JP5205735B2 - 撥油性組成物および該撥油性組成物からなる膜を有する物品 - Google Patents

撥油性組成物および該撥油性組成物からなる膜を有する物品 Download PDF

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Description

本発明は、視認性に優れる撥油膜を形成できる撥油性組成物、および該撥油性組成物を用いて形成された膜を有する物品に関する。
電子機器等における軸受け部の潤滑油の滲み出しや飛散を防止するためのオイルシール剤として、含フッ素重合体を含む撥油剤が用いられている。たとえば、マイクロプロセッサ用の冷却ファンモータ、光ディスク回転装置、軸受け部には、軸受けに潤滑剤として充填されたオイルの滲み出しを防止するために、軸受けまたはスリーブの端面に含フッ素共重合体を含む撥油剤からなる撥油膜が設けられている(特許文献1参照)。以下、このような目的で使用する撥油膜をオイルシール膜ともいう。また、撥油性を有する含フッ素共重合体として、含フッ素脂肪族環構造を有する重合体も知られている(特許文献2参照)。
ところで、通常のオイルシール剤は無色透明であり形成された撥油膜の視認が困難であり、オイルシール剤の塗布状態を評価できず、安定した品質を確保することが難しい問題を抱えていた。この問題に対し、オイルシール剤に色素を添加する方法(特許文献3参照)、または90〜150℃で加熱すると気化する色素をオイルシール剤に混合し、加熱前にオイルシール剤の塗布状態を検査・評価する方法(特許文献4参照)が提案されている。
一方、軸受け部の潤滑油の注入は軸受け側方のノズルから軸受け部内へ向けて噴射するジェット潤滑方式、軸受けの内輪側から軸受けに潤滑油を供給するアンダレース方式、およびオイルに真空含浸させて注入する方式が知られている(特許文献5,6参照)。このような方式で潤滑油を注入する工程においては、オイルシール膜が潤滑油と接触する場合がある。また軸受け部が高速回転中は潤滑油がオイルシール膜部まで這い上がりオイルシール膜と長時間接触する場合もある。
色素が添加されたオイルシール膜とオイルとが接触する場合、色素によっては、オイル中に色素が溶出し、撥油膜(オイルシール膜)中の色素含有量が減少し、視認性が低下または消滅する問題がある。また、オイルシール剤を塗布した後に何らかの不純物が付着し、該不純物を取り除こうと溶剤で拭き取る場合、拭き取り用の溶剤に色素が溶け込んで、視認性が低下または消滅してしまうことがある。
また、特許文献4の場合、加熱により色素が気化するため着色度合いが低下し、オイルシール剤の塗布状態を視認できず、オイルシール剤が塗布されていない部品が混入した場合に選別ができない問題がある。
特開2000−297818号公報 特開昭63−238111号公報 特開2000−266052号公報 特開2004−211851号公報 特開2000−337380号公報 特開平6−207621号公報
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、良好な視認性を有し、加熱後も視認でき、オイルまたは拭き取り用溶剤と接触しても色素が膜外に溶出し難く視認性が持続する撥油膜を形成できる撥油性組成物、およびこれを用いて形成された膜を有する物品を提供することを目的とする。
本発明は、−OH、−NR および−SO (ただし、R 、R は同じでも異なってもよく、−H、−CH または−C を示す。R は−Hまたは−Naを示す。)からなる群から選ばれる1種以上の基を有する色素(A)、カルボン酸基、カルボニル基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、ジメチルアミド基、シリル基およびエポキシ基からなる群から選ばれる1種以上の基を有し、かつ、撥油性を有する含フッ素重合体(B)、ペルフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロエーテルからなる群から選ばれる1種以上の含フッ素溶媒(C)、ならびに色素(A)を溶解し、かつ、含フッ素溶媒(C)100質量部に対し5質量部以上混ぜたときに均一になるフッ素系アルコールからなる色素補助溶剤(D)を含む撥油性組成物を提供する。
また本発明は、本発明の撥油性組成物を用いて形成された膜を有する物品を提供する。
本発明の撥油性組成物は、色素を含有しており、視認性に優れた撥油膜を形成できる。本発明の撥油性組成物からなる撥油膜は視認性の持続性に優れ、加熱による視認性の低下が少なく、オイルまたは拭き取り用溶剤と接触しても色素が膜外へ溶出し難く、安定した視認性が確保できる。
[色素(A)]
本発明における色素(A)は極性基を有するものである。
色素(A)は極性基を有し親水性であるため、疎水性であるオイルまたは拭き取り用溶剤への溶解性が低い。したがって、オイルまたは拭き取り用溶剤への溶出が抑えられる。
なお、拭き取り用溶剤としては、一般的に油脂、皮脂等を溶解しやすいアルコール類、ケトン類、脂肪族炭化水素類が用いられる。具体例としてはエタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン等が挙げられる。
色素(A)における極性基は、−OH、−NR、−COOR、−O−、−Cl、−NO、−SO等が挙げられる。上記R、Rは同じでも異なってもよく、−H、−CH、−Cを示し、Rは−H、−CH、−Cを示し、Rは−H、−Naを示す。これらの極性基のうちで、−OH、−NR、−SOがより好ましい。該極性基であると色素補助溶剤(D)への溶解性に優れ、オイルまたは拭き取り用溶剤への耐溶出性に優れる。
