JP5203810B2 - 水素換気ファンの検査システム - Google Patents
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Description
水素換気ファンで滞留部の水素を換気する際には、水素換気ファンが換気要求に対して速やかに水素換気回転数に達することと、この水素換気回転数を継続して運転できることとが要求される。この発明によれば、このような水素換気ファンの正常性を、容易にかつ確実に確認することができる。
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る検査システム1の概略構成を示す模式図である。
燃料電池車両2は、燃料電池10と、燃料電池10の後方に配置されるバッテリシステム20と、バッテリシステム20の後方に配置され燃料電池10に供給する水素ガスを貯留する水素タンク30と、燃料電池10を冷却する冷媒が流通するラジエタ60と、を備える。
また、燃料電池10、バッテリシステム20、及び水素タンク30は、フロアパネル11の下方に設けられたアンダーカバー12により各々の底部側が覆われている。
この燃料電池10には、図示しない反応ガス供給装置により、アノード電極(陽極)側に水素タンク30から水素ガスが供給され、カソード電極(陰極)側に酸素を含むエアが供給される。すると、燃料電池10は、これら酸素と水素の電気化学反応により発電する。また、この燃料電池10により発電された電力は、図示しない駆動モータに供給される。
また、このラジエタ60の近傍には、外気温を検出する外気温センサ62が設けられている。この外気温センサ62の検出信号は、後述の統括ECU8(図4参照)に入力される。
バッテリシステム20は、箱状のバッテリユニット40と、バッテリユニット40の側面から後面に亘って設けられバッテリユニット40の温度を調整する温度調整装置50と、を備える。
バッテリ41は、図示しない複数のバッテリセルを備え、燃料電池10で発電した電力や、減速時における図示しない駆動モータからの回生電力等を蓄電する。また、バッテリ41に蓄電された電力は、運転状態に応じて駆動モータに適宜供給される。
吸気チャンバ511の上端側には、後方に向かって開口した吸気口512が形成されている。この吸気口512には、吸気配管51内に塵埃が流入するのを防止するフィルタ513が設けられている。フィルタ513は、空気を通過させるが水を通過させない性質を有する微細多孔質材から形成される。
バッテリファン制御ユニット54は、ファン制御装置としてのバッテリファンECU541と、このバッテリファンECU541を収納するファンECU収納ケース542と、を備える。バッテリファンECU541は、所定のデューティー比に変調されたPWM(パルス幅変調)信号をバッテリファン53に出力し、このデューティー比に応じた回転数でバッテリファン53を制御する。
図1に示すように、水素タンク30の上方のうちフロアパネル11で覆われた部分には、水素タンク30から漏れた水素が滞留する水素ガス滞留部13となっている。この水素ガス滞留部13には、水素の濃度を測定する水素ガスセンサ14が設けられている。この水素ガスセンサ14の検出信号は、後述の統括ECU8(図4参照)に入力される。
統括ECU8は、バッテリファンECU541にデューティー比の指令値(以下、「デューティー指令値」という)を出力する。以下では、このデューティー指令値に対応するバッテリファンの回転数を指令回転数という。また、統括ECU8には、バッテリファンECU541を介して、バッテリファン53の実回転数が入力される。
本実施形態の統括ECUでは、バッテリファンの正常性を検査する検査処理として、2種類の異なる検査処理が可能となっている。より具体的には、燃料電池車両の走行中に実行する走行中検査処理(図5参照)と、燃料電池車両を停止させた状態で上述のチェックツールを接続して実行する停止中検査処理(図6参照)との2種類が可能となっている。
ステップS5では、バッテリファンが故障した状態であると判断し、この処理を終了する。より具体的には、このステップでは、バッテリファンが故障した状態であることを示すファン故障フラグに「1」をセットする。
ステップS6では、バッテリファンが正常な状態であると判断し、この処理を終了する。より具体的には、このステップでは、上述のファン故障フラグに「0」をセットする。
最大出力検査処理は、後に図7を参照して詳述するように、バッテリファンに最大出力を要求した状態で、バッテリファンの正常性を検査する処理である。
通常出力検査処理は、後に図8を参照して詳述するように、バッテリファンに最大出力より小さい通常出力を要求した状態で、バッテリファンの正常性を検査する処理である
