JP5169946B2 - 数値制御式工作機械及びその熱変位補正方法 - Google Patents
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Description
そこで、長時間にわたって機械加工を行う場合にも高精度のワーク加工を行えるようにしたものが、例えば特許文献1に開示してある。
図1〜図5に基づいて、マシニングセンタ(数値制御式工作機械)Mの構成について説明する。図1に示すように、マシニングセンタMは、ワークと工具とが相対移動することで、ワークに所望の機械加工(例えば、「フライス削り」、「穴空け」、「切削」等)を施すことができる工作機械である。
図1に示すように、スプラッシュカバー2は、機械本体5とベース1の上部を覆う略直方体状の箱状のものである。スプラッシュカバー2はベース1の上部に固定してある。このスプラッシュカバー2の内側に、機械本体5の加工領域を設けてある。スプラッシュカバー2の前面に開口部3を設けてある。マシニングセンタMは、この開口部3を開閉するスライド式の開閉扉4を設けてある。
図1〜図3に示すように、機械本体5は、コラム7と、主軸ヘッド8と、主軸9と、工具交換装置30と、テーブル15とを主体として構成されている。コラム7は、ベース1の後部の上面に固定しており、且つ、鉛直上方に延びている。主軸ヘッド8は、コラム7の前面に沿って昇降可能である。主軸ヘッド8は、その内部に主軸9を回転可能に支持している。
コラム7の前面側で上下方向に延びるガイドレール(図示外)が、リニアガイド(図示外)を介して主軸ヘッド8を昇降自在に案内している。ナット(図示外)が、コラム7の前面側の上下方向に延びる送り軸としてのZ軸ボールネジシャフト(図示外)に対して主軸ヘッド8を連結している。図2に示すように、主軸ヘッド8の上端にはZ軸モータ73を複数のボルト13で固定してある。Z軸モータ73がZ軸ボールネジシャフトを正逆方向に回転駆動することで、主軸ヘッド8は上下方向(Z軸方向)に昇降駆動する。
図2、図3に示すように、工具交換装置30は、複数の工具を支持する工具マガジン31と、マガジンモータ75と、減速機36等を有する。工具マガジン31は、鍔付き円筒状のマガジンベース32と、マガジンベース32の外周に放射状に支持した複数のグリップアーム37を主体に構成してある。1対のフレーム12の前端部に固定したマガジン支持台(図示外)が、マガジン軸35に対してマガジンベース32を回動自在に支持している。
この補正量演算処理において熱変位を補正する際には、求めた熱変位を用いて前記ピッチ誤差補正量を補正することにより行うものとする。
本実施例では、X軸ボールネジシャフト81の熱変位を補正する例について説明するが、Y軸のボールネジ機構、Z軸のボールネジ機構についても基本的に同様である。
このピッチ誤差を補正する為のピッチ誤差量は、出荷前の調整段階において、ナット部16を位置X0から位置X300までX軸方向へ20mm間隔にて補正区間ごとに移動させる。このときの指令値に対する誤差、つまり(目標値−実移動量)である誤差を精密に測定し、ピッチ誤差補正量のテーブルを作成し、そのテーブルをRAM53に予め格納して出荷する。Y軸、Z軸についても同様にしてピッチ誤差補正量のテーブルを作成してRAM53に予め格納して出荷する。
上記の所定時間毎に、加工プログラムのX軸送りデータに基づいて、ナット部16がどの区間に位置しているかを判別し、エンコーダ72aの検出信号から求めるX軸モータ71によるテーブル送り速度Fから発熱量を次の(1)式により求める。その発熱量はRAM53のデータエリアに格納する。尚、ナット部16は、例えば原点座標X0からX300までの間(300mmの範囲)を移動するものとする。
ここで、Qは発熱量、Fは送り速度、K1は所定の定数、Tは所定の定数である。
以下に示す合計発熱量QTの分配方法においては、ナット全長部、前側軸部81a、後側軸部81cにおいて互いに他の部分への熱伝導が生じず、熱的には近似的に独立しているとみなす。合計発熱量QTに対する発熱部(軸受28,29とナット部16)の比率は送り速度の如何に関わらずほぼ一定であるとする。
QB=ηB×QT
ここで比率ηN,ηBは前記知見により一定であり、実機によりQN,QBを測定し、比率ηN,ηBを予め求めておくものとする。