色素(A)としては、少量で発光が強く、鮮やかな色合いのものが好ましい。具体的には、キサンテン系、アゾ系、アクアジリン系、キナクリドン系、インディゴ系、アントラキノン系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、スピロ系、ポリメチン系、アクリジン系等が挙げられ、キサンテン系、アゾ系の色素が好ましい。該色素であると発色に優れ、オイルまたは拭き取り用溶剤への耐溶出性に優れる。
また色素(A)として、黒色や色素と同じ有色の基材を用いた場合の撥油膜の視認性確保のため、365nm、254nm等の紫外線によって励起する蛍光色素または蛍光増白剤を用いることも好ましい。蛍光色素を用いると、365nm、254nm等の特定の波長の光線を当てることで色素が励起、発光し視認できる。
該蛍光色素としては、スチルベン系、ジアミノスチルベン系、ビスベンゾオキサゾール系、ピラゾリン系、イミダゾール系、ベンゾイミダール系、ローダミン系、オキサゾール系、オキサジアゾール系、トリアゾール系、チアゾール系、ベンズオキサゾール系の蛍光色素等が挙げられる。これらのうちでも、スチルベン系、ベンゾイミダール系が好ましい。該蛍光色素であると蛍光性に優れ、オイルまたは拭き取り用溶剤への耐溶出性に優れる。
色素(A)は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
撥水性組成物における色素(A)の含有割合は、形成する撥油膜の膜厚、用いる基材に応じて視認できる量が好ましく、撥油性組成物の100質量%に対して0.1〜30質量%が好ましく、0.2〜10質量%がより好ましい。
色素(A)を添加するタイミングは、含フッ素重合体(B)を重合する前でもよく、重合した後でもよく、撥油性組成物を溶媒で希釈する際でもよい。
[含フッ素重合体(B)]
本発明における含フッ素重合体(B)は上記色素(A)が有する極性基と結合できるまたは親和力のある官能基を有し、かつ、撥油性を有する。
本発明において「撥油性」とはノルマルヘキサデカン(n−ヘキサデカン)の接触角が50度以上であることをいう。
したがって、含フッ素重合体(B)が「撥油性を有する」とは、該含フッ素重合体(B)からなる膜において、ノルマルヘキサデカンの接触角が50度以上であることをいう。
上記「色素(A)が有する極性基と結合できるまたは親和力のある官能基」としては、具体的には極性基が好ましく、極性基でなくても、色素(A)が有する極性基とイオン結合、水素結合または共有結合できる基も好ましく用いることができる。具体的には、カルボン酸基、カルボニル基、スルホン酸基、スルホン酸ナトリウム基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミド基、シリル基、ニトリル基、イソシアネート基、エポキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクロイルオキシ基、ジエチルアミド基、アミノエチル基、アミド基等がより好ましく、カルボン酸基、ジメチルアミド基、スルホン酸基が最も好ましい。含フッ素重合体(B)が該官能基を有すると、色素(A)がオイルまたは拭き取り用溶剤へ溶出し難く、撥油膜からの色素の脱離を防ぐ効果に優れる。
含フッ素重合体(B)としては、ホモポリマーでもよく、2種類以上のモノマーに基づく繰り返し単位を有するコポリマーでもよい。2種類以上のモノマーを用いる場合は、フッ素を含まないアルキルモノマーを用いてもよい。
含フッ素重合体(B)を形成するのに用いるモノマーに、ポリフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(b1)(以下、モノマー(b1)ということもある。)が含まれることが好ましい。本発明における「ポリフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート」は、(メタ)アクリレートのカルボキシ基の水素原子が、ポリフルオロアルキル基を有する基で置換された化合物を意味する。
本発明における「ポリフルオロアルキル基」とは、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子が含まれてもよいアルキル基の、水素原子の2個以上がフッ素原子に置換された基を意味する。
また(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの一方または両方を含む概念である。
モノマー(b1)を含むモノマーを用いて形成された含フッ素重合体(B)は耐久撥油性に優れ、例えば高温オイル中に長時間晒されるという過酷な条件下でも撥油性が低下し難い。
モノマー(b1)としては、下式〔1〕で表される化合物が好ましい。式中、Rf はポリフルオロアルキル基、Qは2価の有機基、Rは水素原子またはメチル基を示す。
なお下式〔1〕における「Rf−Q−」において、フッ素原子と結合している炭素原子は全てRfに含まれるものとし、残りの炭素原子のうちQに含まれる炭素原子が最大となるように「Rf」および「Q」を決めるものとする。
例えば「Rf−Q−」が「CF2 H−CH2 −CH(OH)−CH2−」である場合、「Rf」は「CF2 H−」であり「−Q−」は「−CH2 −CH(OH)−CH2−」であるものとする。
Figure 0005205735
f の炭素原子数は2〜20が好ましく、4〜16がより好ましい。Rf は、直鎖構造でも分岐構造でもよく、直鎖構造がより好ましい。分岐構造の場合には、分岐部分がRf の末端部分に存在し、かつ炭素原子数が1〜4程度の短鎖が好ましい。Rf の末端部分の構造としては、CF3 CF2 −、(CF32 CF−、CF2 H−、CFH2 −等が挙げられ、CF3 CF2 −が好ましい。