ステップS21では、最大のデューティー指令値(以下、「最大デューティー指令値」という)をバッテリファンECUに送信し、ステップS22に移る。ここで、最大デューティー指令値とは、バッテリファンに許容される最大デューティー比に対応する指令値である。また、正常な状態のバッテリファンにおいて、最大デューティー比の信号を入力した場合のバッテリファンの回転数を、最大回転数という。
バッテリファンの立ち上がり時間とは、バッテリファンの駆動を開始してから、すなわち最大デューティー指令値を出力してから、バッテリファンの実回転数が最大回転数に達するまでの時間をいう。本実施形態では、水素ガス滞留部に滞留した水素を換気する際には、速やかに換気するためにバッテリファンを最大回転数で駆動する。したがって、以下では、このバッテリファンの最大回転数を水素換気回転数という。
また、バッテリファンを駆動することで水素ガス滞留部の水素を換気する場合、水素ガス滞留部の水素濃度が高くなる前に、バッテリファンの回転数を最大回転数まで速やかに上昇させることが好ましい。したがって、この立ち上がり時間は、バッテリファンの水素換気性能の正常性を確認するための目安となる。この点に鑑みて、起動判定時間は、実験により適切な値に設定される。
継続運転時間とは、バッテリファンを水素換気回転数のもとで継続して運転した時間をいう。バッテリファンを駆動することで水素ガス滞留部の水素を換気する場合、バッテリファンの回転数を最大回転数付近に保った状態で継続して運転することが好ましい。したがって、この継続運転時間は、バッテリファンの水素換気性能の正常性を確認するための目安となる。この点に鑑みて、継続運転時間は、実験により適切な値に設定される。
上述のように、圧力センサは、排気配管のうちバッテリファン53の上流側に設けられている(図3参照)。すなわち、この圧力センサは、バッテリファンとフィルタとの間に設けられる。上述の理想状態圧力値は、フィルタ及びバッテリファンが正常な状態で、バッテリファンを最大回転数で駆動した場合に、フィルタとバッテリファンとの間に想定される理想的な圧力を示す。
この通常出力検査処理では、0から最大値までの間においてN個の複数の異なるデューティー指令値を設定し、それぞれのデューティー指令値のもとでバッテリファンの正常性を検査する。以下では、N個の異なるデューティー指令値を、昇順に1次デューティー指令値、2次デューティー指令値、…、N次デューティー指令値とする。
回転数差とは、上記ステップS41において送信されたn次デューティー指令値に対応するn次指令回転数とバッテリファンの実回転数との差(n次指令回転数−実回転数)を示す。
より具体的には、このステップでは、所定の凍結条件を満たすか否かを判別し、この凍結条件を満たす場合には、バッテリファンが凍結した状態であると判定する。本実施形態では、以下の2つを満たすことを凍結条件とする。
1)外気温が氷点下であること
2)指令回転数が大きくなるに従い、回転数差が小さくなること
2)の条件は、上述のステップS46において格納された指令回転数ごとの回転数差に基づいて、満たされるか否かが判別される。
この場合、バッテリファンの発熱の増大の影響により、バッテリファンの凍結の影響が小さくなり、回転数差が小さくなったと考えられる。したがって、実回転数が指令回転数を下回った原因は、バッテリファンの凍結によるものと考えられる。
一方、図9の(b)に示す例では、指令回転数が大きくなるに従い、回転数差は大きくなる。この場合、バッテリファンの凍結以外の影響により、実回転数が指令回転数を下回ったものと考えられる。
(1)燃料電池車両2にチェックツール9を接続し、検査開始指令信号を出力すると、統括ECU8により、バッテリファン53の停止中検査処理が実行される。また、この停止中検査処理は、バッテリファン53の駆動を開始してからバッテリファン53の実回転数が水素を換気するために設定された水素換気回転数に達するまでの立ち上がり時間に基づいてバッテリファン53の正常性を検査する処理と、この水素換気回転数のもとで継続して運転できるか否かを判定し、この判定の結果に基づいてバッテリファン53の正常性を検査する処理と、を含む。バッテリファン53で水素ガス滞留部13の水素を換気する際には、バッテリファン53が換気要求に対して速やかに水素換気回転数に達することと、この水素換気回転数を継続して運転できることとが要求される。本実施形態によれば、このようなバッテリファン53の正常性を、容易にかつ確実に確認することができる。
本発明の第2実施形態について、図10を参照して説明する。
以下の第2実施形態の説明にあたって、第1実施形態と同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。本実施形態の検査システムは、第1実施形態の検査システム1と、バッテリファンの停止中検査処理の通常出力検査処理が異なる。
