JP5206555B2 - 数値制御式工作機械及びその熱変位補正方法 - Google Patents
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Description
図1〜図4に基づいて、マシニングセンタ(数値制御式工作機械)Mの構成について説明する。図1に示すように、マシニングセンタMは、ワークと工具とが相対移動することで、ワークに所望の機械加工(例えば、「フライス削り」、「穴空け」、「切削」等)を施すことができる工作機械である。
図1に示すように、機械本体2は、コラム4と、主軸ヘッド5と、主軸(図示外)と、工具交換装置7と、テーブル8とを主体として構成されている。コラム4は、ベース1の後部に設けたコラム座部3の上面に固定しており、且つ、鉛直上方に延びている。主軸ヘッド5は、コラム4の前面に沿って昇降可能である。主軸ヘッド5は、その内部に主軸を回転可能に支持している。工具交換装置7は、主軸ヘッド5の右側に設けてある。工具交換装置7は、主軸の先端に取り付けた工具ホルダを他の工具ホルダに交換する。工具ホルダは、工具6(図2参照)を装着している。テーブル8は、ベース1の上部に設けてある。テーブル8は、ワークを着脱可能に固定する。コラム4の背面側には、箱状の制御ボックス9が設けてある。制御ボックス9は、その内側にマシニングセンタMの動作を制御する数値制御装置50(図4参照)を備えている。
コラム4の前面側で上下方向に延びるガイドレール(図示外)が、リニアガイド(図示外)を介して主軸ヘッド5を昇降自在に案内している。ナット(図示外)が、コラム4の前面側の上下方向に延びる送り軸としてのZ軸ボールネジシャフト(図示外)に対して主軸ヘッド5を連結している。Z軸モータ73(図4参照)がZ軸ボールネジシャフトを正逆方向に回転駆動することで、主軸ヘッド5は上下方向に昇降駆動する。
この補正量演算処理において熱変位を補正する際には、求めた熱変位を用いて前記ピッチ誤差補正量を補正することにより行うものとする。
本実施例では、X軸ボールネジシャフト81の熱変位を補正する例について説明するが、Y軸のボールネジ機構、Z軸のボールネジ機構についても基本的に同様である。
このピッチ誤差を補正する為のピッチ誤差量は、出荷前の調整段階において、ナット部16を位置X0から位置X300までX軸方向へ20mm間隔にて補正区間ごとに移動させる。このときの指令値に対する誤差、つまり(目標値−実移動量)である誤差を精密に測定し、ピッチ誤差補正量のテーブルを作成し、そのテーブルをRAM53に予め格納して出荷する。Y軸、Z軸についても同様にしてピッチ誤差補正量のテーブルを作成してRAM53に予め格納して出荷する。
上記の所定時間毎に、加工プログラムのX軸送りデータ(制御データ)に基づいて、ナット部16がどの区間に位置しているかを判別し、エンコーダ71aの検出信号から求めるX軸モータ71によるテーブル送り速度Fから発熱量を次の(1)式により求める。その発熱量はRAM53のデータエリアに格納する。尚、ナット部16は、例えば原点座標X0からX300までの間(300mmの範囲)を移動するものとする。
ここで、Qは発熱量、Fは送り速度、K1は所定の定数、Tは所定の定数である。
以下に示す合計発熱量QTの分配方法においては、ナット全長部81b、前側軸部81a、後側軸部81cにおいて互いに他の部分への熱伝導が生じず、熱的には近似的に独立しているとみなす。合計発熱量QTに対する発熱部(軸受18,19とナット部16)の比率は送り速度の如何に関わらずほぼ一定であるとする。
QB=ηB×QT
ここで比率ηN,ηBは前記知見により一定であり、実機によりQN,QBを測定し、比率ηN,ηBを予め求めておくものとする。
X軸モータ71のモータ本体の温度と発熱量QFの算出方法について説明する。