f におけるフッ素原子の数は、[(Rf 中のフッ素原子数)/(Rf と同一炭素原子数のアルキル基中に含まれる水素原子数)]×100(%)で表現した場合に、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、100%が最も好ましい。100%の場合のRf をペルフルオロアルキル基という。
f がペルフルオロアルキル基の場合、Rf の炭素原子数は2〜20が好ましく、4〜16がより好ましい。該炭素原子数が上記の範囲内であると、上記式〔1〕で表される化合物からなるモノマーの重合性、重合後の溶液安定性がよく、撥油性組成物の初期撥油性と撥油持久性に優れる。
f がペルフルオロアルキル基の場合、Rf の具体例としては、以下の基(構造異性の基を含む。)等が挙げられる。
49 −:F(CF24 −、(CF32 CFCF2 −、(CF33 C−、CF3 CF2 (CF3 )CF−等。
511−:F(CF25 −等。
613−:F(CF26 −等。
715−:F(CF27 −、(CF32 CF(CF24 −等。
817−:F(CF28 −等。
919−:F(CF29 −、(CF32 CF(CF26 −等。
1021−:F(CF210−等。
1225−:F(CF212−等。
1327−:(CF32 CF(CF28 −等。
1429−:F(CF214−等。
1633−:F(CF216−等。
f が、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子を有するペルフルオロアルキル基である場合の具体例としては、以下の基が挙げられる。ただし、kは1〜5の整数を示す。
F(CF2k OCF(CF3 )−、
F(CF2 CF2 O)k CF2 CF2 −、
F(CF2 CF2 CF2 O)k CF2 CF2 −、
F[CF(CF3 )CF2 O]k CF(CF3 )−、
F[CF(CF3 )CF2 O]k CF(CF3 )CF2 CF2 −、
F(CF2k SCF(CF3 )−、
F(CF2 CF2 S)k CF2 CF2 −、
F(CF2 CF2 CF2 S)k CF2 CF2 −、
F[CF(CF3 )CF2 S]k CF2 CF2 −、
F[CF(CF3 )CF2 S]k CF(CF3 )CF2 CF2 −等。
f としては、直鎖状のペルフルオロアルキル基がより好ましく、具体的には、F(CF24 −、F(CF25 −、F(CF26 −、F(CF27 −、F(CF28 −、F(CF29 −、F(CF210−、F(CF211−、F(CF212−が特に好ましい。
上記式〔1〕におけるQの例としては、以下の基が挙げられる。ただし、R は水素原子またはアルキル基を示し、pおよびqはそれぞれ独立して0または1以上の整数を示し、p+qは1〜22の整数である。
−(CH2p+q −、
−(CH2p CONRa (CH2q −、
−(CH2p OCONRa (CH2q −、
−(CH2p SO2 NRa (CH2q −、
−(CH2p NHCONH(CH2q −、
−(CH2p CH(OH)(CH2q −、
−(CH2p CH(OCORa )(CH2q −等。
これらのうちで、−(CH2p+q −、−(CH2p CONRa (CH2q −または−(CH2p SO2 NRa (CH2q −(pは0または1以上の整数、qは2以上の整数を示し、p+qは2〜6である。)がより好ましく、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基またはヘキサメチレン基が最も好ましい。
前記モノマー(b1)としての、ペルフルオロ(メタ)アクリレートは、以下の化合物が好ましい。ただし、Rは水素原子またはメチル基を示す。
F(CF24 CH2 OCOCR=CH2 〔1−1〕、
F(CF25 CH2 OCOCR=CH2 〔1−2〕、
H(CF24 CH2 OCOCR=CH2 〔1−3〕、
H(CF26 CH2 OCOCR=CH2 〔1−4〕、
H(CF28 CH2 OCOCR=CH2 〔1−5〕、
H(CF210CH2 OCOCR=CH2 〔1−6〕、
H(CF28 CH2 CH2 OCOCR=CH2 〔1−7〕、
F(CF24 CH2 CH2 OCOCR=CH2 〔1−8〕、
F(CF26 CH2 CH2 OCOCR=CH2 〔1−9〕、
F(CF28 CH2 CH2 OCOCR=CH2 〔1−10〕、
F(CF29 CH2 CH2 OCOCR=CH2 〔1−11〕、
F(CF210CH2 CH2 OCOCR=CH2 〔1−12〕、
F(CF212CH2 CH2 OCOCR=CH2 〔1−13〕、
F(CF214CH2 CH2 OCOCR=CH2 〔1−14〕、
F(CF216CH2 CH2 OCOCR=CH2 〔1−15〕、
F(CF28 (CH23 OCOCR=CH2 〔1−16〕、
F(CF28 (CH24 OCOCR=CH2 〔1−17〕、
(CF32 CF(CF24 CH2 CH2 OCOCR=CH2 〔1−18〕、
(CF32 CF(CF26 CH2 CH2 OCOCR=CH2 〔1−19〕、
(CF32 CF(CF28 CH2 CH2 OCOCR=CH2 〔1−20〕、
(CF32 CF(CF25 (CH23 OCOCR=CH2 〔1−21〕、
(CF32 CF(CF25 CH2 CH(OH)CH2 OCOCR=CH2 〔1−22〕、
(CF32 CF(CF27 CH2 CH(OH)CH2 OCOCR=CH2 〔1−23〕、
(CF32 CF(CF25 CH2 CH(OCOCH3 )OCOCR=CH2 〔1−24〕、
F(CF28 SO2 N(CH3 )CH2 CH2 OCOCR=CH2 〔1−25〕、 F(CF28 SO2 N(C25 )CH2 CH2 OCOCR=CH2 〔1−26〕、
F(CF28 SO2 N(C37 )CH2 CH2 OCOCR=CH2 〔1−27〕、