X軸モータ71のモータ本体の温度と発熱量QFの算出方法について説明する。
図8に示すように、X軸モータ71の回転速度ωおよび駆動電流iを一定とした場合の、モータ本体の温度変化について説明する。マシニングセンタMの駆動を開始すると、モータ本体温度ΘMは曲線150を描きながら上昇し、一定の温度で飽和する。この飽和時の温度を、飽和温度L1aという。飽和温度L1aは、次の式で表すことができる。
L1a=K2・ω+K3・i2 ・・・(2)
K2,K3はサーボモータ固有の定数、ωはモータ回転速度、i はX軸モータ71の駆動電流である。
ΘM=L1a・{1 −exp(−γ・t)} ・・・(3)
ここで、γはX軸モータ71に固有の定数、tは駆動開始からの経過時間である。モータ本体温度ΘM が飽和温度L1aに達した後(図8ではt=8時間の時点)、マシニングセンタMを停止すると、モータ本体温度ΘMは、曲線151を描きながら下降する。曲線151は、次式で表すことができる。
ΘM=L1a・exp(−γ・t) ・・・(4)
γはサーボモータ固有の定数、tは駆動停止からの経過時間である。
ΘM1a=L1a・{1−exp(−γ・a/60)}
上記式(4)から、マシニングセンタMの駆動停止からa分後のモータ本体温度ΘM-1aは、次の式で表すことができる。
ΘM-1a=L1a・exp(−γ・a/60)
ΘMt1-1=Lt1・{1−exp(−γ・t1/60)}
Lt1は時刻0から時刻t1間のX軸モータ71の実際の回転速度ωと駆動電流iから求めた飽和温度である。
ΘMt1-2=ΘMt1-1・exp{−γ・(t2−t1)/60}
同様に、時刻t3,t4におけるモータ本体温度ΘMt1の値ΘMt1-3,ΘMt1-4も、式(4)に従って、夫々以下のように算出できる。
ΘMt1-3=ΘMt1-1・exp{−γ・(t3−t1)/60}
ΘMt1-4=ΘMt1-1・exp{−γ・(t4−t1)/60}
ΘMt2-2=ΘMt2-1・exp{−γ・(t3−t2)/60}
ΘMt2-3=ΘMt2-1・exp{−γ・(t4−t2)/60}
図9(C)に示すように、時刻t2から時刻t3までの経過時間に基づくモータ本体温度ΘMt3は、時刻t2から時刻t3までは上昇し、時刻t3を過ぎると低下する曲線303を描く。前述のΘMt1とΘMt2の場合と同様にして、時刻t3,t4,t5におけるモータ本体温度ΘMt3-1,ΘMt3-2,ΘMt3-3を求めることができる。
QF=K4(Θ−ΘS) ・・・(5)
QFは所定時間(30秒)の間の発熱量であり、K4は係数である。ΘSはボールネジシャフト端部81e(図6参照)の温度であるが、本実施例では説明の簡単化のため、ΘSとしては区間1の右区切り位置の温度θ1の値の前回値を用いるものとする。
次に、ナット全長部の分配発熱量QNを5つの区間に分配する。前記データエリアに格納されている5つの合計発熱量Q1〜Q5と、QTに基づいて、次式から分配発熱量QNを5つの区間1〜5に分配する分配比率X1〜X5を求める。
:
X5=区分5の合計発熱量Q5/ QT
こうして、各区間の分配比率X1〜X5とナット全長部の発熱量QNとから、次式により区間1〜5についての分配発熱量QN1〜QN5を求める。
:
QN5=X5×QN
上記の結果を用いて、区間1〜5の分配発熱量を図10のように表すことができる。
以上のようにして5つの区間1〜5の分配発熱量(図10参照)を求めた後、この分配発熱量から上昇した温度分布を算出する。温度分布は初期条件{θ}t=0、d{θ}/ dtt=0の下で次式(6)の非定常熱伝導方程式を解くことで求める。
ここで、[C]は熱容量マトリックス、[H]は熱伝導マトリックス、{θ}は温度分布、{Q}は入出力される発熱量マトリックス、tは時間である。
{θ}t=t1={θ}t=0+(d{θ}t=0/dt)×t1
{θ}t=t2={θ}t=t1+(d{θ}t=t1/dt)×(t2−t1)
t=t3,‥‥の温度は、同様にして求めることができる。
図10に示すように、ボールネジシャフト81の5つの区間の温度θ1〜θ5を求めてから、これらの温度θ1〜θ5に基づいて、ボールネジシャフト81の5つの区間区切り位置(図10のθ1〜θ5に対応する位置)の熱変位量を算出する。5つの区間区切り位置の熱変位量は、次式(11)から求めることができる。
ここで、ΔLは熱変位量、βはシャフト材料の線膨張係数である。