図10に示すように、本実施形態の通常出力検査処理では、ステップS41´に示すように、デューティー指令値を送信する順序が異なる。
より具体的には、ステップS41´では、上述のN個のデューティー指令値の中から1つを降順で選択し、選択したデューティー指令値をバッテリファンECUに送信する。つまり、本実施形態では、第1実施形態とは逆に、大きいデューティー指令値から小さいデューティー指令値の順に送信する。
(9)通常出力検査処理において、バッテリファン53を複数の異なる指令回転数のもとでそれぞれ継続して運転できるか否かの判定を、大きい指令回転数から小さい指令回転数へ順に行う。これにより、初めに大きい指令回転数で駆動することで、バッテリファン53に噛みこんだ埃やごみ等を吹き飛ばすことができるので、小さい指令回転数における正常性の検査を精度良く行うことができる。
本発明の第3実施形態について、図11を参照して説明する。
以下の第3実施形態の説明にあたって、第1実施形態と同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。本実施形態の検査システムは、第1実施形態の検査システム1と、バッテリファンの停止中検査処理の通常出力検査処理が異なる。
図11に示すように、本実施形態の通常出力検査処理では、ステップS48´〜S51´が異なる。
ステップS48´では、バッテリファンを駆動するバッテリが電圧低下状態であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS49´に移り、NOの場合にはステップS50´に移る。
1)指令回転数が大きくなるに従い、回転数差が大きくなること
一方、図9の(a)に示す例では、指令回転数が大きくなるに従い、回転数差は小さくなる。この場合、バッテリの電圧低下以外の影響により、実回転数が指令回転数を下回ったものと考えられる。
(10)通常出力検査処理の実行時において指令回転数が大きくなるに従い、回転数差が大きくなる場合には、バッテリファン53に電力を供給するバッテリ41は電圧低下状態であると判定する。これにより、バッテリファン53の故障の原因が、バッテリ41の電圧低下によるものと特定できる場合がある。したがって、バッテリファン53のメンテナンスにかかる時間を短縮できる。
上記実施形態では、バッテリファン53を、水素ガス滞留部13の水素を換気する水素換気ファンとし、このバッテリファン53を検査システム1の検査対象としたが、これに限らない。例えば、バッテリファンに加えてラジエタファンも検査システムの検査対象としてもよい。
2…燃料電池車両
8…統括ECU(検査処理実行手段、凍結判定手段、電圧低下判定手段、フィルタ異常判定手段)
9…チェックツール(検査指令手段)
10…燃料電池
13…水素ガス滞留部(滞留部)
41…バッテリ
513…フィルタ(フィルタ)
53…バッテリファン(水素換気ファン)
541…バッテリファンECU(ファン制御装置)
55…圧力センサ(圧力検出手段)
Claims (9)
- 酸素と水素の化学反応により発電する燃料電池と、
水素が滞留する滞留部と、
当該滞留部を換気する水素換気ファンと、
所定の指令回転数のもとで前記水素換気ファンを制御するファン制御装置と、を備え、
前記滞留部の水素濃度が所定値に達した場合には、水素を換気するために設定された水素換気回転数を指令回転数として、前記水素換気ファンを制御する燃料電池車両について、前記水素換気ファンの正常性を検査する水素換気ファンの検査システムであって、
前記燃料電池車両に接続され、前記水素換気ファンの検査処理の開始を指令する検査開始指令信号を出力する検査指令手段と、
前記検査開始指令信号を検出したことに基づいて、前記水素換気ファンの検査処理を実行する検査処理実行手段と、
所定の凍結条件が満たされた場合には、前記水素換気ファンが凍結した状態であると判定する凍結判定手段と、を備え、
前記検査処理実行手段により実行される検査処理は、
前記水素換気ファンの駆動を開始してから前記水素換気ファンの実回転数が前記水素換気回転数に達するまでの立ち上がり時間に基づいて当該水素換気ファンの正常性を検査する第1検査処理と、
前記水素換気ファンを前記水素換気回転数のもとで継続して運転できるか否かを判定し、この判定の結果に基づいて当該水素換気ファンの正常性を検査する第2検査処理と、
前記水素換気ファンを複数の異なる指令回転数のもとでそれぞれ継続して運転できるか否かを判定し、この判定の結果に基づいて当該水素換気ファンの正常性を検査する第3検査処理と、を含み、
前記第3検査処理では、前記水素換気ファンを複数の異なる指令回転数のもとでそれぞれ継続して運転できるか否かの判定を、小さい指令回転数から大きい指令回転数へ順に行い、