F(CF28 CONHCH2 CH2 OCOCR=CH2 〔1−28〕。
ペルフルオロ(メタ)アクリレートとしては、〔1−1〕〜〔1−28〕のうち、〔1−3〕〜〔1−15〕がより好ましく、〔1−8〕〜〔1−13〕が最も好ましい。
含フッ素重合体(B)を形成する際に、ポリフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(b1)に、「色素(A)が有する極性基と結合できるまたは親和力のある官能基」を有するモノマー(b2)を共重合させることが好ましい。かかるモノマー(b2)としては以下が挙げられる。
(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマーまたはその酸無水物(無水マレイン酸、無水イコタン酸等);
ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基含有モノマー;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;
(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ブチルアミノ(メタ)アクリレート、N−メチロールアミノ(メタ)アクリレート、N−メチロールアミノプロパン(メタ)アクリレート、N,N―ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N-イソプロピルアクリルアミド等の(N−置換)、(N,N−置換)アミド系モノマー;
(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;
N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;
2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;
N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクルロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー等が挙げられる。
これらの中で(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、アクリロニトリル、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリル、N−ブチル(メタ)アクリルアミドが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルが最も好ましい。
また上記モノマー(b1)としてペルフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートを用いる場合は、オイルに対し撥油持久性を与えるため、含フッ素重合体(B)を形成する際に、ブロック化されたイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートに基づくモノマー(b3)、および「イソシアネート基と反応する水酸基」を有する(メタ)アクリレートモノマー(b4)を共重合させてもよい。
該イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、1,3,3−トリメチル−4−イソシアネートシクロヘキシルメチルアミドオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記イソシアネート基のブロック化に用いられるブロック化剤としては、2−ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ε−カプロラクタム、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、フェノール、メタノール、ジエチルマロネート、重亜硫酸塩、ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、インダゾール等が挙げられる。これらブロック化剤のうち、安定性に優れ、反応性に優れることから、2−ブタノンオキシム、アセト酢酸エチル、ジエチルマロネート、ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾールがより好ましく、2−ブタノンオキシム、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾールが最も好ましい。
「イソシアネート基と反応する水酸基」を有する(メタ)アクリレートモノマー(b4)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、含フッ素重合体(B)を形成するのに用いるモノマーとして、以下に例示するような、(メタ)アクリレート誘導体以外の、フッ素を含有するモノマー(b5)を用いることが好ましい。
かかるモノマー(b5)の具体例としては、テトラフロルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペンオキシド、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニデリン、フッ化ビニル、ペルフルオロジメチルジオキソール、ペルフルオロアルケニルビニルエーテル等。これらのうちペルフルオロアルケニルビニルエーテルが好ましい。
また本発明の撥油性組成物には、上記含フッ素重合体(B)に含まれない、他の含フッ素重合体(B’)を含有させてもよい。
