伝達ロスの発生、ビット125の短命化、ビット125の交換による稼働率の低下などの問題を解決することができる。
その後、制御部170は、移動部160のZ軸ロボット166を介してネジ10を吸着したままドライバ120を上昇してネジのピックアップを完了する(ステップ1222)。上述したように、ビット125は係合したネジ10のピックアップに磁力を使用することもできる。
再び図10に戻って、次に、制御部170は、移動部160のX軸ロボット162とY軸ロボット164を介してドライバ120をワークWと部品のネジ穴上空まで移動させる(ステップ1300)。移動部160にはネジ穴の中心位置の座標が予め入力されている。次に、制御部170は、移動部160のZ軸ロボット166を介してドライバ120を下降させ、ネジ穴にネジ10を接触させる(ステップ1400)。続いて、制御部170は、モータ132を介してネジ10をネジ穴に締結する(ステップ1500)。
ステップ1500の締結は本締めを意味するが、その前に必要に応じて仮締めを行ってもよい。仮締めはネジ10を着座させずに所定量だけ締め付けることをいう。本締めは、ネジを完全に締め付けて固定することをいう。しかし、ネジの本数が多い場合、部品のネジ孔と被締結物のネジ孔がずれてその後のネジ締めが困難又は不能になり易い。そこで、部品の取り付け位置を調整することができるように、ネジを着座位置から浮かせる仮締めを行う場合がある。この場合は、仮締め終了後に全てのネジを本締めする。本締めは着座とトルクアップを経る。着座は、ネジの座面がネジ穴の回りの面に接触することをいい、トルクアップとは着座したネジを所定のトルクで締め付けて固定することをいう。
次に、制御部170は全てのネジ穴にネジ10が締結されたかどうかを判断する(ステップ1600)。締結されたと判断すればネジ締め処理を終了し、締結されていないと判断すればステップ1200に帰還する。
本実施例では、ビット125の原点位置を回転位置検出センサ140の検出結果によって行うが、回転位置検出センサ144の検出結果によって行ってもよいことは上述のとおりである。
本実施例では、スリーブ121の底面121aに溝123を設けているが、本発明の圧力変動手段はこれに限定されない。例えば、図16に示すように、ネジ10Aに溝18を設けてもよい。ネジ10Aはネジ10と溝18がある点で異なる。この場合には、スリーブ121の底面121aに溝123を設ける必要がない。溝18は、ネジ10Aの上面16Aにスリーブの底面が非接触で近接して配置された場合にスリーブの回転位置に応じて吸着孔内の圧力を変動させる。ここで、図16は、ネジ10Aの拡大平面図である。
溝18は、リセス13に非接触に形成され、リセス13と溝18とは隔壁19によって分離されている。溝18は、ネジ10Aの上面16Aに形成される。また、溝18は、ネジ10Aの上面16Aとネジ10Aの側面14において大気開放されている。溝18は、ネジ10Aの上面側から見るとU字形状の輪郭を有し、四分の一の球体と円筒を組み合わせたような形状を有する。溝18は、中心17aから放射方向に延びる中心線18aを有し、中心線18aと最も近い谷部13aの中心線13a1とのなす角度は45°である。中心線18aは、それに関して溝18が線対称になる線をいう。溝18は、ネジ頭の側面14に接続された開放端18bを有する。開放端18bの大きさは限定されない。
溝18は、ネジ10Aの上面側から見ると、中心17aを中心としてリセス13の外径R1を有する円C1を仮想的に形成した時に円C1の内側に張り出している。本実施例においては、この張り出している部位は上述の四分の一の球体部である。この張り出し部はスリーブの回転位置に応じてスリーブの凸部の下に配置されたり凸部から外れたりする。このように、溝18は溝123と同じ機能を有する。
本実施例の吸引系は、ビット125をスリーブ121と共に回転させようとすると、吸引プラグ150がスリーブ121に固定されているから吸引プラグ150も回転することになる。しかし、吸引プラグ150には真空引き用の配管152が取り付けられるため、吸引系を回転させにくい。そこで、ドライバ120の下部を図17に示す構造に変更してもよい。
図17においては、ワークWは、携帯電話の筐体の下型(ベース)であり、ネジ締め装置100は携帯電話の他の部品である筐体の上型(カバー)Pを下型にネジ止めする。上型Pには、複数のザグリ穴Paが設けられており、ザグリ穴Paにネジ10を通して上型Pを下型にネジ止めする。