積分記号は0〜Lの範囲についての積分を示し、Lは5つの区間に関する区間区切り位置までの長さを示す。各区間1〜4の長さを100mmとすると、0〜100、0〜200、0〜300、・・等の範囲についての積分を示す。
図11は、ボールネジシャフト81のナット移動区間81bを20mm間隔で分割したピッチ誤差補正の補正区間1〜15を示す。本実施例では、ナット部16の移動範囲81bがX0〜X300(300mmの範囲)であり、各補正区間の長さが20mmであるため、15個の補正区間がある。上記の補正区間1〜15に行うピッチ誤差補正のテーブルは、マシニングセンタMの出荷前にメーカーが試運転時の送り量誤差を測定し、その測定結果を加味して予め作成してRAM53に格納してある。
縦軸は固定軸受28の位置を基準とする熱変位量、上側の横軸は固定軸受28を基準とするボールネジシャフト81の各部の位置であり、下側の横軸は15個の補正区間の区切り位置(X0,X20・・・,X300)を示す。
ここで、DF1は区間1における熱変位量、
DF2は区間1と区間2における熱変位量の合計、
:
DF5は区間1〜区間5における熱変位量の合計である。
[補正量演算式]
X0の補正量=区間1の熱変位量+区間2の熱変位量×{(区間2の左区切り位置とX0間の長さ)/区間2の長さ:
X20の補正量=区間1の熱変位量+区間2の熱変位量×{(区間2の左区切り位置とX20間の長さ)/区間2の長さ}−X0の補正量:
X40の補正量=区間1の熱変位量+区間2の熱変位量×{(区間2の左区切り位置とX40間の長さ)/区間2の長さ}−X20の補正量:
X60の補正量=区間1の熱変位量+区間2の熱変位量×{(区間2の左区切り位置とX60間の長さ)/区間2の長さ}−X40の補正量:
X80の補正量=区間1の熱変位量+区間2の熱変位量×{(区間2の左区切り位置とX80間の長さ)/区間2の長さ}−X60の補正量:
:
X300の補正量=区間1の熱変位量+区間2の熱変位量+区間3の熱変位量+区間4の熱変位量+区間5の熱変位量×{(区間5の左区切り位置とX300間の長さ)/区間5の長さ}−X280の補正量:
一方、メモリ運転モード又はMDI運転モードにおいて加工プログラムを実行している場合、補正処理タイミング経過後に工具交換指令が入力されたとき、工具交換処理中に補正処理を実行する。
この熱変位補正制御は、マシニングセンタMの電源がONしている間、数値制御装置50が継続的に実行するものである。数値制御装置50が熱変位補正制御を開始すると、補正量演算タイミングであるか否かを判断し、補正量演算タイミングである場合(S1;Yes)、補正量演算処理を実行してから(S2)、S3へ移行する。補正量演算タイミングでない場合は(S1;No)、補正量演算処理を実行せずにS3へ移行する。
ここで、DF:位置Xnよりも固定側の演算区間で発生した熱変位量の合計、
ΔDn:位置Xnを含む演算区間で発生した熱変位量、
YF:位置Xnを含む演算区間の左区切り位置、
Ln:位置Xnを含む演算区間の長さである。
但し、ΔM0を求める場合に用いるΔM-20を0とする。
数値制御装置50は、メモリ運転モード又はMDI運転モードにおいて、加工プログラム実行中に工具交換指令が入力されたとき、工具交換装置30による工具交換処理の実行中に、熱変位に伴うモータ71〜73の制御量の補正を実行するので、機械加工のサイクルタイムを増加させることなく熱変位補正を行うことができる。また、加工プログラム中に複数の工具交換指令を設定することにより、複数回の熱変位補正を行わせることができるので、長時間にわたって機械加工を行う場合にも高精度の機械加工を行うことが可能となる。
1]図18の補正量演算処理における補正量の演算方法については、前記実施例に示した方法以外に種々の方法を適用することが可能である。また、前記実施例では、発熱量を演算する演算周期2ミリ秒を例にして説明したが、この演算周期は2ミリ秒に限るものではない。同様に前記の所定時間の30秒も一例に過ぎず、これに限定される訳ではない。
2]アーム式の機構を有する工具交換装置を備えた数値制御式工作機械に適用することも可能である。この場合、図20においては「Z軸原点」が「工具交換指令で指定したR点」となり、「マガジン回転」が「アーム旋回」となる。