かかる他の含フッ素重合体(B’)の例としては、ペルフルオロポリエーテル、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ペルフルオロ(メタ)アクリレートのホモポリマー等が挙げられる。該他の含フッ素重合体(B’)を含有させると、撥油膜の撥油性が向上し、撥油性の持続性が向上する。
撥油性組成物における含フッ素重合体(B)の割合は、撥油性組成物の100質量%に対して0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。該範囲であると、撥油性組成物の撥油性に優れ、撥油性の持続性に優れる。
また撥油性組成物に含フッ素重合体(B)と他の含フッ素重合体(B’)の両方を含有させる場合は、撥油性組成物の100質量%に対して、(B)と(B’)の合計が0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。(B)と(B’)の合計を100質量%に対して、含フッ素重合体(B’)の占める割合は1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。
[含フッ素溶媒(C)]
含フッ素溶媒(C)としては、ハロゲン化合物が挙げられる。
該ハロゲン化合物としては、(C1)ペルフルオロカーボン、(C2)ハロゲン化炭化水素、(C3)ハロゲン化エーテル等が好ましく挙げられる。
(C1)ペルフルオロカーボンとしては、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロヘキサン等のペルフルオロアルカン類;CF(CFCH=CH(n=5〜11の整数。)等のペルフルオロアルキル置換エチレン類;CF(CFCHCH(n=5〜11の整数。)等のペルフルオロアルキル置換エタン類;ペルフルオロベンゼン類;ペルフルオロトリアルキルアミン類;ペルフルオロ(アルキルヒドロフラン)類;C2n+1OC2m+1(n=3〜12の整数、m=1〜3の整数、n>m。)で表されるハイドロフルオロエーテル類;C2n+1H(n=4〜12の整数。)で表されるハイドロフルオロカーボン等が挙げられる。
(C2)ハロゲン化炭化水素としては、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンが挙げられる。
ハイドロクロロフルオロカーボンとしては、CHCClF、CHClCFCF、CHClFCFCClF等が挙げられる。
ハイドロフルオロカーボンとしては、CFCFCFCHF、CFCFCFCHF、CFCFCHCF、CHFCFCFCHF、CHFCHCFCF、CFCHFCHCF、CFCHCFCHF、CHFCHFCFCHF、CFCHFCFCH、CHFCHFCHFCHF、CFCHCFCH、CFCFCHCH、CHFCHCFCH、CHFCFCFCFCF、CFCFCFCHFCF、CHFCFCFCFCHF、CFCHFCHFCFCF、CFCHFCFCHCF、CFCF(CF)CHCHF、CFCH(CF)CHCF、CFCHCFCHCF、CHFCHFCFCHFCHF、CHFCFCFCHFCH、CFCHCHCHCF、CHFCHCFCHCHF、CF(CFCHF、CF(CFCHF、CFCFCFCFCHCF、CHFCFCFCFCFCHF、CFCH(CF)CHFCFCF、CFCFCHCH(CF)CF、CFCHCFCFCHCF、CFCFCHCHCFCF、CFCFCFCFCHCH、CFCH(CF)CHCHCF、CHFCFCHCHCFCHF、CFCFCFCHCHCH等が挙げられる。
(C3)ハロゲン化エーテルとしては、ハイドロフルオロエーテルが挙げられる。
ハイドロフルオロエーテルとしては、分離型ハイドロフルオロエーテル、非分離型ハイドロフルオロエーテルが挙げられる。分離型ハイドロフルオロエーテルとは、エーテル性酸素原子を介してペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルキレン基、および、アルキル基またはアルキレン基が結合している化合物である。非分離型ハイドロフルオロエーテルとは、部分的にフッ素化されたアルキル基またはアルキレン基を含むハイドロフルオロエーテルである。
分離型ハイドロフルオロエーテルとしては、CFCFCFOCH、(CFCFOCH、CFCFCFOCHCH、CFCFCFCFOCH、(CFCFCFOCH、(CFCOCH、CFCFCFCFOCHCH、(CF)CFCFOCHCH、(CFCOCHCH、CFCF(OCH)CF(CF、CFCF(OCHCH)CF(CF、C11OCHCH、CFCFCFCF(OCHCH)CF(CF、CHO(CFOCH、CHOCFCFOCHCH、COCF(CF)CFOCH、F(CFOCH(nは6〜10)等が挙げられる。
非分離型ハイドロフルオロエーテルとしては、CHFOCFOCHF、CHFCFOCHF、CFCFCFOCHF、CFCFOCHCHF、CHFCFOCHCF、CHFCFCHOCF、CFCFCHOCHF、CHFCFOCHCHF、CFCHOCFCHF、CFCHOCFCHF、CHFCFCFOCH、CHFCFCHOCH、CFCFCFOCHCF、CFCFCHOCFCF、CFCFCFOCHCHF、CFCFCHOCFCHF、CHFCFCHOCFCF、CHFCFCHOCFCHF、CFCHFCFCHOCF、CFCHFCFCHOCHF、CFCFCFCHOCH、(CFCHCFOCH、CFCFCFOCHCFCF、CFCFCFOCHCFCHF、CFCFCFCFOCFCHF、CF(CFOCHF、CHFOCFCFOCHF、CHFOCFOCFCFOCHF、CHFOCFOCFOCFOCHF等が挙げられる。