図17は、ドライバ120Aの下部の部分拡大断面図である。図18は、図17に示す要部の分解斜視図である。図17及び図18を参照すると、本実施例のドライバ120Aの下部は、スリーブ180A及び180Bと、スリーブホルダ190と、カバー200と、ビット210と、吸引プラグ150と、を有する。スリーブ180B、スリーブホルダ190、カバー200、ビット210は同軸上に配置される。
スリーブ180Aは、中空の薄肉円筒部材であり、Z軸方向に延びる中央貫通孔181aと、径方向に延びる側面貫通孔181bと、環状底面181cと、を有する。Z軸方向はビット210の長手方向に一致する方向である。スリーブ180Aをスリーブ180Bと一体に構成していないため、スリーブ180Bをビット210と共に回転してもスリーブ180Aは回転しない。スリーブ180Aと吸引プラグ150はユニット化されている。
スリーブ180Aは、中央貫通孔181aにビット210の基部213の一部を収納する。スリーブ180Aの下部に形成された側面貫通孔181bには吸引プラグ150が装着される。底面181cは、スリーブホルダ190のフランジ192が載置される。
スリーブ180Bは、係合部182と、中央部183と、フランジ184と、先端部185と、を有し、スリーブホルダ190に対して移動可能にスリーブホルダ190内に収納される。即ち、スリーブ180Bは、スリーブホルダ190内でZ軸方向に移動することができると共にZ軸周りに回転することができる。
係合部182は、中空円筒形状を有し、スリーブ180Bの中で最上部に位置する。係合部182は、Z軸に平行な上端面182aと、一対の同一形状の溝182bを有する。上端面182aは、圧縮バネ215に直接に又はワッシャ217を介して接する。各溝182bには突起216が挿入され、各溝182bはZ軸方向に延びる。溝182bの延びる方向は限定されないが、Z軸方向に延びればビット210が時計回りに回転しても反時計回りに回転してもビット210の回転がスリーブ180Bに伝達され易い。溝182bの数や間隔は突起216の数や間隔に対応する。溝182bの幅は突起216の幅(径)よりも多少広い。ビット210が回転すると、突起216が溝182bを規定する輪郭面182cに接触して押圧する。この結果、ビット210と共にスリーブ180Bが回転する。
中央部183は、外周側面183aを介してスリーブホルダ190の第2の円筒部193の側面193aと接触する。中央部183の外径はスリーブホルダ190の第2の円筒部193の内径と略等しく、第2の円筒部193に所定の嵌め合いで嵌合している。中央部183の外径はスリーブホルダ190の第1の円筒部191の内径よりも大きいので、図17では、スリーブ180Bが第1の円筒部191側から挿入されるように描いているが、実際には、スリーブホルダ190の下側(第2の円筒部193)側からスリーブホルダ190内に挿入される。
フランジ184は、圧縮バネ215によってカバー200の底部201の内面201a(貫通孔201b近傍)に押圧される。押圧力は吸着孔186内の減圧時、スリーブ180BがZ2方向に移動する力より僅かに大きいものとする。これにより、スリーブ180BのZ軸方向の位置が決定される。
先端部185は、ネジ10の上面16の一部を真空吸着するための吸着孔186を有する。吸着孔186は、スリーブ180Bの中央貫通孔であり、径の違う二種類の円筒を結合した形状を有する。しかし、上述したように基部213と作用部214とを同一径にすることも可能なため、その場合、吸着孔186は同一径の円筒形状を有する。吸着孔186は、基部213を収納可能な第1の孔部186aと、作用部214は収納可能であるが基部213は収納不可能な第2の孔部186bを有する。本実施例では、先端部185の外形及び第2の孔部186bの径はビット210が係合するネジ10のネジ頭12の径よりも小さい。
スリーブ180Bは制電性樹脂から構成される。樹脂により、スリーブ180Bのスリーブホルダ190に対する回転が円滑になり、制電性材料により電荷によるスリーブ180Bの破壊を防止することができる。
スリーブホルダ190は、断面凸形状を有し、本実施例ではステンレスによって構成される。スリーブホルダ190は、第1の円筒部191と、フランジ192と、第2の円筒部193と、中央貫通孔194と、を有する。