4]コラム7をX軸方向と、Y軸方向に移動駆動する数値制御式工作機械に適用することも可能である。
8 主軸ヘッド
9 主軸
15 テーブル
30 工具交換装置
31 工具マガジン
50 数値制御装置
71 X軸モータ
72 Y軸モータ
73 Z軸モータ
Claims (4)
- 送り軸を駆動する送り軸駆動手段と、主軸に装着された工具と工具マガジンに収納された工具とを交換可能な工具交換装置と、加工プログラムに基づいて送り軸駆動手段と工具交換装置とを制御する数値制御装置と、送り軸に発生する熱変位量に基づいて送り軸駆動手段の制御量を補正する熱変位補正装置とを有する数値制御式工作機械において、
前記加工プログラムに基づいて自動運転するメモリ運転モードと、加工プログラムを1ブロックずつ入力して運転するMDI運転モードを含む運転モードを択一的に設定可能に構成され、
前記数値制御装置は、前記メモリ運転モード又は前記MDI運転モードにおいて、前記加工プログラム実行中に工具交換指令が入力されたとき、前記工具交換装置による工具交換処理の実行中に、前記熱変位補正装置に前記送り軸駆動手段の制御量の補正を実行させる補正制御手段を備え、
前記送り駆動手段は、ワークを固定するテーブルをX軸方向に移動駆動するX軸移動駆動手段と、前記テーブルを前記X軸方向と直交するY軸方向に移動駆動するY軸移動駆動手段と、前記主軸を回転可能に支持する主軸ヘッドを昇降駆動するZ軸移動駆動手段とで構成され、
前記補正制御手段は、前記工具交換装置による工具交換処理時に、前記Z軸移動駆動手段により前記主軸ヘッドが加工位置からZ軸原点に復帰したとき、前記熱変位補正装置に前記X軸移動駆動手段と前記Y軸移動駆動手段の制御量の補正を実行させ、前記主軸ヘッドが前記工具マガジンの回転が可能なATC原点に達したとき、前記熱変位補正装置に前記Z軸移動駆動手段の制御量の補正を実行させることを特徴とする数値制御式工作機械。 - 前記補正制御手段は、前記Z軸移動駆動手段により前記主軸ヘッドが前記Z軸原点から前記ATC原点へ移動している間に、前記X軸移動駆動手段と前記Y軸移動駆動手段の制御量の補正を実行させ、前記工具交換装置による前記工具マガジンの回転中に、前記Z軸移動駆動手段の制御量の補正を実行させることを特徴とする請求項1に記載の数値制御式工作機械。
- 送り軸を駆動する送り軸駆動手段と、主軸に装着された工具と工具マガジンに収納された工具とを交換可能な工具交換装置と、加工プログラムに基づいて送り軸駆動手段と工具交換装置とを制御する数値制御装置と、送り軸に発生する熱変位量に基づいて送り軸駆動手段の制御量を補正する熱変位補正装置とを有する数値制御式工作機械の熱変位補正方法において、
前記加工プログラムに基づいて自動運転するメモリ運転モードと、加工プログラムを1ブロックずつ入力して運転するMDI運転モードを含む運転モードを択一的に設定可能に予め構成しておき、
前記メモリ運転モード又は前記MDI運転モードにおいて、前記加工プログラム実行中に工具交換指令が入力されたとき、前記工具交換装置による工具交換処理の実行中に、前記熱変位補正装置に前記送り軸駆動手段の制御量の補正を実行させ、
前記送り駆動手段を、ワークを固定するテーブルをX軸方向に移動駆動するX軸移動駆動手段と、前記テーブルを前記X軸方向と直交するY軸方向に移動駆動するY軸移動駆動手段と、前記主軸を回転可能に支持する主軸ヘッドを昇降駆動するZ軸移動駆動手段とで構成しておき、
前記工具交換装置による工具交換処理時に、前記Z軸移動駆動手段により前記主軸ヘッドが加工位置からZ軸原点に復帰したとき、前記熱変位補正装置に前記X軸移動駆動手段と前記Y軸移動駆動手段の制御量の補正を実行させ、前記主軸ヘッドが前記工具マガジンの回転が可能なATC原点に達したとき、前記熱変位補正装置に前記Z軸移動駆動手段の制御量の補正を実行させることを特徴とする数値制御式工作機械の熱変位補正方法。 - 前記Z軸移動駆動手段により、前記主軸ヘッドが前記Z軸原点から前記ATC原点へ移動している間に、前記X軸移動駆動手段と前記Y軸移動駆動手段の制御量の補正を実行させ、前記工具交換装置による前記工具マガジンの回転中に、前記Z軸移動駆動手段の制御量の補正を実行させることを特徴とする請求項3に記載の数値制御式工作機械の熱変位補正方法。
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