含フッ素溶媒(C)としては、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ペルフルオロカーボンが好ましく、CHCClF、CHClCFCF、CHClFCFCClF、CHFCFOCHF、CFCFCFOCHF、CFCFOCHCHF、CHFCFOCHCF、CHFCFCHOCF、CFCFCHOCHF、CHFCFOCHCHF、CFCHOCFCHF、CFCHOCFCHF、CHFCFCFOCH、CF(CFCHF、CF(CFCHF、CF(CFOCHがより好ましい。
本発明において含フッ素溶媒(C)を用いると、含フッ素重合体(B)の溶解性に優れ、撥油性組成物の保存安定性に優れる。含フッ素溶媒(C)は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
撥油性組成物における含フッ素溶媒(C)の割合は、撥油性組成物の100質量%に対して、80〜99.9質量%が好ましく、90〜99.9質量%がより好ましい。該範囲であると、撥油性組成物の保存安定性に優れ、1度の塗工で撥油膜を形成できる。
[色素補助溶剤(D)]
本発明における色素(A)は含フッ素溶媒(C)に不溶であることが多いため、色素(A)を溶解し、かつ、含フッ素溶媒(C)との相溶性を有する色素補助溶剤(D)を用いる。そして、まず色素(A)を色素補助溶剤(D)に溶解し、それを含フッ素溶媒(C)と混合すると色素が均一に分散されやすく好ましい。
本発明において「色素を溶解する溶剤」とは、色素を該溶剤に濃度0.5質量%で溶解した際に均一な溶液となり、析出、沈殿、層分離が発生しない状態をいう。また、「色素が不溶である溶剤」とは、色素を該溶剤に0.5質量%で溶解しようとした際に析出、沈殿、層分離等が発生し、均一な溶液とならない状態をいう。
また本発明において、「含フッ素溶媒(C)と相溶性のある色素補助溶剤(D)」とは、含フッ素溶媒(C)100質量部に対し該色素補助溶剤(D)を5質量部以上混ぜたときに、濁ったり相分離したりすることなく均一な状態になるものを意味する。
色素補助溶剤(D)は色素(A)を溶解し、かつ含フッ素溶媒(C)と相溶性のある溶剤であれば特に限定しないが、含フッ素溶媒(C)に溶解しやすいフッ素系アルコールが好ましい。
具体的には、トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、2−(ペンタフルオロブチル)エタノール、2−(ペルフルオロエキシシル)エタノール、2−(ペルフルオロヘキシル)エタノール、2−(ペルフルオロオクチル)エタノール、2−(ペルフルオロデシル)エタノール、2−(ペルフルオロ−3−メチルブチル)エタノール、1H,1H,3H−テトラフルオロ−1−プロパノール、1H,1H,5H−オクタフルオロ−1−ヘプタノール、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロ−1−ノナノール、2H−ヘキサフルオロ−2−2−プロパノール、1H,1H,3H−ヘキサフルオロ−2−ブタノール等が好ましく挙げられ、トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、2−(ペンタフルオロブチル)エタノール、が好ましく、トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、がより好ましい。該フッ素系アルコールであると色素溶解性に優れ、保存安定性に優れる。
撥油性組成物における色素補助溶剤(D)の割合は、撥油性組成物の100質量%に対して1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましい。該範囲であると色素(A)の溶解性に優れ、含フッ素溶媒(C)への溶解性に優れ、撥油性組成物の保存安定性に優れる。
[撥油性組成物]
本発明の撥油性組成物は、色素(A)、含フッ素重合体(B)、含フッ素溶媒(C)および色素補助溶剤(D)を含む。該撥油性組成物には、シランカップリング剤、プライマー等の機能性添加剤が含まれてもよい。該機能性添加剤を含むことにより、撥油膜の基材への密着性が向上し、撥油膜の撥油性が向上し、撥油性組成物の保存安定性が向上する。
本発明の撥油性組成物は、好ましくは、含フッ素溶媒(C)中で含フッ素重合体(B)を合成し、これを必要に応じて含フッ素溶媒(C)で希釈した液と、色素(A)を色素補助溶剤(D)に溶解した色素溶液とを混合することによって得られる。色素溶液を添加するタイミングは、含フッ素重合体(B)を重合する前でもよく、重合した後でもよく、溶媒(C)で希釈する際でもよい。含フッ素重合体(B)の合成は公知の手法を用いることができる。
[撥油膜]
本発明の撥油性組成物を用いて撥油膜を形成できる。
本発明における撥油膜は、撥油性組成物を基材に塗布し、溶媒を蒸発させて形成される。塗布方法としては、スプレー、ディップ、刷毛塗り、ポッティング、スピン等が挙げられる。
また、スプレー缶のような携帯型の塗装剤またはインクに撥油性組成物を混ぜて、基板に塗布してもよい。
撥油膜を形成する際に、含フッ素溶媒(C)を乾燥させるとともに、撥油膜の硬化を促進させるために加熱することが好ましい。加熱の温度は70〜180℃が好ましく、80〜150℃がより好ましい。加熱の時間は30分間以上が好ましい。該範囲であると、官能基の硬化性に優れ、撥油膜が良好に硬化し、基材との化学結合、アンカー結合が促進され、撥油性に優れる撥油膜が得られる。
撥油膜の膜厚は1μm以下が好ましい。該範囲であると装置の精度を損なわない。
本発明の撥油性組成物を用いて形成された撥油膜は、色素を含有しており視認性に優れている。
撥油膜中の色素を視認する方法としては、直接目視で確認する方法、特定波長の光線を照射して蛍光させて確認する方法が挙げられる。蛍光させて確認する方法は基材の色を問わない点で好ましい。
また本発明の撥油性組成物を用いて形成された撥油膜は、加熱による視認性の低下が少なく、オイルまたは拭き取り用溶剤と接触しても色素が膜外へ溶出し難く、良好な視認性が安定して保たれる。