指令回転数と前記水素換気ファンの実回転数との差を回転数差として、前記凍結条件は、前記第3検査処理の実行時において指令回転数が大きくなるに従い回転数差が小さくなることを含むことを特徴とする水素換気ファンの検査システム。 - 酸素と水素の化学反応により発電する燃料電池と、
水素が滞留する滞留部と、
当該滞留部を換気する水素換気ファンと、
前記水素換気ファンを駆動する電力を供給する蓄電装置と、
所定の指令回転数のもとで前記水素換気ファンを制御するファン制御装置と、を備え、
前記滞留部の水素濃度が所定値に達した場合には、水素を換気するために設定された水素換気回転数を指令回転数として、前記水素換気ファンを制御する燃料電池車両について、前記水素換気ファンの正常性を検査する水素換気ファンの検査システムであって、
前記燃料電池車両に接続され、前記水素換気ファンの検査処理の開始を指令する検査開始指令信号を出力する検査指令手段と、
前記検査開始指令信号を検出したことに基づいて、前記水素換気ファンの検査処理を実行する検査処理実行手段と、を備え、
前記検査処理実行手段により実行される検査処理は、
前記水素換気ファンの駆動を開始してから前記水素換気ファンの実回転数が前記水素換気回転数に達するまでの立ち上がり時間に基づいて当該水素換気ファンの正常性を検査する第1検査処理と、
前記水素換気ファンを前記水素換気回転数のもとで継続して運転できるか否かを判定し、この判定の結果に基づいて当該水素換気ファンの正常性を検査する第2検査処理と、
前記水素換気ファンを複数の異なる指令回転数のもとでそれぞれ継続して運転できるか否かを判定し、この判定の結果に基づいて当該水素換気ファンの正常性を検査する第3検査処理と、を含み、
指令回転数と前記水素換気ファンの実回転数との差を回転数差として、前記第3検査処理の実行時において指令回転数が大きくなるに従い回転数差が大きくなる場合には、前記蓄電装置は電圧低下状態であると判定する電圧低下判定手段をさらに備えることを特徴とする水素換気ファンの検査システム。 - 前記第3検査処理では、前記水素換気ファンを複数の異なる指令回転数のもとでそれぞれ継続して運転できるか否かの判定を、大きい指令回転数から小さい指令回転数へ順に行うことを特徴とする請求項2に記載の水素換気ファンの検査システム。
- 所定の凍結条件が満たされた場合には、前記水素換気ファンが凍結した状態であると判定する凍結判定手段をさらに備え、
前記第3検査処理では、前記水素換気ファンを複数の異なる指令回転数のもとでそれぞれ継続して運転できるか否かの判定を、小さい指令回転数から大きい指令回転数へ順に行い、
指令回転数と前記水素換気ファンの実回転数との差を回転数差として、前記凍結条件は、前記第3検査処理の実行時において指令回転数が大きくなるに従い回転数差が小さくなることを含むことを特徴とする請求項2に記載の水素換気ファンの検査システム。 - 前記凍結条件は、前記第3検査処理の実行時において指令回転数が大きくなるに従い回転数差が小さくなり、かつ、外気温が氷点下であることを含むことを特徴とする請求項1又は4に記載の水素換気ファンの検査システム。
- 前記検査処理実行手段は、前記凍結判定手段により前記水素換気ファンが凍結した状態であると判定された場合には、前記第3検査処理を再度実行することを特徴とする請求項1、4及び5の何れかに記載の水素換気ファンの検査システム。
- 前記水素換気ファンの吸入側及び排出側の少なくとも一方に設けられたフィルタと、
前記水素換気ファンと前記フィルタとの間の圧力を検出する圧力検出手段と、をさらに備え、
前記検査処理実行手段により実行される検査処理は、
前記水素換気ファンを前記水素換気回転数のもとで運転した際における前記圧力検出手段により検出された圧力に基づいて、前記水素換気ファンの正常性を検査する第4検査処理を含むことを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の水素換気ファンの検査システム。 - 前記圧力検出手段により検出された圧力が所定の理想状態圧力値よりも大きい場合には、前記フィルタは目詰まりした状態であると判定するフィルタ異常判定手段をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の水素換気ファンの検査システム。
- 前記水素換気ファンは、前記燃料電池車両内部に設けられた部品を冷却するものであることを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の水素換気ファンの検査システム。
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