図7に示すように、X軸モータ71の回転速度ωおよび駆動電流iを一定とした場合の、モータ本体の温度変化について説明する。マシニングセンタMの駆動を開始すると、モータ本体温度ΘMは曲線150を描きながら上昇し、一定の温度で飽和する。この飽和時の温度を、飽和温度L1aという。飽和温度L1aは、次の式で表すことができる。
L1a=K2・ω+K3・i2 ・・・(2)
K2,K3はサーボモータ固有の定数、ωはモータ回転速度、i はX軸モータ71の駆動電流である。
ΘM=L1a・{1 −exp(−γ・t)} ・・・(3)
ここで、γはX軸モータ71に固有の定数、tは駆動開始からの経過時間である。モータ本体温度ΘMが飽和温度L1aに達した後(図7ではt=8時間の時点)、マシニングセンタMを停止すると、モータ本体温度ΘMは、曲線151を描きながら下降する。曲線151は、次式で表すことができる。
ΘM=L1a・exp(−γ・t) ・・・(4)
γはサーボモータ固有の定数、tは駆動停止からの経過時間である。
ΘM1a=L1a・{1−exp(−γ・a/60)}
上記式(4)から、マシニングセンタMの駆動停止からa分後のモータ本体温度ΘM−1aは、次の式で表すことができる。
ΘM-1a=L1a・exp(−γ・a/60)
ΘMt1-1=Lt1・{1−exp(−γ・t1/60)}
Lt1は時刻0から時刻t1間のX軸モータ71の実際の回転速度ωと駆動電流iから求めた飽和温度である。
ΘMt1-2=ΘMt1-1・exp{−γ・(t2−t1)/60}
同様に、時刻t3,t4におけるモータ本体温度ΘMt1の値ΘMt1-3,ΘMt1-4も、式(4)に従って、夫々以下のように算出できる。
ΘMt1-3=ΘMt1-1・exp{−γ・(t3−t1)/60}
ΘMt1-4=ΘMt1-1・exp{−γ・(t4−t1)/60}
ΘMt2-2=ΘMt2-1・exp{−γ・(t3−t2)/60}
ΘMt2-3=ΘMt2-1・exp{−γ・(t4−t2)/60}
図8(C)に示すように、時刻t2から時刻t3までの経過時間に基づくモータ本体温度ΘMt3は、時刻t2から時刻t3までは上昇し、時刻t3を過ぎると低下する曲線303を描く。前述のΘMt1とΘMt2の場合と同様にして、時刻t3,t4,t5におけるモータ本体温度ΘMt3-1,ΘMt3-2,ΘMt3-3を求めることができる。
QF=K4(Θ−ΘS) ・・・(5)
QFは所定時間(30秒)の間の発熱量であり、K4は係数である。ΘSはボールネジシャフト端部81e(図5参照)の温度であるが、本実施例では説明の簡単化のため、ΘSとしては区間1の右区切り位置の温度θ1の値の前回値を用いるものとする。
次に、ナット全長部81bの分配発熱量QNを5つの区間に分配する。前記データエリアに格納されている5つの合計発熱量Q1〜Q5と、QTに基づいて、次式から分配発熱量QNを5つの区間1〜5に分配する分配比率X1〜X5を求める。
:
X5=区分5の合計発熱量Q5/ QT
こうして、各区間の分配比率X1〜X5とナット全長部の発熱量QNとから、次式により区間1〜5についての分配発熱量QN1〜QN5を求める。
:
QN5=X5×QN
上記の結果を用いて、区間1〜5の分配発熱量を図9のように表すことができる。
以上のようにして5つの区間1〜5の分配発熱量(図9参照)を求めた後、この分配発熱量から上昇した温度分布を算出する。温度分布は初期条件{θ}t=0、d{θ}/ dtt=0の下で次式(6)の非定常熱伝導方程式を解くことで求める。
ここで、[C]は熱容量マトリックス、[H]は熱伝導マトリックス、{θ}は温度分布、{Q}は入出力される発熱量マトリックス、tは時間である。
{θ}t=t1={θ}t=0+(d{θ}t=0/dt)×t1
{θ}t=t2={θ}t=t1+(d{θ}t=t1/dt)×(t2−t1)
t=t3,‥‥の温度は、同様にして求めることができる。
図9に示すように、ボールネジシャフト81の5つの区間の温度θ1〜θ5を求めてから、これらの温度θ1〜θ5に基づいて、ボールネジシャフト81の5つの区間区切り位置(図9のθ1〜θ5に対応する位置)の熱変位量を算出する。5つの区間区切り位置の熱変位量は、次式(11)から求めることができる。