かかる効果が得られる理由としては、極性基を含む色素(A)と、それと結合または親和する官能基を有する含フッ素重合体(B)を組み合わせて用いることで、色素(A)と含フッ素重合体(B)とが、イオン結合、水素結合、分子間力による結合、共有結合および/または配位結合等を形成し、これによってオイルおよび溶剤に対して高い堅牢度が得られるとともに、高温に加熱されても膜中の色素が拡散しにくくなると考えられる。
更にイオン結合、水素結合、分子間力による結合、共有結合、配位結合等が生じることによって、このような結合が無い場合に比べて、より着色や蛍光が強くなり、視認性が向上する効果も得られる。
[物品]
本発明の物品は、前記撥油性組成物を用いて形成された膜を有する。
具体的には、基材上に前記撥油性組成物からなる膜が形成された物品である。本発明の撥油性組成物からなる膜は、視認性と撥油性を必要とするオイルシール膜として好適であるほか、表面エネルギーが低いため、撥油膜だけでなく、撥水、防湿、防水、防汚、離型、表面改質、潤滑、防霧、防錆、耐食等の機能を有する膜として利用できる。
基材の材質としては、単繊維、複合繊維、布地、カーペット等の繊維織物、毛皮等の皮革製品、紙、木、プラスチック、ガラス、金属、金属酸化物、石綿、レンガ、セメント等の窯業製品、石材等が挙げられる。
基材には、コロナ処理、UVオゾン処理等の前処理、プライマー処理等を施してもよい。該処理により、撥油膜と基材との密着性が向上する。
本発明の物品および本発明の撥油性組成物からなる膜の機能の具体例としては以下のものが挙げられる。該本発明の撥油性組成物からなる膜は、必要に応じて、物品の全面を被覆してもよく、一部を被覆してもよい。
軸受けのオイルシール;半導体基板またはウェハー等の半導体の工程内製品の防湿、防汚、耐食;顕微鏡レンズの防汚、防湿;鏡の防汚;ディスプレイ画面の防汚;露光マスクやフォトマスクの防汚、防湿、離型;眼鏡レンズの防汚、防湿;カメラ用レンズの防汚、防湿;窓材等の光学部品の防汚、耐食、防湿;カメラまたは携帯電話等の差圧調整用フィルターの防汚、撥油;掃除機用のエアフィルター濾材の防汚;車載用通気性フィルター等の通気性フィルターの撥油、防汚;ロールベルト、プリンターロール、回転ローラー、モーターファン等回転部品の潤滑、防汚、撥油、防水;マイクロリアクター流路、スライド式バブル装置、モールド等のデバイスの防汚、防水、離型、表面改質;レンジフード、ガスコンロ、ガスレンジ油飛散防止シート等のキッチン周り用品の防汚、撥油、防水;排ガスフィルターの撥油、防汚;リード線の防湿、防錆;ベアリング、歯車の撥油、防汚;塗工ヘッドのノズルの防汚、撥油、防水;筆記用具用部材の防汚、撥油;カーペットの撥水撥油、防汚;フィラメントの防錆、防水;衣料品の撥水撥油;ショーウィンドウの防汚、撥油;インクジェット用紙の撥油;化粧品の表面改質;インクジェットノズルの防汚、撥油;金属プレートの防汚、撥油;食用包装材封止材の撥水撥油;インジケーターの防汚;燃料電池用分離膜の撥油、防汚;絶縁スペーサーの撥油;フィルムグローブの防汚、防水;燃料タンクの防汚、撥油;墓石または石碑等の石材の防汚、撥水撥油;壁材、建築材料、木材、タイル等の防汚、撥水撥油。
本発明について、実施例(例3、例4、例5)および比較例(例1、例2)を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されない。撥油性の評価は、以下に示す方法に従って行った。結果を表1に示す。
[試験板の作成]
洗浄済みのSUS板に、撥油液をスピンコート法にて、500rpmの条件で20秒間塗布し、120℃にて60分間加熱処理して試験板を得た。
[初期撥油性]
試験板に約1μLのn−ヘキサデカンを滴下し、その接触角を測定することにより初期撥油性を評価した。接触角50度以上でオイルシール性を発現する程度の初期撥油性と判定できる。
[オイル浸漬後の撥油性]
以下の例ではオイルとしてn−ヘキサデカンを用いた。
試験板をn−ヘキサデカンに70℃で1時間浸漬した後、上記と同様に試験板に約1μLのn−ヘキサデカンを滴下し、その接触角を測定し50度以上でオイルシール性を発現する程度の撥油性と判断した。
[接触角]
接触角の測定は、協和界面科学社製(商品名:CA−A)を用い、25℃の条件下、液滴法で行った。
[初期視認性]
撥油剤未塗布の基板と試験板を並べ、蛍光灯下または波長365nmの紫外線照射による蛍光発色によって、撥油膜の有無が肉眼で容易に確認できるか判断した。
[オイル浸漬後の視認性]
試験板をn−ヘキサデカンに70℃で1時間浸漬した後、上記と同様にして未塗布の基板と比較して撥油膜の有無が容易に確認できるか判断した。
[拭き取り溶剤に対する耐性]
不織布ワイピングクロスであるクリーンワイパー(製品名、クラレ社製)にイソプロピルアルコールを浸み込ませ、100gの加重で試験板を10往復摩耗する条件で拭き取りを行った。蛍光灯下または波長356nmの紫外線照射による蛍光発色によって初期視認性が「可」であった場合について、拭き取り前後の膜の見え方を観察し、拭き取りによる色落ちの有無を評価した。
[調製例1:撥油溶液E]
以下に述べるような方法で極性基を含まない含フッ素重合体を得た。
50mLのガラス製フラスコに、含フッ素重合体(B)の原料としてペルフルオロヘキシルエチルアクリレート[F(CFCHCHOCOCH=CH]の5.77g、3,5−ジメチルピラゾールでイソシアネート基がブロック化された2−イソシアネートエチルメタクリレートの0.09g、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート[CH=CH(CH)COOCH10CHOH]の0.07gを入れ、含フッ素溶媒(C)としてHCFCFOCHCF(以下、溶媒Yと記す。)の14.0gを入れ、さらに2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)の0.12gを入れた。