第1の円筒部191は、スリーブ180Aの内部に挿入され、スリーブ180Aの内径と略等しい外径を有し、スリーブ180Aの内面に接触する。第1の円筒部191は、中空円筒形状を有し、側面191aに径方向に延びる側面貫通ネジ191bを有し、スリーブ180Aの側面貫通孔181bを通して吸引プラグ150のネジ部151aが装着される。
フランジ192は、スリーブ180Aの底面181cと接触して位置決めする。
第2の円筒部193は、第1の円筒部191よりも径が大きい。第2の円筒部193にカバー200の側面202の内面202aが接触してカバー200が挿入される。第2の円筒部193の径はスリーブ180Bの中央部183の径に略等しい。
第2の円筒部193は、中空円筒形状を有し、側面193aの上部に径方向に延びる側面貫通孔193bを有する。側面貫通孔193bは、カバー200の側面202の側面貫通孔202bに位置合わせされるネジ孔である。但し、側面貫通孔202bはZ軸方向に延びる長円である。側面貫通孔193bと202bには、ネジ204のネジ部204aが装着されカバー200はスリーブホルダ190に固定される。第2の円筒部193は、スリーブ180BをZ軸方向に移動可能に収納するとともにZ軸周りに回転可能に収納する。
中央貫通孔194は、断面凸形状を有し、スリーブ180Bの吸着孔186に接続される。中央貫通孔194は、第1の円筒部191に形成される第1の穴部194aと、第2の円筒部193に形成される第2の穴部194bとを有する。第1の穴部194a及び第2の穴部194bは円筒形状を有し、第2の穴部194bの径は第1の穴部194aの径よりも大きい。第1の穴部194aは、ビット210と圧縮バネ215を収納している。第2の穴部194bは、ビット210、圧縮バネ215、ワッシャ217、スリーブ180Bを収納している。
カバー200は、上面が開口した中空円筒形状を有し、底部201と側面202とを有する。
底部201は、内面201aにおいてスリーブ180Bのフランジ184に接触する。底部201の中央には中央貫通孔201bが形成される。スリーブ180Bの中央部183の外周側面183aとスリーブホルダ190の第2の円筒部193の側面193aの径が略等しいので、この境界における空気の流入を少なくして減圧環境を維持している。
側面202の上部には、側面貫通孔202bが径方向に形成される。側面貫通孔193bと202aにはネジ204のネジ部204aが挿入され、これによってカバー200はZ軸方向においてスリーブホルダ190に固定される。但し、側面貫通孔202bはZ軸方向に長円に形成されている。これによって、カバー200のスリーブホルダ190のZ軸方向の位置は調節可能である。ネジ204と長円である側面貫通孔202bは、カバー200のスリーブホルダ190に対するZ軸方向の位置を調節すると共にカバー200とスリーブホルダ190を固定する固定機構を構成する。カバー200のスリーブホルダ190に対するZ軸方向の位置を調節可能であることは、図17において、スリーブ180BのZ方向位置調節が可能であることを意味する。
ビット210は、Z軸方向に延びる棒状部材であり、端部211と、首部212と、基部213と、作用部214とを有する。
端部211には、シャフト128の図示しない半円筒形状の端部と係合する半円筒形状の係合部211aが上端に形成され、両者は係合することにより円柱を形成する。これにより、駆動系の駆動力がZ軸周りの回転駆動力としてビット210に伝達される。なお、シャフト128とビット210とは一体構造であってもよい。
首部212は、端部211と基部213との間に形成された括れであり、図示しない鋼球(係止部材)を出し入れすることによってビット210をZ軸方向に拘束及び拘束解除する。
基部213は、首部212を介して端部211の下端に結合される。基部213の周りには、圧縮バネ215が設けられ、側面213aの下部には一対の突起216が形成される。
圧縮バネ215は、一端215aがスリーブ180Aに固定された図示しない係止部材に係止され、他端215bがスリーブ180Bの上端面182aに係止される。但し、本実施例では、他端215bは、スリーブ180Bの上端面182aの上に配置されたワッシャ217に係止される。ワッシャ217を設けるかどうかは選択的である。これにより、圧縮バネ215はスリーブ180BをZ1方向に付勢する。圧縮バネ215はスリーブ180Bをカバー200の底部201の内面201aに押圧する。これにより、吸着孔186内の減圧時でも位置を維持することができる。