ここで、ΔLは熱変位量、βはシャフト材料の線膨張係数である。
積分記号は0〜Lの範囲についての積分を示し、Lは5つの区間に関する区間区切り位置までの長さを示す。各区間1〜4の長さを100mmとすると、0〜100、0〜200、0〜300、・・等の範囲についての積分を示す。
図10は、ボールネジシャフト81のナット全長部81bを20mm間隔で分割したピッチ誤差補正の補正区間1〜15を示す。本実施例では、ナット部16の移動範囲81bがX0〜X300(300mmの範囲)であり、各補正区間の長さが20mmであるため、15個の補正区間がある。上記の補正区間1〜15に行うピッチ誤差補正のテーブルは、マシニングセンタMの出荷前にメーカーが試運転時の送り量誤差を測定し、その測定結果を加味して予め作成してRAM53に格納してある。
縦軸は固定ベアリング18の位置を基準とする熱変位量、上側の横軸は固定軸受18を基準とするボールネジシャフト81の各部の位置であり、下側の横軸は15個の補正区間の区切り位置(X0,X20・・・,X300)を示す。
ここで、DF1は区間1における熱変位量、
DF2は区間1と区間2における熱変位量の合計、
:
DF5は区間1〜区間5における熱変位量の合計である。
[補正量演算式]
X0の補正量=区間1の熱変位量+区間2の熱変位量×{(区間2の左区切り位置とX0間の長さ)/区間2の長さ:
X20の補正量=区間1の熱変位量+区間2の熱変位量×{(区間2の左区切り位置とX20間の長さ)/区間2の長さ}−X0の補正量:
X40の補正量=区間1の熱変位量+区間2の熱変位量×{(区間2の左区切り位置とX40間の長さ)/区間2の長さ}−X20の補正量:
X60の補正量=区間1の熱変位量+区間2の熱変位量×{(区間2の左区切り位置とX60間の長さ)/区間2の長さ}−X40の補正量:
X80の補正量=区間1の熱変位量+区間2の熱変位量×{(区間2の左区切り位置とX80間の長さ)/区間2の長さ}−X60の補正量:
:
X300の補正量=区間1の熱変位量+区間2の熱変位量+区間3の熱変位量+区間4の熱変位量+区間5の熱変位量×{(区間5の左区切り位置とX300間の長さ)/区間5の長さ}−X280の補正量:
一方、メモリ運転モード又はMDI運転モードにおいて加工プログラムを実行している場合、補正処理タイミング経過後にG0指令が入力されたとき、G0指令に基づく位置決め動作の実行前に補正処理を実行する。
この熱変位補正制御は、マシニングセンタMの電源がONしている間、数値制御装置50が継続的に実行するものである。数値制御装置50が熱変位補正制御を開始すると、補正量演算タイミングであるか否かを判断し、補正量演算タイミングである場合(S1;Yes)、補正量演算処理を実行してから(S2)、S3へ移行する。補正量演算タイミングでない場合は(S1;No)、補正量演算処理を実行せずにS3へ移行する。
ここで、DF:位置Xnよりも固定側の演算区間で発生した熱変位量の合計、
ΔDn:位置Xnを含む演算区間で発生した熱変位量、
XF:位置Xnを含む演算区間の左区切り位置、
Ln:位置Xnを含む演算区間の長さである。
但し、ΔM0を求める場合に用いるΔM-20を0とする。
このマシニングセンタMでは、メモリ運転モードとMDI運転モードを含む運転モードを択一的に設定可能に構成してある。2ミリ秒毎に複数区間1〜5の発熱量を演算し、その複数区間1〜5の発熱量を30秒分累積した発熱量Q1〜Q5を用いて、複数区間の分配発熱量QN1〜QN5を演算する。これと同時に、モータ71からボールネジシャフト81に30秒の間に伝熱する前部軸受部発熱量QFを演算する。
1]前記実施例では、熱変位量に基づいてピッチ誤差補正の補正量を補正するように構成したが、一例を示すものであってこれに限定される訳ではない。即ち、ピッチ誤差補正とは独立に、熱変位量に基づいて複数の補正区間毎に加工プログラムの制御データを補正するようにしてもよい。