フラスコ内部のガスを窒素ガスで置換した後、密閉し、フラスコ内を撹拌しながら、60℃の湯浴中で15時間保持し、共重合体を含む透明な溶液を得た。1μ濾紙を用いて、得られた溶液から固形不純物を濾別し、得られた濾液を溶媒Yにて希釈して共重合体の濃度が0.5質量%の撥油溶液Eを得た。
[調製例2:撥油溶液H]
以下に述べるような方法で極性基を含む含フッ素重合体を得た。
50mLのガラス製フラスコに、含フッ素重合体(B)の原料としてペルフルオロヘキシルエチルアクリレートの5.65g、3,5−ジメチルピラゾールでイソシアネート基がブロック化された2−イソシアネートエチルメタクリレートの0.09g、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレートの0.7g、アクリル酸0.09gを用いた以外は調整例1と同様にして0.5質量%の撥油溶液Hを得た。
[調製例3:撥油溶液K]
以下に述べるような方法で極性基を含む含フッ素重合体を得た。
50mLのガラス製フラスコに、含フッ素重合体(B)の原料としてペルフルオロヘキシルエチルメタアクリレートの5.65g、3,5−ジメチルピラゾールでイソシアネート基がブロック化された2−イソシアネートエチルメタクリレートの0.09g、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレートの0.7g、アクリル酸0.09gを用いた以外は調整例1と同様にして0.5質量%の撥油溶液Kを得た。
[調製例4:撥油溶液T]
以下に述べるような方法で極性基を含む含フッ素重合体を得た。
50mLのガラス製フラスコに、含フッ素重合体(B)の原料としてペルフルオロヘキシルエチルメタアクリレートの5.65g、3,5−ジメチルピラゾールでイソシアネート基がブロック化された2−イソシアネートエチルメタクリレートの0.09g、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレートの0.7g、ジメチルアミノエチルメタアクリレート0.12gを用いた以外は調整例1と同様にして0.5質量%の撥油溶液Tを得た。
[調製例5:色素溶液F]
色素(A)としてローダミンBの0.5gをトリフルオロエタノールの99.5gで溶解し均一なピンク色の色素溶液Fを得た。
[調製例6:色素溶液N]
色素(A)としてベンゾイミダール系蛍光増白剤の0.5gをトリフルオロエタノール99.5gで溶解し均一な色素溶液Nを得た。
[調製例7:色素溶液U]
色素(A)としてスチルベン系蛍光増白剤の0.5gをトリフルオロエタノール99.5gで溶解し均一な色素溶液Uを得た。
[例1]
撥油液Eを用いて撥油膜を有する試験板を作成し、撥油性、視認性および拭き取り溶剤に対する耐性を評価した。その結果を下記表1に示す(以下、同様。)。なお、本例では初期視認性が不可であったため、拭き取り溶剤に対する耐性は評価しなかった。
[例2]
撥油液Eの10gに色素溶液Nの0.5gを添加した後撹拌し、均一な溶液Gを得た。これを用いて、例1と同様にして撥油膜を有する試験板を作成し、撥油性、視認性および拭き取り溶剤に対する耐性を評価した。
[例3]
撥油液Hの10gに色素溶液Fの0.5gを添加した後撹拌し、均一な溶液Iを得た。これを用いて、例1と同様にして撥油膜を有する試験板を作成し、撥油性、視認性および拭き取り溶剤に対する耐性を評価した。
[例4]
撥油液Hの10gに色素溶液Nの0.25gを添加した後撹拌し、均一な溶液Pを得た。これを用いて、例1と同様にして撥油膜を有する試験板を作成し、撥油性、視認性および拭き取り溶剤に対する耐性を評価した。
[例5]
撥油液Kの10gに色素溶液Nの0.25gを添加した後撹拌し、均一な溶液Sを得た。これを用いて、例1と同様にして撥油膜を有する試験板を作成し、撥油性、視認性および拭き取り溶剤に対する耐性を評価した。
[例6]
撥油液Tの10gに色素溶液Uの0.25gを添加した後撹拌し、均一な溶液Vを得た。これを用いて、例1と同様にして撥油膜を有する試験板を作成し、撥油性、視認性および拭き取り溶剤に対する耐性を評価した。
Figure 0005205735

Claims (3)

  1. −OH、−NR および−SO (ただし、R 、R は同じでも異なってもよく、−H、−CH または−C を示す。R は−Hまたは−Naを示す。)からなる群から選ばれる1種以上の基を有する色素(A)、
    カルボン酸基、カルボニル基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、ジメチルアミド基、シリル基およびエポキシ基からなる群から選ばれる1種以上の基を有し、かつ、撥油性を有する含フッ素重合体(B)、
    ペルフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロエーテルからなる群から選ばれる1種以上の含フッ素溶媒(C)、ならびに
    前記色素(A)を溶解し、かつ、前記含フッ素溶媒(C)100質量部に対し5質量部以上混ぜたときに均一になるフッ素系アルコールからなる色素補助溶剤(D)を含むことを特徴とする撥油性組成物。
  2. 前記含フッ素重合体(B)がポリフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく繰り返し単位を有する請求項1に記載の撥油性組成物。
  3. 請求項1または2に記載の撥油性組成物を用いて形成された膜を有する物品。
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