一対の突起216は、基部213の側面213aに設けられる。突起216はスリーブ180Bの溝182bに係合し、端部211に伝達されたモータ132の駆動力をスリーブ180Bに伝達する。本実施例では、基部213に側面213aをZ軸方向に垂直な方向に貫通する貫通孔を形成して、ピンを挿入して突起216を形成しているが、これに限定されない。
作用部214は、ネジ10のリセス13に係合する先端部214aを先端部に有する。先端部214aの形状はリセス13の形状に対応する。先端部214aがネジ10のリセス13と係合して回転することにより、モータ132から加えられた駆動力でビット210はネジ10をワークWに締結することができる。
ドライバ120Aは、図10に示すステップ1400において、図19(a)に示すように、ザグリ穴Paにネジ10を挿入する。続いて、図19(b)に示すように、モータ132を介してネジ10をザグリ穴Pa内のネジ穴に締結する(ステップ1500)。ステップ1500においては、ビット210とスリーブ180Aがネジ10と共に回転し、スリーブ180B、スリーブホルダ190及びカバー200は静止している。吸引プラグ150が停止しているので配管152が回転できない構造であってもよい。
次に、図20乃至図23を参照して、図12に示すフローチャートの変形例について説明する。図20は、図11に示すフローチャートの変形例であり、図11と同一のステップに対しては同一の参照番号を付して説明を省略する。図20は、図12に示すフローチャートに対してステップ1106を有する点で相違する。図21は、図12に示すフローチャートの変形例であり、図12と同一のステップに対しては同一の参照番号を付して説明を省略する。図21は、図12に示すフローチャートに対してステップ1212と1214とを有する点で相違する。図22は、ネジ10のリセス13の中心軸17と、スリーブ121(ビット125)の中心軸Kの位置ズレがある場合の溝123とリセス13の谷部13aとの位置ズレを示す平面図である。図23は、スリーブ121(ビット125)の回転角度と真空監視センサ146の出力との関係を示すグラフである。
図22に示すように、ネジ10のリセス13の中心軸17(中心17a)と、スリーブ121(ビット125)の中心軸K(中心J)がずれ、リセス13が複数の谷部13aA乃至13aDを有する場合について考える。簡単のため、中心17aと中心Jは図22の横方向(水平方向)にずれているものとし、位置ズレ量をQとする。また、谷部13aA乃至13aDは図22に示す時計回りに配置されているものとする。図22は、溝123がスリーブ121と共に回転し、90°毎に溝123の中心線123aが各谷部13aの中心線13a1と平行になった状態を示している。図22は4つの溝123を示しているが、これは一つの溝123が360°回転しただけである。
溝123の中心線123aが谷部13aAの中心線13aA1と一致した場合の溝123と谷部13aAとの重なり領域123cAは、溝123の中心線123aが谷部13aCの中心線13aC1と一致した場合の溝123と谷部13aCとの重なり領域123cCよりも小さい。溝123の中心線123aが谷部13aBの中心線13aB1と平行に配置された場合の溝123と谷部13aBとの重なり領域123cBは、溝123の中心線123aが谷部13aDの中心線13aD1と平行に配置された場合の溝123と谷部13aDとの重なり領域123cDと等しい。
まず、前提として、制御部170に、中心17aと中心Jとが一致した場合(即ち、位置ズレ量が0である理想状態)が崩れた場合の位置ズレ量と真空監視センサ146が検出する圧力又は流量との関係をティーチングしておく(図20のステップ1106)。これにより、制御部170は、真空監視センサ146の検出結果を取得すると位置ズレ量に変換することができる。
図23は、重なり領域123cA乃至123cDに対応して真空監視センサ146が検出する圧力低下のピークを示している。重なり領域123cBと123cDに対応する圧力低下のピーク値は等しい。重なり領域123cAに対応する圧力低下のピーク値は最低であり、重なり領域123cDに対応する圧力低下のピーク値は最大である。