2]前記実施例では、発熱量を演算する演算周期2ミリ秒を例にして説明したが、この演算周期は2ミリ秒に限るものではない。同様に前記の所定期間の30秒も一例に過ぎず、これに限定される訳ではない。
50 数値制御装置
71 X軸モータ
71a エンコーダ
81 X軸ボールネジシャフト
Claims (2)
- 送り駆動用ボールネジ機構と、このボールネジ機構のシャフトを回転駆動するサーボモータと、このサーボモータを加工プログラムの制御データに基づき制御するための制御手段とを有する数値制御式工作機械において、
前記加工プログラムに基づいて自動運転するメモリ運転モードと、加工プログラムを1ブロックずつ入力して運転するMDI運転モードを含む運転モードを択一的に設定可能に構成され、
前記サーボモータの回転速度を検出する速度検出手段と、
前記サーボモータの温度上昇を検知する温度検知手段と、
前記シャフトの全長を複数分割した複数区間に発生する第1発熱量を、前記サーボモータの回転速度と制御データとに基づいて短い所定時間毎に求める第1発熱量演算手段と、
前記サーボモータの温度上昇に基づいて、サーボモータから前記シャフトに所定期間の間に伝熱する第2発熱量を求める第2発熱量演算手段と、
前記複数区間の前記第1発熱量を前記所定期間分累積した合計発熱量と前記第2発熱量と非定常熱伝導方程式とに基づいて、複数区間の温度分布を前記所定期間毎に演算する温度分布演算手段と、
前記温度分布から前記シャフトの複数区間の熱変位量を前記所定期間毎に演算する熱変位量演算手段と、
前記複数区間の熱変位量に基づいて、前記シャフトのナット移動範囲を複数分割した複数の補正区間毎に前記制御データを夫々補正する補正量を前記所定期間毎に演算する補正量演算手段と、
前記メモリ運転モード又は前記MDI運転モードにおいて、位置決め用制御データによる位置決め動作の実行前に、前記補正量に基づいて位置決め用制御データを補正し且つ前記メモリ運転モード又は前記MDI運転モードに設定されていない場合、前記所定期間毎に前記補正量に基づいて前記制御データを補正する補正制御手段と、
を備えたことを特徴とする数値制御式工作機械。 - 送り駆動用ボールネジ機構と、このボールネジ機構のシャフトを回転駆動するサーボモータと、このサーボモータを加工プログラムの制御データに基づき制御するための制御手段とを有する数値制御式工作機械の熱変位補正方法において、
前記加工プログラムに基づいて自動運転するメモリ運転モードと、加工プログラムを1ブロックずつ入力して運転するMDI運転モードを含む運転モードを択一的に設定可能に予め構成しておき、
前記シャフトの全長を複数分割した複数区間に発生する第1発熱量を、前記サーボモータの回転速度と制御データとに基づいて短い所定時間毎に求める第1ステップと、
前記サーボモータの温度上昇を検知し、この温度上昇に基づいて、サーボモータから前記シャフトに所定期間の間に伝熱する第2発熱量を求める第2ステップと、
前記複数区間の前記第1発熱量を前記所定期間分累積した合計発熱量と前記第2発熱量と非定常熱伝導方程式とに基づいて、複数区間の温度分布を前記所定期間毎に演算する第3ステップと、
前記温度分布から前記シャフトの複数区間の熱変位量を前記所定期間毎に演算する第4ステップと、
前記複数区間の熱変位量に基づいて、前記シャフトのナット移動範囲を複数分割した複数の補正区間毎に前記制御データを夫々補正する補正量を前記所定期間毎に演算する第5ステップと、
前記メモリ運転モード又は前記MDI運転モードにおいて、位置決め用制御データによる位置決め動作の実行前に、前記補正量に基づいて位置決め用制御データを補正し且つ前記メモリ運転モード又は前記MDI運転モードに設定されていない場合、前記所定期間毎に前記補正量に基づいて前記制御データを補正する第6ステップと、
を備えたことを特徴とする数値制御式工作機械の熱変位補正方法。
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