制御部170が図23に示す情報を取得した場合、制御部170は、重なり領域123cBと123cDのそれぞれに対応する圧力低下のピーク値が等しいため(あるいはその真空監視センサ146の検出結果とステップ1106のティーチングから)、中心17aと中心Jの縦方向(垂直方向の)の位置ズレはないと認識する。また、重なり領域123cAに対応する圧力低下のピーク値と重なり領域123cCに対応する圧力低下のピーク値との差Eから位置ズレ量Qがあると認識する(図21のステップ1212)。制御部170は、重なり領域123cAに対応する真空監視センサ146の検出結果とステップ1106のティーチングから位置ズレ量Qを取得する。あるいは、制御部170は、重なり領域123cCに対応する真空監視センサ146の検出結果とステップ1106のティーチングから位置ズレ量Qを取得してもよい。更には、制御部170は、重なり領域123cAに対応する真空監視センサ146の検出結果とステップ1106のティーチングから位置ズレ量Qと、重なり領域123cCに対応する真空監視センサ146の検出結果とステップ1106のティーチングから位置ズレ量Qとの合計を2で割った値から位置ズレ量Qを取得してもよい。
次に、制御部170は、この位置ズレ量Qを0にするように、移動部160を駆動する(ステップ1214)。これにより、中心17aと中心Jとが一致する。
なお、本実施例では溝123の数は一つであり、制御部170はステップ1212においてスリーブ121とビット125を360°回転する。これは、複数の溝(例えば、4つの溝123)を使用すると真空監視センサ146は図23において各溝のズレの合計を各ピークとして検出してしまい、各ピーク量が等しくなり、中心軸17とKの位置ズレ量が分からなくなる虞があるからである。
本実施例では、中心17aと中心Jとが図22に示す横方向に位置ズレ量Qだけずれていたが、両者が縦方向にずれていた場合には、制御部170は、重なり領域123cBに対応する圧力低下のピーク値と重なり領域123cDに対応する圧力低下のピーク値との差から縦方向の位置ズレ量を認識する。
以下、図24乃至図28を参照して、図20及び図21に示すフローチャートを実現するための別の構造について説明する。図24は、図3に示す構造の変形例のドライバ120Bの断面図である。図24に示すドライバ120Bは、真空監視センサ146を有さずに、光センサ148を有する点でドライバ120と相違している。
図25(a)は、スリーブ121Bの下部の拡大断面図である。図25(b)は、図25(a)に示すスリーブ121Bの底面図である。図26(a)は、図25(a)に示す回転位置から時計回りに45°回転したスリーブ121Bの下部の拡大断面図である。図26(b)は、図26(a)に示すスリーブ121Bの底面図である。
スリーブ121Bは、中空のほぼ円筒形状を有し、図25(b)及び図26(b)に示すように、ネジ10の上面16を吸着可能な吸着孔(中空部)122と、光センサ148の収納部124とを有する。吸着孔122は図4及び図5に示す吸着孔122と同様である。スリーブ121Bはスリーブ121と異なり溝123を有しない。その代り、光センサ148の収納部124を有する。
収納部124は、光センサ148を収納し、図26(a)に示すように、断面L字形状を有し、底部開放端124aと側部開放端124bとを有する。底部開放端124aはスリーブ121Bの底面121aBにおいて円形形状で開口し、光センサ148からの光を透過する。なお、光センサ148が底部開放端124aから落下しないように底部開放端124aの大きさは光センサ148の大きさよりも小さい。側部開放端124bはスリーブ121Bの円筒側面121bBにおいて開口し、光センサ148に接続されたケーブル149を通過させる。側部開放端124bの大きさは限定されない。
ここで、図27(a)は、スリーブ121Bとネジ10の上面16とが近接した状態(約0.2mm)におけるスリーブ121Bの下部の断面図である。図27(b)は、図27(a)をE2−E2方向から見た断面図である。図28(a)は、図27(a)とは45°ずれた回転位置に配置されたスリーブ121Bの下部の断面図である。図28(b)は、図28(a)をF2−F2方向から見た断面図である。なお、図27(b)及び図28(b)においては、ビット125又はスリーブ121Bの中心軸Kとネジ10の中心軸17とは鉛直方向に一直線になっている。
底部開放端124aは、吸着孔122に非接触に形成されている。底部開放端124aはスリーブ121Bの底面121aBに形成されて大気開放されている。底部開放端124aは、中心Jから放射方向に延びる中心線124a1を有し、中心線124a1と最も近い凸部122bの中心線122b1とのなす角度は45°である。中心線124a1は、それに関して底部開放端124aが線対称になる線をいう。
底部開放端124aは、スリーブ121Bの底面121aB側から見ると、中心Jを中心としてビット125の先端部125aの最外径を通る円Cを仮想的に形成した時に円Cの内側に少なくとも部分的に張り出している。本実施例においては、張り出し部124cはスリーブ121Bの回転位置に応じてリセス13の上に配置されたりリセス13から外れたりする。かかる構成により、張り出し部が検出部として使用可能である。なお、底部開放端124aの全部が円Cの内側に配置されていてもよいが、この場合には中心17aとJとの位置ズレを検出する機能が失われる場合がある。
本実施例の各種検出部は、真空監視センサ146を使用せず、光センサ148を使用する。本実施例の光センサ148は反射型フォトセンサであり、リセス13を上面16から識別することができる。反射型フォトセンサは、発光素子と受光素子を含み、発光素子はLEDを使用し、受光素子はPD、PTr、フォトIC、変調光フォトICなどを使用する。必要があれば、リセス13又は上面16に反射率に差をつける部材を張り付けてもよい。光センサ148にはケーブル149が接続され、光センサ148の検出結果がケーブル149に伝達される。ケーブル149は制御部170に接続される。
図27(a)と図27(b)はリセス13の谷部13aの位相とスリーブ121Bの凸部122b(又はビット125の先端部125aの山部126)の位相とが一致し、中心線13a1と中心線122b1とが一致した状態を示している。図27(a)や図27(b)に示すように、底部開放端124aがリセス13から外れている場合には、光センサ148はネジ10の上面16を検出する。
一方、図28(a)と図28(b)はリセス13(の谷部13a)の位相とスリーブ121B(の凸部122b)の位相とが45°ずれ、4つの谷部13aの1つの中心線13a1と中心線124a1とが一致している状態を示している。図28(a)や図28(b)に示すように、底部開放端124aがリセス13上に配置されている場合には、光センサ148は張り出し部124cにおいてリセス13を識別することができる。
本実施例の構造は、図10乃至図12に示すフローチャートに適用することができる。この場合、図12におけるステップ1210は、「光センサ148の検出結果と回転位置検出センサ144の検出結果から底部開放端124aの中心線124a1がネジ10のリセス13の谷部13aの中心線13a1に一致したときのスリーブ121B(ビット125)の回転位置の情報を取得すると共にステップ1102のティーチング情報から補正量を取得」と読み替えればよい。
また、本実施例の構造は、図22に示す重なり領域123cA乃至123cDに示すように、張り出し部124cの面積は中心17aと中心Jとが位置ズレした場合に変化する。従って、図20乃至図21に示すフローチャートに適用することができる。
図20のステップ1106において、制御部170は、中心17aと中心Jとが一致した場合(即ち、位置ズレ量が0である理想状態)が崩れた場合の位置ズレ量と光センサ148が検出する光量との関係をティーチングしておく。これにより、制御部170は、光センサ148の検出結果を取得すると位置ズレ量に変換することができる。
図21のステップ1206における「近接するようなサーチ位置」は光センサ148がネジ10の上面16の形状を検出可能な位置である限り、かならずしも「近接」を要求するものではない。図21のステップ1212は上述と同様に読み替える。図21のステップ1212において、制御部170は、張り出し部124cの理想状態の面積に対応する光量と実際の面積に対応する光量との差から位置ズレ量があると認識する。次に、制御部170は、この位置ズレ量を0にするように、移動部160を駆動する(ステップ1214)。これにより、中心17aと中心Jとが一致する。
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、様々な変形及び変更が可能である。